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JP4875588B2 - 丸棒材の鍛造方法 - Google Patents
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JP4875588B2 - 丸棒材の鍛造方法 - Google Patents

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この発明は、断面形状が多角形などの棒状素材から、丸溝を有する金型を用いて、断面形状が円形の丸棒材に仕上げる鍛造方法に関する。
断面形状が多角形などの棒状素材から丸棒材に鍛造する鍛造方法としては、開閉する一対の丸溝を有する金型の開作動時に、棒状素材を、その軸方向に送り込むとともに、軸心周りに所定の角度だけ回転させて、金型の閉作動により素材を圧下する鍛造を繰り返すスパイラル鍛造方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1において、図5(a)〜(c)は、前記棒状素材から、プレス(図示省略)の駆動により開閉作動する丸溝金型11、11を用いてスパイラル鍛造により丸棒材に仕上げる過程を示したものである。図5(a)は、1パス(閉作動)目の鍛造後の状態を示したもので、丸溝金型11、11の閉作動により鍛造された素材12は、丸溝金型11、11の溝底部11aに充満し、その一部が丸溝金型11、11の逃げ部11b、11b間に噛み出して、噛み出し部12aが生じている。この1パス目の鍛造が終了後、素材12をその軸方向に送るとともに、素材12をその軸心周りに角度θだけ回転させて、図5(b)に示すように、素材12の噛み出し部12aを丸溝金敷11の溝底部11a側まで回転させる。丸溝金型11の閉動作により行なわれる2パス目の鍛造では、図5(c)に示すように、前記噛み出し部12aが溝底部11aにより圧下されるため、噛み出し部12aは溝底部11aに沿って流動して消滅するが、噛み出し部が形成されていた部分の近傍には、凹み12cが生じるとともに、新たな噛み出し部12bが生じる。このように、2パス目の鍛造により生じた凹み12cは、その後のスパイラル鍛造の終了まで残存し、丸棒材の真円度を悪化させるという問題がある。このため、特許文献1では、前記凹み12cの深さを極力小さくするために、実測データに基づいて、丸溝金型11の各開作動時における素材の軸心周りの前記回転角度θを、45度を超え75度以下とする熱間鍛造方法が開示されている。
一方、特許文献2では、被加工材をその軸に直角方向からの金敷による圧下と前記軸方向への移動とを繰り返して丸棒を製造する際に、被加工材を保持するマニピュレータを常に被加工材圧下部から遠ざける方向に進行させるとともに、被加工材をその軸の回りに回転させるスパイラル鍛造方法が開示されている。また、特許文献3では、同様のスパイラル鍛造方法で、金敷の丸溝底部の曲率半径を被加工材の仕上げ断面半径よりも、その差が8mm未満となるよう小さくして、または被加工材と4面で接触する金敷を用いて鍛造する方法が開示されている。
特開2002−102987号公報 特開2004−283855号公報 特開2005−7402号公報
しかし、特許文献1に開示されたように、スパイラル鍛造において、すべてのパスで回転角度θを鋭角の範囲内(θ<75度)に限定して小刻みに鍛造を行なうと、一般に仕上げ表面性状は良好になるが、丸棒材へ仕上げるまでの鍛造時間が長くなって生産効率は低下する。また、前記表面性状には、素材(被加工材)の1パスあたりの移動量や前形状の大きさも影響を及ぼすが、特許文献1には前記移動量や被鍛造材の形状・寸法については何も記載されていない。
また、特許文献2では、被加工材の曲がりを抑制するためにのマニピュレータの移動方向を規定しているだけで、スパイラル鍛造における表面精度や生産性に影響を及ぼす被加工材の移動量や回転角度については何も記載されていない。さらに、特許文献3では、被加工材の曲がりを抑制し、真円度(表面精度)を確保する観点から金敷形状が規定されているが、やはり生産性に影響を及ぼす被加工材の移動量や回転角度については何も記載されていない。
そこで、この発明の課題は、断面形状が多角形などの棒状素材から、丸溝を有する金型を用いて、断面形状が円形の丸棒材に鍛造するスパイラル鍛造において、被鍛造材の回転角度と移動量の両方を考慮して、表面精度の良好な丸棒材を効率よく製造することができる鍛造方法を提供することである。
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
請求項1に係る丸棒の鍛造方法は、被加工材をその軸方向に移動させるとともに、軸心周りに角度θだけ回転させ、圧下部長手方向の長さがWの一対の丸溝金型による圧下を、被加工材の一端から他端にかけてその軸方向に順次実施し、この一端から他端にかけての軸方向の移動を1回行なって回転と圧下を加えながら丸棒材に仕上げる鍛造方法において、前記丸溝金型の丸溝部の半径Rが、前記丸棒材の仕上げ直径Dの1/2よりも大きく、その中心角θGが、75°よりも大きく180°よりも小さく、丸溝部の深さHが前記仕上げ直径Dの1/2よりも小さく、前記丸溝部の両側の金型壁面が平面状または曲面状に形成され、前記軸心周りの回転角度θが75°よりも大きく前記中心角θG以下で、かつ、被加工材の丸溝金型での1圧下あたりの軸方向の移動量AをW×θ/180以下とすることを特徴とする
図1(a)は、丸溝金型1の断面形状を示したものである。金型1、1の溝底部には、垂直軸Vに関して対称に、半径Rの、中心角θG(75°<θ<180°)の円弧部すなわち丸溝部2が、その両側に平面状(金型断面形状では直線状)の逃がし部3、3がそれぞれ形成されている。丸溝部2の半径Rは、仕上げ丸棒材の直径Dに対して、H×2≦D≦R×2(丸溝部2の深さH=R−Sf/2、Sf:丸溝部2が被加工材4に接触して圧下したときの上下金型1、1のフランジ部1f、1fの隙間)を満たすように設計されている。そして、上下の金型1、1が上下動(閉作動および開作動)して、炭素鋼や低合金鋼などの鋼材を素材とする被加工材4が圧下、すなわち鍛造成形される。前記隙間Sfは、金型閉作動時の隙間Sに相当し、軸方向の移動を複数回繰り返す場合は、最終回の移動における圧下での隙間である。図1(b)は、図1(a)に示した丸溝金型1と同様の丸溝金型1aであるが、逃がし部3a,3aが曲面状(金型断面形状では曲線状)に形成されている点が異なる。
図2(a)は、前記スパイラル鍛造における、送り回数Nt/回転回数Nrと偏径差(同一断面における最大直径と最小直径の差)すなわち表面精度との関係を、被加工材(素材)として8角形材を用い、その断面積S1の仕上げ丸棒材(Φ300mm)の断面積S2に対する比率、すなわち断面積増加比率S1/S2を3水準変化させ、回転角度θは90°で一定とし、金型の中心角θG=150°、同圧下部の長さW=300mmで、1圧下あたりの軸方向の移動量を変化させて、実機鍛造実験を行なった結果を示したものである。ここで、送り回数Ntは、金型の圧下部長さWを被加工材4が軸方向に移動する間に上下の金型1、1で圧下される回数、すなわちNt=W/(1圧下あたりの移動量A)であり、回転回数Nrは、被加工材4が360°回転するのに要する回転数、すなわちNr=360/回転角度θである。
図1から、前記比率Nt/Nrが大きくなる程、偏径差が小さくなる、すなわち表面精度が向上することがわかる。図2(a)に示した傾向からわかるように、一般に、回転回数Nrが少ない方が、すなわち回転角度θが大きい方が、偏径差が小さくなり、表面精度(寸法精度)が向上するため、特許文献1などの先行技術文献では開示されていない回転角度θ>75°を本願発明の回転角度の下限側の技術的範囲とした。また、1回の圧下(金型閉作動)で、被加工材への押圧面が重ならないように圧下することで、効率よく鍛造できるため、丸溝金型の丸溝部の角度、すなわち中心角θGの下限を前記回転角度θに対応させてθG>75°とした。一方、丸溝部の中心角θGを180°とすると、丸溝部の両側に逃がし部を形成できないため、前述の被加工材の噛み出しが発生する。したがって、丸溝部の中心角θGの上限は、180°よりも小さくする必要があるため、θG<180°を本願発明の上限側の技術的範囲とした。なお、回転角度θの上限は、金型1の円弧部すなわち丸溝部2によって素材(被加工材)の形状が形成されるため、前記中心角θGよりも小さくした。図2(b)のピッチ=1およびピッチ=2の線は、丸溝金型1(1a)との接触により、角度θの回転ごとに、丸溝金型1(1a)の長さ方向の端部における被加工材4との周方向の接触点を結んだ軌跡を示すもので、ピッチ=1、2は、それぞれ送り回数Nt/回転回数Nrが1、2に相当する。
また、前記丸溝部2の両側の逃がし部3、3を平面(直線)状に形成した場合、圧下後の被加工材の輪郭が良好となるため、1つの金型で鍛造成形できる丸棒材の寸法(直径)範囲を大きくとることができる。一方、逃がし部3a、3aを曲面状(金型断面形状では曲線状)に形成した場合、圧下に伴って、金型丸溝部2から両側の逃がし部3a、3aにかけての被加工材のメタルフローが円滑になるため、表面性状が良好となる。さらに、1圧下あたりの移動量をW×θ/180以下とすることによって、被加工材の周方向全面にわたって丸溝金型の丸溝部に接触させることができるため、仕上げ丸棒材の寸法精度が向上する。
請求項2に係る丸棒の鍛造方法は、前記被加工材の軸方向に直角な断面形状が多角形であり、その断面積S1の、前記丸棒材の断面積S2に対する比率S1/S2が、1.05〜1.25の範囲にあることを特徴とする。
被加工材(素材)の断面形状を多角形(6角形以上)とすることにより、鍛造時のメタルフローが良好となって丸棒材への成形が容易となる。前記断面積比が1.05よりも小さいと、丸溝金型での圧下しろ(断面減少量)が少なくなるため、前記1圧下あたりの移動量を小さくしてピッチ、すなわち丸溝金型内での被加工材の回転数を多くしても、仕上げ丸棒材の寸法精度がわるくなる。また、被加工材の一端から他端にかけての長手方向の圧下を1回行なって丸棒材に仕上げるスパイラル鍛造では、前記断面積比が1.25よりも大きいと、前記圧下しろ(断面減少量)が大きくなりすぎて、通常の移動量やピッチでは、断面減少量が不十分であり、これを補うために圧下量を大きくすると金型から噛み出して表面疵が発生する。
請求項3に係る丸棒の鍛造方法は、前記被加工材を一端から他端にかけてその軸方向に移動させる過程で順次実施される前記鍛造において、前記被加工材をその軸方向にハンドリング装置によって引きながら鍛造することを特徴とする。
このように、ハンドリング装置によって、被加工材をその軸方向に引きながら鍛造することにより、被加工材の曲がり発生が抑制される。
請求項4に係る丸棒の鍛造方法は、被加工材をその軸方向に移動させるとともに、軸心周りに角度θだけ回転させ、圧下部長さがWの一対の丸溝金型による圧下を、被加工材の一端から他端にかけてその軸方向に順次実施し、この一端から他端にかけての、回転と圧下を伴う軸方向の移動を複数回繰り返して丸棒材に仕上げる鍛造方法において、前記丸溝金型の丸溝部の半径Rが、前記丸棒材の仕上げ直径Dの1/2よりも大きく、その中心角θGが、75°よりも大きく180°よりも小さく、この丸溝部の両側の金型壁面が平面状または曲面状に形成され、前記軸心周りの回転角度θが75°よりも大きく前記中心角θG以下で、かつ、前記複数回の軸方向の移動における鍛造で、少なくとも最終回の移動における1圧下あたりの軸方向の移動量AをW×θ/180以下とすることを特徴とする。
上記丸溝金型の丸溝部の中心角θGおよび被加工材の回転角度θは、上述の軸方向の移動を1回行なう場合と同様に決定した。長手方向の圧下を複数回行なう場合、仕上げ丸棒材の表面精度(寸法精度および表面性状)への影響度が大きい最終回の1圧下あたりの移動量をW×θ/180以下とすることによって、被加工材の周方向全面にわたって丸溝金型の丸溝部に接触させることができるため、仕上げ丸棒材の寸法精度が向上する。また、図1(b)に示すように、丸溝金型の逃がし部が曲面状に形成されていると、圧下に伴って、金型丸溝部2から両側の逃がし部3a、3aにかけての被加工材のメタルフローが円滑になるため、表面性状が良好となる。
請求項5に係る丸棒の鍛造方法は、前記被加工材を一端から他端にかけてその軸方向に移動させる過程で前記鍛造が順次実施され、この一端から他端にかけての軸方向の移動が複数回繰り返される場合に、少なくとも最終回の軸方向の移動は、前記被加工材をその軸方向にハンドリング装置によって引きながら鍛造することを特徴とする。
このように、最終回の軸方向の移動における鍛造で、ハンドリング装置によって被加工材をその軸方向に引きながら鍛造することにより、被加工材(仕上げ丸棒材)の曲がり発生が抑制される。さらに、最初の軸方向の移動から数えて奇数回目の移動では、ハンドリング装置によって被加工材をその軸方向に押しながら鍛造し、偶数回目の移動では、前記ハンドリング装置によって被加工材をその軸方向に引きながら鍛造するようにすれば、前記一端から他端にかけての軸方向の移動において、被加工材の移動が常に丸溝金型による圧下と回転を伴って行なわれるため、余分なハンドリングを行なわずに済み、鍛造効率が向上する。
請求項6に係る丸棒の鍛造方法は、前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最終回の軸方向の移動よりも前段階の移動では、1圧下あたりの移動量AをW×θ/180以下とし、最終回の軸方向の移動における前記丸溝金型での1圧下あたりの移動量AfをW×θ/180/n(=A/n,n:1以上の実数)以下とすることを特徴とする。
このように移動量Aの範囲を決めておけば、最初の軸方向の移動から最終回の軸方向の移動に至るまでの各軸方向の移動における鍛造おいて、上記移動量の範囲内で、被加工材はその周方向全表面を、上記丸溝金型の丸溝部に接触させる圧下が可能な移動量Aを決定することができる。また、仕上げ丸棒材の寸法精度への影響度がより大きい最終回の移動量を、それよりも前段階の移動量に比べてさらに小さくすることによって、鍛造能率すなわち生産性の低下を抑制しながら、丸棒材の表面精度を向上させることができる。なお、上記実数nは、後述の図4における、被加工材の外周面上の筋6、6の間に、少なくとも丸溝金型との接触しない非圧下面が形成されないように、また、表面状態をさらに良好にするために、丸溝金型との接触による圧下面が被加工材の外周面全体を覆うように、回転角度θの大きさに対応して、決定することができる。
請求項7に係る丸棒材の鍛造方法は、前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動における鍛造から最終回の軸方向の移動における鍛造に至るまで、各回の移動における1圧下あたりの移動量Aを交互にW×θ/180以下またはW×θ/180/n(n:1以上の実数)以下のいずれかに設定することを特徴とする。
このように、交互に移動量をAs/nに細かくすることによっても、生産性の低下を抑制しながら、丸棒材の表面精度を向上させることができる。なお、nは、上述のように、丸溝金型との接触による圧下面が被加工材の外周面全体を覆うように、回転角度θの大きさに対応して、決定することができる。
請求項8に係る丸棒材の鍛造方法は、前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動から数えて奇数回目の移動における鍛造での被加工材の前記軸心周りの回転方向と、偶数回目の移動における鍛造での被加工材の回転方向とが逆方向であることを特徴とする。
このように、1回の軸方向の移動ごとに、被加工材の回転方向を逆転させることにより、被加工材断面内のメタルフローの偏りが是正され、仕上げ丸棒材の機械的性質等の品質のバラツキを軽減することができる。
請求項9に係る丸棒材の鍛造方法は、前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動から中程までの移動回数における鍛造での被加工材の前記軸心周りの回転方向と、この中程の移動回数から最終回までの移動回数における鍛造での被加工材の回転方向とが逆方向であることを特徴とする。
このようにしても、被加工材断面内のメタルフローの偏りが是正され、仕上げ丸棒材の機械的性質等の品質のバラツキを軽減することができる。ここで、中程とは、軸方向の移動を偶数回(Nev)行なう場合には、(Nev/2)回目の回数を、奇数(Nod)回行なう場合には、((Nod+1)/2)回目または((Nod-1)/2)回目の回数を意味する。
請求項10に係る丸棒の鍛造方法は、前記被加工材の軸方向に直角な断面形状が多角形であり、その断面積S1の、前記丸棒材の断面積S2に対する断面積比S1/S2が、1.05〜1.30の範囲にあることを特徴とする。
被加工材(素材)の断面形状を、例えば6角形以上の多角形とすることにより、鍛造時のメタルフローが良好となって丸棒材への成形が容易となる。前記断面積比が1.05よりも小さいと、丸溝金型での圧下しろ(断面減少量)が少なくなるため、前記1圧下あたりの移動量を小さくしてピッチ、すなわち丸溝金型内での被加工材の回転数を多くしても、仕上げ丸棒材の寸法精度がわるくなる。また、複数回の長手方向圧下を行なう場合には、前記断面積比が1.3よりも大きいと、前記圧下しろ(断面減少量)が大きくなりすぎて、通常の移動量やピッチでは、断面減少量が不十分であり、これを補うために圧下量を大きくすると表面疵が発生して鍛造ができなくなる。
請求項11に係る丸棒材の鍛造方法は、前記多角形が8角形であることを特徴とする。
被加工材(素材)の断面形状を8角形とすることにより、素材鋼塊から適正なパス(圧下)数で被加工材が成形され、かつ丸溝金型で鍛造時のメタルフローが良好になるため、丸棒材への成形が容易となる。とくに、スパイラル鍛造における生産性を考慮すると、正8角形または正8角形に近い形状が望ましい。
この発明では、圧下部長さがWの丸溝金型を用いて被加工材を回転と軸方向の移動を伴って鍛造し、1回の軸方向の移動における鍛造により丸棒材に仕上げるスパイラル鍛造方法で、丸溝金型の丸溝部の中心角θGを前述のように規定して、被加工材の回転角度θを75°よりも大きくし、1圧下あたりの軸方向の移動量AをW×θ/180以下にして回転角度θと移動量Aの両方を制御して鍛造するようにしたので、丸溝金型内での少ない回転数で、被加工材の周方向全面にわたって金型丸溝部に接触させることができ、鍛造効率および丸棒材の寸法精度の両方を向上させることができる。
また、圧下部長さがWの丸溝金型を用いて被加工材を回転と軸方向の移動を伴って鍛造し、複数回繰り返す軸方向の移動における鍛造により丸棒材に仕上げるスパイラル鍛造方法でも、1回の軸方向の移動における鍛造の場合と同様に、丸溝部の中心角θGを規定し、被加工材の回転角度θを75°よりも大きくし、丸棒材の寸法精度に大きく影響する少なくとも最終回の軸方向の移動においては、1圧下あたりの移動量AをW×θ/180以下に、望ましくはW×θ/180/n(n:1以上の実数)以下にして回転角度θと移動量Aの両方を制御して鍛造するようにしたので、丸溝金型内での少ない回転数で、被加工材の周方向全面にわたって金型丸溝部に接触させることができ、鍛造効率および丸棒材の寸法精度の両方を向上させることができる。また、軸方向の移動が1回の場合の圧下、および軸方向の移動を複数回繰り返す場合には、少なくとも最終回の軸方向の移動における圧下では、それぞれ前記ハンドリング装置によって前記被加工材をその軸方向に引きながら鍛造することにより、仕上げ丸棒材の曲がりを抑制することができる。さらに、最初の軸方向の移動から数えて奇数回目の移動での被加工材の軸心周りの回転方向と、偶数回目の移動での被加工材の回転方向とが逆方向であるようにして1回の軸方向の移動ごとに、被加工材の回転方向を逆転させることにより、被加工材断面内のメタルフローの偏りを是正して、仕上げ丸棒材の機械的性質等の品質のバラツキを軽減することができる。
以下に、この発明の実施形態を添付の図3および図4と表1および表2に基づいて説明する。
図3は、実施形態の鍛造方法による被加工材の鍛造状況を模式的に示したものである。断面形状が多角形、例えば正8角形または正8角形に近い形状の、炭素鋼または低合金鋼などの鋼材を素材とする被加工材4は、そのハンドリング装置であるマニピュレータ5によって、軸方向に移動させ、図1(a)および(b)に示した断面形状の、圧下部長さがWの上下の金型1、1aの閉作動により圧下すなわち鍛造成形される。この金型1、1aによる1回の圧下(閉作動)ごとに、被加工材4は、マニピュレータ5のアーム部5a、5aで把持されて、軸心周りに所定の角度θ(75°<θ≦θG)だけ、時計方向または反時計方向に回転される。そして、この1回の回転ごとに、被加工材4はその軸方向(長手方向)に、例えば、マニピュレータ5で引く方向に送られ、「回転−軸方向移動」の鍛造動作が、被加工材4の一端4aから他端4bまで繰り返されて、被加工材1の一端4aから他端4bにかけての1回の軸方向の移動における鍛造が終了する。この軸方向の移動を複数回行なう場合には、図3に示したように、例えば、一端4aから他端4bにかけての引く方向の移動における鍛造が終了した後、被加工材4は、他端4bから一端4aにかけて押す方向に送られる軸方向の移動における鍛造が行なわれる。このように、被加工材4が、引く方向と押す方向に交互に送られて、回転と圧下を伴う軸方向の移動が複数回繰り返される。その際に、被加工材4の曲がり抑制の観点から、最終回の送り方向は引く方向に、すなわち被加工材4をその軸方向に引きながら圧下を行なうことが望ましい。また、被加工材断面内のメタルフローの偏りを是正し、仕上げ丸棒材の機械的性質等の品質のバラツキを軽減する観点から、被加工材4のその軸心周りの回転方向を、図3に示したように、1回の軸方向の移動ごとに、マニピュレータ5側から見て、時計方向C1または反時計方向C2と、逆方向にすることが望ましい。また同様の観点から、複数回の軸方向の移動における鍛造のうち、最初の軸方向の移動から中程までの移動回数における回転方向と、この中程の移動回数から最終回までの移動回数における回転方向とが逆方向になるようにすることもできる。なお、前記素材(被加工材4)形状は、必ずしも8角形に限らず、例えば、16角形状や32角形状の素材を用いることもできる。
断面形状が正8角形の、長さが10mの炭素鋼素材から、圧下部長さWが300mmの図1に示した丸溝金型(θG=90°、R=190mm、S=40mm、H=170mm)を用いて、回転角度θをθGと等しく90°として、1回の軸方向の移動における鍛造で、目標寸法がΦ340mmの丸棒材に仕上げるスパイラル鍛造において、素材断面積S1の製品丸棒材(Φ340mm)の断面積S2に対する増加率S1/S2および移動量Aを変化させ、鍛造温度(被加工材4の温度)を700℃として、変形解析手段(3次元変形解析ソフト)により、丸棒材の表面精度(偏径差)および鍛造時間を算出した結果を表1に示す。その際に、素材面積増加率S1/S2が1.20、移動量Aがn=3に相当する50mmの鍛造条件のときに得られる、表面精度(偏径差)および鍛造時間を合否判定の基準値とした。被加工材の軸方向の移動方向は、図3に示した「引く方向」である。なお、鍛造温度は、300℃以上が望ましい。300℃よりも低い温度で軽圧下の鍛造を行なうと欠陥が発生する。
Figure 0004875588
表1から、素材面積増加率S1/S2が1.04および1.3では、適正面積増加率の範囲外であるため、いずれも基準例よりも表面精度が低下している(No.5、No.6)。また、移動量がW×θ/180を超える200mmでは、基準例に比べて鍛造時間は短縮されるものの、表面精度が大きく低下している(No.7)。これは、1圧下あたりの移動量がW×θ/180を超えると、前記スパイラル状の筋の間隔Lw(図4参照)が粗くなって、丸溝金型による圧下面が重複しなくなり、被加工材の表面の一部に、素材形状の多角形が残存して表面精度がわるくなるためである。一方、面積増加率S1/S2が1.10、1.09、および回転角度θが90°と適正範囲内になると、表面精度はNo.1の基準例よりも良好となっている(No.2,No.3,No.4)。No.2、No.3およびNo.4のデータを比較すると、回転角度θが同じで、素材面積増加率S1/S2がほぼ同じ場合、移動量を、W×θ/180以下で、細かくすることにより、図4に模式的に示すように、丸溝金型1との接触により形成されるスパイラル状の筋6の間隔Lwが狭くなる、すなわち、被加工材4の表面に、丸溝金型1による圧下面7が何回も重複することにより、表面精度(偏径差)および表面性状が向上する。前記筋6は、前述のように、丸溝金型1との接触により、被加工材4の外周面に連続的に形成される接触痕ではなく、角度θの回転ごとに、丸溝金型1の長さ方向の端部における被加工材4との周方向の接触点を結んだ軌跡に相当する。なお、鍛造温度が250℃と、300℃よりも低くなると、面積増加率、移動量、回転角度θが本願発明の技術的範囲内で、表面精度が良好であっても、製品丸棒材に、欠陥が発生した(参考例No.8)。
このように、図1に示した形状の丸溝金型を用いて、回転角度θを90°と75°よりも大きくし、素材面積増加率S1/S2を1.05〜1.25の範囲に収めて、移動量をW×θ/180以下と小さくすることにより、丸棒材の表面精度を向上させることができる。なお、金型逃がし部3aを図1(b)に示したように曲線状に形成しても上述のような表面精度の向上を実現することが可能である。
断面形状が正8角形の、長さが10mの炭素鋼素材から、圧下部長さWが300mmの図1(a)および(b)に示した丸溝金型(R=150mm、S=50mm、H=150mm)を用いて、回転角度θを実施例1の場合と同様に90°として、2パス(2回の長手方向圧下)で、目標寸法がΦ350mmの丸棒材に仕上げるスパイラル鍛造において、製品丸棒材(Φ350mm)の断面積S2に対する素材断面積S1の増加率S1/S2、移動量Aおよび回転方向を変化させて、変形解析手段(3次元変形解析ソフト)により、丸棒材の表面精度(偏径差)および鍛造時間を算出した結果を表2に示す。その際に、素材面積増加率S1/S2が15%、移動量Aおよび回転方向が、1パス目および2パス目ともに、それぞれW/2に相当する150mm、順方向(時計回り方向)の鍛造条件のときに得られる、表面精度(偏径差)および鍛造時間を合否判定の基準値とした。なお、移動量A(mm)/順の「順」は、送り方向が、順方向すなわち被加工材4の軸方向の移動における移動方向が図3に示した「引く方向」であることを示す。
Figure 0004875588
表2から、素材面積増加率S1/S2が1.03では、表面精度が基準例よりも低下し(No.2)、S1/S2が1.35は、基準例よりも表面精度が低下し、鍛造時間も増加する(No.3)。一方、面積増加率S1/S2が1.05になると、表面精度は基準例と同等まで回復し(No.4)、また、S1/S2が1.30でも、表面精度は基準例と同等となる(No.5)。No.4、No.5の実施例では、回転方向(1パス/2パス)がNo.1の基準例と異なるが、この回転方向の相違は、断面内のメタルフローに影響を及ぼすが、表面精度自体にはそれほど影響を及ぼさない。金型逃がし部を曲線(曲面)状に形成すると、基準例よりも表面精度が向上する(No.6)。最終回の軸方向の移動すなわち最終パス(2パス目)の移動量を小さくすることによって、表面精度は基準例よりも向上し(No.7〜No.9、No.11)、最終パスの移動量を小さくしても、前段側(1パス目)の移動量を増加させることにより、鍛造時間は(基準例よりも)短縮される(No.8、No.9)。また、前段側(1パス目)の移動量Aが150mmと、W×θ/180以下を満たす場合の方が、表面精度が向上する(No.7,No.11)。さらに、送り方向すなわち軸方向の移動方向を1パス目と2パス目で逆にすることによって、被加工材の移動が常に丸溝金型による圧下を伴って行なわれるため、表面精度が低下せずに、鍛造時間が(基準例よりも)大きく短縮される(No.10)。なお、後段側(2パス目)の移動量A=150mmは、n=1.0に相当し(実施例No.4,No.5,No.10)、同移動量A=100mmは、n=1.5に相当し(実施例No.7,No.8)、同移動量A=50mmは、n=3(実施例No.9,No.11)に相当する。
このように、回転角度θを90°と、75°よりも大きくして少なくとも最終回の軸方向の移動における移動量を小さくすることにより、丸棒材の表面精度を向上させることができる。また、素材面積増加率S1/S2を1.05〜1.30の範囲に収めることによって、表面精度の低下を防止することができる。さらに、被加工材の軸方向の移動を交互に逆方向とすることにより、鍛造時間が大幅に短縮され、丸溝金型の逃がし部を曲面状に形成することによっても表面精度が向上する。
(a)実施形態の鍛造方法で用いる丸溝金型の断面形状(逃がし部:平面状)を示す説明図である。(b)実施形態の鍛造方法で用いる丸溝金型の断面形状(逃がし部:曲面状)を示す説明図である。 (a)被加工材の丸溝金型内での(送り回数/回転回数)と表面精度との関係を示す説明図である。(b)上記(送り回数/回転回数)と被加工材表面での金型端部との接触点の軌跡を模式的に示す説明図である。 実施形態の鍛造方法による鍛造状況を模式的に示す説明図である。 被加工材の表面に丸溝金型による圧下面がスパイラル状に形成されることを模式的に示す説明図である。 (a)〜(c)従来技術のスパイラル鍛造方法を示す説明図である。
符号の説明
1、1a:丸溝金型 1f:金型フランジ部 2:丸溝部
3、3a:逃がし部 4:被加工材 4a、4b:被加工材端部
5:マニピュレータ 5a:アーム部 6:筋
7:圧下面

Claims (11)

  1. 被加工材をその軸方向に移動させるとともに、軸心周りに角度θだけ回転させ、圧下部長手方向の長さがWの一対の丸溝金型による圧下を、被加工材の一端から他端にかけてその軸方向に順次実施し、この一端から他端にかけての軸方向の移動を1回行なって回転と圧下を加えながら丸棒材に仕上げる鍛造方法において、前記丸溝金型の丸溝部の半径Rが、前記丸棒材の仕上げ直径Dの1/2よりも大きく、その中心角θGが、75°よりも大きく180°よりも小さく、丸溝部の深さHが前記仕上げ直径Dの1/2よりも小さく、前記丸溝部の両側の金型壁面が平面状または曲面状に形成され、前記軸心周りの回転角度θが75°よりも大きく前記中心角θG以下で、かつ、被加工材の丸溝金型での1圧下あたりの軸方向の移動量AをW×θ/180以下とすることを特徴とする丸棒材の鍛造方法。
  2. 前記被加工材の軸方向に直角な断面形状が多角形であり、その断面積S1の、前記丸棒材の断面積S2に対する比率S1/S2が、1.05〜1.25の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の丸棒材の鍛造方法。
  3. 前記被加工材を一端から他端にかけてその軸方向に移動させる過程で順次実施される前記鍛造において、前記被加工材をその軸方向にハンドリング装置によって引きながら鍛造することを特徴とする請求項1または2に記載の丸棒材の鍛造方法。
  4. 被加工材をその軸方向に移動させるとともに、軸心周りに角度θだけ回転させ、圧下部長さがWの一対の丸溝金型による圧下を、被加工材の一端から他端にかけてその軸方向に順次実施し、この一端から他端にかけての、回転と圧下を伴う軸方向の移動を複数回繰り返して丸棒材に仕上げる鍛造方法において、前記丸溝金型の丸溝部の半径Rが、前記丸棒材の仕上げ直径Dの1/2よりも大きく、その中心角θGが、75°よりも大きく180°よりも小さく、この丸溝部の両側の金型壁面が平面状または曲面状に形成され、前記軸心周りの回転角度θが75°よりも大きく前記中心角θG以下で、かつ、前記複数回の軸方向の移動における鍛造で、少なくとも最終回の移動における1圧下あたりの軸方向の移動量AをW×θ/180以下とすることを特徴とする丸棒材の鍛造方法。
  5. 前記被加工材を一端から他端にかけてその軸方向に移動させる過程で前記鍛造が順次実施され、この一端から他端にかけての軸方向の移動が複数回繰り返される場合に、少なくとも最終回の軸方向の移動は、前記被加工材をその軸方向にハンドリング装置によって引きながら鍛造することを特徴とする請求項4に記載の丸棒材の鍛造方法。
  6. 前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最終回の軸方向の移動よりも前段階の移動では、1圧下あたりの移動量AをW×θ/180以下とし、最終回の軸方向の移動における前記丸溝金型での1圧下あたりの移動量AfをW×θ/180/n(=A/n,n:1以上の実数)以下とすることを特徴とする請求項4または5に記載の丸棒材の鍛造方法。
  7. 前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動における鍛造から最終回の軸方向の移動における鍛造に至るまで、各回の移動における1圧下あたりの移動量Aを交互にW×θ/180以下またはW×θ/180/n(n:1以上の実数)以下のいずれかに設定することを特徴とする請求項4または5に記載の丸棒材の鍛造方法。
  8. 前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動から数えて奇数回目の移動における鍛造での被加工材の前記軸心周りの回転方向と、偶数回目の移動における鍛造での被加工材の回転方向とが逆方向であることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の丸棒材の鍛造方法。
  9. 前記複数回繰り返される軸方向の移動において、最初の軸方向の移動から中程までの移動回数における鍛造での被加工材の前記軸心周りの回転方向と、この中程の移動回数から最終回までの移動回数における鍛造での被加工材の回転方向とが逆方向であることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の丸棒材の鍛造方法。
  10. 前記被加工材の軸方向に直角な断面形状が多角形であり、その断面積S1の、前記丸棒材の断面積S2に対する比率S1/S2が、1.05〜1.30の範囲にあることを特徴とする請求項4から9のいずれかに記載の丸棒材の鍛造方法。
  11. 前記多角形が8角形であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の丸棒材の鍛造方法。
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