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JP4875804B2 - 止血材 - Google Patents
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JP4875804B2 - 止血材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、止血材に関するものであり、さらに詳しくは外科手術などにおける切開創や切除創、抜歯創、肝臓や膵臓などの臓器や関節手術における骨切面からの出血に対して効果的な止血作用を有する止血材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外科手術時の止血法としては、圧迫法、結紮法、電気凝固法、レーザー凝固法、赤外線凝固法、冷凍法や種々の止血材を用いる方法等がある。静脈性の出血は圧迫止血だけでも充分であり止血は容易である。
【0003】
一方、出血点のはっきりしている動脈性出血の場合、結紮、縫合、電気凝固法による止血が常法であるが、結紮、縫合は出血部位が脆弱な場合や毛細血管等の微少血管からの滲み出るような出血には用いることはできない。また、電気凝固法、レーザー凝固法、赤外線凝固法、冷凍法についてはその有効性は認められているものの、何れの方法を行う場合にも高価な装置を必要とし、また出血部位が広い範囲におよぶ際には使用しにくい点は否めない。
【0004】
圧迫止血は、細い血管からの出血には非常に有効であるが、圧迫することが困難な狭い術野では使えず、また、止血に比較的時間を要する等の問題点がある。それ故、手術のように時間が限られる場合では、これらの問題点を補い手術を円滑に行うため、種々の止血材が用いられているのが現状である。
【0005】
そのような止血材の具体例として例えば、酸化セルロース、ゼラチン、微繊維性コラーゲンからなる止血材が市販されている。酸化セルロースは、血液に接触すると血中のヘモグロビンと著しい親和力を有するため凝血塊を形成し、止血に至るものである。ゼラチンは、スポンジ状のものが市販されており、血液を吸収して膨潤し局所を圧迫することによって止血効果を示すものである。微繊維性コラーゲンは、血液に接触すると血小板を活性化し、活性化された血小板がコラーゲンに付着し凝集塊を形成することで止血に至るものである。
【0006】
さらに、特開昭63−211232号公報、特開平9−19653号報、特開平9−169654号報には、キチン又はキチン誘導体の塩酸塩および有機酸塩に止血効果のあることが記載されている。この中で、繊維状脱アセチル化キチン酸塩からなる止血材は、出血部位に適用すると、膨潤し出血部位に強く付着し、湧き出るような血液でも流されず迅速で且つ確実な止血が出来るものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、手術創の止血において繊維状脱アセチル化キチン塩酸塩からなる止血材を使用した場合、止血後に剰余分を生理食塩水などで洗浄・除去する必要があった。繊維状脱アセチル化キチン塩酸塩からなる止血材は、出血部位に接触すると吸液により繊維が膨潤ゲル化する。膨潤ゲル化した剰余の止血材は非常に柔らかいため、ピンセット等では取り除き難かった。また、生理食塩水等を用いた洗浄では、膨潤ゲル化により出血部位に密着した部分は洗い流されることなく多量に残留する場合があった。手術創に多量に残留した止血に関与しなかった剰余の繊維状脱アセチル化キチン塩酸塩からなる止血材は滲出液を吸収し膨潤する。このため縫合により閉鎖した手術創を開いてしまう等の閉鎖不全が生じる場合があり適用には限界があった。
【0008】
また、酸化セルロースは、止血後に剰余分を除去すると再出血が生じる場合があり、微繊維性コラーゲンは激しい出血の場合ずれることもあり、何れも適用には限界があった。
【0009】
また、脱アセチル化キチンの有機酸塩からなる止血材の製造方法は、酢酸、乳酸、酪酸等の有機酸水溶液に脱アセチル化キチンを浸漬し酸塩処理するが、このときに有機酸水溶液に浸漬すると脱アセチル化キチンが膨潤するので次の濾過工程において非常に時間がかかり、濾材が目詰まりする場合もあり工業的な生産には限界があった。さらに、濾過できた有機酸塩は酸処理工程で一部溶解しているものもあり、このため乾燥後に繊維同士が固着してしまい開繊などの後加工に支障が生じる場合があった。
【0010】
本発明は、出血部位に適用しゲル化した場合に、余分のものを容易に取除くことができる止血材およびその製造方法において改善された方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機酸塩としてマレイン酸を用いることで、余剰の止血材の手術創からの除去性が向上し、また酸塩化処理の工程において脱アセチル化キチンの膨潤が抑えられることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の第一は、脱アセチル化キチンのマレイン酸塩からなる止血材を要旨とするものであり、特に、脱アセチル化キチンが、キチンの脱アセチル化度が20%〜90%である前記止血材又は0.1質量%の水分散液のpHが、2.5〜5の範囲になる前記止血材を好適な態様とするものである。
本発明の第二は、脱アセチル化キチンを、マレイン酸のメタノール溶液に浸漬して脱アセチル化キチンのマレイン酸塩を形成し、洗浄、乾燥して止血材を得ることを特徴とする前記止血材の製造方法を要旨とするものである。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
キチンとは、甲殻類、昆虫類等の外骨格を塩酸処理並びに苛性ソーダ処理して灰分および蛋白質を除去して得られるもの及びその誘導体をいい、通常のキチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)及びその脱アセチル化物、さらにはグルコサミン残基の-OH基または-CH2OH基がエステル化、エーテル化、カルボキシメチル化あるいはO-エチル化等に修飾されたキチン誘導体も含まれる。
【0014】
本発明で用いられる脱アセチル化キチンは、上記のキチンをアルカリ処理という周知の方法により得ることができる。この際、使用するアルカリ濃度、処理温度、処理時間等を適宜変えることにより、脱アセチル化度を容易に調整することができる。
【0015】
ここで、脱アセチル化度とは以下に示す方法で測定した値をいう。試料約2gを2M−塩酸水溶液200mL中に投入し、室温で30分間攪拌する。次に、ガラスフィルターで濾過して塩酸水溶液を除去した後、200mLの無水メタノール中に投入して30分間攪拌し、ガラスフィルターで濾過後、無水メタノール200mL中に投入し30分間攪拌する。このメタノールによる洗浄操作を4回繰り返した後、風乾および真空乾燥する。乾燥後、約0.2gを100mL三角フラスコに精秤、更にイオン交換水40mLを加えて30分間攪拌する。次に、この溶液を、フェノールフタレインを指示薬として0.1M−苛性ソーダ-水溶液で中和滴定する。脱アセチル化度は次式によって求められる。
【0016】
A(%)=〔(2.03×f×b×10-2)/(a+0.055×f×b×10-2)〕×100
ただしaは試料の重量(g)、fは0.1M−苛性ソーダ水溶液の力価、bは0.1M−苛性ソーダ水溶液の滴定量(mL)である。
【0017】
本発明で用いられる脱アセチル化キチンの好ましい脱アセチル化度は、20〜90%であり、さらに好ましくは30〜85%であり、最も好ましくは40〜70%である。脱アセチル化度が20%未満では、出血部位に適用してもゲル化が弱く、充分な止血効果が得られないことがあり、また90%を超えると出血部位に適用しても血液等により溶解流失することがある。
【0018】
本発明の止血材は、上記した脱アセチル化キチンがマレイン酸により塩を形成しているものからなるものである。得られた止血材を0.1%の水分散液とした場合に、その分散液のpHが好ましくは2.5〜5の範囲になるものであり、より好ましくは3.0〜4.5である。
【0019】
また、本発明の止血材の形態としては、脱アセチル化キチンのマレイン酸塩が繊維状をしており、これから嵩高い綿状体、フェルト状体、球状体、棒状体、マット状体、シート状体に成形されているものを挙げることができる。また、脱アセチル化キチンのマレイン酸塩がフィルム、多孔体、粉末などの形態を有しているものでも構わない。
【0020】
次に、本発明の止血材の製造方法について説明する。
まず、上記したようなキチンから脱アセチル化キチンを得る。この場合繊維状であれば、止血材の形態として嵩高い綿状体、フェルト状体、球状体、棒状体、マット状体、シート状体などに成形することが可能となるので好ましい。脱アセチル化の工程は、繊維化工程の前後いずれでも構わない。キチンを溶剤に溶かしてから繊維にする方法としては、通常の湿式紡糸法または湿式成型法を採用することができる。溶剤としてはキチン又はその誘導体の種類によって適切なものを使用することができる。例えば、天然物を精製したままのキチン及び脱アセチル化度の比較的低いキチンについては、ハロゲン化炭化水素とトリクロル酢酸の混合物、N-メチルピロリドンまたはN,N-ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合物が好ましく使用され、脱アセチル化度の高いキトサンに対しては、酢酸等の酸水溶液が好ましく用いられる。
【0021】
例えば、キチンを上記溶剤に溶かしてドープを作製し、ステンレスネット等のフィルターで濾過して未溶解部分や異物を除去した後、ギヤポンプ等で輸送、計量し、細孔であるノズルから水、アルコール類、ケトン類、アルカリ溶液等の凝固液中に押し出して凝固する。凝固物は回転ローラー等にて一定速度で引き取ることにより、繊維を得ることができる。
【0022】
キチン又は脱アセチル化キチンの繊維とは、長手方向に長い形状のものであればよい。繊維の直径は1〜120μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmであり、最も好ましくは8〜30μmである。繊維の直径が1μm以下の場合は繊維の強度が弱く、成形性に劣り操作性が落ちる。また直径120μm以上の繊維は剛直になり過ぎるため、適用時の操作性および密着性が悪くなる。
【0023】
キチン繊維の長さは、カッティングにより任意の長さのものを得ることができるが、あまり長いものでは綿状にする際に充分分散させることが難しくなる。逆に極端に短すぎると繊維同士が絡み難く止血部位への適用の際に散らばってしまう。また、耐血圧の強度も得られなくなるため、0.05〜15.0cmが好ましく、より好ましくは0.1〜8.0cmであり、最適には0.2〜3.0cmである。
【0024】
次に脱アセチル化キチンをマレイン酸により酸塩を形成させる。そのための方法としては、脱アセチル化キチンをマレイン酸の酸溶液に浸漬して塩にする方法が挙げられる。例えば、脱アセチル化キチンをマレイン酸のメタノール溶液もしくは水溶液に30分以上浸漬後、濾過しメタノールやエタノール等のアルコール類で洗浄し乾燥させればよい。これらのうち、メタノールを用いることが好ましい。メタノール中で塩形成を行った場合、従来、水溶液中での塩形成反応で生じていた膨潤・ゲル化が生じることなく塩形成可能である。さらに、メタノール中での塩形成は0.1M以上のマレイン酸濃度であれば十分であるので、マレイン酸の使用量を低減することができる。また、水溶液を用いることもできるが、この場合にはマレイン酸濃度が2M以上で行うのが好ましい。2M以下では水溶液中で脱アセチル化キチンが膨潤する場合があるので好ましくない。
【0025】
本発明の止血材の形態としては、嵩高い綿状体、フェルト状体、球状体、棒状体、マット状体、シート状体、フィルム、多孔体、粉末等が挙げられる。例えば、嵩高い綿状体にするには、開繊機で開繊することにより、綿状体の嵩比重を小さくして、嵩高い綿状体を得ることができる。開繊機としては、金属ブラシ、ミキサー、メッシュ付エアー分散機、オープナー、カード機、粉砕機、ミル、ブレンダー等を用いることが出来る。この嵩高い綿状体は形状加工が容易なため、さまざまな形状をした創傷部位にあわせて止血材の形状・形態を任意にかえられることによって創面に均一に密着させることができ止血効果を最大限発揮させることができる。そのため、嵩比重は小さいほうがよいが、繊維同士が適度に絡み合うためにはその限界があるし、又小さすぎると繊維が飛散したり、操作性が悪くなる。また、適用時に隙間ができてしまい完全に止血することが困難になるため、0.002〜0.1g/cm3がよく、好ましくは0.005〜0.02g/cm3程度である。
【0026】
ここで、嵩比重とは次のようにしてもとめたものである。▲1▼得られた綿状物を標準状態下(20℃、65%RH)で、約1g計り取り精秤する(計測重量:Wg)。▲2▼標準状態下で200mLプラスチック製メスシリンダー内に均一に充填する。▲3▼次に、直径35mmの重さ0.5gの平円板を▲2▼で準備された綿状物の上にのせ、更にその上に50gの分銅を30秒間のせたあと分銅を取り除き30秒放置する。この操作を3回繰り返し、充填された綿状物の容積Vを測定。次式に従い比容積をサンプル3個について求めその平均値を採用する。
嵩比重(g/cm3)=W/V
この綿状物は出血部位の創の面積に応じて適量を細片にして付与することが可能であり、さらに粉末のようにこぼれ落ちて他の臓器を癒着させる恐れもなく、好ましい。
【0027】
本発明の止血材の製造方法においては、脱アセチル化キチンマレイン酸塩の繊維を開繊後に圧縮や成形等によりフェルト状、マット状、球状、棒状、シート状に加工することができる。例えば、シート状物に加工するには、繊維状脱アセチル化キチンのマレイン酸塩を開繊した後、プレス機にて加圧成形すればよい。プレス機としては、例えばシートマシーン(熊谷理機工業社製)等を用いることができる。プレス機にて加圧成形する際、例えば、加圧時間、加圧圧力等を適宜変更することにより、任意の硬さのシートを作製することが可能である。また、単位面積あたりの繊維量を適宜変更することにより任意の厚みのシートができる。このときの目付量としては、5〜500mg/cm2が好ましく、10〜300mg/cm2がさらに好ましく、20〜150mg/cm2が最適である。このシート状物は関節手術における骨切面など垂直な出血部位に用いる際に好適である。
【0028】
本発明の止血材は、通常滅菌されて使用されるが、その滅菌方法としては、特に限定されるものではなく、エチレンオキサイドガス滅菌、電子線滅菌、ガンマ線滅菌、高圧蒸気滅菌等があげられる。
【0029】
本発明の止血材は、外科、脳神経外科、整形外科、呼吸器外科、消化器外科、形成外科、心臓血管外科、耳鼻咽喉科、肛門科、泌尿器科、産婦人科、口腔外科、歯科、獣医科などの通常外科的手術に伴う出血部位に用いることが可能で、主として胃、食道、肝臓、膵臓、脾臓、胸骨剥離面、仙骨前面、脊椎、脊髄、小腸、大腸、胆のう、腎臓、心臓、膀胱、子宮、肛門、硬膜表面、硬膜近傍骨部、大腿骨や脛骨などの関節手術における骨きり面などに好適に用いられる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例1
キチンの原料を100メッシュパスの粒径に粉砕し、1M−塩酸にて4℃で1時間処理した後、3%苛性ソーダ中90℃で3時間加熱処理し、再度キチンの粉末中に含まれるカルシウム分およびタンパク質を除去し、水洗を繰り返し乾燥した。塩化リチウムを8重量%含むジメチルアセトアミド溶液に得られたキチンを0.2重量%の濃度になるように溶解し、30℃における溶液の粘度を測定したところ265mPa・sであった。
【0031】
次に得られたキチンを8重量%の塩化リチウムを含んだジメチルアセトアミド溶液に7重量%となるように溶解し、ドープを得た。得られたドープは、1480メッシュの金網で濾過し放置脱泡後、タンクに入れ加圧下でギヤポンプにて輸送し、口径0.04mmのノズルから80℃の熱水中に押出し凝固した後、10m/minの速度で引取り再度熱水洗浄、乾燥すると0.81単糸dtexのキチン繊維を得ることができた。上記のごとく得られたキチン繊維を3mmの長さに定長カットした。
【0032】
3mmにカットしたキチン繊維は30%水酸化ナトリウム溶液中で121℃にて1時間処理を行った。処理後、中和、洗浄、乾燥し綿状体を得た。得られた綿状体を構成するキチン繊維の脱アセチル化度は58%であった。
【0033】
この綿状体を0.1Mのマレイン酸のメタノール溶液に室温で30分浸漬した後、ブフナー漏斗およびアスピレーターを用い吸引濾過し、メタノールで15分間の洗浄を5回繰り返し乾燥させた。ミキサー(株式会社日立家電社製、VA-W26)にて酸塩処理した繊維状脱アセチル化キチンを開繊し嵩高い綿状の止血材を得た。滅菌処理としてエチレンオキサイド滅菌を行った。このときの嵩比重は0.0125g/cm3、平均繊維直径11μmであった。得られた止血材の0.1%水分散液のpH(25℃)は、3.8であった。
【0034】
実施例2
実施例1において、0.1Mマレイン酸メタノール溶液による酸塩処理を、3Mマレイン酸水溶液による処理に代えた以外は、実施例1と同様にして止血材を得た。
【0035】
比較例1
実施例1において、0.1Mマレイン酸メタノール溶液による酸塩処理を、2M塩酸水溶液による処理に代えた以外は、実施例1と同様にして止血材を得た。滅菌処理としてエチレンオキサイド滅菌を行った。得られた止血材の物性値は0.1%水分散液のpH(25℃)が4.3であったこと除き実施例1と同じであった。
【0036】
比較例2
実施例1の途中工程で得られた3mmのキチン繊維を脱アセチル化しないでミキサー(株式会社日立家電社製、VA-W26)にて開繊し、綿状物を得た。滅菌処理としてエチレンオキサイド滅菌を行った。このときの嵩比重は0.0125g/cm3、平均繊維直径は11μmであった。
【0037】
試験例1〔除去性の評価〕
実施例1及び比較例1で得られた止血材を用い、以下のようにして除去性を評価するための試験を行った。テーパック(東商実業株式会社製、お茶パックL)に止血材をいれ、蒸留水に5分間浸漬後、5分間吊り下げ水切りをした状態の止血材を飽和吸水状態の止血材とした。この飽和吸水状態の止血材をガラスシャーレに約5g計りとり精評する(初期重量:S)。歯科用ピンセット(先曲・精密タイプ)にて最大限掴み取れる量を掴み、飽和吸水状態の止血材を除去し、このときの残重量(Z)を測定する。残重量が0gに近づくまで繰り返し除去操作を行った。除去率を次式により求め除去性の評価指標とした。測定は5回繰り返し行い平均値を採用した。
除去率=(1−Z(g)/S(g))×100
【0038】
得られた結果を図1に示す。図1から分かるように本発明の止血材(実施例1)は、脱アセチル化キチン塩酸塩(比較例1)よりも100%取除くまでの除去回数が少なくてすみ、明らかに除去性に優れている。
【0039】
試験例2〔止血効果及び除去性の評価〕
実施例1及び比較例1で得られた止血材並びに比較例2で得られた綿状物を用い、以下のようにして止血効果及び除去性の評価の試験を行った。雑種成犬の腹部を切開し肝臓を取り出した後、縦1cm、横2cm、厚み1mmの切除創を3箇所に作製し出血させた。切除創に前記の止血材と綿状物をそれぞれ35mg付与し、以降の経過を観察した。
実施例1及び比較例1の止血材を付与した創では止血材がゲル化し、創に密着して止血効果を発揮した。止血に要した時間は2分であった。一方、比較例2の綿状物を付与した創からは2分以上経過しても出血は続いていた。
止血後、実施例1の剰余止血材はピンセットにより除去できた。止血材除去時の再出血も確認されなかった。一方、比較例1における剰余止血材はゲル化した繊維の集合体が非常に柔らかいためピンセットによる除去性が実施例1より劣った。
【0040】
比較例3〜8
実施例1において、マレイン酸のメタノール溶液を用いた酸塩化処理の代わりに、有機酸として5Mの酢酸、乳酸及びL−リンゴ酸を、溶媒としてメタノール及び水を用いた組合わせで酸塩化処理を行ない、その際の脱アセチル化キチンの浸漬状態を観察した。その後、実施例1と同様に濾過、乾燥、開繊を行い止血材を得た。得られた止血材と蒸留水とを接触させ止血材のゲル化の様子を観察した。得られた結果を表1に示した。表1には実施例1及び実施例2で得られた止血材についても同様の観察を行い併せて表1に示した。
【0041】
【表1】
Figure 0004875804
【0042】
浸漬状態については、比較例3、5、6及び7のものにおいて、繊維が膨潤・ゲル化し一部繊維同士が固着する状態を示した。このような状態のものを乾燥し開繊しても粉末になり、嵩高い綿状のものは得られなかった。一方、実施例1、2、比較例4、8のものは変化がなく、乾燥後開繊することにより嵩高い綿状物が得られた。
【0043】
蒸留水と接触した場合のゲル化の程度については、比較例4、8を除いたほかはゲルになっており止血材として良好に使用できることを示した。比較例4、8のものはゲルにならなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の止血材を上記の出血部位に付与することにより、ゲル化し出血部位に強く付着するので、激しい出血に対しても短時間で確実な止血を行うことができる。また、止血完了後、縫合不全や感染の危険性を少なくするために剰余の止血材をピンセットでの除去や生理食塩水などによる洗浄により除去するが、本発明の止血材は除去性に優れているためピンセットや鉗子等で容易に剰余の止血材を除去することができる。また、止血完了後、剰余の止血材をピンセット等により除去する際、止血に関与している部分の止血材は止血部位から剥離することがないので、再出血をおこさず極めて好適である。したがって、手術時の医師および患者の負担を著しく軽減するものであり非常に有効である。
また本発明の止血材の製造方法は、塩形成溶液中での膨潤がないため次工程の濾過および開繊等の成形加工が極めて容易に行え、工業的にも生産可能な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】止血材の除去性を示す図である。

Claims (4)

  1. 脱アセチル化キチンのマレイン酸塩からなる止血材。
  2. 脱アセチル化キチンが、キチンの脱アセチル化度が20%〜90%である請求項1記載の止血材。
  3. 0.1質量%の水分散液のpHが、2.5〜5の範囲になる請求項1記載の止血材。
  4. 脱アセチル化キチンを、マレイン酸のメタノール溶液に浸漬して脱アセチル化キチンのマレイン酸塩を形成し、洗浄、乾燥して止血材を得ることを特徴とする請求項1記載の止血材の製造方法。
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