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JP5169532B2 - フェライト系耐熱鋼材 - Google Patents
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JP5169532B2 - フェライト系耐熱鋼材 - Google Patents

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本発明は、火力発電ボイラなど高温で使用される部材に用いられる溶接熱影響部の耐溶接割れ性に優れるとともに高温強度および靭性に優れるフェライト系耐熱鋼材に関する。
近年、火力発電においては熱効率を高めるため蒸気条件の高温高圧化が進められており、将来的には650℃、350気圧という超々臨界圧条件での操業が計画されている。フェライト系耐熱鋼材は、オーステナイト系ステンレス鋼材に比べて安価であり、かつ熱膨張係数が小さいという耐熱鋼材としての利点を有するため広く利用されている。
フェライト系耐熱鋼材については、将来的な蒸気条件の過酷化に対応すべく高強度化が図られている。例えば、特許文献1や特許文献2には、WとMoの含有量を最適化するとともにCoおよびBを含有させることが提案されている。また、特許文献3にはWおよびMoを含有させることによって、微細な金属間化合物相による強化を図った鋼材が提案されている。そして特許文献4にはマルテンサイトラス界面に析出するM23炭化物や金属間化合物相を活用して高強度化を図った鋼材が提案されている。
しかしながら、これらフェライト系耐熱鋼材を溶接構造物として使用する場合、例えば、「Science and Technology of Welding and Joining、1996、Vol.1、No.1、p.36〜42」に示されているように、溶接による熱サイクルを受けた溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)ではクリープ強度が大きく低下することがある。そのため、高強度化を図った鋼材の利点を十分に活用できないという問題がある。そこで、母材だけでなくHAZのクリープ強度の向上を目的とした鋼材についても提案がなされている。
例えば、特許文献5には、溶接入熱に対して安定なTi、ZrまたはHf系の窒化物を生成させることにより、特許文献6にはWを含有させるとともに(Nb、Ta)炭窒化物を微細に析出させることにより、そして、特許文献7と特許文献8にはCr炭化物の生成を抑制し、微細なVやNb等の炭窒化物の長時間安定性を高めるにより、それぞれ溶接継手部の長時間クリープ強度を改善した鋼が開示されている。このように炭窒化物を活用したHAZの強度改善手法が種々提案されているものの、実用面からはさらなるHAZ強度の向上が望まれている。
さらに、特許文献9には、Bを0.003%〜0.03%含有させてHAZでの細粒化を抑えることによって、HAZでのクリープ強度を改善するという方法が提案されている。
特開平4-371551号公報 特開平4-371552号公報 特開2001-152293号公報 特開2002-241903号公報 特開平8-85848号公報 特開平9-71845号公報 特開2001-279391号公報 特開2002-69588号公報 特開2004-300532号公報
フェライト系耐熱鋼材は安価であることに加えて熱膨張係数が小さいという利点を有するため、上記条件の高温高圧化がすすめられている火力発電ボイラなどで溶接構造物として使用されることが期待されている。
そして、上述のように、さらに高温高圧条件でも使用することができるように、更なる高強度化とともに溶接継手のHAZのクリープ強度を改善するために、種々の提案がなされている。
しかしながら、たとえば、B含有鋼材については上記特許文献9にも開示されているように、BはHAZでのクリープ強度を改善する効果を有する元素であることが知られている一方で、溶接に際しては、溶接金属の凝固割れやHAZの液化割れ感受性を高める元素であることが広く知られている。そのため、ボイラ用主蒸気管や圧力容器など厚肉部材として使用される場合には、十分な溶接性(耐溶接割れ性)が得られないといった問題がある。加えて、フェライト系耐熱鋼材が厚肉部材として使用される場合には、実用上十分な靭性を有することも求められる。
このように、HAZの高強度化は未だ不十分であるだけでなく、溶接時の十分な耐溶接割れ性、靭性が得られていないという問題がある。
本発明は、この様な状況に鑑み、HAZの耐溶接割れ性に優れるとともにクリープ強度および靭性にも優れるフェライト系耐熱鋼材を提供することを目的とする。
上述したとおり、HAZのクリープ強度を向上させるためには、Cr、Co、VおよびNbを所定の範囲に規制するとともに、Bを含有させることが有効であるが、HAZを高強度化するのに必要な量のBを含有した場合、HAZおよび溶接金属の割れ感受性が増大し、溶接割れ性に問題があることが明らかとなった。さらに、溶接入熱の増大とともに、その感受性が高まることも明らかとなった。
本発明者らは、HAZにおけるクリープ強度が汎用鋼の破断時間の3倍以上の破断時間を有することを目標とし、フェライト系耐熱鋼材に関して種々に検討した結果、HAZでのクリープ強度低下を改善し、かつ優れた溶接性を両立するためには、CおよびBの含有量を規定するとともに溶接入熱を最適化することによって、問題解決を図ることができることを見出した。
また、Cr:7〜13%、Co:1〜8%、V:0.05〜0.40%およびNb:0.01〜0.09%の組成範囲を有するフェライト系耐熱鋼材において、Bを含有させた場合、HAZが高強度化されることを確認した。
HAZでのクリープ強度が母材に比べて低下するのは、溶接熱サイクルによりAc1変態点からAc3変態点の間の温度に加熱されることによる細粒化が一因である。細粒化は元の組織であるフェライト相(焼き戻しマルテンサイト相)がこの温度域に加熱された場合、粒界にオーステナイト相が新たに核生成し、成長することによって生じる。Bは粒界に偏析しやすい元素であり、この温度域に加熱された場合、元のフェライト相の粒界に偏析して粒界のエネルギーを低減し、オーステナイト相の核生成を抑制・遅延させることにより細粒化を抑制する。その結果、HAZでのクリープ強度を改善するものと考えられる。
しかしながら、クリープ強度の低下を軽減する効果が得られる必要量以上のBを含有した場合、溶接金属の凝固割れおよびHAZの液化割れ感受性が増大することがわかった。
これは、Bは粒界に偏析しやすい元素であると同時に融点を大きく低下させる元素であることが一因である。加えて、SおよびPもBと同様に粒界偏析しやすく、かつ融点を大きく低下させる元素である。そのため、溶融線直近のHAZでは、Bの粒界偏析にPおよびSの粒界偏析が重畳し、粒界溶融が生じ、熱応力もしくは外部応力により粒界が開口し、液化割れを生じるものと考えられる。特に、溶接入熱が大きい場合、高温に加熱される領域が広がるため、これら元素の粒界偏析に起因した粒界溶融がより広範囲で生じること、ならびに熱応力が生じやすくなることにより、液化割れがより発生しやすくなる。
溶接金属の凝固割れは、溶接材料の成分を調整することで防止は可能である。一方、HAZの液化割れは、使用する鋼の組成に係わる課題であり、実用化に際しては大きな制約となる。このような問題点を踏まえ、HAZの液化割れの防止を可能とし、かつHAZのクリープ強度低下を抑制しうる要件を鋭意調査した。
検討を繰り返した結果、Cの含有量を所定の範囲に規定した場合にのみ、液化割れの防止が可能になるとの新たな知見が得られた。そして、この理由は、次の通り考えられる。
すなわち、CはBと同様に、融点降下元素として作用し、上述のBによる融点低下作用に重畳し、HAZの液化割れ感受性を高める。そのため、Cの含有量を低減することにより、融点の低下を軽減することが可能となる。さらに、実溶接を考慮した場合、液化割れを防止しうるCの含有量の上限が溶接入熱量に依存することを見出した。
加えて、Cはその相互作用により、硫化物や隣化物の生成自由エネルギーに影響を与える。即ち、高温ではC含有量の増加とともにCrやNd等の隣化物もしくは硫化物の溶解度が減少し、C量が特定の含有量を超えるとこれらの溶解度が再び増加する傾向を有する。硫化物や燐化物の溶解度が増加した場合、溶接等の熱影響により粒界に偏析するSやPの量が増え、液化割れ感受性が高まる。そのため、C含有量を減じた本発明範囲のC含有量の場合、硫化物や燐化物の溶解度が小さくなり安定な化合物が形成される。それに伴い、粒界におけるSおよびPが減少し融点低下抑制との相乗作用により、HAZの液化割れが防止できるものと考えられた。
しかしながら、Bの含有量を高めることに加えてCの含有量を低減した場合、HAZの靭性が著しく損なわれることが明らかとなった。これは、C含有量の低減により、マルテンサイト変態点が上昇することに起因し、マルテンサイトラスが成長しやすく、粗大となることに起因すると考えられた。
これらの検討の結果から、HAZの液化割れの防止を可能とし、かつHAZのクリープ強度低下の抑制と靭性確保を両立しうる必要要件は、B:0.005〜0.025%およびC:0.04〜0.16%であり、かつ溶接入熱量Q(kJ/mm)により、Cの含有量の上限を下記の通り管理する必要があることが分かった。
Q<1.8(kJ/mm)のとき、C≦-0.12×Q+0.31 ・・・(1)
Q≧1.8(kJ/mm)のとき、C≦0.094 ・・・(2)
ここで、Qは溶接入熱量(kJ/mm)、CはC含有量(質量%)を示す。
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたもので、その要旨は下記の(1)〜(4)に示すフェライト系耐熱鋼材にある。
(1) 質量%で、C:0.04〜0.16%、Si:0.1%を超えて1.0%以下、Mn:2.0%以下、Co:1〜8%、Cr:7〜13%、V:0.05〜0.40%、Nb:0.01〜0.09%、MoおよびWの一方または両方を合計で0.5〜4%、B:0.007〜0.025%、Al:0.03%以下N:0.003〜0.06%並びにNd:0.015〜0.08%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.03%以下およびS:0.02%以下のフェライト系耐熱鋼材であって、さらに前記C含有量が溶接入熱量Qに応じて下記(1)式または(2)式を満足することを特徴とするフェライト系耐熱鋼材。
Q<1.8(kJ/mm)のとき、C≦-0.12×Q+0.31 ・・・(1)
Q≧1.8(kJ/mm)のとき、C≦0.094 ・・・(2)
ここで、Qは溶接入熱量(kJ/mm)、CはC含有量(質量%)を示す。
(2) 質量%で、Feの一部に代えて、Ta:0.08%以下を含むことを特徴とする上記(1)のフェライト系耐熱鋼材。
(3) 質量%で、Feの一部に代えて、Ca:0.02%以下およびMg:0.02%以下のうちの1種または2種を含むことを特徴とする上記(1)または(2)のフェライト系耐熱鋼材。
本発明によれば、HAZの耐溶接割れ性に優れるとともにクリープ強度および靭性にも優れるフェライト系耐熱鋼材を提供することができる。
以下に、本発明に係るフェライト系耐熱鋼材材を構成する成分の作用効果と含有量の限定理由を説明する。なお、含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
C:0.04〜0.16%、かつ、
溶接入熱量Qが1.8kJ/mm未満の場合、C≦-0.12×Q+0.31(%)
溶接入熱量Qが1.8kJ/mm以上の場合、C≦0.094%以下
Cは、Bとともに本発明における重要な元素である。Cは炭化物を形成し、高温強度の確保に寄与するとともにマルテンサイト組織を得るのに有効な元素であるため、必須の元素である。しかしながら、粒界に偏析するとBやPおよびSと重畳して粒界の融点低下を促し、かつ粗粒HAZの硫化物や燐化物の生成に間接的に影響を及ぼし、液化割れ感受性に影響をあたえる。特に、粒界偏析による液化割れ感受性の増大は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著となる。Cそのものによる粒界の融点低下を抑制し、かつ粗粒HAZで安定した硫化物や燐化物を形成させ、SやPの粒界偏析に起因した融点低下を抑制して液化割れを防止するためには、Bの含有量を後述の範囲に管理するとともに、C含有量を溶接入熱により規定される上限を満足する必要がある。しかし、0.16%を超える量を含有させると、HAZが極端に硬化し、延性の低下を招くため、入熱に係わらず。0.16%以下の範囲とする必要がある。一方、0.04%を下回る場合、マルテンサイト変態点が上昇することに起因し、マルテンサイトラスが成長しやすく、粗大となり靭性の低下を招くため0.04%以上含有させる必要がある。 Cの望ましい下限は0.05%である。
Si:0.1%を超えて1.0%以下
Siは脱酸剤として0.1%を超えて含有させるが、過剰に含有させるとクリープ延性および靭性の低下を招くため、上限を1.0%とする。望ましくは、0.8%以下である。より望ましくは0.2%を超えて0.7%以下である。
Mn:2.0%以下
MnもSiと同様、脱酸剤として含有させるが、過剰に含有させた場合、クリープ脆化および靭性の低下を招く。そのため、2.0%以下とする。望ましくは1.8%以下である。しかしながら、過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度を劣化させるとともに、製造コストの増大を招くため、特に下限は設けないが、0.01%以上であることが望ましい。
Co:1〜8%
Coは、オーステナイト生成元素であり、マトリックスのマルテンサイト化に必要な元素である。その効果を得るためには1%以上含有させる必要がある。しかし、8%を越えて含有させるとクリープ延性の著しい低下を招く。望ましくは2%を超えて7%以下である。
Cr:7〜13%
Crは、高温用鋼において耐酸化性および耐高温腐食性を確保するとともにマトリックスのマルテンサイト組織を安定して得るために必須の元素である。その効果を得るためには、7%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると、多量のCr炭化物の生成により炭化物の安定性を低下させ、クリープ強度の低下を招くとともに、靭性も劣化する、そのため、13%以下とする必要がある。望ましくは、8〜12%である。さらに望ましくは8〜10%である。
V:0.05〜0.40%
VはNbとともに粒内に微細な炭窒化物を形成し、クリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を得るためには、0.05%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させた場合、炭窒化物の成長速度の増大を招き、その分散強化効果が早期に消失するとともに、靭性の低下を招くため、0.40%以下とする必要がある。望ましくは0.10〜0.35%である。
Nb:0.01〜0.09%
NbはVとともに粒内に高温まで安定な微細炭窒化物を形成し、クリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を得るためには、少なくとも0.01%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させた場合、炭窒化物の成長速度の増大を招き、その分散強化効果が早期に消失するとともに、靭性の低下を招くため、0.09%以下とする必要がある。
MoおよびWの一方または両方:合計で0.5〜4%
MoおよびWはマトリックスを固溶強化し、クリープ強度の向上に寄与する元素である。この効果を得るためにはMoおよびWの一方または両方を、合計で0.5%以上含有させることが必要である。しかし、4%を超えて含有させると粗大な金属間化合物を生成し、靭性の極端な低下を招く。望ましくは0.8〜3.5%である。なお、Wのみを単独で含有させる場合には、下限は1%とすることが望ましい。
B:0.005〜0.025%
BはCとともに本発明における重要な元素である。BはHAZにおいて粒界に偏析して粒界エネルギーを下げることにより、オーステナイト相の核生成を遅延させ、細粒化を抑制する。その効果を十分に得るためには少なくとも、0.005%以上含有させることが必要である。しかしながら、粗粒HAZにおいては、粒界偏析したBは粒界の融点低下を促し、SおよびPの偏析と重畳して、液化割れを発生させる。これを防止するためには、C含有量を溶接入熱量に応じて前述の範囲に規定する必要がある。一方、Bが0.025%を超えるとHAZのクリープ強度低下軽減の効果が飽和するため上限とする。なお、B含有量の下限は0.007%以上が望ましい。さらに望ましい範囲は0.01%を超えて0.018%以下である。
Al:0.03%以下
Alは脱酸剤として含有させるが、過剰に含有させるとクリープ延性および靭性の低下を招くため、上限を0.03%とする。望ましくは、0.02%以下である。しかしながら、過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず鋼の清浄度を劣化させるとともに、製造コストの増大を招く。そのため、Alは0.001%以上含有させるのが望ましい。
N:0.003〜0.06%
NはVやNbを含む微細な炭窒化物を形成し、クリープ強度の確保に有効な元素である。その効果を得るためには0.003%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると、炭窒化物の析出量の増大を招き、脆化の原因となる。そのためN含有量の上限を0.06%とする。
本発明に係るフェライト系耐熱鋼材は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物からなるものである。そして、不純物中のO、PおよびSは、次に述べるようにそれらの含有量を抑制する必要がある。
O:0.02%以下
Oは不純物として存在するが、多量に含まれる場合には、多量の酸化物を生成し、加工性や延性を劣化させる。そのため、0.02%以下とする必要がある。
P:0.03%以下
Pは不純物として含まれるが、S、Bとともに粗粒HAZにおいて粒界に偏析し、融点を低下させ液化割れを招く。それを防止するためには、CおよびS、Bを所定の範囲に規定するとともに、Pは0.03%以下とする必要がある。
S:0.02%以下
SはPと同様、不純物として含まれ、粗粒HAZにおいて粒界に偏析し、融点を低下させ液化割れを招く。それを防止するためには、CおよびS、Pを所定の範囲に規定するとともに、Sは0.02%以下とする必要がある。
本発明に係るフェライト系耐熱鋼材材は、必要に応じて、さらに、次に示す元素の所定量を含有させることができる。
Nd:0.08%以下
NdはSやPとの親和力が強く、粗粒HAZの粒界において、SやPと化合物を形成し、SやPによる融点降下を抑制し、HAZの液化割れを防止する。さらには、SやPによる高温での使用中の粒界脆化を軽減してHAZのクリープ延性を改善するのに有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、酸素との親和力も強く、過剰に含有させた場合には、余分な酸化物を生成し、HAZの靭性低下を招くため、上限は0.08%とする。望ましい上限は0.07%であり、さらに望ましくは0.06%である。なお、Ndを含有させることによる上記の効果を確実に得るためには0.005%以上含有させることが望ましい。より望ましくは0.015%以上含有させることが望ましい。
Ta:0.08%以下
TaはVやNbと同様に高温まで安定な微細炭化物を形成し、クリープ強度の向上に大きく寄与するため必要に応じて含有させてもよい。しかし、過剰に含有させた場合、炭化物の成長速度の増大を招き、その分散強化効果が早期に消失するとともに、靭性の低下を招くため、0.08%以下とする必要がある。なお、Taによる効果を得るためには、0.005%以上含有させることが望ましい。
Ca:0.02%以下
Caは鋼の熱間加工性を向上させる元素であり、熱間加工性を向上させる必要がある場合には含有させることができる。しかしながら、その含有量が0.02%を超えると介在物の粗大化を招いて逆に加工性や靭性を損なう。なお、Caによる効果を得るためには、0.0003%以上含有させることが望ましい。また、より望ましくは0.001〜0.01%である。
Mg:0.02%以下
Mgは、Caと同様、鋼の熱間加工性を向上させる元素であり、熱間加工性を向上させる必要がある場合には含有させることができる。しかしながら、その含有量が0.02%を超えると介在物の粗大化を招いて逆に加工性や靭性を損なう。なお、Mgによる効果を得るためには、0.0003%以上含有させることが望ましい。また、より望ましくは0.001〜0.01%である。
表1に示す化学組成を有する10種類の鋼を真空溶解炉により溶製し、鍛造・圧延をした後、1150℃で1時間保持後に空冷の焼きならしと、770℃で1.5時間保持後に空冷の焼きもどしをおこなった。なお、代符10は汎用鋼である火SUS410J3TBに相当する鋼であり、クリープ強度に関する比較鋼として使用した。そして、機械加工により、板厚12mm、幅50mmおよび長さ300mmの鋼板ならびに板厚10mm、幅100〜120mmおよび長さ300〜500mmの鋼板を作製した。板厚12mmの鋼板はロンジバレストレイン試験に供し、HAZの液化割れ感受性を評価した。
Figure 0005169532
ロンジバレストレイン試験とは図1に模式的に示すように、GTA溶接により鋼板の長手方向にビードオンプレート溶接を行い、その溶接中に端部に力Fを付加して曲げによる歪を付与し、強制的にHAZに割れを発生させ、その合計長さを測定し、HAZの液化割れ感受性を評価する方法である。溶接条件は表2に示す条件とし、付加歪量は4%とし、HAZに液化割れが発生しなかったものを合格とした。
Figure 0005169532
また、10mm厚さの鋼板から、板厚10mm、幅10mmおよび長さ100mmの試験材を採取し、HAZの強度低下が顕著な温度である1000℃に5秒間加熱するHAZ再現溶接熱サイクルを付与した。その後、試験材に740℃で30分保持後、空冷の溶接後熱処理を実施し、クリープ試験片を採取し、温度650℃および応力117.7MPaの条件にてクリープ試験を実施した。
さらに、板厚10mm、幅10mmおよび長さ100mmの試験材を採取し、HAZの靭性低下が顕著な温度である1350℃に5秒間加熱するHAZ再現溶接熱サイクルを付与した。その後、740℃で30分保持後、空冷の溶接後熱処理を施し、JIS Z2240(2006)の規定にしたがって、幅5mmの2mm Vノッチサブサイズシャルピー試験片を採取し、常温でのシャルピー衝撃試験を行った。シャルピー衝撃試験では、衝撃値34J/cm2以上を目標値とした。
表3にロンジバレストレイン試験における割れ長さ、そして、表4にクリープ試験における破断時間およびシャルピー衝撃試験における衝撃値を示す。また、図2にはロンジバレストレイン試験における割れ発生有無と、C量と溶接入熱との関係を図示する。
Figure 0005169532
Figure 0005169532
表3および図2より明らかなように、代符1〜3および6〜8にみるとおり、Bの含有量とCの含有量が本発明の規定範囲を満足し、そしてCの含有量と溶接入熱量とからなる関係式を満足している場合のみ、ロンジバレストレイン試験のような厳しい割れ試験においてもHAZの液化割れが生じず、目標とするHAZのクリープ強度および靭性を満足した。しかしながら、C量が溶接入熱との関係式を満足しない場合には、粗粒HAZの粒界の融点低下が著しく、ロンジバレストレイン試験においてHAZに液化割れが生じた。また、Bが本発明の規定範囲を下回る代符4および5は、HAZのクリープ強度が目標強度を満足しなかった。さらに、Cが本発明の規定範囲を下回る代符9は、HAZの衝撃値が目標値を満足しなかった。
以上の結果より、本発明範囲を満たす化学成分を有する材料のみがHAZにおける優れた耐液化割れ性とクリープ強度の低下抑制とともに優れた靭性を両立することがわかる。
本発明によれば、HAZの液化割れの防止とクリープ強度低下の抑制とともに靭性確保を両立しうるフェライト系耐熱鋼材を提供するので、蒸気条件の高温高圧化が進められている火力発電ボイラなどで溶接構造物として使用することができる。
ロンジバレストレイン試験方法を示す。 ロンジバレストレイン試験により得られたHAZの液化割れ発生の有無を、C含有量と溶接入熱量との関係により整理したものである。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.16%、Si:0.1%を超えて1.0%以下、Mn:2.0%以下、Co:1〜8%、Cr:7〜13%、V:0.05〜0.40%、Nb:0.01〜0.09%、MoおよびWの一方または両方を合計で0.5〜4%、B:0.007〜0.025%、Al:0.03%以下N:0.003〜0.06%並びにNd:0.015〜0.08%を含み、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.03%以下およびS:0.02%以下のフェライト系耐熱鋼材であって、さらに前記C含有量が溶接入熱量Qに応じて下記(1)式または(2)式を満足することを特徴とするフェライト系耐熱鋼材。
    Q<1.8(kJ/mm)のとき、C≦-0.12×Q+0.31 ・・・(1)
    Q≧1.8(kJ/mm)のとき、C≦0.094 ・・・(2)
    ここで、Qは溶接入熱量(kJ/mm)、CはC含有量(質量%)を示す。
  2. 質量%で、Feの一部に代えて、Ta:0.08%以下を含むことを特徴とする請求項に記載のフェライト系耐熱鋼材。
  3. 質量%で、Feの一部に代えて、Ca:0.02%以下およびMg:0.02%以下のうちの1種または2種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系耐熱鋼材。
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