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JP4948380B2 - 絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法 - Google Patents
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本発明は、絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法に関する。
油入変圧器や油入リアクトル等の油入電気機器は、タンク内に鉄心および巻線が収容され、巻線部分は導体表面を絶縁紙等の固体絶縁物で絶縁された構成であり、タンク内には絶縁耐力の確保と巻線、鉄心の冷却を目的とした絶縁油が充填され、タンク内部の発熱源である鉄心および巻線と冷却器との間を強制的に絶縁油を循環させて冷却し、各部の温度が規定の範囲内に抑えられる構成となっている。
このような構成の油入電気機器においては、巻線の表面を絶縁油が流れることにより、固体絶縁物と絶縁油との界面に流動帯電現象が発生し、固体絶縁物の表面に負電荷が蓄積し、その部位の直流電位が上昇し、電位が限界を超えると部分放電が発生し、これがトリガとなって、機器内部において交流絶縁破壊に至る危険性がある。このようなことから、油入電気機器においては、流動帯電現象が発生しないように内部を循環する絶縁油の流速を低速に設定して流動帯電現象の発生が抑制された構成となっている。
実際の油入電気機器では、停止することが難しいので、停止しなくても流動帯電性が把握できる方法として、絶縁油の帯電度を測定する試験が行われている。しかし、このような試験では、試料となる電気絶縁油は多くの油量を必要とし、評価試験自体にも長時間必要であり、さらに測定環境の影響を受けやすい等の問題点がある。さらに、長期間使用すると絶縁油は劣化されて帯電度が上昇するが、特に変圧器の高経年化が進むなか、絶縁油の酸化・熱劣化による変質が進んでおり、500kV変圧器における絶縁油の高帯電度化が進展し流動帯電現象が顕在化しつつある。
このような流動帯電現象対策として、特許文献1には、絶縁油の劣化防止のために、レジン含有量100ppm以下の精製鉱油を用いることが提案されている。
また、特許文献2には、電気絶縁油中に含まれるスルホキシド量を測定し、該スルホキシド量により電気絶縁油の劣化状態を評価する方法が報告されている。
一方、油入電気機器に使用される絶縁油は、鉱物油を精製したものであるため、その中には硫黄成分として0.1〜0.5%の硫黄化合物が含まれている。特許文献3には、この硫黄化合物と油の帯電度との関係が報告されており、それによれば、スルフィド類を添加した油を加熱するとスルフィド類の酸化生成物が生成し帯電度が増加する;スルフィドの酸化生成物であるスルホキシド類を添加した油の場合はスルフィドよりも高帯電化しやすい;スルホキシド類の酸化生成物であるスルホン類は加熱試験で高帯電度化現象がみられないことなどが報告されている。
特開2000−345177号公報 特開2001−006946号公報 特開2005−223104号公報
上記のように、絶縁油に含まれている硫黄化合物は、油の加熱劣化にともなって経時的に構造が変化していくが、帯電度は各硫黄化合物が示す帯電量の総和であり、新油中に含まれるスルフィドが起点となって硫黄化合物が酸化され、高帯電度化が進展する。更に酸化が進展すると、高帯電度を示さないスルホンや逆帯電を示すスルホン酸が生成する。図1は、酸素および銅触媒を含む系におけるオクチル系硫黄化合物の加速試験結果をデータで示したものであるが、スルフィドおよびスルホキシドを添加した油は正に帯電し、スルホン酸を添加した油は負に帯電する。
実際の油入電気機器では、新しく設置された油入電気機器が使用状態になると、使用経過とともに絶縁油の帯電度が増加することがわかっている。この要因としては、絶縁油に含まれる硫黄系微量成分が想定されており、絶縁油に含まれている全硫黄量は電量滴定法で定量できるものの、絶縁油中の各硫黄化合物を定量分析する手法はなく、分析法の開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、油入電気機器の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分を、簡便かつ高感度で測定することを可能にする、絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。そして、カチオン性色素であるエチルバイオレット(Ethyl Violet)が、弱酸性の条件下、スルホン酸型硫黄分と安定な青色の結合体を形成し、この結合体が無極性溶媒に溶解することから、絶縁油中の微量のスルホン酸型硫黄分であっても簡易な装置を用いて測定することが可能になることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)絶縁油試料を、弱酸性下で、エチルバイオレット溶液、水および無極性溶媒と接触せしめ、無極性溶媒相に生成する色を比色することで絶縁油中のスルホン酸型硫黄分を定量することを特徴とする絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
(2)アルキルベンゼンもしくは電気絶縁油の新油を添加した標準試料と比色して定量することを特徴とする前記(1)に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
(3)比色を吸光度測定によって行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
(4)標準試料がアルキルスルホン酸であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
(5)無極性溶媒がトルエンであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
本発明によれば、特殊な機器や高価な測定機器を必要とすることなく、ppmレベルで絶縁油中のスルホン酸型硫黄分を定量することができるため、少量の油量により容易に短時間に絶縁油の劣化状態を評価することができる。また本発明の方法を用いることにより、絶縁油の帯電診断の高精度化、高帯電化現象のメカニズムの解明、更にはそれで得られた知見を基に高帯電化現象を抑制することが可能になる。
図2は本発明の定量方法の標準的な操作工程を示すフローチャートである。
絶縁油中に含有されているスルホン酸型硫黄分は、図3に示すように、新油中に含まれているスルフィドが起点となり、酸化により生成するスルホキシドを経由して、あるいはスルフィドから生成すると推定される。スルフィド類の合計炭素数は2〜30の範囲にあることから、生成するスルホン酸の炭素数は推定で1〜15の範囲にあると考えられる。このスルホン酸型硫黄分は絶縁油中ではイオン化状態で存在している。
スルホン酸型硫黄分を含有する絶縁油に、酢酸バッファー等を加え、弱酸性下、エチルバイオレットを反応させると、絶縁油中のスルホン酸とエチルバイオレットが反応して安定な青色の結合体を形成する。エチルバイオレットは水溶性染料であるため、スルホン酸と反応していない過剰のエチルバイオレットは水相で青色を呈し、一方形成された結合体は非水溶性であるため、水には溶解しないが、無極性溶媒に溶解して該溶媒中で青色を呈する。したがって、溶媒の青色を指標に結合体を直接測定できる。
無極性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンなどが挙げられるが、結合体の溶解性・抽出性が良好である点からトルエンが好ましい。
弱酸性下に保持するバッファーとしては、無水硫酸ナトリウムと無水酢酸ナトリウムと酢酸を水に溶解させたものが好ましい。
本発明では弱酸性条件は、弱酸を溶液に添加することで達成できる。該弱酸としては、当該分野で知られたものからそれを選択して使用できるが、好ましくは容易に入手でき、さらに安価なものが望ましい。また安全の面を考慮して選択することが好ましく、希釈水溶液の形態で使用することができるものが好ましい。該弱酸としては、酢酸を好適に使用できる。弱酸性下の混合物中にエチルバイオレット溶液を加えると、安定な青色の結合体を形成する。一方、過剰の色素は水溶性であるので、無極性溶媒とともに水を添加し、絶縁油試料、エチルバイオレット、水および無極性溶媒を十分接触せしめ、過剰の色素を溶解した水相と、結合体を溶解した溶媒相とを分離する。
本発明のスルホン酸型硫黄分の定量方法では、スルホン酸は絶縁油中に存在しており、また絶縁油中には分析妨害物質が殆んど存在しないことから、EDTA(エチレンジアミンテトラ四酢酸ソーダ)等のキレート化剤を添加する必要がない。これに対し、水道水や工場排水などの水に含まれている陰イオン界面活性剤の分析では、水中にCaやMgなどのイオンが存在するため、これらのイオンが分析を妨害しないようにEDTAと反応させる(錯体を形成させる)必要がある。
無極性溶媒中に溶解した結合体は青色を呈しているので、無極性溶媒相に生成する色を比色することで絶縁油中のスルホン酸型硫黄分を定量することができる。比色は635nm付近の吸光度を測定することにより行うのがよい。分析装置は、吸光光度計、比色計などを利用することができる。
絶縁油試料において無極性溶媒相に生成する色を、標準試料のそれと比色することにより、絶縁油試料中のスルホン酸型硫黄分を定量することができる。標準試料としては、スルフィドから生成されるスルホン酸を想定すると、炭素数1〜15の範囲のアルキルスルホン酸が好適である。その中でも、オクチルスルホン酸は、スルフィドの炭素数と帯電度との関係を調査した際に最も高い帯電度を示すオクチルスルフィドの酸化物であり、このような高い帯電度を示す化合物を指標とすることにより、高帯電度化現象の診断および抑制対策を的確に行うことが可能になる。
スルホン酸型硫黄分を含有する絶縁油は、吸光度測定波長である635nm付近に吸光スペクトルを有しており、無極性溶媒に溶解する性質を有している。従って、標準試料において無極性溶媒相に生成する色を比色する場合は、油の影響による吸光度測定誤差を無くするために、標準試料とともに、絶縁油試料と同量の、アルキルベンゼンもしくは電気絶縁油の新油を添加するのがよい。アルキルベンゼンは、JIS C 2320:1999「電気絶縁油」に規定されている合成油であり、硫黄成分(特にスルフィド)を含有していないため、好ましく用いられる。アルキルベンゼンの代替として、酸化劣化がない電気絶縁油(新油)を用いることもできる。添加するアルキルベンゼンの種類は、直鎖形あるいは分岐鎖形のいずれでもよく、試料となる絶縁油の種類によって異なり一定しないが、合成油に用いるものなどの中から選択し、できるだけ絶縁油の炭素数と同程度の炭素数のものを添加するのがよい。
本発明の定量方法を個々の試験試料などに適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な物質に関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、当該分析分野で知られた、総説、成書などを参照することができる。
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(試薬の調製)
a.エチルバイオレット溶液
0.49gのエチルバイオレット(試薬・水質試験用)を1リットル(L)の蒸留水に溶解させた。
b.酢酸バッファー
800mlの蒸留水に142gの無水硫酸Naを溶解させた後、27.2gの無水酢酸Naと12mlの酢酸を添加した。得られた水溶液に蒸留水を加え、全体を1Lとした。
c.オクチルスルホン酸標準液
約20mgのオクチルスルホン酸(試薬)をエタノール(試薬S級)に溶解し、エタノールを用いて10mlに調整し、濃度約2000ppmのオクチルスルホン酸エタノール溶液を調製した。
(検量線作成)
上記で調製したオクチルスルホン酸標準液を、マイクロピペットを用いて0μl、10μl、20μl、50μl採取し、オクチルスルホン酸濃度がそれぞれ、0ppm、2.4ppm、4.8ppm、12.1ppm相当の溶液を調製した。
得られた溶液に各々、3mlのトルエン、1mlのアルキルベンゼン<アルキル基(側鎖)の炭素数が9〜17で主成分が12,14のもの>(または新油でも可)、0.5mlの酢酸バッファー、100μlのエチルバイオレット溶液、5mlの蒸留水を加え、10ml容の共栓付き試験管に入れて、約10秒間に良く振とうした後、静置した。静置後、水相とトルエン相が分離したらトルエン相を採取し、比色計(ユニメーターUM1)を用いて波長635nmにおける吸光度を測定した。その結果を表1に示す。
スルホン酸濃度に比例して吸光度が増加することがわかったので、スルホン酸濃度と吸光度の値をプロットし、これらの値を用いてスルホン酸濃度(ppm)と吸光度(μA)の関係式を求めると、図4の結果となり、直線性が得られることがわかった。
(試料油中のスルホン酸の定量)
共栓付き試験管に1mlの試料油、3mlのトルエン、0.5mlの酢酸バッファー、100μlのエチルバイオレット溶液、5mlの蒸留水を加え、約10秒間に良く振とうした後、静置した。静置後、水相とトルエン相が分離したらトルエン相を採取し、比色計(ユニメーターUM1)を用いて波長635nmにおける吸光度を測定した。
得られた吸光度測定値を図4の直線式に当てはめ、試料油中のスルホン酸を定量した。
表2に5種類の絶縁油(試料NO.1〜5)を用いて試験した結果を示した。
以上の結果から、簡易な吸光光度計を使用して絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量が可能であることが確認できた。
上記絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量法は、簡単な操作および安価な試薬の使用で、微量のスルホン酸の定量測定を可能としており、簡易な装置で定量が可能なこととあいまって、迅速かつ簡便である一方で、高感度のスルホン酸測定ができることから、油入電気機器の絶縁油の流動帯電を把握できる指標として用いることができる。
本発明は、高感度でありながら、簡便且つ安価な絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量法を提供するものであり、現在油入電気機器で課題となっている高帯電度化現象の診断および抑制対策に有用である。
オクチル系硫黄化合物の加速試験結果(酸素有・銅有)を示すグラフである。 本発明の定量方法の標準的な操作工程を示すフローチャートである。 絶縁油中に存在する硫黄化合物の分子構造を示す図である。 本発明の定量法を使用して作成したオクチルスルホン酸についての検量線を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 絶縁油試料を、弱酸性下で、エチルバイオレット溶液、水および無極性溶媒と接触せしめ、無極性溶媒相に生成する色を比色することで絶縁油中のスルホン酸型硫黄分を定量することを特徴とする絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
  2. アルキルベンゼンもしくは電気絶縁油の新油を添加した標準試料と比色して定量することを特徴とする請求項1に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
  3. 比色を吸光度測定によって行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
  4. 標準試料がアルキルスルホン酸であることを特徴とする請求項2又は3に記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
  5. 無極性溶媒がトルエンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁油中のスルホン酸型硫黄分の定量方法。
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