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JP5773207B2 - ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物 - Google Patents
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JP5773207B2 - ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒト関節リウマチ様関節炎であるビラン性関節炎を発症するモデル非ヒト哺乳動物に関する。また本発明は、上記モデル動物を用いた、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法に関する。
ヒト関節リウマチは、関節部における炎症、骨破壊、骨の癒着及び変形等を主体とする、自己免疫性の難治疾患であり、一般に強い慢性化傾向を示す。また、ヒト関節リウマチは血管炎をしばしば合併するため、心筋炎、間質性肺炎及び抹消における血管炎等を引き起こし得る。これらの合併症も難治性であり、その特異的な治療薬の開発が切望されている。
従来、ヒト関節リウマチの治療薬開発等に用いられるモデル動物としては、誘発モデルとして、アジュバント関節炎、II型コラーゲン誘発関節炎及びプリスタン誘発関節炎等のモデル動物が知られており、自然発症モデルとして、MRL/lprマウス関節炎及びNZB/KNマウス関節炎等のモデル動物が知られている(安倍千之、「関節炎モデル」、出版社:医薬ジャーナル社(東京)、1997年、p469−482)。
しかしながら、上記誘発モデルの場合、自己免疫の発症機構が炎症を急激に誘導することで人為的であり、発症過程を解析するモデルとしては不適当であるうえ、必ずしも同じ抗原が関節リウマチで認識されている保証はない。一方、上記自然発症モデルの場合、自己免疫の発症機構が解析できるという魅力はあるが、発症率が低く、骨の破壊と同時に骨過形成像が観察され、特に、MRL/lprマウスの場合はfas遺伝子の異常によって起こされるものであり、多くの関節リウマチ患者とはメカニズムが異なっている。このように、上記誘発モデルや自然発症モデルで観察される現象は、ヒト関節リウマチで観察される現象とは根本的に異なるため、発症する関節炎は、関節リウマチの病態と部分的に類似性をもってはいるものの、関節リウマチの病態を再現したものではない。また、ヒトとの種差による薬剤感受性が異なるなどの問題がある。
ところで、Epstein−Barrウイルス(EBウイルス;ヒトヘルペスウイルス4)は、γヘルペスウイルスファミリーに属するヒトヘルペスウイルスである。EBウイルスは、感染後ほとんどが潜在化し、その一生を終えるが、免疫抑制剤等の影響下では再活性化し、生体に重篤な状態を起こすことがある。よって、EBウイルスの再活性化は、EBウイルス関連疾患群の難病の病態に関与している可能性があると考えられている。
従来は、EBウイルス感染モデル動物自体、コットントップタマリン等の希少霊長類を用いたものが存在するのみであり(J.A.ウォルフ〔編集〕,J.A.Wolff〔原著〕、谷憲三朗〔監修〕、「遺伝子治療学―基礎研究から臨床へ」、出版社:シュプリンガー・ジャパン(株)、1998年、p356−366)、ヒト関節リウマチにおいて見られるような関節炎症状(ビラン性関節炎)を発症するものはなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、Epstein−Barrウイルス(EBウイルス)の直接感染により得られるモデル非ヒト哺乳動物であって、従来無かった新規な用途に用い得るモデル非ヒト哺乳動物、すなわちヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物を提供することにある。また、本発明は、当該モデル非ヒト哺乳動物を用いた、ヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法を提供することも目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、ヒト免疫化マウスのEBウイルス直接感染モデルにおいて、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症するモデルマウスを初めて確認し、本発明を完成した。詳しくは、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症するモデルマウスを、自己免疫現象ではなく、ウイルス感染により初めて得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ヒト免疫化非ヒト哺乳動物にEpstein−Barrウイルスを感染させることにより得られ、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症することを特徴とする、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物。
上記(1)のモデル非ヒト哺乳動物としては、例えば、破骨細胞の分化誘導が促進されたものが挙げられる。破骨細胞は、骨融解(骨吸収)を起こす多核細胞である。
上記(1)のモデル非ヒト哺乳動物においては、Epstein−Barrウイルスを感染させるヒト免疫化非ヒト哺乳動物として、例えば、免疫不全非ヒト哺乳動物にヒト造血幹細胞を移植して得られるものが挙げられる。
また、上記(1)のモデル非ヒト哺乳動物としては、非ヒト哺乳動物が、例えば齧歯類動物、具体的にはマウスであるものが挙げられる。
(2)上記(1)記載の非ヒト哺乳動物に候補物質を投与する工程、及び当該投与後の非ヒト哺乳動物におけるヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の病態を評価する工程を含む、ヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法。
図1は、公知文献(H.Patrick McNeil et al.,“The mouse mast cell−restricted tetramer−forming tryptases mouse mast cell protease 6 and mouse mast cell protease 7 are critical mediators in inflammatory arthritis”,Arthritis & Rheumatism,vol.58 issue 8,p.2338−2346,2008 August)に開示されている、従来公知の重症関節炎モデルの関節組織の症状を示す図(ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色)である。突き出した関節腔における、滲出液(図(a)中のe)、滑膜炎(図(a)中のs)パンヌス形成(図(a)中のp)、骨侵食(図(b)中の矢印)を示す。
図2は、EBウイルス感染NOGマウスのコントロール(ネガティブコントロール)となる、EBウイルス未感染のNOGマウスの関節組織を示す図である。NOG N69−1、NOG N69−3、NOG N69−4、NOG N87−1は、各NOGマウスのサンプルNo.である。
図3は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG 70−13)の関節炎(滑膜炎)を示す図(HE染色)である。図(a)は図(b)の拡大図である。
図4は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG 70−13)の関節局所の骨髄の浮腫を示した図(HE染色)である。ヒト関節リウマチの初期のMRIで認められるものであり、ヒト化マウスで初めて証明できた大変重要な所見である。免疫組織染色により、CD4T細胞が主体であると証明されたものである。
図5は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG N79−1)における、ヒト関節リウマチで見られるビラン性関節炎を示す図(HE染色)である。図(a)は図(b)の拡大図である。パンヌスと定義されるものであり、肉芽組織の中に、破骨細胞と考えられる多核細胞が認められ、他のマウスでは同様の多核細胞が骨組織に接しているところに多く集族していた。このことは、当該モデルマウスにおいて骨代謝系が活発に働いて、破骨細胞の分化誘導が促進され、骨融解機序がビラン性関節炎の初期に重要な働きをし、慢性関節炎に発展することを意味している。ビラン性関節炎初期の治療としては、炎症を抑える又は過剰な自己免疫現象を抑える治療よりも、破骨細胞の分化誘導を抑える治療の方が、関節炎の進行を抑制できるという可能性を示すものである。
図6は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG 70−13)に関して、免疫組織染色によりT細胞(CD3陽性)を見た結果を示す図である。図(a)は図(b)の拡大図である。滑膜炎の部位に、CD3陽性T細胞が誘導されていることが認められる。
図7は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG 70−13)に関して、免疫組織染色により、B細胞(CD20)、単球(CD68)、T細胞(CD4、CD8)を見た結果を示す図である。滑膜炎の部位にはCD20が少なく、CD68も多くなく、このモデルマウスはヒト関節リウマチと異なり単球由来と考えられている滑膜表層細胞(滑膜A型細胞)の増殖が認めらなかった。このことは、ヒトCD34幹細胞がこのモデルマウスで滑膜表層細胞に分化できないか、これまで考えられていた滑膜細胞の由来が誤っている可能性を示唆するものである。
図8は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG 70−13)に関して、免疫組織染色により、滑膜のCD3T細胞とCD20B細胞、関節局所の骨髄のCD4T細胞の浸潤を示した図である。
図9は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG N82−4)の関節炎(滑膜炎、パンヌス、骨髄の浮腫)を示す図(HE染色)である。図(a)は図(b)の拡大図である。
図10は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG N85−4)の関節炎を示す図(HE染色)である。図(a)は図(b)の拡大図である。EBウイルス感染後、CD3抗体でT細胞を殺したモデルマウスであり、他のモデルマウスより強い破壊性関節炎を起こしていることが認められる。このことは、EBウイルス感染量をコントロールしなければならない時期にT細胞を除くことにより、重症な破壊性関節炎を惹起する可能性があることを示すものであり、またT細胞の制御をすることで、破壊性関節炎を抑制することも悪化させることも可能であることを意味するものでもある。
図11は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG N87−6)の関節炎を示す図(HE染色)である。図(a)は図(b)の拡大図である。このモデルマウスは、パンヌスが強いモデルの例であり、肉芽の骨に接するところに多くの多核細胞(破骨細胞と考えられる)が集まり、骨融解を起こしていることが認められる。
図12は、ヒト臍帯血CD34幹細胞を移植した後のNGOマウス(サンプルNo.:NOG N87−4)に、EBウイルスを感染させた又は非感染のモデルマウスの滑膜の状態を示す図(HE染色)である。図(a)が、EBウイルス非感染モデルマウスで、図(b)が、EBウイルス感染モデルマウスである。EBウイルス感染モデルマウスにのみ、滑膜炎が生じていることが認められる。
図13は、EBウイルス(EBV)感染ヒト免疫化NOGマウス関節リウマチ(RA)モデルの作製手順及び症状(関節炎)確認手順の概要をまとめた図である。EBV infectedは、EBウイルスを感染させた各NOGマウス(NOG 70−13、NOG N79−1及びNOG N85−4など)に関する概要を示している。controlは、EBウイルス非感染モデル(NOG N69−1,NOG N69−3,NOG N69−4,NOG N87−1)、正常ヒト末梢単核球を移植したモデル(KS−PBMC)、及びヒト末梢CD4を移植したが生着はしていない(ヒト化していない)モデル(KS−CD4)に関する概要を示している。
図14は、EBウイルス感染による本発明のモデルマウス(NOGマウスのサンプルNo.:NOG N79−1)に関する、EBV encoded small nuclear RNA(EBER)−1のin situハイブリダイゼーションの結果を示す図である。図(a)は図(b)の拡大図である。滑膜炎の部位は僅かな陽性のみで、骨髄に多くの陽性細胞が認められた。骨髄にEBウイルスの強い感染の場があり、この反応により骨髄と滑膜にある連絡路を通して多分炎症性サイトカインの影響を受け、滑膜の増殖、CD4陽性T細胞の誘導が、骨髄の浮腫やパンヌスの形成、破骨細胞の分化誘導を起こしている(促進している)。これにより、関節リウマチ様のビラン性関節炎を、EBウイルスが直接誘導することが判明したと考えられる。Controlは、EBウイルス陽性リンパ節の陽性コントロールである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2009−242321号明細書(2009年10月21日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物
本発明に係るヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物は、前述した通り、ヒト免疫化非ヒト哺乳動物にEBウイルスを感染させることにより得られ、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症することを特徴とするものである。
また本発明は、ヒト免疫化非ヒト哺乳動物にEBウイルスを感染させることを特徴とする、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物の作製方法(作出方法)を提供するものでもある。
1−1.ヒト免疫化非ヒト哺乳動物
本発明に用いるヒト免疫化非ヒト哺乳動物は、免疫不全非ヒト哺乳動物にヒト造血幹細胞を移植して得られるものであることが好ましい。
免疫不全非ヒト哺乳動物としては、限定はされず、従来公知の免疫不全動物を使用することができる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウスである場合、ヌードマウス、SCIDマウス、NOD/Shi−scidマウス、NOD/ShiJic−scidマウス、NOD/LtSz−scidマウス、NOD/LtSz−scid,β 2m nullマウス(β2m(null)NOD/SCIDマウス)、NOGマウス(NK活性を消失させ且つ樹状細胞機能を減退させた免疫不全マウス;NOD/Shi−scid,IL−2Rγnullマウス;財団法人実験動物中央研究所より入手可能;Yajima et al,J.Infect.Dis.,2008,Sep 1,vol.198(5),p.673−82を参照)、SCIDマウス(CB17/Icr−Prkdcscid/CrlCrljマウス;日本チャールス・リバー社より入手可能)、ICRヌードマウス(SPF/VAF Crlj:CD1−Foxn1nu;日本チャールス・リバー社より入手可能)等が挙げられるが、中でもNOGマウスが好ましい。
ヒト造血幹細胞としては、限定はされないが、例えば、臍帯血から分離された造血幹細胞(具体的には、CD34陽性造血幹細胞など)や、市販のCD34陽性造血幹細胞等を用いることができる。
免疫不全非ヒト哺乳動物へのヒト造血幹細胞の移植は、常法により行えばよく、特に限定はされない。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス等である場合、尾静脈への投与や、静脈からの輸注、骨髄内への注入等により、ヒト造血幹細胞の移植を行うことができる。
本発明に用いる非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ及びウマ等のヒトを除く哺乳類動物が挙げられ、中でも、マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物が好ましく、より好ましくはマウスである。なお、非ヒト哺乳動物としてマウスを用いる場合、その年齢は限定されないが、例えば5〜20週齢のものが好ましく、より好ましくは6〜15週齢、さらに好ましくは8〜12週齢である。
1−2.EBウイルスの感染
本発明においては、上記のヒト免疫化非ヒト哺乳動物に対してEBウイルスの直接感染を行う。当該感染の方法は、常法により行えばよく、特に限定はされない。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス等である場合、尾静脈への投与や、静脈からの輸注、骨髄内への注入等により、所定量のEBウイルスの直接感染を行うことができる。
EBウイルスの感染量(投与量)は、限定はされないが、例えば、4〜1000TD50であることが好ましく、低濃度投与でも関節炎を起こし得る。
1−3.ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の発症
上記EBウイルスの感染を行った非ヒト哺乳動物において、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎が発症しているか否かの確認は、例えば、手指、手、肘、足指、足、膝等の各種関節部位について、X線やMRIでの観察で手足の骨侵食があることが認められればビラン性関節炎を発症していると評価することができる。また、MRIで骨髄浮腫が認められる場合も、同様にビラン性関節炎を発症していると評価することができる。本発明のモデル非ヒト哺乳動物においては、組織でヒト関節リウマチのビラン性関節炎で認めるパンヌスと骨のビラン、骨髄浮腫を再現することができるため、臨床で行われている画像診断技術(放射性同位元素によるものや超音波検査など)でも検出することが可能である。
本発明のモデル非ヒト哺乳動物は、前述の通り、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症する非ヒト哺乳動物であり、好ましくは骨融解を起こす破骨細胞の分化誘導が促進された非ヒト哺乳動物である。本発明のモデル非ヒト哺乳動物は、より具体的には、例えば、以下の(i)〜(vi)等の症状及び病態等が認められるものである。各症状及び病態の確認方法、検査方法等は、従来公知の方法を用いて行うことができる。
(i)滑膜組織の増殖
(ii)RA滑膜を使用したEBER−1 in situハイブリダイゼーションにおいて陽性
(iii)滑膜組織へのT細胞の浸潤
(iv)パンヌスの形成
(v)骨浸食(ビラン)
(vi)関節局所の骨髄へのT細胞浸潤(骨ビラン)
2.ビラン性関節炎の治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法
前述の通り、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物は、ヒトの関節リウマチの病態とよく一致するため、当該疾患の治療薬及び予防薬の開発において極めて有用なものである。そこで本発明は、前記本発明のモデル非ヒト哺乳動物を用いたヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法、並びに当該方法により得られるヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬を提供する。
本発明において、ヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬をスクリーニングする方法は、以下の(a)及び(b)の工程を含む。なお、本発明のスクリーニング方法は、必要に応じ、他の何らかの工程を含んでいてもよい。
(a)候補物質を本発明のヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物に投与する工程(投与工程)
(b)上記投与後の非ヒト哺乳動物についてヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の病態を評価する工程(評価工程)
「ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の病態を評価する」とは、候補物質を投与した後における本発明のモデル非ヒト哺乳動物のヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎に関する病態を解析することを意味し、同一の本発明のモデル非ヒト哺乳動物について候補物質の投与前後におけるヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎に関する病態を比較検討すること、又は、候補物質を投与した本発明のモデル非ヒト哺乳動物(被験動物)と投与しない本発明のモデル非ヒト哺乳動物(対照動物)との比較検討を行うことの、いずれをも意味するものである。なお、上述した候補物質の投与前後について比較検討する場合に関しては、以下の説明については、投与前の非ヒト哺乳動物を対照動物とみなし、投与後の非ヒト哺乳動物を被験動物とみなして適用されるものとする。
以下に、上記各工程について説明する。
(a)投与工程
被験動物及び対照動物は、通常、同種の非ヒト動物を用いる。また、被験動物及び対照動物は、同性及び同齢の動物を用いることが好ましく、同腹のものを用いることがより好ましい。さらに、被験動物及び対照動物は、飼育条件は同様であることが好ましい。
被験動物に投与する候補物質としては、限定はされないが、天然又は人為的に合成された各種ペプチド、タンパク質(酵素や抗体を含む)、核酸(ポリヌクレオチド(DNA,RNA)、オリゴヌクレオチド(siRNA等)、ペプチド核酸(PNA)など)、低分子又は高分子有機化合物等を例示することができる。
候補物質の投与は、経口的又は非経口的に行うことができ、限定はされず、いずれの場合も公知の投与方法及び投与条件等を採用することができる。投与量についても、被験動物の種類及び状態、並びに候補物質の種類等を考慮して、適宜設定可能である。
(b)評価工程
ヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬をスクリーニングする場合は、候補物質が投与された被験動物、及び候補物質が投与されていない対照動物について、各種評価項目、例えばCRP(C反応性タンパク質)、踵浮腫、組織学的観察、X線像、MRI、放射線同位元素等を比較評価することが好ましい。これら評価項目の評価(測定方法等)は、公知の手段及び手順により行うことができる。
(i)炎症反応評価
被験動物及び対照動物の四肢に関して両動物を比較評価する。
被験動物と対照動物との間で、血清中CRPのレベルに有意差が無かったときは、被験動物に投与した候補物質は、目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬であると評価できる。一方、被験動物の方が有意に高いレベルを保持したときは、候補物質は目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬ではないと評価できる。
(ii)関節炎の評価
被験動物及び対照動物の関節炎の発症の有無とその推移に関して両動物を比較評価する。
被験動物と対照動物との間で、足容積測定装置(室町機械株式会社製、Volume Meter MK−550)を用いてラット両側後肢の足部容積(paw volume)を、採血日ごとに測定し評価する。
なお、容積の増加率は、感作日の平均volumeに対する両側後肢の平均増加量を算出する。有意差が無かったときは、被験動物に投与した候補物質は、目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬であると評価できる。一方、被験動物の方が有意に高いレベルを保持したときは、候補物質は目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬ではないと評価できる。
(iii)組織学的観察の評価
被験動物及び対照動物の病理組織に関して両動物を比較評価する。
被験動物と対照動物との間で、滑膜、並びに骨及び軟骨組織の炎症に伴う変化のレベルに有意差が無かったときは、被験動物に投与した候補物質は、目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬であると評価できる。一方、被験動物の方が有意に高いレベルを保持したときは、候補物質は目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬ではないと評価できる。
(iv)MRIやX線による骨ビランや骨髄浮腫の評価
被験動物及び対照動物の四肢に関して両動物を比較評価する。
被験動物と対照動物との間で、MRIやX線により観察される骨ビランや骨髄浮腫のレベルに有意差が無かったときは、被験動物に投与した候補物質は、目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬であると評価できる。一方、被験動物の方が有意に高いレベルを保持したときは、候補物質は目的のヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬ではないと評価できる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.ヒト免疫化マウスの作製
免疫不全マウスとしてのNOGマウス(8〜12週齢)を、財団法人実験動物中央研究所より購入した。
NOGマウスは、NK活性を消失させ且つ樹状細胞機能を減退させた免疫不全マウスである(本実施例に用いたマウスについては図13(具体的には、図中の「EBV infected」欄及び「control」欄のマウス)参照)。これらのNOGマウスに対し、東京臍帯血バンクより供給された臍帯血から分離したCD34陽性造血幹細胞を(5×10cells/mouse)、尾静脈から投与してヒト免疫系を移植した(図13参照)。
移植後、3ヶ月経過後、ヒトCD45、CD3、CD19陽性細胞数をそれぞれ測定し、ヒト免疫化を確認した。具体的には、ヒトCD34陽性造血幹細胞を移植(〜5×10cells/mouse)3ヶ月経過後、末梢血中のヒト細胞の生着を確認(hCD19,hCD3,hCD45,mCD45)してヒト免疫化されていることを評価した。
2.Epstein−Barr(EB)ウイルスの感染
上記1.項で作製した複数のヒト免疫化マウスに対し、感染実験を行う直前に、ヒト細胞の組成をチェックした(hCD19,hCD3,hCD45,mCD45)(hCD3,hCD4,hCD8,hCD45)。それぞれ、10、10、10及び10TD50のEBウイルスを尾静脈から投与して、当該ウイルスを直接感染させた(図13参照)。
感染後、1ヶ月〜3ヶ月の間、各マウスの末梢血を定期的に採取し、EBウイルスDNA量を測定して、感染成立の指標とした。具体的には、末梢血リンパ球の組成、末梢血中EBVコピー数測定、体重を測定して、EBウイルスの感染を評価した。
なお、上記ヒト免疫化マウスのうちNOG N85−4については、EBウイルスの接種(10TD50)後、抗CD3抗体でT細胞を殺す実験を行った。具体的には、ウイルス接種の21日後から、抗CD3抗体(Orthoclone OKT3 antibody(Janssen Pharmaceutical))を、2mg/mouse/dayの投与量で、実験終了まで毎日静注投与した。OKT3抗体を投与した典型的なマウスでは、投与後2週間で、ヒトCD45+細胞の0.1%がCD4+CD8−であり、0.8%がCD4−CD8+であった。コントロールマウスでは、ヒトCD45+細胞の15.0%がCD4+CD8−であり、12.5%がCD4−CD8+であった。すなわち、このOKT3抗体は、特定の標的細胞の数を顕著に減少させる効果を有するものであった。抗体投与又は非投与のマウスの生存曲線は、log−rankテストにより統計的に比較した。
3.ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の発症確認
上記2.項でのEBウイルス感染後、1、2、6及び12ヶ月経過後のマウスを、それぞれCOにより安楽死させ、手指、手、肘、足指、足及び膝の各関節を摘出した。
これらの各関節について、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色による病理学的検討を行い、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎所見の有無を検討した。その結果、パンヌスを伴う骨ビランと滑膜組織の増殖、骨髄への炎症細胞浸潤を認めた(図3〜5及び9〜12参照、対照として図1及び2参照)。
また、免疫化学染色(CD3,CD4,CD8,CD20,CD16,CD68)により、関節周辺組織に存在するリンパ球の性状を解析し(図6〜8参照)、EBER in situハイブリダイゼーションにより、EBウイルスの検出を行った(図14参照)。その結果、滑膜組織へのT細胞(主にCD4陽性細胞)の浸潤や、関節局所骨髄へのT細胞(主にCD4陽性細胞)の浸潤を認めた。パンヌスの関節骨の浸食されている部位に多核細胞の誘導が起こっており、つまり破骨細胞の分化誘導が促進されていた。なお、当該EBウイルスのin situハイブリダイゼーションは、EBV encoded small nuclear RNA(EBER)を検出する標準的な手順及び条件等の下で行った。
以上のことから、本実施例のモデルマウスは、EBウイルス感染のみでヒト関節リウマチに起こるビラン性関節炎の基本的病態を全て備えており、これまで考えられていた自己免疫反応による炎症が主因でなく、ウイルス感染のみでヒト関節リウマチにおけるビラン性関節炎を引き起こすことに成功したものであることが確認された。
本発明によれば、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物を提供することができる。また、当該モデル非ヒト哺乳動物を用いた、ヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法を提供することもできる。
本発明のモデル非ヒト哺乳動物は、EBウイルスの直接感染により得られる非ヒト哺乳動物としては従来見出されていなかった上記ビラン性関節炎の発症モデル動物である点で、極めて有用なものである。つまり、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症するモデルマウスが、自己免疫現象ではなく、ウイルス感染により初めて得られることが見出されたことが、極めて重要な点である。
また、本発明のモデル非ヒト哺乳動物は、従来公知のヒト関節リウマチモデル動物に比べて、簡易かつ安価に作製することができ、しかもヒト関節リウマチの治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法等の実験に使用し易いという点で、極めて経済性及び実用性にも優れたものである。詳しくは、本発明のモデル非ヒト哺乳動物は、炎症の発症及び進展が緩やかであるため、ヒトにおける症状に近く、病態を解明し及び薬効を見るのに適しており、具体的には、関節軟骨の深い部分まで炎症が進行するため、関節の滑膜表面がビラン状になり、ヒト関節リウマチ様関節炎に非常に近い病態を示すため、極めて実用性に優れたものである。

Claims (6)

  1. ヒト免疫化非ヒト哺乳動物にEpstein-Barrウイルスを感染させることにより得られ、自己免疫現象によらずに、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎を発症することを特徴とする、ヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎モデル非ヒト哺乳動物。
  2. 破骨細胞の分化誘導が促進されたものである、請求項1記載の非ヒト哺乳動物。
  3. ヒト免疫化非ヒト哺乳動物が、免疫不全非ヒト哺乳動物にヒト造血幹細胞を移植して得られるものである、請求項1又は2記載の非ヒト哺乳動物。
  4. 非ヒト哺乳動物が齧歯類動物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
  5. 齧歯類動物がマウスである、請求項4記載の非ヒト哺乳動物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に候補物質を投与する工程、及び当該投与後の非ヒト哺乳動物におけるヒト関節リウマチ様ビラン性関節炎の病態を評価する工程を含む、ヒト関節リウマチ又はビラン性関節炎の治療及び/又は予防薬のスクリーニング方法。
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