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JP5347564B2 - 成形方法 - Google Patents
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Description

本発明は、ヒケなし限界保圧値を想定した成形方法に関する。
成形方法として、第1の金型と第2の金型とによって形成された空間(キャビティ)に溶融された樹脂を射出して成形を行い、金型部から成形品を離型するものが存在する。このような成形方法で樹脂製のレンズを成形する際、溶融した樹脂が金型部に入った後に冷却されるため、冷却に伴って樹脂が収縮する。このように樹脂が収縮すると完成したレンズにヒケが生じてしまい光学性能を満たさなくなってしまう場合があるという問題がある。そのため、樹脂の収縮分を補う目的で、射出成形機により樹脂に十分な圧力(保圧)をかけることにより、レンズにヒケが生じないようにする方法がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平6−312444号公報 特開平7−1534号公報
しかしながら、上述のような成形方法では、成形時に保圧を加えることによりヒケを低減できるものの、複数のレンズを一括生産する複数取り等の量産の場合、成形金型の個々のレンズに対応する金型部ごとにヒケが生じない圧力値(ヒケなし限界保圧値)が異なるため、ヒケなし限界保圧値の判断が困難である。実情は、成形技術者の勘に頼って保圧値を設定しており、同一のレンズの成形であっても成形技術者によって保圧の条件設定が異なっていた。その結果、ヒケが生じない適切な保圧以上の保圧をかけた場合、過保圧となり面形状が変形することにより光学性能が却って劣化するという問題がある。また、ヒケが生じない保圧値で成形を行っても、その値がヒケの発生保圧値に近い場合、量産中のレンズに突発的な成形条件変化による突発的なヒケ(突発ヒケ)が生じるという問題がある。
樹脂製のレンズは、ガラス製のレンズと比較して冷却時収縮性が高く、ヒケを起こしやすいものである。特に、近年開発されているBD(Blu-Ray Disc)用レンズ等については、従来のCD、DVD等と比較して偏肉比が大きく、ヒケを生じさせやすくなっており、保圧設定に際して、従来と比較して非常に細かな判断が必要となる。
そこで、本発明では、ヒケの発生を抑制する適切な保圧値の設定が簡単にできる成形方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る成形方法は、第1金型と第2金型とで構成される金型部内に形成された樹脂成形空間に溶融させた樹脂を充填した後、第1金型と第2金型との型開きまでの間に、充填された樹脂にある保圧値で保圧を行う成形を、異なる保圧値で複数回行う試成形工程と、試成形工程で得た複数の暫定成形品について測定して得た波面収差に基づいて、仮想的に波面収差のRMS値が最小となる保圧値であるヒケなし限界保圧値Pαを想定し、異なる保圧値のうち、ヒケなし限界保圧値Pαに近い最小許容保圧値P1を特定し、最小許容保圧値P1に基づいて成形保圧値Pxを決定する工程と、成形保圧値の下で成形を行う本成形工程と、を備える。ここで、ヒケなし限界保圧値とは、樹脂を樹脂成形空間内に充填し、冷却した後に成形品にヒケが発生しない最小の保圧値を意味するが、仮想的なものであるから、成形保圧値の決定に際して直接的には利用されない。
さらに、本発明に係る成形方法において、ヒケなし限界保圧値Pαは、最小許容保圧値P1と最小許容保圧値P1から4.9MPa下げた下限逸脱保圧値との間にあり、最小許容保圧値P1は、最小許容保圧値P1で保圧し成形したときの成形品の波面収差のRMS値をSA1、下限逸脱保圧値で保圧し成形したときの成形品の波面収差のRMS値をSA0としたときに、以下の条件式(1)から(3)
SA1<0.1λ (1)
SA0>0.05λ (2)
3×SA1<SA0<30×SA1 (3)
を満たし、成形保圧値をPxは、以下の条件式(4)
P1+4.9MPa≦Px≦P1+19.6MPa (4)
を満たす。
上記成形方法によれば、予めヒケの生じない最小許容保圧値を特定し、その最小許容保圧値に基づいて成形保圧値を決定することにより、成形の際にヒケの発生を防ぐ適切な保圧を簡単に決定することができる。これにより、複数のレンズを一括生産する成形品の複数取り等の量産の場合でも、面形状の劣化を防止しつつ成形保圧値を的確に決定することができる。つまり、保圧のかけすぎで面形状が変形することによる光学性能の劣化を防止することができる。また、ヒケが生じない保圧値であるが、ヒケが発生する保圧値に近い場合に量産中に生じる突発的なヒケ(突発ヒケ)を防止することができる。さらに、一定の範囲内の保圧値で保圧して成形することにより、ヒケの発生を防止しつつ、成形品の耐熱性、すなわち加熱に対する特性の維持能力も保つことができる。
特に、最小許容保圧値P1がSA1及びSA0について上記条件(1)から(3)までを満たすようなものであることにより、ヒケなし限界保圧を、SA1に対応する最小許容保圧値と、SA0に対応する下限逸脱保圧値との間に存在するよう設定することができる。つまり、最小許容保圧値の特定を適切なものとすることができる。また、成形保圧値Pxが条件式(4)を満たすようなものである場合、ヒケを防止しつつ成形保圧値を確実に決定することができる。
本発明の別の態様では、最小許容保圧値は、暫定成形品の波面収差のうち球面収差に基づいて特定される。この場合、球面収差に基づいて最小許容保圧値を特定することにより、最小許容保圧値を画一的に定めることができる。なお、球面収差はレンズの性能を評価するためのものであり、干渉計によって波面収差を測定した際の評価項目の1つである。
本発明のさらに別の態様では、成形品は、少なくとも一方が凸形状のレンズである。この場合、ヒケが生じにくい凸レンズとすることができる。
本発明のさらに別の態様では、成形品は、NA0.7以上のレンズである。この種のレンズは、成形保圧値の影響を受けやすいが、上述の成形保圧値を設定することで、本成形工程で得られる成形品としてのレンズを高精度とすることができる。
本発明のさらに別の態様では、成形保圧値をPx、最小許容保圧値をP1としたときに、以下の条件式(5)
P1+4.9MPa≦Px≦P1+14.7MPa (5)
を満たす。この場合、ヒケを防止しつつ過保圧や突発ヒケも防止できる成形保圧値を確実に決定することができる。
成形システムを説明するブロック図である。 成形装置を説明する正面図である。 本実施形態の成形金型の構造を説明する側断面図である。 図3の成形金型の拡大断面図である。 (A)は、成形金型によって成形される成形品の断面図であり、(B)は、レンズの側断面図である。 レンズ測定装置の一例を説明する正面図である。 試成形工程及び本成形工程を説明するフローチャートである。 成形保圧値決定工程を説明するフローチャートである。 保圧と球面収差のRMS値との関係を示す図である。
以下、本発明の一実施形態である成形方法について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の成形方法を実施するための成形システムは、成形装置100と、レンズ測定装置200と、測定処理装置300とで構成される。
本成形システムのうち成形装置100は、図2に示すように、射出成形を行って成形品MPを作製する本体部分である射出成形機10と、射出成形機10から成形品MPを取り出す付属部分である取出し装置20と、成形装置100を構成する各部の動作を統括的に制御する制御装置30とを備える。
射出成形機10は、固定盤11と、可動盤12と、型締め盤13と、開閉駆動装置15と、射出装置16とを備える。射出成形機10は、可動盤12と固定盤11との間に可動金型42と固定金型41とからなる成形金型40を挟持して成形金型40に対して型締めを行うことにより成形を可能にする。ここで、射出成形機10は、型開き及び型閉じが横方向となっている。
固定盤11は、可動盤12に対向して支持フレーム14の中央に固定されており、取出し装置20をその上部に支持する。固定盤11は、固定金型41を着脱可能に支持している。なお、固定盤11は、タイバーを介して型締め盤13に固定されており、成形時の型締めの圧力に耐え得るようになっている。
可動盤12は、スライドガイド15aによって固定盤11に対して進退移動可能に支持されている。可動盤12は、可動金型42を着脱可能に支持している。可動盤12には、その背面にエジェクタ50が設けられている。エジェクタ50は、可動金型42内の成形品MPの不図示のランナ部をエジェクトピン51によって固定金型41側に押し出すことができ、取出し装置20による移送を可能にする。
型締め盤13は、支持フレーム14の端部に固定されている。型締め盤13は、型締めに際して、開閉駆動装置15の動力伝達部15dを介して可動盤12をその背後から支持する。
開閉駆動装置15は、スライドガイド15aと、動力伝達部15dと、アクチュエータ15eとを備える。スライドガイド15aは、可動盤12を支持するとともに可動盤12の固定盤11に対する進退方向に関する滑らかな往復移動を可能にしている。動力伝達部15dは、制御装置30の制御下で動作するアクチュエータ15eからの駆動力を受けて伸縮する。これにより、固定盤11に対して可動盤12が近接したり離間したり自在に進退移動し、結果的に、固定盤11と可動盤12とを互いに近接・離間して固定金型41と可動金型42との型締め及び型開きを行う。
射出装置16は、シリンダ16a、原料貯留部16b、スクリュ16c、樹脂射出端16dを備える。射出装置16は、制御装置30の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、樹脂射出端16dから温度制御された状態で溶融樹脂を吐出することができる。射出装置16は、シリンダ16aの樹脂射出端16dを固定盤11のスプル部分SP(図3参照)に対して分離可能に接続することができ、固定盤11を介して、固定金型41と可動金型42とを型締めした状態で形成される型空間CV(図3参照)に連通する流路部分FCに対して溶融樹脂を所望のタイミングで供給することができる。
温度調節装置17は、射出成形機10の金型41,42の温度を調節する部分である。温度調節装置17は、温調回路を有しており、固定金型41と可動金型42との温度調節が可能になっている。具体的には、例えば固定盤11と可動盤12とに設けた流体循環路に温度調節媒体を供給することにより、固定金型41と可動金型42とを必要な温度まで加熱する。なお、媒体を用いずにヒータ等を用いて温度調節をしてもよい。
取出し装置20は、成形品MPを把持することができるハンド21と、ハンド21を3次元的に移動させる3次元駆動装置22とを備える。取出し装置20は、制御装置30の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、固定金型41と可動金型42とを離間させて型開きした後に、可動金型42に残る成形品MPを把持して外部に搬出する役割を有する。
制御装置30は、開閉制御部31と、射出装置制御部32と、エジェクタ制御部33と、取出し装置制御部34とを備える。開閉制御部31は、アクチュエータ15eを動作させることによって両金型41,42の型締めや型開きを可能にする。射出装置制御部32は、スクリュ16c等を動作させることによって両金型41,42間に形成された型空間CV中に所望の圧力で樹脂を注入させる。また、樹脂充填後の保圧の際に一定の保圧値で型空間CV内を保圧する。なお、後述するように、試成形工程と本成形工程において、適宜各工程に応じた保圧値が設定される。エジェクタ制御部33は、エジェクタ50を動作させることによって型開き時に可動金型42に残る成形品MPを可動金型42内から押し出させる。取出し装置制御部34は、取出し装置20を動作させることによって型開き及び離型後に可動金型42に残る成形品MPを把持して射出成形機10外に搬出させる。
図3は、図2に示す成形装置100のうち、成形金型40の構造を説明する断面図である。図示の成形金型40は、固定金型41と可動金型42とを備える。固定金型41と可動金型42とは、パーティングラインPLを境として開閉可能になっている。
図3に示すように、固定金型41と可動金型42とを型合わせして型締めを行うことにより、図5(B)に示すレンズOLを成形するための樹脂成形空間である型空間CVが形成されるとともに、各型空間CVに樹脂を供給するための流路部分FCが形成される。型空間CVは、一対の光学転写面S1,S2に挟まれた本体空間CV1と、一対の周縁転写面S3,S4に囲まれたフランジ空間CV2とを備える。また、流路部分FCは、成形品MPのスプル部SNと、ランナ部RNと、ゲート部GNとにそれぞれ対応するスプル部分SPと、ランナ部分RPと、ゲート部分GPとで構成される。図面では省略しているが、この成形金型40によって射出成形される成形品MPは、複数のレンズOLを含むものであり、成形品MPに対応する樹脂充填用の空間は、スプル部分SPからランナ部分RPが複数に分岐し、分岐した各ランナ部分RPの先端部にゲート部分GPを介して型空間CVが連通する構造となっている。各ランナ部分RPと、各ゲート部分GPと、各型空間CVとは、各スプル部分SPの中心から等距離に配置されている。
両金型41,42に挟まれた空間である型空間CVは、成形品MPの光学素子としてのレンズOL(図5(B)等参照)の形状に対応するものとなっている。レンズOLは、樹脂製で、光学的機能を有する光学的機能部としての中心部OLaと、中心部OLaから外径方向に延在する環状のフランジ部OLbとを備える。中心部OLaは、本体空間CV1に対応し、フランジ部OLbは、フランジ空間CV2に対応する。このレンズOLは、例えばNA0.70以上の光ピックアップ装置用の対物レンズであり、偏肉比(光学素子の肉厚が急激に変化した状態)が高い凸形状である。本実施形態の場合、レンズOLは、BD、DVD及びCDに対して互換可能で、例えばBD用の波長の光束に対してNA0.85以上を満たすレンズである。
図4に示すように、固定金型41は、可動金型42に対向する型面に、レンズOLの光学面OS1に対応する部分である円形の光学転写面S1と、レンズOLのフランジ部FL1に対応する部分であり、光学転写面S1の外周を囲うような環状の周縁転写面S3と、ゲート部分GPに対応する部分であるゲート凹部S5と、ランナ部分RPに対応する部分である溝状のランナ凹部S7とを備える。また、固定金型41の中央には、樹脂を注入するためのスプル部分SPが形成されている(図3参照)。
可動金型42は、固定金型41の場合と同様に、固定金型41に対向する型面に、レンズOLの光学面OS2に対応する部分である円形の光学転写面S2と、レンズOLのフランジ部FL2に対応する部分であり、光学転写面S2の外周を囲うような環状の周縁転写面S4と、ゲート部分GPに対応する部分であるゲート凹部S6と、ランナ部分RPに対応する部分である溝状のランナ凹部S8とを備える。
本成形システムのうちレンズ測定装置200は、図6に示すように、被検レンズMLの波面収差を干渉を利用して計測する干渉計測装置で構成される。なお、計測対象としての被検レンズMLは、図2の成形装置100によって成形される成形品MPから分離されたレンズOL(図5(B)参照)である。
図示の干渉計測装置は、トワイマン・グリーン型の干渉計からなり、光学系部分として、レーザダイオード61と、コリメータレンズ62と、ビームスプリッタ64と、反射原器65と、参照平面ミラー66と、参照面駆動部67、撮像レンズ68と、撮像装置69とを備える。また、この干渉計測装置は、上記の光学系部分の動作を統括的に制御する制御装置77を備える。制御装置77は、演算処理用のコンピュータのほか、レーザダイオード61用のレーザドライバ、撮像装置69用の画像処理装置、参照面駆動部67用の駆動回路等の周辺機器を内蔵している。なお、レーザダイオード61から出射させる測定光の波長は、例えば404nm、655nm、785nm等とすることができ、レーザダイオード61の切り換えによって測定光の波長を変更することもできる。
レーザダイオード61からの照明光は、コリメータレンズ62で平行化された後、ビームスプリッタ64で分岐されて、参照平面ミラー66と、ホルダ71に保持された被検レンズMLとに入射する。被検レンズMLを通過した照明光は、反射原器65で反射されて光軸OAに沿って光路を逆進し、検査光として再度ビームスプリッタ64に入射する。一方、参照平面ミラー66で反射された参照光は、光軸OAに沿って光路を逆進し、ビームスプリッタ64で被検レンズML等を経た検査光と合成される。ビームスプリッタ64で合成された干渉光は、撮像レンズ68を経て撮像装置69に入射する。この際、参照面駆動部67によって参照平面ミラー66が光軸OA方向に変位することによっていわゆるフリンジスキャンが行われるとともに、撮像装置69から出力された画像信号がスキャンに同期して解析され、参照平面ミラー66等を基準として、被検レンズMLによる波面の変化が計測される。つまり、被検レンズMLの光学面や屈折率の設計値からのずれを反映した波面収差を測定値(具体的には二乗平均平方根(RMS))として得ることができる。なお、被検レンズMLの波面収差には、球面収差、非点収差、コマ収差等が含まれるが、本実施形態では、被検レンズMLが凸レンズである場合、ヒケによる形状変化がレンズ頂部の突起不足として現れやすいことを考慮して、主に球面収差を用いて被検レンズMLの性能評価を行うものとする。
図1に示す成形システムのうち測定処理装置300は、データを処理及び蓄積するコンピュータで構成される。この測定処理装置300は、成形技術者が管理している。
測定処理装置300は、レンズ測定装置200で得られた測定結果を分析処理し、この処理結果を成形装置100の射出装置制御部32へ伝達し、成形条件を指定するフィードバック情報を送信する。つまり、測定処理装置300では、成形装置100でレンズOLを試成形又は本成形した際の成形条件と、得られたレンズOLすなわち被検レンズMLをレンズ測定装置200で計測することによって得た球面収差との対照を可能にし、成形技術者に対し成形装置100による成形条件の設定・修正を補助する機能を有する。具体的には、測定処理装置300での処理により、複数回の試成形で得た複数のレンズOLの球面収差から、このレンズOLすなわち成形金型40に関する最小許容保圧値P1を特定し、成形金型40に適する成形保圧値Pxを決定することができる。測定処理装置300での処理方法については後述する。
図7及び図8は、本成形システムの動作すなわち本実施形態の成形方法を概念的に説明するフローチャートである。
最初に、最小許容保圧値を特定する前段階として、試成形工程を行う。なお、保圧値以外の成形品MPの基本的な成形工程については、後述する本成形工程と同様である。
まず、図7に示すように、成形装置100の温度調節装置17を動作させ、両金型41,42を成形に適する温度まで加熱する(ステップS10)。
次に、開閉駆動装置15を動作させ、可動盤12を前進させて型閉じを開始させる(ステップS11)。開閉駆動装置15の閉動作を継続することにより、固定金型41と可動金型42とが接触する型当たり位置まで可動盤12が固定盤11側に移動して型閉じが完了し、開閉駆動装置15の閉動作を更に継続することにより、固定金型41と可動金型42とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる(ステップS12)。
型締め後、射出成形機10において、射出装置16を動作させて、型締めされた固定金型41と可動金型42との間の型空間CV中に、加熱された溶融樹脂を必要な圧力で注入する射出を行わせる(ステップS13)。これにより、型締めされた固定金型41と可動金型42との間の型空間CV中に樹脂が充填される充填工程が行われる。なお、樹脂には、例えばPC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、COP(シクロオレフィンポリマー)が用いられる。
充填工程後、射出成形機10は、型空間CV中の樹脂圧を必要なレベルに保つ(ステップS14)。この際、適当な保圧値を設定する。
成形金型40は、温度調節装置17により、型空間CVや流路部分FCが適度に加熱されており、射出装置16から供給される溶融樹脂が緩やかに冷却され、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ(ステップS15)。
成形完了後、型締めを終了し、開閉駆動装置15を動作させて、可動盤12を後退させる型開きが行われる(ステップS16)。これに伴って、可動金型42が後退し、固定金型41と可動金型42とが離間する。この結果、成形品MPすなわちレンズOLは、可動金型42に保持された状態で固定金型41から離型される。
次に、射出成形機10において、エジェクタ50を動作させて、成形品MPの突き出しを行わせる(ステップS17)。具体的には、成形品MPのスプル部SN等が、エジェクトピン51による突き出しによって可動金型42から離型される。
成形品MPを可動金型42から離型した後、取出し装置20を動作させて、突き出された成形品MPの適所をハンド21で把持して外部に搬出する(ステップS18)。
成形品MPはゲート部GNで切断され、レンズOLは成形品MPから切り離される(ステップS19)。
以上のような試成形工程は、保圧値を異なる値に設定するとともに他の条件を一致させることによって、複数回繰り返される。つまり、保圧値のみを変化させることによって形成した多数のレンズOLを得ることができる。
試成形工程の後、試成形工程で成形された多数のレンズOLをもとに、最小許容保圧値を特定し、成形保圧値を決定する工程を行う。
まず、図8に示すように、レンズOLを被検レンズMLとしてレンズ測定装置200のホルダ71に収差計測位置に配置する(ステップS20)。なお、移動作業は、作業者が行うことを前提とするが、自動搬送を行わせることも可能である。
次に、レンズ測定装置200を動作させて、被検レンズMLすなわちレンズOLに対して波面計測を行い、レンズOLの球面収差等を含む波面収差を測定する(ステップS21)。具体的には、制御装置77は、レーザダイオード61から特定波長の計測光を出射させ、参照面駆動部67によって参照平面ミラー66を変位させつつ撮像装置69からの画像信号を解析し、各レンズOLについて波面収差のRMS値を得る。
試成形工程において得られた個々のレンズOLについて上記ステップS20及びS21を繰り返し、それぞれの保圧設定条件におけるレンズOLの波面収差を測定する。本実施形態では、波面収差のうち特に球面収差を用いて、レンズOLの光学面の形状精度を保圧設定条件の設定のために評価する。
次に、測定処理装置300において、ステップS21での測定結果から最小許容保圧値P1の特定(ステップS22)及び成形保圧値Pxの決定(ステップS23、S24)を行う。
この最小許容保圧値P1の特定は、保圧値を変えると成形品MPのレンズOLの球面収差が主に変化することを利用している。一般的な対物レンズでは球面収差のRMS値と保圧値との関係は図9のようになる。
図9に示すように、ある保圧値のうちヒケが発生しない仮想的な保圧値すなわちヒケなし限界保圧値Pαが存在する。つまり、ヒケなし限界保圧値Pαは、成形後のレンズOLの球面収差のRMS値が最小となる保圧値である。このヒケなし限界保圧値Pαから保圧値を上げていくと、成形後のレンズOLの球面収差のRMS値は保圧値上昇に伴い緩やかに上昇する。また、ヒケなし限界保圧値Pαから保圧値を下げていくと、レンズOL面にヒケが生じることにより、成形後のレンズOLの球面収差のRMS値は保圧値下降に伴い急激に上昇する。この球面収差のRMS値が急激に上昇する現象を利用して、あらかじめ設定した複数の保圧値で保圧し成形した複数のレンズOLに関する球面収差のRMS値の測定結果から最小許容保圧値P1を特定する(ステップS22)。最小許容保圧値P1は、最小許容保圧値P1で保圧し成形した場合の球面収差RMS値をSA1とし、最小許容保圧値P1から4.9MPa(50kgf/cm)下げた下限逸脱保圧値P0で保圧し成形した場合の球面収差のRMS値SA0としたときに、以下の条件式(1)〜(3)
SA1<0.1λ (1)
SA0>0.05λ (2)
3×SA1<SA0<30×SA1 (3)
を満たすものである。この条件式(1)〜(3)を満たしたときに、ヒケなし限界保圧値Pαは、最小許容保圧値P1と下限逸脱保圧値P0との間にあると想定される。なお、最小許容保圧値P1、下限逸脱保圧値P0、及びヒケなし限界保圧値Pαは、樹脂の種類や型空間CVの形状等によって異なるものである。
最小許容保圧値P1を特定した後、成形保圧値Pxの範囲を決定する(ステップS23)。例えば、以下の条件式(4)
P1+4.9MPa≦Px≦P1+19.6MPa (4)
を満たすように決定する(ステップS24)。この条件式(4)を満たす成形保圧値Pxは、ヒケなし限界保圧値Pα以上の保圧であり、成形後のレンズOLにヒケが生じるのを防止するように成形可能な保圧値となる。
以上のように、成形保圧値Pxは、下限の許容保圧値P1+4.9MPa(P1+50kgf/cm)から上限の許容保圧値P1+19.6MPa(P1+200kgf/cm)までの許容範囲内で設定される。
また、レンズOLの面形状の変形防止や突発ヒケの発生防止をさらに重視する観点では、ステップS23において、成形保圧値Pxの範囲を、例えば以下の条件式(5)
P1+4,9MPa≦Px≦P1+14.7MPa (5)
を満たすように決定する方が望ましい。つまり、成形保圧値Pxは、下限の許容保圧値P1+4.9MPa(P1+50kgf/cm)から、上限の許容保圧値P1+14.7MPa(P1+150kgf/cm)までの許容範囲内で設定される。
上記のような許容範囲P1+4.9〜P1+19.6MPa内の保圧値から成形保圧値Pxを選択する際には、許容範囲内の中間値を選択するといった自動的な処理も可能であるが、成形技術者が許容範囲内で状況に応じて数値を適宜選択するといった処理も可能である。
なお、成形保圧値とは、成形機に設定する圧力値であって、成形品のレンズ部分に付加される実際の圧力値とは異なっている。そのため、型内圧制御等で本技術を用いる場合は、型内圧力値と成形機の設定圧力値の相関を考慮し、圧力値を設定する必要がある。
成形保圧値Pxが決定した後、測定処理装置300により処理結果が成形装置100の射出装置制御部32に伝達され、成形保圧値Pxが本成形工程の際の保圧値として設定される。
本成形工程において、上述したように、保圧値以外は試成形工程と同様の成形工程(ステップS10〜S19)が行われる。つまり、本成形工程において、保圧時は成形保圧値Pxで、樹脂充填後の型空間CVを保圧する(ステップS14)。
以下、本実施形態の具体的な実施例について説明する。
表1は、各保圧値で保圧して成形したレンズOLの球面収差とヒケの発生及び過保圧の状態とについて示すものである。表1において、ヒケの発生の評価については、ヒケの発生率が0.001%以下の場合を「◎」と判断し、0.1%以下の場合を「○」と判断し、数十%以下の場合を「△」と判断し、略100%の場合を「×」と判断している。また、過保圧の状態の評価については、球面収差が0.01λ以下の場合を「◎」と判断し、0.01λ〜0.02λの場合を「○」と判断し、0.02λ〜0.03λの場合を「△」と判断し、0.03λ以上の場合を「×」と判断している。なお、成形保圧値Pxである、P1+50、P1+100、P1+150、P1+200、P1+250kgf/cmは、それぞれP1+4.9、P1+9.8、P1+14.7、P1+19.6、P1+24.5MPaに相当する。
Figure 0005347564
表1からわかるように、成形保圧値PxがP1+4.9MPa(P1+50kgf/cm)以上P1+19.6MPa(P1+200kgf/cm)以下で保圧し成形した場合、レンズOLにヒケが発生しない。また、成形保圧値PxがP1+4.9MPa(P1+50kgf/cm)以上P1+14.7MPa(P1+150kgf/cm)以下で保圧し成形した場合、過保圧によってレンズOLに生じる特性劣化を防ぐことができる。
また、P1+2.45MPaで保圧して成形した場合、突発ヒケの発生率は、0.1%以下である。一方、P1+9.8MPaで保圧して成形した場合、突発ヒケの発生率は、0.001%以下となる。
以上説明した実施形態の成形方法によれば、予めヒケの生じない最小許容保圧値P1を特定し、その最小許容保圧値P1に基づいて設定した許容範囲(例えばP1+4.9〜P1+19.6MPa)内で成形保圧値Pxを決定することにより、成形の際にヒケの発生を防ぐ適切な保圧を簡単に決定することができる。これにより、凸レンズ形状のように、成形品MPの中央部分が肉厚状態になりヒケが生じやすい形状であっても、ヒケが生じにくい成形品MPを成形することができる。
従来、ヒケを生じない成形品を成形するための成形保圧値を調べる際は、干渉計を使ったときの干渉縞の曲がり具合を見て感覚的に判断することが一般的であった。本実施形態のように球面収差のRMS値の変化傾向を利用すれば、成形保圧値Pxを簡単に決定することができる。これにより、レンズOLの複数取り等の量産の場合でも、ヒケ防止を確実にする観点で成形保圧値Pxを的確に決定することができる。
また、従来、ヒケの発生を避けるため、保圧値と球面収差との関係を考慮せずに、高い保圧を加えることで、実質的にヒケなし限界保圧より高い保圧をかけることが多かった。本実施形態のように予めヒケの生じにくい最小許容保圧値P1を基準として成形保圧値Pxを決定すれば、保圧のかけすぎで面形状が変形することによる光学性能の劣化を防止することができる。また、ヒケが生じない保圧値であるが、ヒケが発生する保圧値に近い場合に量産中に生じる突発的なヒケ(突発ヒケ)を防止することができる。
また、樹脂や型空間CVの形状によってヒケなし限界保圧値Pαは異なるものであるが、個々の最小許容保圧値P1を基準にするため、簡単に成形保圧値Pxを決定することができる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、1つの成形品MPから2個や4個のレンズOLを成形する場合以外にも、4個以上の多数個のレンズOLを成形する場合にも用いてもよい。
また、レンズOLの樹脂材料を変えても、実施例と同様に最小許容保圧値P1を特定し、その最小許容保圧値P1に基づいて設定した許容範囲(例えばP1+4.9〜P1+19.6MPa)内で成形保圧値Pxを決定することにより、ヒケが生じにくいレンズOLを成形することができる。
また、上記実施形態において、固定金型41及び可動金型42で構成される成形金型40等に設ける型空間CVの形状は、図示のものに限らず、様々な形状とすることができる。すなわち、型空間CVの形状は、単なる例示であり、レンズOLの用途等に応じて適宜変更することができる。例えば、携帯カメラ用の撮像用レンズの成形の際にも用いることができる。
最近は、撮像用レンズも、携帯カメラ用レンズ等はピックアップレンズと同じくらいの大きさになってきており、本発明の成形方法は、撮像用レンズ等の光学部品の成形に応用した場合にも、ピックアップレンズと同様の光学性能向上の効果が得られる。さらに、本発明は、光学部品以外の精密品の成形に応用した場合にも、同様の効果が得られる。
また、上記実施形態において、射出成形機10は、成形金型40等を開閉できるものであれば、例えば油圧式でも電動式でもよい。
10…射出成形機、 11…固定盤、 12…可動盤、 15…開閉駆動装置、 16…射出装置、 17…温度調節装置、 20…取出し装置、 30…制御装置、 40…成形金型、 41…固定金型、 42…可動金型、 100…成形装置、 200…レンズ測定装置、 300…測定処理装置、 CV…型空間、 FC…流路部分、 GP…ゲート部分、 RP…ランナ部分、 SP…スプル部分、 OL…レンズ、 MP…成形品、 GN…ゲート部、 RN…ランナ部、 SN…スプル部、 PL…パーティングライン、 Pα…ヒケなし限界保圧値、 P0…下限逸脱保圧値、 P1…最小許容保圧値

Claims (5)

  1. 第1金型と第2金型とで構成される金型部内に形成された樹脂成形空間に溶融させた樹脂を充填した後、前記第1金型と前記第2金型との型開きまでの間に、充填された樹脂にある保圧値で保圧を行う成形を、異なる保圧値で複数回行う試成形工程と、
    前記試成形工程で得た複数の暫定成形品について測定して得た波面収差に基づいて、仮想的に波面収差のRMS値が最小となる保圧値であるヒケなし限界保圧値Pαを想定し、前記異なる保圧値のうち、ヒケなし限界保圧値Pαに近い最小許容保圧値P1を特定し、前記最小許容保圧値P1に基づいて成形保圧値Pxを決定する工程と、
    前記成形保圧値の下で成形を行う本成形工程と、
    を備え
    前記ヒケなし限界保圧値Pαは、前記最小許容保圧値P1と前記最小許容保圧値P1から4.9MPa下げた下限逸脱保圧値との間にあり、
    前記最小許容保圧値P1は、前記最小許容保圧値P1で保圧し成形したときの成形品の波面収差のRMS値をSA1、前記下限逸脱保圧値で保圧し成形したときの成形品の波面収差のRMS値をSA0としたときに、以下の条件式(1)から(3)
    SA1<0.1λ (1)
    SA0>0.05λ (2)
    3×SA1<SA0<30×SA1 (3)
    を満たし、
    前記成形保圧値Pxは、以下の条件式(4)
    P1+4.9MPa≦Px≦P1+19.6MPa (4)
    を満たすことを特徴とする成形方法。
  2. 前記最小許容保圧値は、前記暫定成形品の波面収差のうち球面収差に基づいて特定されることを特徴とする請求項に記載の成形方法。
  3. 前記成形品は、少なくとも一方が凸形状のレンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形方法。
  4. 前記成形品は、NA0.7以上のレンズであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形方法。
  5. 前記成形保圧値をPx、前記最小許容保圧値をP1としたときに、以下の条件式(5)
    P1+4.9MPa≦Px≦P1+14.7MPa (5)
    を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形方法。
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