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JP5336699B2 - 結晶材料の研磨加工方法 - Google Patents
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Description

本発明は、たとえば半導体ウェハのCMP法による研磨加工などに好適に用いられる研磨体とその製造方法に関する。
半導体集積回路のような電子デバイスはシリコン単結晶基板上に構築される場合が多いが、比較的大きな電力の制御機能が求められるパワーデバイス等では、さらに電気特性が良好な炭化珪素SiCや窒化ガリウムGaNから成る単結晶基板を上記シリコン単結晶基板に替えて用いることが期待されている。このような炭化珪素SiCや窒化ガリウムGaNから成る単結晶基板を用いたパワーデバイスは、モータや発電機の回転数やトルクを制御する制御素子として、ハイブリッド車両や燃料電池車両等に好適に用いられる。
一般に、超LSIの製造では半導体ウェハに多数のチップを形成し、最終工程で各チップサイズに切断するという製法が採られている。最近では超LSIの製造技術の向上に伴い集積度が飛躍的に向上し、配線の多層化が進んでいる為、各層を形成する工程においては、半導体ウェハ全体の平坦化(グローバルプラナリゼーション)が要求される。そのような半導体ウェハ全体の平坦化を実現する手法のひとつとして、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法という研磨方法が挙げられる。このCMP法とは、定盤上に貼られた不織布あるいは発泡パッドなどの研磨パッドにウェハを押しつけて強制回転させ、そこに微細な研磨粒子(遊離砥粒)を含有したスラリ(細かい粉末がたとえばアルカリ水溶液などの液体中に分散している濃厚な懸濁液)を流して研磨をおこなうものである。かかるCMP法によれば、液体成分による化学的研磨と、遊離砥粒による機械的研磨との相乗効果によって比較的精度の高い研磨加工がおこなわれる。
しかし、そのような従来のCMP法では、定常的にスラリを研磨パッドに供給しつつ研磨加工をおこなうものであり、いきおいスラリの消費がかさむものであった。使用済みのスラリには産業廃棄物としての処理が求められる為、廃棄に無視できない費用がかかることに加え、環境保護の観点からも好ましくなかった。また、CMP法による研磨加工において最もコストがかかるのは、スラリに含まれる研磨粒子であり、さらには、必ずしもスラリに含まれる研磨粒子のすべてが研磨加工に関与するわけではなく、多数の研磨粒子が無駄に廃棄される為、非経済的であるという不具合があった。
かかる不具合を解消すべく、スラリによらずにCMP法による研磨加工をおこなう為の固形研磨体が考案されている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載された研磨体がそれである。
特開2001−214154号公報 特開2004−25415号公報
特許文献1の研磨体は、たとえば熱可塑性重合体などの非水溶性物質中に酸化セリウムなどの研磨粒子およびデキストリンなどの水溶性物質を含有する研磨体であり、CMP法による研磨加工に際して、その研磨体から上記研磨粒子が遊離することにより、研磨加工に関与する遊離砥粒を自己供給することを目的とするものである。しかし、その効果を検証する為、本発明者がかかる研磨体を試作して研磨加工に用いたところ、研磨効率がスラリを用いた従来のCMP法による研磨加工に比べて劣るものであることに加え、酸化セリウムあるいは二酸化マンガンなどといった比較的研磨性能に優れた研磨粒子を用いたもの以外は十分な研磨性能を示さないという結果が得られた。
これに対し、特許文献2の研磨体は、研磨体と被研磨体との間に遊離砥粒を介在させた状態でそれらを互いに押しつけて相対移動させることにより被研磨体の研磨加工をおこなうCMP法では、前記研磨体により必要十分な研磨粒子が自己供給される必要があることに着目し、研磨粒子が前記母材樹脂から遊離し易い構成とするために、その母材樹脂の臨界表面張力を1.6×10−2〜4.0×10−2(N/m)の範囲内とし、遊離砥粒を好適に自己供給し得る研磨体としたものである。これによれば、母材樹脂と前記研磨粒子とが必要十分な結合力により相互に固着されている為、CMP法による研磨加工に際して前記研磨粒子が前記母材樹脂から遊離し易く、前記研磨体と被研磨体との間に遊離砥粒を好適に自己供給することができるので、シリコンSi単結晶基板に対しては比較的良い研磨性能が得られるが、炭化珪素SiCや窒化ガリウムGaNから成る単結晶基板は高硬度であって大変加工しにくい難加工材料であるため、その研磨に対しては、十分な研磨効率や研磨性能が未だ得られ難いものであった。このため、低価格で量産することが困難であり、実用化のネックとなっていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、炭化珪素SiCや窒化ガリウムGaNから成る単結晶基板のような難加工材料でも、CMP法による研磨において十分な研磨効率や研磨性能が得られる研磨加工方法を提供することにある。
本発明者は、かかるCMP法による難加工材料の研磨法を開発すべく鋭意研究を継続した結果、研磨液の存在下において砥粒内包研磨パッドを用いて結晶材料の表面を平滑に研磨するためのCMP法による研磨加工方法に際して、その研磨液に酸化剤を溶解して酸化性を付与すると、前記難加工材料に対しても研磨能率や研磨性能が格段に優れたものとなることを見出した。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは、研磨液の存在下において砥粒内包研磨パッドを用いて結晶材料の表面を平滑に研磨するためのCMP法による研磨加工方法であって、(a)前記結晶材料は、SiCの単結晶であり、(b)前記砥粒内包研磨パッドは、連通気孔を相互間に形成する繊維状を成す編み目状の母材樹脂と、該母材樹脂に一部が固着し或いは一部が該母材樹脂から分離した状態で該母材樹脂の連通気孔内に収容された複数の研磨粒子とを有するものであり、(c)前記研磨液は、酸化還元電位が565mV以上であるとともにEhmin(式(1)で定められる値)mV〜Ehmax(式(2)で定められる値)mVであり、且つpHが1.3〜5.7である酸化性の研磨液であることにある。
Ehmin(mV)=−22.4pH+677.1 ・・・(1)
Ehmax(mV)=−82.2pH+1481 ・・・(2)
このようにすれば、CMP法による研磨加工において、SiCの単結晶である結晶材料の表面が、酸化還元電位が565mV以上であるとともにEhmin(式(1)で定められる値)mV〜Ehmax(式(2)で定められる値)mVであり、且つpHが1.3〜5.7の酸化性の研磨液の存在下において砥粒内包研磨パッドを用いて研磨されるので、SiCの単結晶のような難加工材料であっても、低い表面粗度を得つつ、高い研磨能率が好適に得られる。
ここで、前記酸化性の研磨液は、好適には、過マンガン酸カリウムまたはチオ硫酸カリウムを酸化還元電位調整剤として添加されたものである。このようにすれば、容易に酸化性の研磨液が得られる。
また、前記研磨液は、酸性の研磨液である。好適には、その酸性の研磨液は、
pH調整剤が添加されたことによってpHが1.3〜5.7以下とされたものである。このようにすれば、一層、高い研磨能率が好適に得られる。
また、前記砥粒内包研磨パッドの母剤樹脂は、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂から構成されたものである。このようにすれば、一層高い研磨効率が得られる。しかし、たとえばポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系合成樹脂や、ポリエチレン樹脂、およびポリメタクリル酸メチルの内、少なくとも1つを含む合成樹脂等であっても好適に用いられる。
また、前記研磨粒子は、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、および酸化鉄の内、少なくとも1つを含むものである。このようにすれば、良好な表面粗度を得ることができる被研磨体に応じた硬度を備えた研磨粒子を用いることができるという利点がある。上記研磨粒子は、好適には、その平均粒径が0.005〜10(μm)の範囲内であり、たとえばシリカとしては、たとえばヒュームドシリカ(硝煙シリカ:四塩化ケイ素、クロロシランなどを水素および酸素の存在のもとで高温燃焼させて得られるシリカ微粒子)などが好適に用いられる。また、好適には、上記研磨粒子の上記研磨体に対する体積割合は20〜50(%)の範囲内であり、重量割合は51〜90(%)の範囲内である。
以下、本発明の1適用例を図面と共に説明する。
図1は、本発明の一例が適用されるCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法による研磨加工を実施するための研磨加工装置10の要部をフレームを取り外して観念的に示している。この図1において、研磨加工装置10には、研磨定盤12がその垂直な軸心C1まわりに回転可能に支持された状態で設けられており、その研磨定盤12は、定盤駆動モータ13により、図に矢印で示す1回転方向へ回転駆動されるようになっている。この研磨定盤12の上面すなわち被研磨体(結晶材料)16が押しつけられる面には、本実施例の研磨パッド(砥粒内包研磨パッド)14が貼り着けられている。一方、上記研磨定盤12上の軸心C1から偏心した位置には、SiCウェハ等の被研磨体16を吸着或いは保持枠等を用いて下面において保持するワーク保持部材(キャリヤ)18がその軸心C2まわりに回転可能、その軸心C2方向に移動可能に支持された状態で配置されており、そのワーク保持部材18は、図示しないワーク駆動モータにより或いは上記研磨定盤12から受ける回転モーメントにより図1に矢印で示す1回転方向へ回転させられるようになっている。ワーク保持部材18の下面すなわち上記研磨パッド14と対向する面には被研磨体16が保持され、被研磨体16が所定の荷重で研磨パッド14に押圧されるようになっている。また、研磨加工装置10のワーク保持部材18の近傍には、滴下ノズル22および/またはスプレーノズル24が設けられており、図示しないタンクから送出された酸化性水溶液である研磨液(ルブリカント)20が上記研磨定盤12上に供給されるようになっている。
なお、上記研磨加工装置10には、研磨定盤12の軸心C1に平行な軸心C3まわりに回転可能、その軸心C3の方向および前記研磨定盤12の径方向に移動可能に配置された図示しない調整工具保持部材と、その調整工具保持部材の下面すなわち前記研磨パッド14と対向する面に取り付けられた図示しないダイヤモンドホイールのような研磨体調整工具(コンディショナー)とが必要に応じて設けられており、かかる調整工具保持部材およびそれに取り付けられた研磨体調整工具は、図示しない調整工具駆動モータにより回転駆動された状態で前記研磨パッド14に押しつけられ、且つ研磨定盤12の径方向に往復移動させられることにより、研磨パッド14の研磨面の調整がおこなわれてその研磨パッド14の表面状態が研磨加工に適した状態に常時維持されるようになっている。
上記研磨加工装置10によるCMP法の研磨加工に際しては、上記研磨定盤12およびそれに貼り着けられた研磨パッド14と、ワーク保持部材18およびその下面に保持された被研磨体16とが、上記定盤駆動モータ13およびワーク駆動モータによりそれぞれの軸心まわりに回転駆動された状態で、上記滴下ノズル22および/またはスプレーノズル24から研磨液20が上記研磨パッド14の表面上に供給されつつ、ワーク保持部材18に保持された被研磨体16がその研磨パッド14に押しつけられる。そうすることにより、上記被研磨体16の被研磨面すなわち上記研磨パッド14に対向する面が、上記研磨液20による化学的研磨作用と、上記研磨パッド14内に内包されてその研磨パッド14から自己供給された研磨粒子26による機械的研磨作用とによって平坦に研磨される。この研磨粒子26には、たとえば平均粒径80nm程度のシリカが用いられる。
上記研磨定盤12上に貼り着け付けられた研磨パッド14は、図2に示すように、連通気孔30を備えた母材樹脂32と、その母材樹脂32の連通気孔30に充填された多数の研磨粒子26とを備えて円板状に形成されたものであり、たとえば300(mmφ)×5(mm)程度の寸法を備えている。この研磨パッド14は、研磨粒子26としての平均粒径80nm程度のヒュームドシリカとポリエーテルサルホン(poly-ether sulfone :PES )樹脂とを、N,N−ジメチルフォルアミド(N,N-dimethylformamide : DMF )溶媒中で混合して所定の成形型内に鋳込み且つそのDMF 溶媒を蒸発させて硬化させることにより、寸法が500×500×2mmのシートを成形し、研磨パッド14として用いる所望の円形寸法に切断されたものである。研磨パッド14は、たとえば、26容積%程度の研磨粒子26と28容積%程度の母材樹脂32と、残りの容積を占める連通気孔30とから構成されている。図2は、その研磨パッド14の組織を走査型電子顕微鏡によって拡大して示す図であり、スポンジ状或いは編み目状に形成された母材樹脂32の連通気孔30は研磨粒子26よりも同等以上の大きさに形成されており、その連通気孔30内には多数の研磨粒子26が保持されている。その母材樹脂32と前記研磨粒子26とが必要十分な結合力により相互に固着されている。本実施例の研磨パッド14は、たとえばコロイダルシリカなどを含有したスラリによることなく、遊離砥粒を含まない研磨液20の供給によってCMP法による研磨加工を可能とするものである。
図2に示すように、上記母材樹脂32はたとえば断面径の平均が0.05(μm)程度の繊維状を成しており、その繊維状の母材樹脂32の間隙にたとえば平均粒径が80nm程度の研磨粒子26がその一部において上記母材樹脂32に固着した状態で、あるいはその間隙において上記母材樹脂32から分離した状態で存在している。すなわち、繊維状の母材樹脂32の断面積の平均は、たとえば研磨粒子26の平均粒径の1/10〜1/3程度である。そのような繊維状の母材樹脂32相互の間隙を複数の連通気孔30と考えれば、上記研磨粒子26はその連通気孔30内に設けられたものであると言える。かかる連通気孔30の研磨粒子26に対する体積割合は、たとえば15〜60(%)程度である。
以上のように構成された研磨加工装置10における研磨加工に際しては、研磨定盤12およびそれに貼り付けられた研磨体パッド14と、ワーク保持部材18およびその下面に保持された被研磨体16とが、定盤駆動モータ13および図示しないワーク駆動モータによりそれぞれの軸心まわりに回転駆動された状態で、上記滴下ノズル22から、たとえば過マンガン酸カリウム水溶液などの酸化性の研磨液20が上記研磨パッド14の表面上に供給されつつ、ワーク保持部材18に保持された被研磨体16がその研磨パッド14の表面に押しつけられる。そうすることにより、上記被研磨体16の被研磨面すなわち上記研磨パッド14に接触する対向面が、上記研磨液20による化学的研磨作用と、上記研磨パッド14により自己供給された研磨粒子26による機械的研磨作用とによって平坦に研磨される。
[実験例1]
以下、本発明者等が行った実験例1を説明する。先ず、図1に示す研磨加工装置10と同様に構成された装置を用い、表1に示す研磨条件にて、表2に示す研磨パッドと研磨液との6種類の組合わせで研磨試験を行った。試験番号No.1乃至No.2に用いた研磨パッドIC-1000はニッタ・ハース社製の発泡ポリウレタンから成るパッドであり、試験番号No.3乃至No.6に用いた研磨パッドLHA パッドは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂と平均粒径250nmの球状シリカをDMF溶媒中で混合して鋳型に入れ、そのDMF溶媒を蒸発させて硬化させることにより、500×500×2mmのシート状に成形し、300mmφの円形に切り出したものである。表3には、各試験番号に用いられた研磨液の研磨液酸化還元電位Eh(水素電極基準電位)および水素イオン濃度pHと研磨結果である研磨レートPRおよび表面粗度Raが示されている。このLHA パッドには、研磨粒子として24.5容積%の球状シリカが含まれる。本実験例1において研磨液の微量噴霧とは、たとえば0.1〜200ml/min/m程度の量である。
[表1]
研磨加工装置 :ラップマスター LP-15型
研磨パッド :300 mmφ
研磨パッド回転数:1/sec
被研磨体 :SiC 単結晶板 6H(0001)
被研磨体の形状 :10mm×10mm×0.26 mm の板が3個
被研磨体回転数 :1/sec
研磨荷重(圧力):24.6 kPa
研磨液供給量 :IC-1000には 0.167cm/sec
LHA パッドには 0.0067cm/sec(dry mist)
研磨時間 :120 min
コンディショナー:SD#325(電着ダイヤモンドホイール)
[表2]
試験番号 研磨パッド 研磨液
No.1 IC-1000 スラリー(HO +シリカ12.5Wt%)
No.2 IC-1000 スラリー(HO +シリカ12.5Wt%+KMnO 0.1mol/cm)
No.3 LHA パッド 研磨液(HO)
No.4 LHA パッド 研磨液(HO + KMnO 0.1mol/cm)
No.5 LHA パッド 研磨液(HO) ドライミスト( 微量噴霧)
No.6 LHA パッド 研磨液(HO + KMnO 0.1mol/cm) ドライミスト
[表3]
試験番号 酸化還元電位Eh 水素イオン濃度pH 研磨レート 表面粗度Ra
No.1 560 mV 4.49 117 nm/h 1.43 nm
No.2 1016 mV 5.38 250 nm/h 0.54 nm
No.3 565 mV 4.99 67 nm/h 0.61 nm
No.4 1012 mV 5.69 133 nm/h 0.50 nm
No.5 565 mV 4.99 216 nm/h 0.63 nm
No.6 1012mV 5.69 366 nm/h 0.32 nm
上記研磨試験の結果、上記試験番号 No.1 乃至 No.6 の研磨レートPR(nm/h)を図3に、表面粗さRa(nm)を図4に示す。各研磨レートを比較すると、研磨粒子(シリカ)と水の組み合わせである研磨液を用いた試験番号 No.1 、No.3、No.5よりも、研磨粒子(シリカ)と過マンガン酸カリウムKMnOの組み合わせである研磨液を用いた試験番号 No.2 、No.4、No.6の方が研磨レートが高い。また、図5に示すように、酸化還元電位Eh(mV)と研磨レートPRとの関係を見ても、酸化還元電位Ehが高い No.2 、No.4、No.6の方が研磨レートPRが高い。研磨液中の過マンガン酸カリウムKMnOがSiCに対して酸化作用を起こし、表面にできたSiO若しくはSiを研磨粒子が除去しているものと考えられる。LHAパッドに対して試験番号 No.1 、No.2の遊離砥粒研磨の場合と同量の研磨液を供給したNo.3、No.4では、遊離砥粒研磨よりも研磨レートPRが低いが、ドライミストにより微量供給したNo.5、No.6では、遊離砥粒研磨よりも研磨レートPRが高い。このことは、No.3、No.4ではLHAパッドにとっては供給量が多すぎてSiCがLHAパッドから浮き、実質的に作用する研磨粒子数が少なくなったことが原因と考えられる。さらに、粗さを比較すると、研磨粒子(シリカ)と水の組み合わせである研磨液を用いた試験番号 No.1 、No.3、No.5よりも、研磨粒子(シリカ)と過マンガン酸カリウムKMnOの組み合わせである研磨液を用いた試験番号 No.2 、No.4、No.6の方が、被研磨体であるSiC単結晶板の表面に条痕がほとんど認められず、化学作用を伴った研磨面のように見受けられた。このことからも、研磨液に含まれる過マンガン酸カリウムKMnOの化学的作用の存在が考えられる。
[実験例2]
以下、本発明者等が行った実験例2を説明する。先ず、図1に示す研磨加工装置10と同様に構成された装置を用い、表1に示す研磨条件にて、表4に示す研磨パッドと研磨液との6種類の組合わせで研磨試験を行った。試験番号No.1乃至No.9に用いた研磨パッドIC-1000はニッタ・ハース社製の発泡ポリウレタンから成るパッドであり、試験番号No.10 乃至No.18 に用いた LHAパッドは、研磨粒子26としての平均粒径80nm程度のヒュームドシリカとポリエーテルサルホン(poly-ether slphone :PES )樹脂とをDMF溶媒中で混合して所定の成形型内に鋳込み且つそのDMF溶媒を蒸発させて硬化させることにより、寸法が500×500×2mmのシートを成形し、それを300mmφの円形に切り出したものである。このLHAパッドには、研磨粒子として24.5容積%の球状シリカが含まれる。本実験例2において研磨液の微量滴下とは、たとえば0.1〜200ml/min/m程度の量である。
[表4]
試験番号 研磨パッド 研磨液
No.1 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KSO 0.1mol/l 溶液
+ HCl 溶液 0.1mol/l)
No.2 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KSO 0.1mol/l 溶液)
No.3 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KSO 0.1mol/l 溶液
+ KOH 0.1mol/l溶液)
No.4 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + HCl 0.1mol/l溶液)
No.5 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + HO)
No.6 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KOH 溶液 0.1mol/l)
No.7 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KMnO 溶液 0.1mol/l
+ HCl 溶液 0.1mol/l)
No.8 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KMnO 溶液 0.1mol/l)
No.9 IC-1000 スラリ( シリカ12.5Wt% + KMnO 0.1mol/l溶液
+ KOH 0.1mol/l溶液)
No.10 LHA パッド KSO 0.1mol/l + HCl 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.11 LHA パッド KSO 0.1mol/l 溶液を微量滴下
No.12 LHA パッド KSO 0.1mol/l + KOH 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.13 LHA パッド HCl 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.14 LHA パッド HO を微量滴下
No.15 LHA パッド KOH 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.16 LHA パッド KMnO 0.1mol/l + HCl 0.1mol/l 溶液を微量滴下
No.17 LHA パッド KMnO 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.18 LHA パッド KMnO 0.1mol/l + KOH 0.1mol/l 溶液を微量滴下
上記実験例2の各試験番号No.1乃至No.18 の研磨液の酸化還元電位Eh(mV)の値は、還元剤として機能するチオ硫酸カリウムKと酸化剤として機能する過酸化マンガンカリウムKMnOとを用いて表4に示すように調整されている。また、上記実験例2の各試験番号No.1乃至No.18 の研磨液の水素イオン濃度pHの値は、塩酸HClと水酸化カリウムKOHとを用いて表5に示すように調整され、さらに、各試験において測定された研磨レートPRおよび表面粗度Raが表5に示されている。図6は、上記各試験番号No.1乃至No.18 の酸化還元電位Ehと水素イオン濃度pHの関係を示している。
[表5]
試験番号 酸化還元電位Eh 水素イオン濃度pH 研磨レート 表面粗度Ra
No.1 148 mV 2.0 28 nm/h 0.71 nm
No.2 266 mV 5.2 183 nm/h 0.62 nm
No.3 137 mV 12.4 35 nm/h 0.53 nm
No.4 755 mV 1.4 232 nm/h 0.53 nm
No.5 560 mV 4.5 117 nm/h 1.43 nm
No.6 241 mV 11.5 167 nm/h 1.57 nm
No.7 1359 mV 1.3 308 nm/h 0.24 nm
No.8 1016 mV 5.4 250 nm/h 0.53 nm
No.9 683 mV 11.5 162 nm/h 0.24 nm
No.10 137 mV 1.5 34 nm/h 0.44 nm
No.11 361 mV 6.2 67 nm/h 0.48 nm
No.12 40 mV 13.0 50 nm/h 1.07 nm
No.13 648 mV 1.3 150 nm/h 1.06 nm
No.14 565 mV 5.0 217 nm/h 0.63 nm
No.15 166 mV 12.8 200 nm/h 1.35 nm
No.16 1382 mV 1.2 400 nm/h 0.59 nm
No.17 1012 mV 5.7 450 nm/h 0.35 nm
No.18 735 mV 13.3 100 nm/h 0.83 nm
酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す研磨レートPRを加えた三次元座標の図7と、酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す表面粗度Raを加えた三次元座標の図8に、遊離砥粒(シリカ)で研磨を行った試験番号 No.1 乃至 No.9 の値がそれぞれ示されている。また、LHAパッドで研磨を行った試験番号 No.10乃至 No.18の研磨レートPRおよび表面粗度Ra値が同様の三次元表示を行う図9および図10にそれぞれ示されている。
実験番号 No.8 およびNo.17 には共に酸化剤が含まれているが、実験番号 No.8 のIC-1000による研磨の研磨レート( 除去率) PRよりも、実験番号No.17 によるLHA パッドによる研磨の研磨レートPRが高い値を示している。実験番号No.17 によるLHA パッドによる研磨の研磨レートPRは実験番号 No.8 のIC-1000による研磨よりも1.8倍ほど高い値を示している。実験番号 No.6 のスラリーは市販の公知のシリコンウエハ用のスラリーと同様の酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHを有している。実験番号No.17 によるLHA パッドによる研磨の研磨レートPRは、実験番号 No.6 の研磨レートPRよりも2.7倍ほど高い値を示している。このことは、酸化剤の添加によって酸化性とされた研磨液によれば、研磨レートPRが大幅に改善されることが示されているとともに、LHA パッドを用いることによっても、研磨レートPRが大幅に改善されることが示されている。図7乃至図10において、破線が酸化性領域と還元性領域との境界を示している。図7および図9おいて、酸化還元電位Ehが高くなるほど高く、水素イオン濃度pHおよび酸化還元電位Ehが低くなるほど低くなることが示されている。これにより、シリカによるSiC単結晶の研磨において酸化還元電位Ehが大きな影響を与えるので、酸化反応が発生していると考えられる。
表面粗さRaについて、実験番号 No.8 のIC-1000による研磨の表面粗さRaは良好な低い値を示し、実験番号No.17 によるLHA パッドによる研磨の表面粗さRaも良好な低い値を示している。これら実験番号 No.8 およびNo.17 は共に研磨レートPRが高い。他方、実験番号 No.6 および No.15の LHAパッドによる研磨の表面粗さRaも大きい。これらの研磨液は強アルカリ領域であって、如何なる酸化作用や摩耗作用はない。図8および図10において、酸性領域において表面粗さRaが改善されるが、非酸化領域、強アルカリ領域において、表面粗さRaが大きくなると考えられる。これらのデータから、炭素原子Cは酸化されることにより炭酸ガスCOとなり、SiC単結晶から容易に離脱できるものと考えられる。シリカによるSiC単結晶の研磨が酸化反応を促進するとすると、SiC単結晶の研磨レートPRが大幅に改善される。また、遊離砥粒による研磨に比較して、LHA パッドによる研磨においてLHA パッドにより研磨粒子の動きが保持されるので、LHA パッドの機械的な力が強く働くと考えられる。さらに、酸化作用の影響により、LHA パッドによる除去率が改善される。
[実験例3]
以下、本発明者等が行った実験例3を説明する。先ず、図1に示す研磨加工装置10と同様に構成された装置を用い、表1に示す研磨条件にて、表6に示す研磨パッドと研磨液との5種類の組合わせで研磨試験を行った。試験番号No.1乃至No.5に用いた LHAパッドは、研磨粒子26としての平均粒径80nm程度のヒュームドシリカと、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂とをDMF溶媒中で混合して所定の成形型内に鋳込み且つそのDMF溶媒を蒸発させて硬化させることにより、寸法が500×500×2mmのシートを成形し、それを300mmφの円形に切り出したものである。表7には、各試験番号に用いられた研磨液の研磨液酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHと研磨結果である研磨レートPRおよび表面粗度Raが示されている。このLHAパッドには、研磨粒子として24.5容積%の球状シリカが含まれる。本実験例3において研磨液の微量滴下とは、たとえば0.1〜200ml/min/m程度の量である。
[表6]
試験番号 研磨パッド 研磨液
No.1 LHA パッド HCl 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.2 LHA パッド KSO 0.1mol/l 溶液を微量滴下
No.3 LHA パッド HO を微量滴下
No.4 LHA パッド KMnO 0.1mol/l溶液を微量滴下
No.5 LHA パッド KOH 1mol/l溶液を微量滴下
[表7]
試験番号 酸化還元電位Eh 水素イオン濃度pH 研磨レート 表面粗度Ra
No.1 648 mV 1.32 317 nm/h 1.06 nm
No.2 361 mV 6.20 233 nm/h 1.16 nm
No.3 565 mV 4.99 217 nm/h 0.63 nm
No.4 1012 mV 5.69 367 nm/h 0.33 nm
No.5 166 mV 12.81 300 nm/h 2.35 nm
酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す研磨レートPRを加えた三次元座標の図11と、酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す表面粗度Raを加えた三次元座標の図12に、LHAパッドで研磨を行った試験番号 No.1 乃至 No.5 の値がそれぞれ示されている。
本実験例3においては、フッ素系樹脂を母材とするLHA パッドを用いることによっても、酸化剤の添加によって酸化性とされた研磨液によれば、酸化還元電位Ehが高くなるほど研磨レートPRが大幅に改善されることが示されているとともに、研磨液が酸性となるほど、表面粗さRaが改善されるが、非酸化領域、強アルカリ領域において、表面粗さRaが大きくなる。
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて用いられるものである。
本発明の一適用例の研磨加工方法を実施する研磨加工装置の構成を概念的に示す斜視図である。 図1に示す研磨パッドの表面組織を走査型電子顕微鏡によって拡大した様子を説明する図である。 実験例1において、6つの試験番号に示される研磨において得られた研磨レートPR(nm/h)の値をそれぞれ示すグラフである。 実験例1において、6つの試験番号に示される研磨において得られた表面粗さRa(nm)の値をそれぞれ示すグラフである。 実験例1において、6つの試験番号に示される研磨においてそれぞれ得られた酸化還元電位Eh(mV)と研磨レートPRとの関係を示す図である。 実験例2において、各試験番号No.1乃至No.18 の研磨においてそれぞれ得られた酸化還元電位Ehと水素イオン濃度pHとの関係を示している。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す研磨レートPRを加えた三次元座標において、実験例2における各試験番号No.1乃至No.9の遊離砥粒スラリーを用いた研磨においてそれぞれ得られた研磨レートPRの大きさを等高線を用いて示す図である。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す表面粗度Raを加えた三次元座標において、実験例2における各試験番号No.1乃至No.9の遊離砥粒スラリーを用いた研磨においてそれぞれ得られた表面粗さRaの大きさを等高線を用いて示す図である。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す研磨レートPRを加えた三次元座標において、実験例2における各試験番号 No.10乃至 No.18のLHAパッドを用いた研磨においてそれぞれ得られた研磨レートPRの大きさを等高線を用いて示す図である。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す表面粗度Raを加えた三次元座標において、実験例2における各試験番号 No.10乃至 No.18のLHAパッドを用いた研磨においてそれぞれ得られた表面粗さRaの大きさを等高線を用いて示す図である。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す研磨レートPRを加えた三次元座標において、実験例3における各試験番号 No.1 乃至 No.5 のLHAパッドを用いた研磨においてそれぞれ得られた研磨レートPRの大きさを等高線を用いて示す図である。 酸化還元電位Ehおよび水素イオン濃度pHの二次元座標に等高線で示す表面粗度Raを加えた三次元座標において、実験例3における各試験番号 No.1 乃至 No.5 のLHAパッドを用いた研磨においてそれぞれ得られた表面粗さRaの大きさを等高線を用いて示す図である。
符号の説明
10:研磨加工装置
12:研磨定盤
14:研磨パッド(砥粒内包研磨パッド)
16:被研磨体(結晶材料)
20:研磨液
26:研磨粒子
30:連通気孔
32:母材樹脂

Claims (6)

  1. 研磨液の存在下において砥粒内包研磨パッドを用いて結晶材料の表面を平滑に研磨するためのCMP法による研磨加工方法であって、
    前記結晶材料は、SiCの単結晶であり、
    前記砥粒内包研磨パッドは、連通気孔を相互間に形成する繊維状を成す編み目状の母材樹脂と、該母材樹脂に一部が固着し或いは一部が該母材樹脂から分離した状態で該母材樹脂の連通気孔内に収容された複数の研磨粒子とを有するものであり、
    前記研磨液は、酸化還元電位が565mV以上であるとともにEhmin(式(1)で定められる値)mV〜Ehmax(式(2)で定められる値)mVであり、且つpHが1.3〜5.7である酸化性の研磨液であることを特徴とする研磨加工方法。
    Ehmin(mV)=−22.4pH+677.1 ・・・(1)
    Ehmax(mV)=−82.2pH+1481 ・・・(2)」
  2. 前記酸化性の研磨液は、過マンガン酸カリウムまたはチオ硫酸カリウムを酸化還元電位調整剤として添加されたものである請求項1の研磨加工方法。
  3. 前記研磨液は、酸性の研磨液である請求項1または2の研磨加工方法。
  4. 前記酸性の研磨液は、pH調整剤が添加されたことによってpHが1.3〜5.7以下とされたものである請求項3の研磨加工方法。
  5. 前記砥粒内包研磨パッドの母剤樹脂は、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂から構成されたものである請求項1の研磨加工方法。
  6. 前記研磨粒子は、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、および酸化鉄の内、少なくとも1つを含むものである請求項1の研磨加工方法。
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