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JP4931320B2 - 新規なグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ - Google Patents
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JP4931320B2 - 新規なグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ - Google Patents

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Description

技術分野
本発明はコリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌由来の新規なグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下、G6PDと略す)、該酵素をコードするDNA、該DNAを含有する組換え体DNA、該組換え体DNAを保有する形質転換体、該DNAを染色体上に有する形質転換体、及びこれらの形質転換体を培養することを特徴とするL−アミノ酸の製造法に関する。
背景技術
アミノ酸を効率よく生産する菌株を得るためには、その細菌における該アミノ酸の生合成に関わる遺伝子の性質およびそれらの発現・活性制御様式を知り、それに基づく合理的な育種を行うことが重要である。
アミノ酸生産に関わる遺伝子の機能を理解するための重要な方法の一つは、遺伝学的な手法、例えばアミノ酸生産性の上昇あるいは減少と遺伝子変異との関係を明らかにすることである。
アミノ酸生産菌の育種の多くは、アミノ酸アナログなどの薬剤に対する耐性変異の付与により行われているが、多くの場合、生産性向上がどの遺伝子の変異によってもたらされているかは明らかでない。
多くの微生物のアミノ酸生合成には、還元反応時の補酵素としてNADPHが必要である。例えば、1分子のL−リジン生合成には4分子のNADPHが必要となる。同様に、スレオニンでは1分子あたり3分子、イソロイシンでは1分子あたり5分子のNADPHが必要となるなど、大部分のアミノ酸の生合成には分子あたり複数のNADPHを必要とする。従って、微生物を用いたこれらのアミノ酸の生産にとって、NADPHの供給は重要な課題である。
多くの微生物では、NADPHの供給酵素は限定される。該微生物の糖代謝の主要経路上でNADPHを供給できるのは、主にペントースリン酸経路(HMP)中のG6PD[EC1.1.1.49]、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.4]、およびTCA回路中のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.41]と考えられている。
なかでもHMPの第一酵素であり、エムデン・マイヤーホフ経路(EMP)との分岐点酵素でもあるG6PDはエシェリヒア(Escherichia)属やコリネバクテリウム属細菌による種々のアミノ酸の生産にとって非常に重要な酵素と考えられ、生化学的諸性質を中心に様々な解析が行われてきた。コリネバクテリウム属細菌の該酵素については、例えば、Journal of Bacteriology,98,1151,(1969);Agricultural and Biological Chemistry,51,101,(1987)、特開平9−224661に報告されているが、該酵素を利用したアミノ酸の生産性向上に関する検討は報告されていない。
また、大腸菌、およびコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)などの細菌については、該遺伝子の塩基配列が解明されている(Journal of Bacteriology,173,968,(1991);特開平9−224661]が、該遺伝子を利用したアミノ酸の生産性向上に関する検討は報告されていない。
発明の開示
本発明の目的は、L−アミノ酸の生合成に関与するG6PD、該酵素をコードするDNA、該DNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAまたは該組換え体DNAを保有する形質転換体を利用して、微生物によるL−アミノ酸生産性をより高め、工業的に有利にL−アミノ酸を製造することにある。
本発明者は、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAを単離することに成功し、L−アミノ酸の製造に利用できることを見出した。また、鋭意検討を行った結果、配列番号2で表されるアミノ酸配列において213番目のAlaが別のアミノ酸に置換され、かつG6PD活性を有するポリペプチドは、L−アミノ酸の生産性をさらに向上させることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(21)に関する。
(1) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(2) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において、213番目のAlaが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有し、かつG6PD活性を有するポリペプチド。
(3) 配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(4) 上記(2)のポリペプチドのアミノ酸配列において、213番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつG6PD活性を有するポリペプチド。
(5) 配列番号12で表されるアミノ酸配列において、213番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつG6PD活性を有するポリペプチド。
(6) 上記(1)〜(5)いずれか1つのポリペプチドをコードするDNA。
(7) 配列番号1で表される塩基配列を有するDNA。
(8) 配列番号1で表される塩基配列において、Alaをコードする第637〜639番目の塩基配列が、Ala以外のアミノ酸をコードするコドンに置換された塩基配列を有するDNA。
(9) 配列番号11で表される塩基配列を有するDNA。
(10) 配列番号1で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1で表される塩基配列においてAlaをコードする第637〜639番目の塩基配列に相応する塩基配列がAla以外のアミノ酸をコードするコドンに置換された塩基配列を有し、かつグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
(11) 配列番号1で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1において第637番目の塩基に相応する塩基がアデニンである塩基配列を有し、かつG6PD活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
(12) 上記(6)〜(11)いずれか1つのDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
(13) 組換え体DNAが、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物で複製可能な組換え体DNAである、上記(12)の組換え体DNA。
(14) Escherichia coli TOP10(FERM BP−7135)株が保有するプラスミドpCRBzwfM。
(15) 上記(12)〜(14)いずれか1つの組換え体DNAまたはプラスミドを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
(16) 宿主細胞が、L−アミノ酸を生産する能力を有する微生物である、上記(15)の形質転換体。
(17) 宿主細胞が、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、上記(16)の形質転換体。
(18) 上記(6)〜(11)いずれか1つのDNAを人為的に染色体上に取り込んだ、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する形質転換体。
(19) コリネバクテリウム属に属する微生物が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、上記(17)または(18)の形質転換体。
(20) 上記(15)〜(19)いずれか1つの形質転換体を培地に培養し、培養物中に上記(1)〜(5)いずれか1つのポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物から該ポリペプチドを採取することを特徴とする、ポリペプチドの製造方法。
(21) 上記(16)〜(19)いずれか1つの形質転換体を培地に培養し、培養物中にNADPHを利用して生合成されるL−アミノ酸を生成蓄積させ、該培養物から該L−アミノ酸を採取することを特徴とする、L−アミノ酸の製造方法。
(22) NADPHを利用して生合成されるL−アミノ酸が、L−リジン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−ヒスチジン、L−システインから選ばれるL−アミノ酸である、上記(21)のL−アミノ酸の製造方法。
(23) L−アミノ酸がL−リジンである、上記(21)のL−アミノ酸の製造方法。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号2で表されるアミノ酸配列の213番目のAlaが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有し、かつG6PD活性を有するポリペプチドである。該ポリペプチドとしては、例えば配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドがあげられる。
G6PD活性を有していれば、上記ポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも本発明のポリペプチドに包含される。ただし、該ポリペプチドは公知のG6PD(例えば、配列番号2において、120番目のThrがAlaに置換されたポリペプチド)を含まない。
該1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつG6PD活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2または12で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。また、配列番号2で表されるアミノ酸配列から1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加された配列をもともと有し、かつG6PD活性を有するポリペプチド(例えばコリネバクテリウム・グルタミクムと近縁の微生物由来のG6PD)をコードするDNAに上記方法により部位特異的変異を導入し、配列番号2で表されるアミノ酸配列の213番目のアミノ酸に相応するアミノ酸を別のアミノ酸に置換することによっても取得することができる。
欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
また、本発明のポリペプチドがG6PD活性を有するためには、配列番号2または12記載のアミノ酸配列と、BLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63−98(1990)〕等を用いて計算したときに少なくとも60%以上、通常は80%以上、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。
本発明のポリペプチドをコードする本発明のDNAとしては、例えば、配列番号1で表される塩基配列を有するDNA、配列番号1で表される塩基配列においてAlaをコードする第637〜639番目の塩基配列がAla以外のアミノ酸をコードするコドンに置換された塩基配列(以下、配列番号1subと略す)を有するDNA、または配列番号1において、第637番目の塩基がアデニンである塩基配列を有するDNAである配列番号11で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
配列番号1で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1で表される塩基配列においてAlaをコードする第637〜639番目の塩基配列に相応する塩基配列がAla以外のアミノ酸をコードするコドンに置換された塩基配列を有し、かつG6PD活性を有するポリペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに包含される。ただし、該DNAには公知のDNA(例えば、配列番号1において、358番目のアデニンがグアニンに置換されたDNA)は含まれない。
ここで、配列番号1のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとは、配列番号1または配列番号11で表される塩基配列を有するDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、前述のBLASTやFASTA等を用いて計算したときに、配列番号1または11で表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNAをあげることができる。
上記本発明のDNAは、Corynebacterium glutamicum No.58(FERM BP−7134)株あるいは該株に通常の変異操作を施した後、L−アミノ酸生産性が高まった変異株から取得することができる。
変異操作としては、例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いた常法;微生物実験マニュアル,1986年,131頁,講談社サイエンティフィック社)をあげることができる。
上記本発明のDNAの単離は、以下の方法により行うことができる。
すなわち、該DNAを含む株より、例えば斎藤らの方法[Biochimica et Biophysica Acta,72,619(1963)]により染色体DNAを調製し、該染色体DNAを適当な制限酵素で切断する。得られたDNA断片を細菌内で自立複製可能なベクター(例えばプラスミド)に連結し、該連結されたDNAをG6PD活性が欠損する微生物に導入する。得られた微生物より、G6PD活性を指標に形質転換株を単離し、該形質転換株より該酵素遺伝子を単離する。
例えば、大腸菌[エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)のグルコース−6−リン酸イソメラーゼのみを欠損する株はグルコースを唯一の炭素源とする培地で生育できるが、さらにG6PDを欠損する株はグルコースを唯一の炭素源とした培地で生育できない[Escherichia coli and Salmonella typhimurium,192(1996)]。従って、該2重欠損株にDNAを導入し、グルコースを唯一の炭素源とした培地で生育できるようになった株を選択することにより、該株より本発明のDNAを単離することができる。
本発明のDNAを導入する微生物は、該DNAが発現可能なものならば、いかなる属の細菌でも使用できる。また、自立複製可能なベクターとは、該細菌内で自立複製できるものならばいかなるものでもよい。例えば、エシェリヒア属に属する微生物、なかでも大腸菌の場合、該自立複製可能なベクターとしては、pUC18(宝酒造社製)やpBluescriptSK(−)(東洋紡社製)が挙げられる。また、pCE54(特開昭58−105999)のような大腸菌とコリネバクテリウム属細菌の両方で自立複製可能なシャトルベクターでもよい。
該ベクターと本発明のDNAとの連結は、T4DNAリガーゼ等を用いる通常の方法で行なうことができる。宿主への導入は、例えば大腸菌の場合、ハナハンらの方法[Journal of Molecular Biology,166,557(1983)]等により行なうことができる。
あるいは、G6PD遺伝子の塩基配列情報[例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムの場合、ジェンバンク(GenBank)アクセッション・ナンバー E13655、あるいは配列番号1で表される塩基配列]をもとにオリゴマーDNAを合成し、該オリゴマーDNAをプライマー、コリネバクテリウム属に属する微生物の染色体DNAを鋳型としてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を行い、得られたDNA断片を選択マーカー遺伝子を有するベクターに連結してエシェリヒア属、コリネバクテリウム属細菌等の適当な宿主に導入し、該遺伝子を単離することもできる。この場合はG6PD欠損株を用いる必要はない。
さらには、該遺伝子の塩基配列、例えば配列番号1で表される塩基配列をもとに、通常用いられるDNA合成装置、例えばパーキンエルマー社製ABI3948を用いて合成することもできる。
上記方法により単離された本発明のDNAを、宿主微生物で複製および発現が可能な発現ベクターに導入し、得られた組換え体ベクターにより宿主微生物を形質転換する。
本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有してなる組換え体DNAは微生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成されたベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
この目的のためのベクターとしては、エシェリヒア属に属する微生物の場合、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233−2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE−8(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、pTrs30〔エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製〕、pTrs32〔エシェリヒア・コリJM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製〕、pGHA2〔エシェリヒア・コリ IGHA2(FERM B−400)より調製、特開昭60−221091〕、pGKA2〔エシェリヒア・コリ IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091)、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)等をあげることができる。また、コリネバクテリウム属に属する微生物の場合、pCG1(特開昭57−134500)、pCG2(特開昭58−35197)、pCG4(特開昭57−183799)、pCG11(特開昭57−134500)、pCG116、pCE54、pCB101(いずれも特開昭58−105999)、pCE51、pCE52、pCE53[いずれもMolecular and General Genetics,196,175(1984)]、および本明細書実施例に示すpCS299P等が挙げられる。
プロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーターをあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明の組換えベクターにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
宿主細胞としては、下記に示したL−アミノ酸を生産することのできる細胞であればいずれでもよいが、好ましくは該アミノ酸を生産する能力を有する微生物が用いられる。より好ましくは、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物が、さらに好ましくはコリネバクテリウム属に属する微生物が、とくに好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミクムが用いられる。
該微生物の例として、例えば、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、バチルス(Bacillus)属、エシェリヒア(Escherichia)属に属する微生物をあげることができる。具体的な例としては、エシェリヒア・コリ XL1−Blue、エシェリヒア・コリ XL2−Blue、エシェリヒア・コリ DH1、エシェリヒア・コリ MC1000、エシェリヒア・コリ KY3276、エシェリヒア・コリ W1485、エシェリヒア・コリ JM109、エシェリヒア・コリ HB101、エシェリヒア・コリ No.49、エシェリヒア・コリ W3110、エシェリヒア・コリ NY49、エシェリヒア・コリ GI698、エシェリヒア・コリ TB1、エシェリヒア・コリ ATCC 9637、エシェリヒア・コリ FERM BP−5985、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)、セラチア・フォンティコラ(Serratia fonticola)、セラチア・リケファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセッセンス(Sepratia marcescens)、バチルス・ズフチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefacines)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)ATCC6872、ブレビバクテリウム・インマリオフィルム(Brevibacterium immariophilium)ATCC14068、ブレビバクテリウム・サッカロリティクム(Brevibacterium saccharolyticum)ATCC14066、プレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)ATCC13825、ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)ATCC19240、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC14067、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glu tamicum)ATCC13869、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13870、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)ATCC15991、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)ATCC15806、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterinm ammnoniaphilum)ATCC15354、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)AJ12340等をあげることができる。好適には、下記の菌株あるいは下記菌株から誘導されたL−アミノ酸生産変異株が用いられる。
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13869
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13870
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、エシェリヒア属に属する微生物の場合、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)〕や電気穿孔法[Methods in Enzymology,235、375(1994)]等をあげることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物の場合、プロトプラスト法(例えば、特開昭57−186492および特開昭57−18649)や、電気穿孔法[例えば、[Journal of Bacteriology,175,4096(1993)]を挙げることができる。
本発明のDNAを染色体上に有するエシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物としては、該DNA断片が遺伝子組換えあるいは変異処理により染色体上に人為的に導入されたものであればいかなるものでもよい。例えば任意の配列のG6PD遺伝子を含む株から変異処理によって本発明のDNAを含む株に改変された株でもよいし、あるいは、相同組換え法[Bio/Technology,,84(1991);Microbiology,144,1863(1998)]、ファージやトランスポゾンを用いる方法[Escherichia coli and Salmonella typhimurium,2325−2339(1996)]などで該DNA断片が染色体内に人為的に挿入された株でもよい。好適には、相同組み換え法により該DNAが染色体中に挿入された株があげられる。
本発明においては、遺伝子組換えに加え、変異処理により得られた株も形質転換体と呼ぶ。
以上のようにして得られる本発明の形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、本発明のポリペプチドを製造することができる。
また、本発明の形質転換体を培地に培養し、培養物中にL−アミノ酸を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、L−アミノ酸を製造することができる。
該L−アミノ酸としては、生合成にNADPHを使用するアミノ酸であればいずれでもよい。例えば、L−リジン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−ヒスチジン、L−システインなどが挙げられる。あるいは、これらアミノ酸を中間体とするアミノ酸以外の化合物でもよい。好適にはL−リジンが挙げられる。第1図にアミノ酸の生合成経路を示した。図中、NADPHを消費する反応を下線とともに示した。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
培養に使用する培地は、炭素源、窒素源、無機塩類などを含む通常の栄養培地を用いることができる。
炭素源としては、本発明の形質転換体もしくは微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
培養終了後、培養液から菌体などの沈殿物を除去し、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、培養液からL−アミノ酸を回収することができる。
本発明の形質転換体により製造されたポリペプチドを単離精製するためには、通常の酵素の単離精製法を用いることができる。例えば本発明のポリペプチドが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
また、該ポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてポリペプチドの不溶体を回収する。回収したポリペプチドの不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析し、該可溶化液中の蛋白質変性剤の濃度を下げることにより、該ポリペプチドを正常な立体構造に戻す。該操作の後、上記と同様の単離精製法により該ポリペプチドの精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが細胞外に分泌された場合には、培養上清に該ポリペプチドを回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
このようにして取得されるポリペプチドとして、例えば、配列番号2または12で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをあげることができる。
また、本発明のポリペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech社、パーキン・エルマー社、Pharmacia社、Protein Technology Instrument社、Synthecell−Vega社、PerSeptive社、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
発明を実施するための最良の形態
実施例1 新規G6PD遺伝子の取得
(1)G6PD遺伝子の塩基配列決定
コリネバクテリウム・グルタミカムNo.58株(以下、No.58株と略す)は、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株(以下、ATCC13032株と略す)に変異処理を施して得られたL−リジン生産菌である。該菌株は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(旧:工業技術院生命工学工業技術研究所:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成12年4月14日付けで受託番号:FERM BP−7134として寄託されている。ATCC13032株およびNo.58株のG6PD遺伝子を以下のようにクローニングした。
それぞれの株より、斎藤らの方法[Biochimica et Biophysica Acta,72,619(1963)]により染色体DNAを調製した。また、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ233株において既知となっているG6PD遺伝子の塩基配列[ジェンバンク(GenBank)アクセッション・ナンバーE13655]をもとにして、該塩基配列を標的とするPCR反応のためのプライマーを常法により作成した。配列番号3、4に該プライマーの塩基配列を示す。PCR反応はパーキンエルマー社製サーマルサイクラー(ジーンアンプPCRシステム9600)、Pfu turbo DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社製)、各染色体DNA100ng、及び添付のバッファーを用いて、94℃−1分間、60℃−1分間、74℃−2分間のサイクルを25回行った。増幅した約2.2kbのPCR産物をアガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。
G6PD遺伝子を含む上記2.2kbのDNA断片とpCR−Bluntベクター(インヴィトロジェン社製)とをT4DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いて連結した後、常法に従って大腸菌One Shot TOP10 competent cells(インヴィトロジェン社製)に形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地[酵母エキス(ディフコ社製)5g、バクトトリプトン(ディフコ社製)10g、塩化ナトリウム10g、アガー(ディフコ社製)16gを水1Lに含みpH7.2に調整された培地]上にて選択した形質転換株を、50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地中で終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法(モレキュラー・クローニング第2版)にてプラスミドを調製した。
ATCC13032株由来のG6PD遺伝子を含むプラスミドをpCRBzwf1、No.58株由来のG6PD遺伝子を含むプラスミドをpCRBzwf2と命名した。
次に、これらプラスミド上のG6PD遺伝子の塩基配列を常法により決定した。その結果、ATCC13032株およびNo.58株から得られたG6PD遺伝子の塩基配列は全く同じであることが判明した。該塩基配列を配列番号1に示す。すなわち、L−リジン生産菌No.58株のG6PD遺伝子は野生型であることが示された。
(2)新規G6PD遺伝子の取得
No.58株にNTGによる変異処理(微生物実験マニュアル,1986年,131頁、講談社サイエンティフィック社)を施した後、1mg/mlの6−アザウラシルを含む最少寒天培地[グルコース10g、塩化アンモニウム4g、尿素2g、リン酸二水素一カリウム1g、リン酸一水素二カリウム3g、硫酸第一鉄7水和物10mg、硫酸マグネシウム7水和物0.4g、硫酸マンガン7水和物4mg、塩化亜鉛7水和物40μg、塩化第二鉄6水和物200μg、塩化銅2水和物10μg、塩化マンガン4水和物10μg、四ほう酸ナトリウム10水和物10μg、モリブデン酸アンモニウム4水和物10μg、ビオチン50μg、ニコチン酸5mg、アガー(ディフコ社製)16gを水1Lに含み、pH7.2に調整された培地]に播種し、30℃で2日間培養した。出現したコロニーを単離し、下記実施例2(4)で示した方法でL−リジンの生産試験を行い、No.58株に比べて生産性の高いクローンを選定した。そのうちの1株をM1株と命名した。M1株のG6PD遺伝子を上記(1)の方法により単離し、該遺伝子をpCR−Bluntベクターに組み込んだ。得られた組み換えプラスミドをpCRBzwfMと命名した。その塩基配列決定を行ったところ、ATCC13032株およびNo.58株中のG6PD遺伝子では配列番号1の637番目の塩基がグアニンだが、M1株中のG6PD遺伝子ではアデニンに変化していた。該塩基配列を配列番号11に示した。
該変異により、ATCC13032株およびNo.58株中のG6PDのアミノ端末側より213番目のAla(コドンGCT)が、M1株のG6PDではThr(コドンACT)に変化していた。該アミノ酸配列を配列番号12に示した。
即ち、M1株のG6PDにはAla213Thrのアミノ酸置換変異が存在することが示された。pCRBzwfMを保有する大腸菌TOP10株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(旧:工業技術院生命工学工業技術研究所:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成12年4月14日付けで受託番号:FERM BP−7135として寄託されている。
実施例2 新規G6PD遺伝子のL−リジン生産に与える効果
(1)遺伝子置換用ベクターの作成
実施例1で示されたG6PDのアミノ酸置換変異の効果を調べるため、No.58株のG6PD遺伝子を変異型に置き換えることを試みた。
そのための遺伝子置換用ベクターを以下のように作製した。
配列番号5と6で表される塩基配列を有するそれぞれ37mer、29merの一本鎖DNAを常法に従い合成した。0.1M NaCl 50μl中にそれぞれ10pmole/μlとなるように混合し、95℃で2分間保持した後、65℃で15分間保持した。3時間かけて30℃まで冷却し、両一本鎖DNAを対合させて2本鎖DNAを得た。
pHSG299(宝酒造社製)をEcoRI及びSphI(いずれも宝酒造社製)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行った後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。得られたpHSG299断片と上記2本鎖DNA断片をライゲーションキットver2(宝酒造社製)を用いて連結し、常法に従い大腸菌DH5α株を形質転換した。該菌株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養し、形質転換株を選択した。該形質転換株のうちの1株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地を用いて終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法にてプラスミドを調製した。得られたプラスミドをpHSG299Lと命名した。
(2)プラスミドpCS299Pの造成
大腸菌とコリネ型細菌双方で自立複製可能なシャトルプラスミドpCS299Pを以下の方法で作製した。
pCG116[Bio/Technology,11,921(1993)]をBglII(宝酒造社製)で切断し、BglII切断断片を取得した。
pHSG299(宝酒造社製)をBamHI(宝酒造社製)で切断後、得られたBamHI切断断片を常法にしたがってエタノール沈殿法により濃縮し、該断片をアルカリフォスファターゼで処理した。得られた上記2種類の断片を混合し、ライゲーションキットver.1(宝酒造社製)を用い、リガーゼ反応を行った。反応産物を用い、常法(モレキュラー・クローニング第2版)に従って大腸菌NM522株を形質転換した。該菌株を、20μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養し、形質転換株を選択した。該形質転換株を20μg/mlのカナマイシンを含むLB培地を用い終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法によりプラスミドを調製し、pCS116−299Bgl1 DNAを取得した。
該pCS116−299Bgl1DNAの制限酵素切断部位を常法に従って確認した。
pCS116−299Bgl1DNAを用いて電気穿孔法[FEMS Microbiology Letters,65,299,(1989)]によりコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC6872株を形質転換した。
該菌株を20μg/mlのカナマイシンを含むCM寒天培地[ポリペプトンS(日本製薬社製)]10g、酵母エキスS(日本製薬社製)5g、エルリッヒ肉エキス(極東製薬工業社製)10g、塩化ナトリウム 3g、ビオチン30μgを水1Lに含み、pH7.2に調整された培地]上で培養し、形質転換株を選択した。該形質転換株より常法に従ってプラスミドを抽出し、該プラスミドを制限酵素で切断することにより、該プラスミドがpCS116−299Bgl1であることを確認した。
pCS116−299Bgl1 DNAを、PstI(宝酒造社製)およびBamHIで切断した後、エタノール沈殿法により精製した。得られたDNAからキロシーケンシング用デリーションキット(宝酒造社製)を用いて部分欠失プラスミドを取得した。該プラスミドを用い、常法に従って大腸菌NM522株を形質転換した。該菌株を20μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上で培養し、形質転換株を選択した。該形質転換株を20μg/mlのカナマイシンを含むLB培地を用い終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法にてプラスミドを調製した。常法に従って、得られた各プラスミドの制限酵素地図を作成し、部分欠失長の異なるプラスミドを選択した。
選択したプラスミドを用いて、電気穿孔法によりコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC6872株を形質転換した。得られた形質転換株を20μg/mlのカナマイシンを含むCM寒天培地上に塗布後、30℃で2日間培養し、カナマイシン耐性コロニーの出現の有無を指標としてコリネバクテリウム・アンモニアゲネス中で自立複製能を有するプラスミドを選択した。
自立複製能を有するプラスミドの中で最も長い欠失領域を有するプラスミドを選択し、このプラスミドをpCS299del6とした。
pCS299del6 DNAを常法に従って形質転換株より調製した後、制限酵素DraIおよびPvuII(いずれも宝酒造社製)を用いて切断した。該切断DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分画後、pCG116由来のDNAを有する約2.7kbのDNA断片を分離し、DNA prep(旭硝子社製)を用いて抽出精製した。
pBluescript SK(+)(東洋紡績社製)DNAを、常法に従ってEcoRV(宝酒造社製)で切断した。得られた切断DNA断片をエタノール沈殿法により濃縮後、アルカリフォスファターゼ処理した。該処理DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分画後、DNA prepを用いて抽出精製した。
上記2.7kbのDNA断片とpBluescript SK(+)断片をライゲーションキットver.1を用いて連結した後、該連結DNAを用いて、常法に従って大腸菌NM522株を形質転換した。該菌株を100μg/mlのアンピシリン、50μg/mlのX−Gal(5−bromo−4−chloro−3−indoyl−β−D−galactoside)、1mmol/lのIPTG(isopropylthio−β−D−galactoside)を含むLB寒天培地上で培養し、形質転換株を選択した。該形質転換株を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地を用い終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法によりプラスミドを調製した。常法に従って、得られた各プラスミドの制限酵素地図を作成した。EcoRI切断によって3.4kbと2kbのDNA断片を生じるプラスミドをpCSSK21とした。
配列番号7、8で表される塩基配列を有するDNAを合成し、これらのDNAをプライマーとして、pHSG299DNAを鋳型として、Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用い、添付の反応条件に従って、PCR反応を行った。反応産物を常法に従ってエタノール沈殿した後、制限酵素PstIおよびXhoI(宝酒造社製)を用いて切断した。該切断DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分画し、得られた約1.3kbのDNA断片をDNA prepを用いて抽出精製した。
配列番号9、10で表される塩基配列を有するDNAを合成し、これらのDNAをプライマーとして、pHSG299DNAを鋳型として、Taq DNAポリメラーゼを用い、添付の反応条件に従って、PCRを行った。反応産物を常法に従ってエタノール沈殿した後、制限酵素PstIおよびBglIIを用いて切断した。該切断DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分画し、得られた約1.3kbのDNA断片をDNA prepを用いて抽出精製した。
上記で取得したプラスミドpCSSK21をSalI(宝酒造社製)およびBamHIを用いて切断した。該切断DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分画し、得られた約2.7kbのDNA断片をDNA prepを用いて抽出精製した。抽出精製された上記の3種類のDNA断片を混合した後、ライゲーションキットver.1を用いて連結した。
該連結DNA断片を用いて常法に従って大腸菌NM522株を形質転換した。該菌株を20μg/mlのカナマイシン、50μg/mlのX−Gal、1mmol/lのIPTGを含むLB寒天培地上で培養し形質転換株を選択した。
該形質転換株を、20μg/mlのカナマイシンを含むLB培地を用い終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法によりプラスミドを調製した。常法に従って、得られた各プラスミドの制限酵素地図を作成し、第1図に記載された構造を有するプラスミドをpCS299Pとした。
pCS299P及びpHSG299LをXbaI及びPstI(いずれも宝酒造社製)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行った。pCS299Pに由来するコリネバクテリウム属細菌における複製開始領域(OriC)を含む2.5kbの断片及びpHSG299L断片をそれぞれQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。該2.5kbのDNA断片とpHSG299L断片とをライゲーションキットver.2(宝酒造社製)を用いて連結し、常法に従い大腸菌DH5α株に形質転換した。得られた形質転換体から上記方法と同様にプラスミドを調製した。得られたプラスミドをpHSG2990Cと命名した。
pMOB3(ATCC77282)及びpHSG2990CをPstI(宝酒造社製)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、pMOB3に由来する枯草菌レバンシュークラーゼ(SacB)遺伝子を含む2.6kbのDNA断片とpHSG2990C断片をそれぞれQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。
該2.6kbのDNA断片とpHSG2990C断片とをライゲーションキットver2(宝酒造社製)を用いて連結し、常法に従い大腸菌DH5α株を形質転換した。該菌株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地上にて培養し、形質転換体を選択した。得られた形質転換体から上記方法と同様にプラスミドを調製した。該プラスミドをpHSG2990CSBと命名した。
pHSG2990CSBをNotIで切断して得られる5.1kbのDNA断片をアガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。実施例1で作成したpCRBzwfMをNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出精製した。ライゲーションキットver2(宝酒造社製)を用いてpCRBzwfMのNotI部位にOriCおよびSacB遺伝子を含むNotI断片を連結し、常法に従い大腸菌DH5α株を形質転換した。該菌株を50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地で培養し、形質転換株を選択した。得られた形質転換体から上記方法と同様にプラスミドを調製した。該プラスミドをpCRBOSzwfMと命名しこれをG6PD遺伝子組み込みベクターとした。
(3)No.58株のG6PD遺伝子の置換
No.58株に変異型G6PD遺伝子を含むpCRBOSzwfMを導入後、池田らの方法[Microbiology,144,1863(1998)]を用いてこれを相同組み換えで染色体DNA中に組み込んだ。
pCRBOSzwfMにコードされる枯草菌レバンシュークラーゼが自殺基質を生産することを利用した選択法[Journal of Bacteriology,174,5462(1992)]により2度目の相同組み換えが行われた株を選択し、該選択株の中からNo.58株が従来保有していたG6PD遺伝子(野生型)が変異型G6PD遺伝子に置換された株を以下の方法で単離した。
No.58株にpCRBOSzwfMを電気穿孔法[FEMS Microbiology Letters,65,299(1989)]により導入し、50μg/mlのカナマイシンを含むKM163寒天培地〔グルコース10g、ペプトン(極東製薬工業社製)10g、硫酸マグネシウム0.5g、エールリッヒ肉エキス(極東製薬工業社製)5g、尿素2g、塩化ナトリウム2.5g、バクトアガー(ディフコ社製)18gを水1Lに含みpH7.2に調整された培地〕上にて30℃で2日間培養し、形質転換株を得た。該形質転換株の1株であるTf1株を選択し、該菌株を20μg/mlのカナマイシンを含むKM163培地中で培養し、電気穿孔法によりpCG11(特公平6−91827)の導入操作を行った。導入操作後、該菌株を50μg/mlのカナマイシンおよび200μg/mlのスペクチノマイシンを含むKM163寒天培地上にて30℃で2日間培養し、形質転換体を得た。これらの形質転換株の1株の染色体を、池田らの報告[Microbiology,144,1863(1998)]に従ってサザンブロットハイブリダイゼーションにより調べた。その結果、Campbellタイプの相同組み換えによりpCRBOSzwfMが染色体に組み込まれていることが確かめられた。このような株では、野生型および変異型のG6PD遺伝子が染色体上に近接して存在しており、その間で2回目の相同組み換えが起こりやすくなっている。
該形質転換株(一回組換え体)をSuc培地(ショ糖100g、肉エキス7g、ペプトン10g、塩化ナトリウム3g、酵母エキス(ディフコ社製)5g、バクトアガー(ディフコ社製)18gを水1Lに含みpH7.2に調整された培地)上に塗布し、30℃で1日間培養して生育するコロニーを選択した。SacB遺伝子が存在する株は、ショ糖を自殺基質に転換するのでこの培地では生育できない。これに対し、野生型と変異型のG6PD遺伝子間での2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が欠失した株では、自殺基質はできずこの培地で生育することができる。この相同組み換えの際には、野生型もしくは変異型のG6PD遺伝子のいずれかが、SacBとともに欠失する。このとき野生型のG6PD遺伝子がSacBとともに欠失した株では、変異型のG6PD遺伝子への遺伝子置換が起こったことになる。
このようにして得られた2回組換え体の染色体DNAを斎藤らの方法[Biochimica et Biophysica Acta,72,619(1963)]により調製し、配列番号3と4で表される塩基配列を有するDNAをプライマーとしてPfu turbo DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社製)と添付のバッファーを用いてPCRを行った。これらのPCR産物の塩基配列を常法により決定し、2回組み換え体のG6PD遺伝子が野生型か変異型かを判定した。その結果、野生型のG6PD遺伝子のみを有する株(例として、No.58W株)、および変異型のG6PD遺伝子のみを有する株(例として、No.58M株)とが得られたことが確認された。
(4)L−リジン生産試験
取得したG6PD遺伝子置換株(No.58W及びNo.58M)及び親株であるNo.58株のリジン生産性を5リットルジャーファーメンターにて培養、評価した。
一次種培地〔グルコース50g、酵母エキス(日本製薬社製)10g、ペプトン(極東製薬工業社製)10g、コーンスティープトリカー5g、塩化ナトリウム2.5g、尿素3g、ビオチン50μgを水1リットルに含みpH7.2に調整し、炭酸カルシウムを10g加えた培地〕100mlに各菌株を植菌し、1リットルバッフル付き三角フラスコにて30℃で24時間培養した。次に二次種培地(グルコース50g、コーンスティープトリカー10g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、ニコチン酸5mg、チアミン塩酸塩1mg、ビオチン100μg、パントテン酸カルシウム10mg、リン酸二水素一カリウム2g、尿素3g、硫酸第一鉄7水和物10mg、硫酸亜鉛7水和物1mg、硫酸アンモニウム8g、ペプトン20g、炭酸水素ナトリウム2gを水1Lに含む培地)2000mlに一次種培養液を40ml植菌し、5リットルジャーファーメンターにて30℃で12時間培養した。次に本培養培地[廃糖蜜93g(糖換算量)、リン酸二水素一カリウム0.5g、硫酸第一鉄7水和物10mg、チアミン塩酸塩100μg、ソイペプトン2g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、ニコチン酸5mg、硫酸アンモニウム15gを水1リットルに含みpH7.4に調整した培地]1675mlに二次種培養液を230ml植菌し、5リットルジャーファーメンターにて35℃で42時間培養した。
本培養培地中に蓄積したL−リジンの定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行なった。
第1表は、No.58株、No.58W株、およびNo.58M株のL−リジン発酵生産量の測定結果である。これにより、新規の変異型G6PDにより、L−リジン生産性が向上することが示された。
【表1】
Figure 0004931320
産業上の利用可能性
本発明により、改変されたG6PDおよび該G6PDHをコードするDNAが得られ、該改変されたG6PDを用いて、微生物によるL−アミノ酸の生産性を向上させることができる。
【配列表フリーテキスト】
配列番号 3:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 4:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 5:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 6:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 7:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 8:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 9:人工配列の説明−合成DNA
配列番号 10:人工配列の説明−合成DNA
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
第1図は、蛋白質を構成する20種アミノ酸のコリネバクテリウム属細菌における生合成経路を示した図である。下線を記した箇所はNADPHを消費する反応を示す。枠囲みの箇所はNADPHを生産する反応を示す。
各反応を司る酵素に対応する遺伝子名は、基本的に大腸菌の命名法によった。図中、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼはG6PD(zwf)と表した。第2図は、pCS299Pの造成過程を示した図である。

Claims (17)

  1. 配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
  2. 配列番号12で表されるアミノ酸配列において、213番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド。
  3. 配列番号2で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、配列番号2おいて213番目のAlaがThrに置換されたアミノ酸配列からなり、かつグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNA。
  5. 配列番号11で表される塩基配列からなるDNA。
  6. 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1において第637番目の塩基に相応する塩基がアデニンである塩基配列からなり、かつグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
  7. 配列番号1で表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、配列番号1において第637番目の塩基に相応する塩基がアデニンである塩基配列からなり、かつグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
  8. 請求項4〜7のいずれか1項に記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
  9. 組換え体DNAが、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物で複製可能な組換え体DNAである、請求項記載の組換え体DNA。
  10. Escherichia coli TOP10(FERM BP−7135)株が保有するプラスミドpCRBzwfM。
  11. 請求項10のいずれか1項に記載の組換え体DNAまたはプラスミドを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
  12. 宿主細胞が、L−アミノ酸を生産する能力を有する微生物である請求項11記載の形質転換体。
  13. 宿主細胞が、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、請求項12記載の形質転換体。
  14. 請求項4〜のいずれか1項に記載のDNAを人為的に染色体上に取り込んだ、エシェリヒア属またはコリネバクテリウム属に属する形質転換体。
  15. コリネバクテリウム属に属する微生物が、コリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項13または14記載の形質転換体。
  16. 請求項1115のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物から該ポリペプチドを採取することを特徴とする、ポリペプチドの製造方法。
  17. 請求項1215のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中にL−リジン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−ヒスチジン、L−システインからなる群より選ばれるL−アミノ酸を生成蓄積させ、該培養物から該L−アミノ酸を採取することを特徴とする、該L−アミノ酸の製造方法。
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