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JP4933765B2 - 液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド並びに画像形成装置に係り、特にノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造技術及びその構造に関する。
圧電素子の変位を利用して圧力室の壁面を変化させ、圧力室内のインクを加圧することで圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出するヘッド(液体吐出ヘッド)を搭載したインクジェット記録装置が知られている。
近年、インクジェット記録装置に用いられるヘッドには高集積化が求められて、該ヘッドの高集積化を実現するとともに高信頼性や高性能を確保するために、構造や製造上の様々な工夫がなされている。
特許文献1に記載された発明には、インク貯留室に振動板を接合した状態で圧電体膜を成膜してアニール処理を施すことで膜厚の薄い圧電体を生成し、低い駆動電圧で該圧電体を駆動しても十分に液室内の液体に圧力を付与して、液室から外部に液体を移送可能な液体移送装置の製造方法が開示されている。
特許文献2に記載された発明には、シリコン基体と鉛系圧電セラミックスとの間に中間層を形成し、シリコン基板上での圧電セラミックス焼成時の基板上への鉛拡散が防止でき、機械的強度及び信頼性の高い中間層を持ったアクチュエータを実現する技術が開示されている。
特許文献3に記載された発明には、ガスデポジション法成膜圧電セラミックス圧膜構造において、基板上に中間膜を配置した後にガスデポジション成膜を行うことで、基板ダメージを低減させ、圧電セラミックス厚膜/基板からなる積層構造体の機械的強度の低下を防ぐ圧電セラミックスの厚膜構造が開示されている。
特開2005−35013号公報 特開平11−204849号公報 特開2001−152361号公報
しかしながら、ステンレス(SUS)などの鉄を含有する金属を用いた振動板(基板)にPZT(Pb(Zr・Ti)O3 、チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電体を成膜し、600℃以上の高温でアニール処理を行うと、振動板に含有する鉄が圧電体に拡散して該圧電体の性能を劣化させてしまうといった問題がある。
特許文献1に記載された発明では、600℃から750℃(AD法)、600℃〜1200℃(ゾルゲル法)の高温雰囲気で数時間のアニール処理が行われるので、ステンレスの振動板に含有する鉄が圧電素子に拡散して圧電素子の性能を劣化させてしまう。また、AD法(エアロゾルデポジション法)により成膜された圧電素子のアニール処理には大気雰囲気が必要であり、同時にアニールされる振動板はその表面が酸化してしまい、耐久性の劣化や他の部材との接着性の減少などの問題が起こる。
特許文献2及び特許文献3に記載された発明では、基体(基板)と圧電セラミックスとの間に中間層を設けて、圧電セラミックスの鉛成分の拡散防止技術や圧電セラミックス成膜時の基体(基板)へのダメージを軽減させる技術が開示されているが、基体(基板)に含有される元素の拡散によって圧電セラミックスの性能が劣化することについては記載されていない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板に含有する金属元素の圧電素子への拡散を防止して圧電素子の性能及び信頼性を確保し、好ましい液体吐出を実現する液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、鉄を含有する振動板の両面に薄膜を成膜する薄膜成膜工程と、前記振動板の前記薄膜が成膜された一方の面に下部電極を成膜する下部電極成膜工程と、前記下部電極に圧電体を成膜する圧電体成膜工程と、前記圧電体に上部電極を成膜する上部電極成膜工程と、前記薄膜成膜工程の後に、前記振動板の前記薄膜が形成された他方の面に流路プレートを接合する工程と、前記一方の面に前記薄膜、前記下部電極及び前記圧電体が成膜され、前記他方の面に前記薄膜が成膜されるとともに前記流路プレートが接合された前記振動板に熱処理を施して前記薄膜を酸化させた酸化膜を生成するとともに前記圧電体を焼成する熱処理工程と、前記流路プレートの前記振動板と反対側に、前記圧電体に対応して前記流路プレートに形成される液室と連通するノズルが形成されるノズルプレートを接合する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、熱処理工程によって鉄を含有する振動板と上部電極及び下部電極を備えた圧電体との間に酸化物を含有する保護膜が形成されるとともに、圧電体を焼結させる際に基板に含有する鉄の圧電体への拡散が防止されるので、圧電体の性能劣化及び信頼性低下を回避することができる。本発明は、600℃から1200℃程度の高温で熱処理が行われる態様において、特に効果を発揮する。また、液室側の酸化膜は振動板の耐液膜として機能する。
また、酸化物を含有する保護膜の生成と圧電体の焼成とを共通の熱処理工程によって行うことができ、製造工程の簡略化に寄与する。
なお、この熱処理工程には、600℃から1200℃の高温環境化における熱処理(アニール処理)が含まれる。
また、上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、鉄を含有する振動板の両面に薄膜を成膜する薄膜成膜工程と、前記薄膜が形成された振動板に熱処理を施して前記薄膜を酸化させた酸化膜を生成する第1の熱処理工程と、前記振動板の前記酸化膜が生成された一方の面に下部電極を成膜する下部電極成膜工程と、前記下部電極に圧電体を成膜する圧電体成膜工程と、前記圧電体に上部電極を成膜する上部電極成膜工程と、前記第1の熱処理工程の後に、前記振動板の前記薄膜が形成された他方の面に流路プレートを接合する工程と、前記一方の面に前記酸化膜が生成されるとともに前記下部電極及び前記圧電体が成膜され、前記他方の面に前記酸化膜が生成されるとともに前記流路プレートが接合された前記振動板に熱処理を施して前記圧電体を焼成する第2の熱処理工程と、前記流路プレートの前記振動板と反対側に、前記圧電体に対応して前記流路プレートに形成される液室と連通するノズルが形成されるノズルプレートを接合する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、第1の熱処理工程によって振動板に保護膜が生成され、該保護膜が生成された後に行われる第2の熱処理工程によって圧電体を焼成するので、鉄の圧電体への拡散防止効果を高めることが可能になる。また、液室側の酸化膜は振動板の耐液膜として機能する。すなわち、請求項1及び請求項2に係る発明によれば、振動板の両面に保護膜を形成することで、圧電体が形成される面と反対側の面を保護することが可能になる。例えば、基板の圧電体が形成される側の面を第1の面とし第1の面の反対側の面を第2の面とすると、第2の面に液体を収容する液室が形成される態様では、第2の面に形成された保護膜は液室内の液体から基板(振動板)を保護する耐液膜として機能する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記薄膜は、チタン及びアルミニウムを含むことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、チタンやアルミニウムなどの入手容易な材料を用いて、基板の保護膜となる酸化膜を容易に形成可能である。また、保護膜としてチタン及びアルミニウムの酸化物である二酸化チタンや酸化アルミニウムを適用すると、高い鉄の拡散防止効果を得ることができる。
なお、チタン及びアルミニウムを含む薄膜には、TiAlN(チタンアルミナイトライド)やTiCrAlN(チタンクロムアルミナイトライド)などがある。
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記圧電体から吐出力を付与される液体を収容する液室を形成する液室形成工程と、前記液室と連通し、前記液体を吐出させるノズルを形成するノズル形成工程と、を含むことを特徴とする。
前記液室形成工程は、液室が形成されるプレート(構造体)を振動板に接合する態様がある。また、ノズル形成工程は、ノズルとなる開口(穴)が形成されたノズルプレートを液室が形成されるプレート(構造体)に接合する態様がある。請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記流路プレートを接合する工程は、拡散接合工程であることを特徴とする。請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記拡散接合工程は、真空環境下又は不活性ガス環境下で行われることを特徴とする。請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記拡散接合工程は、振動板及び流路板の再結晶温度以上の温度に加熱しながら行われることを特徴とする。請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法の一態様に係り、前記拡散接合工程は、4.9メガパスカル以上19.6メガパスカル以下の圧力条件で行われることを特徴とする。
また、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、鉄を含有する振動板と、前記振動板の一方の面に形成され、前記振動板に成膜された薄膜を酸化させた酸化物を含有する第1の保護膜と、前記振動板の他方の面に形成され、前記振動板に成膜された薄膜を酸化させた酸化物を含有する第2の保護膜と、前記振動板の前記第1の保護膜側に形成される下部電極と、前記下部電極の前記第1の保護膜と反対側に形成される圧電体と、前記圧電体の前記下部電極と反対側に形成される上部電極と、前記振動板の前記第2の保護膜側に接合され、前記圧電体に対応して液室が形成される流路プレートと、前記流路プレートの前記第2の保護膜と反対側に接合され、前記液室と連通するノズルが形成されるノズルプレートと、を備える液体吐出ヘッドが作製される
かかる液体吐出ヘッドは、鉄を含有する振動板と上部電極及び下部電極を備えた圧電体との間に酸化物を含有する保護膜が形成されるので、圧電体を焼結する熱処理工程において基板に含有する鉄の圧電体への拡散が防止され、圧電体の性能劣化及び信頼性低下を回避することができる。また、液室側の酸化膜は振動板の耐液膜として機能する。圧電体のたわみ変形に対応して変形する振動板は、d31モードの変位を利用した圧電体が好適に用いられる。
基板の圧電体が形成される側の面を第1の面とし第1の面の反対側の面を第2の面とすると、保護膜は第1の面に形成すればよい。もちろん、第1の面及び第2の面の両面に保護膜を形成してもよい。
液体吐出ヘッドには、記録媒体の全幅(記録媒体の画像形成可能幅)に対応した長さのノズル列を有するライン型ヘッドや、記録媒体の全幅に満たない長さのノズル列を有する短尺ヘッドを記録媒体の幅の方向へ走査させるシリアル型ヘッドがある。
ライン型の液体吐出ヘッドには、記録媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺のノズル列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、記録媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
液体には、インクジェット記録装置に用いられるインクやレジストなどの薬液、処理液などがある。この液体は、液体吐出ヘッドに設けられたノズルから吐出可能な物性(粘度など)を有している。
記録媒体は、吐出孔から打滴される液体を付着させる媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
かかる液体吐出ヘッドにおいて、前記薄膜は、アルミニウムおよびチタンを含み、前記酸化物は、酸化アルミニウム及び二酸化チタンを含む態様も好ましい
かかる液体吐出ヘッドにおいて、前記保護膜は、50ナノメートル以上15マイクロメートル以下の膜厚を有する態様も好ましい
かかる態様によれば、保護膜を50ナノメートル以上とする態様では、圧電体への鉄の拡散が確実に防止され、また、保護膜を15マイクロメートル以下とする態様では、基板の厚みが大きくなることにより圧電体の発生圧力の伝達効率が低下することを回避できる。
かかる液体吐出ヘッドにおいて、前記流路プレートは、ステンレス、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金のいずれかの材料を含む態様も好ましい
かかる液体吐出ヘッドにおいて、前記流路プレートは、ガラス粉末を樹脂バインダに分散させたグリーンシートを用いて形成される態様も好ましい
かかる液体吐出ヘッドにおいて、前記グリーンシートに含まれるガラス組成は、前記圧電体を焼成させる熱処理の温度条件により軟化しないものであることを特徴とする。
流路プレートは、前記圧電体から吐出力を付与される液体を収容する液室と、前記液室と連通し、前記液体を吐出させるノズルと、を有する態様がありうる。
かかる態様では、基板を複数の薄膜(板状部材)で構成してもよい。例えば、液室やノズルが形成された薄膜(キャビティプレート)の積層により基板を形成してもよいし、エッチングなどの手法により液室を形成し、ノズルが形成された薄膜を基板に接合して基板を形成してもよい。なお、ここでいうノズルには、液体が吐出される開口部と、該開口部と液室とを連通する流路が含まれる。
画像形成装置には、ノズルからメディア(記録媒体)上にインクを吐出させて、所望の画像を形成するインクジェット記録装置がある。なお、ここでいう画像には、写真画や絵などのいわゆる画像だけでなく、文字、記号などのテキストや、配線基板上に形成される配線パターンなどの形状も含まれる。
本発明によれば、熱処理工程によって鉄を含有する基板と上部電極及び下部電極を備えた圧電体との間に酸化物を含有する保護膜が形成されるとともに、圧電体を焼結する際に基板に含有する鉄の圧電体への拡散が防止されるので、圧電体の性能劣化及び信頼性低下を回避することができる。本発明は、600℃から1200℃程度の高温で熱処理が行われる態様において、特に効果を発揮する。また、基板に形成された薄膜に第1の熱処理を施して酸化膜を生成した後に、下部電極及び圧電体を基板に成膜し、第2の熱処理工程により圧電体を焼成すると、高い鉄の拡散防止効果を得ることができる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数のヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、ヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16(記録媒体)の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド12K、12C、12M、12Yのノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。 ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図5に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドを有している。印字部12を構成する各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙送り方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、ヘッドが紙送り方向と直交する主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔ヘッドの構成〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a)〜(c) に示したように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙送り方向と略直交する主走査方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a) の構成に代えて、図3(c) に示すように、複数のノズル51が2次元状に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
なお、本例では圧力室52の平面形状が略正方形である態様を示したが、圧力室52の平面形状は略正方形に限定されず、略円形状、略だ円形状、略平行四辺形(ひし形)など様々な形状を適用することができる。また、ノズル51や供給口54の配置も図3(a)〜(c)に示す配置に限定されず、圧力室52の略中央部にノズル51を配置してもよいし、圧力室52の側壁側に供給口54を配置してもよい。
図3(b) に示すように、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体の幅方向(主走査方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図3(a)〜(c)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
図4はインク室ユニット53の立体的構成を示す断面図(図3(a),(b) 中の4−4線に沿う断面図)である。
図4に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路(共通液室)55と連通されている。共通流路55は不図示のインク供給タンクと連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成する振動板56には、プラチナ(Pt)や金(Au)などの金属が用いられる上部電極57及び下部電極57Aと圧電体58Aとを含んだ圧電素子58が接合される。本明細書では、圧電体58Aの両面に上部電極57及び下部電極57Aが形成された状態を圧電素子58と呼ぶこととする。
圧電素子58(即ち、上部電極57と下部電極57Aとの間)に所定の駆動電圧を印加することによって圧電素子58にたわみ変形が生じ、このたわみ変形に応じて振動板56が変形してノズル51からインクが吐出される。ノズル51からインクが吐出されると共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
本例の振動板56にはステンレスなどの金属が用いられる。また、圧電素子58にはPZT(Pb(Zr・Ti)O3 、チタン酸ジルコン酸鉛)などのセラミック系圧電素子が好適に用いられる。
本例のヘッド50は、振動板56と圧電素子58との間に、保護膜59が形成され、この保護膜59には、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化クロム(CrO)などの金属酸化膜が適用される。
振動板56の圧電素子58が配設される側の面56Aに、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、スパッタリング法などの薄膜製膜方法によってアルミニウム(Al)、チタン(Ti)を含む金属膜を成膜し、600℃〜1200℃で圧電素子58にアニール処理を施すことで、該金属膜に含まれるアルミニウム、チタンなどの金属元素が酸化して、振動板56の表面には上述した金属酸化膜が形成される。
振動板56に成膜される金属膜には、少なくともアルミニウム及びチタンが含まれていればよく、更に、クロム(Cr)が含まれていてもよい。該金属膜には、TiAlN(チタンアルミナイトライド)やTiCrAlN(チタンクロムアルミナイトライド)などの硬質膜が好適に用いられる。
図4に示すヘッド50の構造によれば、振動板56に圧電素子58を接合した状態でアニール処理(処理温度600℃〜1200℃)が施されても、振動板56に含有する鉄(Fe)が圧電素子58(圧電体58A)に拡散することなく、圧電素子58の性能劣化及び信頼性の低下が防止される。
なお、振動板56に金属膜を成膜した状態でプレアニール処理を行い、保護膜59が形成された振動板56に圧電素子58を形成し、更に、アニール処理を施してもよい。
上述した保護膜59の膜厚は50nm以上15μm以下とすることが好ましい。即ち、保護膜59の膜厚が50nm未満であると、圧電素子58に対する鉄の拡散防止機能が十分に働かず、また、保護膜59の膜厚が15μmを超えると、該保護膜59が振動板56として機能してしまい(振動板56の厚みが保護膜59の分だけ厚くなり)、圧電素子58から所定の圧力を発生させても振動板56の変位量が小さくなり、所定の吐出性能を維持することが困難になる。
本例では、1層からなる保護膜59を示したが、保護膜59を2層以上の膜から構成してもよい。2層以上の膜には種類(含有する元素)の異なる膜を適用可能である。
〔制御系の説明〕
図5はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal serial bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42(図1に図示)等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御(打滴制御)が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図5において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド12K,12C,12M,12Yの圧電素子58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、 プログラム格納部90は動作パラメータ等の記憶手段(不図示)と兼用してもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、システムコントローラ72及びプリント制御部80は、1つのプロセッサから構成されていてもよいし、システムコントローラ72とモータドライバ76及びヒータドライバ78とを一体に構成したデバイスや、プリント制御部80とヘッドドライバとを一体に構成したデバイスを用いてもよい。
〔ヘッドの製造方法の説明〕
次に、本例に示すヘッド50の製造方法について説明する。図4でも説明したように、本例に示すヘッド50は、多数のキャビティプレートが積層される積層構造を有している。即ち、ノズル51が形成されるノズルプレートと、圧力室52や供給口54、共通流路55などが形成される流路プレートと、保護膜59が形成される振動板56と、上部電極57および下部電極57Aを備えた圧電素子58と、を順に積層した構造となっている。なお、上述した各キャビティプレートは1つのプレートから構成されていてもよいし、複数のプレートから構成されてもよい。
例えば、流路プレートは、ノズル51と圧力室52とを連通させる吐出側流路が形成されるプレートと、共通流路55が形成れるプレートと、供給口54が形成されるプレートと、圧力室52が形成されるプレートと、を積層して形成される態様がある。
図6は、本例のヘッド50の製造工程を示す説明図である。詳細は後述するが、これらのプレート間の接合には、接合部材による接合、加圧、加熱による接合など、当該プレートの材料に応じた接合方法が適宜選択される。
本例に示すヘッド製造工程は(ステップS10)、先ず、ステップS12(プレート形成工程)において、ヘッド50を構成する各プレートが形成される。例えば、本例のノズルプレートには、ステンレスや合成樹脂のプレートが用いられる。また、流路プレートには、ステンレス、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属プレート(薄膜)が用いられる。金属プレート以外にも、ガラス粉末をアクリル系樹脂などのバインダに分散させシート形成したグリーンシートを用いてもよい。なお、グリーンシートに含まれるガラス組成は、後述するアニール処理時の熱処理条件においても軟化しないものが選択される。
積層工程(ステップS14)では、ステップS10で形成された各プレートが積層されて流路プレートが形成される。流路プレートを構成するプレートに金属プレートを用いる態様では、各プレートの接合面(境界面)が拡散接合により接合され、更に、該流路プレートと振動板56が拡散接合により接合される(拡散接合工程、ステップS16)。
拡散接合工程では、真空もしくは不活性ガス(窒素やアルゴン)雰囲気下で積層体の再結晶温度以上(1000℃〜1300℃)に加熱しながら、該積層体を所定の圧力で所定の時間加圧する。拡散接合の圧力条件の一例を挙げると4.9MPa〜19.6MPaであり、時間条件の一例を挙げると0.5時間〜24時間である。
金属膜成膜工程(ステップS22)では、振動板56の流路プレート接合される面と反対側の面の全体にわたってTiAlN(或いは、TiCrAlN)が成膜される。この金属膜成膜工程には、AD法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、スパッタ法、スクリーン印刷法などの成膜方法が適用される。
AD法は、チャンバー内に置かれた基板に対してエアロゾルノズルから窒素ガスなどに乗せたサブミクロンの直径の金属微粒子(エアロゾル)を吹き付けながら、基板とノズルとを相対的に移動させて、該基板表面の所定の位置に結晶させる成膜方法である。
下部電極成膜工程(ステップS24)では、金属膜成膜工程で成膜された金属膜の上に下部電極57A(図4参照)となるプラチナや金などの金属薄膜が成膜される。下部電極成膜工程には、AD法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、スパッタ法、スクリーン印刷法などの成膜方法が適用される。なお、下部電極は振動板56の一面の全体にわたって形成され、各圧電素子58の共通の電極となる。もちろん、各圧電素子58に対応した個別の下部電極を形成してもよい。
圧電体成膜工程(ステップS26)では、下部電極膜の上に圧電体(圧電体膜)58Aが成膜される。圧電体成膜工程には、AD法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、スパッタ法、スクリーン印刷法などの成膜方法が適用される。ステップS26で成膜される圧電体58Aは、各圧力室に対応して個別に形成されてもよいし、下部電極57Aと同様に振動板56の一面の全体にわたって形成してもよい。
なお、金属膜成膜工程(ステップS22)、下部電極成膜工程(ステップS24)、圧電体成膜工程(ステップS26)に適用される成膜方法には同一の方法を用いるとよい。
アニール工程(ステップS28)では、600℃〜1200℃の温度条件でアニール処理が行われる。アニール処理工程では、ステップS26で成膜された圧電体58Aを焼成するとともに、ステップS22で成膜された金属膜が酸化して振動板56と下部電極57Aとの間に金属酸化膜(保護膜59)が形成される。
金属膜にTiAlNを用いる場合には、金属酸化膜はアルミナ(Al)、チタニア(TiO)を含有し、TiCrAlNを用いる場合には、金属酸化膜はアルミナ、チタニアに加えて酸化クロム(CrO)を含有する。このような保護膜59の存在により、振動板56に含有する鉄の圧電体58Aへの拡散が防止される。
ステップS28のアニール工程が施された圧電体58Aには、ステップS30(上部電極成膜工程)により、AD法やスクリーン印刷法によって上部電極57として機能するプラチナや金などの金属薄膜が成膜される。
ステップS32(分極工程)では、フレキシブル基板などの配線部材が上部電極57及び下部電極57Aに接続され、上部電極57と下部電極57Aとの間に所定の電圧を印加して圧電体58Aが分極処理される。本例の分極工程では、圧電体58Aの厚み方向(振動板56の面に対して略垂直方向)に分極処理が施される。分極処理時の印加電圧は、圧電素子58を駆動する際の駆動電圧よりも高い電圧が適用される。
ステップS32に示す分極工程を経て、圧電体58Aの上部電極57が形成された部分が圧電活性部となり、各圧電活性部に対応する圧力室内のインクに吐出力を与える圧電素子として機能する。
ステップS34では、振動板56及び圧電素子58が接合された流路プレートにノズルプレートが接合され、ヘッド50が完成する。ヘッド50は、所定の検査を経てインクジェット記録装置10本体に組み込まれる(ステップS36)。
ステップS28のアニール工程を経ない部分には、耐熱性の低い樹脂材料を用いることが可能であり、材料に応じて接合部材や接合方法が適宜選択される。
図6に示す製造工程はあくまでも一例であり、下部電極成膜工程や圧電体成膜工程、上部電極成膜工程に適用される成膜方法に応じて、熱処理工程、加圧工程などの工程が適宜行われる。
上記の如く構成されたヘッド50は、振動板56と圧電素子58(下部電極57A及び圧電体58A)との間にTiAlNやTiCrAlNなどの金属薄膜が成膜された状態でアニール処理が施されるので、振動板56と圧電素子58との間に保護膜59を形成し、振動板56に含有する鉄の圧電素子58への拡散が防止される。
なお、本例では、ステンレスなどの鉄を含有する金属基板を例示したが、ガラス、シリコンの基板でも同様に、異元素の拡散によるPZTの性能劣化の恐れがある
〔他の実施形態〕
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図7には、図6に示すヘッド製造工程の他の態様を示す。図7に示すヘッド製造工程(ステップS10’)では、金属膜成膜工程(ステップS22)によりTiAlN膜が成膜された振動板56にプレアニール処理(第1の熱処理工程)を施して振動板56の表面に保護膜59を生成した後に(ステップS23)、下部電極成膜工程(ステップS24)、圧電体成膜工程(ステップS26)により、該保護膜59が生成された振動板56に下部電極57A及び圧電体58Aを形成し、アニール工程(第2の熱処理工程)により圧電体58Aを焼成するように構成してもよい。
また、図8に示すように、振動板56の圧電素子58が配設される側の面(第1の面)に保護膜(第1の保護膜)を形成するとともに、振動板56の圧力室52側の面(第2の面)に保護膜(第2の保護膜)59Aを形成してもよい。この保護膜59Aは振動板56の耐インク膜として機能する。なお、振動板56の一面全体にわたって保護膜59Aを形成してもよいし、圧力室52の対応する領域にのみに保護膜59Aを形成してもよい。
本実施形態では、記録紙16上にインクを吐出させて所望の画像を形成するインクジェット記録装置を示したが、本発明は、媒体上に液体(処理液、薬液、水等)を吐出させる液体吐出装置にも適用可能である。
本発明に係るヘッドを搭載したインクジェット記録装置の全体構成図 図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 ヘッドの構造例を示す平面透視図 図3中4−4線に沿う断面図 図1に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図 本発明の実施形態に係るヘッドの製造工程を説明する図 図6に示すヘッドの製造工程の他の態様を説明する図 図4に示すヘッドの他の態様を示す図
符号の説明
10…インクジェット記録装置、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、56…振動板、57…上部電極、57A…下部電極、58…圧電素子、58A…圧電体、59,59A…保護膜

Claims (8)

  1. 鉄を含有する振動板の両面に薄膜を成膜する薄膜成膜工程と、
    前記振動板の前記薄膜が成膜された一方の面に下部電極を成膜する下部電極成膜工程と、
    前記下部電極に圧電体を成膜する圧電体成膜工程と、
    前記圧電体に上部電極を成膜する上部電極成膜工程と、
    前記薄膜成膜工程の後に、前記振動板の前記薄膜が形成された他方の面に流路プレートを接合する工程と、
    前記一方の面に前記薄膜、前記下部電極及び前記圧電体が成膜され、前記他方の面に前記薄膜が成膜されるとともに前記流路プレートが接合された前記振動板に熱処理を施して前記薄膜を酸化させた酸化膜を生成するとともに前記圧電体を焼成する熱処理工程と、
    前記流路プレートの前記振動板と反対側に、前記圧電体に対応して前記流路プレートに形成される液室と連通するノズルが形成されるノズルプレートを接合する工程と、
    を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 鉄を含有する振動板の両面に薄膜を成膜する薄膜成膜工程と、
    前記薄膜が形成された振動板に熱処理を施して前記薄膜を酸化させた酸化膜を生成する第1の熱処理工程と、
    前記振動板の前記酸化膜が生成された一方の面に下部電極を成膜する下部電極成膜工程と、
    前記下部電極に圧電体を成膜する圧電体成膜工程と、
    前記圧電体に上部電極を成膜する上部電極成膜工程と、
    前記第1の熱処理工程の後に、前記振動板の前記酸化膜が形成された他方の面に流路プレートを接合する工程と、
    前記一方の面に前記酸化膜が生成されるとともに前記下部電極及び前記圧電体が成膜され、前記他方の面に前記酸化膜が生成されるとともに前記流路プレートが接合された前記振動板に熱処理を施して前記圧電体を焼成する第2の熱処理工程と、
    前記流路プレートの前記振動板と反対側に、前記圧電体に対応して前記流路プレートに形成される液室と連通するノズルが形成されるノズルプレートを接合する工程と、
    を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記薄膜は、チタン及びアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記圧電体から吐出力を付与される液体を収容する液室を形成する液室形成工程と、
    前記液室と連通し、前記液体を吐出させるノズルを形成するノズル形成工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記流路プレートを接合する工程は、拡散接合工程であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記拡散接合工程は、真空環境下又は不活性ガス環境下で行われることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記拡散接合工程は、振動板及び流路板の再結晶温度以上の温度に加熱しながら行われることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記拡散接合工程は、4.9メガパスカル以上19.6メガパスカル以下の圧力条件で行われることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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