JP5488055B2 - 貴金属物品の製造方法 - Google Patents
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銀粘土には、粘土状のもの、ペースト状のもの、シート状のものなどの水分を含んだ状態のもの、彫刻板用に成形して乾燥したブロック状や板状の形態の焼結前のもの、あらかじめ指輪型、星型、ハート型、十字型、文字型などに造形して乾燥した焼結前の成形中間体の形態のものなどがある。
このような銀粘土を造形、焼結して製作した作品(銀粘度作品)の一部、或いは全部に着色したいとの要望がある。とくに高級感を出すために金で黄金色に着色したいという要望がある。
また、金で黄金色に色づける方法として、金箔や金箔を粉砕した燐片状の金粉で被覆する方法、金粉末と有機バインダー類を調合してペースト状にした金ペーストを銀粘土作品に塗布して焼き付ける方法、簡易めっき用具(例えばマルイ鍍金工業株式会社製商品名「めっき工房」)で金を電気めっきする方法、および室温で焼結する性質をもつ金コロイド溶液を塗布する方法などがある。
しかし、銀粘土焼結体に金めっきする場合、銀粘土焼結体は多孔質であるので、ロストワックス法で製造された銀溶製材に比べてピンホールが発生しやすいという問題がある。銀製品は基材の銀の硫化の影響を受けやすく、ピンホールがあるとその部位の銀が硫化し、シミのようにな黒点が生じるので好ましくない。とくに銀粘土焼結体は多孔質であって孔が内部で連通しているので、ピンホールがあるとピンホール部位のみならず、周辺に広がりをもって硫化が進む傾向がある。それを予防するためにニッケル下地めっきをしておくという方法も考えられえるが、ニッケルはアレルギー反応を示す人がいるので、指輪のような身体につける用途には好ましくない。従って、簡易めっき用具等で金を電気めっきする場合には、銀粘土焼結体に適した硫化が発生しにくい下地処理法が必要である。
また、下地金合金層は金と銀の組成が傾斜して最表面が金濃度の高い金銀合金であることから、下地金合金層上に形成する表面金被覆層の密着性が著しく向上する。
本発明では、銀粘土焼結体の表面に金を被覆し、それを加熱し合金化して形成した下地金合金層の上に金を被覆し、さらに加熱して焼き付けることにより表面金被覆層を形成するので、例えば指輪のような過酷な使用環境であっても、長期間に亘って黄金色に輝きを保ち、黄金色の色合いの良い貴金属物品が得られる。
また、下地金合金層を形成するための金塗布後の熱処理温度を200℃以上とすることにより金と銀とを相互拡散によって十分に合金化することができ、420℃以下とすることにより、合金化の進行速度を適切にして所望の下地金合金層を得ることができる。一方、表面金被覆層を形成するための金被覆後の熱処理温度を200℃以上とすることにより、下地金合金層と表面金被覆層とを十分に密着させることができ、350℃以下とすることにより、金と銀の合金化を適度にして、表面が銀色に脱色してしまうことを防止することができる。
下地金合金層及び表面被覆層は厚く形成すると剥離し易いが、金コロイド液は薄い膜状に被覆することが可能であり、金濃度の調整も簡単に行えるため、貴金属物品の製造を容易にする。
本発明の貴金属物品の製造方法において、下地金合金層は上述の金コロイド溶液を塗布したり、簡易めっき用具で電気めっきを施したりすることにより形成することができ、下地金合金層への加熱処理は家庭用のトースタなどで行うことができる。また、表面金被覆層は上述の金コロイド溶液を塗布したり、簡易めっき用具で電気めっきを複数回行うことで金被覆を行うことができ、表面金被覆層への加熱処理は同じく家庭用のトースタなどで行うことができる。尚、家庭用トースタは通常300℃前後で停止するようサーモスタットが具備されているので、容易に所望の範囲の温度まで加熱することができる。
本実施形態の製造方法が適用される貴金属物品1は、銀粘土によって製作した銀粘土焼結体2の表面の少なくとも一部に、下地金合金層3および表面金被覆層4の少なくとも2層を備えた金被覆層5が形成されている。この銀粘土は、銀又は銀合金からなる銀粉末に、有機系バインダー等を添加して作製される。
有機系バインダーは、セルロース系バインダー、ポリビニール系バインダー、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、樹脂系バインダー、澱粉、ゼラチン、小麦粉などいかなるバインダーを使用してもよいが、セルロース系バインダー、特に水溶性セルロースが最も好ましい。この有機系バインダーは、銀粘土中に、銀粉末が50〜95質量%(好ましくは70〜95質量%)に対して、0.8〜8質量%(好ましくは0.8〜5質量%)含まれる。
その他、必要に応じて油脂、界面活性剤などを含有し、残りは水が含まれる。
このようにして作製される銀粘土を造形し、550〜900℃の温度で、造形物の大きさにもよるが5〜70分間加熱することにより、銀粘土焼結体が形成される。
この下地金合金層3および表面金合金層4を形成するための金被覆手段はとくに限定しないが、ここでは金コロイド液による金被覆について説明する。
保護剤としては、分子中に窒素を含む炭素骨格を有し、かつ窒素又は窒素を含む原子団をアンカーとして金粒子表面に配位修飾した構造を有し、アルコキシシリル基、シラノール基及びハイドロキシアルキル基からなる群より選ばれた1種又は2種以上の官能基を分子構造に含む構成とされる。
<下地金合金層形成工程>
まず、この金コロイド液を銀粘土焼結体2の表面に塗布した後、乾燥させ、所定温度に加熱して下地金合金層3を形成する。この下地金合金層3を形成するための金被覆は、目付け0.2〜1.2mg/cm2であることが好ましい。0.2mg/cm2未満であると、貴金属物品の耐硫化性を十分に向上できない場合があり、1.2mg/cm2を超えると、表面金被覆層との密着性を十分に向上できない場合がある。
下地金合金層3を形成するための金塗布後の熱処理温度は、200〜420℃が好適である。200℃未満では金と銀との相互拡散による合金化が不十分となる場合があり、420℃を超えると合金化が早く進みすぎるため所望の下地金合金層3が得にくくなる場合があるためである。熱処理温度は240℃〜320℃がより好ましい。最高温度での保持時間としては1秒間〜30分間で良い。
前記熱処理後に下地金合金層3をバフ研磨したりシルバーポリッシュクロスで擦ったりして磨いても良い。この段階で、下地金合金層を削り取らないよう磨いておくと、次工程の表面金被覆層形成後の色合いが良くなりやすい。
次いで、下地金合金層3の上に金コロイド液を塗布した後、乾燥させ、所定温度に加熱して表面金被覆層4を形成する。この表面金被覆層4を形成するための金被覆は、目付け0.4〜2.8mg/cm2であることが好ましい。0.4mg/cm2未満であると、貴金属物品の黄金色を維持することができない場合があり、2.8mg/cm2を超えると、密着性を十分に向上できない場合がある。
表面金被覆層4を形成するための金被覆後の熱処理温度は、200〜350℃が好適である。200℃未満では下地金合金層と表面金被覆層との密着性が不十分となる場合があり、350℃を超えると金と銀の合金化が進んで表面が銀色に脱色してしまう場合がある。熱処理温度は、240℃〜300℃がより好ましい。最高温度での保持時間としては1秒間〜30分間で良い。
したがって、図1(b)に示すように、この貴金属物品1の表面付近の金濃度は、表面金被覆層4の最表面が最も高く、深くなるにしたがって徐々に低くなるように傾斜した濃度勾配となるが、表面金被覆層4と下地金合金層3との界面付近では、濃度勾配にわずかな不連続部分が生じる傾向にある。
また、下地金合金層3は金と銀の組成が傾斜して最表面が金濃度の高い金銀合金であることから、下地金合金層3上に形成する表面金被覆層4の密着性が著しく向上する。
(1)金濃度が100g/l(リットル)の塩化金酸水溶液:40g、アミノプロパノール:30g、ジメチルアミン錯体:0.01gを色が茶褐色になるまで攪拌混合する。
(2)得られた金コロイド分散液を遠心分離機にかけて沈降させ、上澄み液を捨てる。そして、蒸留水を加えて振とうした後、遠心分離機にかけて沈降させる、という操作を3度繰り返して洗浄する。
(3)洗浄後の金コロイド分散液0.1mlをとって、その乾燥重量から金含有濃度を算出する。
(4)金濃度が0.1g/ml、分散媒として水:エチルアルコールが1:3の重量比率になるようにエチルアルコール及び水を加える。
尚、焼成用ポット、シルバークロスは、三菱マテリアル株式会社製PMCスターターキットの内容物を使用した。
金塗布前の銀粘土焼結体の重量と、金被覆して熱処理した後の貴金属物品の重量との差の重量増加分を金塗布重量とし、指輪形状の銀粘土焼結体の外径寸法、内径寸法、幅寸法から銀粘土焼結体の表面積を算出し、前記金塗布重量を前記表面積で除した値を金塗布目付け重量として算出し、その値を表1に示した。
比較例として、下地金合金層を形成しない銀粘土焼結体のままのものを用いた。
次いで、耐硫化性試験として、純水200mlにいぶし液(日陶科学株式会社製、目薬タイプの容器入り)を5滴滴下したいぶし液水溶液を準備し、剥離の無かったものについて、前記いぶし液水溶液に30秒間浸漬し、黒シミの発生の有無を目視観察し、その結果を表3に示した。
さらに、実施例1のものを別途1個作製し、右手薬指に2個とも着装し、2ヶ月間の日常生活を過ごしたところ、自動車運転時にハンドルと擦れた部位に0.5mmφ程度の大きさで黄金色が剥がれて下地の銀色が現れていたものの、他の部位は黄金色が維持されていた。
2 銀粘土焼結体
3 下地金合金層
4 表面金被覆層
5 金被覆層
Claims (1)
- 銀又は銀合金からなる銀粘土焼結体の表面の少なくとも一部に表面金被覆層および下地金合金層の少なくとも2層からなる金被覆層が形成された貴金属物品を製造する方法であって、
前記銀粘土焼結体の表面に目付け0.2〜1.2mg/cm2の金被覆を施し、加熱保持して前記下地金合金層を形成する下地金合金層形成工程と、
前記下地金合金層に、目付け0.4〜2.8mg/cm2の金被覆を施し、加熱保持して前記表面金被覆層を形成する表面金被覆層形成工程と、を有し、
前記下地金合金層形成工程では、温度200℃〜420℃、1秒間から30分間の条件で加熱保持し、
前記表面金被覆層形成工程では、温度200℃〜350℃、1秒間から30分間の条件で加熱保持する
ことを特徴とする貴金属物品の製造方法。
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