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JP5447199B2 - 音響処理装置 - Google Patents
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JP5447199B2 - 音響処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、相異なる指向性に対応する複数の音響信号を生成する技術に関する。
サラウンド形式の複数の音響信号を生成(サラウンド収音)する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、相異なる方向に指向する単一指向性の4個の収音機器と無指向性の1個の収音機器とを利用して4系統の音響信号をサラウンド収音する技術が開示されている。また、独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)や計算論的聴覚情景分析(CASA:Computational Auditory Scene Analysis)等の公知の技術を利用した音源分離でサラウンド形式の複数の音響信号を生成することも可能である。
特開平5−191886号公報
しかし、特許文献1の技術では、サラウンド形式の4系統の音響信号の生成に5個の収音機器が必要であるから、サラウンド収音に必要な装置が大規模化するという問題がある。また、独立成分分析や計算論的聴覚情景分析を利用した音源分離では、演算処理の複雑化により処理時間(レイテンシ)や消費電力が増大するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、収音機器の総数を削減しながら簡便な処理でサラウンド形式の複数の音響信号を生成することを目的とする。
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を以下に説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の各要素と後述の各実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の構成に限定する趣旨ではない。
本発明の音響処理装置は、前方に指向する単一指向性の第1音響信号(例えば音響信号XC)と、右前方および左後方に指向する双指向性の第2音響信号(例えば音響信号XR)と、左前方および右後方に指向する双指向性の第3音響信号(例えば音響信号XL)とを処理する音響処理装置であって、右前方からの到来音が強調された右前方信号(例えば音響信号YR)を第1音響信号と第2音響信号とから合成する右前方指向手段(例えば右前方指向部32)と、左前方からの到来音が強調された左前方信号(例えば音響信号YL)を第1音響信号と第3音響信号とから合成する左前方指向手段(例えば左前方指向部34)と、左前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに右後方からの到来音が強調された右後方信号(例えば音響信号YRS)を第1音響信号と第3音響信号とから合成する右後方指向手段(例えば右後方指向部42)と、右前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに左後方からの到来音が強調された左後方信号(例えば音響信号YLS)を第1音響信号と第2音響信号とから合成する左後方指向手段(例えば左後方指向部44)とを具備する。
以上の構成においては、第1音響信号と第2音響信号とから右前方信号が合成されるとともに第1音響信号と第3音響信号とから左前方信号が合成されるほか、第1音響信号と第3音響信号とから右後方信号が合成されるとともに第1音響信号と第2音響信号とから左後方信号が合成される。したがって、収音機器の総数を削減しながら簡便な処理でサラウンド形式の音響信号が生成されるという利点がある。
特定の指向性(単一指向性または双指向性)αの音響信号とは、指向性αの収音機器での収音信号と実質的に等価な音響信号を意味し、指向性αを有する収音機器が実際に生成した音響信号のほか、指向性α以外の指向性(無指向性を含む)の収音機器が生成した音響信号に対する信号処理で指向性αが付与された音響信号をも包含する概念である。特定の方向に指向する指向性の音響信号は、当該方向からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された音響信号としても把握される。例えば第1音響信号は、前方からの到来音を強調した信号に相当する。同様に、第2音響信号は、右前方および左後方からの到来音を強調した信号に相当し、第3音響信号は、左前方および右後方からの到来音を強調した信号に相当する。
なお、前方からの到来音に対する第1音響信号の極性と右前方からの到来音に対する第2音響信号の極性とが同極性である場合、右前方指向手段は、第1音響信号と第2音響信号との加算で右前方信号を生成し得る。他方、前方からの到来音に対する第1音響信号の極性と右前方からの到来音に対する第2音響信号の極性とが逆極性である場合、右前方指向手段は、第1音響信号と第2音響信号との間の減算で右前方信号を生成し得る。左前方信号の生成についても同様である。また、第1音響信号と第3音響信号とから右後方信号を合成する処理や、第1音響信号と第2音響信号とから左後方信号を合成する処理も、音響の到来方向と音響信号の極性とに応じて適宜に選定され得る。
本発明の好適な態様に係る音響処理装置は、前方からの到来音が抑圧されるように周波数毎の係数値が設定された処理係数列を生成する係数設定手段(例えば係数設定部70)を具備し、右後方指向手段は、第3音響信号のうち左前方からの到来音を抑圧した第4音響信号(例えば音響信号RA)を第1音響信号と第3音響信号とから合成する第1合成手段(例えば合成部52R)と、第4音響信号の各周波数成分に処理係数列の各係数値を作用させて右後方信号を生成する第1抑圧処理手段(例えば抑圧処理部64R)とを含み、左後方指向手段は、第2音響信号のうち右前方からの到来音を抑圧した第5音響信号(例えば音響信号LA)を第1音響信号と第2音響信号とから合成する第2合成手段(例えば合成部52L)と、第5音響信号の各周波数成分に処理係数列の各係数値を作用させて左後方信号を生成する第2抑圧処理手段(例えば抑圧処理部64L)とを含む。以上の態様においては、第4音響信号および第5音響信号に残留する前方からの到来音の成分(残留成分)が、第1抑圧処理手段および第2抑圧処理手段にて抑圧されるから、残留成分を抑圧しない構成(右後方信号や左後方信号に前方からの到来音の成分が混在する構成)と比較して、受聴者の後方の音像の定位感を受聴者に明確に知覚させることが可能である。
本発明の好適な態様において、係数設定手段は、第4音響信号と第5音響信号とのスペクトルの加算で和成分を生成する和成分生成手段(例えば和成分生成部72)と、前方からの到来音を抑圧した差成分を第4音響信号と第5音響信号とのスペクトルの減算で生成する差成分生成手段(例えば差成分生成部74)と、和成分と差成分とから処理係数列を生成する係数列生成手段(例えば係数列生成部76)とを含む。以上の態様においては、周波数領域のスペクトルの加算および減算で処理係数列が生成されるから、第4音響信号および第5音響信号における残留成分を簡易な処理で有効に抑圧できるという利点がある。
本発明の好適な態様において、右後方指向手段は、第3音響信号のスペクトルから第1音響信号のスペクトルを減算するスペクトル減算と、スペクトル減算で負数となる成分値を所定値に設定するフロアリング処理とを実行して右後方信号を生成し、左後方指向手段は、第2音響信号のスペクトルから第1音響信号のスペクトルを減算するスペクトル減算と、スペクトル減算で負数となる成分値を所定値に設定するフロアリング処理とを実行して左後方信号を生成する。以上の態様においては、スペクトル減算で発生し得る残留成分がフロアリング処理で抑圧されるから、残留成分を抑圧しない構成と比較して、受聴者の後方の音像の定位感を受聴者に明確に知覚させることが可能である。なお、以上の態様の具体例は例えば第3実施形態として詳述される。
本発明の好適な態様に係る音響処理装置は、相異なる位置に設置された無指向性の収音機器が生成した第1原信号と第2原信号と第3原信号とから第1音響信号と第2音響信号と第3音響信号とを生成する指向性付与手段(例えば指向性付与部80)を具備する。以上の態様においては、無指向性の収音機器が生成した音響信号(第1原信号,第2原信号,第3原信号)からサラウンド形式の音響信号が生成されるから、指向性(単一指向性や双指向性)の収音機器を利用する構成と比較して音響処理装置の実現に必要な費用が削減されるという利点がある。
以上の各態様に係る音響処理装置は、音響信号の処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラム(ソフトウェア)との協働によっても実現される。本発明のプログラムは、前方に指向する単一指向性の第1音響信号と右前方および左後方に指向する双指向性の第2音響信号とから、右前方からの到来音が強調された右前方信号を合成する右前方指向処理と、第1音響信号と左前方および右後方に指向する双指向性の第3音響信号とから、左前方からの到来音が強調された左前方信号を合成する左前方指向処理と、左前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに右後方からの到来音が強調された右後方信号を第1音響信号と第3音響信号とから合成する右後方指向処理と、右前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに左後方からの到来音が強調された左後方信号を第1音響信号と第2音響信号とから合成する左後方指向処理とをコンピュータに実行させる。以上のプログラムによれば、本発明の音響処理装置と同様の作用および効果が実現される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
第1実施形態に係る音響処理装置のブロック図である。 各収音機器の位置および指向特性の説明図である。 再生システムの模式図である。 前方信号生成部のブロック図である。 前方信号生成部の動作の説明図である。 後方信号生成部のブロック図である。 後方信号生成部の動作の説明図である。 係数設定部のブロック図である。 第2実施形態に係る音響処理装置のブロック図である。 各収音機器の位置および指向性付与部の動作の説明図である。 指向性付与部のブロック図である。 指向性付与部の動作の説明図である。 第3実施形態における後方信号生成部のブロック図である。
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響処理装置100Aのブロック図である。図1に示すように、音響処理装置100Aには3個の収音機器12(12C,12R,12L)が接続される。収音機器12Cは、周囲の音響(音声や楽音)の波形を表す時間領域の音響信号XCを生成する。同様に、収音機器12Rは音響信号XRを生成し、収音機器12Lは音響信号XLを生成する。
図2は、各収音機器12の配置および指向特性を示す模式図である。図2に示すように、水平面内の任意の位置からみて所定の基準線DCに沿う片方側を「前方」と表記するとともに反対側を「後方」と表記する。また、水平面内の任意の位置からみて基準線DCの垂線に沿う片方側を「左方」と表記するとともに反対側を「右方」と表記する。
収音機器12Cは、基準線DC上の基準点P0の前方に設置されて前方に指向する単一指向性のマイクロホンである。すなわち、収音機器12Cは、前方からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された音響信号(単一指向性の音響信号)XCを生成する。なお、前方からの到来音に対する音響信号XCの極性を以下では便宜的に正極性(正相)と定義する。
収音機器12Rは基準点P0の右前方(前方と右方との間)に設置され、収音機器12Lは基準点P0の左前方(前方と左方との間)に設置される。具体的には、基準線DCに対して時計回りに角度θR(鋭角)をなす直線DRの線上に収音機器12Rが設置され、基準線DCに対して反時計回りに角度θL(鋭角)をなす直線DLの線上に収音機器12Lが設置される。収音機器12Rと収音機器12Lとは基準線DCに関して線対称な位置にある。
収音機器12Rは、指向軸が直線DRに平行な双指向性のマイクロホンである。すなわち、収音機器12Rは、右前方および左後方からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された音響信号(双指向性の音響信号)XRを生成する。音響信号XRの極性は、右前方からの到来音に対して音響信号XCと同極性(正極性)となり、左後方からの到来音に対して音響信号XCとは逆極性(負極性)となる。
収音機器12Lは、指向軸が直線DLに平行な双指向性のマイクロホンである。すなわち、収音機器12Lは、左前方および右後方からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された音響信号XLを生成する。音響信号XLの極性は、左前方からの到来音に対して音響信号XCと同極性(正極性)となり、右後方からの到来音に対して音響信号XCとは逆極性(負極性)となる。
図1の音響処理装置100Aは、3個の収音機器12(12C,12R,12L)が並列に生成した3系統の音響信号X(XC,XR,XL)に対する信号処理で、相異なる指向性に対応する5系統(すなわちサラウンド形式)の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)を生成する。音響信号YCは、基準点P0に対する前方(center)からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された信号である。第1実施形態では、収音機器12Cが生成した音響信号XCを音響信号YCとして出力する。ただし、音響信号XCに対する所定の処理(例えば増幅)で音響信号YCを生成する構成も採用され得る。
音響信号YRは、基準点P0に対する右前方からの到来音が強調された信号であり、音響信号YLは、基準点P0に対する左前方からの到来音が強調された信号である。また、音響信号YRSは、基準点P0に対する右後方(Right-Surround)からの到来音が強調された信号であり、音響信号YLSは、基準点P0に対する左後方(Left-Surround)からの到来音が強調された信号である。
図3は、音響処理装置100Aが生成した音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)を再生する音響システムの説明図である。図3に示すように、音響システムは、受聴者Aを包囲するように配置された5個の放音機器16(16C,16R,16L,16RS,16LS)を含んで構成される。音響処理装置100Aが生成した各音響信号Yが5個の放音機器16に対して並列に供給されて音波として再生される。受聴者Aの前方に配置された放音機器16Cは、音響信号YCに応じた音波を再生する。同様に、受聴者Aの右前方の放音機器16Rは音響信号YRを再生し、受聴者Aの左前方の放音機器16Lは音響信号YLを再生する。また、受聴者Aの右後方の放音機器16RSは音響信号YRSを再生し、受聴者Aの左後方の放音機器16LSは音響信号YLSを再生する。したがって、受聴者Aの周囲の任意の位置の仮想的な音源(音像)から音響が到来するような定位感を受聴者Aに知覚させることが可能である。
図1に示すように、音響処理装置100Aは、演算処理装置22と記憶装置24とを具備する。記憶装置24は、演算処理装置22が実行するプログラムPGMや演算処理装置22が使用するデータを記憶する。半導体記録媒体や磁気記録媒体などの公知の記録媒体や複数種の記録媒体の組合せが記憶装置24として任意に採用される。演算処理装置22は、記憶装置24に格納されたプログラムPGMを実行することで、3系統の音響信号X(XC,XR,XL)から5系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)を生成するための複数の機能(前方信号生成部30,後方信号生成部40A)を実現する。なお、演算処理装置22の各機能を複数の集積回路に分散した構成や、専用の電子回路(DSP)が各機能を実現する構成も採用され得る。
前方信号生成部30は、音響信号X(XC,XR,XL)から音響信号YRおよび音響信号YLを生成する。図1に示すように、前方信号生成部30は、右前方指向部32と左前方指向部34とを含んで構成される。右前方指向部32は、音響信号XCと音響信号XRとから音響信号YRを合成し、左前方指向部34は、音響信号XCと音響信号XLとから音響信号YLを合成する。
図4は、前方信号生成部30のブロック図であり、図5は、前方信号生成部30の動作の説明図である。図4に示すように、右前方指向部32は、合成部36Rと調整部38Rとを含んで構成される。合成部36Rは、音響信号XCと音響信号XRとを加算する。調整部38Rは、合成部36Rの出力信号の振幅を調整して音響信号YRを生成する。所定の係数(例えば0.5)を乗算する乗算器が調整部38Rとして好適に採用される。図5から理解されるように、音響信号XRのうち右前方からの到来音に対応する成分と音響信号XCとは同極性であるから、音響信号XCと音響信号XRとの加算を含む演算で生成される音響信号YRにおいては、基準点P0に対する右前方からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調される。
図4の左前方指向部34は、右前方指向部32と同様に、音響信号XCと音響信号XLとを加算する合成部36Lと、合成部36Lの出力信号の振幅を調整する調整部38L(例えば所定の係数を乗算する乗算器)とを含んで構成される。したがって、図5から理解されるように、左前方指向部34が生成する音響信号YLは、基準点P0に対する左前方からの到来音が他方向からの到来音と比較して強調された信号となる。なお、右前方指向部32や左前方指向部34においては、合成部(36R,36L)による信号の加算と調整部(38R,38L)による振幅の調整との先後を逆転させた構成も採用され得る。
図1の後方信号生成部40Aは、音響信号X(XC,XR,XL)から音響信号YRSおよび音響信号YLSを生成する。図6は、後方信号生成部40Aのブロック図である。図6に示すように、後方信号生成部40Aは、合成部52Rおよび合成部52Lと成分抑圧部54と調整部56Rおよび調整部56Lとを含んで構成される。
図7は、合成部52Rおよび合成部52Lの動作の説明図である。図6の合成部52Rは、音響信号XCと音響信号XLとの合成で音響信号RAを生成する。具体的には、合成部52Rは、音響信号XCと音響信号XLとの逆相加算(減算)で音響信号RA(RA=XC−XL)を生成する加算器である。音響信号XLのうち左前方からの到来音の成分は音響信号XCと同極性(正極性)であり、音響信号XLのうち右後方からの到来音の成分は音響信号XCと逆極性(負極性)である。したがって、図7から理解されるように、音響信号XCと音響信号XLとの逆相加算で生成される音響信号RAにおいては、音響信号XLのうち左前方からの到来音の成分(音響信号XCとの重複成分)が抑圧されるとともに右後方からの到来音の成分が強調される。
他方、図6の合成部52Lは、音響信号XCと音響信号XRとの合成で音響信号LAを生成する。具体的には、合成部52Lは、音響信号XCと音響信号XRとの逆相加算(減算)で音響信号LA(LA=XC−XR)を生成する。したがって、図7から理解されるように、音響信号LAにおいては、音響信号XRのうち右前方からの到来音の成分(音響信号XCとの重複成分)が抑圧されるとともに左後方からの到来音の成分が強調される。
ところで、図7から理解されるように、合成部52Rが生成する音響信号RAには、音響信号XCのうち音響信号XLに含まれない前方からの到来音の成分が残留する。同様に、合成部52Lが生成する音響信号LAには、音響信号XCのうち音響信号XRに含まれない前方からの到来音の成分が残留する。図6の成分抑圧部54は、音響信号RAおよび音響信号LAの各々における前方からの到来音の成分(以下「残留成分」と総称する)を抑圧することで音響信号RDおよび音響信号LDを生成する。
図6に示すように、成分抑圧部54は、周波数分析部62と信号処理部64と波形合成部66と係数設定部70とを含んで構成される。周波数分析部62は、音響信号RAの周波数スペクトル(複素スペクトル)RBと音響信号LAの周波数スペクトル(複素スペクトル)LBとを時間軸上の単位期間(フレーム)毎に順次に生成する。周波数スペクトルRBは、相異なる周波数に対応するK個の周波数成分RB[1]〜RB[K]の系列である。同様に、周波数スペクトルLBは、K個の周波数成分LB[1]〜LB[K]の系列である。周波数スペクトルRBおよび周波数スペクトルLBの生成には、短時間フーリエ変換などの公知の周波数分析が任意に採用され得る。
係数設定部70は、音響信号RAおよび音響信号LAの残留成分を抑圧するための処理係数列GSを生成する。処理係数列GSは、相異なる周波数に対応するK個の係数値gS[1]〜gS[K]の系列であり、周波数スペクトルRBと周波数スペクトルLBとを利用して単位期間毎に順次に生成される。係数値gS[k](k=1〜K)は、音響信号RAの周波数成分RB[k]や音響信号LAの周波数成分LB[k]に対するゲイン(スペクトルゲイン)に相当し、0以上かつ1以下の範囲内で設定される。具体的には、処理係数列GSの係数値gS[1]〜gS[K]は、残留成分のパワー(振幅)が大きい周波数の係数値gS[k]ほどゼロに近い数値となり、残留成分のパワーが小さい周波数の係数値gS[k]ほど1に近い数値となる。なお、処理係数列GSを生成する具体的な方法については後述する。
信号処理部64は、係数設定部70が生成した処理係数列GSを各単位期間の周波数スペクトルRBおよび周波数スペクトルLBに対して順次に作用させる。図6に示すように、信号処理部64は、周波数スペクトルRBに処理係数列GSを作用させて周波数スペクトルRC(周波数成分RC[1]〜RC[K])を生成する抑圧処理部64Rと、周波数スペクトルLBに処理係数列GSを作用させて周波数スペクトルLC(周波数成分LC[1]〜LC[K])を生成する抑圧処理部64Lとを含んで構成される。
具体的には、抑圧処理部64Rは、以下の数式(1A)に示すように、周波数スペクトルRBの周波数成分RB[k]と処理係数列GSの係数値gS[k]との乗算で周波数スペクトルRCの周波数成分RC[k]を算定する。同様に、抑圧処理部64Lは、以下の数式(1B)に示すように、周波数スペクトルLBの周波数成分LB[k]と処理係数列GSの係数値gS[k]との乗算で周波数スペクトルLCの周波数成分LC[k]を算定する。
Figure 0005447199
図6の波形合成部66は、信号処理部64が生成した周波数スペクトルRCおよび周波数スペクトルLCから時間領域の音響信号RDおよび音響信号LDを生成する。具体的には、波形合成部66は、単位期間毎の周波数スペクトルRCを逆フーリエ変換で時間領域の信号に変換するとともに前後の単位期間について相互に連結することで音響信号RDを生成する。同様に、波形合成部66は、各周波数スペクトルLCから音響信号LDを生成する。
図6の調整部56Rは、成分抑圧部54が生成した音響信号RDの振幅を調整することで音響信号YRSを生成する。例えば所定値の乗算で音響信号RDを増幅する乗算器が調整部56Rとして採用され得る。同様に、図6の調整部56L(例えば乗算器)は、成分抑圧部54が生成した音響信号LDの振幅を調整することで音響信号YLSを生成する。
以上の説明から理解されるように、音響信号YRSでは右後方からの到来音が強調され、音響信号YLSでは左後方からの到来音が強調される。すなわち、合成部52Rと周波数分析部62と抑圧処理部64Rと波形合成部66と調整部56Rとは、音響信号XCと音響信号XLとから音響信号YRSを合成する右後方指向部42として機能し、合成部52Lと周波数分析部62と抑圧処理部64Lと波形合成部66と調整部56Lとは、音響信号XCと音響信号XRとから音響信号YLSを合成する左後方指向部44として機能する。
次に、図8を参照して係数設定部70の具体的な構成を説明する。図8に示すように、係数設定部70は、和成分生成部72と差成分生成部74と係数列生成部76とを含んで構成される。和成分生成部72は、以下の数式(2)で表現されるように、音響信号RAの周波数スペクトルRBと音響信号RAの周波数スペクトルLBとの加算で単位期間毎に順次に和成分M(K個の周波数成分M[1]〜M[K]で表現される複素スペクトル)を生成する。
Figure 0005447199
図8の差成分生成部74は、音響信号RAの周波数スペクトルRBと音響信号LAの周波数スペクトルLBとの間の減算で単位期間毎に順次に差成分S(K個の周波数成分S[1]〜S[K]で表現される複素スペクトル)を生成する。具体的には、差成分生成部74は、以下の数式(3)の演算(加重減算)で周波数成分S[1]〜S[K]を算定する。
Figure 0005447199
数式(3)の記号αは所定の係数(0≦α≦1)である。数式(3)から理解されるように、係数αに応じた比率(加重値)で周波数成分LB[k]から周波数成分RB[k]を減算することで差成分Sの周波数成分S[k]が算定される。したがって、差成分Sは、音響信号RAおよび音響信号LAにおいて係数αに応じた方向の成分を他方向の成分に対して相対的に抑圧した信号となる。本実施形態では、音響信号RAと音響信号LAとに共通に含まれる残留成分(前方からの到来音)が差成分Sにて抑圧されるように係数αの数値が設定される(例えばα=0.5)。なお、数式(3)が最大値max(α,1-α)での除算を含むのは、周波数成分S[k]の強度を周波数成分RB[k]や周波数成分LB[k]と同等に維持するためである。
図8の係数列生成部76は、和成分生成部72が生成した和成分Mと差成分生成部74が生成した差成分Sとから単位期間毎に順次に処理係数列GSを生成する。図8に示すように、係数列生成部76は、処理係数列GE(K個の係数値gE[1]〜gE[K]の系列)を生成する第1生成部762と、処理係数列GEから処理係数列GS(係数値gS[1]〜gS[K])を生成する第2生成部764とを含んで構成される。
第1生成部762は、以下の数式(4)の演算で処理係数列GEの各係数値gE[k]を算定する。なお、数式(4)が振幅|M[k]|での除算を含むのは、係数値gE[k]を1以下の数値(0≦gE[k]≦1)に正規化するためである。
Figure 0005447199

数式(4)の変数(パワー)P[k]は、例えば以下の数式(5A)および数式(5B)で算定される。
Figure 0005447199
数式(5A)から理解されるように、数式(4)の変数P[k]の数値は、和成分Mのパワー|M[k]|2から差成分Sのパワー|S[k]|2を減算(スペクトル減算)した数値に設定される。ただし、和成分Mのパワー|M[k]|2が差成分Sのパワー|S[k]|2以下となる周波数での変数P[k]の数値は、和成分Mのパワー|M[k]|2と所定の係数(フロアリング係数)βとの乗算値に設定される(フロアリング処理)。
差成分Sの周波数成分S[k]は残留成分を抑圧した成分であるから、数式(5A)および数式(5B)で算定される変数P[1]〜P[K]の系列は、和成分Mに含まれる残留成分を強調したパワースペクトルに相当する。したがって、処理係数列GEの係数値gE[1]〜gE[K]は、残留成分のパワー(振幅)が大きい周波数の係数値gE[k]ほど1に近い数値となり、残留成分のパワーが小さい周波数の係数値gE[k]ほどゼロに近い数値となる。
図8の第2生成部764は、第1生成部762が生成した処理係数列GEを利用して残留成分の抑圧用の処理係数列GSを生成する。具体的には、第2生成部764は、以下の数式(6)で定義されるように、処理係数列GEの各係数値gE[k]を所定値(本形態では1)から減算することで処理係数列GSの各係数値gS[k]を算定する。
Figure 0005447199

数式(6)から理解されるように、第2生成部764が生成する処理係数列GSの係数値gS[1]〜gS[K]は、残留成分の強度(パワー)が大きい周波数の係数値gS[k]ほどゼロに近い数値となり、残留成分の強度(パワー)が小さい周波数の係数値gS[k]ほど1に近い数値となる。したがって、周波数スペクトルRBおよび周波数スペクトルLBの各々に信号処理部64が処理係数列GSを乗算することで、前方からの残留成分を抑圧して右後方からの到来音を強調した音響信号YRS(RD)と、前方からの残留成分を抑圧して左後方からの到来音を強調した音響信号YLS(LD)とが生成される。
以上に説明した第1実施形態によれば、サラウンド形式の5系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)が3系統の音響信号X(XC,XR,XL)に対する信号処理で生成されるから、例えば特許文献1の技術と比較して音響処理装置100Aを小型化することが可能である。また、独立成分分析(ICA)や計算論的聴覚情景分析(CASA)を利用した音源分離と比較して非常に簡便な処理で複数の音響信号Yが生成される。したがって、処理時間(レイテンシ)や消費電力が削減されるという利点がある。なお、音響の調波構造を利用する計算論的聴覚情景分析では音源分離の対象が調波構造を持つ音響信号に制約されるが、音響信号Xの調波構造を前提としない第1実施形態によれば、音響信号Xの調波構造の有無に関わらず処理できるという利点もある。
また、第1実施形態においては、音響信号XCと音響信号XLとから合成された音響信号RAのうち前方から到来する残留成分を抑圧処理部64Rにて抑圧することで音響信号YRSが生成され、音響信号XCと音響信号XRとから合成された音響信号LAのうち前方から到来する残留成分を抑圧処理部64Lにて抑圧することで音響信号YLSが生成される。したがって、残留成分を抑圧しない構成と比較すると、基準点P0の後方(左後方,右後方)に位置する音源の音像の定位感を、受聴者Aに明確に知覚させることが可能である。
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では指向性(単一指向性,双指向性)の収音機器12を利用したが、第2実施形態では無指向性の3個の収音機器12を利用して5系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)を生成する。なお、以下の各例示において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図9は、第2実施形態の音響処理装置100Bのブロック図である。図9に示すように、音響処理装置100Bには、無指向性の3個の収音機器12(12C,12R,12L)が接続される。収音機器12Cは音響信号VCを生成し、収音機器12Rは音響信号VRを生成し、収音機器12Lは音響信号VLを生成する。
図10は、各収音機器12の位置を示す模式図である。図10に示すように、収音機器12Cは基準線DCの線上の基準点P0に設置される。また、収音機器12Rは、基準線DCに対して角度θR(鋭角)をなす直線DRの線上に設置され、収音機器12Lは、基準線DCに対して角度θL(|θL|=|θR|)をなす直線DLの線上に設置される。収音機器12Rと収音機器12Lとは基準線DCに関して線対称な位置にある。
図9に示すように、第2実施形態の音響処理装置100Bは、第1実施形態の音響処理装置100Aに指向性付与部80を追加した構成である。指向性付与部80は、音響信号VCと音響信号VRと音響信号VLとに対する信号処理(指向性付与)で音響信号XCと音響信号XRと音響信号XLとを生成する。第1実施形態と同様に、音響信号XCは、前方からの到来音が強調された信号(単一指向性の信号)である。また、音響信号XRは、右前方および左後方からの到来音が強調された双指向性の信号であり、音響信号XLは、左前方および右後方からの到来音が強調された双指向性の信号である。
図11は、指向性付与部80のブロック図である。図11に示すように、指向性付与部80は、双指向付与部82Rと双指向付与部82Lと単一指向付与部84とを含んで構成される。双指向付与部82Rは、音響信号VCおよび音響信号VRから双指向性の音響信号XRを生成する。具体的には、双指向付与部82Rは、音響信号VRから音響信号VCを減算することで音響信号XRを生成する。音響信号VRから音響信号VCを減算すると、図10に実線で示すように、収音機器12Rと収音機器12Cとの垂直二等分線DVRの方向からの到来音が他方向からの到来音と比較して抑圧される。すなわち、垂直二等分線DVRの方向に収音の死角が形成される。したがって、双指向付与部82Rが生成する音響信号XRは、第1実施形態と同様に、指向軸が基準線DCに対して角度θRをなす双指向性の信号(すなわち、右前方および左後方からの到来音が強調された信号)となる。なお、音響信号VRから音響信号VCが減算されるため、音響信号XRは、第1実施形態と同様に、右前方からの到来音に対して正極性となる。
双指向付与部82Rと同様に、図11の双指向付与部82Lは、音響信号VLから音響信号VCを減算することで音響信号XLを生成する。音響信号VLから音響信号VCを減算することで収音機器12Lと収音機器12Cとの垂直二等分線DVLの方向に収音の死角が形成される。したがって、双指向付与部82Lが形成する音響信号XLは、第1実施形態と同様に、左前方および右後方からの到来音が強調された信号となる。
単一指向付与部84は、前方に指向する単一指向性の音響信号XCを生成する。図11に示すように、単一指向付与部84は、合成部842と遅延部844と合成部846とを含んで構成される。図12は、単一指向付与部84の作用の説明図である。合成部842は、音響信号VRと音響信号VLとの加算で音響信号VRLを生成する。収音機器12Rおよび収音機器12Lは無指向性であるから、合成部842が生成する音響信号VRLは、図12に鎖線で図示したように、収音機器12Rと収音機器12Lとの中点に位置する仮想的な全指向性の収音機器12RLが生成する信号に近似する。
図11の遅延部844は、音響信号VCを遅延量tだけ遅延させた音響信号VC_tを生成する。遅延量tは、後方からの到来音(速度c)が収音機器12Cから図12の仮想的な収音機器12RLまでの距離dを伝播するのに必要な時間長(t=d/c)に設定される。図11の合成部846は、合成部842が生成した音響信号VRLから遅延部844による遅延後の音響信号VC_tを減算することで音響信号XCを生成する。後方からの到来音の成分は音響信号VRLと音響信号VC_tとで同位相となるから、合成部846による減算で相殺される。すなわち、収音の死角が形成される。したがって、図12に実線で示すように、音響信号XCは、前方からの到来音を強調した単一指向性の信号となる。
以上の方法で指向性付与部80が生成した3系統の音響信号X(XC,XR,XL)を図9の前方信号生成部30および後方信号生成部40Aが処理する。前方信号生成部30および後方信号生成部40Aによる処理の内容は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、無指向性の収音機器12(12C,12R,12L)を利用できるから、単一指向性の収音機器12Cと双指向性の収音機器12Rおよび収音機器12Lとが必要な第1実施形態と比較して、音響処理装置100Bの実現に必要な費用を削減できるという利点がある。
<C:第3実施形態>
第3実施形態の音響処理装置100Cは、第1実施形態の後方信号生成部40Aを図13の後方信号生成部40Bに置換した構成である。図13に示すように、後方信号生成部40Bは、周波数分析部92と減算処理部94Rおよび減算処理部94Lと波形合成部96とを含んで構成される。周波数分析部92は、音響信号XCの周波数スペクトルQC(周波数成分QC[1]〜QC[K])と音響信号XRの周波数スペクトルQR(周波数成分QR[1]〜QR[K])と音響信号XLの周波数スペクトルQL(周波数成分QL[1]〜QL[K])とを、周波数分析部62と同様の処理で単位期間毎に順次に生成する。
減算処理部94Rは、音響信号XCの周波数スペクトルQCと音響信号XLの周波数スペクトルQLとから音響信号YRSの周波数スペクトルQRS(周波数成分QRS[1]〜QRS[K])を生成する。減算処理部94Lは、音響信号XCの周波数スペクトルQCと音響信号XRの周波数スペクトルQRとから音響信号YLSの周波数スペクトルQLS(周波数成分QLS[1]〜QLS[K])を生成する。波形合成部96は、減算処理部94Rが順次に生成する周波数スペクトルQRSから時間領域の音響信号YRSを合成し、減算処理部94Lが順次に生成する周波数スペクトルQLSから時間領域の音響信号YLSを生成する。減算処理部94Rおよび減算処理部94Lの処理を以下に詳述する。
減算処理部94Rが生成する周波数スペクトルQRSの周波数成分QRS[k]は、以下の数式(7)で表現される。
Figure 0005447199
数式(7)の記号jは虚数単位を意味し、記号θR[k]は音響信号XLの位相角を意味する。減算処理部94Rは、以下の数式(8A)および数式(8B)の演算で数式(7)のパワーPRS[k](PRS[k]=|QRS[k]|2)を算定する。
Figure 0005447199
数式(8A)から理解されるように、音響信号YRSのパワーPRS[k]は、音響信号XLのパワー|QL[k]|2から音響信号XCのパワー|QC[k]|2を減算する処理(スペクトル減算)で算定される。ただし、スペクトル減算で負数となる周波数のパワーPRS[k]は、音響信号XLのパワー|QL[k]|2と所定の係数(例えば1以下の正数)βとの乗算値に設定される(フロアリング処理)。
音響信号XLのうち左前方からの到来音の成分(音響信号XCとの重複成分)は数式(8A)のスペクトル減算で抑圧される。また、音響信号XCの残留成分(前方からの到来音)の周波数が音響信号XLと相違すると仮定すると、残留成分のパワー|QC[k]|2は音響信号XLのパワー|QL[k]|2を上回るから(|QL[k]|2<|QC[k]|2)、周波数スペクトルQRSのうち残留成分(前方からの到来音)が存在する周波数でのパワーPRS[k]は、数式(8B)のフロアリング処理で所定値(β|QL[k]|2)に設定される。したがって、周波数スペクトルQRSでは音響信号XCの残留成分が抑圧される。以上の説明から理解されるように、周波数分析部92と減算処理部94Rと波形合成部96とは、左前方および前方(残留成分)からの到来音が抑圧されるとともに右後方からの到来音が強調された音響信号YRSを生成する右後方指向部42として機能する。
減算処理部94Rと同様に、減算処理部94Lは、音響信号XRのパワー|QR[k]|2から音響信号XCのパワー|QC[k]|2を減算することで音響信号YLSのパワーPLS[k]を算定するスペクトル減算と、スペクトル減算で負数となる周波数のパワーPLS[k]を所定値(β|QR[k]|2)に設定するフロアリング処理とを実行することで、音響信号YLSの周波数スペクトルQLSを生成する。すなわち、周波数分析部92と減算処理部94Lと波形合成部96とは、右前方および前方(残留成分)からの到来音が抑圧されるとともに左後方からの到来音が強調された音響信号YLSを生成する左後方指向部44として機能する。
以上に説明したように、第3実施形態においては、サラウンド形式の5系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)が3系統の音響信号X(XC,XR,XL)に対する信号処理で生成されるから、第1実施形態と同様に、音響処理装置100Cを小型化することが可能である。なお、以上においては第1実施形態を基礎として第3実施形態を説明したが、第2実施形態の後方信号生成部40A(図9)を第3実施形態の後方信号生成部40Bに置換した構成も採用され得る。
<D:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
(1)変形例1
以上の各形態では、5系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YRS,YLS)を生成したが、サラウンド形式の4系統の音響信号Y(YC,YR,YL,YS)を生成する構成も採用される。音響信号YSは、後方(左後方や右後方)からの到来音が強調された信号であり、例えば、後方信号生成部40(40A,40B)が生成した音響信号YRSと音響信号YLSとの合成(例えば加算や減算)で生成される。
(2)変形例2
第1実施形態および第2実施形態では、音響信号RAの周波数スペクトルRBや音響信号LAの周波数スペクトルLBに処理係数列GSの各係数値gS[k]を乗算したが(数式(1A),数式(1B))、信号処理部64(抑圧処理部64R,抑圧処理部64L)による処理の内容は適宜に変更される。例えば、数式(4)で算定される処理係数列GEの各係数値gE[k]は、残留成分のパワー(振幅)が大きい周波数の係数値gE[k]ほど1に近い数値となり、残留成分のパワーが小さい周波数の係数値gE[k]ほどゼロに近い数値となる。したがって、抑圧処理部64Rが音響信号RAの周波数スペクトルRBから処理係数列GEを減算することで周波数スペクトルRC(RC[k]=RB[k]−gE[k])を生成する構成や、抑圧処理部64Lが音響信号LAの周波数スペクトルLBから処理係数列GEを減算することで周波数スペクトルLC(LC[k]=LB[k]−gE[k])を生成する構成も採用され得る。なお、残留成分の抑圧に処理係数列GEを利用する構成では処理係数列GSの生成が省略される。
(3)変形例3
第1実施形態および第2実施形態では、和成分Mと差成分Sとのスペクトル減算で生成された処理係数列GSを音響信号RA(周波数スペクトルRB)および音響信号LA(周波数スペクトルLB)に作用させたが、残留成分の抑圧には、前方からの到来音を選択的に抑圧する公知の技術(いわゆるマイナスワン処理)が任意に採用され得る。
(4)変形例4
第3実施形態おいて、数式(8B)のフロアリング処理による設定値(β|QL[k]|2)は任意に変更される。例えば、数式(8A)のスペクトル減算で負数となる周波数のパワーPRS[k]を、音響信号XLや音響信号XCとは無関係の所定値(例えばゼロ)に設定する構成も採用され得る。音響信号XLSのパワーPLS[k]の算定についても同様である。
(5)変形例5
以上の各形態で説明した処理を、所定の周波数帯域内の成分のみに限定的に適用する構成も採用され得る。また、各音響信号X(XC,XR,XL)を複数の周波数帯域に分割し、以上の各形態での処理を周波数帯域毎に並列に実行してから合成する構成も採用され得る。
100A,100B,100C……音響処理装置、12(12C,12R,12L)……収音機器、16……放音機器、22……演算処理装置、24……記憶装置、30……前方信号生成部、32……右前方指向部、36R,36L……合成部、38R,38L……調整部、34……左前方指向部、40A,40B……後方信号生成部、42……右後方指向部、44……左後方指向部、52R,52L……合成部、54……成分抑圧部、56R,56L……調整部、62……周波数分析部、64……信号処理部、64R,64L……抑圧処理部、66……波形合成部、70……係数設定部、72……和成分生成部、74……差成分生成部、76……係数列生成部、762……第1生成部、764……第2生成部、80……指向性付与部、82R,82L……双指向付与部、84……単一指向付与部、842,846……合成部、844……遅延部。

Claims (5)

  1. 前方に指向する単一指向性の第1音響信号と、右前方および左後方に指向する双指向性の第2音響信号と、左前方および右後方に指向する双指向性の第3音響信号とを処理する音響処理装置であって、
    右前方からの到来音が強調された右前方信号を前記第1音響信号と前記第2音響信号とから合成する右前方指向手段と、
    左前方からの到来音が強調された左前方信号を前記第1音響信号と前記第3音響信号とから合成する左前方指向手段と、
    左前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに右後方からの到来音が強調された右後方信号を前記第1音響信号と前記第3音響信号とから合成する右後方指向手段と、
    右前方および前方からの到来音が抑圧されるとともに左後方からの到来音が強調された左後方信号を前記第1音響信号と前記第2音響信号とから合成する左後方指向手段と
    を具備する音響処理装置。
  2. 前方からの到来音が抑圧されるように周波数毎の係数値が設定された処理係数列を生成する係数設定手段を具備し、
    前記右後方指向手段は、
    前記第3音響信号のうち左前方からの到来音を抑圧した第4音響信号を前記第1音響信号と前記第3音響信号とから合成する第1合成手段と、
    前記第4音響信号の各周波数成分に前記処理係数列の各係数値を作用させて前記右後方信号を生成する第1抑圧処理手段とを含み、
    前記左後方指向手段は、
    前記第2音響信号のうち右前方からの到来音を抑圧した第5音響信号を前記第1音響信号と前記第2音響信号とから合成する第2合成手段と、
    前記第5音響信号の各周波数成分に前記処理係数列の各係数値を作用させて前記左後方信号を生成する第2抑圧処理手段とを含む
    請求項1の音響処理装置。
  3. 前記係数設定手段は、
    前記第4音響信号と前記第5音響信号とのスペクトルの加算で和成分を生成する和成分生成手段と、
    前方からの到来音を抑圧した差成分を前記第4音響信号と前記第5音響信号とのスペクトルの減算で生成する差成分生成手段と、
    前記和成分と前記差成分とから前記処理係数列を生成する係数列生成手段とを含む
    請求項2の音響処理装置。
  4. 前記右後方指向手段は、前記第3音響信号のスペクトルから前記第1音響信号のスペクトルを減算するスペクトル減算と、前記スペクトル減算で負数となる成分値を所定値に設定するフロアリング処理とを実行して前記右後方信号を生成し、
    前記左後方指向手段は、前記第2音響信号のスペクトルから前記第1音響信号のスペクトルを減算するスペクトル減算と、前記スペクトル減算で負数となる成分値を所定値に設定するフロアリング処理とを実行して前記左後方信号を生成する
    請求項1の音響処理装置。
  5. 相異なる位置に設置された無指向性の収音機器が生成した第1原信号と第2原信号と第3原信号とから前記第1音響信号と前記第2音響信号と前記第3音響信号とを生成する指向性付与手段
    を具備する請求項1から請求項4の何れかの音響処理装置。
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