JP5233448B2 - 煙層の下端高さの算定方法、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法、この算定方法又は評価方法を実行するプログラム、及び煙層の下端高さの算定システム - Google Patents
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Description
「BRI2002:二層ゾーン建物内煙流動モデルと予測計算プログラム」、社団法人 建築研究振興協会、2003、P1-4 「建設省12年建告第1441号」、P302-315 田中哮義著「改訂版建築火災安全工学入門」日本建築センター、2002、p22-23
排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する方法であって、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式1−1により与えられるとともに、
火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm [s]が前記移行時間tc[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記排煙開始時間tsm [s]以上の場合において、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記火災成長率α[kW/s2]、前記移行時間tc[s]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式1−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙開始時間tsm[s]、前記移行時間tcにおける煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式1−3により算出することを特徴とする。
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式2−1により与えられるとともに、
前記移行時間tc[s]が、火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記移行時間tc[s]以上の場合において、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、前記火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙開始時間tsm[s]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式2−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、及び前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式2−3により算出することを特徴とする。
更には、上記式2−3及び上記式2−2におけるAf、Hf、α、Qc、ρs、Cm、Csm、t、tc、及びtsmという入力パラメータに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、前記煙層の下端高さZを簡単に算定することができる。
前記移行時間tc[s]は、
前記火災発生から前記居室内のスプリンクラー設備が作動するまでに要する時間tsp[s]、もしくは、前記火災発生から、前記火源に係る可燃物表面全体に燃焼が拡大するまでに要する時間tfuel[s]、もしくは、前記火災発生から、前記火災が換気支配火災となるまでに要する時間top[s]であることを特徴とする。
前記排煙開始時間tsm [s]は、
前記火災発生から前記居室の火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]、又は、前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を開始するまでに要する時間tstart[s]以上の値とすることを特徴とする。
前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、
単位時間当たりの排煙量me[kg/s]、火源の発熱速度Qf[kW]、煙層の下端高さZ[m]を用いて、
上式5−1により算出することを特徴とする。
前記煙層の密度ρs[kg/m3]は、前記経過時間t[s]における前記煙層の温度Ts[K]を用いて、
上式6−1により算出されることを特徴とする。
前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を完了するまでの時間をtescapeとした場合に、前記経過時間tに前記時間tescapeを代入することにより、避難完了時点の煙層の下端高さZescapeを算定するステップと、
算定された前記煙層の下端高さZescapeと、避難安全上の限界煙層高さHlimとを比較するステップと、を備えていることを特徴とする。
上記請求項7に示す発明によれば、前記避難完了時点の煙層の下端高さZescapeと、前記限界煙層高さHlimとを単純に大小比較すれば、建築物の火災時の避難安全性能を評価することができる。
上記請求項8に示す発明によれば、コンピュータ等のデータ処理装置によって前記算定方法を実行することができる。また、インターネットなどの電気通信回線を利用して前記プログラムを頒布することができて、もって希望者は前記算定方法を容易に利用可能となる。
数値演算を行う数値演算処理部を有し、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式9−1により与えられるとともに、
火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm [s]が前記移行時間tc[s]以上で、かつ火災発生からの経過時間t[s]が前記排煙開始時間tsm [s]以上の場合において、
前記数値演算処理部は、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記火災成長率α[kW/s2]、前記移行時間tc[s]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式9−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙開始時間tsm[s]、前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式9−3により算出することを特徴とする。
上記請求項9に示す発明によれば、請求項1と同様の作用効果を奏することができる。
数値演算を行う数値演算処理部を有し、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式10−1により与えられるとともに、
前記移行時間tc[s]が、火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記移行時間tc[s]以上の場合において、
前記数値演算処理部は、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、前記火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙開始時間tsm[s]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式10−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、及び前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式10−3により算出することを特徴とする。
上記請求項10に示す発明によれば、請求項2と同様の作用効果を奏することができる
本実施形態に係る煙層の下端高さの算定方法は、例えば、建築物の設計段階、または既存建築物のプラン変更もしくは用途変更段階において、建築物の火災時の避難安全性能を評価する際に使用される。
ここで、上式2中のHcは、前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHcであって、下式3で表され、
また、それ以外のパラメータの意味は、次のとおりである。
Af:居室の床面積[m2]
Hf:居室の天井高さ[m]
α:成長火源の火災成長率[kW/ s2]
Qc:定常火源の発熱速度[kW]
Cm:煙の発生に係る煙発生係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]
Csm:居室からの煙の排出に係る排煙係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]
t:火災発生からの経過時間[s]
tc:成長火源から定常火源へと移行する移行時間[s]
tsm:火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間[s]
ρs:煙層の密度[kg/m3]
そして、これらパラメータAf、Hf、α、Qc、ρs、Cm、Csm、t、tc、tsmに、該当する具体的数値を代入しさえすれば、ケース1の場合の煙層下端高さZを、時間範囲C(tsm≦t)内の任意の経過時間tに関して容易に求めることができる。
ここで、上式4中のHcは、前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHcであって、下式5で表され、
また、それ以外のパラメータの意味は、前述したとおりである。
以下、各パラメータα、Qc、ρs、Cm、Csm、tc、tsmについて説明する。また、本実施形態に係る式2及び式4の導出法については後述する。
前述したように、出火当初の火源としては、下式10に示すような時間t[s]の2乗に比例して大きくなる成長火源Qf(発熱速度)[kW]を想定している。
そして、上式10における比例定数α[kW/ s2]が、火災成長率αである。この火災成長率αは、例えば、想定される可燃物の燃焼実験の結果から算出されるか、又は、避難安全検証法(平成12年建告第1441号)に基づき下式11により算出される。
なお、αfは、火災空間内の収納可燃物の燃焼による火災成長率[kW/s2]であり、火災空間内の家具等といった可燃物に応じて設定される。一方、αmは、火災空間の内装材料の燃焼による火災成長率[kW/s2]であり、火災空間の壁および天井を構成する仕上げ材の不燃性を勘案して設定される。これら火災空間に係る諸条件と、火災成長率αf、αmの具体的数値との関係は、平成12年建告第1441号に対照して記載されており、これを参照して設定することができる。
定常火源の発熱速度Qc[kW]は、スプリンクラー設備作動時の発熱速度Qsp[kW]、可燃物表面全体へ燃焼が拡大した時の発熱速度Qfuel[kW]または換気支配火災時における発熱速度Qop[kW]の何れかの最小値を用いればよい。
スプリンクラー設備作動時の発熱速度Qsp[kW]は、文献(田中哮義著「改訂版建築火災安全工学入門」、日本建築センター、2002、p174-175)によれば、火源からスプリンクラーヘッドまでの水平距離r[m]、スプリンクラー設備の作動温度Tsp[K]、火災空間の天井高さHf [m]を用いて、下式12により算出できる。
なお、定常火源の発熱速度Qc[kW]が、下式15である場合には、移行時間tc[s]は、下式16により算出できる。
この移行時間tcには、例えば、前記火災発生から、前記居室内のスプリンクラー設備が作動するまでに要する時間tsp[s]、もしくは、前記火災発生から、前記火源に係る可燃物表面全体に燃焼が拡大するまでに要する時間tfuel[s]が設定される。
そして、これらの時間tsp又はtfuelが設定されれば、安全側の想定となる。これは、スプリンクラー設備が設置されている場合や可燃物量が少ない場合においては、スプリンクラー設備が作動した時点もしくは可燃物表面全体に燃焼が拡大した時点の発熱速度が最大値であり、それ以降は鎮火に向かうからであり、それ故、計算上はスプリンクラー設備が作動した時点もしくは可燃物表面全体に燃焼が拡大した時点で発熱速度が一定(火災拡大が止まる)になると考えておけば安全側の想定となる。
煙発生係数Cmは、火災から発生した燃焼ガスや煤等を含んだ熱気流が上昇する際に、周囲の空気を巻き込んで膨張する際の係数である。そして、その値としては、例えば、非特許文献3の「改訂版建築火災安全工学入門」に常数として示されているように、0.08や0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]が使用される。ただし、スプリンクラー設備が作動した場合は通常時の1.6〜2.2倍となるという報告もある(文献:桑名裕太他:スプリンクラー設備作動時の区画内煙性状〜火災プルームの測定および考察〜,日本建築学会大会学術講演梗概集(A-2),pp.245-246,2007)。
排煙開始時間tsmは、火災発生から排煙設備が排煙開始するまでに要する時間[s]である。よって、排煙開始時間tsm は、例えば、火災発生から火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]以上の値、もしくは在室者の避難開始時間tstart[s]以上の値に設定される。
排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、単位時間当たりの排煙量me [kg/s]と、火源発熱速度Qf[kW]と、煙層下端高さZ[m]とに基づいて、下式17により算出される。
なお、排煙開始時点の煙層下端高さZ(sm)[m]の代わりに火災空間の天井高さHf[m]を用いて算出すればより安全側の想定となる。
他方、排煙開始時間tsm[s]が移行時間tc[s]以下の場合、つまり前記ケース2の場合は、下式22により算出される。
ここで、Afは火災空間の床面積[m2]、Hfは火災空間の天井高さ[m]、Cmは煙発生係数[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3](=0.08又は0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3])、αは火災成長率[kW/s2]、ρsは煙層の密度[kg/m3]である。排煙開始時点は火災の初期段階であることを勘案して、ρsには1.0 kg/m3を設定しておけば支障ない。
なお、上式21は、前述の式7の経過時間tに、排煙開始時点の時間たる排煙開始時間tsmを代入したものであり、また、上式22は、前述の式8の経過時間tに、排煙開始時点の時間たる排煙開始時間tsmを代入したものである(図4A及び図4Bを参照)。
煙層の密度ρsは、例えば1.0[kg/m3]としておけば概ね安全側の計算結果が得られるので、1.0[kg/m3]として計算しても良い。但し、排煙設備が作動して以降は、煙層の密度ρsが1.0未満となる可能性があるので、望ましくは、煙層温度Ts[K]を用いて下式23により算出すると、より精度の高い予測が可能となる。
なお、式23の「min( , )」という演算記号の意味は、算出された353/Tsの値と1.0とを比較し、小さい方の値を煙層の密度ρsにするという意味である。また、前者の「353/Ts」は、ρs×Ts=353(一定)という物理原則に則っている。
ある時間に火源より発生した熱量Qfが、火源上の上昇気流に連行される空気量mp [kg/s](初期温度T∞)を煙層温度Tsまで暖めるために使われる熱量および周壁への熱伝達により失われる熱量に分配されると仮定する、すなわち、下式24のエネルギー保存式が成り立つと仮定すると、煙層温度Ts[K]は下式25のように変形される。
ここで、Qfは経過時間tにおける火源発熱速度[kW]、cpは定圧比熱[kJ/kgK]、mpは経過時間tの時点における煙発生量[kg/s]、Awは煙層が接する部分の天井および周壁面積[m2]、hkは経過時間tの時点の実効熱伝達率[kW/m2K]、T∞は周囲空気温度[K]である。
例えば、前述の式3や式5を用いて、前記移行時間tc[s]の煙層下端高さHcを求める際に、同式3や式5式中の煙層の密度ρsに対して、上述の式23により求めた値を代入しても良い。なお、この場合には、上述の式23の計算に必要なパラメータの経過時間tに対して、前記移行時間tcが代入される。例えば、式23に係る煙層温度Tsに対して、移行時間tcにおける煙層の温度Tsが代入等される。
他方、前述した排煙係数Csmの算定において、排煙開始時間tsmの煙層の密度ρsを算定する場合には、上述の式23の計算に必要なパラメータの経過時間tに対して、前記排煙開始時間tsmが代入等される。
先ず、この算定方法では、スプリンクラー設備の作動等によって前記経過時間tの途中から火災の拡大が抑制されるという現象を、前記移行時間tcの前後で発熱速度Qfの算出式を二式に場合分けすることにより模擬している(前記式1を参照)。そして、この式1を織り込んで、前述のケース1(tc≦tsm)場合の煙層の下端高さZの簡易予測式として前記式2を規定し、また、前述のケース2(tsm≦tc)の場合の同簡易予測式として前記式4を規定している。よって、式2及び式4に基づいて計算すれば、前記火災の拡大の抑制現象を考慮した煙層の下端高さZの算定を、高い精度で行うことができる。
図6は、上述の式2又は式4を用いて火災時の避難安全性能を評価する方法のフローチャートである。なお、この評価は、建築物の設計段階、または既存建築物のプラン変更もしくは用途変更段階等において適宜行われる。
先ず、ステップS101では、建築物の設計図等から算定条件を取得する。すなわち、居室(火災空間)の床面積Af、天井高さHf、火災成長率α、煙発生係数Cm、排煙条件(排煙方式、排煙口寸法等)などを取得する。なお、煙発生係数Cmについては、予め、既定の常数として0.08又は0.076[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]を式2又は式4中に登録しておいても良い。
<<<基本方程式>>>
ここで上述の式2及び式4の導出法について説明する。先ず、図2に示すような、天井高さが一定で、垂れ壁等の煙の流動の妨げとなるもののない室(平面形状は問わない)において、室内が煙層と空気層とに二層化した状態について考えると、排煙設備作動時の煙層の質量保存式は、煙層体積をV[m3]、煙等発生量をmp[kg/s]、有効排煙量をme[kg/s]とすると、下式31のように表せる。
ここで、煙層の密度ρs[kg/m3]は煙層の温度によって変化するが、以下ではρsを一定と見なして式31を展開する。
従って、式31は、下式33のように変形できる。
なお、Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、上述した煙発生係数である。
ここでCsm [kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、下式37により定義される、排煙の効果により煙等発生量が見かけ上減少する分の排煙係数である。
従って、上式36を変形することにより、下式38を得る。
想定火源としては、前述したように、時間の二乗に比例して成長し、且つ、ある時間tcを境に発熱速度が一定となる複合火源を扱う。よって、想定火源の発熱速度Qfは下式39により与えられる。
このため、設定した移行時間tc[s]と排煙開始時間tsm[s]との大小関係により、それぞれ異なる煙層下端高さの簡易予測式が与えられる。よって、以下では、前述のケース1(tc≦tsm)と、ケース2(tsm≦tc)のそれぞれについて、簡易予測式の導出過程の説明を行う。
このケース1は、火源の定常状態移行後に排煙が開始される場合である。本予測手法を用いて煙層下端高さを予測する場合、煙層下端高さを求めたい時間たる前記経過時間t、火源の移行時間tc、排煙開始時間tsmの大小関係によって場合分けを行う必要がある。そして、移行時間tcと排煙開始時間tsmとの関係をグラフで表すと、図4Aのようになる。つまり、t≦tcたる時間範囲Aと、tc≦t≦tsmたる時間範囲Bと、tsm≦tたる時間範囲Cとで、それぞれ簡易予測式が与えられる。
時間範囲A(t≦tc)においては、火源の発熱速度は上式39の第一式によって表すことができる。排煙設備の起動以前はCsm=0であるので、上式39の第一式を前述の式38に代入し積分すると、下式40を得る。
そして、火災発生時点では(t0,Z0)=(0,Hf)であるので、上式40は下式41のように書ける。
従って、上式41を変形すると、経過時間tにおける煙層下端高さZは、下式42のように書ける。
すなわち、時間範囲A(t≦tc)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は上式42で与えられる。
時間範囲B(tc≦t≦tsm)においては、火源の発熱速度は前述の式39の第二式によって表すことができる。また、排煙設備の起動以前たる排煙開始前はCsm=0であるので、この式39の第二式を前述の式38に代入し積分すると、下式43を得る。
ここで、火源の移行時間tcにおける煙層下端高さをHcとおくと、移行時間tcでは(t0,Z0)=(tc,Hc)であるので、上式43は、下式44のように書ける。
従って、上式44を変形すると、経過時間tにおける煙層下端高さZは下式45のように書ける。
また、火源の移行時間tcにおける煙層下端高さHcは、上式42により、下式46のように書ける。
よって、上式45式は、上式46を代入することで下式47のように書ける。
すなわち、時間範囲B(tc≦t≦tsm)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は上式47で与えられる。
時間範囲C(tsm≦t)においては、火源の発熱速度は前述の式39の第二式によって表すことができる。また、排煙設備の起動以降はCsm≠0であるので、この式39の第二式を前述の式38に代入し積分すると、下式48を得る。
さらに、上式48において(t0, Z0)=(tsm,Zsm)であるので、下式49を得る。
また、排煙開始時間tsmにおける煙層下端高さZsmは、上式45により、下式50のように書ける。
ここで、上式49に上式50を代入し変形することにより、経過時間tにおける煙層下端高さZは下式51のように書け、また、下式51中のHcは、上式46により得られる。
よって、時間範囲C(tsm≦t)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は上式51で与えられる。そして、当該式51が、前述した式2であり、つまり、以上の導出過程をもって、式2が導出される。
このケース2は、排煙設備の起動後、つまり排煙開始後に火源が定常状態に移行する場合である。このケース2の場合においても同様に、煙層下端高さを求めたい時間たる前記経過時間t、移行時間tc、排煙開始時間tsmの大小関係によって場合分けを行う必要がある。そして、移行時間tcと排煙開始時間tsmとの関係をグラフで表すと、図4Bのようになる。つまり、t≦tsmたる時間範囲Aと、tsm≦t≦tcたる時間範囲Bと、tc≦tたる時間範囲Cとで、それぞれ簡易予測式が与えられる。
時間範囲A(t≦tsm)においては、成長火源且つ無排煙の条件なので、その煙層下端高さZは、前述の式42により表すことができる。すなわち、時間範囲A(t≦tsm)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は、上式42と同じ式である。
時間範囲B(tsm≦t≦tc)においては、火源の発熱速度は前述の式39の第一式によって表すことができる。また、排煙設備の起動以前たる排煙開始前はCsm=0であるので、この式39の第一式を前述の式38に代入し積分すると、下式52を得る。
火災発生時点では(t0,Z0)=(0,Hf)であるので、上式52は、下式53のように書ける。
また、排煙設備の起動時間たる排煙開始時点t=tsmにおける煙層下端高さZsmは、上式53により、下式54のように書ける。
さらに、上式55において(t0,Z0)=( tsm, Zsm)であるので、下式56を得る。
ここで、上式56を変形することにより、経過時間tにおける煙層下端高さZは、下式57のようにかけ、また、下式57のZsmに上式54を代入することにより、下式58を得る。
よって、時間範囲B(tsm≦t≦tc)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は上式58で与えられる。
時間範囲C(tc≦t)においては、火源の発熱速度は前述の式39の第二式によって表され、且つ、排煙設備の起動以降であってCsm≠0であるので、前述の式48と同様の条件である。よって、火源の移行時間tcにおける煙層下端高さをHcとおくと、(t0,Z0)=( tc, Hc)であるので、下式59を得る。
ここで上式59を変形すると、経過時間tにおける煙層下端高さZは、下式60のように書ける。
また、火源の移行時間tcにおける煙層下端高さHc は、上式58の経過時間tに前記tcを代入することにより得られる下式61によって求めることができる。
よって、時間範囲C(tc≦t)内の任意の経過時間tにおける煙層下端高さZの簡易予測式は上式60で与えられる。そして、当該式60が、前述した式4であり、つまり、以上の導出過程をもって、式4が導出される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、建築物の火災時の避難安全性能の評価方法を行う主体について特に触れていないが、本実施形態の算定方法で説明したのと同構成のデータ処理装置が、図6のフローを実行するようにしても良い。ここで、データ処理装置のデータ記録装置には、予め、上記の図6のフローを実行するための演算プログラムが格納されているとともに、中央処理装置(CPU)は当該演算プログラムを読み込んで実行するのは言うまでもない。
Claims (11)
- 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する方法であって、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式1−1により与えられるとともに、
火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm [s]が前記移行時間tc[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記排煙開始時間tsm [s]以上の場合において、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記火災成長率α[kW/s2]、前記移行時間tc[s]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式1−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙開始時間tsm[s]、前記移行時間tcにおける煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式1−3により算出することを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する方法であって、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式2−1により与えられるとともに、
前記移行時間tc[s]が、火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記移行時間tc[s]以上の場合において、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、前記火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙開始時間tsm[s]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式2−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、及び前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式2−3により算出することを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 請求項1又は2に記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記移行時間tc[s]は、
前記火災発生から前記居室内のスプリンクラー設備が作動するまでに要する時間tsp[s]、もしくは、前記火災発生から、前記火源に係る可燃物表面全体に燃焼が拡大するまでに要する時間tfuel[s]、もしくは、前記火災発生から、前記火災が換気支配火災となるまでに要する時間top[s]であることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 請求項1乃至3の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記排煙開始時間tsm [s]は、
前記火災発生から前記居室の火災感知器が火災を検知するまでに要する時間tdetect[s]、又は、前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を開始するまでに要する時間tstart[s]以上の値とすることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 請求項1乃至4の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]は、
単位時間当たりの排煙量me[kg/s]、火源の発熱速度Qf[kW]、煙層の下端高さZ[m]を用いて、
上式5−1により算出することを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 請求項1乃至5の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法であって、
前記煙層の密度ρs[kg/m3]は、前記経過時間t[s]における前記煙層の温度Ts[K]を用いて、
上式6−1により算出されることを特徴とする煙層の下端高さの算定方法。 - 請求項1乃至6の何れかに記載の煙層の下端高さの算定方法に基づいて、建築物の火災時の避難安全性能を評価する方法であって、
前記火災発生から前記居室内の在室者が避難を完了するまでの時間をtescapeとした場合に、前記経過時間tに前記時間tescapeを代入することにより、避難完了時点の煙層の下端高さZescapeを算定するステップと、
算定された前記煙層の下端高さZescapeと、避難安全上の限界煙層高さHlimとを比較するステップと、を備えていることを特徴とする建築物の火災時の避難安全性能の評価方法。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載の算定方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
- 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する算定システムであって、
数値演算を行う数値演算処理部を有し、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式9−1により与えられるとともに、
火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm [s]が前記移行時間tc[s]以上で、かつ火災発生からの経過時間t[s]が前記排煙開始時間tsm [s]以上の場合において、
前記数値演算処理部は、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記火災成長率α[kW/s2]、前記移行時間tc[s]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式9−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙開始時間tsm[s]、前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式9−3により算出することを特徴とする煙層の下端高さの算定システム。 - 排煙設備が設置された建築物の居室内で火災が生じた場合において、該火災の煙により形成される煙層の下端高さZ[m]を算定する算定システムであって、
数値演算を行う数値演算処理部を有し、
前記居室内の火源の発熱速度Qf[kW]が、前記火災の火災成長率α[kW/s2]、移行時間tc[s]、移行後の発熱速度Qc[kW]、及び火災発生からの経過時間t[s]を用いて、
上式10−1により与えられるとともに、
前記移行時間tc[s]が、火災発生から排煙開始までに要する時間たる排煙開始時間tsm[s]以上で、かつ前記経過時間t[s]が前記移行時間tc[s]以上の場合において、
前記数値演算処理部は、
前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]を、前記火災成長率α[kW/ s2]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記居室の床面積Af[m2]、火災による煙の発生に係る煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、前記排煙設備による前記居室からの煙の排出に係る排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙開始時間tsm[s]、及び前記居室の天井高さHf[m]を用いて、
上式10−2により算出し、
前記経過時間t[s]における煙層の下端高さZ[m]を、前記移行後の発熱速度Qc[kW]、前記煙層の密度ρs[kg/m3]、前記床面積Af[m2]、前記煙発生係数Cm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記排煙係数Csm[kg/kJ1/3/m5/3/s2/3]、前記移行時間tc[s]、及び前記移行時間tc[s]における煙層の下端高さHc[m]、及び前記経過時間t[s]を用いて、
上式10−3により算出することを特徴とする煙層の下端高さの算定システム。 - 請求項7に記載の評価方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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