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JP5686429B2 - 陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法 - Google Patents
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JP5686429B2 - 陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法 - Google Patents

陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法に関する。
陽極酸化アルミナ基板は、直径が50nm〜1μmの貫通孔を有しており(後述の図1参照)、酵素を担持する担体として注目されている。
ここで、既存の陽極酸化アルミナ基板の断面の電子顕微鏡写真を図4〜図7に示す。図4に示すように、陽極酸化アルミナ基板が有する貫通孔は、当該陽極酸化アルミナ基板の厚さ方向に、すなわち、一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通している。表面近傍の断面の拡大写真(図5)と、裏面近傍の断面の拡大写真(図6)と、を比較すると、表面近傍とそれ以外とでは、貫通孔の形状が異なることが分かる。具体的には、表面近傍の断面を更に拡大して得たSEM写真(図7)から分かるように、既存の陽極酸化アルミナ基板の表面層では、貫通孔が分岐して複数の微細孔を形成しており、入り組んだ複雑な構造となっている。
すなわち、既存の陽極酸化アルミナ基板Pの断面を模式的に示すと、図8に示すように、既存の陽極酸化アルミナ基板Pの表面層(図8における上面層)は、複数の微細孔Qが形成された微細孔層Rとなっており、当該微細孔Qは、直径が50nm〜1μmの貫通孔11の先端に接続されている。このように、表面近傍とそれ以外とで、貫通孔の形状が異なるのは、陽極酸化アルミナ基板の製法によるものと考えられる。
このような微細孔層Rを有する既存の陽極酸化アルミナ基板Pに酵素を担持させて、陽極酸化アルミナ−酵素複合体を構成すると、微細孔層R部分で液体や気体の流路が狭まるため、当該陽極酸化アルミナ−酵素複合体を酵素センサ、酵素バイオ電池、酵素リアクター等に適用した場合に、酵素が選択的に反応する特定物質を含有する液体や気体が透過し難くなって、高速な反応が実施できなくなる。
ところで、微細孔層を有する陽極酸化アルミナ基板を、微細孔層を優先的に溶解する溶液中に浸して、微細孔層を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−307340号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法で微細孔層が除去された陽極酸化アルミナ基板は、酵素を担持するためのものではない。さらに、微細孔層が除去された陽極酸化アルミナ基板に酵素を担持することによって構成された陽極酸化アルミナ−酵素複合体等も提案されていない。
また、特許文献1に記載の方法では、微細孔層部分とその他の部分との組成が異なっている必要があり、微細孔層部分とその他の部分との組成が異ならない場合は、微細孔層だけでなく、その他の部分(その他の部分の一部)も除去されてしまう。
本発明の課題は、高速な反応が実施可能な陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法として微細孔層部分とその他の部分との組成が異ならない場合であっても微細孔層のみを除去可能な製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
互いに平行な複数の貫通孔を有する陽極酸化アルミナ基板と、
前記貫通孔内に導入された酵素と、を備える陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法であって
前記貫通孔の先端に接続する微細孔の形成された微細孔層をドライエッチングによって除去して、前記陽極酸化アルミナ基板を作成する除去ステップと、
前記陽極酸化アルミナ基板が有する前記貫通孔内に前記酵素を導入する導入ステップと、
を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記ドライエッチングは、O 及びCF を用いた反応性イオンエッチングであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記貫通孔の直径は、50nm〜1μmであることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記貫通孔内に当該貫通孔の内壁に沿って中空糸状のシリカ構造体を形成する形成ステップを、前記除去ステップと前記導入ステップの間に有し
前記シリカ構造体は、壁面に複数の穴部を有し、
前記酵素は、前記貫通孔内に導入されて前記穴部の内部に固定されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記穴部のサイズは、前記酵素のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記シリカ構造体は、
0.1〜1.5mL/gの細孔容積を有するシリカ系メソ多孔体、
200〜1500m の比表面積を有するシリカ系メソ多孔体、又は
全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上のシリカ系メソ多孔体であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4から6の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記シリカ構造体は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すシリカ系メソ多孔体であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項4から7の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法において、
前記シリカ構造体は、有機基を有するシリカ系メソ多孔体であり、
前記有機基は、炭化水素基、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、又はビニル基であることを特徴とする。
本発明によれば、陽極酸化アルミナ基板は微細孔層が除去されてなるので、陽極酸化アルミナ−酵素複合体を酵素センサ、酵素バイオ電池、酵素リアクター等に適用しても、酵素が選択的に反応する特定物質を含有する液体や気体が透過し難くなることがなく、高速な反応が実施できる。
本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の構成を示す模式図である。 本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の要部構成を説明するための断面模式図である。 本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体を構成する陽極酸化アルミナ基板のSEM写真、すなわち、既存の陽極酸化アルミナ基板の表面を反応性イオンエッチングした後のSEM写真である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の断面のSEM写真である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の表面近傍の断面のSEM写真である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の裏面近傍の断面のSEM写真である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の表面近傍の断面のSEM写真である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の断面を示す模式図である。 既存の陽極酸化アルミナ基板の断面を示す模式図であって、シリカ構造体を形成した場合の図である。
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
<陽極酸化アルミナ−酵素複合体>
本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1は、陽極酸化アルミナ基板10と、当該陽極酸化アルミナ基板10に担持された酵素30と、等からなり、例えば、酵素センサ、酵素バイオ電池、酵素リアクターに好適に適用することができる。
具体的には、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1は、例えば、図1及び図2に示すように、厚さ方向に貫通する互いに平行な複数の貫通孔11を有する陽極酸化アルミナ基板10と、貫通孔11内に当該貫通孔11の内壁11aに沿って形成された中空糸状のシリカ構造体20と、貫通孔11内に導入されてシリカ構造体20に固定された酵素30と、を備えて構成される。
陽極酸化アルミナ−酵素複合体1において、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11内は、例えば、図2に示すように、酵素30が固定される固定領域A1と、特定物質(反応物質)及び生成物(反応生成物)が拡散する拡散領域A2と、に分けられる。
固定領域A1は、シリカ構造体20の壁面部分であり、その壁面部分に形成された穴部21の内部に酵素30が固定されている。
拡散領域A2は、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通する孔からなる。すなわち、拡散領域A2は、陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に形成されたシリカ構造体20の中空部分であり、何も充填されていない空洞となっている。
したがって、例えば、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の表面から裏面に向かって(或いは、裏面から表面に向かって)、特定物質を含有する液体や気体を強制的に透過させると、当該液体や気体は何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を通過する。そのため、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造(酵素30が固定された領域を、特定物質や生成物が拡散する構造)の複合体と比較して、圧損が低く、当該液体や気体を高速に透過させることができるので、高速で反応を実施することができる。
さらに、当該液体や気体が拡散領域A2を通過する際に、当該液体や気体に含有された特定物質は、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、固定領域A1に固定された酵素30へと移動し、当該酵素30と接触する。そして、当該接触によって生じた生成物も、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の外部へと移動する。そのため、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1は、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造の複合体と比較して、内部での特定物質や生成物の拡散性が高くなるので、高速で反応を実施することができる。
また、例えば、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を電解液等に浸漬させ、特定物質を含有する気体を当該電解液等と接触させて、当該電解液等に当該特定物質を溶解させると、当該特定物質は、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の外部を拡散して内部(拡散領域A2)へと移動し、さらに、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、固定領域A1に固定された酵素30へと移動し、当該酵素30と接触する。そして、当該接触によって生じた生成物も、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の外部へと移動する。そのため、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1は、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造の複合体と比較して、内部での特定物質や生成物の拡散性が高くなるため、高速で反応を実施することができる。
<陽極酸化アルミナ基板>
陽極酸化アルミナ基板10は、アルミニウムを含む基板(アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板)を陽極酸化して得た陽極酸化アルミナ基板(陽極酸化アルミナ膜)である。陽極酸化アルミナ基板10は、例えば、直径が5cm程度、厚さが50μm程度の円板形状をなしている。
ここで、陽極酸化アルミナ基板10は、当該陽極酸化アルミナ基板10の厚さ方向に貫通する貫通孔11の先端に接続する微細孔Qの形成された微細孔層Rが除去されてなる。
前述したように、アルミニウムを含む基板を陽極酸化して得た既存の陽極酸化アルミナ基板Pは、少なくとも一方の面(表面)に、貫通孔11の先端に接続する微細孔Qの形成された微細孔層Rを有している。このような微細孔層Rを有する既存の陽極酸化アルミナ基板Pを、陽極酸化アルミナ−酵素複合体に用いると、特定物質を含有する液体や気体が透過し難くなり、高速な反応が実施できなくなる。
特に、本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1のように、貫通孔11内に形成されたシリカ構造体20を備える場合、微細孔層Rを有するままだと、微細孔Qがシリカ構造体20で狭められてしまったり、或いは、図9に示すように、塞がれてしまったりする。貫通孔11の先端に接続する微細孔Qが塞がれる(或いは、狭められる)と、液体や気体が透過しなくなって(或いは、透過し難くなって)、貫通孔11及び微細孔Qの内部に導入されてシリカ構造体20に固定された酵素30に特定物質が供給されなくなったり(或いは、供給され難くなったり)、酵素30と特定物質との反応により生じた生成物を回収できなくなったり(或いは、回収し難くなったり)して、高速な反応が実施できなくなる。
そこで、本実施形態では、アルミニウムを含む基板を陽極酸化して得た既存の陽極酸化アルミナ基板Pから、微細孔層Rを除去することによって形成されてなるものを、陽極酸化アルミナ基板10として使用することとする。したがって、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11は、陽極酸化によって形成された孔のうちの微細孔Qが除去されてなる、陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通する円筒状(或いは、角筒状)の孔である。
貫通孔11の直径は、当該貫通孔11内に導入する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、50nm〜1μmである。
<シリカ構造体>
シリカ構造体20は、ナノメートルオーダーのサイズの細孔(穴部21)を複数有する多孔性シリカ膜(シリカ製のメッシュ体)を丸めて円筒状(或いは、角筒状)に形成したような形状をなしている。すなわち、シリカ構造体20は、ナノメートルオーダーのサイズの細孔(穴部21)を壁面に複数有する中空糸状のシリカ系メソ多孔体である。
シリカ構造体20は、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の内壁11aを鋳型として形成される。具体的には、例えば、貫通孔11の内壁11aに、界面活性剤とシリカとの自己組織化によって有機−無機複合体(界面活性剤を含むシリカ層)を形成させ、その後、有機−無機複合体から界面活性剤を焼却除去や溶媒抽出除去することによって、周期構造を有するメソポーラスな多孔質材料(シリカ構造体20)を形成することができる。
穴部21は、界面活性剤のミセルを鋳型として形成された、シリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通する孔である。穴部21の貫通方向は、例えば、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の貫通方向に対して略垂直となっている。
穴部21のサイズ(中心細孔直径)は、当該穴部21の内部に固定する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、1nm〜50nmである。ここで、穴部21のサイズは、界面活性剤の種類を変えて、界面活性剤のミセルの径を変えることによって制御できる。また、穴部21のサイズは、例えば、界面活性剤と併せて、トリメチルベンゼンやトリプロピルベンゼンなどの比較的疎水性の分子を添加し、ミセルを膨潤させて、ミセルの径を変えることによって制御できる。
なお、穴部21の中心細孔直径とは、穴部21の断面形状が正円形状であると仮定し、シリカ構造体20の細孔容積(V)を穴部21の直径(D)で微分した値(dV/dD)を穴部21の直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径を意味する。
穴部21のサイズは、当該穴部21の内部に固定する酵素30のサイズの0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、酵素30のサイズの0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、酵素30のサイズとほぼ同等であることが最も好ましい。穴部21のサイズが酵素30のサイズの0.5倍未満であると、酵素30が穴部21の内部へと入り込み難くなり、酵素30の固定量が不充分となる傾向がある。また、穴部21のサイズが酵素30のサイズの2.0倍よりも大きいと、酵素30の立体構造が効率よく保持されない傾向がある。
すなわち、シリカ構造体20が有する穴部21のサイズを、当該穴部21の内部に固定する酵素30のサイズの0.5〜2.0倍程度(より好ましくは0.7〜1.4倍程度、最も好ましくはほぼ同程度)にすることによって、穴部21の内部への酵素30の固定(吸着)を効率化でき、また、穴部21の内部に固定された酵素30の立体構造の保持が容易となるため酵素30を安定的に担持することができる。
なお、穴部21の内部に固定する酵素30が多量体を形成する場合、当該酵素30のサイズは、多量体のサイズとすることができる。ここで、多量体とは、2以上の酵素(タンパク質)が、直接に、又は水などの低分子を介して結合してなる化合物をいい、結合には、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合が含まれる。しかし、これらの結合の種類は、特に制限されない。
また、穴部21の内部に固定する酵素30のサイズは、当該酵素30の形状が、球状である場合は酵素30の直径(例えば、楕円球状のように直径が複数ある場合は、そのうちの何れか1つ)、板状である場合は酵素30の長辺の長さ、等とすることができるが、これらに限られるものではなく、穴部21の内部に固定する酵素30の形状や特性に応じて適宜任意に判断するのが好ましい。
また、穴部21の内部に固定する酵素30の変性を抑制する等の観点から、シリカ構造体20の酸解離定数(pKa)は、pKa5〜14が好ましい。
また、穴部21の深さ(すなわち、シリカ構造体20の壁面の厚み)は、穴部21の内部に固定する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、1nm以上である。
ここで、シリカ構造体20の壁面の厚みを決めるファクターとして、シリカ構造体20の原料となるシリカ源溶液の粘度や液温、シリカ源溶液を陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11内に流し込む速度などが挙げられる。例えば、流し込む速度が低下するにつれて、貫通孔11内に形成される中空糸状のシリカ構造体20の壁面の厚みは厚くなり、流し込む速度が所定の閾値以下になると、貫通孔11内には、固定領域A1と拡散領域A2とが分離された構造のシリカ系メソ多孔体(中空糸状のシリカ構造体20)が形成されず、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造のシリカ系メソ多孔体が形成されてしまう。
シリカ構造体20は、0.1〜1.5mL/gの細孔容積を有するシリカ系メソ多孔体であることが好ましく、また、200〜1500mの比表面積を有するシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。そして、シリカ構造体20は、全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上のシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。
ここで、「全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち、1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。
このような条件を満たすシリカ系メソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味し、このような細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に、酵素30を吸着させると、酵素30の安定性及び吸着量(固定量)をより向上させることができる。なお、細孔容積は、例えば、リン酸溶液や硝酸溶液で陽極酸化アルミナ基板10を溶解させて、析出したシリカ構造体20を液体窒素温度に冷却して窒素ガスを導入する方法(窒素吸着法)によって算出することができる。
また、シリカ構造体20は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。X線回折パターンでピークが現われる場合は、そのピーク角度に相当するd値の周期構造がシリカ系メソ多孔体中にあることを意味する。
したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。このように、非常に規則的な細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に、酵素30を吸着させると、酵素30の安定性及び吸着量をより向上させることが可能になる。
なお、シリカ構造体20における、穴部21の配列状態(細孔配列構造)は、特に制限されるものではない。シリカ構造体20としては、例えば、ヘキサゴナルの細孔配列構造を有するもの、キュービックやディスオーダの細孔配列構造を有するものが例示される。
ここで、シリカ構造体20がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が六方構造であることを意味する。ヘキサゴナルの細孔配列構造としては、2次元ヘキサゴナル及び3次元ヘキサゴナルが挙げられる。本発明において好適に用いることのできる2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有するシリカ構造体20は、例えば、図1に示すように、2次元ヘキサゴナル配列構造に基づいて、六角柱状の細孔が互いに平行に規則的に形成されている。
また、シリカ構造体20がキュービックの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が立方構造であることを意味する。
また、シリカ構造体20がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が不規則であることを意味する。
なお、シリカ構造体20が、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造を有する場合は、穴部21の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、シリカ構造体20は、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造と、ディスオーダの不規則的細孔配列構造と、の両方を有していることが可能である。しかしながら、全ての穴部21のうちの80%以上は、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
また、シリカ構造体20としては、有機基を有するシリカ系メソ多孔体、有機基を有しないシリカ系メソ多孔体が例示される。そして、何れのシリカ系メソ多孔体の場合においても、ケイ素以外の金属元素(例えば、Al、Zr、Ti)を更に含むことができる。なお、何れのシリカ系メソ多孔体であっても、表面にはシラノール基(−SiOH基)が存在している。
有機基を有するシリカ系メソ多孔体とは、シリカ系メソ多孔体を構成するケイ素原子の少なくとも一部に、有機基が、炭素−ケイ素結合を形成することによって結合しているものをいう。有機基としては、例えば、アルカンやアルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカンなどの炭化水素から1以上の水素がとれて生じる炭化水素基、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等が挙げられる。
<酵素>
酵素30は、特定物質と選択的に反応する酵素であれば任意であり、特定物質の種類によって適宜選択可能である。
具体的には、酵素30は、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素等の酵素(酵素タンパク質)であるが、これらに限定されるものではない。
また、酵素30は、例えば、生来の酵素分子であっても良いし、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても良いし、所望によりそれを切断したものであっても良いし、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に導入してシリカ構造体20の穴部21の内部に固定する酵素30(すなわち、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を構成する酵素30)は、1種類の酵素であっても良いし、2種類以上の酵素であっても良い。
また、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を構成する酵素30が2種類以上である場合、当該酵素30は、例えば、同種の特定物質(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、異種の特定物質に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、同種及び/又は異種の特定物質に作用する2種類以上の酵素であっても良い。
また、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を構成する酵素30が2種類以上である場合、その2種類以上の酵素30は、陽極酸化アルミナ基板10が有する別々の貫通孔11内に導入されても良いし、同一の貫通孔11内に導入されても良い。
酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に固定する方法としては、例えば、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10に、酵素30を含む溶液を滴下するディップ法、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10を、酵素30を含む溶液に浸漬する浸漬法、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10の表面から裏面に向かって(或いは、裏面から表面に向かって)、酵素30を含む溶液を透過させる透過法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これにより、高次構造と活性を保持したまま、酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に固定することができる。
さらに、必要に応じて、公知の酵素固定化法(例えば、導電性高分子、グルタルアルデヒド、光架橋性樹脂等を用いる固定化法等)と併用することもできる。
<陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法>
次に、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の製造方法について説明する。
陽極酸化アルミナ−酵素複合体1は、陽極酸化アルミナ基板10を作成し、シリカ構造体20を貫通孔11内に形成し、酵素30を貫通孔11に導入してシリカ構造体20に固定することによって製造される。
(陽極酸化アルミナ基板の作成)
まず、陽極酸化アルミナ基板10を作成する(除去ステップ)。
具体的には、まず、アルミニウムを含む基板を陽極酸化して得た既存の陽極酸化アルミナ基板Pを用意する。
次いで、O及びCFを用いた反応性イオンエッチング等のドライエッチングによって、既存の陽極酸化アルミナ基板の表面から微細孔層Rを除去して、陽極酸化アルミナ基板10を作成する。
ここで、図3に、陽極酸化アルミナ基板10の電子顕微鏡写真、すなわち、既存の陽極酸化アルミナ基板の表面を反応性イオンエッチングした後の電子顕微鏡写真を示す。図3に示す電子顕微鏡写真から、反応性イオンエッチングすることによって、微細孔層Rを完全に除去できることが分かる。これにより、既存の陽極酸化アルミナ基板Pを改良して作成した陽極酸化アルミナ基板10を用いることで、高速な反応が実施可能な陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を構成できることが分かる。
なお、ウェットエッチング法や微細孔層Rを溶解可能な溶液中に浸す方法などの湿式法によって微細孔層Rを除去することも可能である。しかしながら、湿式法だと、微細孔層R部分とその他の部分との組成が異ならない場合は特に、その他の部分(その他の部分の一部)も除去されてしまって、陽極酸化アルミナ基板10が薄くなってしまったり、貫通孔11の径が大きくなってしまったりする場合がある。そのため、微細孔層R部分とその他の部分との組成が異ならない場合であっても、その他の部分(すなわち、陽極酸化アルミナ基板10部分)の形状を維持可能である等の観点から、本実施形態のように、ドライエッチング法等の乾式法によって微細孔層Rを除去することが好ましい。
(シリカ構造体の形成)
次に、シリカ構造体20を貫通孔11内に形成する。
具体的には、例えば、まず、シリカ構造体20の原料となるシリカ源溶液を、作成した陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)から流し込んで他方の面(裏面)から排出する操作(或いは、裏面から流し込んで表面から排出する操作)を行う。この際、貫通孔11の内壁11aに残留するシリカ源溶液の厚さが所定の値となるように、シリカ源溶液の粘度や液温、シリカ源溶液を流し込む速度などの条件を調整する。ここで、本実施形態では、陽極酸化アルミナ基板10は微細孔層Rが除去されてなるので、シリカ源溶液を流し込んで排出する操作を高速で行うことができる。
次いで、例えば、貫通孔11の内壁11aにシリカ源溶液が残留する陽極酸化アルミナ基板10を加熱し、当該シリカ源溶液を焼き固めることによって、貫通孔11の内壁11aに沿ってシリカ構造体20を形成する。
(酵素の導入)
次に、酵素30を貫通孔11に導入してシリカ構造体20に固定する(導入ステップ)。
具体的には、まず、酵素30を含む溶液を作成する。
次いで、例えば、作成した酵素30を含む溶液を、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10の表面から流し込んで裏面から排出する操作(或いは、裏面から流し込んで表面から排出する操作)を繰り返し行うことによって、当該酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に吸着固定させる。ここで、本実施形態では、陽極酸化アルミナ基板10は微細孔層Rが除去されてなるので、酵素30を含む溶液を流し込んで排出する操作を高速で行うことができる。
次いで、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10を洗浄することによって、拡散領域A2内の酵素30を洗い流す。
以上のようにして、作成した陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に酵素30を導入して、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を製造する。
なお、上記の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の製造方法は、一例であって、これに限られるものではない。
以上説明した本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1によれば、互いに平行な複数の貫通孔11を有する陽極酸化アルミナ基板10と、貫通孔11内に導入された酵素30と、を備え、陽極酸化アルミナ基板10は、貫通孔11の先端に接続する微細孔Qの形成された微細孔層Rが除去されてなる。
したがって、陽極酸化アルミナ基板10は微細孔層Rが除去されてなるので、陽極酸化アルミナ−酵素複合体1を酵素センサ、酵素バイオ電池、酵素リアクター等に適用しても、酵素30が選択的に反応する特定物質を含有する液体や気体が透過し難くなることがなく、高速な反応が実施できる。
また、以上説明した本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1によれば、貫通孔11内に当該貫通孔11の内壁11aに沿って形成された中空糸状のシリカ構造体20を備え、シリカ構造体20は、壁面に複数の穴部21を有し、酵素30は、貫通孔11内に導入されて穴部21の内部に固定されている。
したがって、陽極酸化アルミナ基板10に効率よく安定的に酵素30を担持させるために、陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内にシリカ構造体20を形成しても、陽極酸化アルミナ基板10は微細孔層Rが除去されてなるので、酵素30が選択的に反応する特定物質を含有する液体や気体が透過し難くなることがなく、高速な反応が実施できる。
すなわち、本実施形態のように陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内にシリカ構造体20を形成する場合は特に、微細孔層Rを有するままだと、微細孔Qがシリカ構造体20で狭められてしまったり、塞がれてしまったりして、高速な反応が実施できなくなる。これに対し、本実施形態のように、陽極酸化アルミナ基板10は微細孔層Rが除去されてなるものであるとともに、貫通孔11内に中空糸状のシリカ構造体20が備えられているので、効率よく安定的に酵素30を担持できるとともに、高速な反応が実施できる。
また、以上説明した本実施形態の陽極酸化アルミナ−酵素複合体1の製造方法によれば、微細孔層Rをドライエッチングによって除去して、陽極酸化アルミナ基板10を作成する除去ステップと、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11内に酵素30を導入する導入ステップと、を有している。
したがって、微細孔層Rをドライエッチングによって除去するので、微細孔層R部分とその他の部分との組成が異ならない場合であっても、微細孔層Rのみを除去でき、その他の部分(すなわち、陽極酸化アルミナ基板10部分)の形状を維持することができる。
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
シリカ構造体20が有する穴部21の貫通方向は、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の貫通方向に対して略垂直に限ることはなく、穴部21が中空糸状のシリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通しているのであれば任意である。
また、シリカ構造体20が有する穴部21は、シリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通する細孔に限ることはなく、例えば、シリカ構造体20の内壁面20aに形成された凹部(すなわち、内壁面20a側が開口して外壁面20b側が閉口した穴)であっても良い。
陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に中空糸状のシリカ構造体20を形成することとしたが、これに限ることはなく、貫通孔11内に、効率よく安定的に酵素30を固定するための中空糸状の多孔体が形成されていれば任意であり、例えば、中空糸状のカーボン多孔体が形成されていても良い。
また、必ずしも貫通孔11内に多孔体を形成する必要はなく、貫通孔11に直接酵素30が固定されていても良い。
1 陽極酸化アルミナ−酵素複合体
10 陽極酸化アルミナ基板
11 貫通孔
11a 内壁
20 シリカ構造体
21 穴部
30 酵素
Q 微細孔
R 微細孔層

Claims (8)

  1. 互いに平行な複数の貫通孔を有する陽極酸化アルミナ基板と、
    前記貫通孔内に導入された酵素と、を備える陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法であって
    前記貫通孔の先端に接続する微細孔の形成された微細孔層をドライエッチングによって除去して、前記陽極酸化アルミナ基板を作成する除去ステップと、
    前記陽極酸化アルミナ基板が有する前記貫通孔内に前記酵素を導入する導入ステップと、
    を有することを特徴とする陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法
  2. 前記ドライエッチングは、O 及びCF を用いた反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
  3. 前記貫通孔の直径は、50nm〜1μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
  4. 前記貫通孔内に当該貫通孔の内壁に沿って中空糸状のシリカ構造体を形成する形成ステップを、前記除去ステップと前記導入ステップの間に有し
    前記シリカ構造体は、壁面に複数の穴部を有し、
    前記酵素は、前記貫通孔内に導入されて前記穴部の内部に固定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法
  5. 前記穴部のサイズは、前記酵素のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とする請求項4に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
  6. 前記シリカ構造体は、
    0.1〜1.5mL/gの細孔容積を有するシリカ系メソ多孔体、
    200〜1500m の比表面積を有するシリカ系メソ多孔体、又は
    全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上のシリカ系メソ多孔体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
  7. 前記シリカ構造体は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すシリカ系メソ多孔体であることを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
  8. 前記シリカ構造体は、有機基を有するシリカ系メソ多孔体であり、
    前記有機基は、炭化水素基、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、又はビニル基であることを特徴とする請求項4から7の何れか一項に記載の陽極酸化アルミナ−酵素複合体の製造方法。
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