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JP5334557B2 - 予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物 - Google Patents
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Description

本発明は、予混合圧縮着火式エンジン用の燃料油組成物に関し、特には、予混合圧縮着火式エンジンの冷機時における運転性を向上させることが可能な予混合圧縮着火式エンジン用の燃料油組成物に関するものである。
自動車から排出される窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)は、大気中におけるこれら有害成分濃度に一定の寄与があるため、大気環境改善の観点から、これら有害排出ガス成分の削減が強く求められている。一方、地球温暖化防止のためには、化石燃料の燃焼で排出されるCO2の削減が必要であり、自動車からのCO2排出の削減、即ち、自動車の燃料消費効率(燃費)の向上が強く求められている。このように、自動車においては、有害ガス成分の排出削減とCO2の排出削減を同時に達成する必要があり、昨今、その対応技術として、予混合圧縮着火式(PCCI:Premixed Charge Compression Ignition)エンジンが注目されている。
PCCIエンジンでは、燃焼の開始(着火)を燃料の自己着火に依存しているので、燃焼室内の温度が低い冷機時や低負荷条件下では、着火性の良好な燃料が必要となる。しかしながら、着火性の良好な燃料は、燃焼室内の温度が高い高負荷条件下では、燃焼室内で多点同時着火による急激な燃焼を起こし、燃焼騒音の増大やエンジンの損傷を引き起こしてしまう。そのため、燃焼室内の温度が高い高負荷条件下では、着火性の低い燃料、即ち、緩慢な燃焼挙動を示す燃料が求められる。従って、PCCIエンジン用燃料としては、低負荷条件では着火性の指標であるセタン価(CN)が高く、高負荷条件下では緩慢な燃焼を期待できるリサーチ法オクタン価(RON)が高い燃料が望ましい。
一方、PCCIエンジンが暖気される前の燃焼室内の温度が低い冷機時には、燃焼室に噴射された燃料が気化して均質な予混合気を形成するには不利な条件となるため、PCCIエンジンの冷機時においては、燃料の揮発性が重要となる。
特開2004−91657号公報
しかしながら、一般に、炭化水素の中でも揮発性の高い成分は、セタン価(CN)が低いため、冷機時の運転性を考慮して、揮発性と着火性を制御したPCCIエンジン用燃料を開発する必要がある。
そこで、本発明の目的は、予混合圧縮着火式エンジンの冷機時における運転性を向上させることが可能な予混合圧縮着火式エンジン用の燃料油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の蒸留性状を有し、引火点及びリサーチ法オクタン価(RON)が特定の範囲にある上、全留分のセタン価(CN)及び初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が特定の範囲にある燃料油組成物を予混合圧縮着火式エンジンに用いることで、該エンジンの冷機時における運転性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物は、
・硫黄分が10質量ppm以下で、
・引火点が40℃以上で、
・初留点が130〜180℃で、
・90容量%留出温度が300℃以下で、
・全留分のセタン価(CN)が40〜50で、
・初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が40以上で、且つ
・リサーチ法オクタン価(RON)が20以上である
ことを特徴とする。
なお、本発明において、硫黄分はJIS K2541−6に従って測定され、引火点はJIS K2265−3に規定のペンスキーマルテンス密閉式で測定され、10容量%留出温度及び90容量%留出温度はJIS K2254に従って測定され、セタン価(CN)及びリサーチ法オクタン価(RON)はJIS K2280に従って測定される。
本発明によれば、特定の蒸留性状を有し、引火点及びリサーチ法オクタン価(RON)が特定の範囲にある上、全留分のセタン価(CN)及び初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が特定の範囲にある燃料油組成物をPCCIエンジンに用いることで、該エンジンの冷機時における運転性を改善することが可能となる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物は、硫黄分が10質量ppm以下で、引火点が40℃以上で、初留点が130〜180℃で、90容量%留出温度が300℃以下で、全留分のセタン価(CN)が40〜50で、初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が40以上で、且つリサーチ法オクタン価(RON)が20以上であることを特徴とする。本発明の燃料油組成物は、初留点から240℃までの留分(前留分)のセタン価(ΔCN)が高いため、PCCIエンジンの冷機時においても着火性が高く、その結果として、PCCIエンジンの冷機時における運転性を改善することができる。
<硫黄分>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、硫黄分が10質量ppm以下であり、好ましくは3質量ppm以下である。本発明の燃料油組成物は、硫黄分が10質量ppm以下であるため、燃焼生成物である硫黄酸化物が少なく、環境負荷の低減に寄与できる。また、硫黄分は、排出ガス浄化触媒を被毒するので、硫黄分の低減は、排出ガス浄化触媒の性能の維持を通じても、環境負荷の低減に寄与できる。更に、NOx吸蔵還元触媒を装着した車輌においては、該触媒の硫黄被毒の再生に燃料を使用するので、硫黄分の低減は、燃費の向上にも寄与する。そして、これらの効果は、硫黄分が低い程顕著であるため、本発明の燃料油組成物中の硫黄分は、3質量ppm以下であることが好ましい。
<引火点>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、取り扱い時の安全性を確保する観点から、引火点が40℃以上であり、好ましくは50℃以上である。また、燃料油組成物中に極めて揮発性の高い留分が混入することを防止して、燃料油組成物の揮発性の変動を抑制する観点からも、本発明の燃料油組成物は、引火点が40℃以上であることを要し、50℃以上であることが好ましい。
<初留点(IBP)>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、初留点(IBP)が130〜180℃であり、好ましくは140〜170℃である。燃料油組成物の前留分の揮発性が低いと、冷機時の燃料油組成物の気化が不十分となるため、本発明の燃料油組成物は、初留点(IBP)が180℃以下であり、170℃以下であることが好ましい。また、揮発性が高過ぎると、温度条件が高い環境下では、燃料系で燃料が気化して十分な燃料流量を確保できないため、本発明の燃料油組成物は、初留点(IBP)が130℃以上であり、140℃以上であることが好ましい。
<90容量%留出温度(T90)>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、90容量%留出温度(T90)が300℃以下であり、好ましくは280℃以下である。燃料油組成物の後留部分の揮発性は、燃料油組成物と空気との混合気の形成や燃焼性に影響し、90容量%留出温度(T90)が300℃を超えると、燃料油組成物と空気との混合気の形成に支障を来たしたり、該混合気の燃焼性が低下してしまう。また、ディーゼルエンジンに比べて燃料を早期に噴射するPCCIエンジンでは、燃料の一部がシリンダーライナーに到達し、ピストンの下降で掻き落とされてオイルパンへと流れ込み、エンジンオイルの希釈を引き起こすことがあり、特にエンジンが十分には暖気されていない条件下では、シリンダーライナーに付着した燃料の気化や燃焼が不十分となるが、90容量%留出温度(T90)が300℃以下の燃料油組成物は、気化し易く、ピストンの下降前に十分気化するため、エンジンオイルの希釈を引き起こすことがない。従って、PCCIエンジン用燃料の性状としては、90容量%留出温度(T90)が300℃以下であることが必要である。そして、上記の問題に対応するには、90容量%留出温度(T90)が低い程好ましいため、本発明の燃料油組成物は、90容量%留出温度(T90)が280℃以下であることが好ましい。また、特に限定されるものではないが、90容量%留出温度(T90)が低過ぎると軽油の生産量を減少させるので、本発明の燃料油組成物は、90容量%留出温度(T90)が220℃以上であることが好ましい。
<全留分のセタン価(CN)>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、PCCI燃焼を確保できる負荷条件の下限値に影響を及ぼす全留分のセタン価(CN)が40〜50であり、好ましくは43〜50である。冷機時における燃料油組成物の確実な着火と燃焼の安定性とを確保するためには、燃料油組成物自体のセタン価(CN)を40以上とすることが必要であり、43以上とすることが好ましい。また、燃料油のセタン価(CN)が高過ぎると、エンジンが暖気し負荷が大きい条件下では、燃料油の噴射から着火に至るまでの時間、即ち、着火遅れが短縮されるため、混合気の形成に許される時間が短縮されたり、早期着火による着火時期の進み過ぎによって、エンジン性能の悪化を招くので、燃料油組成物の全留分のセタン価(CN)50以下である。
<初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、初留点(IBP)から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が40以上であり、好ましくは41以上、更に好ましくは42以上である。冷機時には燃料油組成物中の揮発性の高い成分が気化して着火に寄与するので、前留分(初留点から240℃までの留分)のセタン価(ΔCN)が重要となる。そして、本発明の燃料油組成物は、初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が40以上と十分に高いため、PCCIエンジンの冷機時においても着火性に優れる。
<リサーチ法オクタン価(RON)>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、高負荷条件下での緩慢な燃焼を確保する観点から、リサーチ法オクタン価(RON)20以上である。なお、過早着火や急激な燃焼を回避するために、エンジン側では排気ガス再循環装置(EGR)の導入等の対策が講じられるが、高負荷条件下でPCCI燃焼として許容できる騒音や燃焼圧力上昇率を確保するためには、燃料油組成物のリサーチ法オクタン価(RON)20以上とする
<燃料油組成物の調製>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物は、上記の性状を満たすように、例えば、石油系軽質軽油基材(T90が300℃以下)を深度脱硫などで硫黄を低減した低硫黄軽油基材に、パラフィン系軽油基材(例えば、FT合成で製造されるGTLなどの軽質留分)を混合して調製することができる。
<添加剤>
本発明のPCCIエンジン用燃料油組成物には、燃料油組成物のセタン価(CN)を向上させるためのセタン価向上剤、燃料油組成物の安定性を確保するための酸化防止剤、低温流動性を確保するための低温流動性向上剤、潤滑性を確保するための潤滑性向上剤、エンジンの清浄性を確保するための清浄剤等を適宜添加することができる。
上記セタン価向上剤としては、アルキルナイトレート系セタン価向上剤、有機過酸化物系セタン価向上剤が挙げられる。上記アルキルナイトレート系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のアルキルナイトレートが好ましく、2-メチルヘキシルナイトレートが特に好ましい。また、上記有機過酸化物系セタン価向上剤としては、炭素数6〜12のジアルキルパーオキサイドが好ましく、ジ-t-ブチルパーオキサイドが特に好ましい。これらセタン価向上剤の添加量は、0.5質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以下の範囲が更に好ましい。
上記酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2-t-ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤や、N,N'-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤、及びこれらの混合物が挙げられる。これら酸化防止剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
上記低温流動性向上剤としては、公知のエチレン共重合体等を用いることができるが、特には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和脂肪酸のビニルエステルが好ましく用いられる。これら低温流動性向上剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
上記潤滑性向上剤としては、例えば、長鎖(例えば、炭素数12〜24)の脂肪酸又はその脂肪酸エステルが好ましく用いられる。該潤滑性向上剤を10〜500質量ppmの範囲、好ましくは50〜100質量ppmの範囲で添加することで、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
上記清浄剤としては、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等が挙げられる。これら清浄剤の添加量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。
<予混合圧縮着火式エンジン>
上述した本発明の燃料油組成物は、予混合圧縮着火(PCCI)エンジンに用いられる。該PCCIエンジンは、HCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)エンジンとも呼ばれ、従来のディーゼルエンジンと同様に圧縮着火であるが、燃料噴射時期、燃料噴射圧力や噴射パターン、EGR、圧縮比、燃焼室構造などを最適化して達成される燃料と空気が十分に混合した予混合気の燃焼で形成される予混合火炎のみで燃焼を完結する燃焼方式である。したがって、熱発生のパターンを観察すると冷炎に伴う微弱な熱発生(観察されない場合もあるが)に続いて主燃焼である予混合火炎による1つの熱発ピークが観察される。従来型ディーゼル燃焼では予混合火炎と拡散火炎に伴う2つのピークが観察される点で、大きく異なっている。また、予混合火炎の伝播で燃焼が完結するガソリンエンジンとも異なる。なお、実際のPCCIエンジンでは、熱発生パターンのテーリングが観察される場合があるが、この原因(予混合火炎か拡散火炎か)は明確でないので、該PCCIエンジンでは主燃焼が90%以上(テーリングに伴う熱発生が10%未満)と定義される。また、該PCCIエンジンは、高圧縮比で運転できることなどから、ガソリンエンジン(火花点火式エンジン)に比べて高効率であるという特徴を有する。
そして、かかる予混合圧縮着火エンジンに上述した本発明の燃料油組成物を用いた場合、燃料組成物の初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が高く、エンジンの冷機時においても着火性が高いため、エンジンの冷機時における運転性を改善することが可能となる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
以下の供試燃料に対して、下記の方法で性状分析を行い、更に、下記のエンジンを下記の条件で運転して、燃料の始動性を下記の方法で測定・評価した。結果を表1に示す。
<供試燃料の調製>
・軽油:市販の軽油(JIS 2号)を準備した。
・軽質油1:深度脱硫した軽質軽油基材80容量%にパラフィン系基材(SHNP)を20容量%混合して調製した。
・軽質油2:市販の灯油90容量%にブチルベンゼンを10容量%混合して調製した。
・重質油:市販の軽油50容量%と重質軽油基材50容量%を混合して調製した。
・SHNP:(株)JOMOサンエナジーを通じて炭素数14、15、16を主成分とする市販のn−パラフィン混合物を購入した。
<燃料の性状分析法>
・密度:JIS K2249「原油及び石油製品密度試験法」
・引火点:JIS K2265−3「引火点の求め方−第3部:ペンスキーマルテンス密閉法」
・蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験法」
・硫黄分:JIS K2541−6「硫黄分試験法(紫外蛍光法)」
・セタン価(CN):JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に規定された実測法(指数は適用できない)
・リサーチ法オクタン価(RON):JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」
<供試機関諸元>
・気筒数:1
・排気量(cc):1007
・圧縮比:14〜18
・燃料供給方式:筒内噴射(コモンレール)
<運転条件>
・回転速度(rpm):1200
・燃料噴射圧力(MPa):40〜120
・噴射時期:固定
<性能評価方法>
排気量1007 ccの単気筒PCCIエンジンを十分に暖気した状態でエンジンを安定した条件に設定し、一昼夜放置した後、冷機始動して、燃焼挙動の推移を測定した。なお、燃焼解析には、小野測器製燃焼解析装置を用い、始動から完爆までの時間と、始動から燃焼が安定するまでの図示平均有効圧力(IMPE)の推移を求め、市販軽油を基準として改善された場合を(○)、悪化した場合を(×)、殆ど変わらない場合を(△)として表記した。
Figure 0005334557
表1から明らかなように、本発明で規定する性状を満たす燃料油組成物を用いることで、PCCIエンジンの始動性が向上し、冷機時における運転性を改善することができる。

Claims (1)

  1. 硫黄分が10質量ppm以下で、引火点が40℃以上で、初留点が130〜180℃で、90容量%留出温度が300℃以下で、全留分のセタン価(CN)が40〜50で、初留点から240℃までの留分のセタン価(ΔCN)が40以上で、且つリサーチ法オクタン価(RON)が20以上であることを特徴とする予混合圧縮着火式エンジン用燃料油組成物。
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