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JP4873433B2 - 油入電気機器の診断方法 - Google Patents
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Description

この発明は、油入電気機器の硫化腐食に基づく不良発生を診断する方法に関する。
油入変圧器などの油入電気機器は、その絶縁油として硫黄成分を含むものがある。その場合、硫黄成分と油中の銅部品とが反応して導電性の硫化銅が生成し、絶縁破壊を生じるなどの問題があることが知られている。しかしながら、この硫化銅の生成メカニズムの詳細はわかっていない。また、既設機器を停止せずに硫化銅の生成による油入電気機器の異常を診断することは難しい。そこで硫化腐食が生じにくい絶縁油の選定や硫黄化合物の除去技術によって硫化銅の生成を生じにくくすることが行われている。
例えば、絶縁油ついて下記の日本特許文献1に硫化腐食が発生しにくい絶縁油の選定方法が示されている。一定量の絶縁油と所定の表面積を有する銅板とを容器に封入して、所定の温度で所定の時間加熱した後、絶縁油中に含まれる油中溶解銅及び硫酸イオンの含有率を測定し、それぞれの含有率の和により絶縁油の硫化腐食性を診断する。
また、ある種の物質を検出すること油入電気機器の異常を診断方法する方法が知られている。例えば、下記の日本特許文献2には、運転中の平常油入電気機器からは検出されず、過熱や放電異常時のみに検出されやすい酢酸[CHCOOH]、3ペンタノン[CHCHCOCHCH]、2.5ジメチルフラン[CO]、ブチルアルデヒド[CHCHCHCHO]、2メトキシエタノール[C]、メタンチオール[CHSH]、ジメチルサルファイド[(CH)S]、アンモニア[NH]、1.3ジアジン[C]、メチルビニルアセチレン[C]、2メチル1.3ブタジエン[C]の検出の有無から、機器内部の過熱異常又は放電異常を診断する方法が示されている。
また、下記の日本特許文献3には、油中に含まれる二酸化炭素[CO]、一酸化炭素[CO]、メタン[CH]、水素[H]、エタン[C]、エチレン[C]、アセチレン[C]などの各種ガス量を、油入変圧器やリアクトル、自動電圧調整器等の油入電気機器、油浸ケーブル等の劣化や異常の状況を示すバロメータとする診断方法が示されている。
また、下記の日本特許文献4や下記の日本特許文献5には、ヒドロキシメチルフルフラールやフルフラールを検出して絶縁紙の劣化指標とする油入変圧器の診断方法が示されている。
また、下記の日本特許文献6には、油入電気機器の流動帯電を診断するために、油中の硫黄化合物やその生成物を検出する方法が示されている。
特開平7−335446号公報 特開平9−72892号公報 特開2000−241401号公報 特開平5−315147号公報 特開平8−124751号公報 特開2005−223104号公報
油入電気機器の絶縁油に含まれる硫黄成分と油中の銅部品とが硫化銅を生成することによる油入電気機器の異常を診断するには、特許文献1のように銅板と絶縁油とを加熱する処理が必要であり手間や時間がかかった。また銅板と絶縁油とを反応させるために、診断の精度を向上するためには、十分な量の絶縁油を必要とした。また、特許文献2〜6のように種々の物質を検出して油入変圧器の診断方法が示されているが、これらによって硫化銅を生成することによる油入電気機器の異常を診断することはできなかった。
そこで、本発明は硫化銅を生成することによる油入電気機器の異常を微量の絶縁油を用いても精度よく診断できる方法を実現する。
本発明の油入電気機器の診断方法は、絶縁油中に銅部品が設置された油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法であって、絶縁油中にビベンジルおよびジベンジルスルフィドのいずれかの化合物を検出し、その化合物の検出量に応じて前記油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法とした。
硫化銅を生成することによる油入電気機器の異常を特定の物質の検出により診断できるようにしたため、微量の絶縁油を用いても精度よく異常を診断できる。このため、既設の油入電気機器から微量の絶縁油を抜き取って診断できるようになり、油入電気機器を停止せずに診断することが容易となる。
本実施の形態1の油入電気機器の診断方法の検出物質の一部の構造式である。 本実施の形態1の油入電気機器の診断方法を決定するために行った実験結果を示す表である。 本実施の形態1の油入電気機器の診断方法の一例を示すグラフである。 本実施の形態2の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。 本実施の形態2の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。 本実施の形態2の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。 本実施の形態3の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。 本実施の形態3の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。
実施の形態1.
本発明の診断方法が対象とする油入電気機器は、絶縁油を入れた容器と、その絶縁油中に浸漬された銅や銅合金を有する銅部品を備えるものである。例えば、銅からなるコイルと、そのコイルに巻かれた絶縁紙とを有する変圧器である。また絶縁油は例えば日本工業規格JIS C 2320で示されるような絶縁油である。
本実施の形態1の油入電気機器の診断方法はジベンジルジスルフィドなどのベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出することによって油入電気機器が異常であることを診断する診断方法である。図1は本実施の形態1の油入電気機器の診断方法の検出物質である硫黄化合物に結合したベンジル基の部分を示す構造式である。以下に詳細を説明する。
油入電気機器の絶縁油に硫黄を含む成分があると銅と反応して導電性の硫化銅が生じて絶縁不良を生じる問題が知られている。しかし、絶縁油中のどのような硫黄物質が硫化銅の生成に影響が大きいかは知られてなかった。そこで、硫化銅の生成に影響が大きい物質が特定できれば、その物質の存在のみを検出して、硫化銅の生成に基づく油入電気機器の異常が診断できると考え下記のような実験を行った。
絶縁油に含まれる硫化化合物は種々であるが、ヘキシルメルカプタン、ジヘキシルスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ヘキシルチオフェン、ベンジルメルカプタン、ジベンジルスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジベンジルスルホキシド、を選定してこれらの硫化化合物と銅との反応性を調べた。まず、これらの化合物をそれぞれJIS C 2320の2種3号油の絶縁油であるアルキルベンゼン油に溶解した試料油を作成する。各化合物を溶解させる量は溶解した時点で硫黄の質量濃度が30ppmとなるように量を調整した。次に各試料油を4g秤量し、10cmのサンプル瓶に封入した。各試料油とともにサンプル瓶に封入される気相部分は空気とした。さらに、このサンプル瓶に銅板(15mm×20mm、厚さ0.2mm、約0.5g)を入れ、銅板を試料油に浸漬した。このサンプル瓶を135℃で72時間加熱し、銅板の変色により銅との反応性を評価した。なお、この変色は硫化銅の生成によるものであり、変色が強いものほど銅との反応性が高く、硫化銅が多く生成することを示す。
図2は本実施の形態1の油入電気機器の診断方法を決定するために行った実験結果を示す表である。ベンジルメルカプタンとジベンジルジスルフィドがもっとも変色が強く、従って硫化銅の生成量が多い。また、ジベンジルスルフィドとジベンジルスルホキシドでも変色が生じて、硫化銅の生成が見られた。一方、ヘキシルメルカプタン、ジヘキシルスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ヘキシルチオフェンは変色がほとんどなく、硫化銅の生成への影響が小さいことがわかった。
ヘキシルメルカプタン、ジヘキシルスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ヘキシルチオフェンはアルキル基に硫黄が結合した硫化化合物であり、これらは硫化銅の生成への影響が小さい。一方、ベンジルメルカプタン、ジベンジルスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジベンジルスルホキシドはベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物であり、銅との反応性が高いことがわかった。
従って、絶縁油中のベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出すれば、その絶縁油が入った油入電気機器は硫化銅による絶縁不良が生じやすいと判断できる。そこで、本実施の形態1の油入電気機器はベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出し、その化合物の検出量に応じて前記油入電気機器の油入電気機器の異常を診断する。
絶縁油中の硫黄化合物の検出方法は、たとえば、ガスクロマトグフラフ質量分析法GC−MS(Gas Chromatograph−Mass. Spectrometry)を用いることにより可能である。検出する物質が特定されているので、少量の絶縁油であっても検出が可能である。
図3は本実施の形態1の油入電気機器の診断方法の硫黄化合物の検出手段の一例であるGC−MSの測定結果を示すグラフである。図はJIS C 2320の1種4号油の鉱油からなる絶縁油にジベンジルジスルフィド(以下ではDBDSと省略する。)が含まれていた場合にGC−MSで測定されるマスクロマトグラムを示している。図において、横軸はガスクロマトグフラフのカラムに導入してからの経過時間であり、縦軸は検出信号強度である。縦軸は最も信号強度の強い値を100とした任意単位で示してある。図に示されるように絶縁油中にジベンジルジスルフィドが入っている場合は絶縁油をカラムに導入してから特定の時間Tの経過後に、ベンジル基の質量電荷比の検出信号強度にピークが現れる。特定の時間Tは物質によって異なる時間であり、また測定機や測定条件にも依存する時間である。なお、図においてDBDSのピークより早い時間にピークQが表れているが、硫黄化合物ではなく本発明に関係しない物質によるものである。また、ピークQやDBDSのピークに重なってブロードな信号は、鉱油に含まれる成分によるノイズであり、これらも硫黄化合物によるものではない。
既設の油入電気機器よりその絶縁油を少量抜き取り、上で述べたような検出方法により、その絶縁油中のベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出し、その化合物の検出量に応じてその油入電気機器が異常であるか、または異常を生じる可能性が高いことを診断できる。
異常の判断は、ベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出したことによってもよいし、それらの化合物が特定の濃度以上含有することによってもよい。ベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物の濃度が非常に低い場合、油入電気機器の構成によっては硫化銅が絶縁不良を生じるまで影響しないことが考えられる。つまり、それらの硫黄化合物の絶縁油中の許容濃度は変圧器の絶縁構造に依存するので、特定の濃度以上含有すると診断がより正確となる。
本実施の形態1の診断方法によれば、あらかじめ油入電気機器に入れる絶縁油中の硫黄化合物を測定したり、その硫黄化合物量の時間的変化を計測したりする必要がない。このため、既設の油入電気機器に対する診断が容易である。
一方、油入電気機器に入れる前の未使用の絶縁油中のベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物の濃度を測定したり、その硫黄化合物の濃度の時間的変化を計測したりしてもよい。これらの硫黄化合物は油入電気機器に絶縁油を入れる時点で混入しているものと考えられる。油入電気機器に入れる前にこれらの硫黄化合物を検出すれば、そのような絶縁油を油入電気機器に入れることを事前に防止できる。また、後述するように、これらの硫黄化合物は銅と反応すると考えられる。硫化銅の生成に伴い、これらの硫黄化合物は減少すると考えられるので、初期の硫黄化合物の濃度と、使用中の硫黄化合物の濃度とから、生成した硫化銅を推定して異常を診断することも可能である。
実施の形態2.
本実施の形態2の油入電気機器の診断方法は絶縁油中にビベンジルおよびジベンジルスルフィドのいずれかの化合物を検出し、その化合物の検出量に応じて油入電気機器の異常を診断する診断方法である。以下に詳細を説明する。
絶縁油中にジベンジルジスルフィドなどのベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物が存在した場合、銅との反応によって硫化銅の生成が起こる。この反応によって硫化銅の生成の際に生じる化合物を検出すれば、間接的に硫化銅の生成を知ることができる。しかしながら、従来、硫化銅が生成するメカニズムの詳細が不明であったため実現されなかった。
銅とベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物との反応による生成物の研究をすすめるうちに、その反応によってビベンジルおよびジベンジルスルフィドが生じることが判明した。その反応メカニズムは、まず第1段階としてベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物が銅板に吸着する反応が起こり、次いで第2段階として硫黄化合物が銅と反応して硫化銅が生じるとともにベンジルラジカル及びベンジルスルフェニルラジカルが生成する反応が起こると考えられる。
第2段階で生成したベンジルラジカルは、ベンジルラジカル同士が反応し、ビベンジルを生成する。ベンジルスルフェニルラジカルは水素ラジカルと反応しベンジルメルカプタンを、ベンジルラジカルと反応しジベンジルスルフィドを、またベンジルスルフェニルラジカル同士と反応しジベンジルジスルフィドを生成する。
これらの化合物でベンジルメルカプタンは変圧器内のように銅が共存する環境下では容易にジベンジルジスルフィドに酸化され、元の化合物と見分けがつかなくなるために診断には適さない。同様にジベンジルジスルフィドも既に変圧器内に生成した硫化銅の診断には適さない。よって、ビベンジルおよびジベンジルスルフィドが診断には好適である。
これらの硫化銅が生成する際に生成されるビベンジルおよびジベンジルスルフィドは、GC−MSによって検出することが可能である。
次に、ベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物と銅とが反応してビベンジルおよびジベンジルスルフィドが生成することについて実験した結果についてさらに詳細を述べる。
まず、銅と反応性の高い硫黄化合物を含有する絶縁油としてDBDSをJIS C 2320の2種3号の絶縁油であるアルキルベンゼン油に溶解して試料油を作製した。DBDSは和光純薬製の試薬を用いて、試料油中の硫黄の質量濃度が30ppmとなるようにした。
次に、この試料油を5gと銅板(厚さ0.2mm)を約0.5gとを10cmのサンプル瓶に密封する。このサンプル瓶を150℃で所定の時間加熱をした。加熱によって硫化銅の生成が加速される。生成した硫化銅は銅板の表面に付着しているので、加熱前後の銅板の重量変化から生成した硫化銅量を求めることができる。
次に、ビベンジルおよびジベンジルスルフィドの絶縁油中濃度をGC−MS装置により求める。以下では、ビベンジルを例にとって手順の詳細を述べる。加熱後の試料油を秤量し、さらにヘキサンでGC−MS分析において適度な信号強度が得られるように希釈する。ここではヘキサンを用いたが、アルキルベンゼン、ビベンジル及びDBDSが容易に溶解するならば他の溶剤でも構わない。この溶液1mmをガスクロマトグラフに注入する。
ビベンジル等の定量にはガスクロマトグラムのピーク面積値を用いて定法により求める。データ解析はトータルイオンクロマトグラムより求めても構わないし、選択的イオンモニタリング法により得られたピーク面積を用いても構わない。
図4および図5は本実施の形態2の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフである。図4および図5はGC−MSのガスクロマトグラムである。図5は図4の点線の四角部分の範囲を拡大した図である。図4では添加したDBDSのピークが見られる。図5ではビベンジルのピークBiBzが見られる。このピーク面積と試料油重量から油中のビベンジル濃度を算出できる。なお、このビベンジルのピークは未使用のアルキルベンゼン油や、DBDSを添加せずに銅を入れて加熱したアルキルベンゼン油には見られないことから、DBDSと銅との反応で生成したものと推定される。
図6は本実施の形態2の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフであり、上記方法により求めた絶縁油中ビベンジル量と銅板の質量変化から求めた硫化銅生成量の関係を示すものである。この図より、絶縁油中のビベンジル濃度と硫化銅の生成量とがおおよそ比例していることがわかる。従って、絶縁油中のビベンジルを定量することで生成した硫化銅量を推定することができる。
ビベンジルは通常、未使用の絶縁油には入っていない物質であるので、既設の油入電気機器から絶縁油を少量抜き取り、ビベンジルを検出することにより硫化銅が生成していると推定して、油入電気機器の異常を診断することができる。また、ジベンジルスルフィドについてもビベンジルと同様にして油入電気機器の異常を診断に用いることができる。
ビベンジルとジベンジルスルフィドは、通常、未使用の絶縁油には入っていないので、これらの物質とベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物と同時に検出することによって、油入電気機器の異常を診断してもよい。両者が検出されれば、硫化銅が生成している可能性がさらに高いと推定されるので信頼度の高い診断ができる。
本実施の形態2の診断方法によれば、あらかじめ油入電気機器に入れる絶縁油中の化合物を検出したり、その化合物量の時間的変化を計測したりする必要がない。このため、既設の油入電気機器に対する診断が容易である。
一方、油入電気機器に入れる前の未使用の絶縁油中のビベンジルやジベンジルスルフィドの濃度の時間的変化を計測して、その時間的変化から油入電気機器の異常を診断してもよい。これらの化合物は硫黄化合物は銅との反応の際に生成すると考えられるで、硫化銅の生成量が増えるのに伴って増加すると考えられる。従ってその濃度変化量から生成した硫化銅を推定して異常を診断することも可能である。
実施の形態3.
本実施の形態3も、上記の実施の形態のようにベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物やビベンジルおよびジベンジルスルフィドのいずれかの化合物を検出することにより異常を診断する油入電気機器の診断方法である。本実施の形態3の油入電気機器の診断方法は、絶縁油とアルミナまたはシリカゲルとを接触させる工程と、絶縁油と接触後のアルミナまたはシリカゲルを溶媒に浸漬する工程と、アルミナまたはシリカゲルを浸漬した溶媒をGC−MS法により分析してビベンジル、またはベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物のいずれかを検出し、ビベンジル、または硫黄化合物の検出量に応じて異常を診断する工程とを有する。ビベンジルの検出量と硫黄化合物の検出量とに応じて異常を診断してもよい。
実施の形態1の図3のように、絶縁油としてJIS C 2320の1種4号油を用いた場合、GC−MS分析で、DBDSなどベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物のピークの位置と絶縁油に含まれる硫化銅の生成に関与しない成分からの信号とが重なる。また、ビベンジルの検出されるピーク位置にも信号が重なり、これらの物質の濃度が低いと検出できない問題が生ずる。
そこで、特に鉱油の絶縁油を用いる場合は、予めビベンジルやベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を吸着剤によって絶縁油に含まれる硫化銅の生成に関与しない成分と分離し、その後にガスクロマトグラフ/質量分析法により分析をするとよい。その場合の吸着剤として、アルミナ吸着剤またはシリカゲルを用いることができる。以下ではアルミナ吸着剤を用いた例について説明する。
まず、JIS C 2320の1種4号鉱油であり硫化銅の原因となる硫黄を含有しない絶縁油に、硫黄の質量濃度が30ppmとなるようにDBDSを混合し試料油を作製する。DBDSは和光純薬製の試薬を用いた。この試料油を5gと銅板(厚さ0.2mm、質量約0.5g)とを10cmのサンプル瓶に密封する。このサンプル瓶を150℃で所定の時間加熱をした。この加熱により硫化銅が生成し、加熱前後での銅板の質量変化から生成した硫化銅量を求めることができる。
加熱後の鉱油200mmとヘキサン200mmとを混合し、この混合液をアルミナ吸着剤が充填されカラムに通液する。充填されたアルミナ吸着剤は市販されているもので、粒径が10〜100ミクロン程度のものである。カラムには定法により活性化したアルミナ吸着剤約100mgが充填されている。
ビベンジルおよびジベンジルスルフィドはアルミナに吸着されカラム内に残留し、鉱油の主成分であるパラフィンやナフテンは吸着されること無くカラムから流出する。しかしながら、パラフィンやナフテンも残留するものがあり、この場合はさらにヘキサンでカラムを洗浄することにより除去することができる。
ヘキサンによる洗浄は十分にすべきではあるが、過剰であると目的とするビベンジルなども流出することがあるために、洗浄に適したヘキサン量をアルミナの乾燥度などアルミナの質に応じて事前に決定しておく事が望ましい。
次に、トルエンなどの溶媒をカラム内に通液する事により、この溶媒中に目的とする成分を回収することができる。溶出に用いるものはトルエンに限らない。ジクロロメタン、メタノール等の単一の液体を用いることもできるし、トルエン/ヘキサン溶液のような混合溶剤も用いることができる。
以上の手順を経て得られたビベンジルなどを含む溶剤をGC−MS分析することにより、ビベンジルやベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物の少なくともいずれかを検出して、油入電気機器の異常を診断する。
図7および図8は本実施の形態3の油入電気機器の診断方法の実験結果を示すグラフであり、トルエン溶液のクロマトグラムを示している。図8は図7の点線で囲まれた領域を拡大したものである。図7を図3と比較すると鉱油に含まれる硫化銅の生成に関与しない成分の信号が減少し、DBDSの信号が明確に検出できることが分かる。また、図8ではビベンジルのピークBiBzが明瞭である。図3のように鉱油に含まれるその他の成分のピークが大きい場合にはこのビベンジルのピークBiBzは検出できない。
上記の手順では吸着剤にアルミナを使用したが、シリカゲルを用いても検出精度が向上する同様の効果がある。また、ビベンジルやDBDSに関して検出精度が向上することを述べたが、ジベンジルスルフィドをはじめ他のベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物に対しても検出精度を向上させることができる。
以上のことから、絶縁油とアルミナまたはシリカゲルとを接触させ、絶縁油と接触後のアルミナまたはシリカゲルを溶媒に浸漬し、アルミナまたはシリカゲルを浸漬した溶媒をGC−MS法により分析してビベンジル、またはベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物のいずれかを検出すれば、ビベンジルや硫黄化合物の検出精度が向上するので油入電気機器の異常を精度よく診断することができる。

Claims (5)

  1. 絶縁油中に銅部品が設置された油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法であって、前記絶縁油中にビベンジルおよびジベンジルスルフィドのいずれかの化合物を検出し、前記化合物の検出量に応じて前記油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法。
  2. 絶縁油中に銅部品が設置された油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法であって、前記絶縁油中にベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出し、前記硫黄化合物の検出量に応じて前記油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法。
  3. 絶縁油中に銅部品が設置された油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法であって、前記絶縁油中にビベンジルと、前記絶縁油中にベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物とを検出し、ビベンジルと前記硫黄化合物との検出量に応じて前記油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法。
  4. 絶縁油中に銅部品が設置された油入電気機器の異常を診断する油入電気機器の診断方法であって、絶縁油とアルミナまたはシリカゲルとを接触させる工程と、前記絶縁油と接触後の前記アルミナまたは前記シリカゲルを溶媒に浸漬する工程と、前記アルミナまたは前記シリカゲルを浸漬した前記溶媒を分析してビベンジルまたはベンジル基に硫黄が結合した硫黄化合物を検出し、ビベンジルまたは前記硫黄化合物の検出量に応じて前記油入電気機器の異常を診断する工程とを有することを特徴とする油入電気機器の診断方法。
  5. 化合物の検出方法がガスクロマトグラフ質量分析法によることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の油入電気機器の診断方法。
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