上述した特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置は、運転モードを変更するためにブレーキを係合あるいは解放させるようになっているので、ブレーキを駆動するために油圧を必要とし、したがってその油圧を発生するオイルポンプを備えることが好ましい。また、そのオイルポンプは、高い油圧であっても安定して発生し、またエネルギ効率を良好にするなどのために、エンジンによって駆動するように構成することが好ましい。そこで、この種のオイルポンプをエンジンに隣接してその出力側に配置する構成が考えられるが、そのような構成では、外径の大きい第1モータ・ジェネレータの位置が、エンジンから出力軸側に離れた位置になる。そうすると、ハイブリッド駆動装置の外径の大きい部分が出力軸側に長くなるので、車両(特にエンジンを車両の前後方向に向けて搭載するFR車)に対する搭載性が悪くなる。
また、オイルポンプを、特許文献2に記載されているように、外径の大きい第1モータ・ジェネレータよりも出力軸側に配置し、エンジンの出力軸からそのオイルポンプに動力を伝達するとすれば、ハイブリッド駆動装置の外径が増大してしまう。すなわち、エンジンとオイルポンプとの間に第1モータ・ジェネレータが介在することにより、オイルポンプに動力を伝達する駆動軸を第1モータ・ジェネレータの外周側に配置すると、その駆動軸の配置スペースに応じてハイブリッド駆動装置のケーシングを大径に形成することになり、その結果、ハイブリッド駆動装置の全体としての外径が大きくなって車載性に劣るものになる可能性がある。このように、従来では、ハイブリッド駆動装置にオイルポンプを内蔵するにあたって新たな構成を検討する余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、車両搭載性の良好なハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数組の差動歯車機構を組み合わせた構成の動力分配機構に、内燃機関と、出力部材と、回転速度を連続的に変化させることにより前記内燃機関と出力部材との間の回転数比を連続的に変化させる発電機能のある第1の電動機とが連結され、さらに前記動力分配機構におけるいずれかの回転要素の回転を選択的に阻止することにより前記内燃機関と出力部材との間の回転数比を前記内燃機関が前記出力部材より低速で回転するオーバードライブ状態に固定する制動機構が設けられるとともに、前記出力部材にトルクを付加する第2の電動機が前記第1の電動機と同一軸線上に配置されたハイブリッド駆動装置において、前記第1の電動機と前記第2の電動機との間に、制御用油圧もしくは潤滑油圧を発生するオイルポンプが配置され、かつそのオイルポンプが前記第1の電動機と第2の電動機との間で、前記動力分配機構の外周側を覆うとともに前記内燃機関に連結されている円筒部材にトルク伝達可能に連結されていて、前記制動機構が、多板式の摩擦係合機構により構成されるとともに前記円筒部材の外周側に配置されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数組の差動歯車機構は、前記第1の電動機に連結された第1サンギヤと、その第1サンギヤに対して同心円上に配置されかつ前記出力部材および前記第2の電動機に連結された第1リングギヤと、これら第1サンギヤおよび第1リングギヤに噛み合っているピニオンギヤを保持しかつ前記内燃機関に連結された第1キャリヤとを回転要素とするシングルピニオン型遊星歯車機構と、前記制動機構によって選択的に制動される第2サンギヤと、その第2サンギヤに対して同心円上に配置されかつ前記内燃機関に連結された第2リングギヤと、前記第2サンギヤに噛み合っているピニオンギヤおよび該ピニオンギヤと前記第2リングギヤとに噛み合っている他のピニオンギヤとを保持しかつ前記出力部材および第2の電動機の連結された第2キャリヤとを回転要素とするダブルピニオン型遊星歯車機構とを備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記円筒部材は前記第2リングギヤと一体化され、前記オイルポンプにトルクを伝達するオイルポンプドライブギヤを更に備え、前記円筒部材は、前記シングルピニオン型遊星歯車機構の外周側を通って前記シングルピニオン型遊星歯車機構の側端部側に延びており、その円筒部材の端部が前記シングルピニオン型遊星歯車機構における第1キャリヤに連結され、かつその円筒部材の端部もしくは第1キャリヤに前記オイルポンプドライブギヤが一体に取り付けられていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記オイルポンプは、その筐体の一部を成すカバー部材を有し、そのカバー部材に、前記制動機構を押圧して係合させるピストンを収容するシリンダ部が形成されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記各電動機は、それぞれの外周を被うケース部を有し、前記制動機構を押圧して係合させるピストンを収容するシリンダ部が前記第2の電動機側に配置されてその第2の電動機のケース部に固定され、また前記制動機構が摩擦材を備えるとともにその摩擦材が前記第1の電動機側に配置されて前記第1の電動機のケース部に固定されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記オイルポンプは、前記内燃機関が出力した動力を伝達されて回転する駆動軸を有し、この駆動軸は前記複数の差動歯車機構の外周側にこれらの差動歯車機構の中心軸線と平行に配置され、かつその駆動軸の一端部にドリブンギヤが取り付けられ、さらにその駆動軸よりも半径方向で差動歯車機構側に前記制動機構の少なくとも一部が配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記制動機構は、所定のアクチュエータによって前後動させられて前記動力分配機構における前記いずれかの回転要素もしくは該回転要素と一体の部材に係合する係合スリーブを備えたドグクラッチ機構によって構成され、その係合スリーブは前記アクチュエータ側の部分で回転を止めるように回転方向で固定されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記動力分配機構における前記いずれかの回転要素に正回転方向のトルクが作用した場合に係合する一方向クラッチが、前記いずれかの回転要素と前記制動機構との間に直列に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記動力分配機構における前記いずれかの回転要素を制動する場合に、前記制動機構における回転側の部材と固定側の部材との回転数が同期した状態で前記制動機構を制動状態に切替動作させる制動制御手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記第1の電動機のトルクが所定値以下になったことによって、前記制動機構を解放して設定される運転モードから制動機構を係合させて設定される運転モードへの切り替えの終了を判定するモード切替判定手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項11の発明は、請求項8または9の発明において、前記制動機構を係合状態から解放状態に切り替えて運転モードを変更する場合に、前記制動機構における回転側の部材の回転数が同期回転数になった際に前記制動機構を解放させる制動解除制御手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項1の発明によれば、外径が相対的に大きくなる第1電動機とその第1電動機と同一軸線上に配置されている第2電動機との間にオイルポンプが配置されるので、第1電動機の外径が大きいことにより生じるスペースを有効に利用することができ、しかもオイルポンプに対する内燃機関の動力の伝達を各電動機の間で行うので、ハイブリッド駆動装置の外径を増大させる要因が生じず、もしくは少なくなる。その結果、出力回転数を増大させる運転モードを設定でき、かつオイルポンプを備えるハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化し、また外径の増大を防止もしくは抑制して車両に対する搭載性を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、第1電動機によって内燃機関の回転数を制御する運転モードと、内燃機関の出力を増速して出力部材に出力する運転モードとを、各遊星歯車機構および制動機構によって設定することができる。また、その遊星歯車機構を第1電動機よりも小径に構成できるので、それらの外周側のスペースを有効に利用してオイルポンプを配置でき、しかもシングルピニオン型遊星歯車機構のキャリヤを介して内燃機関の動力をオイルポンプに伝達する構成とすることができる。この点においてもハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化し、車載性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、シングルピニオン型遊星歯車機構のキャリヤとダブルピニオン型遊星歯車機構のリングギヤとオイルポンプのドライブギヤとの三者を一体化することができ、しかもその連結構造を簡素化することができる。
請求項4の発明によれば、オイルポンプの構成部材を利用して制動機構のアクチュエータを構成できるので、部品の共用化により必要部品点数を少なくし、それに伴ってハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型軽量化できる。
請求項5の発明によれば、制動機構やこれを動作させるためのアクチュエータを各電動機の間に生じるスペースを有効に利用して配置でき、その結果、ハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化し、また車両に対する搭載性を向上させることができる。
請求項6の発明によれば、オイルポンプの駆動軸はこれに取り付けられたドリブンギヤやオイルポンプのいわゆる本体部分よりも小径であり、その駆動軸に対しその内周側に制動機構の少なくとも一部を配置するので、制動機構とオイルポンプとによる半径方向でのスペースの取り合いを少なくでき、その結果、ハイブリッド駆動装置の全体としての外径を小さくすることができる。
請求項7の発明によれば、係合スリーブは前記いずれかの回転要素もしくはこれと一体の部材に噛み合うことにより、前記いずれかの回転要素の回転を止めることができる。そして、その係合スリーブ自体がこれを動作させるアクチュエータで回り止めされているので、部品点数を少なくしてハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型軽量化できる。
請求項8の発明によれば、前記いずれかの回転要素に作用するトルクの方向が、一方向クラッチを係合させる方向になることにより、その回転要素の回転が止められるので、その回転要素を固定して設定する運転モードに切り替える際のショックを低減もしくは防止することができる。
請求項9の発明によれば、前記いずれかの回転要素を制動する運転モードに切り替える場合、その制動に伴う回転数の変化が殆ど生じないので、ショックを防止もしくは低減できるとともに、確実に運転モードを変更することができる。
請求項10の発明によれば、制動機構によって前記いずれかの回転要素を固定した場合、第1の電動機はトルクを受け持たないので、その第1の電動機のトルクに基づいて、運転モードが切り替わったことを確実に判定することができる。
請求項11の発明によれば、制動機構の解放による回転数の変化が殆ど生じないので、制動機構を解放して運転モードを変更する際のショックを防止もしくは抑制することができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図1はこの発明の一具体例を示す図であって、ここに示す具体例では、原動機(エンジン:ENG)1と、発電機あるいは電動機として二つのモータ・ジェネレータ(MG1、MG2)2,3とが動力装置として設けられ、これら三者が同一軸線上に配列されている。その原動機1は、要は内燃機関であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、あるいは天然ガスエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力する動力装置である。好ましくはスロットル開度などの負荷を電気的に制御でき、また所定の負荷に対して回転数を制御することにより燃費が最も良好な最適運転点に設定できる内燃機関である。以下の説明では、原動機1をエンジン1と記す。
このエンジン1が動力分配機構4に連結されている。この動力分配機構4は、遊星歯車機構などの複数組の差動歯車機構を組み合わせて構成されている。具体的には、一組のシングルピニオン型遊星歯車機構41と一組のダブルピニオン型遊星歯車機構42とを組み合わせて構成されている。これらのシングルピニオン型遊星歯車機構41とダブルピニオン型遊星歯車機構42とは、エンジン1の回転中心軸線上に、エンジン1側からここに挙げた順に配置されており、そのシングルピニオン型遊星歯車機構41とエンジン1との間に、第1のモータ・ジェネレータ2が配置されている。なお、エンジン1と動力分配機構4との間に、発進用のクラッチやトルクコンバータ(ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ)などの動力伝達機構を適宜に設けてもよいことは勿論である。
シングルピニオン型遊星歯車機構41は、外歯歯車であるサンギヤSfと、そのサンギヤSfに対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤRfと、これらサンギヤSfおよびリングギヤRfに噛み合っているピニオンギヤPfを自転自在および公転自在に保持しているキャリヤCfとを回転要素として差動作用をなすように構成されており、そのキャリヤCfにエンジン1が連結されている。したがってキャリヤCfが入力要素となっている。またサンギヤSfに第1モータ・ジェネレータ2が連結されている。
この第1モータ・ジェネレータ2は、外力によって強制的に回転させることにより発電を行い、また電力を供給することによりモータとして機能するように構成されており、したがって第1モータ・ジェネレータ2が発電機として機能することにより、サンギヤSfが反力要素となるように構成されている。さらに、リングギヤRfがこの発明における出力部材に相当する出力軸5に連結されている。この出力軸5は、エンジン1の回転中心軸線上に配置されており、図示しない駆動輪に対して動力を出力するように構成されている。したがってリングギヤRfが出力要素となっている。
ダブルピニオン型遊星歯車機構42は、外歯歯車であるサンギヤSrと、そのサンギヤSrに対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤRrと、そのサンギヤSrに噛み合っているピニオンギヤPr1およびそのピニオンギヤPr1とリングギヤRrとに噛み合っている他のピニオンギヤPr2を自転自在および公転自在に保持しているキャリヤCrとを回転要素として差動作用をなすように構成されている。
そのリングギヤRrが上記のシングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfに連結されている。そのキャリヤCfにエンジン1が連結されているから、結局、ダブルピニオン型遊星歯車機構42のリングギヤRrはエンジン1に連結されている。また、ダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるキャリヤCrが、前記シングルピニオン型遊星歯車機構41におけるリングギヤRfおよび出力軸5に連結されている。そして、サンギヤSrを選択的に制動する制動機構すなわちブレーキ機構BKが設けられている。このブレーキ機構BKは、要は、サンギヤSrを制動できればよいので、摩擦式の係合機構やドグクラッチなどの噛み合い式の係合機構などによって構成することができる。
したがって、ダブルピニオン型遊星歯車機構42は、ブレーキ機構BKを解放した場合には、サンギヤSrがいわゆるフリー状態になってトルクを受け持たないので特には変速作用を行わない。これに対してブレーキ機構BKを係合させてサンギヤSrを制動した場合には、サンギヤSrが反力要素、またキャリヤCrが出力要素、さらにリングギヤRrが入力要素にそれぞれなることにより、ダブルピニオン型遊星歯車機構42が増速機構として機能するように構成されている。
これらの遊星歯車機構41,42を挟んで前記第1モータ・ジェネレータ2とは反対側に、第2モータ・ジェネレータ3が同一軸線上に配置されている。この第2モータ・ジェネレータ3は、前記第1モータ・ジェネレータ2と比較して高回転低トルク型のものであり、そのロータが出力軸5に連結され、出力軸5との間でトルクを授受できるように構成されている。なお、第2モータ・ジェネレータ3を出力軸5に直接連結する構成に替えて、例えば図2に示すように、第2モータ・ジェネレータ3と出力軸5との間に変速機構6を介在させてもよい。その変速機構6は、第2モータ・ジェネレータ3の出力した動力を減速もしくは増速して出力軸5に伝達するための機構であって、少なくとも高低の二つの変速比に切り替えることができるように構成されている。より好ましくは、少なくとも二つの変速比とトルクを伝達しないニュートラル状態とを設定できるように構成されている。したがって、出力側変速機6は、低速用ギヤ対および高速用ギヤ対からなる機構や、一組の遊星歯車機構とクラッチおよびブレーキからなる機構、二組の遊星歯車機構を組み合わせた複合遊星歯車機構とブレーキなどの係合装置とからなる機構などによって構成することができる。
上記の各モータ・ジェネレータ2,3は発電機および電動機として機能するようになっており、そのためにこれらのモータ・ジェネレータ2,3は図示しないインバータなどのコントローラを介してバッテリーなどの蓄電装置に接続されている。そして、一方のモータ・ジェネレータ2,3によって発電した電力を他方のモータ・ジェネレータ3,2に供給して該他方のモータ・ジェネレータ3,2をモータとして機能させることができるように構成されている。
そして、前述した動力分配機構4の外周側、すなわち各モータ・ジェネレータ2,3の軸線方向での中間部に、エンジン1の動力で駆動されて油圧を発生するオイルポンプOpが配置されている。このオイルポンプOpは、エンジン1が出力した動力が伝達されて回転することにより、制御用の油圧もしくは潤滑のための油圧を発生するものであって、歯車ポンプ、ラジアルピストンポンプ、ベーンポンプ、アキシャルピストンポンプなどの適宜のポンプを作用することができる。そして、このオイルポンプOpは、前述したシングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfもしくはこれと一体のダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるリングギヤRrにトルク伝達可能に連結されている。
図3は、そのオイルポンプOpを含む上記のハイブリッド駆動装置の具体的な構成を示す断面図であって、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構42のリングギヤRrと一体のスリーブ(円筒部材)11が設けられており、そのスリーブ11は、シングルピニオン型遊星歯車機構41の外周側を第1モータ・ジェネレータ2側に延びており、そのシングルピニオン型遊星歯車機構41の側端部(図3の左側の端部)で内周側に屈曲している。その屈曲している部分(すなわち中心軸線側に延びているフランジ部)の先端が、シングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfに溶接などの適宜の接合手段で連結されている。また、そのフランジ部の外側面(第1モータ・ジェネレータ2側の面)にオイルポンプOp用のドライブギヤ12が取り付けられている。
一方、第1モータ・ジェネレータ2は、エンジン1に連結されて固定される第1ケース13の内部に収容されており、その第1ケース13には、第1モータ・ジェネレータ2を収容するスペースを動力分配機構4のためのスペースから区画する隔壁部14が一体に設けられている。その隔壁部14における前記動力分配機構4側の側面で前記シングルピニオン型遊星歯車機構41の外周部から大きく離隔した位置にブレーキ用円筒部15が軸線方向に突出して設けられている。そのブレーキ用円筒部15の内周側には、前記スリーブ11より大径のブレーキドラム16が、ブレーキ用円筒部15と同心円上に配置されている。これらブレーキ用円筒部15の内周面とブレーキドラム16の外周面とのそれぞれに、互いに交互に配列された摩擦板17であるブレーキディスクとブレーキプレートとがスプライン嵌合されている。すなわち、一方の摩擦板17が第1モータ・ジェネレータ2を収容している第1ケース13に固定されている。こうして前述したブレーキ機構BKが形成されている。
さらに、前記第1ケース13の前記エンジン1とは反対側に、動力分配機構4および第2モータ・ジェネレータ3を収容する第2ケース18が連結されている。その第2ケース18の内周面には、動力分配機構4を収容するスペースと第2モータ・ジェネレータ3を収容するスペースとを区画する隔壁部19が、前記第1ケース13の隔壁部14とほぼ対向するように配置されている。
この隔壁部19の前記動力分配機構4側の側面に、ポンプ収容部20が形成され、このポンプ収容部20にオイルポンプOpの回転部分が収容されている。また、このポンプ収容部20には、オイルポンプOpの回転部分を収容した状態でポンプカバー21が取り付けられている。このポンプカバー21は、オイルポンプOpの筐体の一部を構成するものであって、このポンプカバー21には、前記ブレーキ機構BKの外周側を通って第1モータ・ジェネレータ2側に延びている筒状の軸支持部22と、前記ブレーキ機構BKにおける摩擦板17に向けた全体として環状をなす凹部であるシリンダ部23とが一体に形成されている。
そのシリンダ部23にピストン24が軸線方向に前後動できるように収容されており、そのシリンダ部23の内部、すなわちピストン24の後端部に油圧を供給できるように構成されている。ここに、ブレーキ機構BKを係合・解放動作させるための油圧アクチュエータが構成されている。すなわち、シリンダ部23が、第2モータ・ジェネレータ3を収容している第2ケース18に固定され、またブレーキ機構BKのためのアクチュエータが第2ケース18に設けられている。したがって、この油圧アクチュエータは、ポンプカバー21の一部を利用して構成されているので、その分、部品点数が削減され、ハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化できるようになっている。
また、ポンプカバー21における前記軸支持部22には、オイルポンプOpの回転部分に連結された駆動軸26が貫通しかつ回転自在に支持されている。なお、この駆動軸26の位置は、前記動力分配機構4より外周側であり、かつ前記第1モータ・ジェネレータ2の外径より小さい半径位置である。すなわち、駆動軸26は、外径の大きい第1モータ・ジェネレータ2に隣接する位置で、その収容部に繋がる箇所のスペースを利用して配置されている。
そして、その駆動軸26の第1モータ・ジェネレータ2側の端部は、第1ケース13における隔壁部14によって回転自在に支持されている。さらに、この駆動軸26には、前述したドライブギヤ12に噛み合っているドリブンギヤ28が一体となって回転するように取り付けられている。したがって、ドライブギヤ12がシングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfに一体化され、かつそのキャリヤCfにエンジン1が連結されているから、エンジン1の動力でオイルポンプOpを駆動するようになっている。
なお、この発明におけるブレーキ機構BKは、多板式のものに限られないのであって、図4に示すように、バンド式のブレーキを採用することができる。図4に示すブレーキ機構BKについて説明すると、前述したブレーキドラム16の外周側にブレーキバンド29が、選択的に巻き掛かるように配置されている。このブレーキバンド29の一端部は、図示しないアンカーによって固定され、また他方の端部が油圧シリンダなどの適宜のアクチュエータ(図示せず)に連結されている。したがって、そのアクチュエータによって他方の端部を一方の端部に接近させることにより、ブレーキバンド29がブレーキドラム16を締め付け、その結果、両者の間に生じる摩擦力によって制動を行うように構成されている。このような構成であっても、オイルポンプOpにおける駆動軸26の内周側にブレーキ機構BKの少なくとも一部を配置し、スペースの有効利用を図ることができるので、ハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化することができる。
また、図5に示す例は、ドグクラッチによってブレーキ機構BKを構成した例である。図5に示す例では、ダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるサンギヤSrには、前述したブレーキドラム16に替えてブレーキハブ30が一体に設けられている。このブレーキハブ30は、サンギヤSrの一端部から半径方向で外側に延びた円板状の部材であって、その外周面に軸線方向に沿うスプラインが形成されている。
そのブレーキハブ30に選択的にスプライン嵌合するブレーキスリーブ31が前記動力分配機構4の外周側、より具体的にはダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるリングギヤRrとシングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfとを連結しているスリーブ11の外周面に接近して配置されている。このブレーキスリーブ31は、先端部(図5の右端部)の内周面に、前記ブレーキハブ30のスプラインに噛み合うスプラインが形成された円筒状の部材であって、その後端部(図5の左側の端部)が軸線方向の推力を発生するアクチュエータに連結されている。
このアクチュエータは、ブレーキスリーブ31を軸線方向に移動させて、これを前記ブレーキハブ30に係合させ、またその係合を解除するように動作するように構成されており、したがって油圧式のアクチュエータや電磁式のアクチュエータなどを採用することができ、図5に示す例では電磁アクチュエータ32によって構成されている。具体的に説明すると、前記第1ケース13と第2ケース18との間に円筒状の中間ケース33が挟み込まれており、その中間ケース33の内周面には、フランジ状の支持部34が中心部に向けて突出した状態に形成されている。その支持部34の内周側の端部に電磁アクチュエータ32が取り付けられている。この電磁アクチュエータ32は、通電をオン・オフすることにより、アーマチャーが前後動するように構成され、そのアーマチャーに前記ブレーキスリーブ31の後端部が連結されている。
上記の電磁アクチュエータ32におけるアーマチャーは、前記支持部34の内周端部に形成された中空の収容部に納められており、したがってブレーキスリーブ31の後端部はその収容部に形成されている開口部を貫通している。そして、その開口部とここを貫通しているブレーキスリーブ31とがスプライン35によって互いに係合している。すなわち、ブレーキスリーブ31はこれを前後動させるアクチュエータ側でそのアクチュエータを構成しているハウジング相当部によって回転方向に対して固定されている。したがって、このハウジング相当部がいわゆる固定ハブを兼ねることになり、その結果、部品の共用化によって部品点数が削減され、またハイブリッド駆動装置の全体としての構成の小型化に有利な構成となっている。
したがって、図5に示すブレーキ機構BKは、電磁アクチュエータ32に例えば通電する(オンにする)ことによりブレーキスリーブ31が図5の右方向に前進し、その先端内周部がブレーキハブ30にスプライン嵌合し、そのブレーキハブ30と一体のサンギヤSrを固定し、これとは反対に通電を止める(オフにする)ことによりサンギヤSrの固定を解除していわゆるフリー状態にするように構成されている。電磁アクチュエータ32をオフにしてブレーキスリーブ31とブレーキハブ30との連結を解除した場合、両者の間でのトルクの伝達がほぼ完全に遮断されるので、いわゆる引き摺りやそれに伴う動力損失を防止もしくは抑制することができる。
つぎに上述したハイブリッド駆動装置の作用について説明する。図1ないし図5のいずれに示す構成であっても、ブレーキ機構BKを解放してダブルピニオン型遊星歯車機構42のサンギヤSrをフリーな状態にした運転モード(以下、通常モードと記す)と、そのブレーキ機構BKを係合させて前記サンギヤSrを固定した運転モード(以下、ODモードと記す)とを設定することが可能である。ブレーキ機構BKを解放させた通常モードでエンジン1の出力した動力を動力分配機構4におけるキャリヤCfに入力すると、その動力は出力要素であるリングギヤRfと反力要素であるサンギヤSfとに分配される。その場合、サンギヤSfに連結されている第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させると、サンギヤSfには、キャリヤCfのトルクとは反対方向に反力トルクが作用する。この状態を図6に共線図で示してある。図6の直線Aは、第1モータ・ジェネレータ2の回転数がほぼゼロとなるように制御している状態を示し、この状態では、出力要素であるリングギヤRfおよびこれに連結されている出力軸5が、エンジン1よりも高回転数で回転する。そして、そのトルクは、エンジン1から伝達されるキャリヤCfのトルクと、第1モータ・ジェネレータ2による反力トルクとを合成したトルクとなる。
この通常モードでは、第1モータ・ジェネレータ2の回転数を大小に変化させれば、それに応じてエンジン回転数を適宜に制御することができる。いわゆる無段変速状態である。したがってエンジン1を最適燃費で運転するように、第1モータ・ジェネレータ2によって制御することができる。またその場合、第1モータ・ジェネレータ2がエンジン1と同方向に回転し、かつ発電機として機能していれば、すなわち正転回生していれば、第1モータ・ジェネレータ2が発電を行う。その電力は、第2モータ・ジェネレータ3に供給されてこれが電動機として機能し、そのトルクが出力軸5に直接もしくは変速機構6を介して伝達される。このように、通常モードで第1モータ・ジェネレータ2が正転回生している場合には、エンジン1の動力がシングルピニオン型遊星歯車機構41を介して出力軸5に伝達されるとともに、各モータ・ジェネレータ2,3による電力変換を伴って出力軸5に伝達され、これらの動力が合成されて出力軸5から出力される。なおこの場合、ダブルピニオン型遊星歯車機構42のサンギヤSrがフリーな状態になっているので、ダブルピニオン型遊星歯車機構42は出力軸5に対する動力の伝達に関与しない。
一方、ブレーキ機構BKを係合させて前記サンギヤSrを固定したODモードでは、エンジン1の出力した動力がシングルピニオン型遊星歯車機構41におけるキャリヤCfを介してダブルピニオン型遊星歯車機構42のリングギヤRrにそのまま入力される。そのダブルピニオン型遊星歯車機構42では、サンギヤSrが固定されているから、増速作用が生じる。その状態を図6に直線Bで示してある。この場合、シングルピニオン型遊星歯車機構41におけるサンギヤSfに連結されている第1モータ・ジェネレータ2はエンジン1とは反対方向に逆回転するが、第1モータ・ジェネレータ2が電気的な作用を行わないように制御することにより、第1モータ・ジェネレータ2は単に空転し、したがってシングルピニオン型遊星歯車機構41は出力軸5に対するトルクの伝達に関与しない。すなわち、ODモードでは、ダブルピニオン型遊星歯車機構42のみを介して出力軸5に動力が伝達され、電力変換を伴わないので、動力損失を防止もしくは抑制し、動力伝達効率を向上させることができる。また、上記のハイブリッド駆動装置を搭載している車両が低負荷高速走行する場合、ODモードを設定することにより、エンジン回転数を下げることができ、その結果、燃費のよい走行を行うことが可能になる。
ところで、ブレーキ機構BKは、ダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるサンギヤSrを制動して固定し、またその制動を解除してその回転を許容するものであるから、ブレーキ機構BKを係合動作させ、あるいは解放動作させることに伴って回転数が変化し、それに伴う慣性トルクが発生する可能性がある。その慣性トルクは、運転モードの切り替えに伴うショックの要因となるので、可及的に低減することが好ましい。そのためには、例えば図7に示すように、ブレーキ機構BKに対して直列に一方向クラッチFを設けることが好ましい。すなわち、前記サンギヤSrとブレーキ機構BKとの間に一方向クラッチFを介装する。その一方向クラッチFは、サンギヤSrに対してこれをエンジン1の回転方向と同方向に正回転させるトルクが作用した場合に係合し、これは反対方向にトルクが作用した場合に解放するクラッチである。なお、図7における他の構成は、図1ないし図3に示す構成と同様であるから、図7に図1ないし図3と同様の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように一方向クラッチFを設けたハイブリッド駆動装置では、運転モードの切り替えを以下に説明するように実行する。図8はその切替制御の一例を説明するためのフローチャートであって、所定の短時間毎に繰り返し実行される。先ず、現在の運転モードがODモードか否か、あるいはODモードへの切替制御中か否かが判断される(ステップS1)。これは、例えばブレーキ機構BKの制御指令信号の状態に基づいて判断することができ、あるいはブレーキ機構BKが油圧式のものであれば、その油圧に基づいて判断することができる。
ステップS1で肯定的に判断された場合には、現在の運転モードがODモードであり、あるいはODモードへの切替制御中であり、この場合、ブレーキ機構BKを解放して設定する通常モードへの切替要求が有るか否かが判断される(ステップS2)。通常モードでは、前述したように、第1モータ・ジェネレータ2を正転回生させることが燃費の点で好ましいから、ステップS2の判断は、エンジン回転数もしくは動力分配機構4の入力回転数と出力軸5の回転数との比が、シングルピニオン型遊星歯車機構41もしくはダブルピニオン型遊星歯車機構42のギヤ比(サンギヤの歯数とリングギヤの歯数との比)で決まる判断基準値以上となったか否かを判断することによって行うことができる。
このステップS2で肯定的に判断された場合に、ODモードから通常モードへの切替制御を行うことになり、先ず、第1モータ・ジェネレータ2のトルクを負方向(エンジン1もしくはキャリヤCfのトルクの方向とは反対の方向)に徐々に増大(スイープアップ)させる(ステップS3)。図6に示すように、第1モータ・ジェネレータ2をモータとして機能させてそのトルクを負方向に増大させると、ダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるサンギヤSrにはこれを逆回転させるトルクが作用する。これに対して一方向クラッチFは、サンギヤSrに正回転方向のトルクが作用した場合に係合し、これとは反対方向のトルクによって解放するように構成されているから、第1モータ・ジェネレータ2のトルクを上記のように制御することにより、一方向クラッチFが解放してサンギヤSrが逆回転し始める。
なお、第1モータ・ジェネレータ2をモータとして機能させて負方向にトルクを出力させると、出力軸5の正回転方向のトルクが増大することになる。これは、車両としての駆動トルクの増大になり、違和感の要因となることが考えられるので、駆動トルクの変化を抑制するようにエンジントルクまたは第2モータ・ジェネレータ3のトルクを制御する(ステップS4)。すなわち、エンジントルクを第1モータ・ジェネレータ2の負方向のトルクの増大に応じて低減させ、あるいは第2モータ・ジェネレータ3による回生トルクを第1モータ・ジェネレータ2の負方向のトルクの増大に応じて制御する。
ついで、ブレーキ機構BKの回転側の要素の回転数が予め定めた所定値−α(α>0)以下か否かが判断される(ステップS5)。その回転側の要素は、ブレーキ機構BKにおいて制動力が付与される回転部材であり、したがってその回転数は、前述した各例では、ダブルピニオン型遊星歯車機構42におけるサンギヤSrの回転数であってもよい。このステップS5で否定的に判断された場合にはステップS3に戻って第1モータ・ジェネレータ2の負方向のトルクのスイープアップを継続する。これとは反対にステップS5で肯定的に判断された場合には、第1モータ・ジェネレータ2の回転数をフィードバック制御する(ステップS6)。そのフィードバック制御における目標回転数は、その時点の運転状態における同期回転数(=0)から所定値αを減じた回転数である。
その所定値αは、制御の容易性や応答性などを考慮して実験的に、あるいはシミュレーションに基づいて任意に設定でき、したがってこの発明において「同期回転数になる」、あるいは「同期する」とは、互いに連結される部材の回転数差がゼロになること、およびその回転数差が所定値α以内であることの両方を含み、両者の回転数が完全に一致することに限られない。これは、以下に説明するこの発明の他の例においても同様である。
この状態でブレーキ機構BKを解放させる(ステップS7)。したがって、サンギヤSrが逆回転していて一方向クラッチFが解放している状態でブレーキ機構BKを解放するので、ブレーキ機構BKの解放に伴う回転数の変化やトルクの変化が生じない。そのため通常モードへの切り替えに伴うショックを防止もしくは抑制することができる。また、ブレーキ機構BKをドグクラッチ機構によって構成した場合、その解放時にトルクが掛かっていないことにより、解放動作させる際の摩擦力が小さく、そのために解放動作のための荷重を相対的に小さくでき、そのために例えばブレーキ機構BKを動作させるアクチュエータを小型化できる。
そして、ブレーキ機構BKが解放させられたことによって通常モードへの切替終了の判定が行われ、また通常モードでの第1モータ・ジェネレータ2の回転数のフィードバック制御が開始され(ステップS8)、その後、リターンする。このフィードバック制御における目標回転数は、上記のステップS6でのフィードバック制御とは異なり、エンジン1を最適燃費で運転するための回転数や加減速時の制御で設定される目標回転数などである。
一方、通常モードが設定されていることによりステップS1で否定的に判断された場合には、ODモードへの切替要求があるか否かが判断される(ステップS9)。また、ODモードへの切替制御中であってかつ通常モードへの切替要求がないことによりステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS9に進んでODモードへの切替要求が有るか否かが判断される。この場合、ODモードへの切替要求が継続しているか否かの判断になる。
ODモードへの切替要求がないことによりステップS9で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。これとは反対にODモードへの切替要求があることによりステップS9で肯定的に判断された場合には、ブレーキ要素回転数が前述した所定値−αより大きいか否か、言い換えれば、正回転方向に高回転数か否か(逆回転方向には低回転数か否か)が判断される(ステップS10)。このステップS10で肯定的に判断された場合には、ブレーキ機構BKを同期させるために、ブレーキ要素の回転数合わせが実行される(ステップS11)。すなわち、ブレーキ機構BKにおける回転側の部材(上記の各具体例ではサンギヤSr)の回転数が同期回転数に対して所定値α、低回転数となるよう制御する。これは、前述した第1モータ・ジェネレータ2を逆回転方向に力行させることにより実行できる。
ODモードへの切り替えの際と同様に、第1モータ・ジェネレータ2の出力トルクを負方向に増大させると、これが駆動トルクの変化要因となるので、駆動トルクを変化させないようにエンジントルクもしくは第2モータ・ジェネレータ3のトルクが制御される(ステップS12)。この制御は、前述したステップS4での制御と同様である。
ついでブレーキ機構BKが係合制御される(ステップS13)。なお、ブレーキ要素の回転数が同期回転数に対して所定値−α以上低い回転数(逆回転方向に大きい回転数)であることによりステップS10で否定的に判断された場合にもステップS13に進み、ブレーキ機構BKが係合させられる。前述したように、ブレーキ機構BKの回転側の部材(ブレーキ要素)は、同期回転数に対して負方向の回転数となっているので、一方向クラッチFが解放しており、したがってブレーキ機構BKを係合させても一方向クラッチFが空転し続けるだけであり、特に回転数の変化や駆動トルクの変化は生じない。
ついで、第1モータ・ジェネレータ2の負方向のトルクを徐々に低下させる(ステップS14)。すなわち、スイープダウンさせる。この場合も、第1モータ・ジェネレータ2の負方向のトルクの低下が、駆動トルクを低下させる要因となるので、駆動トルクの変化を抑制する方向にエンジントルクが補正され、あるいは第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクが補正される(ステップS14)。これらの補正制御は、第1モータ・ジェネレータ2のトルクの低下に応じて行うことができる。
上記のように第1モータ・ジェネレータ2のいわゆる負トルクをスイープダウンすることにより、そのトルクが“0”になったか否かが判断される(ステップS16)。このステップS16で否定的に判断された場合には、ステップS14に戻って第1モータ・ジェネレータ2の負トルクのスイープダウンを継続する。これとは反対にステップS16で肯定的に判断された場合には、ODモードへの切替終了の判定が行われ、同時にODモードでの制御が開始され(ステップS17)、その後、リターンする。
すなわち、第1モータ・ジェネレータ2の負トルクをスイープダウンしている状態では、ブレーキ機構BKが係合し、かつ一方向クラッチFが空転している状態であり、したがって前記ダブルピニオン型遊星歯車機構42のサンギヤSrには、第1モータ・ジェネレータ2のトルクが作用している。そして、第1モータ・ジェネレータ2の負トルクの低下によりサンギヤSrの逆回転方向の回転数が次第に低下し、ついにはその回転数が“0”になると、一方向クラッチFがトルクを持たずに係合する。その状態で、第1モータ・ジェネレータ2の負トルクを“0”にすると、第1モータ・ジェネレータ2に替わってブレーキ機構BKがトルクを受け持ち、サンギヤSrが固定状態に維持される。その場合、一方向クラッチFにトルクが作用し始めるものの、サンギヤSrなどの回転数は変化しないので、ショックが防止もしくは抑制される。
上述した通常モードからODモードへの切り替えの際の挙動について更に説明すると、通常モードでは、ブレーキ要素回転数が前記所定値−αより高回転数になっており、この状態でODモードへの切替制御が開始される。これは、図9に示すタイムチャートにおけるt1時点である。また、この状態を図10の(a)に動力分配機構4についての共線図で示してある。制御開始に伴って先ず、第1モータ・ジェネレータ2のトルクTgを制御してブレーキ要素の回転数合わせが実行される。これは、図8に示すステップS11での制御であり、したがって図8には、図9と同様に“t1”の符号を併記してある。
図9に示すように、第1モータ・ジェネレータ2の負のトルクTgの制御に伴って、駆動トルクの変化を抑制するために、エンジントルクTeが低下制御され、また、第2モータ・ジェネレータ3のトルク(回生トルク)Tmが増大制御される。これらの制御に伴ってブレーキ機構BKの回転数Nbおよびエンジン回転数Neが低下し、ブレーキ機構BKの回転数Nbは負の回転数になる。この状態を図10の(b)に共線図で示してある。ブレーキ機構BKの回転数Nbが負回転数であることにより一方向クラッチFは解放しており、この状態でブレーキ機構BKが係合させられる。
その後、第1モータ・ジェネレータ2の負トルクがスイープダウンさせられる。これは、図9のタイムチャートにおけるt2時点であり、図8に“t2”の符号を併記してある。第1モータ・ジェネレータ2の負トルクを変化させることに併せてエンジントルクTeと第2モータ・ジェネレータ3のトルクとが補正される。図9に示す例では、エンジントルクTeが低下させられ、第2モータ・ジェネレータ3のトルク(回生トルク)Tmが低下させられる。
その過程で一方向クラッチFが係合してブレーキ機構BKにトルクTbが作用し始め、それに伴ってブレーキ回転数Nbがゼロになり、またエンジン回転数NeがODモードでの回転数に低下する。その状態で、ブレーキ機構BKで受け持つ負のトルクTbが次第に増大し、ついにはブレーキ機構BKが第1モータ・ジェネレータ2に替わってサンギヤSrのトルクを全て受け持つので、第1モータ・ジェネレータ2のトルクTgがゼロになる。そして、ODモード切替終了の判定が成立する。これは、図9のt3時点であり、また、図10の(c)に示す状態である。なお、図8に図9と同様の“t3”の符号を併記してある。
上述したように、ブレーキ機構BKによって制動する場合、事前に同期させる制御を行うので、ブレーキ機構BKを係合させることにより、あるいは解放させることにより運転モードを切り替える場合に駆動トルクの変化が殆ど生じず、ショックのないスムースな切り替えを行うことができる。また特に、上述したように一方向クラッチFを直列に配置することにより、同期のための制御が容易になる。また、ODモードへの切替終了を第1モータ・ジェネレータ2のトルクがゼロになることにより判定するので、ODモードへの切替終了を確実かつ容易に判定することができる。
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図8に示すステップS13の制御を実行する機能的手段が、この発明における制動制御手段に相当し、ステップS6の制御を実行する機能的手段が、この発明における制動解除制御手段に相当する。さらにステップS17の制御を実行する機能的手段が、この発明におけるモード切替判定手段に相当する。
なお、この発明における運転モードを切り替えるための制動機構の係合・解放の際の同期制御は、前述した一方向クラッチを備えていない図1ないし図5の構成を対象として実行することができ、その場合も第1モータ・ジェネレータによって回転数を同期させるように制御すればよい。
1…エンジン、 2…第1モータ・ジェネレータ、 3…第2モータ・ジェネレータ、 4…動力分配機構、 5…出力軸、 7…駆動輪、 11…スリーブ(円筒部材)、 12…ドライブギヤ、 12…入力軸、 13…第1ケース、 17…摩擦板、 18…第2ケース、 23…シリンダ部、 24…ピストン、 26…駆動軸、 28…ドリブンギヤ、 32…電磁アクチュエータ、 41…シングルピニオン型遊星歯車機構、 42…ダブルピニオン型遊星歯車機構、 Op…オイルポンプ、 F…一方向クラッチ。