JP5844528B2 - 血中インスリン濃度上昇抑制剤 - Google Patents
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Description
インスリンの分泌は、主にグルコースにより促進される。食事等により体内に糖が取込まれ血糖値(血中グルコース濃度)が上昇すると、上昇した血糖値を下げるためにインスリンが分泌されて血中インスリン濃度が上昇する。このようにインスリンの分泌は、血糖値を一定の値に保ち、糖尿病を防ぐために非常に重要であるといえる。
近年、日本人の食生活は欧米化し、従来の糖質中心の食事から、脂質の占める割合の高い食事へと変化している。このような食生活の変化に伴う生活習慣病やメタボリック症候群の増加も懸念されている。そのため、高脂肪食による健康への悪影響を予防改善することは、今後重要になってくると考えられる。
しかしながら、血中インスリン濃度の上昇を抑制することについては、積極的な取り組みがなされていないのが現状であり、ポリグルタミン酸の特定の塩に関する血中インスリン濃度上昇抑制作用はこれまで報告されていない。
すなわち本発明は、医薬又は食品用途として有用な血中インスリン濃度上昇抑制剤を提供することを課題とする。具体的には、本発明は、食後のインスリン濃度上昇を抑えることで、肥満や糖尿病の発症リスクの低下・予防・改善・緩和・処置のための医薬又は非医薬用途である食品用途として有用な血中インスリン濃度上昇抑制剤を提供することを課題とする。
本発明の血中GIP濃度上昇抑制剤は、ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する。ポリグルタミン酸は、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基とα位のアミノ基がペプチド結合したもので、その構造式は(-NH-CH(COOH)-CH2-CH2-CO-)nで表されるが、本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式におけるカルボキシル基の水素原子の50%以上がカリウムに置換されたものである。本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、前記構造式においてカルボキシル基の水素原子の60%がカリウムに置換されたものであることが好ましく、さらに上記カルボキシル基の水素原子の70%以上、さらに80%以上、さらに90%以上、さらに95%以上、殊更99%以上がカリウムに置換されたものであることが好ましいが、実質的にすべてのカルボキシル基がカリウムに置換されたものであることが特に好ましい。また、前記構造式において末端に位置することになるカルボキシル基も、カリウムで置換されたものであることが好ましい。
ポリグルタミン酸のカリウム塩は、ポリグルタミン酸やそのカリウム塩以外の塩に比べて血中のインスリン濃度の上昇を顕著に抑制する作用を有する。従って、当該ポリグルタミン酸のカリウム塩は、血中のインスリン濃度上昇抑制剤として使用することができ、また、当該インスリン濃度上昇抑制剤を製造するために使用することができる。ポリグルタミン酸のカリウム塩が食後の血中インスリン濃度上昇を抑制する作用があることは今まで知られていなかった。また、ポリグルタミン酸のカリウム塩に肥満の予防・改善効果があることも知られていない。本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩は、後述の実施例で示すように、血中インスリンの濃度上昇を効率よく抑制する効果を有する。
また、本発明における「血中インスリン濃度上昇抑制作用」は、すい臓からのインスリン分泌を抑制することで血中インスリン濃度上昇を抑制するインスリン分泌抑制作用、及び血中インスリン濃度を低下させることにより血中インスリン濃度上昇を抑制するインスリン低下作用のいずれをも含む概念である。
上記糖質とは、一般的な食事中に含まれる糖質成分であり、インスリン分泌を促すものであれば特に制限はなく、具体的には、米飯、澱粉、小麦粉、砂糖、果糖、ぶどう糖、グリコーゲンなどが挙げられる。
また、上記糖質を脂質と共に摂取すると、糖質を単独で摂取した場合に比べて血中インスリン濃度の上昇が促進されることが知られている。本発明の血中インスリン濃度上昇抑制剤は、このような脂質と糖質とを共摂取したときに引き起こされる血中インスリン濃度の急激な上昇をも効果的に抑制することができる。したがって、本発明の血中インスリン濃度上昇抑制剤は、例えば、1回の食事で5g/60kg体重以上の脂質と10g/60kg体重以上の糖質とを摂取した場合であっても、血中インスリン濃度の上昇を正常な上昇レベルに抑える(近づける)ことができる。
本発明に用いられるポリグルタミン酸のカリウム塩の分子量は、重量平均分子量が約500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、3,000以上であることがさらに好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。
また、使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量の上限は約5,000,000であるのが好ましいが、製造面、及び本発明の血中インスリン濃度上昇抑制剤を経口用液体製剤としたときの喉ごし、ぬるつき、嚥下のしやすさなどの観点から、その粘度が比較的低い方が好ましく、使用されるポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量は1,000,000以下であるのがより好ましく、500,000以下であるのがさらに好ましい。
また、ポリグルタミン酸のカリウム塩は、その重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内において、同じような重量平均分子量を有するポリグルタミン酸及びそのカリウム塩以外の金属塩に比べて際立って高い血中インスリン濃度上昇抑制効果を示し、重量平均分子量が1,000〜800,000の範囲内、さらに2,000〜400,000の範囲内、特に3000〜200,000の範囲内、殊更4,000〜150,000の範囲内において、顕著に際立った血中インスリン濃度上昇抑制効果を示しうる。
重量平均分子量の測定は、例えば、ゲルろ過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより行うことができる。
上記各食品や製剤中の有効投与(摂取)量は、ポリグルタミン酸のカリウム塩として、1日当たり0.01g/kg体重〜1.0g/kg体重とするのが好ましく、0.003g/kg体重〜0.5g/kg体重とするのがより好ましく、0.01g/kg体重〜0.2g/kg体重とするのが更に好ましい。また、本発明の血中インスリン濃度上昇抑制剤は、食前・食中・食後に用いると効果的であり、特に食前又は食中に用いることが好ましく、食前1時間から食中に用いることがより好ましい。
投与又は摂取対象者としては、それを必要としている者であれば特に制限されないが、空腹時血糖値が100mg/dL以上、あるいは、空腹時血中トリグリセリド値が100mg/dL以上の者を投与又は摂取対象者とすることが好ましい。
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量法及び重量平均分子量測定法−1:
ポリグルタミン酸のカリウム塩の定量及び重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G4000PWXL及びTSKGelG6000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速1.0mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。また、濃度は分子量880kのポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製)を標準品として用いて検量線を作成することで算出した。また、重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めた分子量の異なる複数のポリグルタミン酸(和光純薬工業社製(商品名:162−21411、162−21401)、SIGMA−ALDRICH社製(商品名:P−4886、P−4761)、明治フードマテリア社製(分子量880k))を標準品として用いて測定した。
分子量が10k前後となる低分子量ポリグルタミン酸のカリウム塩の重量平均分子量測定は、D−6000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてゲルろ過法にて実施した。分析条件は、分析カラムにTSKGel G3000PWXLゲルろ過カラム(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液に0.1M硫酸ナトリウムを使用し、流速0.8mL/分、カラム温度50℃とし、UV検出波長を210nmとした。重量平均分子量は、プルラン(商品名:Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)を用いて予め重量平均分子量を求めたポリグルタミン酸(明治フードマテリア社製、分子量9k)、ポリーヒドロキシプロリン(SIGMA−ALDRICH社製、分子量4k)を標準品として用い測定した。
ポリグルタミン酸塩の金属分析は、D−7000(日立ハイテクノロジーズ社製)HPLCシステムを用いてイオンクロマト法にて実施した。分析条件は、ガードカラムにShodex IC YK−G、分析カラムにShodex IC YK−421(いずれも商品名、昭和電工社製)を用い、溶離液を1.5mMクエン酸水溶液とし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃で電気伝導度検出器を用いて検出を行なった。標準試料として関東化学社製のナトリウム標準液(1000ppm)及びカリウム標準液(1000ppm)を用い、これらの標準品について10〜100mg/Lの範囲で検量線を作成し、これらの検量線に基づきポリグルタミン酸塩の金属分析を実施した。
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、10%(w/w)水溶液を500mL作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH2以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、27.4gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、12,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
重量平均分子量350,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、5%(w/w)水溶液を1L作製し、氷冷下にて塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いて、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を800mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、36.2gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、240,000と算出された。また、この試料はポリグルタミン酸のカルボキシル基量に相当する量のカリウムが検出され、ナトリウムは検出限界以下であったため、中和前のポリグルタミン酸の実質的にすべてのカルボキシル基の水素原子がカリウムに置換されたものであることが確認された。
重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を初発材料として、20%(w/w)水溶液を125mL作製し、塩酸を用いてpH1以下に調整した。続いて、このPGA溶液を95℃にて12時間恒温し、生成した酸沈殿物を8,000rpm、5分の遠心分離(商品名:himacCR21GIII、日立工機社製)にて回収し、得られた沈殿物を同量の蒸留水を用いて洗浄し、再度遠心分離に供した。この洗浄操作を2回繰り返し行なった後、得られた沈殿物を300mLの蒸留水に懸濁し、これをpH7以上となるように水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。この上記酸処理および水酸化カリウムによる中和処理を再度実施し、得られた中和試料に対して2.5倍量のエタノールを添加し、氷冷下にて一晩放置した。このエタノール添加により生成した沈殿物を14,000rpm、5分の遠心分離(同上)にて回収し、回収試料を減圧乾燥に供して、16.5gの固形物を得た。この試料の重量平均分子量は前述の分析方法により、6,000と算出された。
重量平均分子量12,000及び240,000(それぞれ調製例1及び2で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量9,000及び350,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群10匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
重量平均分子量6,000(調製例3で調製)のポリグルタミン酸のカリウム塩と、重量平均分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩(調製例1で調製)及び重量平均分子量9,000のポリグルタミン酸のナトリウム塩(明治フードマテリア社製)を用いて下記のように経口投与サンプルを調製した。
また、8週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jcl:日本クレア社製)を各群7匹ずつ用いて下記のように経口投与試験を行った。
グルコース(関東化学社製)とトリオレイン(Glyceryl trioleate:Sigma社製)をレシチン(卵製、和光純薬社製)とアルブミン(ウシ血清由来、Sigma社製)を用いて乳化し、乳液を調製した。この乳液に、ポリグルタミン酸塩試料を添加し、最終濃度がポリグルタミン酸塩試料5(w/w)%、グルコース5(w/w)%、トリオレイン5(w/w)%、乳化剤(レシチン0.2(w/w)%、アルブミン1.0(w/w)%)となるよう、経口投与サンプルを調製した。なお、コントロールサンプルとして、ポリグルタミン酸塩の代わりに水を添加したサンプルを調製した。
一晩絶食させたマウスをエ−テル麻酔下、眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(VITREX社製)を用い、初期採血を行った。その後、経口投与サンプルを経口ゾンデ針にて経口投与し、10分、30分、1時間、2時間後にエーテル麻酔下、眼窩静脈より採血を行った。マウスに対する経口投与量を下記表1に示す。
サンプル経口投与後の2時間後までの血中インスリン濃度を測定した結果、血中インスリンの濃度が最大となるのは投与後10分後であることがわかった。そこで、血中インスリン濃度の最大値(投与10分後)と初期値(初期採血時)の差(Δ値)を最大インスリン濃度上昇と定義し、コントロール群を100としたときの値を下記表2(試験例1の結果)及び表3(試験例2の結果)に示した。
特に重量平均分子量が12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩は、最大血中インスリン濃度上昇を50%以上も(コントロール比で約45%まで)抑制するという顕著に優れた効果を有していた。
また更に、低分子量である重量平均分子量6,000のポリグルタミン酸のカリウム塩が、重量平均分子量12,000のポリグルタミン酸のカリウム塩と同等のインスリン濃度上昇抑制効果を有することも明らかとなった。
Claims (2)
- ポリグルタミン酸のカリウム塩を有効成分として含有する血中インスリン濃度上昇抑制剤。
- ポリグルタミン酸のカリウム塩からなる血中インスリン濃度上昇抑制剤。
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