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JP5232527B2 - ゴム物品補強用スチールコードの製造方法 - Google Patents
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本発明は、断線し難い優れた延性を持ち、撚線等の加工を加えても延性の低下が少ないゴム物品補強用スチールコードが製造可能な、湿式伸線によるゴム物品補強用スチールコードの製造方法に関する。
ゴム物品の一例であるタイヤにおいては、そのベルトやカーカスにスチールコードをゴムで被覆したものを適用し、タイヤの補強を図っている。このようなゴム物品補強用スチールコードは、通常、ブラスメッキされたスチールワイヤを所望の径に伸線してスチールフィラメントを得、該スチールフィラメントを所望の本数にて撚り合わせることにより製造される。この伸線加工は、一般に、スリップ型多段式伸線機を用いて行われる。
ブラスメッキが施されたスチールワイヤを、スリップ型多段式伸線機と、極圧添加剤及び界面活性剤等を含有する湿式潤滑剤とを用いて湿式伸線する場合、一般に、該極圧添加剤としてリン酸エステルの亜鉛錯体等を利用することにより、伸線時のスリップ型多段式伸線機におけるダイスとワイヤ間の摩擦を低減しダイスやワイヤの損傷を抑制できる。この工夫は、スチールコードの生産性を高めるのに非常に大きな役割を果たしてきた。(特許文献1)。
特開2002−241781号公報
しかしながら、高強度のスチールワイヤを伸線する場合、該スチールワイヤの変形抵抗が高いために加工に伴う発熱が大きくなり、時効硬化によるスチールワイヤの劣化や、ダイスの摩耗促進等の問題が発生し易く、上記工夫のみではかかる問題を解決するために十分ではなかった。
そのため、こうした問題点を解決できる、従来よりも優れたゴム物品補強用スチールコードの湿式伸線による製造方法が求められている。
一方、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)は、優れた耐摩耗性と酸化防止性等を有することから、エンジン油や油圧作動油などの潤滑剤に広く用いられてきたが、スチールコード生産に際してはこれまで殆ど実用的に使用されていない。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定構造のZnDTPを添加した湿式潤滑剤を用いて湿式伸線することにより、従来よりも優れたゴム物品補強用スチールコードが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法は、ブラスメッキしたスチールワイヤを湿式伸線して製造された複数本のフィラメントを撚り合わせてなるゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
前記湿式伸線において使用する湿式潤滑剤が、界面活性剤、及び、下記式(I):
Figure 0005232527
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜18のアルキル基である]で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、
前記湿式潤滑剤における、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛と前記界面活性剤との質量比が3:7〜4:6であることを特徴する。
本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、前記湿式潤滑剤における前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の添加量は0.03〜3.0質量%が好適である。
本発明によれば、断線し難い優れた延性を持ち、撚線等の加工を加えても延性の低下が少ないゴム物品補強用スチールコードを製造することができる。
以下に、図を参照しながら本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法を詳細に説明する。図1は、本発明の製造方法で使用するスリップ型多段式伸線機の一例である。
図1に示すスリップ型多段式伸線機1においては、湿式潤滑剤2の充填された潤滑液槽3内に、2基の多段の駆動キャプスタン4A、4Bが互いに対向して配置されており、これら駆動キャプスタン4A、4Bの各段に、ダイス5を介してスチールワイヤ6を交互に掛け渡す過程において、各段毎にダイス5によりスチールワイヤ6の伸線が行われる。伸線されたスチールワイヤ6は、最終ダイス7を経て、潤滑液槽3外に配置された駆動キャプスタン8から、巻き取り工程へと送られる。
かかる湿式伸線において、本発明のゴム物品補強用スチールコードの製造方法は、湿式潤滑剤2が上記式(I)で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含むことを特徴とする。このように特定構造のZnDTPを含む湿式潤滑剤を使用して湿式伸線を行うと、ダイス5とスチールワイヤ6間に強固な潤滑被膜が形成されるため、スチールワイヤの変形抵抗に伴う発熱を抑制し、時効硬化によるスチールコードの劣化やダイスの摩耗が低減できる。こうした効果は、高強度のスチールワイヤを湿式伸線する場合に特に顕著である。ここで、式(I)中のR基の炭素数が4未満であるか又は18を超えると、スチールコードの延性を向上させる効果が低下する。なお、スチールコードの延性を更に向上させる観点から、式(I)中のR基の炭素数は6〜12であることが好ましい。また、R基は直鎖状アルキル基、分枝状アルキル基のどちらでも良いが、摩擦を低下させてスチールコード表面のすべり性を向上させる効果が高いため、直鎖状アルキル基が好ましい。
本発明で使用する湿式潤滑剤は界面活性剤を含、該界面活性剤を添加した湿式潤滑剤を用いてスチールワイヤを湿式伸線することによって、本発明の製造方法により製造されるゴム物品補強用スチールコードの延性等を更に向上させることができる。また、湿式潤滑剤にZnDTPに添加することにより得られるこうした効果を更に向上させるために、該界面活性剤の選択が重要なポイントとなる。本発明に使用する界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリオールエステル、ポリエーテルポリオール、アルカノールアミド等が挙げられ、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリオールエステルが特に好ましい。
また、前記湿式潤滑剤における、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)の添加量が0.03〜3.0質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることが更に好ましい。かかる添加量が0.03質量%未満であるとスチールコードの延性を向上させる効果が十分ではなく、3.0質量%を超えるとスチールコードの延性を向上させる効果が上昇しないため、コストの点から好ましくない。
更に、前記湿式潤滑剤における、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛と前記界面活性剤との質量比は2:8〜5:5が好ましく、3:7〜4:6が更に好ましい。ここで、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が前記界面活性剤の含有量の1/4未満であると湿式潤滑剤の潤滑効果が十分でなく、一方、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が前記界面活性剤の含有量の1/2を超えると湿式潤滑剤の液安定性が低下する。
本発明において、湿式潤滑剤について上記条件を満たせば、伸線工程に係るその他の条件、例えば、ワイヤ速度や、スリップ型多段式伸線機におけるスリップ速度、ダイス形状等については、特に制限されない。また、本発明の伸線方法は、湿式伸線によりスチールワイヤの伸線を行うものであれば、形式については特に制限されるものではなく、単独伸線及び連続伸線のいずれでも構わない。
また、本発明のゴム物品補強用スチールコードは、上記伸線方法により得られるスチールワイヤのフィラメントが複数本にて撚り合わされてなるものであれば、その撚り構造等は特に制限されない。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1〜10、参考例1〜10
直径約5.5mmの高炭素鋼線材に、直径が約1.6mmとなるまで繰り返し乾式伸線を施した後、パテンティング処理及びブラスメッキ処理を加えて準備したフィラメントについて、図1に示すスリップ型多段式伸線機1を用いて、湿式潤滑剤2として、比較例においてはZnDTPを添加していない湿式潤滑剤を用いて、また実施例においては本発明の規定内にある下記のZnDTPを添加した湿式潤滑剤を用いて、直径が約0.20mmとなるまで表中に示す各種条件において伸線を実施した。得られたスチールワイヤについてそれぞれ繰り返し捻り試験を行い比較例の値を100としてそれぞれ指数化した。結果を表1〜4に示す。繰り返し捻り試験は以下の方法により実行した。なお、記載した成分の残部については、通常の潤滑剤組成からなる潤滑液を添加した。
(繰り返し捻り試験の測定方法)
繰り返し捻り試験は、得られたスチールワイヤに時計方向及び反時計方向の回転を繰り返し与えて、クラックが入るまでの繰り返し回数を数えることにより行った。また、比較例の値を100として実施例の値を指数化した。繰り返し捻り試験の指数は、数値が高いほど延性が良好であることを示す。
Figure 0005232527
Figure 0005232527
Figure 0005232527
Figure 0005232527
表1は、湿式潤滑剤へのZnDTP添加量と各条件で製造されたスチールコードの繰り返し捻り試験の値との関係を示している。なお、ZnDTPとしては式(I)で表されR基の炭素数が8であるものを使用した。表1から分かるように、繰り返し捻り試験の値は、湿式潤滑剤へのZnDTP添加量が0.03質量%以上になると改善し、3.0質量%を超えると更には改善しない。そのため、ZnDTPの前記湿式潤滑剤への添加量は0.03〜3.0質量%が好ましい。
表2は、湿式潤滑剤におけるZnDTPと界面活性剤との質量比とスチールコードの繰り返し捻り試験の値との関係を示している。なお、ZnDTPとしては式(I)で表されR基の炭素数が8であるものを湿式潤滑剤に対して0.3質量%添加し、界面活性剤はポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用した。表2から分かるように、ZnDTPと界面活性剤との質量比が3:7〜4:6であると繰り返し捻り試験の値が改善する。そのため、前記湿式潤滑剤において、ZnDTPと界面活性剤との質量比は3:7〜4:6とする必要がある。
表3は湿式潤滑剤に添加するZnDTPのR基の炭素数と繰り返し捻り試験の値との関係を示している。なお、ZnDTPとしては式(I)で表されR基が炭素数8であるものを湿式潤滑剤に対して0.5質量%添加し、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加して、ZnDTPと該界面活性剤との質量比が40:60となるようにした。表3から分かるように、ZnDTPのR基の炭素数が4〜12であると繰り返し捻り試験の値が改善される。従って、ZnDTPのR基は炭素数が4〜12であることが好ましい。
表4は表中の条件における繰り返し捻り試験の値を示している。なお、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加した。表4から分かるように、湿式潤滑剤にZnDTPを添加していない比較例4よりも、湿式潤滑剤に式(I)で表されR基の炭素数が8であるZnDTPを0.5質量%添加し、ZnDTPと界面活性剤との質量比を40:60とした実施例20の方が繰り返し捻り試験の値が改善している。そのため、ZnDTPのR基の炭素数が4〜18、ZnDTPの前記湿式潤滑剤への添加量が0.03〜3.0質量%、及びZnDTPと界面活性剤との質量比は2:8〜5:5が好ましい。
スリップ型多段式伸線機を示す概略模式図である。
符号の説明
1 スリップ型多段式伸線機
2 湿式潤滑剤
3 潤滑液槽
4A,4B 駆動キャプスタン
5 ダイス
6 最終ダイス
7 駆動キャプスタン

Claims (2)

  1. ブラスメッキしたスチールワイヤを湿式伸線して製造された複数本のフィラメントを撚り合わせてなるゴム物品補強用スチールコードの製造方法において、
    前記湿式伸線において使用する湿式潤滑剤が、界面活性剤、及び、下記式(I):
    Figure 0005232527
    [式中、Rはそれぞれ独立して炭素数4〜18のアルキル基である]で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、
    前記湿式潤滑剤における、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛と前記界面活性剤との質量比が3:7〜4:6であることを特徴するゴム物品補強用スチールコードの製造方法。
  2. 前記湿式潤滑剤における、前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の添加量が0.03〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム物品補強用スチールコードの製造方法。
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