JP5568380B2 - 発酵乳の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2では、原料ミックスを超高圧のホモゲナイザーをかけることにより、脂肪球を微細化することが行われている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、離水が少ない組織が安定した発酵乳を得ること、しかも、当該発酵乳を、特別な原料や設備を使用することなく製造することを課題とする。
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[4]発酵乳が静置型発酵乳である[1]〜[3]の何れか一項に記載の発酵乳の製造方法。
[5]スターター(D)として乳酸菌スターターを用いる[1]〜[4]の何れか一項に記載の発酵乳の製造方法。
本発明における発酵乳は、静置型の発酵乳、撹拌型の発酵乳の何れでもよいが、離水の抑制が特に求められる点で、静置型の発酵乳であることが好ましい。
静置型発酵乳(後発酵タイプの発酵乳、セットヨーグルトとも呼ばれる。)とは、飲食用の容器(小売り容器)に発酵原料を充填して発酵させた凝固状の発酵乳(ヨーグルト)である。すなわち、飲食用の容器に発酵原料を充填してから発酵し、その後撹拌することなく市販に供する発酵乳(ヨーグルト)である。
静置型の発酵乳の品種としては、少なくとも甘味料や香料が添加されていないプレーンヨーグルト、甘味料、香料、及び寒天、ゼラチン、ペクチン等の安定剤が添加されていないプレーンヨーグルト、並びに寒天、ゼラチン、ペクチン等の安定剤が添加されたハードヨーグルト等が挙げられる。
撹拌型の発酵乳(前発酵タイプの発酵乳とも呼ばれる。)とは、発酵原料をタンク中で予め発酵させ、その後飲食用の容器(小売り容器)に充填して市販に供する発酵乳(ヨーグルト)である。
本発明では、発酵乳の製造に用いる全原料(発酵原料)を、脂肪分を含む原料(A)と、脂肪分を含まない原料(B)とスターター(D)に分け、脂肪分を含む原料(A)のみ均質化した後に原料(A)と原料(B)を混合して、混合原料(C)とする。
そして、混合原料(C)にスターター(D)を加えて得られる発酵原料(E)を、発酵させる。
脂肪分を含む原料(A)としては、生乳、部分脱脂乳、バター、植物性油脂、クリーム、クリーミングパウダーなどが挙げられる。
クリームは、生クリームであっても、植物油脂、乳化剤、安定剤などを用いて合成された合成クリームであってもよい。クリーミングパウダーは、生クリームを乾燥させたものでも、合成クリームを乾燥させたものでもよい。
特に、バターやクリーム等に加えて、脱脂粉乳や脱脂濃縮乳等の無脂乳固形分を含む原料を用いると、脂肪分の乳化を促進できるので好ましい。
脂肪分を含む原料(A)の無脂乳固形分濃度は、5〜20質量%とすることが好ましく、5〜10質量%とすることがより好ましい。
なお、無脂乳固形分とは、乳由来のタンパク質、乳糖、ミネラルを意味する。
脂肪分を含まない原料(B)は、全体として、均質化処理を行わずに発酵させても、表面にクリーム層の分離を生じない原料であればよい。したがって、クリーム層の分離を引き起こさない程度の、若干の脂肪分を含んでいてもよい。
原料(A)由来の蛋白質量の割合が低いほど、本願発明の効果が顕著に得られる。一方、原料(A)由来の蛋白質量の割合が低すぎると、原料(A)に含まれる無脂乳固形分が不足し、脂肪分の乳化が阻害されやすい。
なお、脂肪含量が2質量%を超えるものでは、もともと離水しにくいことから、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。また、脂肪含量が0.3質量%未満の場合では、本発明の方法を以てしても、離水抑制が十分に期待されるには至らない恐れがある。
すなわち、本発明において離水抑制の効果が発揮される発酵乳としては、部分脱脂ヨーグルト(特に脂肪含量が0.5〜2.0%に好適である。)や脱脂ヨーグルト(例えば脂肪含量が0.5%以下)等の低脂肪タイプの発酵乳、なかでも低脂肪タイプの静置型発酵乳において当該効果が特に享受されるのである。
発酵原料(E)の無脂乳固形分濃度は、8〜15質量%とすることが好ましく、10〜13質量%とすることがより好ましい。
また、原料(A)が合成クリーム又は合成クリームを乾燥させたクリーミングパウダーを含む場合は、合成クリームの合成に用いられるレシチン等の安定剤を、発酵原料(E)に含んでいてもよい。
均質化工程では、原料(A)のみを均質化する。原料(B)の均質化は行わない。
均質化は、予め原料(A)を加温し、当該加温した温度で行うことが好ましい。加温により、乳化が促進できる。
加温は、60〜85℃とすることが好ましい。
均質圧は、10〜20MPaとすることが好ましい。20MPa以下であれば、通常の高圧ホモゲナイザーを使用できる。また、10MPa以上であれば、原料(A)を充分に均質化できる。なお、超高圧ホモゲナイザーを使用し、20MPaを超える均質圧で均質化してもよい。
混合工程では、予め均質化した原料(A)と、均質化をしていない原料(B)とを混合し、混合原料(C)を得る。
混合工程は、後述の後殺菌工程前に行っても、前殺菌工程後に行ってもよい。
殺菌工程は、前殺菌工程でも後殺菌工程でもよい。
前殺菌工程は、混合工程に先立ち、予め均質化した原料(A)と、均質化をしていない原料(B)とを、各々別個に殺菌する工程である。後殺菌工程は、混合工程後に、混合原料(C)を殺菌する工程である。
前殺菌工程、後殺菌工程共に、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、直接加熱式殺菌機、ジャケット付きタンク等を用いることができる。殺菌条件は、85〜95℃で1〜15分間とすることが好ましい。
発酵工程では、混合原料(C)にスターター(D)を添加して発酵原料(E)を得て、これを発酵させる。発酵工程は、混合工程と殺菌工程(前殺菌工程または後殺菌工程)の双方が終了した後に行う。
スターター(D)は、乳酸菌スターター、酵母が挙げられるが、乳酸菌スターターを用いることが好ましい。乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌スターターが挙げられる。また、乳酸菌スターターを用いる場合、ビフィズス菌スターター、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)等を添加してもよい。また、市販の乳酸菌スターターも用いることができる。
発酵時は、当該スターター(D)の生育に好適な温度に保持する。好適な温度は、菌種によって異なるが、上記で例示した乳酸菌であれば、37〜40℃が好ましい。
pHが4.6〜4.7に達した時点で発酵を終了させて、発酵乳を得ることができる。スターター(D)の添加から発酵終了までに要する時間(発酵時間)は、通常4〜6時間である。
上記製造方法で得られる発酵乳は、離水が少なく、組織が安定した発酵乳であるという特徴を有する。これは、発酵原料(E)に含まれる蛋白質の相当量を均質化しないことによって得られる効果であると考えられる。
すなわち、均質化処理は、クリーム層分離抑制のため必須の工程ではあるものの、蛋白質にとっては、必ずしも良い影響を与えていないと考えられる。つまり、均質化処理により蛋白質の構造が一部破壊されると、ネットワークが弱められ、これが離水の原因になっているものと推測される。
本発明の発酵乳は離水が少ないことにより、外観や風味を保ちながら保存することが可能である。
(1)発酵乳の調製
[原料]
以下の試験例で用いた原料は下記のとおりである。
クリーム:
森永乳業株式会社にて、生乳を遠心分離して製造した生クリーム。脂肪含量45.5%、蛋白質含量1.6%、無脂乳固形分4.5%。
脱脂濃縮乳:
森永乳業株式会社にて、生乳を遠心分離して脱脂乳を調製し、これを減圧濃縮して製造した脱脂濃縮乳。脂肪含量0.3%、蛋白質含量12.4%、無脂乳固形分34.6%。
脱脂粉乳:
森永乳業株式会社にて、前記脱脂濃縮乳を噴霧乾燥して製造した脱脂粉乳。脂肪含量1.0%、蛋白質含量34.0%、無脂乳固形分95.2%。
スターター:
ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)の混合培養物(乳酸菌スターター)。脂肪含量0.1%、蛋白質含量4.1%、無脂乳固形分10%
表1に示す原料組成で、クリームと、脱脂粉乳を含み、残部が水である原料を混合して70℃まで加温し、均質圧15MPaで均質化処理を行った。均質化装置としては、三丸機械工業(株)製ホモジナイザーを用いた。その後10℃以下(0℃超)まで冷却して、表1に示す各原料(A)(A−1〜A−6)を得た。
表1に、原料組成から計算した各原料(A)の脂肪含量、蛋白質含量、無脂乳固形分を併せて示す。
本発明の発酵乳の製造方法である下記の調製法Xにて、本発明の発酵乳を製造した。
(調製法X)
表2に示す配合割合で、表1の原料(A)、脱脂濃縮乳、水を混合し、無脂乳固形分10%の混合原料(C)を調製した。
これらの混合原料(C)を、90℃で10分間殺菌し、38℃まで冷却し、これにスターター(D)(乳酸菌スターター)を1.9%となるように添加して、発酵原料(E)を調製した。
この発酵原料(E)の100gを直径7cm(底5.5cm)高さ5.5cmの逆円錐台状の紙カップに入れ、pHが4.7になるまで38℃で培養発酵し、10℃の冷蔵庫にて冷却し、試験試料1〜18の発酵乳を製造した。
例えば、試験試料1の蛋白質含量は、以下のようにして求めた値である。
発酵原料(E)100g中の原料(A)由来の蛋白質
=2.7×0.021=0.057g
発酵原料(E)100g中の脱脂濃縮乳由来の蛋白質
=12.4×0.279=3.460g
発酵原料(E)100g中のスターター由来の蛋白質
=4.1×0.019=0.078g
均質化した蛋白質(%)
={0.057/(0.057+3.460+0.078)}×100=16%
(調製法Y)
表3に示す配合割合で、クリーム、脱脂濃縮乳、水を混合して無脂乳固形分10%の混合原料(C)を調製した。
これらの混合原料を、70℃まで加温し、均質圧15MPaで均質化処理を行った。均質化装置としては、三丸機械工業(株)製ホモジナイザーを用いた。その後、90℃で10分間殺菌し、38℃まで冷却し、これにスターター(D)(乳酸菌スターター)を1.9%となるように添加して、発酵原料(E)を得た。
この発酵原料(E)の100gを直径7cm(底5.5cm)高さ5.5cmの逆円錐台状の紙カップに入れ、pHが4.7になるまで38℃で培養発酵し、10℃の冷蔵庫にて冷却し、対照試料1〜6の発酵乳を製造した。
例えば、対照試料1の蛋白質含量は、以下のようにして求めた値である。
発酵原料(E)100g中のクリーム由来の蛋白質
=1.6×0.004=0.006g
発酵原料(E)100g中の脱脂濃縮乳由来の蛋白質
=12.4×0.283=3.509g
発酵原料(E)100g中のスターター由来の蛋白質
=4.1×0.019=0.078g
均質化した蛋白質(%)
={(0.006+3.509)/(0.006+3.509+0.078)}×100=3.515/3.593×100=97.8%
各試料の発酵乳を、前記直径7cm(底5.5cm)高さ5.5cmの紙カップのまま10℃で静置し、製造後7日目に表面に出てきた水の量(離水量)を測定し、下式(1)に基づき離水率を求めた。結果を表4に示す。
離水率(%)
=[紙カップあたりの離水量(g)/紙カップに充填した発酵原料(E)(g)]×100
・・・(1)
また、各試験試料について、下式(2)に基づき、脂肪含量が同一である対照試料と比較した離水の改善効果を、離水改善率として求めて表4に示した。
離水改善率(%)
=100−(試験試料の離水率/試験試料と脂肪含量が同一の対照試料の離水率)×100
・・・(2)
表4から明らかなとおり、本発明の製造方法によれば、脂肪含量が0.3〜2.0%の全範囲において7日目の離水率が3.0%以下であって、充分に組織が安定していた。このことから、本発明の製造方法は、低脂肪の発酵乳の製造に好ましいこと、及び本発明の製造方法によれば高品質の静置型発酵乳が得られることが確認できた。
また、脂肪含量が1.5%以下、特に0.4%以上1.4%以下の範囲で、30%以上の高い離水改善率が見られた。このことから、本発明の製造方法は、特に脂肪含量が低い発酵乳の製造に好ましいことが確認できた。
なお、脂肪含量が1.4〜2.0%の場合、対照試料の離水率も、3.0%以下であるが、これらの場合も、高い離水改善率が得られた。このことから、脂肪含量が1.4〜2.0%の場合にも、本発明によって、離水が一層少なく、さらに安定した発酵乳を得られることがわかった。
また、離水を抑制する効果は、均質化した蛋白質量(%)が低いほど高いことが確認された。特に、脂肪含量が0.4%以上1.4%以下の範囲で、かつ製造時に均質化した蛋白質の割合が40%以下の場合、離水改善率は50%以上となり、とりわけ顕著な離水抑制効果が発揮されることが判明した。
Claims (5)
- 脂肪含量が2.0質量%以下の発酵乳を製造する方法であって、
脂肪分を含む原料(A)と脂肪分を含まない原料(B)とを混合して混合原料(C)を得る混合工程と、
混合工程に先立ち、原料(A)のみを均質化する均質化工程と、
混合工程の後に、混合原料(C)を殺菌する後殺菌工程と、
後殺菌工程の後に、混合原料(C)にスターター(D)を添加して脂肪含量が0.3質量%以上2.0質量%以下である発酵原料(E)を得て、これを発酵させる発酵工程を備え、
前記原料(A)の脂肪含量が0.6〜9.2質量%であり、
発酵原料(E)に含有される蛋白質量に占める、原料(A)由来の蛋白質量の割合が、50質量%以下であり、
前記均質化工程において、前記原料(A)を10〜20MPaで均質化することを特徴とする発酵乳の製造方法。 - 脂肪含量が2.0質量%以下の発酵乳を製造する方法であって、
脂肪分を含む原料(A)と脂肪分を含まない原料(B)とを混合して混合原料(C)を得る混合工程と、
混合工程に先立ち、原料(A)のみを均質化する均質化工程と、
混合工程に先立ち、均質化工程後の原料(A)と、原料(B)を、各々殺菌する前殺菌工程と、
混合工程の後に、混合原料(C)にスターター(D)を添加して脂肪含量が0.3質量%以上2.0質量%以下である発酵原料(E)を得て、これを発酵させる発酵工程を備え、
前記原料(A)の脂肪含量が0.6〜9.2質量%であり、
発酵原料(E)に含有される蛋白質量に占める、原料(A)由来の蛋白質量の割合が、50質量%以下であり、
前記均質化工程において、前記原料(A)を10〜20MPaで均質化することを特徴とする発酵乳の製造方法。 - 脂肪分を含む原料と、脱脂濃縮乳または脱脂粉乳とを含み、無脂肪乳固形分が5〜20質量%である混合物を、前記原料(A)として用いる、請求項1または2に記載の発酵乳の製造方法。
- 発酵乳が静置型発酵乳である請求項1〜3の何れか一項に記載の発酵乳の製造方法。
- スターター(D)として乳酸菌スターターを用いる請求項1〜4の何れか一項に記載の発酵乳の製造方法。
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