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JP4985582B2 - タンタル多孔質膜の製造方法およびタンタル多孔質電極箔の製造方法 - Google Patents
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タンタル多孔質膜の製造方法およびタンタル多孔質電極箔の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンタル電解コンデンサの電極箔に用いられるタンタル多孔質膜の製造方法、および、該タンタル多孔質膜を用いたタンタル電解コンデンサ用の電極箔の製造方法に関する。
電子機器の小型・高機能化に伴い、CPUの処理速度も年々高速化し、その動作クロック周波数は数GHzに達している。高速化に対応するため、CPU周辺のデカップリングコンデンサに対しては、低ESR(低等価直列抵抗)、低ESL(低等価直列インダクタンス)、小型大容量(高リップル電流)であることが強く求められるようになっている。また、携帯電話やノートパソコンなどの薄型化に伴い、コンデンサに対する薄型化の要求も強くなっている。
このような要求を満たすコンデンサとして、表面積の大きなタンタル(Ta)やニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)を陽極として用いてその表面に陽極酸化で誘電体を形成し、陰極として導電性高分子を形成した電解コンデンサが挙げられ、それぞれの特徴を生かして用いられている。
このうち、タンタルやニオブを用いた電解コンデンサでは、通常、タンタルやニオブの原料粉末をリードワイヤと共に圧粉成型し、高真空化で焼結することにより得られる多孔質ペレットが、陽極として用いられている。この多孔質ペレットは、タンタルやニオブの誘電率がアルミニウムよりも高く、また、サブミクロンの微粉末を使用した多孔質体の表面積を利用していることから、体積あたりの静電容量が非常に大きい。その一方、圧粉焼結という製法上、多孔質ペレットの薄型化には限界があり、電解コンデンサの低背化に限界がある。
これに対し、タンタルやニオブの電解コンデンサの薄型化を目的として薄型の多孔質体を形成する手法が以前より検討されている。例えば、タンタルやニオブの微粉末スラリーをタンタル箔やニオブ箔上に印刷して焼結する手法などが挙げられる。しかしながら、このような印刷焼結法では、粉末を均一に焼結させることが難しく、焼結収縮によってクラックや反りが発生する、基板となる箔と粉末との密着性が十分に得られないなどの問題があり、実用化されていない。
一方、タンタルやニオブの薄型多孔質体の新たな作製方法として、タンタルやニオブとそれらと相溶性を持たない異相成分を混合成膜し、真空中または不活性ガス中で熱処理した後に異相成分のみを選択的に除去するという方法が提案されている(特許文献1、特許文献2および非特許文献1)。この方法においては、主に、バルブ金属としてタンタルやニオブ、異相成分として銅(Cu)が選択され、タンタルやニオブの箔に同時スパッタリングにより混合膜を作製し、熱処理した後に銅を溶解除去して多孔質膜を作製している。この手法では、異相成分が存在している状態でタンタルやニオブを焼結させるため、タンタルやニオブの粒子同士や、タンタル粒子やニオブの粒子とタンタル箔やニオブの箔との間の焼結が比較的均一に進行するため、前述した印刷焼結法で問題になったクラックや反り、基板からの剥がれなどがなく、容易に多孔質電極箔が得られる。
ここで、電解コンデンサ用の多孔質電極としては、電極箔の見かけ面積あたりの静電容量が大きいほど望ましい。見かけ面積当たりの静電容量を上げるには、粒成長温度を低くして、より微細なタンタルやニオブの粒子で多孔質膜を形成すること、混合膜を厚くして表面積を3次元的に増やすことが効果的である。
しかしながら、粒成長温度を低くした場合、タンタルやニオブの粒子同士や、タンタル粒子やニオブ粒子と、基板として用いているタンタル箔やニオブ箔との間の焼結が不十分となり、多孔質膜強度や基板密着性が低下してしまう。一方、混合膜を厚くしていった場合、高価な材料であるタンタルやニオブの使用量が増えてコストが増大するといった問題のほか、成膜後の残留応力や、熱処理中の混合膜と基板との熱膨張係数差により生じる熱応力などにより、基板との密着性や多孔質膜強度は低下する。
このような低温熱処理で粒成長を抑えたり、多孔質膜厚を厚くしたりした場合、多孔質電極箔には、目視上、膜の剥がれ、割れやクラックなどは確認されず、リン酸などで陽極酸化を行なって、硫酸水溶液を陰極として液中評価を行なうと、該多孔質電極箔は優れた漏れ電流特性を示す。これは、実際に多孔質膜に局所的な欠陥が生じても、電圧を印加して漏れ電流を測定している最中に、欠陥部の陽極酸化が迅速に起こり、欠陥発生による漏れ電流が検出されないためである。
しかしながら、実際の固体電解コンデンサでは、陰極として二酸化マンガンや導電性高分子のような固体電解質を用いているため、液中評価で起こるような迅速な欠陥の修復が起こりにくい。電解コンデンサ製造工程では、陰極形成工程や樹脂モールド工程などで電極にストレスがかかることにより、多孔質構造の局所的な破壊が起こるため、多孔質膜強度や基板密着性が不十分となる。このような局所的な破壊が起こりやすい多孔質電極箔を使用して電解コンデンサを製造した場合、製造工程に漏れ電流が大きくなって電解コンデンサの信頼性が損なわれ、最終的に所定の漏れ電流スペックを満たすことができずに、その歩留まりが低下する。このように、目視で欠陥がなく、前述したような液中評価で優れた特性を示す多孔質電極箔であっても、実際のコンデンサ製造工程を考慮した場合には、多孔質膜強度や基板密着性が不十分であるといった問題がある。
特開2006−049816号公報 特開2007−305780号公報 電気化学会第73回大会講演要旨集p.287
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、電解コンデンサの薄型化を可能にする強度に優れたタンタル多孔質膜や、基板密着性に優れたタンタル多孔質電極箔の製造方法を提供することにある。
本発明のタンタル多孔質膜の製造方法は、基板の上に、タンタルまたはタンタル合金からなる原料金属と、該原料金属と相溶しない異相成分とを混合成膜し、得られた混合膜を熱処理することにより、前記原料金属および異相成分をそれぞれ粒成長させた後、前記異相成分を選択的に溶解することにより、タンタル多孔質膜を製造する方法に係る。
特に、本発明においては、前記混合成膜に際して、前記タンタルを前記異相成分中に強制的に固溶させることを特徴とする。
このように前記タンタルを前記異相成分中に強制的に固溶させるに際しては、前記混合成膜を、前記原料金属と異相成分の同時スパッタリングにより行うことが好ましい。
かかる同時スパッタリングに際して、例えば、タンタルターゲットに異相成分の微細なチップを埋め込むか、または、異相成分ターゲットにタンタルの微細なチップを埋め込むことにより、得られる混合膜における強制固溶の状態を実現しうる。
また、同時スパッタリングに際して、前記原料金属のターゲットと前記異相成分のターゲットをそれぞれ別個に配置し、前記基板を基板ホルダに固定し、該基板を回転させながら、該基板を前記原料金属のターゲットと異相成分のターゲットの上を交互に通過させて、該基板上に前記混合膜を成膜することにより、さらに再現性よく、前記強制固溶の状態を実現しうる。
この場合、強制固溶の状態を実現するためのスパッタリング条件の設定としては、前記混合膜を成膜する際に、時間あたりの成膜速度(μm/hr)[A]と、分あたりの成膜速度(nm/min)/前記基板の回転速度(rpm)により求められる、前記基板が前記原料金属のターゲットおよび異相成分のターゲット上を1通過するごとの前記原料金属と異相成分の付着厚み(nm)[B]との関係が、A×B<2.0となるように、前記時間あたりの成膜速度および前記基板の回転速度を調整することが挙げられる。
ただし、基板温度、その他のスパッタリング条件の設定によっては、上記条件に限定されることはない。
例えば、前記異相成分として銅を用いる場合、前記混合薄膜のXRD回折パターンにおいて、銅に由来する回折ピークの最大強度を示す回折角が、2θ=43.0°よりも低角度となるように、スパッタリング条件を適切に調整することにより、前記強制固溶の状態を実現しうる。
本発明のタンタル多孔質電極箔の製造方法は、タンタル、タンタル合金、ニオブ、または、ニオブ合金からなる箔を前記基板として用い、該箔の両面または片面に、上記の本発明に係るタンタル多孔質膜の製造方法により、前記タンタル多孔質膜を形成することを特徴とする。
本発明によって、タンタル多孔質膜における多孔質膜強度や基板密着性を向上させることができ、実際の電解コンデンサ製造工程において、信頼性の高い電解コンデンサ用電極箔を歩留まり良く製造することが可能となる。
本発明者らは、タンタル多孔質膜の強度や、タンタル多孔質電極箔の多孔質膜と基板である箔との密着性を向上させるべく鋭意検討を行い、混合成膜時にタンタル(Ta)またはTa合金からなる原料金属を、該原料金属と相溶性を持たない異相成分中に強制的に固溶させうる条件で、混合成膜を行い、得られた混合膜を熱処理して原料金属と異相成分をそれぞれ粒成長させ、異相成分を選択的に溶解することにより、得られる多孔質箔において、多孔質膜強度を向上させ、かつ、基板との密着性をも向上させうるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
タンタル等の原料金属を異相成分中に強制的に固溶させることによって、引き続いて行なわれる熱処理時に、強制固溶したTaが異相成分中から均一に核生成および析出し、Ta粒子同士、あるいは、Ta粒子と基板であるTa箔またはニオブ(Nb)箔との焼結を促進し、最終的に得られる多孔質膜強度、および多孔質膜−基板間の密着性を安定化させるものと考えられる。このような電極箔を使用することで、実際の電解コンデンサ製造工程においても信頼性の高い電解コンデンサを歩留まり良く製造することが可能となる。
以下、本発明に係るタンタル多孔質膜の製造方法について、工程ごとに詳細に説明する。
[A]基板の上に、TaおよびTa合金から選ばれる少なくとも一種の原料金属を、原料金属と相溶しない異相成分中に強制的に固溶させて、混合膜を形成する工程:
原料金属としては、純Taのほか、Taを主成分とし、電解コンデンサの誘電体となる陽極酸化皮膜の漏れ電流や熱安定性などを改善するような元素が微量添加されたTa合金等も含む。この微量添加可能な元素としては、具体的には、W、Zr、Ti、HfおよびAlなどの微量金属元素、従来のTaの原料となる粉末に微量添加されているP、NまたはBなどのドーパントを挙げることができる。また、Ta−Nb合金は、TaとNbの中間的な特性を示すため、Nbを微量添加できることは自明である。
Ta、Ta合金と相溶しない異相成分としては、Cu、Ag、MgおよびCaなどの金属元素およびこれらの合金、MgO、CaOなどTa25より熱力学的に安定な酸化物などを用いることができる。これらのいずれを異相成分として使用する場合でも効果は得られるが、経済性や混合成膜のしやすさ、融点などを総合的に考慮すると異相成分としてはCuが好ましい。
異相成分の添加量は、基本的には、得られるTa多孔質膜の空隙率により決定される。かかる空隙率は、多孔質膜の容量、強度および該多孔質膜が用いられる電解コンデンサの用途等により決定される。一般的には、かかる空隙率は、30〜70%の範囲内である。したがって、異相成分の添加量も、一般的には、30〜70%の範囲内となる。ただし、成膜方法によっても微細構造が異なってくることから、それに応じて調整する必要がある。
混合成膜は、Ta等の原料金属と異相成分の同時スパッタリングで行うことが好ましい。タンタルと異相成分は本質的には相溶性を持たない。このような物質同士を強制的に固溶させる同時スパッタリング以外の手法として、メカニカルアロイングや溶解急冷法なども考えられる。しかしながら、メカニカルアロイングはポットやボールからのコンタミネーション(汚染)が懸念され、溶解急冷法は、タンタルが高融点(2996℃)であるので、通常方法では溶解が難しいため好ましくない。
同時スパッタリングの方法の一つとしては、原料金属のターゲットに穴を開け、所定の面積比で異相成分のチップを埋め込む、あるいは、異相成分のターゲットに穴を開け、所定の面積比でTaチップ等として原料金属を埋め込んだ複合ターゲットを使用する方法がある。原料金属と異相成分の混合状態はチップの分散度合いなどに左右される。微細なチップを多数埋め込んだターゲットにより、原料金属と異相成分が強制的に固溶した混合膜を再現性良く得ることができる。
同時スパッタリングの他の方法としては、原料金属と異相成分のターゲットをそれぞれ別個に用意し、スパッタリング装置にそれぞれ配置し、基板上に、原料金属と異相成分との微細な積層膜を形成することにより、強制固溶の状態で混合膜を成膜することができる。
この場合の具体的な手段はスパッタリングの方式により異なってくるが、例えば、図1に示すように、円形の基板ホルダに基板を固定して、基板を回転させて、原料金属のターゲットと異相成分のターゲットの上に基板を交互に通過させることにより、基板上に微細な積層膜を作製し、混合成膜する方法が挙げられる。
この場合、分あたりの成膜速度(nm/min)と基板回転数(rpm)とから、基板が原料金属のターゲットおよび異相成分のターゲット上を1通過するごとの原料金属と異相成分の付着厚みを、以下の式(1)により算出することができる。
1通過ごとの付着厚み(nm)=成膜速度(nm/min)/基板回転速度(rpm)・・・(1)
前述した基板がターゲット上を1通過するごとの付着厚みは、成膜速度と基板回転速度により容易に調整することが可能であり、前述した埋め込み複合ターゲットに比べて制御がしやすく、再現性にも優れる。
この1通過ごとの付着厚みを小さくするほど、理論上は微細混合された積層膜が得られる傾向にあり、Ta等の原料金属が強制的に固溶しやすくなる。ただし、実際には、基板に付着してからのマイグレーションを考慮する必要がある。このマイグレーションの度合いは、基板温度によって左右され、成膜速度が高いほど成膜中に基板温度が上昇し、マイグレーションしやすくなり、相分離が進行しやすくなる。したがって、強制固溶するかどうかは、基板がターゲット上1通過するごとの付着厚みにより一義的に決まるものではなく、成膜速度と基板がターゲット上を通過する時の1通過当たりの付着厚みの両者を同時に特定の範囲とすることが必要となる。
すなわち、時間あたりの成膜速度(μm/hr)[A]と、基板がターゲット上を1通過するごとの付着厚み(nm)[B]との関係が、「A×B<2.0」となる範囲とすることが重要である。
すなわち、微細な積層膜を形成するためには、基板がターゲット上を1通過するごとの付着厚みを小さくする必要がある。基本的には、成膜速度が低いほど、あるいは、基板を高速回転させるほど、この1通過ごとの付着厚みは小さくなり、微細な積層膜の形成により、原料金属が異相成分中に強制的に固溶しやすくなる。
ただし、成膜速度は、生産効率という面、および、基板回転数は、大型の基板ホルダやドラムを安定して高速回転させることが難しいという面からある程度の制約を受ける。例えば、生産効率の観点から成膜速度を上げる場合には、上記の「A×B<2.0」の範囲内となるように、基板回転速度も上げることにより、微細な積層膜を形成しうるように成膜条件を調整する必要がある。ただし、その速度まで基板回転速度を上げることができない場合には、成膜速度を下げるように成膜条件を調整することになる。かかる成膜条件は、最終的に必要な多孔質膜強度、基板密着性や生産性などを総合的に考慮して、上記の成膜速度と1通過ごとの付着厚みの関係を満たす範囲内で選択される。
ここで、前述したようにマイグレーションの度合いは基板温度に左右される。基板温度の制御次第では、上記の成膜速度と1通過ごとの付着厚みの関係が上記数値の範囲内にあっても、良好な密着性や強度が得られない場合や、逆に、上記の数値の範囲外であっても、良好な密着性、多孔質強度が得られる場合がある。大型の基板ホルダやドラム等を安定して高速回転しつつ、基板を加熱あるいは冷却することは難しいが、仮に基板を加熱した場合、マイグレーションが起こりやすく、上記数値の範囲内であっても、目的とする原料金属が強制的に固溶した混合膜が得られず、最終的に得られる多孔質膜強度や基板密着性が弱くなることがある。一方、装置が煩雑にはなるが、基板を強く冷却した場合は、マイグレーションが起こりにくくなり、成膜速度をさらに上げても原料金属を強制固溶させることができるため、上記数値の範囲外であっても、多孔質膜強度や密着性が得られる場合がある。
したがって、基板温度を冷却できる装置を使用する場合には、上記成膜速度と1通過ごとの付着厚みの関係を、冷却温度に基づいて補正することは可能であるが、一般的な装置の場合には、上記関係により成膜条件を調整することにより、原料金属の異相成分中への強制固溶状体を実現することが可能である。
得られた混合膜の強制固溶状態は、XRD回折パターンに基づいて評価することができる。例えば、異相成分としてCuを用いた場合、TaとCuの強制固溶状態は、θ−2θモードでスキャンしたXRD回折パターンにおけるCu(111)に由来するピークが最大強度を示す回折角により評価される。通常、スパッタなどで形成したCu膜は(111)面に強い配向を示し、これはCuを主成分としてTaとCuを混合成膜した場合も同様である。TaとCuの混合膜では、Taの結晶性はCuに比べて低く、Cu(111)由来の2θ=43.3°前後に最大強度を持つような回折パターンが得られる。
ここで、XRDデータベースJCPDS−04−0836によれば、Cu(111)のピークは2θ=43.295°であるが、Taの強制固溶が進むと混合膜におけるCu(111)由来のピークはブロードになり、回折ピークが最大強度を示す回折角が低角度側にシフトする。このことは、Cu中にTaが強制的に固溶し、Cuの格子間隔が広がっていることを示唆しており、低角度側へのピークシフトの度合いが強制固溶状態の一つの指標になる。混合膜の強制固溶状態が強いほど、すなわち、Cu(111)由来の最大強度の低角度側へのシフトの度合いが大きいほど本発明の効果は大きくなる。具体的には、TaとCuの混合膜のXRD回折パターンにおいて、Cu(111)に由来する回折ピークの最大強度が2θ=43.0°より低角度側にある場合に、TaのCu中への強制固溶状態が得られる。
[B]工程[A]により形成された混合膜を熱処理することにより、原料金属および異相成分をそれぞれ粒成長させる工程:
前述の工程[A]により得られた混合膜を真空中または不活性雰囲気中で熱処理し、原料金属同士の焼結を進めるとともに、異相成分の結晶粒を成長させる。この熱処理を行う理由は、原料金属および異相成分を粒成長させなければ多孔質膜の一体性が確保できず、また、異相成分を粒成長させて、連続化させることにより、その後の工程である異相成分の溶解が可能になるからである。さらに、本発明においては、工程[A]により強制的に固溶させた原料金属が異相成分中から均一に核生成・析出し、Ta粒子が薄膜内で均一に配置される。これにより、薄膜の熱処理の工程において、Ta粒子同士、または、Ta粒子と基板(Ta箔やNb箔)との焼結が促進され、最終的に得られる多孔質膜の強度、および多孔質膜−基板間の密着性を安定化させることができる。
熱処理温度は、前述の工程[A]により得られた薄膜についての原料金属と異相成分の分布、組成などを総合考慮して決定する。一般的には、高温で熱処理するほど、粒成長が進行し、最終的に得られる多孔質膜の構造が粗くなる傾向となる。
従来と同様、粒成長をさせる熱処理温度は、200℃以上とする。200℃未満では、焼結が進行せず、粒子同士の結合が弱くなり、異相成分除去後の多孔質膜が一体性を維持できなくなるからである。熱処理温度の上限は、異相成分の融点により決定され、Cuの場合、1000℃未満である。
[C]異相成分を選択的に溶解する工程:
前述したように、熱処理で粒調整した後、異相成分を溶解する。溶解方法としては、種々の方法を用いることができるが、操作の簡便さなどから、Ta、Nbの優れた耐食性を利用して、酸で溶解するのが好ましい。酸には、異相成分のみを選択的に溶解するものを選択する。例えば、硝酸、過酸化水素、塩酸などを使用することができる。これらの溶液で異相成分を溶解した後、水洗、乾燥処理を行うことで、Ta多孔質膜を得ることができる。
以上説明した本発明に係る製造方法により、Ta箔またはNb箔を基板として、多孔質膜を、該Ta箔またはNb箔の両面または片面に形成することで、多孔質膜強度および基板箔との密着性に優れたタンタル多孔質電極箔を作製することができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。実施例では、異相成分として最も実用性が高いCuを用いているが、異相成分として他の元素を使用した場合も同様に、強制固溶状態の混合膜を作製することで多孔質膜強度に優れたTa多孔質膜を得ることができ、かつ、基板との密着性に優れたTa多孔質電極箔を作製することができる。
[実施例1]
ターゲットとして、純度99.99%のTaターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、高純度化学研究所製)を用い、同時スパッタリングにより、混合膜を形成した。スパッタリング装置として、多元スパッタリング装置(株式会社アルバック製、SBH−2306RDE)を用いた。スパッタリング方式は、図1で示されたものと同様である。
すなわち、基板ホルダに、基板として、長さ110×幅55mm、厚さ50μmの圧延Ta箔(東京電解株式会社製)を固定し、5×10-5Paまで真空排気した。その後、高純度Arガス雰囲気(Arガス圧:0.4Pa)で、200W×10minの高周波スパッタエッチングを行ない、Ta箔の表面を清浄にした。その後、Arガス圧を1Paとした後、基板回転数を60rpmに調節し、1.5μm/hrの条件で、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると、0.45nmとなった。成膜終了後、基板を反転し、裏面にも同様の成膜を行なった。
得られた成膜試料の固溶状態を確認するため、XRD回折測定と膜抵抗の測定を行なった。成膜試料のXRD回折測定においては、θ−2θモードでの測定結果、Cu(111)に由来するブロードな回折ピークが得られ、最大強度が得られる回折角は2θ=42.42°であった。
また、混合膜の強制固溶状態の指標として、XRD回折測定の他に膜抵抗測定も行なった。膜抵抗は、強制固溶状態で一義的に決まるものではなく、物理的な欠陥や表面酸化状態などの影響も受けるが、欠陥が少なく、表面状態が大きく異ならない場合は、強制固溶が進むにつれて膜抵抗が上昇するため、膜の強制固溶状態の確認や比較に有用である。抵抗率計(ロレスタEP(三菱化学株式会社製、MCP−T360)で膜のシート抵抗を測定し、膜厚とシート抵抗から膜の抵抗率を算出したところ、約90μΩcmであった。
その後、得られた成膜試料を高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)に装入し、真空度5×10-3Pa以上で加熱を開始して、715℃×60minの熱処理を行った後、2.3mol/Lの硝酸に浸漬し、Cuを選択的に溶解した。その後、純水洗浄、真空乾燥を行なって多孔質Ta電極箔を得た。
多孔質電極箔の膜強度および密着性を以下のようなテープ引き剥がし試験により確認した。まず、一方の面に、両面テープ(NW−10、ニチバン株式会社製)を貼りつけて多孔質電極箔を平らなプラスチック板に貼り付け、他方の面に、幅1cmの粘着テープ(ポリイミドテープST−830、粘着力約4〜5N/cm、電子通商株式会社製)を貼り付けた。タンタル箔両面に形成された多孔質膜面についてそれぞれこのような試料を作製し、粘着テープの一端をロードセル(島津製作所製)で20mm/minで引っ張り、多孔質膜が剥離するかどうかで判定した。テープのみが剥がれてテープ粘着力と同等の引っ張り強度を示した試料を「○」、テープに膜が付着したものを「×」として判定した。各面n=2(合計n=4)で試験したが、いずれも多孔質膜は剥離せずテープのみが剥がれ、引き剥がし荷重は4〜5Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
[実施例2]
成膜条件を、基板回転数6rpm、成膜速度0.75μm/hrとした以外は、実施例1と同様の操作を行ない、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると約2.1nmとなった。
得られた混合膜のXRD回折より最大強度が得られる回折角は2θ=42.89°であり、また、膜抵抗率は約80μΩcmであった。
その後、実施例1と同様にして多孔質Ta電極箔を作製し、テープ引き剥がし試験を行い、多孔質膜強度と基板密着性を確認した。いずれも多孔質膜は、基板からは剥離せず、テープのみが剥がれ、引き剥がし荷重は4〜5Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
[実施例3]
成膜条件を、基板回転数21rpm、成膜速度0.75μm/hr、基板として厚さ50μmの圧延Nb箔(東京電解株式会社製)とした以外は、実施例1と同様の操作を行ない、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると約0.6nmとなった。
得られた混合膜のXRD回折より最大強度が得られる回折角は2θ=42.45°であり、また、膜抵抗率は約132μΩcmであった。
その後、実施例1と同様にして多孔質Ta電極箔を作製し、テープ引き剥がし試験を行い、多孔質膜強度と基板密着性を確認した。いずれもテープのみが剥がれ、引き剥がし荷重は4〜5Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
[実施例4]
成膜条件を、基板回転数63rpm、成膜速度2.25μm/hrの条件とした以外は、実施例1と同様の操作を行ない、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると約0.6nmとなった。
得られた混合膜のXRD回折より最大強度が得られる回折角は2θ=42.65°であり、また、膜抵抗率は約62.6μΩcmであった。
その後、実施例1と同様にして多孔質タンタル電極箔を作製し、テープ引き剥がし試験を行い、多孔質膜強度と基板密着性を確認した。いずれもテープのみが剥がれ、引き剥がし荷重は4〜5Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
[比較例1]
成膜条件を、基板回転数30rpm、成膜速度3.75μm/hrの条件とした以外は、実施例1と同様の操作を行ない、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると約2.1nmとなった。
得られた混合膜のXRD回折より最大強度が得られる回折角は2θ=43.35°であり、また、膜抵抗率は約25μΩcmであった。
その後、実施例1と同様にして多孔質Ta電極箔を作製し、テープ引き剥がし試験を行い、多孔質膜強度と基板密着性を確認した。いずれも基板から膜が剥がれ、引き剥がし荷重は0.1〜0.2Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
[比較例2]
成膜条件を、基板回転数104rpm、成膜速度3.75μm/hrの条件とした以外は、実施例1と同様の操作を行ない、Ta−60vol%Cuを10μm成膜した。この場合の基板がターゲット上を通過する際の1通過あたりの付着厚みを計算すると約0.6nmとなった。
得られた混合膜のXRD回折より最大強度が得られる回折角は2θ=43.36°であり、また、膜抵抗率は約45μΩcmであった。
その後、実施例1と同様にして多孔質タンタル電極箔を作製し、テープ引き剥がし試験を行い、多孔質膜強度と基板密着性を確認した。結果を表1に示す。いずれも基板から膜が剥がれ、引き剥がし荷重は0.1〜0.2Nであった。
上記成膜条件、測定結果、および評価結果について、それぞれ表1に示す。
Figure 0004985582
実施例1〜4はいずれもXRDパターンおよび膜抵抗から、強制固溶状態が示唆され、作製した多孔質タンタル電極箔は、テープ試験では剥離せず、安定した多孔質膜強度と基板密着性を示した。
一方、比較例では、XRDパターンにおけるCu(111)由来のピークが最大強度を示す回折角が、XRDデータベースのCu(111)のピーク位置(2θ=43.295°)からほとんど低角度側にシフトしておらず、また膜抵抗も低いことから、強制固溶成分が実施例に比べて著しく少ない、あるいは存在しないことが示唆され、作製した多孔質Ta電極箔はいずれもテープ試験で剥離した。
実施例2と比較例1、および、実施例3および4と比較例2との比較においては、1通過ごとの付着量は同じであるが、膜が強制固溶の状態にあるか、ないかの点で異なり、最終的に得られる多孔質電極箔の強度や基板との密着の安定性に大きな差を生じている。このことから、強制固溶するかどうかは、1通過ごとの付着量で一義的に決まるものではないことが示唆される。すなわち、比較例では、成膜速度が比較的速く、基板温度上昇が大きいため、付着してからのマイグレーション距離が大きく、TaとCuが相分離しながら成膜されているものと考えられる。
以上示したように、本発明により、Taを異相成分中に強制固溶させて混合成膜することによって、強度に優れたTa多孔質膜を得ることができ、かつ、密着性に優れたTa多孔質電極箔を作製することができる。これらは信頼性の高い電解コンデンサを歩留まり良く作製するのに有用である。
図1は、タンタル多孔質膜を形成する際のスパッタリング方式について、模式的に表した図である。

Claims (6)

  1. 基板の上に、タンタルまたはタンタル合金からなる原料金属と、該原料金属と相溶しない異相成分とを混合成膜し、得られた混合膜を熱処理することにより、前記原料金属および異相成分をそれぞれ粒成長させた後、前記異相成分を選択的に溶解することにより、タンタル多孔質膜を製造する方法において、前記混合成膜に際して、前記タンタルを前記異相成分中に強制的に固溶させることを特徴とする、タンタル多孔質膜の製造方法。
  2. 前記混合成膜を、前記原料金属と異相成分の同時スパッタリングにより行うことを特徴とする、請求項1に記載のタンタル多孔質膜の製造方法。
  3. 前記同時スパッタリングに際して、前記原料金属のターゲットと前記異相成分のターゲットをそれぞれ別個に配置し、前記基板を基板ホルダに固定し、該基板を回転させながら、該基板を前記原料金属のターゲットと異相成分のターゲットの上を交互に通過させて、該基板上に前記混合膜を成膜することを特徴とする、請求項2に記載のタンタル多孔質膜の製造方法。
  4. 前記混合膜を成膜する際に、時間あたりの成膜速度(μm/hr)[A]と、分あたりの成膜速度(nm/min)/前記基板の回転速度(rpm)により求められる、前記基板が前記原料金属のターゲットおよび異相成分のターゲット上を1通過するごとの前記原料金属と異相成分の付着厚み(nm)[B]との関係が、
    A×B<2.0
    となるように、前記時間あたりの成膜速度および前記基板の回転速度を調整することを特徴とする、請求項3に記載のタンタル多孔質膜の製造方法。
  5. 前記異相成分として銅を用い、前記混合薄膜のXRD回折パターンにおいて、銅に由来する回折ピークの最大強度を示す回折角が、2θ=43.0°よりも低角度となるようにすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンタル多孔質膜の製造方法。
  6. タンタル、タンタル合金、ニオブ、または、ニオブ合金からなる箔を前記基板として用い、該箔の両面または片面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンタル多孔質膜の製造方法により、前記タンタル多孔質膜を形成することを特徴とする、タンタル多孔質電極箔の製造方法。
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