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JP5514770B2 - 銀ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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本発明の実施形態は、銀ナノ粒子の製造方法に関する。
銀ナノ粒子などの金属ナノ粒子の製造方法として、気相法および液相法が知られている。気相法では、不活性ガス存在下の真空中で金属の蒸気を冷却するため、金属の蒸発装置および真空装置が必要である。金属ナノ粒子の生産量が少なく、気相法は大量生産には適さない。液相法では、金属塩などの金属化合物溶液を還元するので、還元剤や粒子成長を抑制するための界面活性剤が必要とされる。得られる粒子の分散性は、必ずしも良好ではない。
近年、還元剤、界面活性剤、および溶媒などを用いずに金属ナノ粒子を得る方法が提案されているものの、得られる金属ナノ粒子の分散安定性は十分ではない。
特許第4352258号公報
本発明が解決しようとする課題は、分散媒への分散安定性に優れ、比較的低温で焼成することによって高い導電性を示す銀ナノ粒子を製造する方法を提供することにある。
実施形態の銀ナノ粒子の製造方法は、炭素数4〜12の炭化水素基を有する一級アミンと脂肪酸銀との混合物を、不活性ガス雰囲気中、前記一級アミンの沸点を超える温度Tに供して前記混合物を溶融させ、溶融物中に銀ナノ粒子を生成させることを特徴とする。前記温度Tは、以下の条件を満たす。
L≦T≦TH
(TLおよびTHは、それぞれろ過収率が10%以上の銀ナノ粒子が得られる下限温度および上限温度であり、前記ろ過収率は、得られた銀ナノ粒子を5質量%のトルエン分散液として5μmのフィルターを通過させたろ液のろ過前後の固形分濃度の比であって、前記固形分濃度は熱重量分析により150℃まで加熱した際の減少重量から算出される。)
加熱温度と銀ナノ粒子のろ過収率との関係を示すグラフ図。 加熱温度と銀ナノ粒子における金属含有率との関係を示すグラフ図。
以下、本発明の実施形態を説明する。
銀ナノ粒子は、配線等の導電膜の形成に用いることができる。例えば、銀ナノ粒子を含有するインクを用いて、基板上に目的の配線パターンを形成する。配線パターンを焼成することにより銀ナノ粒子が焼結して、パターン化された導電膜としての配線が形成される。
所定の特性を備えた銀ナノ粒子であれば、分散媒に分散させてインクジェットインクとして用いることができる。例えば、インクジェットヘッドのノズルから吐出するのに適切な粒径を有し、分散媒中で安定に分散できる銀ナノ粒子である。本発明者らは、こうした特性を備えた銀ナノ粒子を得るための適切な方法を見出した。
本実施形態の方法においては、炭素数4〜12の炭化水素基を有する一級アミンとともに脂肪酸銀が加熱される。一級アミンが触媒として作用し、加熱により脂肪酸銀が分解して銀粒子が生成する。脂肪酸銀から分解・遊離した脂肪酸は、こうして生成した銀粒子の表面に吸着して分散剤として作用する。一級アミンもまた、銀粒子の表面に吸着して同様に分散剤として作用する。こうして本実施形態の方法により製造された銀ナノ粒子は、脂肪酸および一級アミンを分散剤成分として表面に有するので、分散媒中での分散安定性が優れている。
炭素数4〜12の炭化水素基を有する一級アミンとともに脂肪酸銀が加熱されると、得られる溶融物中に銀ナノ粒子が生成する。なお、ナノ粒子とは、透過電子顕微鏡(TEM)により求められた一次粒子径が100nm以下の粒子をさす。
脂肪酸銀における脂肪酸は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、分子量は500以下であることが望まれる。分子量が500以下の脂肪酸であれば、配線パターンの焼成処理時に、膜中に残存して電気特性に悪影響を及ぼすおそれが少ない。脂肪酸銀としては、例えば、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、カプリン酸銀、カプロン酸銀、カプリル酸銀、吉草酸銀、およびオレイン酸銀などが挙げられる。脂肪酸は、上述したように加熱により脂肪酸銀から分解・遊離し、粒子の表面に吸着して銀ナノ粒子を保護するとともに、分散性を高める分散剤として作用する。
生成される銀ナノ粒子の粒径、および粒子表面における分散剤成分の割合は、脂肪酸における炭素鎖の長さなどによって変化する。炭素数の少なすぎる脂肪酸は、熱的に不安定であり、銀ナノ粒子表面から脱離しやすい。このため、得られる銀ナノ粒子の粒径が大きくなってしまう。一方、炭素数が多すぎる場合には、粒子表面の分散剤成分の割合が相対的に大きくなって、銀ナノ粒子における金属含有率が小さくなってしまう。これらを考慮すると、脂肪酸における炭素数(ここでの炭素数は、COOH中のCも含む)は5〜20が好ましく、最も好ましい脂肪酸銀はラウリン酸銀である。
ラウリン酸銀は、例えば、等モルのラウリン酸ナトリウムと硝酸銀とから合成することができる。ラウリン酸ナトリウムを純水に溶解し、得られた溶液に硝酸銀水溶液を滴下すると、粉末状のラウリン酸銀が生じる。これをろ別し、水洗して余分なラウリン酸ナトリウムおよび副生成物の硝酸ナトリウムを取り除くことによって、ラウリン酸銀が得られる。
一般的には、脂肪酸銀は、銀化合物と脂肪酸とを原料として合成することができる。銀化合物としては、具体的には、硝酸銀、安息香酸銀、クエン酸銀、炭酸銀、硫酸銀、硝酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、およびトリフルオロ酢酸銀などが挙げられる。
脂肪酸には、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基または環状炭化水素基のいずれが含まれていてもよい。上述したように分子量が500以下であれば、任意の脂肪酸を用いることができる。具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、吉草酸、およびオレイン酸等が挙げられる。脂肪酸は、銀化合物の0.5〜1.5当量に相当する量で用いることができる。
本実施形態にかかる方法においては、脂肪酸銀は一級アミンとともに加熱されて溶融する。一級アミンは、脂肪酸銀の分解および金属銀への還元を進行させるための触媒として作用する。後述するように一級アミンは、銀ナノ粒子の成長中にその表面に吸着する。こうして一級アミンは、銀ナノ粒子が過剰に成長するのを抑制するとともに、銀ナノ粒子の表面に強固に配位して分散剤としても作用する。その結果、分散媒中における分散性が良好な銀ナノ粒子が得られる。一級アミンは、二級アミンおよび三級アミンと比較して、銀ナノ粒子の表面に対する結合能がより高い。一級アミンの効果が損なわれない範囲の量であれば、二級アミンおよび/または三級アミンが併用されてもよい。
一級アミンは、炭素数4〜12の炭化水素基を有する。炭化水素基における炭素数が4〜12の範囲内であれば、得られる銀ナノ粒子の分散安定性および焼成温度を最適な範囲内とすることができる。基板等に塗布し焼成して導電膜を形成する際には、銀ナノ粒子は焼結後に高い導電性を示すことが要求される。銀ナノ粒子が焼結された際に分散剤成分が残留せずに粒子の表面から脱離すれば、導電性が高められる。また、基板や電子部品へ及ぼす影響を考慮すると、焼成温度は、従来行なわれている半田リフロー温度と同等の250℃以下程度の比較的低温であることが好ましい。
炭素数3以下の炭化水素基を有する一級アミンが用いられた場合には、分散安定性の良好な銀ナノ粒子を得ることができない。一方、炭素数13以上の炭化水素基を有する一級アミンは、260℃を超える高温で焼成しなければ銀ナノ粒子の表面から脱離しないので、高い導電性を確保するためには高温での焼成が必要とされる。しかも、一級アミンに含まれる炭化水素基の炭素数は、得られる銀ナノ粒子の粒径にも影響を及ぼす。こうした理由から、本実施形態において用いられる一級アミンに含まれる炭化水素基は、炭素数4〜12に規定される。
炭化水素基としては、飽和炭化水素アルキル基のほか、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素等が挙げられる。分散性の良好な銀ナノ粒子が得られることから、アルキル基が好ましい。アルキルアミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、およびドデシルアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンの沸点は、50℃以上250℃以下であることが好ましい。沸点の低すぎるアルキルアミンは、銀ナノ粒子の表面に配位したところで脱離しやすい傾向がある。このため、分散媒中に十分に安定に分散できる銀ナノ粒子が得られない。一方、沸点が高すぎるアルキルアミンは、250℃程度で焼結しても銀ナノ粒子の表面から脱離せず残留するおそれがある。その結果、焼成後の導電性が低下する。250℃以下程度の低温で焼成でき、しかも焼成後に所望の導電性が得られることから、ヘキシルアミンが最も好ましい。
一級アミンにおける炭化水素基には、飽和炭化水素基以外の炭化水素基が含まれていてもよい。例えば、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、および芳香族炭化水素基などが挙げられ、炭化水素基における炭素数が12以下となる範囲で適宜選択することができる。また、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基が存在していてもよい。例えば、水酸基を有するヒドロキシアミンなどを併用することもできる。
本実施形態にかかる方法により銀ナノ粒子を製造するにあたっては、まず、脂肪酸銀、および脂肪酸銀の0.5〜1.5当量に相当する一級アミンを反応容器に収容し、所定の温度で加熱する。加熱によって、脂肪酸銀と一級アミンとを含む溶融物が得られる。ここでの加熱温度は、一級アミンの沸点より高く、しかも後述する条件を満たす温度である。熱エネルギーが駆動力となって、脂肪酸銀の熱分解と同時に金属銀への還元が誘起される。このため、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、グルコース、蟻酸、およびヒドラジンのような従来の還元剤は使用されない。従来の還元剤では、銀ナノ粒子の有機保護基以外の成分が残留し、導電膜を作製する際に悪影響が及ぼされていた。一級アミンは、これ自体が有機保護基となるので、そのような問題が生じるおそれはない。
脂肪酸銀の熱分解反応を均一にするために少量の溶媒が加えられてもよいが、銀ナノ粒子を効率よく大量に製造するためには溶媒は存在しないことが望ましい。溶媒が用いられる場合には、一級アミンの沸点より高い沸点を有し、銀ナノ粒子の生成反応に関与しない飽和炭化水素溶媒が好ましい。具体的には、デカン、およびウンデカンなどである。溶媒の量は、脂肪酸銀と一級アミンとの総量の50質量%以下程度にとどめることが望まれる。
脂肪酸銀と一級アミンとの加熱は、不活性ガス中で行なわれる。不活性ガスは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、および二酸化炭素などから選択することができる。通常、脂肪酸銀と一級アミンとの混合物を攪拌しつつ加熱が行なわれる。この混合物は、加熱により溶融して液状となればよく、常温(25℃)においては、脂肪酸銀および一級アミンは必ずしも液状である必要はない。
脂肪酸銀と一級アミンとは、オイルバスやヒーターなどを用いて、反応容器の外部から加熱することができる。反応容器を均一に加熱するためにはオイルバスが望ましいが、マントルヒーターやリボンヒーターなどを用いてもよい。この際の加熱温度は、一級アミンの沸点を超える温度とする。加熱温度は、さらに特定の条件を満たすが、これについては後述する。加熱温度は、反応容器壁の温度で管理することができる。場合によっては、オイルバスやヒーターの温度で管理してもよい。
加熱温度は、一級アミンの種類に応じて適宜選択することができるが、少なくとも一級アミンの沸点より高い。加熱によって、脂肪酸銀と一級アミンとを含む溶融物が生じる。溶融物においては、上述したように一級アミンが触媒として作用して、脂肪酸銀の分解と同時に金属銀への還元とが起こる。生成した金属銀は粒子として成長するものの、脂肪酸銀から分解した脂肪酸および一級アミンが粒子の表面に吸着することにより粒径の増大は抑制される。その結果、粒子の粒径は数nm〜数十nm程度にとどまってナノ粒子が得られる。
一級アミンに含まれる炭化水素基の炭素数、および脂肪酸銀の脂肪酸における炭素数によって、得られる銀ナノ粒子の粒径を制御することができる。適切な粒径の銀ナノ粒子を得るために、一級アミンに含まれる炭化水素基の炭素数は4〜12に規定され、脂肪酸銀の脂肪酸における炭素数は5〜20が好ましい。
加熱温度が低すぎる場合には、脂肪酸銀の分解および金属銀への還元が十分に進行せずに銀原料である脂肪酸銀が残留する。こうして得られた銀ナノ粒子は、残留した脂肪酸銀の影響を受けて分散媒中に安定に分散できない。一方、加熱温度が高すぎる場合には、一級アミン、脂肪酸銀における脂肪酸およびその分解物に由来する有機副生成物が発生して、銀ナノ粒子が凝集する。凝集した銀ナノ粒子もまた、分散媒中に安定に分散性できない。有機副生成物の発生を極力回避しつつ銀ナノ粒子の生成が十分に進行するように、一級アミンの種類等に応じて適切な加熱温度を選択することが望まれる。
上述したように、脂肪酸銀と一級アミンとを含む混合物の加熱は一級アミンの沸点を超える温度で行なわれるため、加熱中は還流器により一級アミンを還流させる。加熱中の混合物の温度は必ずしも設定された加熱温度とは一致しないが、一級アミンの種類に応じて適宜最適な範囲に設定すればよい。通常は、3〜10時間程度で、溶融物中に銀ナノ粒子が生成する。例えば、ラウリン酸銀とヘキシルアミンとを使用した場合には、135〜145℃で4〜7時間程度加熱することによって銀ナノ粒子が生じる。
その後、銀ナノ粒子が生じた溶融物の温度を低下させ、必要に応じて有機溶媒を加えて凝集沈殿させて、銀ナノ粒子を回収することができる。例えば、ウォーターバスなどを用いて水冷することによって、溶融物の温度を加える有機溶媒の沸点未満に下げることができる。溶融物の温度は、熱電対や棒温度計によりフラスコ中の液温を測定することによって求めることができる。
有機溶媒としては、例えば、メタノールやアセトンなどを用いることができる。場合によっては、その後、ろ過、遠心分離、デカンテーションなどを行なって銀ナノ粒子を洗浄してもよい。あるいは、溶媒抽出を行なって、溶融物中から銀ナノ粒子を回収することもできる。
得られる銀ナノ粒子の表面には、分散剤成分としての一級アミンおよび脂肪酸が存在する。こうした分散剤成分の存在は、例えば次のような手法により確認することができる。まず、極性溶媒中での還流を行なって、銀ナノ粒子表面の分散剤成分(一級アミンおよび脂肪酸)を抽出する。極性溶媒としては、例えばアセトン、およびアセトニトリル等が挙げられる。得られた分散剤成分についてIR解析やNMR解析を行なえば、一級アミンの存在を確認することができる。脂肪酸の存在は、例えば銀ナノ粒子を直接IR測定することによって確認することができる。
生成した銀ナノ粒子の一次粒子径は、平均粒径として60nm以下となる。銀ナノ粒子の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いた観察により平均値として求めることができる。平均粒径が60nm以下の銀ナノ粒子は、有機溶媒等の分散媒中に分散させると分散安定性の良好なインクが得られる。このインクは、一般的なインクジェットヘッドのノズルから安定に吐出させることができ、インクジェットインクとしての適用が可能である。
以下に、銀ナノ粒子の製造方法の具体例を示す。
まず、ラウリン酸ナトリウムと硝酸銀とを等モル量混合し、純水中でイオン交換により脂肪酸銀としてのラウリン酸銀を合成した。得られたラウリン酸銀(20g)と、一級アミンとしてのヘキシルアミン(9.9g)とを四つ口フラスコに中に収容し、窒素気流中で攪拌しながらオイルバスにより加熱した。なお、ヘキシルアミンの沸点は、約131℃であり、ヘキシルアミンの量は、ラウリン酸銀の1.5倍当量に相当する。
オイルバスが所定の温度に昇温したところで温度を維持し、ヘキシルアミンを還流させつつ加熱を行なった。温度は、オイルバス中の反応容器近傍に設置された熱電対によりモニターしつつ135〜143℃の範囲で変化させた。ここでは、オイルバスの温度を加熱温度とする。ラウリン酸銀とヘキシルアミンとの混合物は、加熱により溶融した。5時間保持したところ、加熱温度が131℃以上のものでは、溶融物中に銀ナノ粒子の生成が確認された。
銀ナノ粒子が生成したものについて、反応容器をウォーターバスにて冷却して溶融物の温度を60℃に低下させ、メタノール(300mL)を加えて粒子を凝集させた。凝集した銀ナノ粒子は、吸引ろ過により回収した。
いずれの加熱温度の場合も、銀ナノ粒子のTEM観察により得られた平均一次粒径は、約20nmであった。また、最大一次粒径は60nmであり、最小一次粒径は12nmであった。
それぞれの温度で得られた銀ナノ粒子をトルエンに分散させて、5質量%の分散液を調製した。これを、5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のフィルターでろ過し、ろ液中の固形分濃度を測定してフィルターによるろ過収率を算出した。固形分濃度は、熱重量分析(TG)により150℃まで加熱したときの重量の減少から算出した。加熱温度とろ過収率との関係を、図1に示した。
図1に示されるように、加熱温度が上昇するとろ過収率は変化する。ろ過収率は、加熱温度が131℃以下の場合には0%であるが、131℃を超えると温度とともに増加し、加熱温度が138℃程度では20%程度に達している。加熱温度がさらに高くなると、ろ過収率は低下している。135〜145℃の温度で加熱が行なわれた場合には、10%以上のろ過収率が得られることがわかる。ここで求めたろ過収率が10%以上であれば銀ナノ粒子は分散媒中に安定に分散でき、分散安定性が良好である。
上述したように、131℃未満の温度で加熱された場合には、ろ過収率は0%となって分散可能な銀ナノ粒子の生成は確認されない。この131℃という温度は、一級アミンとしてのヘキシルアミンの沸点である。したがって、本実施形態にかかる方法により銀ナノ粒子を得るためには、少なくとも一級アミンの沸点より高い温度での加熱が必要とされることがわかる。
それぞれの加熱温度で得られた銀ナノ粒子について、含有される無機物(金属銀)量を求めた。具体的には、TG測定による重量減少量から金属含有量100(w1/w0)を求めた。w0は各加熱温度で得られた銀ナノ粒子全体の分析前の重量であり、w1は前記銀ナノ粒子を熱重量分析により350℃まで加熱した後の重量である。加熱温度と金属含有量との関係を、図2に示した。
図2に示されるように、銀ナノ粒子中における金属銀の含有量は、加熱温度が高くなるにしたがって増加し、加熱温度が135℃以上であれば60wt%以上なる。金属銀の含有量が60wt%以上であれば、焼成後に所望の導電性が確保できる。この温度は、図1を参照して説明した、ろ過収率が10%以上の銀ナノ粒子が得られる加熱温度の下限と一致している。
加熱温度が140℃以上に高くなっても、銀ナノ粒子中における金属銀の含有量は顕著に増加することはないので、金属銀の生成反応は十分に進行したものと推測される。しかしながら、加熱温度が140℃を超えると、TG測定における重量減少の起きる範囲が異なって(シフトして)きている。副反応が生じて、分散剤成分としての一級アミンが変化したものと考えられる。上述したように、加熱温度が所定の範囲を超えて高くなると、得られる銀ナノ粒子の分散安定性が劣化することが図1に示されている。
以上の結果に基づいて、本実施形態においては、脂肪酸銀を一級アミンとともに加熱する温度Tの範囲を以下のように決定した。
L≦T≦TH
(TLおよびTHは、それぞれろ過収率が10%以上の銀ナノ粒子が得られる下限温度および上限温度であり、前記ろ過収率は、得られた銀ナノ粒子を5質量%のトルエン分散液として5μmのフィルターを通過させたろ液のろ過前後の固形分濃度の比であって、前記固形分濃度は熱重量分析により150℃まで加熱した際の減少重量から算出される。ただし、TLは前記一級アミンの沸点より高い。)
特に、脂肪酸銀としてのラウリン酸銀と、一級アミンとしてのヘキシルアミンとを用いて、本実施形態にかかる方法により銀ナノ粒子を製造する場合には、加熱温度は135℃以上145℃以下とすることが好ましい。
以上説明したように、本発明者らは、分散媒に安定に分散できる銀ナノ粒子を得るためには、製造時の条件に適切な範囲が存在することを見出した。本実施形態の方法によれば、低分子量の一級アミンを脂肪酸銀とともに所定の温度で加熱することによって、分散安定性に優れ、しかも比較的低温での焼成によって高い導電性を示す銀ナノ粒子を効率よく製造することが可能となった。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (6)

  1. 炭素数4〜12の炭化水素基を有する一級アミンと脂肪酸銀との混合物を、不活性ガス雰囲気中、前記一級アミンの沸点を超える温度T(Tは以下の条件を満たす)に供して前記混合物を溶融させ、溶融物中に銀ナノ粒子を生成させる工程
    L≦T≦TH
    (TLおよびTHは、それぞれろ過収率が10%以上の銀ナノ粒子が得られる下限温度および上限温度であり、前記ろ過収率は、得られた銀ナノ粒子を5質量%のトルエン分散液として5μmのフィルターを通過させたろ液のろ過前後の固形分濃度の比であって、前記固形分濃度は熱重量分析により150℃まで加熱した際の減少重量から算出される。)
    を具備することを特徴とする銀ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記下限温度TLは、100(w1/w0)で表わされる金属含有量(w0は得られた銀ナノ粒子全体の重量であり、w1は前記銀ナノ粒子を熱重量分析により350℃まで加熱した後の重量である。)が60wt%以上の銀ナノ粒子が得られる温度であることを特徴とする請求項1に記載の銀ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記溶融物の温度を加える有機溶媒の沸点未満の温度に下げ、有機溶媒を加えて前記銀ナノ粒子を凝集させる工程をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノ粒子の製造方法。
  4. 前記一級アミンは、前記脂肪酸銀の0.5〜1.5当量に相当する量で用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子の製造方法。
  5. 前記加熱は、3〜10時間行なわれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記一級アミンはヘキシルアミンであり、前記脂肪酸銀はラウリン酸銀であり、前記加熱温度は135℃以上145℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の銀ナノ粒子の製造方法。
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