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JP5681580B2 - 磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法 - Google Patents
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磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体(磁気ディスク)の基板として用いられるアルミニウム基板を製造する方法に関するものである。
磁気記録媒体用基板には、表面が平滑で、耐熱性に優れ、表面硬度が高いことが求められる。こうした基板材料としては、チタン、セラミックス、ガラス状カーボン、メタルマトリクスコンポジット等、種々の材料が提案されてきたが、現在のところ実用に供されているものは、アルミニウムおよびガラスである。これらのうちアルミニウム基板は、成形加工が容易であるため汎用されている。
アルミニウム基板を用いた磁気記録媒体は、例えば、打ち抜いたアルミニウム基板を300℃以上の温度で焼鈍した後、表面に研削加工(グラインド加工)を施し、次いでニッケルリンめっき(NiPめっき)を施し、更に研磨加工(ポリッシュ加工)して平滑度を高めてから磁性膜を設けることによって製造される(非特許文献1)。上記NiPめっきは、アルミニウム基板の表面硬度を高めると同時に微細な表面欠陥を覆い隠すために行われる(非特許文献2)。
上記NiPめっきを施す際には、アルミニウム基板表面に形成されているアルミナ等の強固な酸化皮膜を除去し、かつ良好なめっき密着性を得るために、前処理としてジンケート処理が行われている。ジンケート処理とは、表面に付着した油分を取り除き、酸処理にて強固な酸化皮膜を取り除いた後、亜鉛を主成分にした強アルカリ性の溶液に浸漬させ、アルミニウム基板表面に亜鉛を置換反応にて析出させる処理である。酸化皮膜を除去する工程と亜鉛を置換析出させる工程は、一般的には2回繰返されており、ダブルジンケート処理と呼ばれている。しかし焼鈍後に(ダブル)ジンケート処理を施すと、焼鈍後に研削加工を施して平滑にしたアルミニウム基板表面が、粗面化するという問題があった。粗面化したアルミニウム基板表面にNiPめっきを施すと、NiPめっき層の表面も粗面化する。従ってNiPめっき層の表面を平滑化するには、NiPめっき層を厚めに形成しておき、このNiPめっき層に研磨加工を施す必要があるためコスト高となる。
アルミニウム基板表面の平滑性を高める技術としては、特許文献1、2の技術が提案されている。これらのうち特許文献1には、アルミニウム基板にアルマイト処理を施した後、形成されたアルマイト膜の表面に酸化シリコンを塗布し、熱処理することによって、アルマイト膜の表面を平滑化し、アルミニウム基板の平滑性を高める技術が開示されている。この文献には、酸化シリコンとして、オルガノシロキサンを用いることが記載されている。しかしオルガノシロキサンは、硬度が小さいため、アルミニウム基板の表面硬度を高めることができない。またオルガノシロキサンは、耐熱性が低く、改善が求められる。またアルマイト処理は、電解液を用いた電解処理であるためコスト高となる。
一方、特許文献2には、表面にSiO2層が形成された磁気記録媒体用アルミニウム基板が開示されている。具体的には、この文献には、アルミニウム基板の表面にポリシラザン含有溶液を塗布した後、乾燥し、焼成してSiO2層を形成する技術が開示されている。ポリシラザンは、上記特許文献1で用いているオルガノシロキサンよりも硬度が高いため、アルミニウム基板の表面硬度を高めることができる。
アルミニウム基板表面の平滑性を高めると共に、表面硬度を高める技術としては特許文献3、4が提案されている。これらのうち特許文献3には、アルミニウム基板の表面に、窒化珪素質連続薄膜を形成した磁気ディスク基板が開示されている。窒化珪素質連続薄膜を形成する方法としては、アルミニウム基板表面に、ポリシラザン含有溶液をコーティングし、これをN2、NH3、または大気雰囲気中で200〜400℃の温度範囲で熱処理し、セラミック化する方法が記載されている。
特許文献4には、凹凸部が存在する磁気記録媒体用基板(具体的には、アルミニウム基板)表面にSiO2層を充填した磁気記録媒体が開示されている。この文献にも、SiO2層を焼成により形成するために、上記特許文献2と同様、ポリシラザン含有溶液を用いることが記載されている。
特開平2−73520号公報 特開平9−147344号公報 特開平4−252420号公報 特開2000−30245号公報
砥粒加工学会誌、Vol.43、No.11、1999年11月、p.475〜479 神戸製鋼技報、Vol.48、No.3、1998年12月、p.5〜8
上記特許文献2〜4では、アルミニウム基板表面にポリシラザン含有溶液を塗布し、これを加熱してSiO2層や窒化珪素質連続薄膜を形成することによって、表面が平滑で、耐熱性に優れたアルミニウム基板を製造している。しかしアルミニウム基板表面に形成できるSiO2層や窒化珪素質連続薄膜の膜厚には限界があるため、SiO2層や窒化珪素質連続薄膜の形成によるアルミニウム基板の硬度向上効果には限りがあった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、表面が平滑で、且つ耐熱性に優れ、しかも表面硬度の高い磁気記録媒体用アルミニウム基板を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法とは、アルミニウム基板にベーマイト処理を施した後、加熱して酸化皮膜を形成する工程と、加熱後のアルミニウム基板表面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、加熱して表面硬度の高いSiO2膜を形成する工程、を含む点に要旨を有している。前記ベーマイト処理に先立って、前記アルミニウム基板にりん酸処理を施す工程を含むことが好ましい。
本発明によれば、アルミニウム基板表面に適切な前処理を行ってから無機ポリシラザン含有溶液を用いてSiO2層を形成しているため、表面硬度の高い磁気記録媒体用アルミニウム基板を提供できる。
本発明者らは、表面にSiO2層が形成されたアルミニウム基板の表面硬度を高めるために鋭意検討を重ねてきた。その結果、
(1)アルミニウム基板の表面硬度は、表面に形成されたSiO2層の硬度に加えて、アルミニウム基板の表面硬度に大きく影響を受けること、
(2)アルミニウム基板の表面硬度を高めるには、アルミニウム基板にベーマイト処理と加熱処理を組み合わせた前処理を行うことによって酸化皮膜を厚膜化すればよいこと、
(3)そして、この前処理を行ったアルミニウム基板表面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布し、これを従来同様、加熱すれば、無機ポリシラザンが雰囲気中の酸素(例えば、酸素ガスや、雰囲気中の水分に含まれる酸素など)と反応し、SiO2層が形成され、表面が平滑で、耐熱性に優れたSiO2層被覆アルミニウム基板を形成できること、
(4)上記無機ポリシラザン含有溶液を用いて形成したSiO2層は、有機ポリシラザン含有溶液やポリシロキサン含有溶液を用いて形成したSiO2層よりも耐熱性に優れたものとなること、
(5)上記無機ポリシラザン含有溶液を用いて形成したSiO2層は硬質なため、ガラス板の研磨技術が適用できること、
を見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明では、アルミニウム基板にベーマイト処理を施すことによって、アルミニウム基板表面に酸化皮膜を形成し、次いで酸素含有雰囲気中で加熱することによって、この酸化皮膜を更に厚くすることができる。そのため本発明によれば、アルミニウム基板の表面硬度を向上でき、この表面に無機ポリシラザン含有溶液を用いてSiO2層を形成することによって、表面硬度の高いアルミニウム基板を製造できる。
以下、本発明に係るアルミニウム基板の製造方法について説明する。
[供試材料の調製について]
まず、本発明では、アルミニウム板を準備する。アルミニウム板としては、純アルミニウム板のほか、公知のアルミニウム合金板(例えば、AA5086、KS5C86、KS5D86など。いずれも神戸製鋼所製。)を用いることができる。
上記アルミニウム板の板厚は、磁気記録媒体の素材として通常用いられている厚みとすればよく、例えば、直径が3.5インチの磁気記録媒体用アルミニウム基板では、厚みは1.6〜1.8mm程度である。
上記アルミニウム板は、所望の形状に打ち抜き、焼鈍処理を施しておくことが推奨される。焼鈍処理を施すことによってアルミニウム板の形状が固定され、残留応力を除去できる。焼鈍処理は、例えば、300℃以上の温度で行えばよい。
上記アルミニウム板表面には、圧延等に起因した表面変質層が形成されているため、この表面変質層を研削によって除去し、アルミニウム板表面を平滑化することが好ましい。
研削済アルミニウム基板の平滑度は低い方が好ましく、表面粗度は100Å(10nm)程度までに加工されることが推奨される(神戸製鋼技報、Vol.54、No.1、2004年4月、p.23)。
[りん酸処理]
上記研削済アルミニウム基板は、後述するベーマイト処理に先立って、りん酸水溶液に浸漬してりん酸処理を施すことが好ましい。研削済アルミニウム基板をりん酸水溶液に浸漬することによって、表面の平滑性を損なうことなく、バリや研削加工時に形成された微細な突起を溶解除去できる。
上記りん酸水溶液としては特に制限はないが、例えば、りん酸の濃度が3〜65質量%の水溶液を用いることが好ましい。上記りん酸水溶液の液温は特に制限はないが、例えば、10〜80℃とすることが好ましい。上記研削済アルミニウム基板をりん酸水溶液に浸漬する時間は特に制限はないが、例えば、1〜20分程度とすることが好ましい。
りん酸処理を施した後は、例えば純水でアルミニウム基板を洗浄することが好ましい。
[ベーマイト処理]
本発明では、研削済アルミニウム基板(または、りん酸処理を施した研削済アルミニウム基板)にベーマイト処理を施すことが重要である。
上記ベーマイト処理は、JIS H0201で定義されている方法を用いることができ、高温の純水中でアルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させる処理である。酸化皮膜が形成されることによって、アルミニウム基板の表面硬度を向上させることができる。
上記ベーマイト処理の条件は、アルミニウム基板表面に酸化皮膜が生成する条件であれば特に限定されず、例えば、上記アルミニウム基板を浸漬させる純水の温度は、80℃以上とすることが好ましく、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上とする。上記アルミニウム基板を純水に浸漬させる時間は特に制限はないが、例えば、1〜30分とすることが好ましく、より好ましくは2〜20分である。なお、上記純水には、アンモニア水などを少量添加してもよい。
[加熱処理]
上記ベーマイト処理を施した後は、更に加熱することによって酸化皮膜の膜質を緻密なものとする必要がある。上記ベーマイト処理と加熱処理とを組み合わせて行うことによって、アルミニウム表面に硬質な酸化皮膜を厚く形成することができ、アルミニウム基板の表面硬度を高めることができる。ベーマイト処理または加熱処理の一方だけでは、アルミニウム基板の表面硬度向上効果が不充分となる。
上記ベーマイト処理後の加熱処理は、酸素含有雰囲気で行えばよく、例えば、大気雰囲気で行えばよい。上記酸素含有雰囲気は、水蒸気を含んでいてもよい。上記ベーマイト処理後の加熱処理を行うときの温度は、酸化皮膜を形成できる温度であれば特に限定されず、例えば、250℃以上とすることが好ましく、より好ましくは300℃以上とする。なお、上記ベーマイト処理後の加熱処理を行うときの時間については、酸化皮膜を形成できる範囲で設定すればよい。
[無機ポリシラザン含有溶液の塗布+加熱]
上記加熱処理を施した後は、アルミニウム基板表面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布し、これを大気中で加熱することによって溶媒が除去され、また無機ポリシラザンが大気中の酸素や水分と反応し、アルミニウム基板表面にSiO2を主体とする硬質皮膜(SiO2層)を形成できる。
即ち、上記無機ポリシラザンを含有する溶液をアルミニウム基板表面に塗布した後、大気中で加熱することによって、溶媒の除去、及び無機ポリシラザンと大気中の酸素や水分との反応が生じ、無機ポリシラザンはSiO2に転化する。このSiO2は、アルミニウム基板よりも硬質なため、アルミニウム基板の表面硬度を高めることができる。
また、上記無機ポリシラザンを含有する溶液を用いてSiO2層を形成することによって、磁気記録媒体用アルミニウム基板の耐熱性を向上させることができる。即ち、ポリシラザンとしては、無機ポリシラザンの他、基本構成単位内にメチル基などの有機質成分を含んだ有機ポリシラザンも知られているが、有機ポリシラザンは無機ポリシラザンよりも耐熱性に劣っているため、有機ポリシラザン含有溶液を用いて形成した皮膜は、無機ポリシラザン含有溶液を用いて形成した皮膜よりも耐熱性が劣っている。従って本発明では、有機ポリシラザンは使用していない。また、磁気記録媒体用アルミニウム基板には、その表面に、シロキサン類(例えば、オルガノシロキサンやポリシロキサンなど)や有機ポリシランなどの皮膜を形成したものも知られているが、シロキサン類や有機ポリシランについても、無機ポリシラザンに比べて耐熱性に劣っているため、本発明では使用していない。
また、本発明によれば、液体状態の無機ポリシラザンをアルミニウム基板表面に塗布することによって、レベリング効果によりアルミニウム基板表面を平滑にできる。即ち、上記加熱処理を施したアルミニウム基板表面には酸化皮膜が形成されているため、この表面には微細な凹凸が形成されているが、本発明では、この微細な凹凸面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布しているため、無機ポリシラザン含有溶液が凹部に浸透し、アルミニウム基板表面を平滑にできる。
上記無機ポリシラザンとは、−(SiH2NH)−を基本構成単位とし、基本構成単位内にメチル基などの有機質成分を含まず、鎖状、環状、若しくはこれらの複合構造からなり、加熱・溶媒除去・大気中の酸素や水分との反応によってSiO2に転化する材料である(特開昭60−145903号公報を参照)。
上記無機ポリシラザンとしては、具体的には、ペルヒドロポリシラザンを好適に用いることができる。上記無機ポリシラザンとしては、数平均分子量が、例えば、500〜2500程度のものを用いることが好ましい。
上記無機ポリシラザン含有溶液としては、無機ポリシラザンを溶解している溶液を用いればよく、溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、キシレン、トルエンなどの有機溶媒を用いることができる。上記無機ポリシラザン含有溶液における上記無機ポリシラザンの濃度は、溶液全体の質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
上記無機ポリシラザン含有溶液は、更に、無機ポリシラザンからSiO2への転化を促進するための触媒を含んでいることが好ましく、例えば、パラジウム触媒を添加することによって、SiO2層を比較的低温で形成できるため、アルミニウム板の耐熱温度内でSiO2層を形成できる。
上記無機ポリシラザン含有溶液は、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社などから入手できる。また、入手した溶液を濃縮してから用いてもよい。
上記アルミニウム基板表面に上記無機ポリシラザン含有溶液を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、スピンコート、ディップコート、スプレーコートなどの方法を適用できる。
上記無機ポリシラザン含有溶液の塗布量は特に限定されないが、SiO2層の更なる平滑化のためにSiO2層表面に研磨加工を施すことを考慮し、研磨取り代分の皮膜厚を設けておくことが好ましい。上記塗布量は、SiO2層の厚みが、例えば、1〜10μm程度になるように調整すればよい。
上記無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後の加熱は、大気中で行えばよい。大気中で加熱することによって、無機ポリシラザンが大気中の酸素や水分と反応し、SiO2を主体とする皮膜(SiO2層)を形成できる。
なお、SiO2を主体とする皮膜であることは、加熱前後における皮膜のFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)スペクトルを測定したときに、Si−H結合、N−H結合に起因するピーク強度が減少ないしピークが消滅し、Si−O結合に起因するピークが生成ないしピーク強度が増大していることから確認できる。なお、SiO2層中には、例えば、若干のSi−N結合やN−H結合などが含まれていてもよい。
上記大気雰囲気は、水蒸気を含んでいてもよい。水蒸気共存雰囲気で加熱することによって、上述したSiO2の形成が促進される。
上記大気中で加熱するときの条件は、上述した触媒を併用している場合は、溶液に含まれる溶媒を揮発できる範囲で設定すれば特に限定されない。シリカ転化を速やかに行うための加熱温度は、例えば、200℃以上であることが好ましい。加熱時間は、例えば、30分以上とすることが好ましく、より好ましくは1時間以上である。
上記アルミニウム基板表面に上記無機ポリシラザン含有溶液を塗布する工程と、上記無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後に加熱する工程は、繰返し行ってもよい。
大気中で加熱した後は、SiO2層の表面を公知の条件で研磨し、表面を平滑にすればよい。本発明では、アルミニウム基板の表面に硬質なSiO2層を形成しているため、従来から用いられているガラス基板を研磨する方法やその装置などをそのまま利用できる。
上記SiO2層の表面粗度は極力小さいことが好ましく、上記研磨は、例えば、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaを三次元に拡張し、表面形状局面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものとして定義される平均粗さSaが、観察視野を2μm角としたときに、1nm以下となるように行うことが好ましく、より好ましくは0.6nm以下、更に好ましくは0.4nm以下となるように行うのがよい。
このようにして得られる磁気記録媒体用アルミニウム基板は、アルミニウム板に対してベーマイト処理と加熱処理とを組み合わせて行っているため、アルミニウム板の表面硬度が高められており、またこのアルミニウム板表面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布してこれを加熱することによってSiO2層を形成しているため、表面が平滑で、しかも耐熱性に優れたものとなっている。
本発明のアルミニウム基板は、磁気記録媒体(磁気ディスク)用の基板として好適に用いることができる。
本発明のアルミニウム基板を用いて磁気記録媒体を製造するにあたっては、該アルミニウム基板の表面に、公知の条件で磁気記録膜を形成し、必要に応じて、更に保護膜や潤滑膜を形成すればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記に示す実験1〜実験7の手順でアルミニウム基板を作製し、得られたアルミニウム基板の表面硬度を測定した。また、アルミニウム基板表面に形成した皮膜の耐熱性を下記に示す手順で評価した。
[実験1]
外径65mm、内径20mm、厚さ0.63mmの円板状研削済アルミニウム基板(神戸製鋼所製「KS5D86合金」)を準備した。この研削済アルミニウム基板の表面粗度を、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)を用い、観察視野を2μm×2μm(2μm角)または60μm×60μm(60μm角)の2種類として平均粗さSaを測定した。AFMとしては、Nanosurf製の「Nanosurf easyScan2 FlexAFM」を用い、カンチレバー:SCION−A、セットポイント:21nN、測定時間:2秒、測定ポイント:256スキャンの条件で測定した。その結果、観察視野を2μm角としたときの平均粗さSaは2.6nm、観察視野を60μm角としたときの平均粗さSaは14.8nmであった。
次に、上記アルミニウム基板にりん酸処理を施した後、ベーマイト処理を施し、次いで酸素含有雰囲気中で加熱処理を行った。具体的には、上記アルミニウム基板を、濃度10質量%、温度35℃のりん酸水溶液に4分間浸漬した後(りん酸処理)、純水ですすいで洗浄した。洗浄後のアルミニウム基板を、温度95℃の純水に10分間浸漬した後(ベーマイト処理)、300℃に保持した加熱炉に60分間入れて加熱した(加熱処理)。上記加熱炉内は、大気雰囲気とした。
加熱処理後のアルミニウム基板表面に対し、無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程を3回繰り返してSiO2層被覆アルミニウム基板を製造した。無機ポリシラザン含有溶液としては、AZエレクトロニックマテリアルズ製の「アクアミカNL−120A−20」をそのまま用いた。無機ポリシラザン含有溶液の塗布は、スピンコート成膜によって行い、回転数は1000rpm、回転時間は30秒とした。無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後の大気雰囲気中での加熱は温度200℃、加熱時間は10分間とし、最表層のみ加熱時間を1時間とした。
[実験2]
上記実験1において、加熱処理後のアルミニウム基板表面に対し、無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程の繰返し数を5回とする以外は、上記実験1と同じ条件でSiO2層被覆アルミニウム基板を製造した。
[実験3]
上記実験1で準備した円板状研削済アルミニウム基板に対し、無機ポリシロキサン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程を2回繰り返して無機ポリシロキサン膜被覆アルミニウム基板を製造した。即ち、本実験3は、上記実験1に対し、無機ポリシラザン含有溶液の代わりに無機ポリシロキサン含有溶液を用いた点と、りん酸処理、ベーマイト処理、および加熱処理を行わなかった点で相違している。
上記無機ポリシロキサン含有溶液としては、JSR製の「グラスカHPC−7002」と「402H」を質量比で3:1で混合したものを用いた。無機ポリシロキサン含有溶液の塗布条件および大気雰囲気中での加熱条件は、上記実験1と同じとした。
[実験4]
上記実験1で準備した円板状研削済アルミニウム基板に対し、有機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程を1回行い、有機ポリシラザン膜被覆アルミニウム基板を製造した。即ち、本実験4は、上記実験1に対し、無機ポリシラザン含有溶液の代わりに有機ポリシラザン含有溶液を用いた点と、りん酸処理、ベーマイト処理、および加熱処理を行わなかった点で相違している。
上記有機ポリシラザン含有溶液としては、クラリアント製の「matt HD」を用いた。有機ポリシラザン含有溶液の塗布条件および大気雰囲気中での加熱条件は、上記実験1と同じとした。
[実験5]
上記実験1で準備した円板状研削済アルミニウム基板に対し、無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程を2回繰り返してSiO2層を形成した点以外は、上記実験1と同じ条件でSiO2層被覆アルミニウム基板を製造した。即ち、本実験5は、上記実験1に対し、りん酸処理、ベーマイト処理、および加熱処理を行わなかった点で相違している。
[実験6]
上記実験1において、ベーマイト処理後のアルミニウム基板を、350℃に保持した加熱炉に60分間入れて加熱し(加熱処理)、加熱処理後のアルミニウム基板表面に対し、無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程の繰返し数を3回とする以外は、上記実験1と同じ条件でSiO2層被覆アルミニウム基板を製造した。
[実験7]
上記実験1において、ベーマイト処理後のアルミニウム基板を、350℃に保持した加熱炉に60分間入れて加熱し(加熱処理)、加熱処理後のアルミニウム基板表面に対し、無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、大気雰囲気中で加熱する工程の繰返し数を7回とする以外は、上記実験1と同じ条件でSiO2層被覆アルミニウム基板を製造した。
次に、得られたアルミニウム基板の表面硬度を、ナノインデンター法により測定した。測定には、Agilent Technologies製「Nano Indenter XP/DCM」を用い、励起振動周波数:45Hz、励起振動振幅:2nm、歪速度:0.05sec-1、押し込み深さ:2000nm、N数:15点、測定点間隔:100μmの条件で測定した。表面硬度の測定は、アルミニウム基板と各皮膜の積層方向に、各皮膜側から測定したため、測定結果は、アルミニウム基板自体の硬度による影響も受けている。15点測定した結果の平均値(表面硬度)を下記表1に示す。
なお、準備した円板状研削済アルミニウム基板自体(ベーマイト処理等無し)の表面硬度は、0.8GPaであった。
次に、得られたアルミニウム基板表面に形成されている皮膜の膜厚は、光干渉式膜厚計(nanometrics社製「nanospec/AFT、model 5100型」)を用い、SiO2の屈折率(1.46)を適用して測定した。
次に、得られたアルミニウム基板に形成したSiO2層、ポリシロキサン膜、有機ポリシラザン膜の耐熱性を下記の手順で評価した。
上記実験1〜実験7で用いた無機ポリシラザン含有溶液、無機ポリシロキサン含有溶液、または有機ポリシラザン含有溶液を、ポリテトラフルオロエチレン製シートに塗布し、これを約200℃に加熱した。得られた残渣を供試材とし、パーキンエルマー社製の「TGA7」で、最高到達温度800℃まで、大気雰囲気中で、昇温速度10℃/分で加熱し、熱質量変化を測定した。供試材の質量が3%減少したときの温度を耐熱温度として計測した。耐熱温度を下記表1に示す。
下記表1から次のように考察できる。No.3〜5は、いずれも本発明で規定する要件を満足していない例であり、耐熱性または表面硬度の少なくとも一方の特性が劣化している。詳細には、No.3〜5は、ベーマイト処理および加熱処理を行っていないため、アルミニウム基板の表面硬度を改善できていない。これらのうちNo.3は、無機ポリシロキサンを用いているため、耐熱性も改善できていない。また、No.4は、有機ポリシラザンを用いているため、耐熱性も改善できていない。
一方、No.1、2、6、7は、いずれも本発明で規定する要件を満足している例であり、ベーマイト処理と加熱処理を組み合わせて行っているため、上記No.5の結果に比べて表面硬度が高くなっている。また、無機ポリシラザン含有溶液を用いてSiO2層を形成しているため、耐熱性を改善できている。
Figure 0005681580
次に、上記実験2で得られたSiO2層被覆アルミニウム基板の表面粗度を測定した。表面粗度は、アルミニウム基板表面に形成したSiO2層表面を研磨してから測定した。
上記研磨は、研磨パッドとしてニッタ・ハース製の「スエードタイプ RN−H」、研磨スラリーとしてフジミ製の「Compol−80」を水で1:1に希釈したものを用い、研磨圧力:6.9kPa(70gf/cm2)、摺動速度:70cm/秒とし、片面当りの研磨量を0.6μmに設定して行った。
上記表面粗度は、上記研削済アルミニウム基板の表面粗度を測定したときと同様、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、観察視野を2μm角または60μm角の2種類として平均粗さSaを測定した。測定したSiO2層の研磨後の平均粗さSaを下記表2に示す。また、参考値として、上記円板状研削済アルミニウム基板表面の平均粗さSa、およびSiO2層表面の研磨前の平均粗さSaを測定し、測定結果を下記表2に示す。
また、上記実験2において、上記円板状研削済アルミニウム基板の表面にSiO2層を形成した後、このSiO2層(即ち、研磨前のSiO2層)表面のうねりを測定した。うねりは、触針式粗さ測定機(Taylor Hobson社製「フォームタリサーフ イントラ2型」)を用い、観察領域を長さ1.5mmとして、算術平均粗さRaを測定した。測定結果を下記表3に示す。また、参考値として、上記円板状研削済アルミニウム基板表面の算術平均粗さRaを測定した。測定結果を下記表3に示す。
下記表2から明らかなように、本発明で規定する方法で得られるアルミニウム基板は、2μm角および60μm角のいずれの観察視野で観察しても表面が平滑になっていることが分かる。また下記表3から明らかなように、アルミニウム基板表面に無機ポリシラザン含有溶液を用いてSiO2層を形成することによって、観察領域を広くしても算術平均粗さRaは小さくなることが分かる。即ち、本発明で規定する方法で得られるアルミニウム基板は、表面が平滑となり、うねりも大きく改善されることが分かる。
Figure 0005681580
Figure 0005681580

Claims (3)

  1. アルミニウム基板にベーマイト処理を施した後、加熱して酸化皮膜を形成する工程と、
    加熱後のアルミニウム基板表面に無機ポリシラザン含有溶液を塗布した後、加熱して表面硬度の高いSiO2膜を形成する工程、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
  2. 前記ベーマイト処理に先立って、前記アルミニウム基板にりん酸処理を施す工程を含む請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ベーマイト処理を施した後、250℃以上に加熱する請求項1または2に記載の製造方法。
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