JP5629888B2 - 糖鎖担持デンドリマーからなる標的選択的薬剤放出担体 - Google Patents
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Description
DDSを実現するための薬剤担体として、例えば、リポソームなどに標的疾患部位特異的に存在する分子などと特異的に結合するリガンド等を結合させたもの(特許文献1又は特許文献2)、リポソームや合成樹脂粒子などのコロイド粒子の表面にN−アセチルグルコサミン類を露出させたもの(特許文献3及び4)などが報告されている。また、リポソーム以外の担体としては、例えば、糖鎖の結合により標的部位に対する特異性を実現した多分岐多糖誘導体(特許文献5)、ポリペプチド又はポリサッカライドを主鎖として側鎖に糖鎖を導入し、糖鎖による標的選択性を発揮させ主鎖の生分解性を利用した担体(特許文献6)などが挙げられる。
そこで、本発明は、糖鎖を担持させたデンドリマーによって形成されるミセル構造を有する薬剤輸送(又は送達)用担体の提供を目的とする。
さらに、本発明は、該担体を含む医薬組成物の提供を目的とする。
薬剤を特定の組織へ送達するためには、その特定組織に薬剤送達の標的となる分子の存在が必要である。本発明において、発明者らは、そのような標的分子として糖鎖と結合する分子、特に、レクチンに着目し、薬剤放出担体の機能性分子として、糖鎖担持デンドリマーの利用を考慮した。
発明者らは、薬剤を内包した糖鎖担持デンドリマーからなるミセル構造体が、その糖鎖の標的分子(例えば、レクチンなど)に接触すると、ミセル構造の崩壊が生じ、内部に取り込まれていた薬剤が標的因子の付近で放出されることを確認した。従って、疾患部位に存在する標的分子と特異的に結合する糖鎖を担持したデンドリマーからなるミセル構造体を利用すれば、該疾患の治療のための薬剤を疾患部位に効率的に輸送し、放出することが可能になる。
(1)糖鎖担持デンドリマーによって形成される高分子ミセル構造からなる薬剤放出担体。
(2)前記糖鎖担持デンドリマーが以下の式(I)で示される化合物である上記(1)に記載の担体。
(式(I)中、E1は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、E2は、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R1はヘテロ原子を含んでもよい同一又は異なった炭化水素基であり、場合によっては、E1を含んで環を形成してもよく、R2は、同一又は異なった炭化水素基又は環を有してもよい炭化水素鎖を示し、R3、R4及びR5は酸素、窒素あるいはカルボニル基、エーテル基、アミド基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yは同一又は異なった糖鎖残基を示し、lは0〜2の整数であり、mは0〜2の整数であり、kは0又は1の数を示し、kが0のときは3−mは1である)
(3)E1及びE2がケイ素であり、kが1、lが2,mが0である上記(2)に記載の担体。
(4)R1が下記の式で表されるシロール基であってE1を含んで環を形成している上記(3)に記載の担体。
(式中、Xはケイ素、Rはフェニル基であり、nは4である。)
(5)R1がメチル基である上記(3)に記載の担体。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかの担体に薬剤を封入した、薬剤−担体複合物。
(7)前記薬剤がフラーレンである上記(6)に記載の薬剤−担体複合物。
(8)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の担体に薬剤又は遺伝子を封入した医薬組成物。
(9)前記薬剤がフラーレンである上記(8)に記載の医薬組成物。
(10)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の担体に化粧品を封入した化粧品組成物。
デンドリマーの形態としては、例えば、ダンベル型、ファン型、ボール型などが知られている(図1を参照のこと)。本発明においては、薬剤を取り込むのに十分な形態のミセル構造を形成し得る形態であればいずれの形態のデンドリマーであっても使用することができるが、好ましくは、ダンベル型である。本発明の薬剤放出担体のミセル構造は、外側に糖鎖が露出されている。そのため、この糖鎖によって特異的に認識される分子、例えば、レクチンなどの分子が薬剤標的となる患部領域に存在していれば、該薬剤放出担体に取り込まれた薬剤を該患部領域まで輸送することが可能となる。患部領域に薬剤放出担体(及び薬剤)が到達すると、担体に担持された糖鎖が患部領域に存在する糖鎖認識分子と結合するためミセル構造が崩壊し、構造内に包含されていた薬剤が患部領域で放出される(図2を参照のこと)。
デンドリマーに担持させる糖鎖の形態は、単糖、二糖、オリゴ糖など如何なる形態であってもよい。また、糖鎖の種類も、治療対象である患部に存在する糖鎖認識分子と結合するものであれば、如何なるものであってもよく、治療目的に応じて適宜選択することができる。また、選択した糖鎖を適当な形態のデンドリマーに担持させることは、当業者であれば容易に実施することができる。例えば、WO2005/011632には、リポソーム担体に担持させる糖鎖が、α−1,2マンノビオース二糖鎖などの場合には、血中、肺、脳、各種癌組織、心臓、小腸、肝臓、脾臓及びリンパ節などへの薬剤送達に適し、オリゴマンノース6八糖鎖などは胸腺への薬剤送達に適することが開示されている。
従って、このような組織特異的に発現されるレクチンを標的とする糖鎖を、本発明の薬剤放出担体に担持させることで、組織特異的な薬剤送達が可能となる。また、ある種の癌や腫瘍細胞の表面上に特異的に存在するレクチン分子と結合する糖鎖を担持すれば、癌などの治療に効果的な薬剤放出担体を調製できる。
(式(I)中、E1は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、E2は、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R1はヘテロ原子を含んでもよい同一又は異なった炭化水素基を示し、場合によっては、E1を含んで環を形成してもよく、R2は同一又は異なった炭化水素基を示し、R3、R4及びR5は酸素、窒素あるいはカルボニル基、エーテル基、アミド基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yは同一又は異なった糖鎖残基を示し、lは0〜2の整数であり、mは0〜2の整数であり、kは0又は1の数を示し、kが0のときは3−mは1である)
式中、Rは同一でも異なってもよいアリール基であり、Xは、ケイ素又はゲルマニウムのいずれかが好ましく、特に、ケイ素が好ましい。nは1〜4の整数である。特に限定はしないが、Rは、例えば、p−((CH3)2N)C6H4、p−CH3OC6H4、p−CH3C6H4、C6H5、p−F3CC6H4、p−(NO2)C6H4、m−CH3C6H4、m−FC6H4、m−F3CC6H4、1−ナフチル、2−スチリル、ビフェニル、2−チエニル、ビチエニル、2−チアゾール、2−ピリジル、3−ピリジル、N−メチル−2−ピロリル、2,4,6−トリメチルフェニル(Mes)、2,4,6−トリイソプロピルフェニル(Tip)であり、特にC6H5(フェニル基)が好ましく、この場合、nは4が好ましい。
(式Ia、Ib、Ic及びId中、式(I)中、E1は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、E2は、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R1は、炭化水素基を示し、R3、R4及びR5は酸素、窒素あるいはカルボニル基、エーテル基、アミド基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yは同一又は異なった糖鎖を示す)
(上記式中、X1はハロゲン原子、X2は反応脱離性の保護基を示し、Yは、糖鎖である)
式(I)の化合物は、式(III)で表されるハロゲン化デンドリマーと式(IV)で表されるスルフィド化合物とを反応させ、必要に応じて、スルフィド化合物中の糖残基の保護基を脱離させることにより製造することができる。
ミセル構造を形成させるときの、糖鎖担持デンドリマーの濃度は、当業者において適宜表面張力測定法などによる臨界ミセル濃度などを検討し、決定することができる。薬剤を包摂したミセル構造を形成させるのに適当な溶媒中におけるデンドリマーの濃度としては、例えば、1.0×10−6M以上、好ましくは、1.0×10−5M以上、より好ましくは1.0×10−4M以上である。
また、ミセル構造体を含む溶媒を乾燥させ(例えば、凍結乾燥など)、粉体として保存することも可能である。
本発明の薬剤放出担体に封入される薬剤は、特に限定されるものではなく公知の薬剤を広く使用することができる。また、遺伝子治療などに使用するためのDNA、RNA等にも利用可能である。
本発明の薬剤放出担体に封入する薬剤としては、例えば、抗癌剤、免疫療法剤、中枢神経用薬剤、末梢神経用薬剤、呼吸器疾患治療剤、循環器用薬剤、ビタミン剤、抗炎症剤など多くの薬剤が利用可能である。特に好ましい薬剤は、ミセル構造の内部に取り込まれ得る程度の疎水性を備えたものである。公知の抗癌剤の多くは、疎水性のものが多いため、本発明の薬剤放出担体に封入する薬剤としては適している。公知の抗癌剤としては、例えば、メソトレキセート、フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ペントスタチンなどの代謝拮抗剤、シクロホスファミド、メルファラン、ダカルバシン、シスプラチン、カルボプラチン、ブレオマイシンなどのアルキル化剤、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害薬、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチンなどの微小管重合阻害薬、パクリタキセル、ドセタキセルなどの微小管脱重合阻害薬などがある。
さらに、近年、その薬効が注目されているフラーレンなども、本発明の封入薬剤として適している。ここで、フラーレンとは、多数の炭素原子で構成されるクラスターの総称のことで、当業者においてフラーレン類として識別できる物質であれば如何なるものも含まれる。本発明の封入材として適するフラーレンとしては、例えば、代表的なC60(数字は炭素数をも表す。以下同じ)の他、C70、C74、C76、C78などを挙げることができる。また、場合によっては、Cのみからなるフラーレン以外にも、金属原子(例えば、スカンジウム、ランタン、セリウム、チタンなど)が内包されたフラーレンや、アルカリ金属、アルカリ土類金属がインターカレートした構造のフラーレン(例えば、K3C60、Ba4C60など)などを利用してもよい。C60フラーレンは、紫外線照射により、酸素(通常、3重項)を活性酸素(一重項酸素)に変換することができる。一重項酸素は、癌細胞などの破壊、あるいは、細菌細胞の破壊に効果を示すことから、癌の治療薬、又は、抗菌剤などとしての利用が期待されている。さらには、近年、HIVウィルスの増殖に必要なHIVプロテアーゼ活性を阻害されるとの知見も示されており、抗HIV製剤として利用の可能性も示唆されている。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調製することができる。非経口的標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納される。
経口組成物とする場合には、適当な方法、例えば、凍結乾燥法などによって、粉体等にし、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて錠剤化することができる。経口的治療のためには、ミセル構造に悪影響を及ぼさないような賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に投与される。さらに、薬剤的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。また、経口組成物の場合は、ミセル構造を破壊しないような溶媒に懸濁して投与することができる。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから約500mg/kgを投与するのが好ましく、一般に1回又は複数回に分けて投与され得るであろう。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgであり、より好ましくは一日に約0.5〜約100mg/kgである。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む溶液の形態で提供され、好ましくは活性成分が1.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.0,300.0,400.0,500.0,600.0,750.0,800.0,900.0及び1000.0mgである。化合物は一日に1〜4回の投与計画で、好ましくは一日に1回又は2回投与される。
本発明の化粧品組成物又は医薬部外品組成物は、化粧品又は医薬部外品の有効成分として使用可能な、例えば、ビタミンA、B、C及びEなどのビタミン類、エストロゲン、コルチゾンなどのホルモン類、リン酸−アスコルビン酸マグネシウム、プランセンタキス、アルブチンなどの皮膚漂白剤などを本発明の薬剤放出担体に封入したものなどを挙げることができる。
本実施例において、糖鎖担持デンドリマーとして以下のジメチルダンベル(1)6−Lacとシロールダンベル(1)6−Lacを使用し、公知の方法に則り(Journal of Colloid and Interface Science 273 (2004)148-154)、ミセル構造の形成実験を行った。また、ミセルに内包させる薬剤として、ここでは、疎水性の色素であるOil Orange SS(東京化成工業株式会社)とピレンを使用した(東京化成工業株式会社)。
ジメチルダンベル(1)6−Lacとシロールダンベル(1)6−Lacは公知の方法に従って合成を行った(Lorenz K. et al., Macromolecules 1995, 28, pp6657-6661;Koji Matsuoka et al., Tetrahedron Letters, 1999, 40, pp7839-7842;K. Hatano et al., Tetrahedron Letters, 2007 48, pp4365-4368)。
得られた溶液のUV−visスペクトルからOil Orange SS由来のピーク(503nm,534nm)が確認されたことから、ダンベル(1)6−Lacの会合体の疎水性部位にOil Orange SSが取り込まれたことが示された(図3A(ジメチルダンベル(1)6−Lac)及びB(シロールダンベル(1)6−Lac))。また、本発明のミセル構造体を薬剤放出担体として使用する場合、さらに小さな粒径(例えば、0.20μm以下)で使用されることを考慮し、0.20μmフィルターでろ過した場合について検討したところ、糖鎖担持デンドリマーの濃度が1.0×10−5M程度以上の場合に、色素による吸収が認められた(データは示さず)。この結果から、薬剤(色素)濃度に対する糖鎖担持デンドリマーの濃度を高めにすることで、薬剤放出担体の粒径を小さくし得ることが分かる。
一方、糖鎖担持デンドリマーに変えてラクトースのみで上記実験を行ったところ、503nm,534nm波長のピークが検出されないため、ラクトースのみによる色素の内包は生じないことが確認された(データは示さず)。
次に、糖鎖担持デンドリマーによって形成される臨界ミセル濃度を、表面張力測定法及び可溶化法により測定したところ、各々。約2.0×10−6M程度及び約4.0×−6M程度であることが確認された(図4)。
また、水などの親水性溶媒にアセトンなど両親媒性の溶媒を一定割合添加し、動的光散乱法により形成されるミセルの粒径を測定したところ、水が100%の場合、形成されるミセルの粒径は、約0.01μm〜0.02μm程度であり、水90%に対しアセトン10%を添加した溶媒の場合、粒径は、約0.1μ〜0.2μm程度であり、水80%に対しアセトン20%を添加した溶媒の場合、粒径は、約0.3μm程度であった(データは示さず)。
なお、糖鎖担持デンドリマーによるミセル構造は、PBS、HEPES又はTrisなどの緩衝液中においても形成されるが、その効率は水を溶媒とした場合よりは、悪かった。この点については、緩衝液の性質、pH、無機物又は有機物などの条件を適宜選択することで改善すると考えられる。
上述のように調製したダンベル(1)6−Lac溶液を塩化メチレン層上に添加し(図5A−a(ジメチルダンベル(1)6−Lac)及び図6A−a(シロールダンベル(1)6−Lac))、10秒程度容器ごと溶液を混合したのち数分間静置した(図5A−b(ジメチルダンベル(1)6−Lac)及び図6A−b(シロールダンベル(1)6−Lac))。塩化メチレンと混合する前のダンベル(1)6−Lac溶液の水層は、赤色と呈していたが、塩化メチレンとの混合後、水層は薄いオレンジ色となり、下層の塩化メチレン層は無色であった。このことは、ミセル内に塩化メチレンが侵入し赤色がオレンジ色に変化し、色素はミセル内に留まり塩化メチレン層に移動しないことを示している。なお、ダンベル(1)6−Lacが存在しない場合、色素は塩化メチレン層に溶解し、水層には存在しないことも確認した(図5A−c(ジメチルダンベル(1)6−Lac)及び図6A−c(シロールダンベル(1)6−Lac))。塩化メチレンで抽出した時の水槽のUV−bisスペクトルを確認すると、抽出前のλmax=545nmから抽出後は、λmax=526nmに変化していることが確認された(図5B(ジメチルダンベル(1)6−Lac)及び図6B(シロールダンベル(1)6−Lac))。
次に、糖鎖担持デンドリマーミセル構造体に内包された色素が、水/有機溶媒系において有機溶媒中に放出されることを視覚及び紫外吸収により確認した(図7:ジメチルダンベル(1)6−Lac、図8:シロールダンベル(1)6−Lac)。
石英セルにクロロホルムを3ml入れ、そこへ上述の方法で調製した色素内包ダンベル(1)6−Lac溶液を0.3ml加えた。これをセルaとした(図7A−a,B−a及び図8A−a,B−a)。セルaと同様に調製したセルへ更にPBSバッファーを0.3ml加えた。これをセルbとした(図7A−b,B−b及び図8A−b,B−b)。セルbと同様に調製したセルへ、ピーナッツレクチン(PNA)(3.6mg)をPBSバッファー0.3mlで溶解させた溶液を加えた。これをセルcとした(図7A−c,B−c及び図8A−c,B−c)。それぞれのセルを手で30回程度振り、静置し、任意の時間でクロロホルム層のUV−visスペクトルを測定し、吸収極大波長の吸光度の変化を確認した(図7C及び図8C)。
全てのセルa,b,cのUV−visスペクトルからOil Orange SS由来のピークが確認されたことから、ダンベル(1)6−Lacのミセル構造に取り込まれていたOil Orange SSがクロロホルムに溶出してきたことが示された。特に、セルcにおいては、混合直後、水層とクロロホルム層の界面に赤色の固形物が確認され、数日後に、ほぼ全ての色素がクロロホルム層に移動することが観察された。また、糖鎖の標的分子を添加すると、ゆっくりと色素が放出されるのに対し、バッファーを添加すると速やかに放出されることが分かった(図7C及び図8C)。
このことから、糖鎖担持デンドリマーによるミセル構造は、内包した薬剤を糖鎖の標的分子との接触による、徐放性の放出特性を示し、その放出速度は、適当な緩衝作用を示す物質と共存させることで、高められることが示唆された。
水溶液中で形成させたOil Orange SS内包糖鎖担持デンドリマーミセル構造体を、凍結乾燥して粉体とした後、再度、凍結乾燥前と同体積の水及びバッファー溶液に溶解した。ミセル構造体を再懸濁させた溶液のUV−visスペクトルを確認したところ、吸光度は、凍結乾燥前の3/5程度に下がったものの、色素による吸収を確認することができた(図9)。従って、糖鎖担持デンドリマーによるミセル構造体は、凍結乾燥後においても、薬剤放出担体として使用することができることが分かった。
上述と同様の方法により、Oil Orange SSに加え、ピレンを用いて、色素を内包した糖鎖担持デンドリマーによるミセル構造体を調製した。調製した色素を内包するミセル構造体溶液のUV−visスペクトルを測定した結果、Oil Orange SSを単独で用いた場合に比較して、ピレンを併用すると、吸光度の上昇が認められ(図10A)、また、ピレン由来のピーク(370nm−395nm)も確認することができた(図10B)。このことから、糖鎖担持デンドリマーによるミセル構造体は、複数の色素(薬剤)を内包し得ることが明らかとなった。
10mlメスフラスコにシロールダンベル(1)6−Lac(3.4mg)を入れ、イオン交換水を用いてメスアップすることで100μM溶液を10ml調製した。その溶液を20mlスクリュー管瓶に移し、そこへC60(2.2mg)を固体で加えた後、蓋を閉めて密閉した。これを超音波で20〜40℃で2分、その後60℃で一晩撹拌した。この溶液をメンブランフィルター(ポアサイズ:0.45μm)でろ過した。得られた溶液のUV−visスペクトルから500nm以上の領域にブロードな吸収が確認された(図11:「シロールダンベル(1)6−Lac+C60」で示すスペクトル)。トルエン中におけるC60のスペクトルの最大波長が500nm付近であること(図11:「C60(トルエン)」で示すスペクトル)、また、シロールデンドリマーには500nm以上で吸収がないことから、500nm以上の領域の吸収は、シロールダンベル(1)6−Lacに内包されたC60由来のものであると考えられる。
また、C60は、疎水性であり、水には難溶であるが、水を溶媒として行った本実験において、C60由来のスペクトルが検出されたことから、疎水性のC60がシロールダンベル(1)6−Lacで形成されたミセル構造内に取り込まれたことが示唆される。
以上のことから、シロールダンベル(1)6−Lacのミセル構造内の疎水性部にC60が取り込まれることが確認された。
Claims (6)
- 以下の式(I)で示される糖鎖担持デンドリマーによって形成される高分子ミセル構造からなる、薬剤放出担体。
[(式(I)中、E 1 及びE 2 はケイ素であり、R 1 は炭素数1〜6のアルキル基又は下記の式で表されるシロール基であってE 1 を含んで環を形成していてもよく、R2は、同一又は異なった炭化水素基又は環を有してもよい炭化水素鎖を示し、R3、R4及びR5は酸素、窒素あるいはカルボニル基、エーテル基、アミド基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yは同一又は異なった糖鎖残基を示し、lは2であり、mは0であり、kは1である)
(上記式中、Xはケイ素、Rはフェニル基であり、nは4である。)] - 請求項1に記載の担体に薬剤を封入した、薬剤−担体複合物。
- 前記薬剤がフラーレンである請求項2に記載の薬剤−担体複合物。
- 請求項1に記載の担体に薬剤又は遺伝子を封入した医薬組成物。
- 前記薬剤がフラーレンである請求項4に記載の医薬組成物。
- 請求項1に記載の担体に化粧品を封入した化粧品組成物。
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