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JP5233446B2 - 煙層の下端高さの算定方法、火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法、これら算定方法又は評価方法を実行するプログラム及び算定システム - Google Patents
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JP5233446B2 - 煙層の下端高さの算定方法、火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法、これら算定方法又は評価方法を実行するプログラム及び算定システム - Google Patents

煙層の下端高さの算定方法、火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法、これら算定方法又は評価方法を実行するプログラム及び算定システム Download PDF

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本発明は、建築物の火災時の避難安全性能の評価指標としての煙層の下端高さの算定方法、及び、同評価指標としての火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法に関する。また、建築物の火災時の避難安全性能の算定方法に関する。更には、これら算定方法又は評価方法を実行するプログラム及び算定システムに関する。
一般に建築物の設計時に、設計者は、その建築物の避難安全性能の検討、すなわち建築物内の在室者が建築物から安全に避難可能か否かの検討を行う。この検討は、建築物の居室内で出火してから避難不能になるまでの時間である煙層降下時間を算定し、この算定値と、避難に要する時間である避難完了時間とを比較してなされる。そして、煙層降下時間が避難完了時間よりも長い場合にのみ安全な居室と判断され、そうでない場合には上記条件を満たすまで居室の再設計を繰り返す。
現在、この煙層降下時間の算定方法として、非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3の三つが提示されている。
「BRI2002:二層ゾーン建物内煙流動モデルと予測計算プログラム」、社団法人 建築研究振興協会、2003 「避難安全検証法:平成12年建告第1441号」 田中哮義著「改訂版建築火災安全工学入門」日本建築センター、2002、p22-23
一つ目の予測計算プログラム(BRI2002)は、現在の避難安全性能評価において広く利用されているプログラムであり、精緻な予測ができる。しかしながら、この予測計算プログラムは、複数の微分方程式と多数の入力パラメータから構成されていてこれら微分方程式を解かねばならず、計算が煩雑で、一般の設計者等には非常に使い難いものであった。また、多数の入力パラメータを有しているため、入力値に対して敏感に反応して計算結果が変化してしまい、もってこの予測計算プログラムを熟知したいわば専門職でないと実情に見合った妥当な煙層降下時間を算定することができなかった。
これに対して、二つ目の避難安全検証法及び三つ目の改訂版建築火災安全工学入門には、それぞれ簡易予測式が示されている。そして、これら簡易予測式を構成する幾つかの入力パラメータに、検討対象建築物の具体的数値を代入するだけで煙層降下時間を算定できるため、専門職でなくても、簡単に避難安全性能を評価可能である。
しかしながら、改訂版建築火災安全工学入門の簡易予測式は、排煙設備を備えた居室の場合には対応不可能であった。すなわち、改訂版建築火災安全工学入門の簡易予測式は、居室からの排煙効果については全くの未考慮であった。他方、避難安全検証法の簡易予測式の方は、排煙効果を考慮可能ではあるが、その考慮の仕方が不十分であり、実際の煙の状態を忠実に模擬できるものではなかった。例えば、実際の排煙設備は、出火直後から所定の時間遅れをもって作動開始するものであるが、避難安全検証法の簡易予測式では、出火直後から即座に排煙開始される前提で計算するものであり、その結果、実情に即した計算ができず、予測精度の点で問題があった。なお、上記排煙設備とは機械式の排煙設備だけでなく、排煙窓のように直接外気に面するものも含んでいる。
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、排煙設備を備えた建築物の居室に対して高い予測精度で簡単に算定可能な煙層の下端高さの算定方法、火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法、これら算定方法又は評価方法を実行するプログラム及び算定システムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1に示す煙層の下端高さの算定方法は、
排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する方法であって、
前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、火災発生からの経過時間t[s]、及び、火災発生から排煙開始までに要する排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により前記煙層の下端高さZ [m]を算定することを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
上記請求項1に示す発明によれば、上記式におけるAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、t、及び、tsmという入力パラメータに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、前記煙層の下端高さZを簡単に算定することができる。
また、上記式は、排煙係数Csm、及び、排煙開始時間tsmといった排煙に係る入力パラメータを有しているので、排煙設備による排煙効果も考慮して煙層の下端高さZを高い予測精度で算定可能となる。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記排煙開始時間tsm[s]は、
前記火災発生から前記居室の火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]、又は、前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を開始するまでに要する時間tstart[s]以上の値とするのが望ましい。
上記請求項2に示す発明によれば、前記排煙開始時間tsmは、前記火災発生から前記居室の火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect、又は、前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を開始するまでに要する時間tstart以上の値に設定されるので、実情に即した算定を行うことができる。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、
排煙開始時点における単位時間当たりの排煙量me(sm)[kg/s]、排煙開始時点における火源の発熱速度Qf(sm)[kW]、及び、排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)[m]を用いて、下式により算出されるのが望ましい。
上記請求項3に示す発明によれば、前記排煙係数Csmを計算する際に、その各パラメータme、Qf、Zに対して、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における各数値を代入する。よって、前記排煙係数Csmは、実際よりも小さめに算定され、その結果、算定される煙層の下端高さZは安全側の数値となる。
詳しくは、一般に火源発熱速度Qや煙層の下端高さZは時々刻々と変化するため、排煙係数Csmも変化するが、ここで、排煙量が法定風量より過剰に大きい場合を除けば、排煙係数Csmは時間の経過とともに徐々に大きくなると考えられる。よって、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における排煙量me(sm)、同排煙開始時点における火源の発熱速度Qf(sm)、同排煙開始時における煙層の下端高さZ(sm)を用いて計算すれば、安全側の想定となる。なお、排煙開始時点の煙層下端高さZ(sm)の代わりに火災空間の天井高さHfを用いて計算すればさらに安全側の想定となる。
請求項4に示す発明は、請求項3に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)[m]は、
前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、及び、前記排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により算定されるのが望ましい。
上記請求項4に示す発明によれば、前記排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)を容易に求めることができる。
すなわち、火災発生から排煙開始時点までの期間については、排煙を行っていないので、上記の排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)を求める場合には、排煙を未考慮の簡易予測式を用いることができる。よって、上記の排煙を未考慮の簡易予測式により、前記排煙開始時間tsmにおける煙層の下端高さZ(sm)を高精度で求めることができる。
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記煙層の密度ρs[kg/m3]は、前記経過時間t[s]における前記煙層の温度Ts[K]を用いて、下式により算定されるのが望ましい。
上記請求項5に示す発明によれば、前記煙層の密度ρs[kg/m3]を、前記経過時間tにおける前記煙層の温度Tsを加味して算出するので、煙層の密度ρsが変化することも、煙層の下端高さの算定に反映できて、より精度の高い予測が可能となる。
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法に基づいて、建築物の火災時の避難安全性能を評価する方法であって、
前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を完了するまでの時間をtescapeとした場合に、前記経過時間tに前記時間tescapeを代入することにより、避難完了時点の煙層の下端高さZescapeを算定するステップと、
算定された前記煙層の下端高さZescapeと、避難安全上の限界煙層高さHlimとを比較するステップと、を備えていることを特徴とする建築物の火災時の避難安全性能の評価方法。
上記請求項6に示す発明によれば、前記避難完了時点の煙層の下端高さZescapeと、前記限界煙層高さHlimと単純に大小比較すれば、建築物の火災時の避難安全性能を評価することができる。
請求項7に示す発明は、排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が発生してから、該火災の煙により生じる煙層の下端高さが所定高さZ[m]に達するまでの経過時間t[s]の算定方法であって、
前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、及び、火災発生から排煙開始までに要する排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により前記経過時間t[s]を算定することを特徴とする火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法。
上記請求項7に示す発明によれば、上記式におけるAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、Z、及び、tsmという入力パラメータに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、火災発生から煙層の下端高さが所定高さZ[m]に達するまでの経過時間tを簡単に算定することができる。
また、上記式は、排煙係数Csm、及び、排煙開始時間tsmといった排煙に係る入力パラメータを有しているので、排煙設備による排煙効果も考慮して前記経過時間tを高い予測精度で算定可能となる。
請求項8に示す発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の算定方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
上記請求項8に示す発明によれば、コンピュータ等のデータ処理装置によって前記算定方法を実行することができる。また、インターネットなどの電気通信回線を利用して前記プログラムを頒布することができて、もって希望者は前記算定方法を容易に利用可能となる。
請求項9に示す発明は、排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する算定システムであって、
数値演算を行う数値演算処理部を有し、
前記数値演算処理部は、
下式における入力パラメータとしての前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、火災発生からの経過時間t[s]、及び、火災発生から煙の排出開始までの排煙開始時間tsm[s]に、それぞれ、対応する数値を代入することにより、前記煙層の下端高さZ [m]を算定することを特徴とする煙層の下端高さの算定システム。
上記請求項9に示す発明によれば、上記式におけるAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、t、及び、tsmという入力パラメータに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、前記煙層の下端高さZを簡単に算定することができる。
また、上記式は、排煙係数Csm、及び、排煙開始時間tsmといった排煙に係る入力パラメータを有しているので、排煙設備による排煙効果も考慮して煙層の下端高さを高い予測精度で算定可能となる。
本発明に係る煙層の下端高さの算定方法、火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法などによれば、前記煙層の下端高さや前記経過時間を、排煙設備を備えた建築物の居室に対しても高い予測精度で簡単に算定可能となる。
===第1実施形態===
第1実施形態に係る煙層の下端高さの算定方法は、例えば、建築物の設計段階、または既存建築物のプラン変更もしくは用途変更段階において、建築物の火災時の避難安全性能を評価する際に使用される。
この煙層の下端高さ(以下、煙層下端高さとも言う)の算定方法は、図1に示すように排煙口10等の排煙設備が設置された建築物に特化したものである。つまり、居室内で火災が生じた場合に煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を、排煙設備による排煙効果を加味しながら計算するものであり、具体的には、下式1のように表される。
f:居室の床面積[m2]
f:居室の天井高さ[m]
α:火災成長率[kW/ s2]
ρs:煙層の密度[kg/m3]
m:煙の発生に係る煙発生係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]
sm:居室からの煙の排出に係る排煙係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]
t:火災発生からの経過時間[s]
tsm :火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間[s]
そして、これら入力パラメータAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、t、tsmに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、火災発生を起点とする任意の経過時間tにおける煙層下端高さZを容易に求めることができる。
以下、各パラメータα、ρs、Cm、Csm、tsmについて説明する。また、式1の導出法については後述する。
(1)火災成長率α
居室等の火災空間の避難安全性能評価を行う場合、下式2に示すような時間t[s]の2乗に比例して大きくなる火源Q(発熱速度)[kW]を想定するのが一般的である。
ここで、上式2における比例定数α[kW/ s2]が、火災成長率αである。この火災成長率αは、例えば、想定される可燃物の燃焼実験の結果から算出されるか、又は、避難安全検証法(平成12年建告第1441号)に基づき下式3により算出される。
なお、αは、火災空間内の収納可燃物の燃焼による火災成長率[kW/s2]であり、火災空間内の家具等といった可燃物に応じて設定される。一方、αは、火災空間の内装材料の燃焼による火災成長率[kW/s2]であり、火災空間の壁および天井を構成する仕上げ材の不燃性を勘案して設定される。これら火災空間に係る諸条件と、火災成長率α、αの具体的数値との関係は、平成12年建告第1441号に対照して記載されており、これを参照して設定することができる。
(2)煙発生係数Cm
煙発生係数Cmは、火災から発生した燃焼ガスや煤等を含んだ熱気流が上昇する際に、周囲の空気を巻き込んで膨張する際の係数である。そして、その値としては、例えば、非特許文献3の「改訂版建築火災安全工学入門」に常数として示されているように、0.08や0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]が使用される。なお、安全性をより高めたい場合は前述の数値より大きい数値を使用しても良い。
(3)排煙開始時間tsm
排煙開始時間tsmは、火災発生から排煙設備が排煙開始するまでに要する時間[s]である。よって、排煙開始時間tsm は、例えば、火災発生から火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]以上の値、もしくは在室者の避難開始時間tstart[s]以上の値に設定される。
(4)排煙係数Csm
排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における排煙量me(sm)[kg/s]と、同排煙開始時点における火源発熱速度Qf(sm)[kW]と、同排煙開始時点における煙層下端高さZ(sm)[m]とに基づいて、下式4により算出される。
ここで、上式4のように、各パラメータme、Qf、Zの排煙開始時点における値me(sm)、Qf(sm)、Z(sm)を用いて排煙計数Csmを算出しているのは、次の理由による。
一般に火源発熱速度Qf[kW]や煙層下端高さZ[m]は時々刻々と変化するため、排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]も変化する。しかし、排煙量が法定風量より過剰に大きい場合を除けば、排煙係数Csmは時間の経過とともに徐々に大きくなると考えられるので、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)の排煙量me(sm)[kg/s]、同排煙開始時点の火源発熱速度Qf(sm)[kW]、同排煙開始時点の煙層下端高さZ(sm)[m]を用いて計算すれば安全側の想定となる。このため、排煙開始時点における各値me(sm)、Qf(sm)、Z(sm)を用いて排煙係数Csmを算出している。なお、排煙開始時点の煙層下端高さZ(sm)の代わりに火災空間の天井高さHfを用いて計算すればさらに安全側の想定となる。
なお、上式4中の排煙開始時点の排煙量me(sm) [kg/s]は、例えば、平成12年建告第1441号の避難安全検証法に規定される排煙風量E[m3/分]を用いて下式5により算出できる。ここで、ρsは煙層密度[kg/m3]であるが、排煙開始時点は火災の初期段階であることを勘案して1.0 kg/m3と設定しておけば支障ない。
また、上式4中の排煙開始時点の火源発熱速度Qf(sm)[kW]は、下式6により算出される。
更には、上式4中の排煙開始時点の煙層下端高さZ(sm) [m]は、下式7により算出される。
ここで、Aは火災空間の床面積[m]、Hは火災空間の天井高さ[m]、Cは煙発生係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3](=0.08又は0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3])、αは火災成長率[kW/s2]、ρは煙層密度[kg/m3]である。排煙開始時点は火災の初期段階であることを勘案して、ρには1.0 kg/m3を設定しておけば支障ない。
ちなみに、上式7は、次のような考え方に基づいて導出される。火災発生からの経過時間tが排煙開始時間tsm以下の場合や排煙設備が設置されていない場合は、排煙効果を期待できないので、排煙係数Csmは零となる。よって、その場合の煙層下端高さZの簡易予測式は、上記の式1における排煙係数Csmに零を入力したものとなり、つまり下式8のように表される。そして、同式8の経過時間tに、排煙開始時点の時間たる排煙開始時間tsmを代入すれば上式7が得られる。
(5)煙層の密度ρs
煙層の密度ρsは、例えば1.0[kg/m3]としておけば概ね安全側の計算結果が得られるので、1.0[kg/m3]として計算しても良い。但し、排煙設備が作動して以降は、煙層の密度ρsが1.0未満となる可能性があるので、望ましくは、煙層温度Ts[K]を用いて下式9により算出すると、より精度の高い予測が可能となる。
なお、式9の「min( , )」という演算記号の意味は、算出された353/Tの値と1.0とを比較し、小さい方の値を煙層の密度ρsにするという意味である。また、前者の「353/T」は、ρ×T=353(一定)という物理原則に則っている。
ここで、式9中の煙層温度T[K]の求め方の一例を説明する。
ある時間に火源より発生した熱量Qが、火源上の上昇気流に連行される空気量mp [kg/s](初期温度T)を煙層温度Tまで暖めるために使われる熱量および周壁への熱伝達により失われる熱量に分配されると仮定する、すなわち、下式10のエネルギー保存式が成り立つと仮定すると、煙層温度T[K]は下式11のように変形される。
ここで、Qは経過時間tにおける火源発熱速度[kW]、cは定圧比熱[kJ/kgK]、mpは経過時間tの時点における煙発生量[kg/s]、Aは煙層が接する部分の天井および周壁面積[m2]、hは経過時間tの時点の実効熱伝達率[kW/m2K]、Tは周囲空気温度[K]である。
上式11中の煙発生量mp[kg/s]は、避難安全上支障のある煙層下端高さ(限界煙層高さHlim)における煙発生量と仮定し、下式12により求めれば安全側の計算となる。また、上式11中の限界煙層高さHlimは1.8[m]とするのが一般的である。ここで、前述したように、Cは煙発生係数(=0.08又は0.076)[kg/kJ1/3m5/3s2/3]であり、Qは経過時間tの時点の火源発熱速度[kW]である。なお、火源発熱速度Qf[kW]は、前述の式2により計算される。
また、上式11中の熱伝達率h[kW/m2K] は、非特許文献3の「改訂版建築火災安全工学入門、p199」によれば、実効値として下式13により算定できる。ここで、λは天井(壁)材の熱伝導率[kW/mK]、ρは天井(壁)材の密度[kg/m3]、cは天井(壁)材の比熱[kJ/kgK]、tは経過時間[s]である。なお、火災の初期段階において式13は非常に大きな値をとることがあるため、上限値として0.015〜0.023[kW/mK]の任意値を設定するのが好ましい。
以上、第1実施形態に係る煙層下端高さの算定方法について説明してきたが、ここで、この算定方法の作用効果について説明する。
先ず、この算定方法では、前述の式1におけるAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、t、及び、tsmという入力パラメータに対して、該当する具体的数値を代入しさえすれば、煙層下端高さZを即座に算定することができる。よって、特に専門職でなくても簡単に煙層下端高さZを求めることが可能である。また、同式1は、排煙係数Csmや排煙開始時間tsmといった排煙に係る入力パラメータを有しているので、排煙設備の排煙効果も考慮して煙層下端高さを高い予測精度で算定可能となる。
図2は、式1が奏し得る予測精度向上効果を検証するためのグラフである。縦軸には、算定結果である煙層下端高さZ[m]をとっており、また横軸には、火災発生からの経過時間t[s]をとっている。なお、同グラフには、比較のため、式1による算定結果以外に上述の避難安全検証法による算定結果とコンピュータモデルによる算定結果もプロットしている。ここで、コンピュータモデルによる算定結果は、文献(久次米真美子, 田中哮義:必要排煙量に基づいた居室避難安全評価手法, 日本建築学会環境系論文集 第586号, p1-8, 2004)に示された詳細計算の結果であり、つまり、排煙設備による排煙効果を加味して厳密に計算した謂わば厳密解(最も正確な計算結果)と言えるものである。
また、何れのグラフも算定の前提条件として、火災成長率α=0.0125kW/s2、床面積Af=1000m、天井高さH=2.8m、機械排煙設備(排煙風量W=500m3/分)を用いているが、コンピュータモデルおよび式1に関しては、更に、排煙開始時間tsmを215[s]に設定している。
図2を参照すると、避難安全検証法では、経過時間tの全範囲に亘って、厳密解たるコンピュータモデルの算定結果と大きく乖離しているが、これに対して、第1実施形態に係る式1によれば、コンピュータモデルの厳密解とほぼ同じ算定結果が得られており、予測精度が飛躍的に向上しているのがわかる。また、避難安全検証法では、煙層下端高さZが1.9[m]辺りからコンピュータモデルよりも高値に予測されており、つまり、危険側に予測されているが、本第1実施形態に係る式1によれば、煙層下端高さZは、2.4[m]から少なくとも1.8[m]までにかけては安全側に予測されている。よって、このことから、同式1を安心して建築物の火災時の避難安全性能の評価に使用可能と考えられる。
ところで、上述の式1による煙層下端高さZの算定方法は、パーソナルコンピュータに代表される一般的なデータ処理装置(算定システムに相当)を用いて容易に実行することができる。例えば、前記データ処理装置としては、中央処理装置(CPU:数値演算処理部に相当)、ハードディスク装置等のデータ記録装置、モニタ等の出力装置、キーボード等の入力装置、およびCD−ROMドライブ装置等のデータ読み取り装置を備えた通常構成のパーソナルコンピュータを用いることができる。
そして、そのデータ記録装置には、予め、前述の式1を計算するための演算プログラムが格納されているとともに、前記CPUは当該演算プログラムを読み込んで実行する。つまり、前記入力装置によって入力された具体的数値を、式1中のAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、t、及び、tsmという入力パラメータに代入して煙層下端高さZを計算し、そして、この計算結果たる煙層下端高さZをモニタ表示する。
ここで、上記の演算プログラムとしては、米マイクロソフト社「Microsoft Excel」(商標)等の汎用の表計算ソフト等を用いることができる。例えば、前記「Microsoft Excel」を起動すれば、モニタには、縦横に配された多数のセルからなるワークシートが表示され、設計者は、前記式1を所定のセル(参照元のセル)に入力する。この時、式1を構成する入力パラメータは、前記所定のセル(参照元のセル)内で計算可能にすべく、入力パラメータの具体的数値を入力するための参照先のセルに関連付けられている。よって、参照先のセルに具体的数値が入力されれば、この具体的数値に基づいて前記式1が自動計算されて、計算結果たる煙層下端高さZが各参照元のセルに書き込まれ、モニター表示されるようになっている。
尚、このような演算プログラムは、予めデータ記録装置に記録しておいても良いし、またはCD−ROM等のデータ記録媒体に記録された演算プログラムを、前記データ読み取り装置によって読み取るようにしても良い。更には、前記パーソナルコンピュータをインターネット等の電気通信回線に接続して、この回線に接続されたサーバーコンピュータからダウンロードするようにしても良い。
===第1実施形態の算定方法を用いた建築物の火災時の避難安全性能の評価方法===
図3は、上述の式1を用いて火災時の避難安全性能を評価する方法のフローチャートである。なお、この評価は、建築物の設計段階、または既存建築物のプラン変更もしくは用途変更段階等において適宜行われる。
この評価方法では、火災の発生した居室から在室者が避難完了するまでの間に、火災により発生した煙が避難安全上支障のある高さ(限界煙層高さHlim[m])まで降下するか否かによって安全性を判定する。ここで、煙層下端高さZは時間tの経過とともに徐々に降下するのが一般的である。よって、図4に示すように、避難完了時点(避難完了時間tescape[s])の煙層下端高さZescapeと限界煙層高さHlimの大小関係のみを比較すれば安全性を評価できる。なお、限界煙層高さHlimには、通常1.8[m]が使用される。また、避難完了時間tescape[s]の算定方法については後述する。
以下、この避難安全性能の評価方法の具体的手順について図3を参照しつつ説明する。
先ず、ステップS101では、建築物の設計図等から算定条件を取得する。すなわち、居室(火災空間)の床面積A、天井高さH、火災成長率α、煙発生係数C、排煙条件(排煙方式、排煙口寸法等)などを取得する。なお、煙発生係数Cについては、予め、既定の常数として0.08又は0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]を式1中に登録しておいても良い。
次にステップS102では、排煙開始時間tsmを算定する。この排煙開始時間tsmとしては、上述したように、火災感知器が火災を検知した時間tdetect[s]や在室者の避難開始時間tstart[s]等に基づいて、これらの値と同値またはこれらの値よりも大きな値が設定される。
次にステップS103では、前述の式4〜式7に基づいて排煙係数Csmを算定する。なお、この算定に必要な床面積A、天井高さH、火災成長率α、排煙風量E、排煙開始時間tsmなどは、上記ステップS101で入力された各値や、上記ステップS102で算定された排煙開始時間tsmが使用される。
次にステップS104では、避難完了時間tescapeを算定する。この避難完了時間tescapeは、火災発生から在室者が避難完了するまでに要する時間[s]であり、例えば、平成12年建告第1441号の避難安全検証法に規定される方法を用いて、避難開始時間tstart[s]と歩行時間ttravel[s]と扉通過時間tqueue[s]の総和として計算される。
次にステップS105では、前述の式9〜式13に基づいて、避難完了時点(避難完了時間tescape)の煙層の密度ρsを算定する。なお、この算定の際には、式9〜式13に係る経過時間tには、上記の避難完了時間tescapeが代入される。
次にステップS106では、避難完了時点の煙層下端高さZescapeを算定する。この算定は、前述の式1の各パラメータα、A、H、C、tsm、Csm、ρに、上述のステップS101〜S105で得られた数値を代入するとともに、同式1の経過時間tに避難完了時間tescapeを代入することによりなされる。
そうしたら、最後のステップS107では、算定された煙層下端高さZescapeを、既定の前記限界煙層高さHlimと比較し、前記Zescapeが限界煙層高さHlim以上の場合には、建築物は安全であると判定して、避難安全性能の評価を終了する。他方、前記Zescapeが限界煙層高さHlim未満の場合には、建築物は危険であると判定して、建築物を設計変更した後、ステップS101へ戻り、その変更図面に基づく新たな算定条件の下で、上述のステップS102〜ステップS107を繰り返す。
===第1実施形態の算定方法に係る式1の導出法について===
ここで上述の式1の導出法について説明する。先ず、図1に示すような、天井高さが一定で、垂れ壁等の煙の流動の妨げとなるもののない室(平面形状は問わない)において、室内が煙層と空気層とに二層化した状態について考えると、排煙設備作動時の煙層の質量保存式は、煙層体積をV[m3]、煙等発生量をm[kg/s]、有効排煙量をm[kg/s]とすると、次のように表せる。
ここで、煙層密度ρ[kg/m3]は煙層の温度によって変化するが、以下ではρを一定と見なして式14を展開する。
煙層体積Vは、火災室床面積A[m3]、天井高さH[m]、煙層下端高さZ[m]を用いて、下式15のように表せる。
従って、式14は、下式16のように変形できる。
ここで、非特許文献3の「改訂版建築火災安全工学入門」に記載されているように、煙層に貫入する煙発生量m[kg/s]が下式17により与えられる場合には、下式17を上式16に代入することにより下式18を得る。
なお、C[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、上述した煙発生係数である。
上式18を解析的に解くことは出来ないが、排煙設備作動後は煙発生係数Cが見かけ上小さくなると考えると式18は、下式19のように表すことができる。
ここでCsm [kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、下式20により定義される、排煙の効果により煙等発生量が見かけ上減少する分の排煙係数である。
従って、上式19を変形することにより、下式21を得る。
ところで、排煙係数Csmは、排煙量me、発熱速度Qおよび煙層下端高さZの変動に伴い時々刻々と変化するが、ここでは、排煙係数Csmは、排煙設備の起動時たる排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における排煙量me、発熱速度Q、および煙層下端高さZを用いて安全側に与えられるものと仮定して以降の議論を行う。
また、ここでは、火災に係る火源を、時間tの二乗に比例して成長する火源と考え、これによれば、発熱速度Qは下式22により与えられると仮定して以降の議論を行う。
なお、α[kW/s2]は、前述した火災成長率(火災の拡大速度を表す係数)である。
排煙設備の起動以前はCsm=0であるので、上式22を上式21に代入し積分すると、下式23が得られる。
そして、火災発生時点では(t0,Z0)=(0,H)であるので、上式23は下式24のように書ける。
さらに、上式24を変形すると、排煙設備の起動以前における煙層下端高さの簡易予測式は、下式25のように書ける。
従って、排煙設備の起動時点たる排煙開始時点t=tsmにおける煙層下端高さZ(sm)は、下式26のように書ける。
同様に、排煙設備の起動以降たる排煙開始時点以降(t≧tsm)において上式21に上式22を代入し積分すると、下式27となる。更に、下式27において(t0, Z0)=(tsm,Z(sm))であるので、下式28を得る。
従って、排煙設備起動後の時間tにおける煙層下端高さZは、上式28を変形して、下式29のように書ける。
また、上式29は、上式26を代入することにより、下式30のように変形できる。
以上より、任意の時間tにおける煙層下端高さZは、下式31のように表せる。
この式31の第二式が、排煙設備作動以降の煙層下端高さZを与える簡易予測式、つまり、上述した式1である。
また、上式31を変形することで、煙層下端高さがZとなる時間tを求める式は、下式32のように書ける。
ここでZ(sm)は、下式33(式26と同じ)により表される、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における煙層下端高さである。
===第2実施形態===
第2実施形態の算定方法は、火災により生じる煙層下端高さが所定高さZ[m]に達するまでの経過時間t[s]の算定方法であり、具体的には、下式34のように表される。
なお、当該式34は、第1実施形態に係る式1を経過時間tについて解いたものであり、つまり、上述の式32の第二式と同じものである。
そして、上式34が有する入力パラメータAf、Hf、α、ρs、Cm、Csm、Z、tsmに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、火災発生時点から煙層下端高さが所定高さZに到達するまでの経過時間t[s]を容易に求めることができる。
ちなみに、上述の式34による経過時間tの算定方法は、第1実施形態の算定方法で説明したのと同構成のデータ処理装置を用いて実行できるのは言うまでもない。
===第2実施形態の算定方法を用いた建築物の火災時の避難安全性能の評価方法===
図5は、上述の式34を用いて火災時の避難安全性能を評価する方法のフローチャートである。なお、この評価も、建築物の設計段階、または既存建築物のプラン変更もしくは用途変更段階等において適宜行われる。
この評価方法では、火災により発生した煙が避難安全上支障のある高さ(限界煙層高さHlim[m])まで降下する時間tlimと、避難に要する時間である避難完了時間tescapeとを比較することにより安全性を判定する。
以下、この避難安全性能の評価方法の具体的手順について図5を参照しつつ説明する。
先ず、ステップS201では、建築物の設計図等から算定条件を取得する。すなわち、居室(火災空間)の床面積A、天井高さH、火災成長率α、煙発生係数C、排煙条件(排煙方式、排煙口寸法等)などを取得する。なお、煙発生係数Cについては、予め、既定の常数として0.08又は0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]を式34中に登録しておいても良い。
次にステップS202では、限界煙層高さHlim(避難安全上支障のある高さ)を設定する。この高さHlimは、例えば1.8[m]を基本とするが、安全性を高める必要がある場合にはそれに応じて適宜1.9[m]や2.0[m]などと大きな値としても良い。
次にステップS203では、煙層密度ρsを設定する。この煙層密度ρsは、居室の大きさや可燃物量などに応じて、1.0[kg/m3]、0.7[kg/m3]、0.4[kg/m3]に設定する。なお、これらの数値1.0[kg/m3]、0.7[kg/m3]、及び0.4[kg/m3]は、それぞれ、非特許文献3の改訂版建築火災安全工学入門、非特許文献2の平成12年建告第1441号、及び前述の文献(久次米真美子, 田中哮義:必要排煙量に基づいた居室避難安全評価手法, 日本建築学会環境系論文集 第586号, p1-8, 2004)に記載もしくは前提として使用されている。
次にステップS204では、排煙開始時間tsmを算定する。なお、この算定方法は、上述した第1実施形態に係る評価方法のステップS102と同じである。
次にステップS205では、排煙開始時点(排煙開始時間tsm)における煙層下端高さZ(sm)を算定する。この算定は、前述の式32の第一式又は式8の各パラメータα、A、H、C、tsm、ρに、上述のステップS201〜S204で得られた数値を代入するとともに、同式32又は式8の経過時間tに排煙開始時間tsmを代入することによりなされる。
次にステップS206では、算定された排煙開始時点における煙層下端高さZ(sm)を、ステップS202で設定された限界煙層高さHlimと比較し、前記Z(sm)が限界煙層高さHlim以上の場合には、「当該建築物は問題無し」と一次判定して、次のステップS207へ移行する。他方、前記Z(sm)が限界煙層高さHlim未満の場合には、排煙設備の作動前に煙層高さが避難上支障のある高さに達してしまうこととなるので、「当該建築物は問題有り」と判定して建築物を設計変更した後、ステップS201へと戻る。そして、その変更図面に基づく新たな算定条件の下で、上述のステップS202〜ステップS206を繰り返す。
そして、ステップS206にて「問題無し」と一次判定されてステップS207へ移行したら、ステップS207では、排煙係数Csmを算定する。この算定方法は、上述した第1実施形態に係る評価方法のステップS103と同じである。
次にステップS208では、煙層下端高さが前記限界煙層高さHlimに達するまでの限界時間tlimを算定する。この算定は、前述の式34の各パラメータα、A、H、C、tsm、Csm、ρに、上述のステップS201〜S207で得られた数値を代入するとともに、同式34の煙層下端高さZに限界煙層高さHlimを代入することによりなされる。
次にステップS209では、避難完了時間tescapeを算定する。この避難完了時間tescapeは、火災発生から在室者が避難完了するまでに要する時間[s]であり、その算定方法は、上述した第1実施形態に係る評価方法のステップS106と同じである。
そうしたら、最後のステップS210では、ステップS208で算定された前記限界時間tlimを、ステップS209で算定された前記避難完了時間tescapeと比較し、前記tlimが避難完了時間tescape以上の場合には、建築物は安全であると判定して、避難安全性能の評価を終了する。他方、前記tlimが避難完了時間tescape未満の場合には、建築物は危険であると判定して、建築物を設計変更した後、ステップS201へ戻り、その変更図面に基づく新たな算定条件の下で、上述のステップS202〜ステップS210を繰り返す。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法を行う主体について特に触れていないが、第1実施形態の算定方法で説明したのと同構成のデータ処理装置が、図3又は図5のフローを実行するようにしても良い。ここで、データ処理装置のデータ記録装置には、予め、上記の図3又は図5のフローを実行するための演算プログラムが格納されているとともに、中央処理装置(CPU)は当該演算プログラムを読み込んで実行するのは言うまでもない。
天井に排煙口(排煙設備)を備えた建築物の居室における火災モデル図である。 第1実施形態の算定方法に係る式1が奏し得る予測精度向上効果を検証するためのグラフである。 第1実施形態の算定方法に係る式1を用いて火災時の避難安全性能を評価する方法のフローチャートである。 避難完了時点の煙層下端高さZescapeと限界煙層高さHlimの説明図である。 第2実施形態の算定方法に係る式34を用いて火災時の避難安全性能を評価する方法のフローチャートである。
符号の説明
10 排煙口(排煙設備)

Claims (11)

  1. 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する方法であって、
    前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、火災発生からの経過時間t[s]、及び、火災発生から排煙開始までに要する排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により前記煙層の下端高さZ [m]を算定することを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
  2. 請求項1に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
    前記排煙開始時間tsm[s]は、
    前記火災発生から前記居室の火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]、又は、前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を開始するまでに要する時間tstart[s]以上の値とすることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
    前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、
    排煙開始時点における単位時間当たりの排煙量me(sm)[kg/s]、排煙開始時点における火源の発熱速度Qf(sm)[kW]、及び、排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)[m]を用いて、下式により算出されることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
  4. 請求項3に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
    前記排煙開始時点における煙層の下端高さZ(sm)[m]は、
    前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、及び、前記排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により算定されることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
    前記煙層の密度ρs[kg/m3]は、前記経過時間t[s]における前記煙層の温度Ts[K]を用いて、下式により算定されることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法に基づいて、建築物の火災時の避難安全性能を評価する方法であって、
    前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を完了するまでの時間をtescapeとした場合に、前記経過時間tに前記時間tescapeを代入することにより、避難完了時点の煙層の下端高さZescapeを算定するステップと、
    算定された前記煙層の下端高さZescapeと、避難安全上の限界煙層高さHlimとを比較するステップと、を備えていることを特徴とする建築物の火災時の避難安全性能の評価方法。
  7. 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が発生してから、該火災の煙により生じる煙層の下端高さが所定高さZ[m]に達するまでの経過時間t[s]の算定方法であって、
    前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、及び、火災発生から排煙開始までに要する排煙開始時間tsm[s]を用いて、下式により前記経過時間t[s]を算定することを特徴とする火災発生から煙層の下端高さが所定高さに達するまでの経過時間の算定方法。
  8. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の算定方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  9. 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する算定システムであって、
    数値演算を行う数値演算処理部を有し、
    前記数値演算処理部は、
    下式における入力パラメータとしての前記居室の床面積Af[m2]、前記居室の天井高さHf[m]、前記火災の火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、火災発生からの経過時間t[s]、及び、火災発生から煙の排出開始までの排煙開始時間tsm[s]に、それぞれ、対応する数値を代入することにより、前記煙層の下端高さZ [m]を算定することを特徴とする煙層の下端高さの算定システム。
  10. 請求項6に記載の評価方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  11. 請求項7に記載の算定方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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