以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における参考例を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、流体を吸入及び吐出する、導電性高分子を用いた流体搬送装置であって、
前記流体が内部に満たされるポンプ室と、
前記ポンプ室が内部に形成されかつ前記ポンプ室の壁面の一部を構成する筺体部と、
前記筺体部内に支持されて一部分もしくは全部分が電解伸縮を行う導電性高分子膜で形
成されて、前記筺体部と共に前記ポンプ室の壁面を構成するダイヤフラムと、
前記筺体部に配置されかつ前記ポンプ室において前記流体の吐出及び吸入を行うための
開口部と、
前記筺体部と前記ダイヤフラムとで囲まれかつ内部に電解液を含み、その電解液の一部
が前記ダイヤフラムと接する電解液室と、
前記導電性高分子膜に電圧を印加するための電源と、
前記導電性高分子膜と前記電源とを電気的に接続する配線部と、
前記電解液室の電解液内に位置し、かつ、内部に気体を含む気泡部により、前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持する圧力維持部とを備え、
前記圧力維持部は、前記電解液室の前記電解液内に位置し、かつ、内部に気体を含む前記気泡部で構成する弾性部を備え、前記弾性部の弾性力によって前記電解液と前記電解液以外の部分との界面を変形することによって、前記電解液室内の電解液と前記ポンプ室内の前記流体とにより前記ダイヤフラムに作用する圧力を所定範囲内に維持する圧力維持部とを備え、
前記気泡部の体積は、前記ダイヤフラムが1回伸縮する場合の流体搬送装置の吐出量の10%以上の大きさであるとともに、前記電解液室の体積の20%以下である、導電性高分子を用いた流体搬送装置を提供する。
以下、図を用いて説明するが、本発明はこれらの参考例に限定されるものではない。
(第1参考例)
図1は、本発明の第1参考例にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の斜視図である。
図1の流体搬送装置は、筺体部102と、弾性部の一例としての弾性膜部130と、流体管部200、201、202,203との各部分を備えている。
筐体部102は、およそ円柱の形状である。筐体部102の上下の円形の平面210には、それぞれ2本ずつ、流体管部200、201と流体管部202,203が接続している。筐体部102の側壁102sの貫通穴102hの外側の開口縁部には、円形の弾性膜部130が備えられている。今、後の説明のために、筐体部102の上部の円形の平面を、上部円形平面210と定義する。図1に示すように、直線100A−100Bは、上部円形平面210の1つの直径を含む直線である。また、直線100C−100Dは、上部円形平面210の1つの直径を含む直線であり、直線100A−100Bと直交する。直線100A−100Bを含み、上部円形平面210と垂直な平面を、平面220と定義する(図2参照)。また、直線100C−100Dを含み、上部円形平面210と垂直な平面を、平面221と定義する(図2参照)。
図3は、この第1参考例の前記流体搬送装置を、平面220で切断したときの断面図である。
図3の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、電源110cと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、弾性部の一例としてのバネ部131と、弾性膜部130と、流体管部200、201、202、203とを備えるように構成されている。バネ部131と弾性膜部130とは、以下で説明するように圧力維持部(特に、圧力維持部の弾性部の一例)として働く。
第1ダイヤフラム103は、円板状の導電高分子膜であり、その周辺部が筺体部102の上壁の周辺部に固定されている。第2ダイヤフラム104は、円板状の導電高分子膜であり、その周辺部が筺体部102の下壁部の周辺部に固定されている。第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104とが筺体部102を介して導通しないようにするため、筺体部102自体を絶縁体より構成するか、又は、第1ダイヤフラム103又は第2ダイヤフラム104又はその両方と筺体部102とが絶縁体を介して固定されるようにしている。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104について、以下では簡単のため、単にダイヤフラムと呼ぶ。以下、各部分の形状又は動作について詳しく説明する。
図4は、この第1参考例の流体搬送装置を、平面221で切断したときの断面図である。図4において、バネ部131の形状は簡易に示しているが、バネ部131の構造の例としては、後で説明するように直線100A−100Bと平行な直線を軸とする螺旋形状のコイルバネ構造が考えられる。
この第1参考例においては、第1ポンプ室107は、筺体部102の上壁と第1ダイヤフラム103とで囲まれて構成されており、搬送対象である流体で満たされている。第1ポンプ室107の一部を構成する筺体部102の上壁には、流体管部200が接続されて第1吸入弁121を有する第1吸入口111aと、流体管部201が接続されて第1吐出弁122を有する第1吐出口113aとの2個の開口部が形成されている。また、第2ポンプ室108は、筺体部102の下壁と第2ダイヤフラム104とで囲まれて構成されており、搬送対象である流体で満たされている。第1ポンプ室107の流体と第2ポンプ室108の流体とは同じでもよいし、異なっていてもよい。第2ポンプ室108の一部を構成する筺体部102の下壁には、流体管部203が接続されて第2吸入弁123を有する第2吸入口111bと、流体管部202が接続されて第2吐出弁124を有する第2吐出口113bとの2個の開口部が形成されている。第1及び第2ダイヤフラム103,104及び筐体部102で囲まれたリング状の空間部109を電解液室と定義する。この電解液室109内に前記バネ部131が配置されている。
以下で説明するように、第1及び第2ポンプ室107,108に形成されたこれらの開口部を通じて流体の吸入及び吐出が行われることによって、流体搬送装置としてポンプの動作が行われる。図3で示した状態では、第1ダイヤフラム103が伸張して、第2ダイヤフラム104が収縮した状態である。この状態では、開かれた第1吸入弁121を備えた第1吸入口111aから第1ポンプ室107の外部の流体例えば液体を第1ポンプ室107の内部に吸入して、開かれた第2吐出弁124を備えた第2吐出口113bから第2ポンプ室108の内部の流体を第2ポンプ室108の外部に吐出する。このとき、第1吐出弁122を備えた第1吐出口113aは第1吐出弁122により閉じられており、第2吸入弁123を備えた第2吸入口111bも第2吸入弁123により閉じられている。また、逆に、第1ダイヤフラム103が収縮して第2ダイヤフラム104が伸張した状態では、開かれた第2吸入弁123を備えた第2吸入口111bから第2ポンプ室108の外部の流体例えば液体を第2ポンプ室108の内部に吸入して、開かれた第1吐出弁122を備えた第1吐出口113aから第1ポンプ室107の内部の流体を第1ポンプ室107の外部に吐出する。このとき、第2吐出弁124を備えた第2吐出口113bは第2吐出弁124により閉じられており、第1吸入弁121を備えた第1吸入口111aも第1吸入弁121により閉じられている。これらの2つの状態の切り替えを連続して行うことによって、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の体積の増減が繰り返されて、それに応じてそれぞれのポンプ室107,108に対する流体の吸入と吐出が繰り返される。このことによって、流体搬送装置としてのポンプの機能を果たすことができる。
筺体部102は、内部に空間を有し、例えば直径1cm〜4cm、高さ1cm〜4cmの範囲である円筒状の形状に対して、開口部などの特定箇所に貫通穴が開けられた形状を有し、筺体部102の内部には、直径0.8〜3.8cm、高さ0.8〜3.8cmの範囲の円筒状の内部空間を有する。この場合、筺体部102の厚みは0.2cm程度とするのが好ましい。筺体部102の上面及び底面の形状は、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が均一になるという観点からは、それぞれ、第1及び第2ダイヤフラム103,104の円板の円形より小さい円形であることが望ましいが、他の形状であってもよい。筐体部102の高さは、2枚のダイヤフラム103と104との距離が、以下に説明する範囲となるように、設計されることが望ましい。2枚のダイヤフラム103と104が動作するときに2枚のダイヤフラム103と104がお互いに接触した場合、お互いが電気的に短絡して正常に動作しないことが考えられる。また、第1及び第2ダイヤフラム103と104の動作が制限されて、ポンプの吸入及び吐出の効率が低下する。以上の観点から、2枚のダイヤフラム103と104が動作するときに2枚のダイヤフラム103と104がお互いに接触しないように、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離が、ある一定値以上であることが望ましい。また、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離が大きすぎる場合、2枚のダイヤフラム103と104との間の電解液室109内に存在する電解液における電圧降下の影響が大きくなり、消費電力が大きくなる。また、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離が大きすぎる場合、流体搬送装置を小型にすることが難しい。以上の理由から、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離は、ある一定値以下であることが望ましい。以上の点を考慮して、2枚のダイヤフラム103と104の最も接近している部分の距離、及び、筺体部102の高さは設計されることが望ましい。
図5は、この第1参考例の流体搬送装置の各部分の大きさの具体的な例を示した図である。筺体部102の内部空間は、2枚のダイヤフラム103と104で3個の空間に分割されており、それぞれ、第1ポンプ室107、電解液室109、第2ポンプ室108を形成する。ダイヤフラム103及び104の一部分もしくは全部分はポリマーアクチュエータ材料で形成されており、例えば、厚さ5μm〜30μm、直径約1cm〜4.5cmの円板形状である。この第1参考例においては、ダイヤフラム103及び104は、図3及び図5に示すように凸形状にたわんだ状態で使用されるので、この状態においてはダイヤフラム103及び104の大きさは、筺体部102の内部空間の底面よりも大きい。図5では、第1吸入口111aと第2吸入口111bと第1吐出口113aと第2吐出口113bの直径は3mm、筺体部102の高さは10mm、弾性膜部130が形成された筺体部102の側壁102sの外面から筺体部102の側壁102に対向する側壁102の内面までの距離(言い換えれば、筺体部102の内部空間の底面の直径方向沿いの筺体部102の内部空間の距離と筺体部102の側壁102sの厚みとの合計の距離)を30mmとする。
前記第1及び第2ダイヤフラム103及び104を構成するポリマーアクチュエータ材料は、電解伸縮を行う導電性高分子膜の材料であり、具体的な例としては、ポリピロール及びポリピロール誘導体、ポリアニリン及びポリアニリン誘導体、ポリチオフェン及びポリチオフェン誘導体、及び、これらから選ばれる1種類又は複数種類からなる(共)重合体が挙げられる。特に、ポリマーアクチュエータ材料としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリN−メチルピロール、ポリ3−メチルチオフェン、ポリ3−メトキシチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、及び、これらから選ばれる1種類又は2種類からなる(共)重合体が好ましい。また、これらの材料で構成される導電性高分子膜は、例えば六フッ化リン酸イオン(PF6−)、p−フェノールスルホン酸イオン(PPS)、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン(DBS)、又は、ポリスチレンスルホン酸イオン(PSS)などの負イオン(アニオン)をドーピングした状態で使用するのが好ましい。このようにドーピングした状態において、前記の導電性高分子膜は、導電性を有してポリマーアクチュエータとしての機能を発生する。これらの導電性高分子膜は、化学重合又は電解重合で合成した後、必要な場合、成型の処理を行うことによって作製可能である。
次に、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラム103及び104の厚さについて説明する。ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムが厚い場合、ポリマーアクチュエータの電解伸縮による仕事において大きな力を得ることが可能である。また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムが薄い場合、ポリマーアクチュエータ材料へのイオンの出入りがすばやく行われるために、ポンプの動作を高速にすることが可能である。これらの点を考慮してポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの厚さを設計することが望ましい。前記観点から、一例として、前記ダイヤフラム103及び104のそれぞれの厚さは0.1〜1000μmの範囲であることが望ましく、その中でも特に1μm〜100μmが望ましい。
また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を大きくした場合、ポリマーアクチュエータの電解伸縮による仕事量を大きくすることが可能である。また、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を小さくした場合、必要な筺体の体積を小さくすることができるため、流体搬送装置を小型にすることが可能である。これらの点を考慮して、ポリマーアクチュエータ材料で構成される前記ダイヤフラムの面積を設計することが望ましい。前記観点から、一例として、前記ダイヤフラム103及び104のそれぞれの面積は0.01cm2〜1000cm2であることが望ましく、その中でも特に0.1cm2〜100cm2であることが望ましい。
電解液室109には、電解液が満たされている。ここで、電解液とは、液体状の電解質を示すものとし、例えば、イオン性物質を水などの極性溶媒に溶解させて作った電気伝導性を有する溶液、又は、イオンからなる液体(イオン液体)などが考えられる。電解液の例としては、NaPF6、TBAPF6、HCl、若しくは、NaClなどの電解質を、水、もしくは、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に溶解させたもの、又は、BMIPF6などのイオン液体が利用可能である。
ダイヤフラム103と104には、それぞれ、配線部110aと110bの一端が接続されている。また、配線部110aと110bの他端は電源110cに接続されている。第1ポンプ室107と第2ポンプ室108には、流体搬送装置としてのポンプが吸入と吐出を行う流体が入れられている。ポンプが吸入と吐出を行う流体は、例えば水が考えられる。筺体部102は、電解液に対して耐性がある材料で形成されており、例えばポリカーボネイト樹脂又はアクリル樹脂を含む材料、又は、これらの材料に対して表面硬化処理を行った材料で構成される。
第1吸入口111aと第2吸入口111bは第1吸入弁121と第2吸入弁123を有し、ポンプ室107,108の外部からポンプ室107,108に向かって流体がそれぞれ吸入される方向にのみ流れる構造となっている。第1吐出口113aと第2吐出口113bは第1吐出弁122と第2吐出弁124を有し、ポンプ室107,108からポンプ室107,108の外部に向かって流体がそれぞれ吐出される方向にのみ流れる構造となっている。各吸入口と各吐出口の形状は、流体を吸入及び吐出する際に必要な圧力又は流量、及び、流体の粘性などを考慮して設計される。
電源110cの電圧は、例えば±1.5Vのサイン波もしくは矩形波で変化する。このことにより、ダイヤフラム103と104の間に周期的に変化する電圧が印加される。一方のダイヤフラム103又は104に正の電圧が印加されたときには、そのダイヤフラム103又は104を構成する導電性高分子膜は酸化される。そして、これに応じて、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜から正イオン(カチオン)が抜け出したり、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜に負イオン(アニオン)が入り込んだりする変化が生じる。このことによって、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜において、収縮もしくは伸張(膨張)などの変形が生じる。逆に、前記一方のダイヤフラム103又は104に負の電圧が印加されたときには、そのダイヤフラム103又は104を構成する導電性高分子膜は還元される。そして、これに応じて、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜に正イオン(カチオン)が入り込んだり、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜から負イオン(アニオン)が抜け出したりする変化が生じる。このことによって、前記一方のダイヤフラム103又は104の導電性高分子膜において、伸張(膨張)もしくは収縮などの変形が生じる。
図6A、図6B、図6C、図6Dは、電源110cによって周期的な正弦波電圧を印加したときのポンプの動作を示す図である。今、正弦波電圧の振幅をVとする。これらの図6A〜図6Dにおいては、主に負イオンの出入りによってダイヤフラム103,104のそれぞれの導電性高分子膜の伸張と収縮の変形が生じる場合の例を示している。なお、図6A〜図6Dにおいて、理解しやすくするため、ダイヤフラム103,104に対して負イオン99の大きさを拡大して図示している。
図6Aにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104の電圧はともに0である。すなわち、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位である。
図6Bにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に正の電圧(+V)が加えられるとともに、電源110cから第2ダイヤフラム104に負の電圧(−V)が加えられている。
図6Cにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104の電圧はともに0である。すなわち、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位である。
図6Dにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に負の電圧(−V)が加えられるとともに、電源110cから第2ダイヤフラム104に正の電圧(+V)が加えられている。
今、図6A→図6B→図6C→図6D→図6A→図6B→図6C→図6D→・・・に示されるように、周期的に状態が変化する場合を考える。
図6Aにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位であり、電解液室109内の電解液に含まれる負イオン99は電解液内でほぼ一様に分布している。ただし、第1ダイヤフラム103の電位が増加しつつあるので、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の酸化が進む。すなわち、例えば、時刻tにおける第1ダイヤフラム103の電位V(t)がV×sin(ωt)と表され、時刻0において図6Aの状態になる場合を考えると、図6Aの状態において第1ダイヤフラム103の電位は0であり、V(t)の導関数は時刻0においてVωであるので、図6Aの状態において電位が増加しつつあることがわかる。これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第1ダイヤフラム103に引き寄せられ、また、その負イオン(アニオン)99の一部が第1ダイヤフラム103の内部に入り込む。この結果、第1ダイヤフラム103が伸張する。第1ダイヤフラム103の伸張に伴い第1ポンプ室107の体積が増加するので、第1吸入弁121が開き、第1吸入口111aから流体が第1ポンプ室107の外部から第1ポンプ室107内に流入する。また、前記第1ダイヤフラム103の電位が増加しつつあるのと同時に、第2ダイヤフラム104の電位が減少しつつあるので、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の還元が進む。これに応じて、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜から、負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出す。この結果、第2ダイヤフラム104が収縮する。第2ダイヤフラム104の収縮に伴い第2ポンプ室108の体積が減少するので、第2吐出弁124が開き、第2吐出口113bを通して第2ポンプ室108の内部の流体が第2ポンプ室108の外部に流出する。なお、流体搬送装置の構造は、電源110cから見てキャパシタンスとして働く。図6Aの状態においては、第2ダイヤフラム104に対する第1ダイヤフラム103の電位が増加しつつあるので、前記キャパシタンスにおいて外部から第1ダイヤフラム103に正電荷を蓄積する方向の電流が流れる。
なお、弾性膜部130と、バネ部131の動きについては、後で詳しく説明する。
次に、図6Bにおいては、電源110cから第1ダイヤフラム103に正の電圧(+V)が加えられるとともに、電源110cから第2ダイヤフラム104に負の電圧(−V)が加えられている。この状態においては、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜は酸化されていて、これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第1ダイヤフラム103に引き寄せられている。そして、負イオン(アニオン)99の一部が、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の内部に入り込んでいる。この結果、第1ダイヤフラム103は伸張している。図6Bにおいて、比較のために図6Aにおける第1ダイヤフラム103の位置を点線で示している。 今、説明のための例として、時刻tにおける第1ダイヤフラム103の電位V(t)がV×sin(ωt)と表され、時刻0において図6Aの状態になり、時刻π/(2ω)において図6Bの状態になる場合を考える。この場合、図6Bの状態において第1ダイヤフラム103の電位は最大値Vであり、これに伴い、第1ダイヤフラム103は最も伸張した状態である。また、V(t)の導関数は時刻π/(2ω)において0であるので、図6Bの状態において電位の変化はなく、これに伴い、第1ダイヤフラム103の速度は0であり、ポンプへの流体の吐出及び吸入の流量は0となる。ただし、ここでは簡単のために、イオン液体又は流体の粘性などを無視して、電圧の変化と同期してダイヤフラム103の伸張と収縮が行われて、ダイヤフラム103の変形速度に同期して流体の吐出及び吸入が行われる場合を考えている。
また、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜は還元されていて、これに応じて、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜から負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出している。この結果、第2ダイヤフラム104が収縮している。図6Bにおいて、比較のために図6Aにおける第2ダイヤフラム104の位置を点線で示している。ただし、この状態においては、電位の変化はほぼ0であるため、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の形状又は負イオン99の分布の変化もほぼ0であり、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108における流体の出入りもほぼ0である。そして、第1ダイヤフラム103は最も伸張した状態であり、第2ダイヤフラム104は最も収縮した状態である。
図6Aの状態からの第1及び第2ダイヤフラム103及び104のそれぞれの伸張量を考えた場合、図6Bの状態においては、第1ダイヤフラム103の伸張量は正の値をとり、その値は周期内での最大値となっており、第2ダイヤフラム104の伸張量は負の値をとり、その値は周期内での最小値となっている。また、電源110cから流れる電流はほぼ0となる。この状態においては、流体の流れもほぼ0になっている。
図6Cにおいては、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104は等電位であり、電解液に含まれる負イオン99は、電解液内でほぼ一様に分布している。ただし、第2ダイヤフラム104の電位が増加しつつあるので、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の酸化が進む。これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第2ダイヤフラム104に引き寄せられ、また、その一部が第2ダイヤフラム104の内部に入り込む。この結果、第2ダイヤフラム104が伸張する。第2ダイヤフラム104の伸張に伴い第2ポンプ室108の体積は増加するので、第2吸入弁123が開き、第2吸入口111bから流体が第2ポンプ室108の外部から第2ポンプ室108内に流入する。また、第1ダイヤフラム103の電位が減少しつつあるので、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜の還元が進む。これに応じて、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜から負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出す。この結果、第1ダイヤフラム103が収縮する。第1ダイヤフラム103の収縮に伴い第1ポンプ室107の体積は減少するので、第1吐出弁122が開き、第1吐出口113aを通して第1ポンプ室107内から流体が第1ポンプ室107の外部に流出する。なお、流体搬送装置の構造は電源110cから見てキャパシタンスとして働く。図6Cの状態においては、第1ダイヤフラム103に対する第2ダイヤフラム104の電位が増加しつつあるので、前記キャパシタンスにおいて外部から第1ダイヤフラム104に正電荷を蓄積する方向の電流が流れる。また、図6Cの状態における第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置は、図6Aにおける第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置とほぼ同じである。
図6Dにおいては、電源110cから第2ダイヤフラム104に正の電圧(+V)が加えられるとともに、電源110cから第1ダイヤフラム103に負の電圧(−V)が加えられている。この状態においては、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜は酸化されていて、これに応じて、電解液に含まれる負イオン(アニオン)99が第2ダイヤフラム104に引き寄せられている。そして、負イオン(アニオン)99の一部が、第2ダイヤフラム104を構成する導電性高分子膜の内部に入り込んでいる。この結果、第2ダイヤフラム104は伸張している。図6Dにおいて、比較のために図6Aにおける第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置を点線で示している。また、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜は還元されていて、これに応じて、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜から負イオン(アニオン)99が電解液に抜け出している。この結果、第1ダイヤフラム103が収縮している。ただし、この状態においては、電位の変化はほぼ0であるため、第1及び第2ダイヤフラム103,104の形状又は負イオン99の分布の変化もほぼ0であり、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108における流体の出入りもほぼ0である。そして、第1ダイヤフラム103は最も収縮した状態であり、第2ダイヤフラム104は最も伸張した状態である。
図6Aの状態からの第1及び第2ダイヤフラムの伸張量を考えた場合、図6Dの状態においては、第1ダイヤフラム103の伸張量は負の値をとり、その値は周期内での最小値となっており、第2ダイヤフラム104の伸張量は正の値をとり、その値は周期内での最大値となっている。また、電源110cから流れる電流はほぼ0となる。この状態においては、流体の流れもほぼ0になっている。
以上の動作を繰り返すことにより、流体の吸入と吐出が行われる。なお、導電性高分子膜の変形のメカニズムは、イオンの挿入による体積増加、同種イオンの静電反発、π電子の非局在化による分子の形状変化などの理由が想定されるが、詳細は完全に解明されていない。
前記の説明では、簡単のために、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電位と、流体搬送装置の構造に蓄積される電荷量及び第1及び第2ダイヤフラム103,104の伸張量が同位相で変化する場合を考えたが、実際の動作においては、流体の粘性、又は、配線部及び電源の抵抗、又は、導電性高分子膜と配線部との接触部分の抵抗、又は、導電性高分子膜の内部抵抗、又は、電荷移動抵抗、又は、導電性高分子膜内へのイオン拡散を示すインピーダンス、又は、溶液抵抗、などの影響により、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電位と、流体搬送装置の構造に蓄積される電荷量及び第1及び第2ダイヤフラム103,104の伸張量との間で位相差が発生する場合がある。
なお、この第1参考例において、電解液室109は電解液で満たされており、一般的に電解液は非圧縮性流体であるので、ポンプ動作時に電解液室109の体積はほぼ一定に保たれる。このため、一方のダイヤフラム103又は104が収縮して凸形状の膨らみが小さくなった場合、電解液室109の体積をほぼ一定に保つために、他方のダイヤフラム104又は103は凸形状の膨らみが大きくなるように力を受ける。すなわち、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104は電解液を介してお互いの間で仕事という形でエネルギーのやり取りを行う。
次に、弾性膜部130と、バネ部131の構成について説明する。
弾性膜部130は、筺体部102の側壁102sに形成された円形の貫通穴102hを塞ぐ形態で固定されており、ゴム又は合成樹脂(プラスチック)などの弾性を有する材料(弾性材料)で円形膜状に構成されている。弾性膜部130を構成する弾性材料としては、例えばシリコーンゴムなどが考えられる。
バネ部131は、例えば、弾性のある金属又は合成樹脂材料を螺旋状に巻いた形状を有しており、コイルバネとしての機能を有する。また、バネ部131の螺旋形状の軸が、図1に示した直線100A−100Bと平行な直線上に載るように配置されている。バネ部131は、定常状態から縮んだ状態で、両端が弾性膜部130と弾性膜部130に対向する筺体部102の側壁102sとに接する形で固定されている。弾性膜部130は、バネ部131から、筺体部102の外向きに力を受けて、外側に凸状の形状に変形している。すなわち、図3などにおいて、弾性膜部130は、バネ部131から右向きの力を受けて、右向きに凸状の形状に変形している。弾性膜部130の形状は、図1などにおいては、球面の一部に近い形状を示しているが、弾性膜部130の膜厚が小さい場合などには、円錐に近い形状などの他の形状になる場合もある。
流体搬送装置の初期状態においては、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力が、以下の範囲になるように流体搬送装置は構成される。すなわち、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力を想定して、その圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるように、流体搬送装置は構成される。このことにより、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に想定圧力が加わった場合、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は、図3に示すように電解液室109の方向に見て凸形状になった状態に保たれる。初期状態において、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力を前記範囲にするための方法としては、例えば、流体搬送装置の各部分を組み立てて内部に電解液を満たすときに、筺体部102の側壁102sに小さな貫通穴102gを開けておいて、その小さな貫通穴102gからシリンジなどの器具を用いて電解液を一部抜き出し、その後、前記小さな貫通穴102gをゴム栓などの封止部材102fで封止することによって、電解液の圧力を所定の圧力とする(すなわち、ポンプ動作時の第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるようにする)方法が考えられる。また、別の方法としては、流体搬送装置の各部分を組み立てて内部に電解液を満たすときに、筺体部102と弾性膜部130との間の一部に隙間を空けておいて、この状態で弾性膜部130を押し込むことにより、電解液の一部を抜き出し、その後、隙間の部分を封止し、弾性膜部130の押し込む力を除いて弾性膜部130及びバネ部131が、それらの弾性力によって元の形状に戻ろうとする力によって電解液の圧力を減少し、電解液の圧力を所定の圧力とする(すなわち、ポンプ動作時の第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも初期状態の電解液の圧力が小さくなるようにする)方法が考えられる。なお、電解液を電解液室109内に注入する際には、内部の空気を追い出すための空気穴を設けておいて、注入が終った後に空気穴を封止ことも可能である。
このようなダイヤフラム103,104を用いた流体搬送装置においては、ダイヤフラム103,104が弛んだ状態となると、導電性高分子膜が伸縮した場合の力がポンプ室の流体に効率良く伝わらず力が逃げてしまう。このことから、ポンプの動作時にダイヤフラム103,104が弛まずに張った状態に保つことが重要である。本発明の前記第1参考例にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さくした場合、後で説明する弾性膜部130とバネ部131の働きによって、ポンプの動作時にも電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さく保つことが可能である。このことによって、ポンプの動作時に第1及び第2ダイヤフラム103,104において第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向に力が加わるので、この力によって、第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張った状態を保つことが可能である。このことによって、導電性高分子膜の電解伸縮の力が第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体に効率良く伝わるので、流体の吐出と吸入の効率を高く保つことが可能である。
次に、弾性膜部130とバネ部131との動作について説明する。以下で詳しく説明するように、弾性膜部130とバネ部131は、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適正に保つ働きがある。このことにより、ポンプの動作効率を向上することができる。
先に説明したように、従来技術のポンプにおいては、以下の2つのメカニズムによってダイヤフラムの張力が大きく変化して、このことによって、ポンプの動作効率が低下するという問題点がある。従来技術のポンプにおいて、ダイヤフラムの張力が変化する一つ目のメカニズムは、ポンプ動作時に行われる導電性高分子膜の周期的な電解伸縮によるものである。従来技術のポンプにおいて、ダイヤフラムの張力が変化する二つ目のメカニズムは、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由によるものである。本発明の第1参考例においては、ポンプ動作時に行われる導電性高分子膜の周期的な電解伸縮によって第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が変化する場合、又は、それ以外の理由によって第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が変化する場合において、ダイヤフラム103,104の張力を適正に保つことが可能である。
まず、ポンプ動作時に導電性高分子膜が周期的に電解伸縮を行うときに弾性膜部130とバネ部131によって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
今、筺体部102の内部空間に注目する。ここで、筺体部102の内部空間とは、筺体部102の内部に形成された円筒状の空間である。図7に示すように、筺体部102の内部空間において、第1ポンプ室107の部分と、第2ポンプ室108の部分を除いた部分を、電解液室筐体内部分190と定義する。すなわち、電解液室筐体内部分190は、筺体部102の内部空間において、第1及び第2ダイヤフラム103及び104によって挟まれた空間部分である。また、筺体部102の側壁102sの貫通穴102hの部分に位置して、図7において参照符号191で示される空間部分を、開口空間部分191と定義する。また、貫通穴102hの部分の筐体部102の外側に位置して、弾性膜部130に囲まれる空間部分を、弾性膜内側空間部分192と定義する。このとき、電解液室109の体積は、電解液室筐体内部分190の体積と、開口空間部分191の体積と、弾性膜内側空間部分192の体積との和で定義される。
上で説明したように、ポンプの動作中に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛んだ状態になると、第1及び第2ダイヤフラム103,104の導電性高分子膜が伸縮しても力が逃げてポンプ室107,108の流体例えば液体に力が効率良く伝わらないので、流体の吸入と吐出の効率が著しく低下する。すなわち、ポンプの動作効率を高くするためには、動作中に常に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張られた状態に保たれることが必要である。
ポンプの動作中に常に第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛まずに張られた状態に保たれる場合、既に図25C及び図25Dを用いて説明したのと同様に、第1参考例でも、第1ポンプ室107の体積と第2ポンプ室108の体積の合計値は、「(第1ダイヤフラム103の面積)=S0の関係を示す直線」を対称軸とした左右対称の形状となり、第1ダイヤフラム103の面積=S0において、極大値もしくは極小値をとる。ただし、第1ダイヤフラム103の面積と第2ダイヤフラム104の面積が等しくなるときのそれらの値をS0としている。これらのグラフからわかるように、第1ダイヤフラム103の面積が変化すれば、第1ポンプ室107の体積と第2ポンプ室108の体積の合計値は変化する。今、筐体部102の内部の体積をWtとした場合、電解液室筐体内部分190の体積はWtから第1ポンプ室及び第2ポンプ室の合計体積を引いた値となる。よって、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の合計体積の変化に応じて、電解液室筐体内部分190の体積も変化する。これに応じて、弾性膜部130の形状は、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれるように変化する。今、電解液室筐体内部分190の体積が増加した場合、それに応じて電解液の圧力が減少するので、弾性膜部130における弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と筐体部102の外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなり、弾性膜内側空間部分192の体積が減少する。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。また、逆に、電解液室筐体内部分190の体積が減少した場合、それに応じて電解液の圧力が増加するので、弾性膜部130における弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、弾性膜部130の凸形状の膨らみが大きくなり、弾性膜内側空間部分192の体積が増加する。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。以上の結果として、電解液室109の内部に満たされた電解液室109の体積もほぼ一定となり、電解液の圧力もほぼ一定に保たれる。
本発明の前記第1参考例にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定すると、弾性膜部130及びバネ部131の動作によって、電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つことが可能である。ここで、前記「初期状態において電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定する」とき、初期状態における流体の圧力が0.101MPa(1atm)である場合には、初期状態における電解液の圧力(電解液の初期圧力)は約0.091MPa〜0.101MPa(0.9atm〜0.999atm)の範囲内に設定することが望ましい。その中でも特に約0.100MPa〜0.101MPa(0.99atm〜0.999atm)の範囲内に設定することが望ましい。電解液の初期圧力が前記範囲より小さい場合には、流体と電解液の圧力差が大きすぎてダイヤフラムの動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の初期圧力が前記範囲より大きい場合には、ポンプの動作中にダイヤフラムが緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。また、前記「電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つ」とは、ポンプの動作中における電解液の適切な圧力を、例えば約0.051MPa〜0.101MPa(0.5atm〜0.999atm)の範囲内に保つことを意味している。ポンプの動作中における電解液の圧力が前記範囲より小さい場合には、流体と電解液の圧力差が大きすぎて、ダイヤフラムの動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の圧力が前記範囲より大きい場合には、流体と電解液の圧力差が小さくなりすぎて、ダイヤフラムが緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。前記したように、弾性膜部130及びバネ部131の動作によって、電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つため、常に、電解液の圧力を、第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さく保つことが可能である。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103,104には第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向にある一定範囲の力が加わるので、この力によって第1及び第2ダイヤフラム103,104は弛まずに張った状態に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれる。ここで、ダイヤフラム103,104の張力の適切な値は、例えば0.101MPa〜10.1MPa(約1atm〜約100atm)の範囲である。ダイヤフラム103,104の張力が前記範囲より大きい場合には、ダイヤフラム103,104の動きが阻害されるという問題が生じる。また、ダイヤフラム103,104の張力が前記範囲より小さい場合には、ダイヤフラム103,104が緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性がある。このように第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれることから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が電解液室109の方向に見て凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれて、電解液室109内の電解液と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体とにより第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲(一定の範囲)内に維持される。ここで、ポンプの動作中における、電解液室109内の電解液の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力との差によって第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力の範囲としては、例えば0.0101MPa〜0.000101MPa(0.1atm〜0.001atm)の範囲が望ましい。電解液の圧力と流体の圧力との差によってダイヤフラム103と104に加わる圧力が前記範囲より大きい場合には、ダイヤフラム103と104の動きが阻害されるという問題が生じるためである。また、電解液の圧力と流体の圧力との差によってダイヤフラム103と104に加わる圧力が前記範囲より小さい場合には、ダイヤフラム103と104が緩んでポンプ動作の効率が低下するという問題が生じる可能性があるためである。
このようにダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲(一定の範囲)内に維持される状態がポンプ動作時に常に保たれるために、第1及び第2ダイヤフラム103,104のそれぞれの導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。すなわち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
次に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力に変化が生じた場合に、弾性膜部130とバネ部131によって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜に周期的な電圧を印加して動作を行ったときに、
(i)一定方向に歪みが蓄積されること、又は、
(ii)導電性高分子膜が電解液を吸うことによって膨張などの変形を生じること、又は、
(iii)導電性高分子膜においてクリープに代表される非可逆的もしくは可逆的な形状変化が生じること、又は、
(iv)導電性高分子膜の固定部の変形又はズレなどが発生する。このために、ダイヤフラムの面積又は形状又は配置が変化することがある。この場合、従来例に示したポンプにおいては、前記のように、ポンプを製造するときに導電性高分子膜を張力がかかる状態で設置した場合でも、ダイヤフラムに所望の張力(引っ張り方向の応力)が加えられない状況が生じる。
しかし、この第1参考例においては、このようにダイヤフラムに所望の張力が加えられないといった張力の変化を、弾性膜部130とバネ部131の変形によって吸収させるために、ダイヤフラムに加えられる張力は一定範囲内に保つことができる。
これについて、以下に、具体的に説明する。図8及び図9は、この第1参考例において第1及び第2ダイヤフラム103,104に加わる張力の変化が生じたときの第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する状態を示す。図8は、第1及び第2ダイヤフラム103と104が前記の理由で張力の変化が生じて伸びた場合の、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する様子を示す。図8において、点線は、図3の状態における第1及び第2ダイヤフラム103,104の位置を示す。この図8において、第1及び第2ダイヤフラム103と104は、図3に比べて伸びる方向に変形しているが、このことにより、一時、電解液室109の体積が減少し、電解液の圧力が増加する。このことから、弾性膜部130における、弾性膜部130の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と外部雰囲気の圧力とのバランスが崩れる。この結果、弾性膜部130とバネ部131の弾性によって、バネ部131が伸びて、弾性膜部130の凸形状の膨らみが筺体部102の外向きに大きくなるように変形する。これに伴って、筺体部102の内部の電解液室109内の電解液の一部は、弾性膜部130の方向に吸い出され(すなわち、開口空間部分191を介して弾性膜内側空間部分192内に吸い出され)、電解液室109の体積は、ほぼ初期状態の値に戻る。このことから、電解液の圧力が、ほぼ初期状態の値に戻る。
また、逆に、図9は、第1及び第2ダイヤフラム103と104が周期的な電解伸縮以外の理由で縮んだ場合の、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対する圧力を所定の範囲内に維持する様子を示す。図9において、点線は、図3の状態における第1及び第2ダイヤフラム103と104の位置を示す。この場合、弾性膜部130とバネ部131の弾性によって、バネ部131が縮んで、弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなるように変形する。このことから、電解液の圧力がほぼ初期状態の値に保たれる。
以上の働きから、本発明の前記第1参考例にかかる流体搬送装置においては、初期状態において電解液の圧力をポンプ室内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に設定すると、第1及び第2ダイヤフラム103,104の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸縮した場合においても、弾性膜部130及びバネ部131の動作によって、電解液の圧力も、ある一定の範囲内に保つことが可能である。この結果、常に、電解液の圧力を第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体の圧力よりも小さい適切な値に保つことが可能である。このことから、第1及び第2ダイヤフラム103,104には、第1及び第2ポンプ室107,108から電解液室109の方向に、ある一定範囲の力が加わるので、この力によって、第1及び第2ダイヤフラム103,104は弛まずに張った状態に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力は適切な値に保たれる。このことから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が電解液室109の方向に見て凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれて、電解液室109内の電解液と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体とにより第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲内に維持される。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。すなわち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
このように、本発明の前記第1参考例にかかるポンプにおいては、ポンプ動作時に常に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内に保たれて、電解液室109内の電解液と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体とにより第1及び第2ダイヤフラム103と104に作用する圧力が所定の範囲内に維持されるために、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
なお、前記の説明では、流体搬送装置に弁を有する構成について説明したが、一定量の流体の吐出と吸入を連続して行う場合、それぞれの第1及び第2ポンプ室107,108に、弁を持たない開口部をそれぞれ1つずつ設けて、それらの開口部から吸入と吐出をそれぞれ繰り返す形態で使用することも可能である。この場合、各ポンプ室において、1つの開口部が、吐出口及び吸入口の働きを兼ねる。
各ダイヤフラム103,104としては、ポリマーアクチュエータ材料によって構成する例を示したが、他の膜と重ね合わせた積層構造であってもよい。例えば、ポリマーアクチュエータ材料における電圧降下の影響を小さくするために、導電性が大きい材料を、ポリマーアクチュエータ材料の表面の全部分もしくは一部分に形成することも可能である。これらの場合、ポリマーアクチュエータ材料の動作を妨げないように、他の材料は剛性が小さい材料で形成すること、又は、変形しやすい形状に加工されていることが望ましい。
また、各ダイヤフラム103,104の一部をポリマーアクチュエータ材料以外の材料で形成することも可能である。特に、各ダイヤフラム103,104の一部を弾性膜で形成した場合には、ポリマーアクチュエータ材料に加わる張力をより均質にして、ポンプの動作をスムーズに行えるなどの効果がある。
前記の構成を採用することにより、流量は約10〜100ml/分の範囲であり、流体を吐出する最大の圧力が約1〜10kPaの範囲である流体搬送装置を構成することが可能である。ただし、前記形態に限らず、一般的に、必要な流量及び圧力に応じて、流体搬送装置の形状又は大きさを設計可能である。
従来例の図22Aに示した構造では、2枚のダイヤフラムが中央の1点で互いに固定されているため、2枚のダイヤフラムにそれぞれシワが発生しやすい。すなわち、ダイヤフラムの膜の剛性又は形状に偏りがある場合に、ダイヤフラムの固定点と周辺部を結ぶ複数の線分及びその周りの部分に張力が集中する。このことから、ダイヤフラムにシワが発生し、ダイヤフラムの電解伸縮の仕事が、ポンプの吸入と吐出に効率良く利用されない。
これに対して、この第1参考例においては、第1及び第2ダイヤフラム103,104の中央部分に固定点が無い構造であり、第1及び第2ポンプ室107,108と電解液室109との間の圧力差によって、第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛むことなく、第1及び第2ダイヤフラム103,104が適切な張力で凸形状に張った状態に保たれている。このことから、この第1参考例の第1及び第2ダイヤフラム103,104では、従来例のように、ダイヤフラムの固定点と周辺部を結ぶ複数の線分及びその周りの部分に張力が集中することはない。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103,104にシワが発生することが防止されて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の電解伸縮の仕事が、ポンプの吸入と吐出に効率良く利用される。
また、前記のように、従来例の図22Bに示した構造に比べて、この第1参考例の流体搬送装置は、第1及び第2ダイヤフラム103,104の張力が適切な値に保たれるため、流体の吐出と吸入の効率を向上することができる。
以上をまとめると、この第1参考例の流体搬送装置においては、弾性膜部130とバネ部131が、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を適切な範囲内に維持する機能(圧力維持機能)を有する。本明細書においては第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する機能を有する部分を圧力維持部と呼ぶ。すなわち、この第1参考例においては、弾性膜部130とバネ部131が、圧力維持部を構成する。第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸びて第1及び第2ダイヤフラム103,104の引っ張り方向の応力(張力)が小さくなって第1及び第2ダイヤフラム103,104が緩んだ(弛んだ)とき(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定範囲外に小さくなったとき)には、弾性膜部130とバネ部131が筺体部102内の電解液を吸い出す方向に変形するために、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。また、第1及び第2ダイヤフラム103,104が縮んで第1及び第2ダイヤフラム103,104の引っ張り方向の応力(張力)が大きくなった場合(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定範囲外に大きくなったとき)には、弾性膜部130とバネ部131が筺体部102の電解液室109内の電解液を筺体部102の外向きに押し出す方向に変形するために、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。すなわち、第1及び第2ダイヤフラム103,104の変形による応力(張力)の変化に対応して、電解液室109の壁面の一部である弾性膜部130が変形することによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。
さらに、この第1参考例の流体搬送装置は、第1及び第2ダイヤフラム103,104の中央部分に固定点が無い構造であり、第1及び第2ポンプ室107,108と電解液室109との間の圧力差によって第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛むことなく適切な張力で凸形状に張った状態に保たれており、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が面全体にわたってほぼ均質な値に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
以上のことから、この第1参考例の流体搬送装置は、電源110cから加えられる電気的エネルギーの中でポンプ室107,108の流体の吐出と吸入の仕事に使われる割合を仕事効率と呼ぶものとすると、前記の圧力維持機能によって、ポンプの仕事効率が従来のポンプに比べて向上する。
第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する機能を有する部分である圧力維持部は、前記のように、電解液室内部の電解液室109の体積を適切な値に保ち、電解液の圧力を適切な値に保つ。このことによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が適切な値に保つことが可能である(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持することが可能である)。特にこの第1参考例に示すように、電解液室109の壁面の少なくとも一部を弾性体(例えば、弾性膜部)130で形成して、電解液室内部の圧力に応じて弾性体130が変形する構造であれば、電解液室109の内部の圧力と第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)を自動的に調整可能である(言い換えれば、電解液室109の内部の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力がそれぞれ所定の範囲に維持可能である)。
また、この第1参考例のように2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104が互いに逆位相で伸長と収縮を行う構造においては、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104が行う仕事を流体の吐出と吸入に使えるので、吐出と吸入の仕事量を大きくすることが可能である。
次に、図10は、本発明の第1参考例の第1の変形例を示している。前記第1参考例の図3では、筐体部102の側壁102sの貫通穴102hの外側の開口縁部に円形の弾性膜部130が固定されていたが、この第1の変形例では、円形の弾性膜部130Aが、筐体部102の側壁102sの貫通穴102hの内側の開口縁部に固定され、かつ、弾性膜部130Aが電解液室109内に向けて凸形状となっており(言い換えれば、筺体部102の外部に対しては凹形状となっており)、弾性膜部130Aが圧力維持部として働く。この第1の変形例において、電解液室109の内部の圧力は、筺体部102の外部圧力及び第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも低く保たれている。電解液室109の内部の圧力変化に応じて、弾性によって弾性膜部130Aの凸形状の膨らみが変化するので、電解液室109の体積と圧力を適切な範囲に保つことができて、結果として、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)を適切な値に保つことが可能である(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持可能である)。例えば、第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸びた場合、電解液室109の体積が小さくなり、電解液の圧力が大きくなるので、弾性膜部130Aの凸形状の膨らみが小さくなる。このことによって、電解液室109の体積と圧力が、ほぼ一定の範囲内に保たれる。結果として、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力が適切な範囲内に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持可能である)。
図1〜図10においては、簡易に表現するために省略したが、例えばバネ部131が座屈しないように適切な機構部品を設けることも可能である。すなわち、図1〜図10においては、発明の本質的な部分を説明するために、そのような機構部品の図示は省略するが、他の参考例においても、各部分がスムーズな機械的な動作を行うように、例えばガイドなどの適切な機構部品を設置することが可能である。以下に、ガイドを有する例について、第1参考例の第2の変形例として説明する。
図11A、図11B、図12は、第1参考例の第2の変形例を示す。この第1参考例の第2の変形例においては、バネ部131と弾性膜部130との間に、棒状部材の連結部133が挿入されている。連結部133は、バネ部131と弾性膜部130とを連結して、両者の間で力の伝達を行う。また、バネ部131の周囲には、円筒状のガイド部132が形成されており、バネ部131を構成するコイルバネの座屈を防止する働きを持つ。連結部133の先端部133aは、ピストン状に構成されており、先端部133aはバネ部131の一端に固定され、かつ、ガイド部132内を円滑に移動可能となっている。ガイド部132と連結部133の先端部133aとで囲まれた空間は、密閉されて居ても良いし、密閉されずに電解液が入り込んでいてもよい。
なお、図11Aは、バネ部131が伸びた状態を示しており、図11Bはバネ部131が縮んだ状態を示す。
また、この第2の変形例において、ガイド部132と連結部133の先端部133aで囲まれた空間がOリングなどのシール部材133bにより摺動可能に密閉されている場合、その密閉空間の内部の気体131Gの弾性によって、バネ部131の働きを行うことも可能である。円筒状のガイド部132内に密閉された気体131Gは、弾性部の別の例として機能する。この気体131Gを使用する場合の例を図12に示す。ここでは、バネ部131として、コイルスプリングの代わりに、気体131Gの弾性を利用している。また、ガイド部132と連結部133との間に摩擦部分がある場合、電解液として潤滑性の高いイオン液体を使用することにより、この摩擦を低減する効果がある。
図19は第1参考例の第3の変形例として、バネ部131として、コイルスプリングの代わりに、他のバネを使用する例を示す。この第3の変形例においては、バネ部131のコイルスプリングの代わりに、筐体部102の側壁102sの貫通穴102hの内周面の例えば下側に一端(例えば下端)が固定された板バネ134を使用する。板バネ134の他端(例えば上端)には接触部134aを固定して、板バネ134の弾性力により接触部134aが弾性膜部130に常時接触するようにしている。このように、板バネ134を使用することにより、圧力維持部を小型に構成することができる。
また、第1及び第2ダイヤフラム103と104との間が電気的に短絡するのを防止するために、バネ部131、又は、ガイド部132と連結部133と板バネ134とは、それぞれ、絶縁性のプラスチック材料で構成することが望ましい。また、これらのバネ部131と、ガイド部132と連結部133と板バネ134は、それぞれ、使用する電解液に対して耐性を有する材料を使用する。
(第2参考例)
図13は、本発明の第2参考例にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
図13の流体搬送装置は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、第2ダイヤフラム104と、第1ポンプ室107と、第2ポンプ室108と、電解液室109と、配線部110aと110bと、第1及び第2吸入口111aと111bと、第1及び第2吐出口113aと113bと、第1及び第2吸入弁121と123と、第1及び第2吐出弁122と124と、バネ部131と、弾性膜部130とを備えるように構成されている。バネ部131と弾性膜部130とは、以下で説明するように圧力維持部として働く。また、第1ダイヤフラム103と第2ダイヤフラム104については、以下では簡単のため、単にダイヤフラムと呼ぶ。
この第2参考例においては、第1ポンプ室107には第1吸入口111aと第1吐出口113aとの2個の開口部が形成されている。また、第2ポンプ室108には第2吸入口111bと第2吐出口113bとの2個の開口部が形成されている。第1及び第2ポンプ室107,108に形成されたこれらの開口部111a,113a,111b,113bを通じて流体の吸入及び吐出がそれぞれ行われることによって、ポンプの動作が行われる。各部分の構成と働きは、第1参考例とほぼ同じである。
ただし、第1参考例においては、第1及び第2ダイヤフラム103と104が、電解液室109から第1及び第2ポンプ室107,108に向けて見たとき凹形状にそれぞれ保たれていたが、この第2参考例においては、第1及び第2ダイヤフラム103と104は、電解液室109から第1及び第2ポンプ室107,108に向けて見たとき凸方向に膨らんだ状態にそれぞれ保たれる。
また、第1参考例においては、バネ部131は定常状態から縮んだ状態で固定されていたが、この第2参考例では、バネ部131は定常状態から伸びた状態で固定される。
また、第1参考例においては、例えば図3に示すように、弾性膜部130は、バネ部131から右向きの力を受けて右向きに凸状の形状に変形していたが、この第2参考例においては、例えば図13に示すように、弾性膜部130は、バネ部131から左向きの力を受けて左向きに凸状の形状に変形している。
また、第1参考例においては、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも電解液の圧力が小さくなるように流体搬送装置が構成されていたが、この第2参考例においては、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも電解液の圧力が大きくなるように流体搬送装置が構成されている。
第2参考例の流体搬送装置の初期状態において、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力が大きくなるようにするための方法としては、例えば、流体搬送装置の各部分を組み立てて内部に電解液を満たすときに、筺体部102の側壁102sに小さな貫通穴102gを開けておいて、その貫通穴102gからシリンジなどの器具を用いて電解液を電解液室109内に注入し、その後、貫通穴102gを封止部材102fで封止することによって、電解液の圧力を所定の圧力とする方法が考えられる。また、別の方法としては、流体搬送装置の各部分を組み立てた後でかつ電解液を満たす前に、弾性膜部130に対して外側に引き出す方向に力を加えて、この状態で電解液室109の内部に電解液を満たし、その後、電解液室109を封止し、弾性膜部130を外側に引き出す力を除いて弾性膜部130及びバネ部131がそれらの弾性によって元の形状に戻ろうとする力によって電解液の圧力を増加し、電解液の圧力を所定の圧力、すなわち、ポンプ動作時に第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108に加わる圧力よりも、電解液室109の内部に満たされた電解液の圧力が大きくなるようにする方法が考えられる。なお、電解液を電解液室109内に注入する際には、内部の空気を追い出すための空気穴を設けておいて、注入が終った後に空気穴を封止ことも可能である。
第1参考例と同様に、電源110cの電圧を例えば±1.5Vのサイン波もしくは矩形波で変化させたときに、第1及び第2ダイヤフラム103及び104をそれぞれ構成する導電性高分子膜が電解伸縮を行うために、第1及び第2吸入口111aと111bから流体がそれぞれ吸入されて、第1及び第2吐出口113aと113bから流体がそれぞれ吐出されて、ポンプの動作を行う。
なお、この第2参考例において、電解液室109は非圧縮性流体の電解液で満たされているので、ポンプ動作時に電解液室109の体積はほぼ一定に保たれる。このため、一方のダイヤフラム103又は104が収縮して、電解液室109から第1及び第2ポンプ室107,108に向けて見たときの一方のダイヤフラム103又は104の凸形状の膨らみが小さくなった場合、電解液室109の体積をほぼ一定に保つために、電解液室109から第1及び第2ポンプ室107,108に向けて見たとき、他方のダイヤフラム104又は103は凸形状の膨らみが大きくなるように力を受ける。すなわち、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103,104は電解液を介してお互いの間で仕事という形でエネルギーのやり取りを行う。
次に、弾性膜部130とバネ部131との動作について説明する。以下で詳しく説明するように、第1参考例と同様に、弾性膜部130とバネ部131は、第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸縮するときに、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適正に保つ働きがある。
まず、ポンプ作動時に導電性高分子膜の電解伸縮によって第1及び第2ダイヤフラム103及び104が伸縮するときに、弾性膜部130とバネ部131によって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
今、筺体部102の内部空間に注目する。ここで、筺体部102の内部空間とは、筺体部102の内部に形成された円筒状の空間である。筺体部102の内部空間において第1及び第2ダイヤフラム103及び104によって挟まれた空間部分を考えた場合、ポンプが動作するときには、その過程において前記空間部分の体積は微妙に変化する。このとき、弾性膜部130の形状は、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれるように変化する。今、筺体部102の内部空間において第1及び第2ダイヤフラム103及び104によって挟まれた空間部分の体積が増加した場合、弾性膜部130の凸形状の膨らみが大きくなり、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。また、逆に、筺体部102の内部空間において第1及び第2ダイヤフラム103及び104によって挟まれた空間部分の体積が減少した場合、弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなり、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。以上の結果として、電解液が内部に満たされた電解液室109の体積もほぼ一定となり、電解液の圧力もほぼ一定に保たれる。このことから、ポンプの動作中、常に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104がそれぞれ第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の方向に見て凸形状に変形した状態となり、第1及び第2ダイヤフラム103と104に対して引っ張り方向の応力(テンション)が一定の範囲内の大きさで加わった状態に保たれる。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。ただし、電解液室109は、第1及び第2ダイヤフラム130及び104と筺体部102の壁面と弾性膜部130とで囲まれた空間部分とする。
なお、電解液はほぼ非圧縮性流体とみなせるために、電解液室109の体積が変化すると電解液の圧力は大きく変化し、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適切な値に保つことができない。この第2参考例においては、電解液室109の内部の体積が一定に保たれるように弾性膜部130とバネ部131は、それらが持つ弾性によって変形する。このことにより、電解液室109の内部に存在する電解液室109の体積がほぼ一定に保たれて、電解液の圧力もある一定の範囲内に保たれる。この結果、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力を適切な値に保ち、ポンプの動作における仕事効率を大きくすることが可能である。ここで、ポンプの仕事効率とは、ポンプに加えられた電気エネルギーの中で、ポンプが流体の吸入と吐出のために行う仕事の割合であると定義する。
次に、導電性高分子膜の周期的な電解伸縮以外の理由で第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わる張力の変化が生じた場合に、弾性膜部130とバネ部131によって第1及び第2ダイヤフラム103及び104の張力が適正に保たれる働きについて説明する。
既に説明したように、一般的に、導電性高分子膜を用いたダイヤフラム型ポンプにおいては、導電性高分子膜に周期的な電圧を印加して動作を行ったときに一定方向に歪みが蓄積されること、又は、導電性高分子膜が電解液を吸うことによって膨張などの変形を生じること、又は、導電性高分子膜においてクリープに代表される非可逆的もしくは可逆的な形状変化が生じること、又は、導電性高分子膜の固定部の変形又はズレなどが発生することなどの理由から、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の面積又は形状又は配置が変化することがある。この場合、従来例に示したポンプにおいては、前記のように、流体搬送装置を製造するときに導電性高分子膜を張力がかかる状態で設置した場合でも、ダイヤフラムに所望の張力(引っ張り方向の応力)が加えられない状況が生じる。
この第2参考例においては、この張力の変化を、弾性膜部130とバネ部131の変形によって吸収されるために、導電性高分子膜に加えられる張力は一定範囲内に保たれる。
図14は、この第2参考例において第1及び第2ダイヤフラム103,104に加わる張力の変化が生じたときの第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力の維持の様子の例を示した図である。具体的には、図14は、第1及び第2ダイヤフラム103と104が前記の理由で伸びた場合の、第1及び第2ダイヤフラム103及び104と弾性膜部130とバネ部131の形状変化による第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力の維持の様子を示す。この図14において、第1及び第2ダイヤフラム103と104はそれぞれ図13に比べて伸びる方向に変形しているが、このことにより、一時、電解液室109の体積が増加し、電解液の圧力が減少するので、弾性膜部130とバネ部131の弾性によって、バネ部131が縮んで、筐体部102の外部から見て電解液室109内に対する弾性膜部130の凸形状の膨らみが大きくなるように変形する。この結果、電解液室109の体積はほぼ初期状態の値に戻る。このことから、電解液の圧力がほぼ初期状態の値に戻り、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は、電解液室109から第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の方向に見て凸形状に変形して引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内の大きさで加わった状態に保たれる。
また、逆に、第1及び第2ダイヤフラム103と104が前記の理由で縮んだ場合、弾性膜部130とバネ部131の弾性によって、バネ部131が伸びて、筐体部102の外部から見て電解液室109内に対する弾性膜部130の凸形状の膨らみが小さくなるように変形する。このことから、電解液の圧力がほぼ初期状態の値に保たれて、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は、第1ポンプ室107及び第2ポンプ室108の方向に見て凸形状に変形して引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内の大きさで加わった状態に保たれる。
このように、ポンプ動作時に常に、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の引っ張り方向の応力(テンション)が適切な範囲内に保たれるために(言い換えれば、電解液室109の内部の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力がそれぞれ所定の範囲に維持されるために)、導電性高分子膜が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使われる。
以上をまとめると、第1参考例と同様に、この第2参考例においては弾性膜部130とバネ部131が、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を適切な範囲内に維持する機能(圧力維持機能)を有する。本明細書においては第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持する機能を有する部分を圧力維持部と呼ぶ。すなわち、この第2参考例においては、弾性膜部130とバネ部131が、圧力維持部を構成する。例えば一方のダイヤフラム103又は104が伸びて他方のダイヤフラム104又は103の引っ張り方向の応力(張力)が緩んだときには、バネ部131が縮む方向に変形して第1及び第2ダイヤフラム103,104の方向に電解液が押し出されるために、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持される)。すなわち、第1及び第2ダイヤフラム103,104の変形による応力(張力)の変化に対応して、電解液室109の壁面の一部である弾性膜部130が変形することによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が一定範囲に保たれる(言い換えれば、電解液室109の内部の圧力と第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力がそれぞれ所定の範囲に維持される)。また、第1及び第2ダイヤフラム103,104の中央部分に固定点が無い構造であり、第1及び第2ポンプ室107,108と電解液室109との間の圧力差によって第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛むことなく適切な張力で凸形状に張った状態に保たれており、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が面全体にわたってほぼ均質な値に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定の範囲に維持可能である)。この状態がポンプ動作時に常に保たれるために、導電性高分子膜の第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸張と収縮を行うときの仕事が、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入に効率良く使わる。すなわち、電源110cから加えられる電気的エネルギーの中で第1及び第2ポンプ室107,108の流体の吐出と吸入の仕事に使われる割合を仕事効率と呼ぶものとすると、前記の圧力維持機能によって、ポンプの仕事効率が従来のポンプに比べて向上する。
(第3参考例)
図15は、本発明の第3参考例にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図である。
この第3参考例は、筺体部102と、第1ダイヤフラム103と、ポンプ室107と、電解液室109と、配線部110aと110bと、吸入口111aと、吐出口113aと、吸入弁121と、吐出弁122と、弾性部の一例としてのバネ部131と、弾性膜部130と、第2弾性膜部170と、対向電極部180とを備えて構成されている。バネ部131と第2弾性膜部170とは以下で説明するように圧力維持部として働く。
第2弾性膜部170は、筺体部102の下側の底面に形成された貫通穴102iの外側の開口縁部に固定されて、筺体部102内部を密閉するようにしている。
バネ部131を構成するコイルスプリングの両端は、筺体部102の上壁102uの中央部と第1ダイヤフラム103にそれぞれ接続されており、バネ部131は、定常状態よりも縮んだ状態で設置されている。第1ダイヤフラム103の一部分もしくは全部分が導電性高分子膜で構成されており、電解液室109には電解液が満たされている。第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜と対向電極部180との間に電源110cから電圧を印加することによって、第1ダイヤフラム103を構成する導電性高分子膜が電解伸縮を行い、このことにより、図15において第1ダイヤフラム103が上下に移動し、流体の吸入と吐出を行う。対向電極部180は、例えば白金のメッシュなどで形成されて、電解液はその両側に移動できる構造になっている。
なお、白金をメッシュ形状に形成することで白金の表面積が大きくなり、白金と電解液との界面に形成される電気2重層コンデンサの容量が大きくなる。この結果、白金と電解液との間の電位差が小さくなり、小さな電源電圧で、効率良く、ダイヤフラムの電解伸縮を行うことが可能となる。
図15の状態においては、第1ダイヤフラム103が電解伸縮により伸長しており、図16の状態においては、第1ダイヤフラム103が電解伸縮により収縮している。このことにより、ポンプ室107の体積が増減するために、流体の吸入と吐出が行われる。図15の状態では吸入口111aから流体が吸入されて、図16の状態では吐出口113aから流体が吐出される。電解液室107に満たされた電解液はほぼ非圧縮性流体とみなせるので、その体積はほぼ一定に保たれる。このことから、図15における第1ダイヤフラム103の上下運動に従って、第2弾性膜部170も上下運動を行い、電解液室109の体積はほぼ一定に保たれる。図15においては、電解液室109から筺体部102の外部に向けて見たときに第2弾性膜部170の凸形状の膨らみが大きくなっており、図16においては、電解液室109から筺体部102の外部に向けて見たときに第2弾性膜部170の凸形状の膨らみが小さくなっている。
第2弾性膜部170とバネ部131で構成される圧力維持部の構成又は動作又は効果は、第2参考例の弾性膜部130とバネ部131とほぼ同じである。すなわち、ポンプ室107の体積の変化に応じて、電解液室109の体積も変化する。これに応じて、第2弾性膜部170の形状は、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれるように変化する。今、図17のように、電解液室109の体積が増加した場合、それに応じて電解液の圧力が減少するので、第2弾性膜部170における第2弾性膜部170の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と筐体部102の外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、電解液室109から筐体部102の外部の方向に見て第2弾性膜部170の凸形状の膨らみが大きくなる。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。また、逆に、図16のように、電解液室109の体積が減少した場合、それに応じて電解液の圧力が増加するので、第2弾性膜部170における第2弾性膜部170の弾性力とバネ部131の弾性力と電解液の圧力と外部雰囲気の圧力との間のバランスが変化する。この結果、電解液室109から筐体部102の外部の方向に見て第2弾性膜部170の凸形状の膨らみが小さくなる。この結果、電解液室109の体積がほぼ一定に保たれる。以上の結果として、電解液室109の内部に満たされた電解液室109の体積もほぼ一定となり、電解液の圧力もほぼ一定に保たれる。
流体の吸入と吐出の動作は、図15及び図16で示されている。この第3参考例では、弾性膜部170が前記したように圧力維持機能の働きを行う。図17は、前記の理由でダイヤフラム103が伸びた状態を示している。このとき、弾性膜部170の凸形状の膨らみが大きくなるために、電解液室109の体積はほぼ一定に保たれて、電解液の圧力も適切な範囲に保たれる。第1ダイヤフラム103はバネ部131から図17の下向きの力を常に受けているので、常に弛むことなく適切な応力(張力)を保つ。これに対して、弾性膜部170が無い場合には、第1ダイヤフラム103がわずかに動いただけで、電解液の圧力が非常に大きく変化するために、第1ダイヤフラム103の移動が妨げられて、第1ダイヤフラム103がほとんど移動できない。この第3参考例においては、第1ダイヤフラム103の応力(張力)が適切な値に保たれているために(言い換えれば、ポンプ室107内の流体の圧力が所定の範囲に維持されているために)、効率的な動作が可能である。
なお、この第3参考例のように、ポンプ室107を1つにした構造では、構造が簡単であるので製造又はメンテナンスが容易であるという特徴がある。
(第1実施形態)
図18は、本発明の第1実施形態にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の構成を示す。
前記の説明では、主に、電解液室109は電解液のみで満たされている場合について説明したが、電解液室109の一部に気体を満たしてもよい。この場合、気体の弾性を用いて第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持することも可能である。図18においては、電解液室109の内部には、電解液と気泡が混入されている。気泡は、電解液とは化学的に反応しない空気などの気体からなる気泡部212を構成する。図18における気泡の弾性は、図3における弾性膜部130及びバネ部131と同様の機能を果たし、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の範囲内に維持可能である。このことを以下で説明する。図18においては、電解液室109の内部の電解液の圧力は、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さく設定されている。この圧力差によって、第1及び第2ダイヤフラム103及び104は、応力(張力)が第1及び第2ダイヤフラム103及び104に加わった状態に保たれる。例えば、第1及び第2ポンプ室107,108の流体の圧力が大気圧に等しい場合には、電解液及び気泡部212は大気圧に置かれた場合に比べて圧力が小さいために、気泡部212は膨張している。ただし、電解液はほぼ非圧縮性流体であるために、気泡部212の膨張の度合いは極めて小さい。この状態から、例えば、第1及び第2ダイヤフラム103,104が伸びた場合には、電解液室109の体積が減少するために、電解液及び気泡部212の圧力がそれぞれ増加する。電解液室109に電解液のみが入っている場合には、電解液はほぼ非圧縮性流体であるので電解液の圧力が急激に増加するために、第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体と電解液室109の内部の電解液の圧力差が非常に小さくなって、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が減少して、第1及び第2ダイヤフラム103,104が弛んだ状態になり、ポンプの動作が妨げられる。これに対して、図18の構成においては、電解液室109の気泡部212の弾性率が小さいためにその体積が変化しても圧力の変化が小さい。すなわち、気泡部212が、電解液室109の体積変化による電解液室109の内部の圧力変化を吸収する働きを有し、電解液室109の内部の電解液及び気泡部212の圧力が適切な値に保たれる。このために、第1及び第2ポンプ室107,108の内部の流体と電解液室109の内部の電解液の圧力差も、また、一定範囲内で保たれるので、第1及び第2ダイヤフラム103,104の応力(張力)が適切な値に保たれる(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107,108内の流体の圧力が所定範囲内に保たれる)。すなわち、気泡部212が、第1及び第2ダイヤフラム103,104の圧力維持機能を有する。このことから、第1及び第2ダイヤフラム103,104の圧力維持機能が無い場合に比べて、第1及び第2ダイヤフラム103,104の変形などが生じた場合でも、ダイヤフラムに対する圧力が適切な範囲に維持されて、ポンプの動作効率が向上する。気泡部212を用いた場合、簡易な構造で第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を所定の適切な範囲内に自動的に維持可能である。
今、第1及び第2ダイヤフラム103,104が1回伸縮する場合のポンプの吐出量及び吸入量をそれぞれV0とする。このとき、電解液室109に混入する気体の体積は、ポンプの吐出量又は吸入量V0の10%以上であることが望ましい。このことは、例えば以下の例で理解できる。
図22Bのポンプを例にとって説明する。図26に示すように、今、第2ダイヤフラム404に注目する。また、筐体402の底面490が円形であるとする。第2ダイヤフラム404の面積をSdとする。また、第2ポンプ室408の体積をVpとする。第2ダイヤフラム404の中心部と筐体402の底面の距離をhとする。底面490の半径をrとする。ここで、簡単のために、以下の仮定をおく。第2ダイヤフラム404が電解伸縮するときに最も収縮したときのhの大きさを0とする。また、図19に示すように、第2ダイヤフラム404の形状は、常に、底面490の周辺部を含み、球面の一部(球冠)であると仮定する。図19においては、第2ダイヤフラム404が半径R0の球面の一部である場合の例を示した。前記仮定は、第2ダイヤフラム404が弛まずに張った状態にあるときの第2ダイヤフラム404の形状を球冠の形状で近似したものである。
このとき、第2ポンプ室408の体積Vpは以下の(関係式1)で与えられる。
Vp=π×h/6×(3×r2+h2)・・・(関係式1)
また、第2ダイヤフラム404の面積Sdは以下の(関係式2)で与えられる。
Sd=π×(r2+h2)・・・(関係式2)
今、Vi=2/3×π×r3とおく。また、Si=π×r2とおく。ここで、πは円周率である。一般的に、ポンプにおける導電性高分子膜の第2ダイヤフラム404の面積の周期的な電解伸縮の大きさは、初期状態の第2ダイヤフラム404の面積の10%以下である。前記仮定の下では、初期状態の第2ダイヤフラム404の面積はSiで与えられるので、一般的に、ポンプ動作時に第2ダイヤフラム404の面積は以下の範囲内で変化する。
Si≦(第2ダイヤフラム404の面積)≦Si×1.1
第2ダイヤフラム404の面積が(Si×1.1)である場合に、前記(関係式2)からh≒0.32×rの関係がある。このとき、第2ポンプ室408の体積は、前記(関係式1)から、Vp≒0.2×Viで与えられる。以上の考察から、図22Bに示すようなポンプにおいて、第2ダイヤフラム404を構成する導電性高分子膜が周期的な電解伸縮を行う場合には、1回の電解伸縮を行うときに第2ポンプ室408から吐出される流体の体積及び第2ポンプ室408に吸入される流体の体積V0は(0.2×Vi)以下の値であることがわかる。
一方、導電性高分子膜が周期的な電解伸縮を行う場合には、先に図23を用いて説明したように、第2ダイヤフラム404が伸びて周期的な変化の中心が徐々に変化することがある。この理由は、例えば導電性高分子膜の粘弾性による変形が考えられる。一般的に、ポンプを長時間動作させた場合の第2ダイヤフラム404の面積の変化の大きさは、初期状態の第2ダイヤフラム404の面積の約0.1%以上の値となる。今、第2ダイヤフラム404の面積SdがSd=0.001×Siである場合には、前記の仮定の下では(関係式2)からh≒0.032×rである。このとき、第2ポンプ室408の体積は、前記(関係式1)から、Vp≒0.02×Viで与えられる。そこで、導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由で、第2ダイヤフラム404の面積が初期状態のSiから0.001×Siまで変化した場合を考えると、第2ポンプ室408の体積Vpはおよそ0から0.02×Viまで変化する。すなわち、第2ポンプ室408の体積Vpは0.02×Viだけ増加する。図22Bのポンプにおいては、筐体内部の体積は一定であるので、このとき、第1ポンプ室407の体積が変化しないとすると、電解液室409の体積は0.02×Viだけ減少する。前記考察から、導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由で第2ダイヤフラム404の面積が増加する場合、電解液室409の体積が減少するが、一般的に、この減少量は0.02×Vi以上の値となる。電解液は非圧縮性流体であるので、電解液室409の内部に電解液のみが入っている場合には、電解液室409の体積は一定に保たれる。そこで、この場合に導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由で第2ダイヤフラム404の面積が増加した場合、前記仮定は満たされず、図24Bに示すように第2ダイヤフラム404が弛んだ状態になる。第2ダイヤフラム404が弛んだ状態になると、導電性高分子膜の電解伸縮の力が流体の吐出と吸入に伝わらず逃げてしまうので、ポンプの効率が低下して望ましくない。
これに対して、この第4実施形態によれば、電解液に気体を混入して気泡部212を形成するように構成しているので、気泡部212の気体は体積変化を行うことができるから、電解液室109の体積変化を気泡部212の気体の体積変化で吸収することができて例えば第2ダイヤフラム104が弛むことを防止することが可能である。
前記のように、一般的に、導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由でダイヤフラムの面積が増加した場合、電解液室の体積は減少するが、ポンプを長時間動作させたときの電解液室の体積の減少量は(0.02×Vi)以上の値となる。そこで、この体積変化を電解液室に混入した気体の体積変化で吸収するためには、初期状態における気体の体積が(0.02×Vi)以上であることが必要である。
一方、上で説明したように、図22Bに示すようなポンプにおいて、ダイヤフラムを構成する導電性高分子膜が周期的な電解伸縮を行う場合には、1回の電解伸縮を行うときにポンプ室から吐出される流体の体積及びポンプ室に吸入される流体の体積は(0.2×Vi)以下の値である。
これらのことから、導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由で第1又は第2ダイヤフラム103又は104の面積が増加した場合に、電解液室109の体積変化を電解液室109に混入する気体の体積変化で吸収して第1又は第2ダイヤフラム103又は104が弛むことを防止するためには、気体の体積が、第1又は第2ダイヤフラム103又は104が1回伸縮する場合の流体搬送装置の吐出量及び吸入量V0の10%以上である必要がある。今、第1又は第2ダイヤフラム103又は104が1回伸縮する場合のポンプの吐出量及び吸入量をV0とする。上に述べた理由から、ポンプの動作効率を向上するためには、電解液室109に混入する気体の体積はV0の10%以上であることが望ましい。
なお、前記の例では第2ダイヤフラム104が電解伸縮するときに最も収縮したときのhの大きさを0と仮定したが、実際のポンプでh=0とすると第2ダイヤフラム104が筐体部102に張り付いて流体の表面張力のために第2ダイヤフラム104の動作が妨げられるなどの問題が生じる。しかしながら、第2ダイヤフラム104と筐体部102との固定箇所189を図18の上部側にずらせば、前記問題は発生せず、この場合には、前記の議論が適用できる。
前記の説明で、導電性高分子膜の粘弾性による変形などの理由で第1又は第2ダイヤフラム103又は104の面積が増加した場合に、電解液室109の体積変化を電解液室109に混入する気体の体積変化で吸収して第1又は第2ダイヤフラム103又は104が弛むことを防止するためには、気体の体積が、第1又は第2ダイヤフラム103又は104が1回伸縮する場合のポンプの吐出量及び吸入量V0の10%以上である必要があることを述べたが、これは必要条件であり、例えば、V0が0.2×Viよりも小さい場合、又は、導電性高分子膜の粘弾性変形などの理由で第1又は第2ダイヤフラム103又は104の面積が増加するときの電解液室109の体積の減少量が0.02×Viより大きい場合は、第1又は第2ダイヤフラム103又は104の弛みを防止するためには、気体の体積がV0の10%より大きい値である必要がある。また、2枚の第1及び第2ダイヤフラム103及び104が共に変形してそれらの面積が増加した場合にも、第1及び第2ダイヤフラム103及び104の弛みを防止するためには、気体の体積がV0の10%より大きい値である必要がある。
なお、前記した弾性膜部130とバネ部131などより構成される圧力維持機能などと、前記の気体の弾性による圧力維持機能を併用することも可能である。
電解液室109に混入する気体の体積が電解液室109の体積の20%より大きい場合、気体が第1及び第2ダイヤフラム103,104に接触する状態が発生して、第1及び第2ダイヤフラム103,104へのイオンの出入りが阻害されるという不具合が生じる。そこで、電解液室109に混入する気体の体積は、電解液室109の体積の20%以下の大きさであることが望ましい。
なお、前記の説明で電解液室109に混入する気体の体積は、流体搬送装置を使用する状態での気体の体積を指すものとする。
(第4参考例)
図20は、本発明の第4参考例にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図であって、第1及び第2ダイヤフラム103,104の一部を弾性膜204でそれぞれ構成した場合の例を示す。すなわち、図20において、ダイヤフラム103及び104の周辺部分がダイヤフラム弾性膜204で形成されている。
この第4参考例では、第1及び第2ダイヤフラム103,104の一部を弾性膜204でそれぞれ構成して、第1及び第2ダイヤフラム103,104の一部が第1及び第2ダイヤフラム103,104の面方向沿いに弾性変形可能な構成にすることによって、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力維持も可能である。
この第4参考例によれば、第1及び第2ダイヤフラム103,104の一部をそれぞれ構成する弾性膜204の働きで第1及び第2ダイヤフラム103,104を構成する導電性高分子膜に加わる応力(張力)を第1及び第2ダイヤフラム103,104の面内でより均質にすることができる。また、第1及び第2ダイヤフラム103,104の一部を弾性膜204で構成した場合、弾性膜204は第1もしくは第2ポンプ室107もしくは108又は電解液室109の方向に膨らんだ凸形状に変形することができて、この凸形状が変化することによって、電解液室109の体積がほぼ一定に保つことができて、電解液の圧力が適切な範囲に保たれるので、第1及び第2ダイヤフラム103,104に対する圧力を適切な範囲に保つことが可能である(言い換えれば、第1及び第2ポンプ室107及び108内の流体の圧力を所定の範囲に維持することが可能である)。
ポンプをできるだけ小型にするためには、2枚のダイヤフラム103,104が接触しない範囲で、できるだけ近接して配置することが望ましい。このことから、貫通穴102hの面積を小さくすることが望ましい。これにより、弾性膜204の面積はダイヤフラム103,104の面積よりも小さくすることが望ましい。
ところで、上で説明したように、導電性高分子膜の伸縮によってダイヤフラム103,104の面積変化が生じたときに、弾性膜204の変形によってダイヤフラム103,104の張力を適切な値に維持するためには、導電性高分子膜の伸縮による電解液室筐体内部分190の体積変化を、弾性膜内側空間部分192の体積変化によって吸収する必要がある。
以上のことを考えると、導電性高分子膜の伸縮によってダイヤフラム103,104の面積変化が生じたときに、これに伴う弾性膜の面積変化がダイヤフラム103,104の面積変化よりも大きいことが望ましい。そこで、ダイヤフラム103,104のヤング率は導電性高分子膜のヤング率よりも小さいことが望ましい。一般的に、導電性高分子膜のヤング率の値はおよそ1GPa以上の値であるので、弾性膜のヤング率は1GPa未満の値であることが望ましい。
(第5参考例)
図21は、本発明の第5参考例にかかる、導電性高分子を用いた流体搬送装置の断面図であって、図21の構成においては、図15の第3参考例にかかる流体搬送装置の第1ダイヤフラム103とバネ部131と同様にダイヤフラム103とバネ部131が配置されるとともに、電解液室109の側部に電解液溜め部206が形成されている。すなわち、電解液室109を構成する筐体部102の側壁102sに、側壁102sの一部を貫通した導管部207が設けられており、その導管部207で筺体部102の内部の電解液室109と電解液溜め部206の内部が接続されて、電解液が行き来できる構造になっている。電解液溜め部206の上部は大気圧に解放されており、このことから、電解液室109の体積と圧力はほぼ一定に保たれる。結果として、ダイヤフラム103が電解液から受ける圧力もほぼ一定であり、ダイヤフラム103に対する圧力をほぼ一定に保つことが可能である。電解液溜め部206の上面を、気体は透過して液体は透過しない脱気膜などで構成することができて、このことにより、電解液が外部に漏れるのを防止することも可能である。なお、図21の構成において、電解液の液面が電解液溜め部206の内部で上下に移動することによって、電解液の重さが伝わる結果、ダイヤフラムに加わる圧力は少し変化するが、この変化の大きさは、電解液室109を密閉した場合に電解液室109の体積が変化することによる圧力変化に比べて小さいことが多い。
(他の参考例又は実施形態)
前記実施形態又は第1〜第5参考例のいずれか1つ又は複数の実施形態又は参考例の流体搬送装置を複数台用意して並列に並べて、流入側と流出側とをそれぞれ互いに接続することにより、大きな搬送流量を得ることも可能である。
また、前記実施形態又は第1〜第5参考例のいずれか1つ又は複数の実施形態又は参考例において、前記と同様の構造で、小型の前記流体搬送装置を複数台用意して並列に並べて、流入側と流出側とをそれぞれ互いに接続することにより、大きな搬送流量を得ることも可能である。この場合、それぞれの流体搬送装置における第1及び第2ダイヤフラム103,104又はダイヤフラム103の凸形状の膨らみが小さくなるので、全体として小型化することが可能である。
前記したように複数の流体搬送装置を並列に並べる場合、各1枚のダイヤフラム103,104の代わりに、同じ面内に複数のダイヤフラム103d,104dをそれぞれ並べることも可能である(図27参照)。図27において、第1隔壁部193及び第2隔壁部194は、白金などの金属で形成されて、複数の開口部193aを持つ平板形状である。そして、第1隔壁部193と第2隔壁部194は互いに平行に位置するように筺体部102内に配置される。また、第1隔壁部193の複数の開口部193aには、第1ダイヤフラム103dがそれぞれ配置されるとともに、第2隔壁部194の複数の開口部194aには第2ダイヤフラム104dがそれぞれ配置される。そして、第1隔壁部193と複数の第1ダイヤフラム103によって、第1ポンプ室107と電解液室109とが分離される。また、第2隔壁部194と複数の第2ダイヤフラム104によって、第2ポンプ室107と電解液室部109が分離される。複数の第1ダイヤフラム103dは互いに金属の第1隔壁部193で接続されているので、互いに同じ電位に保たれる。また、複数の第2ダイヤフラム104dは金属の第2隔壁部194で接続されているので、互いに同じ電位に保たれる。また、第1ダイヤフラム103dと第2ダイヤフラム104dとは電気的に導通しないようにされている。この構造において、第1ダイヤフラム103dと第2ダイヤフラム104dの間の電位を変化させることによって、複数の第1ダイヤフラム103d及び複数の第2ダイヤフラム104dがそれぞれ前記実施形態又は参考例と同様に伸縮を行うので、ポンプの動作を行うことが可能である。
また、ダイヤフラムを重ねる方向に流体搬送装置の構造を並べることも可能である。すなわち、任意の位置関係で流体搬送装置の構造を並べることが可能である。
本発明のさらにいくつかの他の実施形態又は参考例を以下に説明する。
前記のように、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つためには、電解液の圧力をポンプ室内部の流体圧力よりも小さく保つことが必要である。このために、本発明のさらに他の参考例においては、電解液室109の壁面の一部を弾性体(例えば、図3の弾性膜部130)で形成して、その弾性体の弾性力若しくは弾性体に接続するバネ(例えば、図3のバネ部131)の弾性力によって、電解液室109の壁面の一部を形成する弾性体が電解液室109の内側から外側方向に変形しようとする力を発生させる。この力によって電解液の圧力は、ポンプ室内部の流体圧力よりも小さく保たれる。
図28は、第1参考例にかかる流体搬送装置における図3のポンプにおいて、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの弾性膜部130及びバネ部131の様子を示す。ただし、図3における弾性膜部130及びバネ部131の位置を点線で示している。初期状態において電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さく設定した場合には、弾性膜部130は図3に示す位置にあるが、弾性膜部130及びバネ部131の弾性力によって弾性膜部130が図28の状態に戻ろうとする力(復元力)が発生する。この力がポンプの動作中に常に発生するために、電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。ダイヤフラム103,104が伸縮して電解液室109の体積が増加若しくは減少した場合には、これに伴い電解液の圧力が減少若しくは増加するが、これに応じて、弾性膜部130が電解液室109から見て内側若しくは外側に変形する。このことによって、常に、電解液室109の体積及び圧力は、ほぼ初期状態と同じ値に保たれる。この結果、ポンプの動作中に常に電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。
また、本発明のさらに別の参考例として、図29は、本発明の前記第1参考例の前記第1の変形例における図10のポンプにおいて、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの弾性膜部130Aの様子を示す。ただし、図10における弾性膜部130Aの位置を点線で示している。図10の場合でも、図3の場合と同様に、弾性膜部130Aの弾性力によって弾性膜部130Aが図29の状態に戻ろうとする力(復元力)が発生する。この力がポンプの動作中に常に発生するために電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。ダイヤフラム103,104が伸縮して電解液室109の体積が増加若しくは減少した場合には、これに伴い電解液の圧力が減少若しくは増加するが、これに応じて、弾性膜部130Aが電解液室109から見て内側若しくは外側に変形する。このことによって、常に、電解液室109の体積及び圧力は、ほぼ初期状態と同じ値に保たれる。この結果、ポンプの動作中に電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも常に小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。
前記の説明からわかるように、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つためには、初期状態において電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さく設定した場合の弾性膜部の位置が、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの弾性膜部の位置と比べて、電解液室109の外側から内側に向かう方向にずれていればよい。この条件を満たす場合には、弾性膜部が電解液室109の外側から内側に向かう方向に凸形状であっても、弾性膜部が電解液室109の内側から外側に向かう方向に凸形状であっても、いずれでもよい。また、弾性膜部にバネ部が接続していても接続していなくても、いずれでもよい。
また、前記の説明とは逆に、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持って電解液室109からポンプ室107,108の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つためには、電解液の圧力をポンプ室内部の流体圧力よりも大きく保つことが必要である。このために、本発明のさらに別の参考例においては、電解液室109の壁面の一部を弾性体(例えば、弾性膜部130)で形成して、その弾性体の弾性力若しくは弾性体に接続するバネ(例えば、バネ部131)の弾性力によって、電解液室109の壁面の一部を形成する弾性体が電解液室109の外側から内側方向に変形しようとする力を発生させる。
図30は、図13のポンプにおいて、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの弾性膜部130の様子を示す。ただし、図13における弾性膜部130の位置を点線で示している。図13の場合、弾性膜部130の弾性力によって、弾性膜部130が図30の状態に戻ろうとする力(復元力)が発生する。この力がポンプの動作中に常に発生するために、電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも大きな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によって、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持って電解液室からポンプ室107,108の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。ダイヤフラム103,104が伸縮して電解液室109の体積が増加若しくは減少した場合には、これに伴い、電解液の圧力が減少若しくは増加するが、これに応じて、弾性膜部130が電解液室109から見て内側若しくは外側に変形する。このことによって、常に、電解液室109の体積及び圧力はほぼ初期状態と同じ値に保たれる。この結果、ポンプの動作中に、常に、電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも大きな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持って電解液室109からポンプ室107,108の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。
前記の説明からわかるように、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持って電解液室109からポンプ室107,108の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つためには、初期状態において電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力よりも大きく設定した場合の弾性膜部130の位置が、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの弾性膜部130の位置と比べて、電解液室109の内側から外側に向かう方向にずれていればよい。この条件を満たす場合には、弾性膜部130が電解液室109の外側から内側に向かう方向に凸形状であっても、弾性膜部130が電解液室109の内側から外側に向かう方向に凸形状であっても、いずれでもよい。また、弾性膜部130にバネ部131が接続していても接続していなくても、いずれでもよい。
また、電解液に気体を混入して気体の弾性力によって、前記と同様の働きを行うことも可能である。
図31は、本発明のさらに他の実施形態にかかる流体搬送装置であって、本発明の第1実施形態にかかる流体搬送装置における図18のポンプにおいて、電解液の圧力をポンプ室の流体の圧力と同じ値にしたときの気泡部の大きさを示す構成図である。
図31は、図18のポンプにおいて、電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力と同じ値にしたときの気泡部212の大きさを示す。ただし、図18における気泡部212の大きさを点線で示している。初期状態において電解液の圧力をポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さく設定した場合には、気泡部212は図18に示す大きさとなるが、気泡部212の気体の弾性力によって、気泡部212の大きさが図31の状態に戻ろうとする力(復元力)が発生する。この力がポンプの動作中に常に発生するために、電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によって、ダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。ダイヤフラム103,104が伸縮して電解液室109の体積が増加若しくは減少した場合には、これに伴い、電解液の圧力が減少若しくは増加するが、これに応じて、気泡部212の大きさが増加若しくは減少する。このことによって、常に、電解液の体積及び圧力はほぼ初期状態と同じ値に保たれる。この結果、ポンプの動作中に電解液の圧力はポンプ室107,108の流体の圧力よりも常に小さな値に保たれて、電解液の圧力とポンプ室107,108の流体の圧力との差によってダイヤフラム103,104が適切な張力を持ってポンプ室107,108から電解液室109の方向に凸であるような形状にダイヤフラム103,104を保つことが可能である。
なお、図28〜図31においては、説明をわかりやすくするために、電解液の圧力変化による弾性膜130の位置変化若しくは気泡部212の大きさの変化を大きく示している。実際には、電解液は非圧縮流体であるので、電解液の圧力変化による弾性膜130の位置変化若しくは気泡部212の大きさの変化は非常に小さい。
なお、前記弾性部の一例としては、弾性体、バネ部、又は、気泡部が例示できる。そのうちの弾性体は、弾性体の表面が、弾性体自体の弾性力により移動又は変形する部材であり、一例としては、弾性膜、又は、バルク状弾性部材が挙げられる。
図32は、本発明のさらに他の参考例にかかる流体搬送装置であって、バルク状弾性部材を使用する例を示す構成図である。図32において、筺体部102の1つの側壁102sに凹部102vが形成され、その凹部102v内にバルク状弾性部材160が嵌合されている。バルク状弾性部材160は、表面160aがそれ自体の弾性力により移動又は変形する部材であり、バルク状弾性部材160の表面160aは、凹部102v内でバルク状弾性部材160自体の弾性力により進退移動し、電解液と電解液以外の部分との界面を変形させることによってダイヤフラム103,104に作用する圧力を所定範囲内に維持することができる。すなわち、バルク状弾性部材160の弾性力を前記弾性部の前記弾性力として作用させることによって電解液室109の内側から外側方向に変形しようとする力を発生し、前記発生した力によって前記電解液の圧力が前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力よりも小さな値に保たれ、前記電解液の圧力と前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力との差によって生じた前記ダイヤフラム103,104の張力により前記ポンプ室107,108から前記電解液室109の方向に凸であるような形状に前記ダイヤフラム103,104が保たれる。又は、バルク状弾性部材160の弾性力を前記弾性部の前記弾性力として作用させることによって前記電解液室109の外側から内側方向に変形しようとする力を発生し、前記発生した力によって前記電解液の圧力が前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力よりも大きな値に保たれ、前記電解液の圧力と前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力との差によって生じた前記ダイヤフラム103,104の張力により前記電解液室109から前記ポンプ室107,108の方向に凸であるような形状に前記ダイヤフラム103,104が保たれる。この結果、この図32の例でも、他の参考例と同様な作用効果を奏することができる。なお、図32において、102xは凹部102vの底部に形成された凹部であって、バルク状弾性部材160の表面が移動又は変形して凹部102v内に入り込むようにバルク状弾性部材160自体が図32の点線のように弾性変形するとき、この凹部102xにより、バルク状弾性部材160の一部が入り込む空間を確保している。
また、図33は、本発明のさらに他の参考例にかかる流体搬送装置であって、弾性部としてバネ部のみを使用する例を示す構成図である。図33において、筺体部102の1つの側壁102sに凹部102wが形成され、その凹部102w内に、移動可能な可動壁部材161と、可動壁部材161に弾性力を付与するバネ部162とが配置されている。可動壁部材161は、凹部102w内でバネ部162の弾性力により進退移動し、電解液と電解液以外の部分との界面を変形させることによってダイヤフラム103,104に作用する圧力を所定範囲内に維持することができる。すなわち、バネ部162の弾性力を前記弾性部の前記弾性力として作用させることによって電解液室109の内側から外側方向に変形しようとする力を発生し、前記発生した力によって前記電解液の圧力が前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力よりも小さな値に保たれ、前記電解液の圧力と前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力との差によって生じた前記ダイヤフラム103,104の張力により前記ポンプ室107,108から前記電解液室109の方向に凸であるような形状に前記ダイヤフラム103,104が保たれる。又は、バネ部162の弾性力を前記弾性部の前記弾性力として作用させることによって前記電解液室109の外側から内側方向に変形しようとする力を発生し、前記発生した力によって前記電解液の圧力が前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力よりも大きな値に保たれ、前記電解液の圧力と前記ポンプ室107,108の前記流体の圧力との差によって生じた前記ダイヤフラム103,104の張力により前記電解液室109から前記ポンプ室107,108の方向に凸であるような形状に前記ダイヤフラム103,104が保たれる。この結果、この図33の例でも、他の参考例と同様な作用効果を奏することができる。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。