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JP5320679B2 - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description

この発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、高速・低損失であるだけでなく、ソフトなスイッチング特性を兼ね備えたIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)およびその製造方法に関する。
電力用半導体装置として、600V、1200Vまたは1700V等の耐圧クラスのダイオードやIGBT等がある。近時、これらのデバイスの特性改善が進んでいる。電力用半導体装置は、高効率で省電力なコンバータ−インバータ等の電力変換装置に用いられており、回転モーターやサーボモーターの制御に不可欠である。
このような電力制御装置には、低損失で省電力であり、また高速、高効率であるという特性が要求されている。このような要求に対して、IGBTにおいては、慣用の半導体基板(たとえばシリコンウェハー)を研削等により薄くした後に、その研削面側から所定の濃度で元素をイオン注入し、熱処理をおこなう方法が公知である(下記特許文献1参照。)。近年、このような低コストな方法による素子の開発および製造が主流になりつつある。また、このような方法で製造されたIGBTのキャリア周波数は、1〜10kHz前後が一般的である(下記非特許文献1参照。)。
ここで、上述したIGBTの低損失化は、ターンオフ損失と導通損失(オン電圧)とのトレードオフを改善することによって実現されている。具体的には、N-ドリフト層中のキャリア濃度分布や、表面ゲート構造、N-ドリフト層厚などを改善することによって、ターンオフ損失とオン電圧とのトレードオフを向上させている(下記特許文献2〜4参照。)。N-ドリフト層中のキャリア濃度分布の改善とは、P+コレクタ層からの少数キャリアの注入を抑制させて、P+コレクタ層側のキャリア濃度を低下させるものである。また、表面ゲート構造の改善とは、トレンチゲート構造の採用である。また、N-ドリフト層厚の改善とは、耐圧が減少しない範囲でN-ドリフト層厚を薄くするものである。このうち、N-ドリフト層中のキャリア濃度分布の改善は、IGBTの低損失化に際して特に重要な要素である。
図18および図19は、従来型のIGBTの構成および特性を示す図である。図18に示す半導体装置は、エピタキシャルウェハーを用いて作製されたIGBTである。図18において半導体装置の断面図1800に示すように、高濃度の半導体基板であるPコレクタ層1804の一方の主面側に、N型のフィールドストップ層1803が形成されている。また、フィールドストップ層1803の表面には、N-ドリフト層1801が形成されている。フィールドストップ層1803およびN-ドリフト層1801は、Pコレクタ層1804の表面にエピタキシャル成長によって形成される。ここで、フィールドストップ層1803の厚さは15μm、N-ドリフト層1801の厚さは120μm、フィールドストップ層1803とN-ドリフト層1801の総厚Wdは135μmである。
また、N-ドリフト層1801の表面には、Pベース層1802が形成されている。Pベース層1802の表面には、エミッタ電極1805が形成されている。また、N-ドリフト層1801およびPベース層1802に接するように、ゲート絶縁膜1806およびゲート電極1807からなるMOSゲート構造が形成されている。さらに、Pベース層1802のうちエミッタ電極1805およびゲート絶縁膜1806に接する部分にN+エミッタ領域1808が形成されている。また、Pコレクタ層1804の他方の表面には、コレクタ電極1809が形成されている。
また、図18においてエミッタ電極1805からの距離−ネットドーピング濃度(log)および高注入ライフタイム(μs)の特性図1810に示すように、半導体装置のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1801、フィールドストップ層1803、Pコレクタ層1804の順に高い。また、N-ドリフト層1801のネットドーピング濃度は、Pベース層1802との界面ではほぼ0となっている。また、Pベース層1802のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1801との界面ではほぼ0となっているが、エミッタ電極1805に向かって高くなっており、エミッタ電極1805との界面ではN-ドリフト層1801のネットドーピング濃度よりも高くなっている。
また、図18の特性図1810に示すように、図18に示す半導体装置の高注入ライフタイム(電子のライフタイムと正孔のライフタイムとの和)τHLは、0.1μs以下である。また、両極性キャリア拡散長Laは、14μm以下である。ここで、両極性キャリア拡散長Laは、下記式(1)で与えられる。
Figure 0005320679
上記式(1)において、Daは両極性拡散係数である。Daは電子の拡散係数Dnとホールの拡散係数Dpを用いて下記式(2)で与えられる。
Figure 0005320679
図18に示す半導体装置のようなバイポーラパワーデバイスでは、オン状態の動作において、N-ドリフト層のドナー濃度より数桁高いオーダーの電子と正孔がN-ドリフト層に注入される(高注入状態)。このとき、電子と正孔の濃度(n,p)は電荷中性条件を満たし、ほぼ同数である(n=p)。このような高注入状態では、電子と正孔のクーロン相互作用(キャリア同士の散乱)がキャリアの移動度に対して大きく影響し、低注入状態と比較してキャリアの移動度が低下する。よって、バイポーラパワーデバイスのキャリアの拡散長を議論する上では、両極性拡散係数を用いて算出される両極性キャリア拡散長Laを用いて議論する必要がある。
また、キャリアのライフタイムについても同様に、高注入状態では、キャリアライフタイムのショックレー・リード・ホール(SRH)理論から、電子のライフタイムと正孔のライフタイムとを足した高注入ライフタイムを用いて議論する必要がある。
図18に示す半導体装置では、Pコレクタ層1804のボロンの濃度が高いため、注入抑制を十分におこなうことができない。このため、図18に示す半導体装置では、キャリアのライフタイムを制御してN-ドリフト層1801におけるキャリアの輸送効率を低下させている。
ここで、キャリアのライフタイム制御は、N-ドリフト層1801に、熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入することによっておこなわれる。フレンケル欠陥は、シリコンパワーデバイスにおいては、電子線の照射、ヘリウム原子核(アルファ線)やプロトン原子核などの荷電粒子の照射、半導体中で深い準位を形成する重金属(鉄、金、白金など)の拡散などによって形成することができる。たとえば、図18に示す半導体装置では、重金属の拡散によってフレンケル欠陥を導入している。
ここで、温度Tにおけるフレンケル欠陥の熱平衡密度Cは、下記式(3)で与えられる。なお、下記式(3)において、SFはフレンケル欠陥形成のエントロピー、EFはエンタルピー、kBはボルツマン定数である。温度Tが室温程度の場合、熱平衡密度Cは極めて低い値(1×1011atoms/cm3以下)であり、実質的に0と考えることができる。
C = exp(SF/kB)・exp(−EF/kBT) ・・・(3)
図19に示す半導体装置は、FZウェハーを用いて作製されたIGBTである。図18に示す半導体装置では、上述したライフタイム制御が原因でオン電圧が増加してしまうという問題があった。このような問題を解決するために、図19に示す半導体装置が開発された。
図19に断面図1900に示すように、図19に示す半導体装置は、図18に示す半導体装置と同様に、N-ドリフト層1901、Pベース層1902、N+フィールドストップ層1903、Pコレクタ層1904、エミッタ電極1905、ゲート絶縁膜1906およびゲート電極1907からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域1908、コレクタ電極1909が形成されている。N-ドリフト層1901の厚さは100μm、N+フィールドストップ層1903の厚さは25μm、N-ドリフト層1901とN+フィールドストップ層1903の総厚Wdは125μmである。
また、図19においてエミッタ電極1905からの距離−ネットドーピング(log)および高注入ライフタイム(μs)の特性図1910に示すように、図19に示す半導体装置において、Pベース層1902のネットドーピング濃度は、エミッタ電極1905との界面でほぼ最大である。Pベース層1902のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1901との界面に向かって低くなり、N-ドリフト層1901との界面においてほぼ0である。また、N-ドリフト層1901のネットドーピング濃度は、Pベース層1902との界面においてほぼ0であるが、それ以外の領域では一定の値をとる。N+フィールドストップ層1903のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1901との界面からPコレクタ層1904との界面に向かって高くなるが、Pコレクタ層1904との界面付近では、N-ドリフト層1901のネットドーピング濃度よりも低くなっている。Pコレクタ層1904のネットドーピング濃度は、N+フィールドストップ層1903との界面においてN-ドリフト層1901のネットドーピング濃度よりも低いが、コレクタ電極1909との界面に向かって高くなり、コレクタ電極1909との界面では、Pベース層1902の最大濃度よりも高くなっている。
図19に示す半導体装置は、裏面を削ったFZウェハーにイオン注入および熱処理をおこなうことによって、Pコレクタ層1904およびN+フィールドストップ層1903とが形成されている。これにより、Pコレクタ層1904からの少数キャリアの注入効率を抑制して、ターンオフ損失を上げることなくオン電圧を低減することができる。また、図19に示す半導体装置は、少数キャリアの注入効率が抑制されているため、オン電圧を低下させないように、少数キャリアの輸送効率を低下させない必要がある。このため、図19に示す半導体装置では、N-ドリフト層1901に欠陥が導入されていない。
このように、図19に示す半導体装置では、少数キャリアのライフタイム制御がおこなわれていない。よって、図19の特性図1910に示すように、図19に示す半導体装置の高注入ライフタイムτHLは100μsとなっている。また、両極性キャリア拡散長Laは433μmとなっている。
なお、図19に示す半導体装置の耐圧を1200Vまたは600Vクラスとする場合、ウェハーの最終的な厚さを100μm程度または100μm以下とする必要がある。この要請に応えるため、近年ではウェハーの薄層化技術についても開発が進んでいる。
また、少数キャリア(ホール)の注入を抑制するため、N-ドリフト層のうちPコレクタ層に極めて近い(5μm程度)領域に、ヘリウムやプロトンといった軽イオンを照射して、局所的なフレンケル欠陥分布(厚さ10μm程度)を形成したIGBTも報告されている。このIGBTは、キャリアの注入効率を抑制する目的で欠陥が導入されているため、N-ドリフト層の内部には欠陥は導入されてはいない。
特表2002−520885号公報 特開2002−305305号公報 特開2001−332729号公報 特開2004−311481号公報 社団法人電気学会 高性能高機能パワーデバイス・パワーIC調査委員会著、"パワーデバイス・パワーICハンドブック"、コロナ社、1996年、396頁
しかしながら、上述した従来技術の半導体装置では、高速なキャリア周波数で動作させた場合に損失を低減することができないという問題点がある。従来技術の半導体装置では、おもにオン電圧の低減によって特性を改善しており、スイッチング損失の低減は10%程度に留まっている。従来、IGBTを用いたインバータなどの電力変換装置は、1〜10kHz程度のキャリア周波数で動作していた。このように低速な動作環境では、従来技術の半導体装置のように、IGBTのオン電圧を低減させることによって電力変換装置の損失を低減させることが可能である。
一方、近年では、さらに高速なキャリア周波数で動作させた場合でも、低ノイズ、低損失な電力変換装置が要求されている。たとえば20kHz程度の高速なキャリア周波数で電力変換装置を動作させた場合、IGBTのスイッチング損失の影響がオン電圧損失の影響に対して増大する。上述のように、従来技術の半導体装置では、おもにオン電圧の低減によって特性を改善している。このため、IGBTのスイッチング損失の影響が増大すると、IGBTのオン電圧を低減させたメリットが打ち消され、電力変換装置の実機損失を低下させることができなくなってしまう。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高速での動作時にも低損失な半導体装置を提供することを目的とする。また、この発明は、高速での動作時にも低損失な半導体装置を、FZバルクウェハーを用いて安価に、かつ制御性よく製造することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる半導体装置は、第1導電型ドリフト層を有する半導体基板と、前記第1導電型ドリフト層の第1主面側の上に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高い第1導電型フィールドストップ層と、前記第1導電型フィールドストップ層の上に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高く、さらに前記第1導電型フィールドストップ層よりも厚さが薄い第2導電型コレクタ層と、前記第2導電型コレクタ層に接するコレクタ電極と、前記第1導電型ドリフト層の第2主面側の少なくとも一部に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高い第2導電型ベース層と、前記第2導電型ベース層の表面に選択的に形成された第1導電型エミッタ領域と、前記第2導電型ベース層のうち前記第1導電型ドリフト層および前記第1導電型エミッタ領域に挟まれる部分に接するゲート絶縁膜と当該ゲート絶縁膜に接するゲート電極とからなるMOSゲート構造と、前記第1導電型エミッタ領域と前記第2導電型ベース層とに接触するエミッタ電極と、を備える半導体装置であって、前記第1導電型フィールドストップ層はプロトンによる結晶欠陥がドナー化してなる層であり、前記第1導電型ドリフト層には、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されており、前記第1導電型ドリフト層における電子のライフタイムと正孔のライフタイムとの和が0.1μs以上60μs以下であり、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向の厚さと前記第1導電型フィールドストップ層の深さ方向の厚さとの和が、前記第1導電型ドリフト層のフレンケル欠陥密度が熱平衡密度である場合の電子および正孔の拡散長よりも小さく、前記フレンケル欠陥が前記プロトンによる結晶欠陥のドナーも含むことにより、前記第1導電型ドリフト層の少数キャリア濃度が、前記第1導電型エミッタ領域側よりも前記第2導電型コレクタ層側で低くなっており、前記第2導電型コレクタ層と前記第1導電型フィールドストップ層とのpn接合が、前記半導体基板のチップ側面に達していることを特徴とする。
また、請求項2の発明にかかる半導体装置は、請求項1に記載の発明において、前記第1導電型ドリフト層のほぼ中間付近にピークを有し、前記第2導電型ベース層および前記第1導電型フィールドストップ層に向かって傾きをもって減少する不純物濃度分布を有するドナー化したブロードバッファ層をさらに備え、前記ブロードバッファ層を中心に前記第1導電型ドリフト層のうち前記コレクタ層側の50%以上の厚さの領域に、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されていることを特徴とする。
また、請求項の発明にかかる半導体装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向の厚さと前記第1導電型フィールドストップ層の深さ方向の厚さとの和は、前記第1導電型ドリフト層または前記第1導電型フィールドストップ層における電子および正孔の拡散長の2倍よりも小さいことを特徴とする。
請求項1〜3の発明によれば、高速な動作をおこなう場合においても、半導体装置のオン電圧およびターンオフ損失を低減させることができる。
また、請求項4の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置を製造する場合において、前記第1導電型ドリフト層の少数キャリア濃度が前記第1導電型エミッタ領域側よりも前記第2導電型コレクタ層側で低くなるように、前記第1導電型ドリフト層となる第1導電型半導体基板の、前記第1導電型ドリフト層の50%以上の厚さの領域に、前記第1導電型半導体基板の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入する工程と、前記フレンケル欠陥が導入された前記第1導電型半導体基板の厚さを減じる工程と、厚さが減じられた前記第1導電型半導体基板に不純物を注入して、前記第1導電型フィールドストップ層とのpn接合が前記第1導電型半導体基板のチップ側面に達し、かつ前記第1導電型フィールドストップ層よりも厚さが薄い前記第2導電型コレクタ層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
また、請求項の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項に記載の発明において、前記第1導電型半導体基板に荷電粒子線を照射して前記第1導電型半導体基板に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入することを特徴とする。
また、請求項の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項に記載の発明において、前記荷電粒子線は、電子線であることを特徴とする。
請求項4〜6の発明によれば、電子線などの荷電粒子の照射によって、半導体基板内に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入することによって、高速な動作をおこなう場合においてもオン電圧およびターンオフ損失を低減させることができる半導体装置を製造することができる。
本発明にかかる半導体装置によれば、高速での動作時にも低損失な半導体装置が得られる。また、本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、高速での動作時にも低損失な半導体装置を、FZバルクウェハーを用いて安価に、かつ制御性よく製造することができる。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、NまたはPを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NやPに付す+および−は、それぞれ相対的に不純物濃度が高いまたは低いことを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構成および特性を示す図である。図1において半導体装置の断面図100に示すように、N-ドリフト層1の一方の主面側に、Pベース層2が形成されている。また、N-ドリフト層1の他方の主面側には、N-ドリフト層1より不純物濃度が高いN型のフィールドストップ層3が形成されている。また、フィールドストップ層3の表面には、Pコレクタ層4が形成されている。N-ドリフト層1には、全体に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されている。
また、Pベース層2の表面には、エミッタ電極5が形成されている。また、N-ドリフト層1およびPベース層2に接するように、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造が形成されている。さらに、Pベース層2のうちエミッタ電極5およびゲート絶縁膜6に接する部分にN+エミッタ領域8が形成されている。また、Pコレクタ層4の表面には、コレクタ電極9が形成されている。
一例として、図1に示す半導体装置を、耐圧が1200Vクラスで、定格電流が75Aとなるように、チップサイズを8mm×8mmとして作製した場合の各部のネットドーピング濃度および寸法を例示する。寸法については、Pベース層2とエミッタ電極5との界面を基準とし、特に断らない限り、この界面からの距離で表す。
Pベース層2とN-ドリフト層1との界面までの距離は、3μmである。Pコレクタ層4とコレクタ電極9との界面までの距離は、140μmである。N-ドリフト層1とフィールドストップ層3との界面から、フィールドストップ層3とPコレクタ層4との界面までの距離、すなわちフィールドストップ層3の厚さは、30μmである。また、フィールドストップ層3とPコレクタ層4との界面から、Pコレクタ層4とコレクタ電極9との界面までの距離、すなわちPコレクタ層4の厚さは、0.5μmである。
ここで、N-ドリフト層1とフィールドストップ層3との総厚をドリフト層厚Wdとすると、図1の半導体装置のドリフト層厚Wdは、136.5μmである。ドリフト層厚Wdは、フィールドストップ層3の厚さが1μm以上の場合、N-ドリフト層1とフィールドストップ層3との総厚を指すものとする。また、フィールドストップ層3の厚さが1μm未満の場合、N-ドリフト層1の厚さのみを指すものとする。
また、図1において、エミッタ電極5からの距離−ネットドーピング(log)および高注入ライフタイム(μs)の特性図110に示すように、Pベース層2のネットドーピング濃度は、エミッタ電極5との界面において5×1016atoms/cm3であり、N-ドリフト層1に向かって低くなり、N-ドリフト層1との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低い。N-ドリフト層1のネットドーピング濃度は、Pベース層2との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低いが、それ以外の領域では5×1013atoms/cm3である。
フィールドストップ層3のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1との界面において5×1013atoms/cm3であり、Pコレクタ層4に向かって高くなるが、Pコレクタ層4との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低い。Pコレクタ層4のネットドーピング濃度は、フィールドストップ層3との界面において5×1013atoms/cm3よりも低いが、コレクタ電極9に向かって高くなり、コレクタ電極9との界面で1×1018atoms/cm3となる。
また、図1の特性図110に示すように、図1に示す半導体装置の高注入ライフタイムτHLは約5μsとなっている。これは、N-ドリフト層1の全体に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入し、少数キャリアのライフタイムを低下させているためである。また、両極性キャリア拡散長Laは約97μmであり、両極性キャリア拡散長Laは、ドリフト層厚Wdよりも小さくなっている。
つぎに、図1に示す半導体装置の製造プロセスについて説明する。ここでは、一例として、図1に例示した寸法およびネットドーピング濃度の半導体装置(耐圧:1200Vクラス、定格電流:75A)を製造する場合について説明する。図2は、図1に示す半導体装置の製造プロセスを示す図である。まず、半導体基板として、比抵抗が40〜80Ωcm、たとえば55ΩcmのN型のFZウェハー10を用意する。FZウェハー10の直径は、たとえば6インチである。
このFZウェハー10に、標準的なMOSデバイスのプロセス工程を施し、断面図200に示すように、Pベース層2、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域8を形成する。つぎに、図2の断面図210に示すように、FZウェハー10に、電子線を照射する。このとき、電子線の加速電圧は、たとえば4.8MeVであり、電子線の線量は、たとえば80kGyである。その後、FZウェハー10に、たとえば350℃、1時間程度の熱処理をおこなう。この電子線照射によって、FZウェハー10にフレンケル欠陥が導入され、キャリアの高注入ライフタイムは約5μsとなる。
つぎに、FZウェハー10の裏面に研削またはウェットエッチングを施し、断面図220に点線で示すようにFZウェハー10の厚さを減じる。このとき、FZウェハー10の厚さは100〜160μm、たとえば140μmとする。その後、図2の断面図230に示すように、FZウェハー10の、研削やウェットエッチングがおこなわれた面に対してリン(P)イオンおよびボロン(B)イオンをイオン注入する。このときのリンイオンの加速電圧は、たとえば700keVであり、リンイオンのドーズ量は、たとえば3×1013atoms/cm2である。また、ボロンイオンの加速電圧は、たとえば50keVであり、ボロンイオンのドーズ量は、たとえば1×1013atoms/cm2である。
つぎに、FZウェハー10の裏面(イオン注入面)に対して、YAG第2高調波レーザ等のレーザ光をダブルパルス法にて照射して、リンイオンおよびボロンイオンを活性化させる。このとき、レーザ光のエネルギー密度は、たとえば3J/cm2、遅延時間は、たとえば300nmである。
ここで、ダブルパルス法とは、レーザ光の照射エリアごとに、複数のレーザ照射装置から所定の遅延時間だけ照射タイミングをずらして複数のパルスレーザを連続的に照射する方法である。ダブルパルス法については、特開2005−223301号公報に詳述されている。
活性化されたリンイオンは、FZウェハー10の裏面から深さ1μm、ピーク濃度5×1015cm3のフィールドストップ層3を形成する(断面図240参照)。また、活性化されたボロンイオンは、FZウェハー10の裏面から深さ0.5μm、ピーク濃度1×1017cm3のPコレクタ層4を形成する(断面図240参照)。
なお、フィールドストップ層3を形成する際に注入するイオンを、リンよりも拡散係数が大きいN型元素(たとえばセレンやイオウなど)にして、リンを用いるよりも拡散深さが深いバッファ層を形成してもよい。この場合、注入するイオンの加速電圧は、たとえば100keV、ドーズ量は、たとえば1×1013atoms/cm2とする。また、1000℃、60分の熱処理をおこなって注入イオンを活性化させる。この方法によって形成されるフィールドストップ層3は、FZウェハー10の裏面から深さ30μm、表面濃度1×1015cm3程度となる。
その後、FZウェハー10の表面側(MOSゲート構造が形成されている側)に、Al−Siを5μmスパッタリングにて成膜し、フォトエッチングしてエミッタ電極5を形成する。最後に、Pコレクタ層4の表面にアルミニウム、チタン、ニッケルおよび金の順で金属を成膜しコレクタ電極9を形成して、断面図240に示すように半導体装置(IGBT)が完成する。FZウェハー10の、Pベース層2とフィールドストップ層3の間の部分は、N-ドリフト層1となる。図2の特性図250は、断面図240の半導体装置に対応するネットドーピング濃度のプロファイルである。
図3は、図1に示す半導体装置および従来技術による半導体装置のターンオフ損失およびオン電圧のトレードオフ特性を示すグラフである。図3において、縦軸に示すのは半導体装置のターンオフ損失(mJ)、横軸に示すのは半導体装置のオン電圧(V)である。また、図3において、白四角(□)で示すのは、図1に示す半導体装置(以下、「本願発明」という)の特性値である。また、黒四角(■)で示すのは、実施の形態1の半導体装置の製造工程において、電子線の照射線量(図2の断面図210参照)を200kGyとして、より多くの欠陥を導入した場合(以下、「比較例」という)の特性値である。また、白三角(△)で示すのは、図18に示す構造の半導体装置(以下、「従来例A」という)の特性値、白丸(○)で示すのは、図19に示す構造の半導体装置(以下、「従来例B」という)の特性値である。
なお、図3に示したターンオフ特性は、図4に示すチョッパー回路にて計測した。図4は、図3のターンオフ特性の測定に用いるチョッパー回路の回路図である。図4に示すチョッパー回路400において、DCバス電圧は600V、ゲート抵抗Rgは8Ω、ゲート電圧は±15V、負荷インダクタンスLmは1mHである。また、測定時の温度は125℃である。この条件にてIGBTに±15Vのゲート電圧を印加してスイッチングさせ特性を測定した。
図3において、従来例Aの特性値と従来例Bの特性値とを比較する。まず、オン電圧について検討すると、従来例Bのオン電圧は従来例Aのオン電圧と比較して約0.5V低減されている。すなわち、従来例Bのオン電圧は従来例Aと比較して大幅に改善されている。しかし、ターンオフ損失について検討すると、従来例Bのターンオフ損失は従来例Aと比較して約10%の低減に留まっている。
つぎに、本願発明の特性値と従来例Bの特性値とを比較する。まず、オン電圧について検討すると、従来例Bのオン電圧と比較して本願発明のオン電圧は約3%増加している。一方、ターンオフ損失について検討すると、本願発明のターンオフ損失は従来例Bのターンオフ損失の約半分に低減している。すなわち、本願発明は従来例Bと比較してわずかなオン電圧の増加で大幅にターンオフ損失を低減させることができる。
つぎに、本願発明の特性値と比較例の特性値とを比較する。比較例のターンオフ損失は、本願発明のターンオフ損失と比較しておよそ50%減少している。しかし、比較例のオン電圧は本願発明のオン電圧と比較して約0.4V増加しており、ターンオフ損失の減少量と比較してオン電圧の増加量が大きくなっている。
このように、図1に示す半導体装置(本願発明)がオン電圧の増加を抑えつつターンオフ損失を低減できるのは、第1に、N-ドリフト層1へのフレンケル欠陥の導入密度および導入範囲を制御して、N-ドリフト層1におけるキャリアのライフタイムを制御したためである。第2に、キャリアのライフタイムが制御されてない場合(N-ドリフト層1のフレンケル欠陥密度が熱平衡密度程度である場合)における両極性キャリアの拡散長La0よりも、ドリフト層Wdを薄くしたためである。
図5は、図1に示す半導体装置および従来技術による半導体装置の少数キャリアの濃度分布を示したグラフである。図5において、縦軸に示すのは少数キャリアの濃度、横軸に示すのはエミッタ電極からの距離であり、横軸の値が0の点はエミッタ電極との界面を、横軸の値がLの点はコレクタ電極との界面をそれぞれ示す。また、図5において、太実線で示すのは本願発明の濃度分布、細実線で示すのは比較例の濃度分布、点線で示すのは従来例Aの濃度分布、一点破線で示すのは従来例Bの濃度分布である。
図5において点線で示す従来例Aは、P型の高濃度ボロン基板(Pコレクタ層)から大量の少数キャリア(ホール)が注入される。また、N-ドリフト層に大量のフレンケル欠陥を導入してキャリアの輸送効率を減らしているため、両極性キャリア拡散長La(14μm以下:図18参照)がドリフト層厚Wd(135μm:図1参照)よりも短くなっている。このため、従来例Aの少数キャリア濃度は、Pコレクタ層側で最大となり、N-ドリフト層1の中心付近で最小となっている。この結果、従来例Aではオン電圧が大きくなるとともに、Pコレクタ層側のキャリアでターンオフ損失が増加して、トレードオフが悪化する(図3参照)。
また、一点破線で示す従来例Bは、Pコレクタ層のキャリア濃度が低いためにキャリアの注入効率が低減される。また、従来例Bは、N-ドリフト層1に欠陥が導入されていないため、N-ドリフト層1におけるキャリアの輸送効率が高くなっている。よって、両極性キャリア拡散長La(433μm:図19参照)がドリフト層厚Wd(125μm:図19参照)よりも長くなり、Pコレクタ層側のキャリア濃度がエミッタ電極側のキャリア濃度よりも低くなっている。このような分布によって、従来例Bのオン電圧特性は従来例Aと比較して大幅に改善されている(図3参照)。しかし、従来例Bでは、両極性キャリア拡散長Laが長いため、N-ドリフト層の中央付近におけるキャリアの蓄積濃度が高くなっている。ここで、ターンオフ損失特性は、内部の蓄積キャリアの排出量によって定まる。よって、従来例Bでは、N-ドリフト層の中央付近の蓄積キャリアによって、ターンオフ損失の低下が妨げられてしまう(図3参照)。
一方、太実線で示す本願発明は、N-ドリフト層1におけるキャリア濃度が低くなっている。これは、N-ドリフト層1に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されているためである。この結果、本願発明のターンオフ損失は従来例Bのターンオフ損失のおよそ半分となっている(図3参照)。
また、細実線で示す比較例も本願発明と同様に、N-ドリフト層1のキャリア濃度が低くなっている。比較例では、本願発明と比較して照射される電子線の強度が強いため、本願発明よりも多くのフレンケル欠陥が導入されている。このため、比較例の少数キャリア濃度は、本願発明の少数キャリア濃度よりも低くなっている。
つぎに、本願発明におけるフレンケル欠陥の導入位置および導入量(濃度)について説明する。まず、本願発明におけるフレンケル欠陥の導入位置について説明する。本願発明では、キャリアの輸送効率ではなくキャリアの注入効率を低減させている。従来技術のように、Pコレクタ層4とフィールドストップ層3の近傍(たとえばPコレクタ層4とフィールドストップ層3との界面であるPN接合から±10μm程度まで)に欠陥を局在させるような方法では、キャリアの注入効率を低減させることができず、本願発明の効果は得られない。本願発明のように、N-ドリフト層1全体、あるいはすくなくともN-ドリフト層1の50%以上の厚さで熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入することによって、キャリアの注入効率を低減させて、ターンオフ損失を低下させることができる。
つぎに、N-ドリフト層中に導入するフレンケル欠陥の濃度について説明する。フレンケル欠陥の濃度が熱平衡密度である場合、結晶中の欠陥密度は1×1011/cm3以下となる。これは、ほぼ理想的な結晶の欠陥密度である。このため、高注入ライフタイムτHLは60μs以上となる。また、室温(300K)では、Da=18.79(cm2/s)である。よって、フレンケル欠陥が熱平衡密度に導入されている場合における両極性キャリア拡散長(以下、熱平衡拡散長という)La0は、上記式(1)より、La0=335.8(μm)となる。また、熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入する場合の両極性キャリア拡散長Laは、熱平衡拡散長La0=335.8(μm)以下となる。ドリフト層厚Wdより両極性キャリア拡散長Laが十分大きいと、少数キャリア濃度分布は従来例Bのように直線的な分布となり、N-ドリフト層中心付近のキャリア濃度が高くなる。このため、従来例Bでは、オン電圧は低くなるがターンオフ損失は大きくなる。
一方、ドリフト層厚Wdよりも両極性キャリア拡散長Laが十分小さいと、従来例AのようにN-ドリフト層1の中心付近でキャリア濃度が急激に減少する。このため、ターンオフ損失は低下するがオン電圧は高くなってしまう。また、熱平衡拡散長La0よりもN-ドリフト層1の厚さWdが大きい場合は、欠陥の導入量に対してオン電圧が指数関数的に増加してしまう。したがって、ドリフト層厚Wdは熱平衡拡散長La0(335.8μm)よりも小さくなくてはならない。
ここで、本発明者の実験から、ドリフト層厚Wdが熱平衡拡散長La0以下の場合、両極性キャリア拡散長LaがWd/2よりも大きい範囲では、両極性キャリア拡散長Laを増加させてもオン電圧の増加率は低いことが明らかになった。図6は、N-ドリフト層における両極性キャリア拡散と半導体装置のオン電圧との関係を示したグラフである。図6において、縦軸は、それぞれのオン電圧を、ライフタイム制御をおこなっていない(フレンケル欠陥を意図的に導入していない)状態のオン電圧で規格化した値(以下、「規格化オン電圧」という)である。また、横軸は両極性キャリア拡散長La(μm)である。
また、図6において太実線で示すのはドリフト層厚Wd=60μmの場合の特性値、細実線で示すのはドリフト層厚Wd=135μmの場合の特性値、太点線で示すのはドリフト層厚Wd=200μmの場合の特性値、細点線で示すのはドリフト層厚Wd=250μmの場合の特性値、一点破線で示すのはドリフト層厚Wd=300μmの場合の特性値である。図6に示すように、ドリフト層厚Wdがいずれの場合であっても、ドリフト層厚Wdと両極性キャリア拡散長Laとが等しくなるとき(Wd=La)の規格化オン電圧は1.04となる。
また、規格化オン電圧が1.04よりも小さく、かつ両極性キャリア拡散長Laが熱平衡拡散長La0よりも短い場合(すなわち、熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されている場合)は、オン電圧を増加せずにターンオフ損失を減少させることができることが実験で明らかになった。たとえば、図6において符号Aで示すのは本願発明の特性値であり、規格化オン電圧は1.03、両極性キャリア拡散長は約140μmである。
一方、規格化オン電圧が1.1よりも大きくなるとオン電圧は増大する。符号Bで示すのは比較例の特性値である。比較例では、電子線の照射量が200kGyに引き上げられているため、本願発明と比較してN-ドリフト層1の欠陥密度が大きくなっている。このため、両極性キャリア拡散長Laがドリフト層厚Wd(135μm)の半分よりも短い約50μmとなっている。したがって、比較例では規格化オン電圧が1.27、実際のオン電圧は2.26Vとなっており、オン電圧が増大している。
ここで、PiN型ダイオードは、導通時に表面側および裏面側の両面からドナー濃度よりも多くのキャリアが注入される。これにより、伝導度変調が生じて両極性キャリア拡散長が短くなり、図5に示すように、本願発明および比較例ではN-ドリフト層中心付近のキャリア濃度が最も濃度が低くなるような分布となる。
一方、表面側および裏面側の両面から注入されるキャリアの拡散長がドリフト層厚Wdの半分、すなわちWd/2よりも短くなると、N-ドリフト層中間部分の濃度が極端に減少して伝導度変調が生じにくくなり、オン電圧が増加する。さらに、ドリフト層厚Wdが200μm以上かつ両極性拡散長Laが熱平衡拡散長La0に近い場合は、わずかな欠陥の導入で両極性キャリア拡散長LaがWd/2よりも小さくなるため、オン電圧が増加する。
なお、高注入ライフタイムが0.1μsよりも短くなると、両極性キャリア拡散長Laは14μmとなり、Wd/2よりも極めて小さくなる。このため、高注入ライフタイムは0.1μs以上であることが望ましい。以上より、IGBTのドリフト層厚Wdは熱平衡拡散長La0より短く、かつ両極性キャリア拡散長LaがWd/2よりも長いことが望ましい。
また、Pコレクタ層4の厚さは、フィールドストップ層3の厚さよりも十分薄くなければならない。Pコレクタ層4の不純物の積分濃度を、近似的に濃度が矩形分布であると仮定してNaa、同じくフィールドストップ層3の積分濃度をNbbとおく。ここでNa,NbはそれぞれPコレクタ層4およびフィールドストップ層3のピーク濃度、Wa,WbはそれぞれPコレクタ層4およびフィールドストップ層3の拡散深さである。Pコレクタ層4およびフィールドストップ層3の不純物濃度は、実際にはガウス関数的な分布をとる。しかし、各層のピーク濃度とガウス関数の特徴的な長さ(ピーク値の1/eとなる幅、すなわち各層の分布の拡散深さ)との積によって各層の積分濃度を近似することができる。このとき、フィールドストップ層3におけるキャリアの輸送効率をαt、Pコレクタ層4からのキャリアの注入効率をηeとおけば、キャリアの増幅率γeは、下記式(4)で表される。
Figure 0005320679
上述の本発明の範囲を満たすには、低注入条件として増幅率γeはおよそ0.5であり、かつ、両極性キャリア拡散長Laはドリフト層厚Wdより大きくなければならない。このことから、両極性キャリア拡散長Laは、フィールドストップ層3の拡散深さWbよりも十分大きくなければならない(La>>Wd)。これらの条件から、キャリアの増幅率γeは下記式(5)のように近似できる。
Figure 0005320679
Pコレクタ層4のピーク濃度Naは、フィールドストップ層3のピーク濃度Nbより十分大きい(Na>>Nb:図1参照)。このため、上記式(4)を満たすには、Pコレクタ層Pの拡散深さWaは、フィールドストップ層3の拡散深さWbより十分小さくなければならない(Wa<<Wb)。よって、本願発明では、Pコレクタ層4の厚さは、フィールドストップ層3の厚さよりも十分薄くなければならない。
図7は、本願発明および従来例の半導体装置を用いたインバータのインバータ損失を示すグラフである。図7において、インバータの動作条件は、出力周波数20Hz、出力電流18Amps、キャリア周波数20kHz、力率0.85である。図7に示すように、従来例Aと比較した従来例Bのインバータ損失は2W(−7%)の低下に留まっている。一方、本願発明のインバータ損失は従来例Aと比較して11W(−38%)低下している。また、比較例のインバータ損失は従来例Aと比較して5W(−18%)の低下となっている。比較例では、ターンオフ損失は低減できるもののオン電圧が増加してしまうためである。このように、本願発明は、高周波数(20kHz)での動作条件においてインバータ損失を大幅に低減させることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、図1に示す半導体装置の製造方法の変形例について説明する。図8および図9は、図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。図2に示した製造方法との違いは、フィールドストップ層3をプロトンのドナー化現象を用いて形成した点である。以下、図2に示した製造方法と同様の点については、詳細な説明を省略する。
まず、図8の断面図800に示すように、FZウェハー10の一方の主面に、Pベース層2、エミッタ電極5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域8を形成する。つぎに、FZウェハー10の表面側(MOSゲート構造が形成されている側)に、Al−Siを5μmスパッタリングにて成膜し、フォトエッチングしてエミッタ電極5を形成する。
つぎに、断面図810に示すように、FZウェハー10に対して裏面側(MOSゲート構造が形成されていない側)からプロトンを照射する。このときのプロトンの加速電圧は、たとえば20MeVであり、プロトンのドーズ量は、たとえば1×1012/cm2である。このとき、アルミアブソーバを用い、その厚さを調節して、プロトンの飛程がFZウェハー10の裏面から130μmとなるようにする。断面図810において、×印は、プロトンの照射によりFZウェハー10内に生じた結晶欠陥12を示す。
つぎに、断面図820に示すように、エミッタ電極5の側からFZウェハー10に、電子線を照射する。このとき、電子線の線量は、たとえば40kGyである。この電子線照射によって、FZウェハー10(図1のN-ドリフト層1およびフィールドストップ層3となる領域)にフレンケル欠陥が導入される。その後、断面図830に示すように、FZウェハー10に、たとえば350℃、1時間程度の熱処理をおこなう。この処理によって、フィールドストップ層3が形成される。
つぎに、FZウェハー10の裏面に研削またはウェットエッチングを施し、図9の断面図900に点線で示すようにFZウェハー10の厚さを減じる。このとき、FZウェハー10の厚さは100〜160μm、たとえば140μmとする。その後、断面図910に示すように、FZウェハー10の、研削やウェットエッチングがおこなわれた面に対してボロン(B)イオンをイオン注入する。このときのボロンイオンの加速電圧は、たとえば50keVであり、ボロンイオンのドーズ量は、たとえば1×1013atoms/cm2である。
つぎに、FZウェハー10の裏面(イオン注入面)に対してYAG第2高調波レーザ等のレーザ光をダブルパルス法にて照射して、ボロンイオンを活性化させる。このとき、レーザ光のエネルギー密度は、たとえば3J/cm2、遅延時間は、たとえば300nmである。活性化されたボロンイオンはpコレクタ層4を形成する(断面図920参照)。
最後に、Pコレクタ層4の表面にアルミニウム、チタン、ニッケルおよび金の順で金属を成膜しコレクタ電極9を形成して、断面図920に示すように半導体装置(IGBT)が完成する。FZウェハー10の、Pベース層2とフィールドストップ層3の間の部分は、N-ドリフト層1となる。図9の特性図930は、断面図920の半導体装置に対応するネットドーピング濃度のプロファイルである。
図8および図9に示す半導体装置の製造方法によれば、ウェハーを薄くする工程をおこなう前に、ウェハー表面の電極やフィールドストップ層3を形成することができる。これにより、ウェハーの薄層化工程をおこなった後にウェハー表面の電極やフィールドストップ層3を形成する場合と比較して、工程間搬送でのウェハーのハンドリングやウェハーの反りによる割れ不良を削減することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3においても、実施の形態2と同様に図1に示す半導体装置の製造方法の変形例について説明する。図10および図11は、図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。図8および図9に示した製造方法との違いは、FZウェハー10に酸素を導入することによって、プロトンをドナー化し易くした点である。以下、図8および図9に示した製造方法と同様の点については、詳細な説明を省略する。
まず、図10の断面図1000に示すように、FZウェハー10の両面から酸素を導入し、FZウェハー10における酸素濃度をおよそ1×1015atoms/cm3とする。つぎに、断面図1010に示すように、標準的なMOSデバイスのプロセス工程によって、Pベース層2、エミッタ電極5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域8を形成する。
つぎに、断面図1020に示すように、FZウェハー10に対して裏面側(MOSゲート構造が形成されていない側)から図8の説明と同じ条件でプロトンを照射する。断面図1020において、×印は、プロトンの照射によりFZウェハー10内に生じた結晶欠陥12を示す。つぎに、断面図1030に示すように、エミッタ電極5の側から図8の説明と同じ条件でFZウェハー10に電子線を照射する。この電子線照射によって、FZウェハー10にフレンケル欠陥が導入される。
その後、図11の断面図1100に示すように、FZウェハー10に、たとえば350℃、1時間程度の熱処理をおこなう。この処理によって、フィールドストップ層3が形成される。つぎに、FZウェハー10の裏面に研削またはウェットエッチングを施し、断面図1110に点線で示すようにFZウェハー10の厚さを減じる。その後、断面図1120に示すように、FZウェハー10の、研削やウェットエッチングがおこなわれた面に対して、図9の説明と同じ条件でボロン(B)イオンをイオン注入する。その後、FZウェハー10の裏面(イオン注入面)に図9の説明と同じ条件でYAG第2高調波レーザ等のレーザ光をダブルパルス法にて照射して、ボロンイオンを活性化させる。
最後に、Pコレクタ層4の表面にアルミニウム、チタン、ニッケルおよび金の順で金属を成膜しコレクタ電極9を形成して、断面図1130に示すように半導体装置(IGBT)が完成する。FZウェハー10の、Pベース層2とフィールドストップ層3の間の部分は、N-ドリフト層1となる。図11の特性図1140は、断面図1130の半導体装置に対応するネットドーピング濃度のプロファイルである。
図10および図11に示す半導体装置の製造方法によれば、ウェハーに酸素を導入し、プロトンをドナー化し易くすることによって、より精度よくフィールドストップ層3を形成することができる。
(実施の形態4)
図12は、実施の形態4にかかる半導体装置の構成、ネットドーピング濃度およびプロトン分布を示す図である。実施の形態4にかかる半導体装置は、図12の断面図1200に示すように、N-ドリフト層1、Pベース層2、フィールドストップ層3、Pコレクタ層4、エミッタ電極5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域8、コレクタ電極9が形成されている。
また、図12においてエミッタ電極5からの距離−ネットドーピング(log)および高注入ライフタイム(μs)の特性図1210に示すように、N-ドリフト層1のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1のほぼ中間付近にピークを有し、Pベース層2およびフィールドストップ層3に向かって、傾きをもって減少している。すなわち、図12に示す半導体装置は、ブロードバッファ構造となっている。Pベース層2、フィールドストップ層3およびPコレクタ層4のネットドーピング濃度は、ともにN-ドリフト層1のネットドーピング濃度よりも高い。
Pベース層2とN-ドリフト層1との界面までの距離は、3μmである。Pコレクタ層4とコレクタ電極9との界面までの距離は、120μmである。フィールドストップ層3とPコレクタ層4との界面から、Pコレクタ層4とコレクタ電極9との界面までの距離、すなわちPコレクタ層4の厚さは、0.5μmである。また、ドリフト層厚Wdは116.5μmである。
Pベース層2のネットドーピング濃度は、エミッタ電極5との界面において5×1016atoms/cm3であり、N-ドリフト層1に向かって低くなり、N-ドリフト層1との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低い。N-ドリフト層1のネットドーピング濃度は、Pベース層2との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低いが、Pベース層2との界面近傍で5×1013atoms/cm3となる。
そして、N-ドリフト層1のほぼ中間付近でピークとなる箇所のネットドーピング濃度は、1.5×1014atoms/cm3である。また、N-ドリフト層1の、フィールドストップ層3との界面およびその付近におけるネットドーピング濃度は、5×1013atoms/cm3である。
フィールドストップ層3のネットドーピング濃度は、N-ドリフト層1との界面において5×1013atoms/cm3であり、Pコレクタ層4に向かって高くなる。フィールドストップ層3のネットドーピング濃度は、Pコレクタ層4との界面近傍でN-ドリフト層1のピークのネットドーピング濃度である1.5×1014atoms/cm3よりも高くなるが、Pコレクタ層4との界面では、5×1013atoms/cm3よりも低い。
Pコレクタ層4のネットドーピング濃度は、フィールドストップ層3との界面において5×1013atoms/cm3よりも低いが、コレクタ電極9に向かって高くなり、コレクタ電極9との界面で1×1018atoms/cm3となる。
また、図12の特性図1210に示すように、図12に示す半導体装置の高注入ライフタイムτHLは約5μsとなっている。また、両極性キャリア拡散長Laは97μmであり、両極性キャリア拡散長Laは、ドリフト層厚Wd(116.5μm)よりも小さくなっている。
図12に示す半導体装置は、たとえば、図8および図9に示したプロセスとほぼ同様のプロセスで製造することができる。図8および図9に示したプロセスと異なる点は、FZウェハー10にプロトンを照射する際(図8の断面図810参照)、アルミアブソーバを用いて飛程がFZウェハー10の裏面(エミッタ電極5が形成されていない面)側から130μmとなるように1回目の照射をおこなった後、アルミアブソーバを用いて飛程が表面から50μmとなるように2回目の照射をおこなう点である。このときのプロトンの加速電圧は、たとえば9MeVである。
2回目のプロトン照射をおこなった段階で、FZウェハー10には、ドナー化したブロードバッファ層を中心にN-ドリフト層1の50%以上の領域でフレンケル欠陥が導入される。この後、図8の説明と同様に、たとえば40kGyの線量で電子線を照射した後に、熱処理をおこなって欠陥を導入する。これにより、実施の形態4にかかる半導体装置の規格化オン電圧は1.04以下となり、ターンオフ損失を低減することができる。なお、2回目のプロトン照射をおこなった段階で熱処理をおこなうことによって欠陥を形成してもよい。
図12に示す半導体装置は、ブロードバッファ構造が形成されているため、ターンオフ時のサージ電圧が低く抑えられ、発振現象が発生しにくい。このため、図12に示す半導体装置は、EMIノイズ(電磁放射ノイズ)を低減させることができる。
(実施の形態5)
図13は、実施の形態5にかかる半導体装置の構成、ネットドーピング濃度を示す図である。実施の形態5にかかる半導体装置は、実施の形態4にかかる半導体装置と同様に、ブロードバッファ構造となっている。実施の形態5にかかる半導体装置のブロードバッファ構造は、アクセプタ補償によって形成されている。アクセプタ補償とは、ブロードバッファ層のドーピング濃度がFZウェハーのドーピング濃度よりも低くなるように、FZウェハーの表面側および裏面側からアクセプタ元素を導入し、深く拡散させて濃度を補償させるものである。
実施の形態5にかかる半導体装置は、図13の断面図1300に示すように、N-ドリフト層1、Pベース層2、フィールドストップ層3、Pコレクタ層4、エミッタ電極5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造、N+エミッタ領域8、コレクタ電極9が形成されている。
一例として、実施の形態5の半導体装置の各部のネットドーピング濃度および寸法を例示する。ただし、実施の形態1で例示した値と異なる値のみ説明する。図13においてエミッタ電極5からの距離−ネットドーピング濃度(log)の特性図1310に示すように、Pコレクタ層4とコレクタ電極9との界面までの距離は、120μmである。
また、半導体装置の基板全体のドナー濃度は1.5×1014atoms/cm3である。エミッタ電極5とPベース層2との界面からN-ドリフト層1のほぼ中央(ネットドーピング濃度がピークになる付近)にかけて、アクセプタとしてアルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)が拡散されている。また、コレクタ電極9とPコレクタ層4との界面からN-ドリフト層1のほぼ中央にかけて、アクセプタとして亜鉛(Zn)または白金(Pt)が拡散されている。このアクセプタ濃度は、各位置において基板全体のドナー濃度より低くなっている。
つぎに、実施の形態5にかかる半導体装置の製造プロセスについて説明する。まず、FZウェハーの一方の表面から、アルミニウムまたはガリウムなどの、ボロンよりも拡散係数の大きい元素をイオン注入する。その際の加速電圧は、たとえば200keVであり、ドーズ量は、たとえば5×1013atoms/cm2である。つぎに、注入したイオンを、表面濃度5×1013/cm3、表面から約50μmの位置まで拡散させる。つづいて、標準的なMOSデバイスのプロセス工程によってMOSゲート構造を形成する。その後、エミッタ電極5を形成する前に、FZウェハーを裏面から研削し、厚さを135μmとする。
つぎに、亜鉛または白金などの、アルミニウムやガリウムよりもさらに拡散係数が大きいイオンをFZウェハーの裏面から注入する。その際の加速電圧は、たとえば100keV、ドーズ量は、たとえば1×1012/cm2である。そして、たとえば1000℃、1時間の熱処理を行って、注入したイオンを、表面濃度5×1013/cm3、表面から約50μmの位置まで拡散させる。ここまでの処理によって、アクセプタ補償によってブロードバッファ層が形成される。
その後、実施の形態1または実施の形態2と同様の条件で、セレンの注入またはプロトンの照射をおこなって、フィールドストップ層3を形成する。また、実施の形態4と同様の条件で電子線の照射および熱処理をおこなう。後の工程は、実施の形態2の半導体装置の製造方法と同様である。実施の形態5によれば、実施の形態4の半導体装置と同様に、低損失で発振現象が生じにくい半導体装置が得られる。
(本発明の適用例)
図14および図15は、本発明を適用した逆導通IGBTの構成を示す図である。図14に示すIGBT1400は、同一の半導体チップ内に、IGBT部1401とFWD(フリーホイーリングダイオード)部1402が設けられている。また、少なくともIGBT部1401は、エッジ構造1403によって周囲を囲まれている。このようなデバイスは、たとえば特開2004−363328号公報に開示されている。
IGBT部1401の内側もしくはエッジ構造1403との間の表面側(アノード電極側)には、Pアノード層が形成されている。Pアノード層の面積は、IGBT部1401の面積の30%程度もしくは30%以下である。Pアノード層は、ボロンをドーズ量1×1013/cm2で注入することによって形成する。また、Pアノード層が形成された領域の裏面側(カソード電極側)には、N+カソード層が形成されている。N+カソード層は、リンを注入することによって形成されている。Pアノード層とN+カソード層を形成する際は、両面アライナーを用いて、表面側と裏面側の位置を合わせてイオンを注入する。また、IGBT1400には、実施の形態1と同様の方法でフィールドストップ層が形成されている。また、IGBT1400には、実施の形態1と同様の方法でフレンケル欠陥が導入されている。
IGBT1400は、1つの半導体チップ上にIGBT部1401およびFWD部1402を形成するため、IGBTモジュール組立て時に部品点数を少なくすることができる。また、IGBT1400は、IGBT部1401とFWD部1402とでエッジ構造1403を共有できるので、IGBT部1401とFWD部1402とをそれぞれ単体で形成する場合と比べて、デバイスの面積をおよそ70%削減することができる。
図14に示すIGBT1400は、定格電流が10A以下の家電用途(IH加熱器、インバータエアコン、インバータ洗濯機など)の電力変換装置に適している。本発明を適用することによって、より低損失な電力変換装置を得ることができる。なお、実施の形態2〜4にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法を用いて、同様のIGBTを形成してもよい。また、図15に示すIGBT1500のように、裏面側(カソード電極側)をコレクタショート構造にすることによって、両面アライメントを用いずに、より簡易な方法で逆導通IGBTを形成することも可能である。
また、実施の形態1にかかる半導体装置のダイシング面に、表面側(エミッタ電極側)と裏面側(コレクタ電極側)とをつなぐようにP型の深い分離層を形成すれば、FWD部を形成することなく逆阻止型IGBTを形成することができる。この分離層は、1200Vの耐圧クラスの素子であればボロンを注入し、1350℃、10日間の熱処理をおこなって拡散させることによって形成することができる。また、ボロンに代えてアルミニウムを注入すればおよそ半分の時間で分離層を形成することができる。このような方法で形成した逆阻止型IGBTは、低損失なだけでなく、N-ドリフト層の両極性キャリア拡散長が短くなることによって、逆バイアス時の漏れ電流も低減することができる。なお、逆バイアス時の空乏層がベース層に到達するのを防ぐため、N+層をPベース層よりも深く形成してもよい。
さらに、本発明にかかるIGBTの適用例を図16および図17に示す。図16および図17は、本発明を適用したコンバータ−インバータ回路の構成を示す図である。図16に示すコンバータ−インバータ回路1600は、コンバータ部でダイオードによる整流をおこなう。また、図17に示すコンバータ−インバータ回路1700は、コンバータ部にもIGBTが用いられている。図17に示すコンバータ−インバータ回路1700では、還流電流の制御によって1次側に電力を戻すことができ、省エネルギー効果をより大きくすることができる。
以上説明したように、本発明にかかる半導体装置によれば、高速での動作時にも低損失な半導体装置が得られる。また、本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、高速での動作時にも低損失な半導体装置を、FZバルクウェハーを用いて安価に、かつ制御性よく製造することができる。
以上のように、本発明にかかる半導体装置およびその製造方法は、電力用半導体装置に有用であり、特に、電気的損失および放射電磁ノイズの低いIGBTモジュールやIPM(インテリジェントパワーモジュール)に適している。
実施の形態1にかかる半導体装置の構成および特性を示す図である。 図1に示す半導体装置の製造プロセスを示す図である。 図1に示す半導体装置および従来技術による半導体装置のターンオフ損失およびオン電圧のトレードオフ特性を示すグラフである。 図3のターンオフ特性の測定に用いるチョッパー回路の回路図である。 図1に示す半導体装置および従来技術による半導体装置の少数キャリアの濃度分布を示したグラフである。 -ドリフト層における両極性キャリア拡散長と半導体装置のオン電圧との関係を示したグラフである。 本願発明および従来例の半導体装置を用いたインバータのインバータ損失を示すグラフである。 図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。 図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。 図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。 図1に示す半導体装置の他の製造プロセスを示す図である。 実施の形態4にかかる半導体装置の構成、ネットドーピング濃度およびプロトン分布を示す図である。 実施の形態5にかかる半導体装置の構成、ネットドーピング濃度を示す図である。 本発明を適用した逆導通IGBTの構成を示す図である。 本発明を適用した逆導通IGBTの構成を示す図である。 本発明を適用したコンバータ−インバータ回路の構成を示す図である。 本発明を適用したコンバータ−インバータ回路の構成を示す図である。 従来型のIGBTの構成および特性を示す図である。 従来型のIGBTの構成および特性を示す図である。
符号の説明
1 N-ドリフト層
2 Pベース層
3 フィールドストップ層
4 Pコレクタ層
5 エミッタ電極
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 N+エミッタ領域
9 コレクタ電極

Claims (6)

  1. 第1導電型ドリフト層を有する半導体基板と、前記第1導電型ドリフト層の第1主面側の上に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高い第1導電型フィールドストップ層と、前記第1導電型フィールドストップ層の上に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高く、さらに前記第1導電型フィールドストップ層よりも厚さが薄い第2導電型コレクタ層と、前記第2導電型コレクタ層に接するコレクタ電極と、前記第1導電型ドリフト層の第2主面側の少なくとも一部に形成され前記第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高い第2導電型ベース層と、前記第2導電型ベース層の表面に選択的に形成された第1導電型エミッタ領域と、前記第2導電型ベース層のうち前記第1導電型ドリフト層および前記第1導電型エミッタ領域に挟まれる部分に接するゲート絶縁膜と当該ゲート絶縁膜に接するゲート電極とからなるMOSゲート構造と、前記第1導電型エミッタ領域と前記第2導電型ベース層とに接触するエミッタ電極と、を備える半導体装置であって、
    前記第1導電型フィールドストップ層はプロトンによる結晶欠陥がドナー化してなる層であり、
    前記第1導電型ドリフト層には、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されており、前記第1導電型ドリフト層における電子のライフタイムと正孔のライフタイムとの和が0.1μs以上60μs以下であり
    記第1導電型ドリフト層の深さ方向の厚さと前記第1導電型フィールドストップ層の深さ方向の厚さとの和が、前記第1導電型ドリフト層のフレンケル欠陥密度が熱平衡密度である場合の電子および正孔の拡散長よりも小さく、
    前記フレンケル欠陥が前記プロトンによる結晶欠陥のドナーも含むことにより、前記第1導電型ドリフト層の少数キャリア濃度が、前記第1導電型エミッタ領域側よりも前記第2導電型コレクタ層側で低くなっており、
    前記第2導電型コレクタ層と前記第1導電型フィールドストップ層とのpn接合が、前記半導体基板のチップ側面に達していることを特徴とする半導体装置。
  2. 前記第1導電型ドリフト層のほぼ中間付近にピークを有し、前記第2導電型ベース層および前記第1導電型フィールドストップ層に向かって傾きをもって減少する不純物濃度分布を有するドナー化したブロードバッファ層をさらに備え、
    前記ブロードバッファ層を中心に前記第1導電型ドリフト層のうち前記コレクタ層側の50%以上の厚さの領域に、前記第1導電型ドリフト層の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記第1導電型ドリフト層の深さ方向の厚さと前記第1導電型フィールドストップ層の深さ方向の厚さとの和は、前記第1導電型ドリフト層または前記第1導電型フィールドストップ層における電子および正孔の拡散長の2倍よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置を製造する場合において、
    前記第1導電型ドリフト層の少数キャリア濃度が前記第1導電型エミッタ領域側よりも前記第2導電型コレクタ層側で低くなるように、前記第1導電型ドリフト層となる第1導電型半導体基板の、前記第1導電型ドリフト層の50%以上の厚さの領域に、前記第1導電型半導体基板の深さ方向に沿って熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入する工程と、
    前記フレンケル欠陥が導入された前記第1導電型半導体基板の厚さを減じる工程と、
    厚さが減じられた前記第1導電型半導体基板に不純物を注入して、前記第1導電型フィールドストップ層とのpn接合が前記第1導電型半導体基板のチップ側面に達し、かつ前記第1導電型フィールドストップ層よりも厚さが薄い前記第2導電型コレクタ層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  5. 前記第1導電型半導体基板に荷電粒子線を照射して前記第1導電型半導体基板に熱平衡密度以上のフレンケル欠陥を導入することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
  6. 前記荷電粒子線は、電子線であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
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