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JP5217129B2 - 燃料電池 - Google Patents
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JP5217129B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池に関し、特に、耐久性を向上させることが可能な、燃料電池に関する。
燃料電池は、電解質膜と、当該電解質膜の両側に配設される電極(カソード及びアノード)とを備える膜電極接合体(以下において、「MEA(Membrane Electrode Assembly)」と記述する。)内の電気化学反応により発生した電気エネルギーを、MEAの両側に配設されるセパレータを介して外部に取り出している。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用される固体高分子型燃料電池(以下において、「PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)」と記述する。)は、低温領域での運転が可能である。また、PEFCは、高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車や携帯用電源の最適な動力源として注目されている。
PEFCのユニットセルは、電解質膜、少なくとも触媒層を備えるカソード及びアノード、並びに、セパレータを含み、その理論起電力は1.23Vである。しかし、かかる低起電力では電気自動車等の動力源として不十分であるため、通常は、ユニットセルを直列に積層したセル積層体の積層方向両端にエンドプレート等を配置して構成される、スタック形態の燃料電池が使用されている。
他方、燃料電池の発電時にユニットセルのMEA内で過酸化水素が生成され、この過酸化水素が起点となってMEAに含まれる電解質成分を劣化させていることが明らかになりつつある。かかる劣化は、燃料電池の耐久性低下の一因となるため、MEA内の過酸化水素を低減することで上記劣化を抑制し、燃料電池の耐久性を向上させることが望まれている。
燃料電池の耐久性向上を目的とした技術はこれまでに開示されてきている。例えば、特許文献1には、過酸化水素分解性能を有する金属を備えるMEA、を備える燃料電池に関する技術が開示されており、かかる技術によれば、燃料電池の耐久性を向上させることが可能になる、としている。
米国特許出願公開2004/0043283号明細書
しかし、特許文献1に開示されている技術では、MEA内に備えられる金属がイオン化し、燃料電池の発電時に生成される水(以下において、「生成水」と記述する。)によって当該イオンが外部へと排出される。そのため、過酸化水素分解性能を長期間に亘って維持することが困難であり、燃料電池の耐久性を向上させ難いという問題があった。
そこで本発明は、耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
請求項1に記載の発明は、電解質膜及び電解質膜の両側に配設される電極層を有するMEAを具備し、MEAに、過酸化水素分解性能を有する金属元素及び/又は当該金属元素を含む化合物が備えられるとともに、過酸化水素分解性能を有する金属元素及び/又は当該金属元素を含む化合物の一部が、過酸化水素により分解可能な被分解物質によって被覆されており、金属元素及び/又は該金属元素を含む化合物と被分解物質とが、電解質膜又は電極層に備えられる電解質成分中に固定化されており、被分解物質は、過酸化水素分解性能を有しておらず、且つ電解質成分より先に過酸化水素により分解可能な物質であることを特徴とする、燃料電池により、上記課題を解決する。
ここに、「過酸化水素分解性能」とは、過酸化水素のほか、当該過酸化水素とともに存在し得るOHラジカルやOOHラジカルをも分解可能な性質を意味している。また、「過酸化水素分解性能を有する金属元素」とは、過酸化水素分解性能(以下において、単に「分解性能」と記述することがある。)を有する金属イオンを溶出させ得る金属元素単体、を意味しており、当該金属イオンの具体例としては、遷移金属イオン・希土類金属イオン等を挙げることができる。そして、これらのイオンを生じさせ得る金属元素単体及び/又は当該金属元素単体を含む化合物(以下において、まとめて「劣化防止剤」と記すことがある。)の具体例としては、Mn、Fe、Pt、Pd、Ni、Cr、Cu、Ce、Sc、Rb、Co、Ir、Ag、Au、Rh、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Nb、Os等からなる単体及び上記元素を含む化合物(例えば、酸化物等)を挙げることができる。さらに、「過酸化水素により分解可能」とは、過酸化水素それ自体により分解可能である場合のほか、燃料電池の作動時に過酸化水素から生成され得るOHラジカルやOOHラジカル等により分解可能である場合をも含む概念である。加えて、「過酸化水素により分解可能な被分解物質」とは、電解質膜や電極層に備えられる電解質成分よりも先に、過酸化水素により分解可能な物質を意味しており、当該物質の具体例としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリパラベンゾフェニレン(PPBP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の炭化水素系材料のほか、電極層の触媒(例えば、白金や、白金と少なくとも1以上の遷移金属とを含有する白金合金等)が担持される担体を構成し得る炭素材料(例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭化ケイ素等)、電極層に含有される触媒が上記炭素材料に担持された触媒担持炭素材料等を挙げることができる。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池において、複数形態の被分解物質が備えられていることを特徴とする。
ここに、「複数形態の被分解物質が備えられる」とは、上記金属元素及び/又は当該金属元素を含む化合物を被覆すべき被分解物質が、組成、構造、厚さ、又は形状等が異なる複数形態の被分解物質からなることを意味し、これらの被分解物質によって上記劣化防止剤が被覆されていることを意味している。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の燃料電池において、第1の形態にかかる被分解物質によって被覆されている、金属元素及び/又は当該金属元素を含む化合物の過酸化水素分解性能が発揮される時機と、第2の形態にかかる被分解物質によって被覆されている、金属元素及び/又は当該金属元素を含む化合物の過酸化水素分解性能が発揮される時機とが、異なることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の燃料電池において、第1の形態にかかる被分解物質の構成材料と、第2の形態にかかる被分解物質の構成材料とが、異なることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の燃料電池において、第1の形態にかかる被分解物質の厚さと、第2の形態にかかる被分解物質の厚さとが、異なることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池において、被分解物質が、プロトン伝導性能を有することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池において、被分解物質が、炭素材料、及び/又は、触媒担持炭素材料であることを特徴とする。
ここに、本発明にかかる「炭素材料」とは、電極層の触媒(例えば、白金や、白金と少なくとも1以上の遷移金属とを含有する白金合金等)が担持される担体を構成し得る材料をいい、その具体例としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭化ケイ素等を挙げることができる。さらに、本発明にかかる「触媒担持炭素材料」とは、電極層に含有される触媒が上記炭素材料に担持されたものを意味する。
請求項1に記載の発明によれば、劣化防止剤の一部が、被分解物質(以下において、「保護材」と記述することがある。)によって被覆されている。そのため、保護材を介して劣化防止剤をMEA内に固定化することで、MEA外への劣化防止剤の流出を抑制することが可能になり、当該劣化防止剤の分解性能を長期間に亘って発現させることが可能になる。また、劣化防止剤の一部が被分解物質によって被覆されているため、当該形態の燃料電池を作動させると、被分解物質によって被覆されていない劣化防止剤の分解性能を発揮させてから、被分解物質によって被覆されていた劣化防止剤の分解性能を発揮させることが可能になる。したがって、かかる形態とすることで、耐久性を効果的に向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
請求項に記載の発明によれば、被分解物質によって被覆されていない劣化防止剤と、複数形態の被分解物質それぞれによって被覆されている劣化防止剤とが備えられる、燃料電池とすることが可能になる。したがって、かかる形態とすることで、より一層効果的に耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
請求項に記載の発明によれば、劣化防止剤が、異なる形態の被分解物質によって被覆されている。そのため、第1の形態にかかる被分解物質によって被覆されている劣化防止剤の分解性能発現時機と、第2の形態にかかる被分解物質によって被覆されている劣化防止剤の分解性能発現時機とをずらすことが可能になる。このようにして、分解性能の発現時機をずらせば、分解性能を長期間に亘って発現させることが可能になる。したがって、請求項に記載の発明によれば、燃料電池の耐久性を向上させることが容易になる。
請求項に記載の発明によれば、劣化防止剤が、異なる構成材料からなる複数形態の被分解物質によって、それぞれ被覆されている。構成材料が異なれば、複数形態の被分解物質それぞれによって被覆されている劣化防止剤の分解性能発現時機を、ずらすことが可能になるため、かかる構成であっても、劣化防止剤の分解性能を長期間に亘って発現させることが可能になる。
請求項に記載の発明によれば、厚さが異なる複数形態の被分解物質によって、劣化防止剤が被覆されている。被分解物質の厚さが異なれば、劣化防止剤の分解性能発現時機をずらすことが可能になるため、かかる構成であっても、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
請求項に記載の発明によれば、プロトン伝導性能を有する被分解物質が備えられている。ここで、被分解物質をMEA内に混入すると、発電性能が低下する場合がある。しかし、請求項に記載の発明によれば、当該被分解物質がプロトン伝導性能を有している。そのため、かかる形態とすることで、発電性能の低下を抑制することが可能になる。
請求項に記載の発明によれば、炭素材料及び/又は触媒担持炭素材料によって、劣化防止剤が被覆されている。そのため、劣化防止剤の分解性能が発現され始める時機を遅らせることができ、劣化防止剤の分解性能を長期間に亘って発現させることが可能になる。したがって、かかる構成とすることで、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。また、炭素材料及び/又は触媒担持炭素材料は、上記電気化学反応の進行を妨げない。そのため、炭素材料及び/又は触媒担持炭素材料によって被覆された劣化防止剤を、アノード及び/又はカソードの電極層へ含有させることが可能になり、電極層へ含有させた劣化防止剤によって耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
燃料電池の作動時には、電気化学反応の副反応によって過酸化水素が生成され、この過酸化水素に起因するOHラジカル、OOHラジカル等により、MEAを構成する電解質膜や触媒層等に含まれる電解質成分が劣化する。かかる劣化の対応策になり得る技術として、これまで、MEA内に、過酸化水素分解性能を有するイオンを溶出可能な金属及び/又は金属酸化物が備えられる、燃料電池に関する技術が提案されている。しかし、燃料電池の運転時には水が生成され、当該水の一部は燃料電池外へと排出されている。そのため、イオンを溶出可能な金属(以下において「劣化防止剤」と記述することがある。)を単に混入する上記技術では、生成水とともにイオンが容易に排出されてしまい、分解性能を長期間に亘って発現させ難い。一方で、上記劣化防止剤が、MEA内に長期間に亘って固定化されていれば、長期間に亘って分解性能を発現させることが可能になり、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
本発明は、このような観点からなされたものであり、その要旨は、劣化防止剤の少なくとも一部を保護材(以下において、「被覆材」ということがある。)で被覆し、劣化防止剤が外部へ排出され難い形態とすることで、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することにある。そして、劣化防止剤の一部を被覆すべき保護材を複数形態とすることで、耐久性をより一層向上させることが可能な燃料電池としている。
以下に図面を参照しつつ、本発明の燃料電池について具体的に説明する。なお、以下の説明において、ユニットセルを単に「セル」、反応ガス流路を単に「流路」と、表記することがある。
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。図1(A)は、第1実施形態にかかるユニットセルの一部を概略的に示しており、紙面左右方向が電極層の積層方向である。一方、図1(B)は、第1実施形態にかかるユニットセルに備えられるMEAの一部を拡大して示している。他方、図2は、第1実施形態にかかる燃料電池作動時における、MEAの一部を拡大して示す概略図であり、図中の直線矢印は、MEA内を拡散する生成水の移動方向を示している。以下、図1及び図2を適宜参照しつつ、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池について説明する。
図1(A)に示すように、第1実施形態にかかるユニットセル100は、電解質膜11と、当該電解質膜11の両側に配設されるアノード触媒層12a及びカソード触媒層13aとを備えるMEA14と、アノード触媒層12aの外側に配設されるアノード拡散層12b及びカソード触媒層13aの外側に配設されるカソード拡散層13bと、これらの外側に配設されるセパレータ6a、6bと、を備えている。セパレータ6a、6bによって挟まれる積層体15は、電極層としてのアノード12及びカソード13を備えており、アノード12はアノード触媒層12a及びアノード拡散層12bを、カソード13はカソード触媒層13a及びカソード拡散層13bを、それぞれ備えている。そして、アノード触媒層12a及びカソード触媒層13aには、例えば、電気化学反応の触媒として機能する貴金属微粒子(例えば白金微粒子等)が担持された炭素粒子(以下において、「白金担持カーボン」と記述する。)が備えられる一方、アノード拡散層12b及びカソード拡散層13bは、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパーにより構成されている。また、積層体15の外側に配設されるセパレータ6a、6bには、積層体15側に反応ガス流路7a、7a、…、7b、7b、…が形成されており、反応ガス流路7a、7a、…には水素含有物質(以下において、「水素」と記述する。)が供給される一方、反応ガス流路7b、7b、…には酸素含有物質(以下において、「空気」と記述する。)が供給され、これらの反対側の面には冷却媒体流路8、8、…が形成されている。
ここで、第1実施形態にかかる電解質膜11、アノード触媒層12a、及びカソード触媒層13aには、電解質成分(例えば、Nafion等に代表される含フッ素イオン交換樹脂等。Nafionは米国デュポン社の登録商標。以下において、単に「Nafion」と記述することがある。)が備えられている。そして、電解質膜11、アノード触媒層12a、及びカソード触媒層13aには、劣化防止剤(例えば、Ce4+等)と、当該劣化防止剤が分散された保護材(図1(A)では共に不図示)とが備えられ、劣化防止剤が分散された保護材(以下において、「耐食材」と記述することがある。)が、上記電解質成分中に固定化されている。
第1実施形態にかかる燃料電池の作動時には、流路7a、7a、…から供給される水素の一部が電解質膜11を透過して、カソード触媒層13aへと達する場合があるほか、流路7b、7b、…から供給される空気の一部が、電解質膜11を透過して、アノード触媒層12aへと達する場合がある。この空気に含まれる酸素が、燃料電池内の電位環境において、アノード触媒層12a及びカソード触媒層13aに含まれる白金担持カーボンの白金上及び/又は炭素粒子上で還元されると、その反応の途中で過酸化水素が生成される場合があり、さらに、OHラジカルやOOHラジカル等が生成される場合がある。これらのラジカルは、MEA14に備えられる電解質成分の劣化の一因となり、かかる劣化が進行すると、燃料電池の電圧が低下し、発電性能の低下を招く。そのため、当該劣化の一因となる過酸化水素を分解することで、電解質成分の劣化を抑制し、燃料電池の耐久性を向上させることが望ましい。そこで、第1実施形態にかかる燃料電池では、MEA14に、劣化防止剤と、耐食材とが備えられる形態とすることで、アノード触媒層12a及びカソード触媒層13aにて生成され得る過酸化水素を分解し、電解質成分の劣化を抑制している。
図1(B)は、劣化防止剤及び耐食材が分散された、第1実施形態にかかるMEAの一部を示す断面図であり、MEAに備えられる電解質膜の一部を拡大して示している。図示のように、第1実施形態にかかる電解質膜11は、電解質成分50を備え、当該電解質成分50に、劣化防止剤20、20、…と、当該劣化防止剤20、20、…、及び、劣化防止剤20、20、…を被覆する保護材25aを備える耐食材30a、30a、…と、が分散されている。そのため、劣化防止剤20、20、…により、電解質膜11へと拡散してきた過酸化水素を分解可能である(図2(A)参照)。ところが、上述のように、燃料電池の作動時には水が生成されるため、上記劣化防止剤20、20、…は、生成水とともに外部へと排出されやすい。このようにして、劣化防止剤20、20、…が全て排出されると、耐食材30a、30a、…のみが電解質成分50内に分散された、電解質膜11aとなる(図2(B)参照)。ここで、耐食材30a、30a、…は、保護材25a、25a、…内に劣化防止剤20、20、…が分散されることにより作製されており、保護材25a、25a、…は、分解性能を有していない。そのため、図2(B)に示す電解質膜11aに過酸化水素が拡散してきても、当該過酸化水素を効果的に分解することが困難である。したがって、第1実施形態にかかる燃料電池をさらに継続して作動させると、やがて、OHラジカル等によって攻撃されやすい電解質膜11aとなる。
第1実施形態にかかる電解質膜11aは、耐食材30a、30a、…を備えている。そして、本実施形態において、当該耐食材30a、30a、…に備えられる保護材25a、25a、…は、電解質成分50よりも先に、OHラジカル等によって分解される。そのため、図2(B)に示す電解質膜11aでは、OHラジカル等により保護材25a、25a、…が分解され、耐食材30a、30a、…に備えられていた劣化防止剤20、20、…が電解質成分50内へと放出される(図2(C)参照)。このようにして、劣化防止剤20、20、…を備える電解質膜11bへと形態が変化すると、当該電解質膜11bに備えられる劣化防止剤20、20、…により、過酸化水素及びOHラジカル等を分解することが可能になる。すなわち、第1実施形態にかかる燃料電池によれば、従来とは異なり、耐食材が備えられているため、分解性能を長期間に亘って発現させることが可能になり、耐久性を向上させ得る燃料電池とすることが可能になる。
2.第2実施形態
図3は、第2実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。図3(A)は、第2実施形態にかかるユニットセルの一部を概略的に示しており、紙面左右方向が電極層の積層方向である。一方、図3(B)は、第2実施形態にかかるユニットセルに備えられるMEAの一部を拡大して示している。他方、図4は、第2実施形態にかかる燃料電池作動時における、MEAの一部を拡大して示す概略図であり、図中の直線矢印は、MEA内を拡散する生成水の移動方向を示している。図3及び図4において、図1及び図2に示す燃料電池と同じ構成を採る物質・部材には、図1及び図2にて使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。以下、図3及び図4を参照しつつ、第2実施形態にかかる本発明の燃料電池について説明する。
図3(A)に示すように、第2実施形態にかかるユニットセル200は、電解質膜21と、当該電解質膜21の両側に配設されるアノード触媒層22a及びカソード触媒層23aとを備えるMEA24と、アノード触媒層22aの外側に配設されるアノード拡散層12b及びカソード触媒層23aの外側に配設されるカソード拡散層13bと、これらの外側に配設されるセパレータ6a、6bと、を備えている。セパレータ6a、6bによって挟まれる積層体25は、電極層としてのアノード22及びカソード23を備えており、アノード22はアノード触媒層22a及びアノード拡散層12bを、カソード23はカソード触媒層23a及びカソード拡散層13bを、それぞれ備えている。そして、アノード触媒層22a及びカソード触媒層23aには、例えば、白金担持カーボンが備えられている。
ここで、第2実施形態にかかる電解質膜21、アノード触媒層22a、及びカソード触媒層23aには、Nafion等の電解質成分が備えられている。そして、電解質膜21、アノード触媒層22a、及びカソード触媒層23aには、劣化防止剤と、当該劣化防止剤が分散された保護材(図3(A)では共に不図示)とが備えられ、上記電解質成分中に耐食材が固定化されている。
図3(B)は、劣化防止剤及び耐食材が分散された、第2実施形態にかかるMEAの一部を示す断面図であり、MEAに備えられる電解質膜の一部を拡大して示している。図示のように、第2実施形態にかかる電解質膜21は、電解質成分50を備え、当該電解質成分50に、劣化防止剤20、20、…と、耐食材30a、30a、…と、耐食材30b、30b、…と、が分散されている。ここで、耐食材30aは、保護材25aに劣化防止剤20、20、…が分散されることにより作製される一方、耐食材30bは、保護材25bに劣化防止剤20、20、…が分散されることにより作製され、上記保護材25aと保護材25bとは、異なる材料により構成されている。以下、電解質成分50よりも保護材25bの方がOHラジカル等によって分解されやすく、かつ、保護材25bよりも保護材25aの方がOHラジカル等によって分解されやすいと仮定して、説明を続ける。
第2実施形態にかかる燃料電池の作動時にも過酸化水素が生成され、かかる過酸化水素は、電解質膜21へと拡散可能である。第2実施形態にかかる電解質膜21へ過酸化水素が拡散してくると、当該過酸化水素は、電解質膜21に備えられている劣化防止剤20、20、…(図4(A)参照)により、分解される。ところが、上述のように、燃料電池の作動時には水が生成されるため、上記劣化防止剤20、20、…は、やがて、生成水とともに外部へと排出される。このようにして、劣化防止剤20、20、…が全て排出されると、耐食材30a、30a、…、及び、耐食材30b、30b、…が電解質成分50内に分散された、電解質膜21aとなる(図4(B)参照)。ここで、耐食材30a、30a、…に備えられる保護材25a、25a、…、及び、耐食材30b、30b、…に備えられる保護材25b、25b、…は、分解性能を有していない。そのため、図4(B)に示す電解質膜21aに過酸化水素が拡散してきても、当該過酸化水素を効果的に分解することが困難である。したがって、第2実施形態にかかる燃料電池をさらに継続して作動させると、やがて、OHラジカル等によって攻撃されやすい電解質膜21aとなる。
電解質膜21aは、耐食材30a、30a、…を備えており、当該耐食材30a、30a、…に備えられる保護材25a、25a、…は、上記保護材25b、25b、…、及び、電解質成分50よりも先に、OHラジカル等によって分解される。そのため、図4(B)に示す電解質膜21aでは、OHラジカル等により保護材25a、25a、…が分解され、耐食材30a、30a、…に備えられていた劣化防止剤20、20、…が電解質成分50内へと放出される(図4(C)参照)。このようにして、劣化防止剤20、20、…、及び、耐食材30b、30b、…を備える電解質膜21bへと形態が変化すると、当該電解質膜21bに備えられる劣化防止剤20、20、…により、過酸化水素及びOHラジカル等が分解される。ここで、燃料電池の作動時には水が生成されるため、電解質膜21bに備えられる劣化防止剤20、20、…も、やがて、生成水とともに外部へと排出される(図4(D)参照)。このようにして、劣化防止剤20、20、…が全て排出されると、耐食材30b、30b、…が電解質成分50内に分散された、電解質膜21cとなる(図4(D)参照)。
ここで、耐食材30b、30b、…に備えられる保護材25b、25b、…は分解性能を有しておらず、当該保護材25b、25b、…は、電解質成分50よりも先に、OHラジカル等によって分解される。そのため、図4(D)に示す電解質膜21cに、過酸化水素やOHラジカル等が拡散してくると、保護材25b、25b、…が分解され、耐食材30b、30b、…に備えられていた劣化防止剤20、20、…が電解質成分50内へと放出される(図4(E)参照)。このようにして、劣化防止剤20、20、…を備える電解質膜21dへと形態が変化すると、当該電解質膜21dに備えられる劣化防止剤20、20、…により、過酸化水素及びOHラジカル等を分解することが可能になる。すなわち、第2実施形態によれば、劣化防止剤20、20、…の分解性能が発現される時機をずらすことにより、分解性能を長期間に亘って発現可能とし、当該構成とすることで、耐久性をより一層向上させ得る燃料電池としている。
3.第3実施形態
図5は、第3実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。図5(A)は、第3実施形態にかかるユニットセルの一部を概略的に示しており、紙面左右方向が電極層の積層方向である。一方、図5(B)は、第3実施形態にかかるユニットセルに備えられるMEAの一部を拡大して示している。他方、図6は、第3実施形態にかかる燃料電池の作動時における、MEAの一部を拡大して示す概略図であり、図中の直線矢印は、MEA内を拡散する生成水の移動方向を示している。図5及び図6において、図3及び図4に示す燃料電池と同じ構成を採る物質・部材には、図3及び図4にて使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。以下において、被分解物質として炭素材料及び/又は触媒担持炭素材料が用いられる場合、当該被分解物質を「被覆材」と表記する。以下、図3〜図6を適宜参照しつつ、第3実施形態にかかる本発明の燃料電池について説明する。
図5(A)に示すように、第3実施形態にかかるユニットセル300は、電解質膜21と、当該電解質膜21の一方の側及び他方の側にそれぞれ配設されるアノード触媒層32a及びカソード触媒層33aとを備えるMEA34と、アノード触媒層32aの外側に配設されるアノード拡散層12b及びカソード触媒層33aの外側に配設されるカソード拡散層13bと、これらの外側に配設されるセパレータ6a、6bと、を備えている。セパレータ6a、6bによって挟まれる積層体35は、電極層としてのアノード32及びカソード33を備えており、アノード32はアノード触媒層32a及びアノード拡散層32bを、カソード33はカソード触媒層33a及びカソード拡散層33bを、それぞれ備えている。そして、アノード触媒層32a及びカソード触媒層33aには、例えば、炭素材料からなる被覆材と当該被覆材によって被覆されたCeO等からなる劣化防止剤とを備える耐食材と、白金担持カーボン(図5(A)では共に不図示)と、が備えられている。
ここで、第3実施形態にかかるユニットセル300に備えられる電解質膜21、アノード触媒層32a、及びカソード触媒層33aには、Nafion等の電解質成分50が備えられている(図3、図4、図5(B)及び図6参照)。電解質膜21には、劣化防止剤(例えば、Ce4+等)と当該劣化防止剤が分散された保護材(図3・図4参照)とが備えられている。そして、アノード触媒層32a及びカソード触媒層33aには、劣化防止剤52、52、…の表面が被覆材53、53、…によって被覆されることにより構成される耐食材55、55、…と、劣化防止剤52、52、…の表面が被覆材54、54、…によって被覆されることにより構成される耐食材56、56、…と、白金担持カーボン51、51、…と、が備えられている(図6(A)参照)。以下、電解質成分50よりも、耐食材56を構成する被覆材54の方がOHラジカル等によって分解(酸化)されやすく、かつ、耐食材55を構成する被覆材53の方が上記被覆材54よりもOHラジカル等によって分解(酸化)されやすいと仮定する。カソード触媒層33aを用いて第3実施形態にかかる本発明の燃料電池に関する説明を以下に続ける。
第3実施形態にかかる燃料電池の作動時にも、カソード触媒層33a等で過酸化水素が生成される。カソード触媒層33aで過酸化水素が生成され、当該過酸化水素に起因して生成されたOHラジカル等によって被覆材53が分解され得る状態にまで電位が上昇すると、カソード触媒層33aでは、最初に、被覆材53が分解される。このようにして被覆材53が分解されると、被覆材53によって被覆されていた劣化防止剤52、52、…が、カソード触媒層33aに存在する過酸化水素と接触し得る状態となり、カソード触媒層33aは、電解質成分50に、白金担持カーボン51、51、…と、劣化防止剤52、52、…と、耐食材56、56、…と、が分散された状態になる(図6(B)参照)。劣化防止剤52、52、…が、過酸化水素と接触し得る状態になると、劣化防止剤52、52、…は過酸化水素分解性能を有しているので、カソード触媒層33a内の過酸化水素が分解され、耐食材55、55、…に含まれていた劣化防止剤52、52、…の分解性能が発現されている間は、カソード触媒層33aの電位上昇が防止される。その後、耐食材55、55、…に含まれていた劣化防止剤52、52、…がセル300の外へと排出される等により、当該劣化防止剤52、52、…の分解性能が発現されなくなると、カソード触媒層33aの電位が上昇し、カソード触媒層33a等で生成された過酸化水素に起因して生成されたOHラジカル等によって被覆材54が分解され得る電位状態となる(図6(C)参照)。当該電位状態になると、その後、OHラジカル等によって被覆材54が分解され、被覆材54によって被覆されていた劣化防止剤52、52、…と、カソード触媒層33aに存在する過酸化水素が接触し得る状態なる(図6(D)参照)。被覆材54によって被覆されていた劣化防止剤52、52、…と過酸化水素とが接触し得る状態になると、劣化防止剤52、52、…によって、カソード触媒層33a内の過酸化水素が分解され、耐食材56、56、…に含まれていた劣化防止剤52、52、…の分解性能が発現されている間は、カソード触媒層33aの電位上昇が防止される。このように、第3実施形態によれば、劣化防止剤52、52、…を被覆している被覆材53、54と劣化防止剤52、52、…によって、触媒層に備えられる電解質成分がOHラジカル等によって損傷され始める時機を遅らせることができる。それゆえ、当該構成とすることで、耐久性をより一層向上させ得る燃料電池300とすることができる。
上記説明では、異なる構成材料からなる2種類の保護材・被覆材(被分解物質)によって被覆された劣化防止剤が備えられる形態について記述したが、本発明の燃料電池は当該形態に限定されるものではなく、劣化防止剤が互いに異なる3形態以上の保護材・被覆材によってそれぞれ被覆され、複数形態の耐食材が備えられる形態であっても良い。このように、複数形態の耐食材が備えられていれば、劣化防止剤の分解性能を発現させる時機をずらすことが容易になり、より一層長期間に亘って当該分解性能を発現させることが可能な、燃料電池を提供することが可能になる。
また、上記説明では、異なる形態の保護材・被覆材によって、同一の劣化防止剤が被覆されている形態(電解質膜11、21には劣化防止剤20のみが含有され、カソード触媒層33aには劣化防止剤52のみが含有される形態)について記述したが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、保護材に被覆される劣化防止剤は、複数種類とすることができる。
第2実施形態及び第3実施形態にかかる燃料電池では、劣化防止剤を被覆すべき保護材・被覆材が複数形態であれば、当該形態の態様は特に限定されるものではない。異なる形態の具体例としては、保護材の構成材料を変える上記形態のほか、劣化防止剤を被覆する保護材の厚さを変える、保護材を構成する材料の構造を変える、被覆材として用いられる炭素材料の結晶性を変える、等を挙げることができる。さらに、一部の保護材をイオン交換基化することによって保護材の形態を変えても良い。一部の保護材をイオン交換基化する場合、そのイオン交換基の具体例としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、水酸基等を挙げることができる。このようにして、イオン交換基化された保護材が備えられていれば、当該保護材が親水化されるため、イオン交換基化されていない保護材よりも先に過酸化水素を付着させて分解させることが可能になり、劣化防止剤の分解性能発現時機をずらすことが可能になる。一方、保護材が樹脂により構成される場合、当該保護材の構造を変える方法の具体例としては、一部の保護材にのみ架橋部を形成させて、構造を変える方法等を挙げることができる。
本発明の燃料電池に備えられる劣化防止剤は、過酸化水素分解性能を有する物質、又は、過酸化水素分解性能を有する金属イオンを溶出可能な物質であれば特に限定されるものではなく、これらの具体例としては、Mn、Fe、Pt、Pd、Ni、Cr、Cu、Ce、Sc、Rb、Co、Ir、Ag、Au、Rh、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Nb、Os等からなる単体、及び、これらの元素を含む化合物(例えば、酸化物等)を挙げることができる。
また、本発明において、上記劣化防止剤を被覆すべき保護材・被覆材(被分解物質)は、MEAに備えられる電解質成分よりも先に過酸化水素等によって分解され、かつ、当該保護材を燃料電池内に分散させても発電可能なものであれば特に限定されない。ただし、生成水による排出を防止するという観点からは、水に不溶又は難溶であることが好ましい。本発明にかかる保護材の具体例としては、炭化水素系材料のほか、炭素材料(例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭化ケイ素等)や、電極層に含有される触媒(例えば、白金や、白金と少なくとも1以上の遷移金属とを含有する白金合金等)が上記炭素材料に担持された触媒担持炭素材料等を挙げることができる。当該炭化水素系材料の具体例としては、PES、PEEK、PPBP、PE、PET等を挙げることができる。なお、触媒層における電気化学反応の効率低下を抑制する等の観点から、保護材として炭化水素系材料が用いられる場合には、当該保護材によって被覆された劣化防止剤を電解質膜に分散させることが好ましい。
他方、上記第3実施形態では、被覆材として炭素材料を例示したが、触媒層に劣化防止剤を配置する場合に当該劣化防止剤を被覆し得る被分解物質は、炭素材料に限定されず、上記PES、PEEK、PPBP、PE、PET等を用いることも可能である。ただし、触媒層における電気化学反応の効率を低下させ難い材料とする等の観点からは、触媒層に含有される触媒の担体として用いられ得る炭素材料、及び/又は、触媒担持炭素材料等を被覆材として用いることが好ましい。
加えて、劣化防止剤の表面を被覆する被覆材として炭素材料を用いる場合、劣化防止剤の表面を被覆する炭素材料の厚さは特に限定されるものではないが、電解質膜が損傷する前に劣化防止剤と過酸化水素とが接触可能な状態にする等の観点からは、1μm以下の厚さとすることが好ましい。
さらに、本発明において、劣化防止剤と耐食材とを備える燃料電池の製造方法は、特に限定されるものではない。当該製造方法の具体例としては、保護材に被覆された劣化防止剤を備える耐食材と、保護材に被覆されていない劣化防止剤とを、予め作製、用意しておき、これらを液体状態の電解質成分中へ分散させて、劣化防止剤と耐食材とを備える電解質成分とした後、当該電解質成分を備えるMEAを作製して、当該MEAを備える燃料電池を製造する方法等を挙げることができる。ここに、上記耐食材の作製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、
(I)保護材を加熱又は溶剤へ溶かす等の手段により溶液化し、溶液化した保護材に劣化防止剤を分散させた後、キャスト法等によって製膜して、その後粉砕することにより作製する方法、
(II)保護材を加熱又は溶剤へ溶かす等の手段により溶液化し、溶液化した保護材に劣化防止剤を分散させた後、保護材が溶解しない溶媒を加えて沈殿を生じさせ、このようにして得られた沈殿物を乾燥させることにより作製する方法、
等を挙げることができる。保護材が溶解しない溶媒の具体例としては、極性を有する保護材に対する、無極性の溶媒等を挙げることができる。
加えて、イオン交換基化された保護材に被覆された劣化防止剤を備える耐食材の作製方法も、特に限定されるものではないが、例えば、上記(I)又は(II)の方法等により作製された耐食材を、
(i)硫酸、リン酸等に浸すことにより、イオン交換基化された保護材を備える耐食材を作製する方法、
(ii)紫外線等の光を照射した後、水へ浸すことにより、イオン交換基化された保護材を備える耐食材を作製する方法、
等を挙げることができる。
本発明において、電解質成分に耐食材を分散させると、耐食材の形態によっては、当該電解質成分のプロトン伝導性能が低下し、燃料電池の発電性能が低下することがある。そのため、本発明の燃料電池の発電性能低下を抑制するという観点からは、耐食材の少なくとも一部が、スルホン化された保護材を備える耐食材であることが好ましい。かかる形態の保護材が備えられていれば、当該保護材のスルホン酸基が、プロトン伝導に寄与することが可能になるため、上記発電性能低下を抑制することが可能になる。
また、本発明において、電解質成分に分散させる劣化防止剤の質量は、上記耐久性向上効果を奏し得る質量であれば、特に限定されるものではない。ただし、プロトン伝導性低下を抑制しつつ、耐久性向上効果を発現させるという観点から、劣化防止剤が分散される電解質成分の質量を100質量部とするとき、分散すべき劣化防止剤の質量は10質量部以下とすることが好ましい。さらに、本発明において、劣化防止剤は、少なくとも一部が保護材によって被覆されていれば、被覆される割合は特に限定されるものではない。当該割合の具体例としては、10%〜90%等を挙げることができる。好ましくは、20%〜50%である。
一方、本発明において、触媒層の電解質成分に、劣化防止剤が触媒担持炭素材料によって被覆された形態の耐食材が分散され、触媒層に含まれる触媒のうち、劣化防止剤の表面に配置される触媒を「触媒A」、劣化防止剤の表面には配置されない触媒を「触媒B」とし、触媒Aと触媒Bとの触媒活性が略同一である場合には、触媒Aと触媒Bとの合計質量100質量部に対して、触媒Bを5質量部以下とすることが好ましい。このようにすれば、単位体積当たりの触媒数が減少すること等に起因する発電性能の低下を抑制しつつ、本発明の耐久性向上効果を得ることが可能になる。ただし、触媒Aと触媒Bの触媒活性が異なり、触媒Bよりも触媒Aの触媒活性が高く、5質量部以上の触媒Aが触媒層に含有されていても燃料電池の発電性能が低下しない場合には、5質量部以上の触媒Aが触媒層に含有される形態とすることも可能である。
また、上記説明では、燃料電池に備えられる電解質成分として、含フッ素イオン交換樹脂を備えるNafionを例示したが、本発明にかかる電解質膜及び触媒層等に備えられる電解質成分は、上記成分に限定されるものではなく、炭化水素系のイオン交換樹脂が備えられていても良い。MEAに、炭化水素系の電解質成分が備えられる場合であっても、劣化防止剤が、当該電解質成分よりも先に過酸化水素によって分解され得る保護材で被覆されていれば、上記効果を奏する燃料電池を提供することが可能になる。
さらに、上記説明では、電解質膜に劣化防止剤が備えられる形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、アノード触媒層若しくはカソード触媒層の一方にのみ、又は、アノード触媒層及びカソード触媒層にのみ劣化防止剤が備えられる形態とすることも可能である。
また、上記説明では、劣化防止剤及び耐食材が、MEAにのみ備えられる形態について記述したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。燃料電池の発電性能及び耐久性を総合的に勘案して、拡散層やセパレータ表面(例えば、反応ガス流路表面等)等に、劣化防止剤及び/又は耐食材が備えられる形態とすることも可能である。このように、MEA以外の部材にも劣化防止剤及び耐食材が備えられていれば、燃料電池の耐久性をより一層向上させることが可能になる。
さらに、本発明の燃料電池は、図(図1、図3、及び、図5)に例示したアノード拡散層及びカソード拡散層を備える形態に限定されるものではなく、一方の拡散層又は両方の拡散層を備えない形態であっても良い。
また、上記説明では、アノード側及びカソード側に反応ガス供給路が形成されている形態のセパレータを備える燃料電池について記述したが、本発明にかかる燃料電池は当該形態に限定されるものではなく、例えば、反応ガス供給路が形成されていないフラットタイプのセパレータがアノード側及び/又はカソード側に備えられている形態であっても良い。かかる形態の燃料電池とする場合には、フラットタイプのセパレータと当接すべき層(アノード拡散層若しくはアノード電極層、及び/又は、カソード拡散層若しくはカソード電極層)を、めっき法や発泡法等により製造されるステンレス鋼、チタン又はニッケル等の発泡金属、あるいは焼結金属等の多孔体により形成し、当該層に反応ガスが供給される形態の燃料電池とすれば良い。
1.電解質膜耐久試験
1.1.電解質膜の作製
N-Methyl-2-pyrrolidoneなどの溶媒に溶解させた状態のPESにセリアを分散した後、キャスト法により製膜し、この膜を粉砕することにより耐食材を作製した。次に、当該耐食材、及びセリアを、溶剤に溶かしたNafion中へ分散することにより、実施例1にかかる燃料電池用電解質膜を作製した。
他方、一部の上記耐食材を硫酸中に浸漬し、当該硫酸から耐食材を分離することにより、一部の耐食材をスルホン化させた。そして、セリア、耐食材、及び、スルホン化させた耐食材を、溶剤に溶かしたNafion中へ分散することにより、実施例2にかかる燃料電池用電解質膜を作製した。
これに対し、耐食材及びセリアを備えないほかは上記電解質膜と略同様形態の、比較例1にかかる燃料電池用電解質膜を作製した。これら実施例1、実施例2、及び比較例1にかかる燃料電池用電解質膜(以下において、単に「電解質膜」と記述する。)を用いて、以下の耐久試験を実施した。
1.2.耐久試験
鉄イオンを含むフェントン試薬に、上記実施例1、実施例2、及び比較例1にかかる電解質膜を60分間浸漬させるフェントン試験を繰り返し(10回)実施することにより、実施例1及び実施例2にかかる電解質膜、並びに、比較例1にかかる電解質膜の耐久性を評価した。評価結果を図7に示す。図7において、縦軸は、フェントン試薬中のフッ素イオン濃度(ppm)、横軸は、フェントン試験の回数である。また、一点鎖線は実施例1の結果を、直線は実施例2の結果を、破線は比較例1の結果を、それぞれ示している。なお、本耐久試験では、各回のフェントン試験において、未使用のフェントン試薬(電解質膜を未だ浸漬させていない新たなフェントン試薬)に、上記各電解質膜を浸漬させた。
ここで、電解質膜の電解質成分が劣化すると、フェントン試薬中にフッ素イオンが溶出する。そのため、電解質成分の劣化とフッ素イオン濃度との間には相関が認められ、上記フッ素イオン濃度が低濃度であるほど、電解質成分の劣化が少なく、燃料電池の耐久性を向上可能であることを示唆している。
図7より、比較例1にかかる電解質膜を用いた試験では、4回目のフェントン試験で1ppm以上の濃度(約3.5ppm)のフッ素イオンが検出されたのに対し、実施例1にかかる電解質膜を用いた試験では、8回目のフェントン試験で1ppm以上の濃度(約1.5ppm)のフッ素イオンが検出された。さらに、実施例2にかかる電解質膜を用いた試験では、10回のフェントン試験を実施しても、検出されたフッ素イオン濃度は1ppm未満であった。また、実施例1にかかるフェントン試験では、10回目経過後のフッ素イオン濃度が約4ppmであったのに対し、比較例1にかかるフェントン試験では、フッ素イオン濃度が約18ppmであった。
上記結果から、実施例(実施例1及び実施例2)の電解質膜によれば、溶出するフッ素イオンの濃度を、比較例1にかかる電解質膜の4分の1以下に抑制可能であった。そのため、実施例の構成とすることで、燃料電池の耐久性を向上可能であることが確認された。また、複数形態の耐食材を備える形態(実施例2)では、単一形態の耐食材を備える形態(実施例1)よりもフッ素イオン濃度が低減した。したがって、複数形態の耐食材を備える形態とすることで、より効果的に耐久性を向上させ得る燃料電池を提供可能であることが確認された。すなわち、本発明によれば、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供可能であることが確認された。
2.燃料電池耐久試験
2.1.セルの作製
超音波にてメジアン径が0.2μmとなるまで分散したカーボンブラック(Ketjen EC、ケッチェンブラックインターナショナル社製)へ、劣化防止剤(CeO)を投入し、さらに、Nafion溶液(米国デュポン社製、20%溶液)を加えて混錬することにより、混合物を調整した。ここで、Nafion溶液(以下、「電解質」という。)は、CeO上にカーボンブラックを吸着させるためのバインダーとして働き、CeO、カーボンブラック、及び電解質の質量比は、CeO:カーボンブラック:電解質=1:1:1とした。そして、当該混合物と、白金合金粒子をカーボンブラック上に担持させた触媒担持粒子とを、白金合金粒子に対するCeOの質量比が5%となるように混合したものを、電解質膜(Nafion112、米国デュポン社製)の一方の面へスプレードライヤーにて噴霧乾燥することにより、カソード触媒層を作製した。一方、白金合金粒子をカーボンブラック上に担持させた触媒担持粒子とNafion溶液とを混錬することにより混合物を調整し、当該混合物を上記電解質膜の他方の面へスプレードライヤーにて噴霧乾燥させることにより、アノード触媒層を作製し、MEAを作製した。
その後、上記工程にて作製したMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で狭持し、熱圧着することにより積層体を作製し、当該積層体を、一対のカーボンセパレータで狭持することにより、実施例3にかかるセルを作製した。
他方、白金合金粒子をカーボンブラック上に担持させた触媒担持粒子とNafion溶液とを混錬して混合物を調整し、当該混合物を電解質膜の一方の面及び他方の面へスプレードライヤーにて噴霧乾燥させることにより、アノード触媒層及びカソード触媒層をそれぞれ作製したほかは、実施例3にかかるセルと同様の工程により、比較例2にかかるセルを作製した。また、CeO上にカーボンブラックを吸着させず、劣化防止剤の表面が被分解物質によって被覆されていないほかは、実施例3にかかるセルと同様の工程により、比較例3にかかるセルを作製した。
2.2.ON−OFF耐久試験
実施例3にかかるセル、比較例2にかかるセル、及び、比較例3にかかるセルを、それぞれ80℃に保ち、相対湿度が50%となるように加湿した80℃の水素ガスを各セルのアノードへ、相対湿度が50%となるように加湿した80℃の空気を各セルのカソードへそれぞれ供給した。そして、通電時の電流密度は0.5[A/cm]とし、0.5分間に亘る通電と0.5分間に亘る通電停止とを繰り返すことにより、上記各セルに対してON−OFF耐久試験を実施した。結果を図8にあわせて示す。図8の縦軸はクロスリーク量[MPa]、同横軸は耐久時間[h]であり、クロスリーク量が増加し始めるまでの時間が長いほど、電解質膜の損傷が抑制されて耐久性が向上したと判断される。図8において、実線は実施例3にかかるセルの結果を、破線は比較例2にかかるセルの結果を、一点鎖線は比較例3にかかるセルの結果を、それぞれ示している。
図8より、劣化防止剤を添加した実施例3にかかるセル及び比較例3にかかるセルは、劣化防止剤未添加の比較例2にかかるセルよりも、クロスリーク量が増加し始めるまでの時間が長かった。さらに、劣化防止剤を被分解物質で被覆した実施例3にかかるセルは、劣化防止剤を被分解物質で被覆しなかった比較例3にかかるセルよりも、クロスリーク量が増加し始めるまでの時間が長かった。したがって、今回のON−OFF耐久試験により、劣化防止剤を添加することで燃料電池の耐久性を向上させることが可能であり、当該耐久性向上効果は、劣化防止剤を被分解物質で被覆することで、より顕著になることが確認された。
第1実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。 第1実施形態にかかる燃料電池作動時における、MEAの一部を示す概略図である。 第2実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。 第2実施形態にかかる燃料電池作動時における、MEAの一部を示す概略図である。 第3実施形態にかかる本発明の燃料電池の一部を概略的に示す断面図である。 第3実施形態にかかる燃料電池作動時における、カソード触媒層の一部を示す概略図である。 電解質膜耐久試験の結果を示す図である。 燃料電池耐久試験の結果を示す図である。
符号の説明
11、21 電解質膜
12、22、32 アノード(電極層)
13、23、33 カソード(電極層)
14、24、34 MEA
20 劣化防止剤
25a、25b 保護材(被分解物質)
30a、30b 耐食材
51 白金担持カーボン
52 劣化防止剤
53、54 被覆材(被分解物質)
55、56 耐食材
100、200、300 燃料電池

Claims (7)

  1. 電解質膜及び該電解質膜の両側に配設される電極層を有するMEAを具備し、
    前記MEAに、過酸化水素分解性能を有する金属元素及び/又は該金属元素を含む化合物が備えられるとともに、
    前記金属元素及び/又は該金属元素を含む前記化合物の一部が、過酸化水素により分解可能な被分解物質によって被覆されており、
    前記金属元素及び/又は該金属元素を含む前記化合物と前記被分解物質とが、前記電解質膜又は前記電極層に備えられる電解質成分中に固定化されており、
    前記被分解物質は、過酸化水素分解性能を有しておらず、且つ前記電解質成分より先に過酸化水素により分解可能な物質であることを特徴とする、燃料電池。
  2. 複数形態の前記被分解物質が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
  3. 第1の形態にかかる前記被分解物質によって被覆されている、前記金属元素及び/又は該金属元素を含む前記化合物の過酸化水素分解性能が発揮される時機と、
    第2の形態にかかる前記被分解物質によって被覆されている、前記金属元素及び/又は該金属元素を含む前記化合物の過酸化水素分解性能が発揮される時機とが、異なることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池。
  4. 前記第1の形態にかかる被分解物質の構成材料と、前記第2の形態にかかる被分解物質の構成材料とが、異なることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池。
  5. 前記第1の形態にかかる被分解物質の厚さと、前記第2の形態にかかる被分解物質の厚さとが、異なることを特徴とする、請求項又はに記載の燃料電池。
  6. 前記被分解物質が、プロトン伝導性能を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池。
  7. 前記被分解物質が、炭素材料、及び/又は、触媒担持炭素材料であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池。
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