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JP5850374B2 - アルツハイマー病の診断補助方法、及び診断システム - Google Patents
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JP5850374B2 - アルツハイマー病の診断補助方法、及び診断システム - Google Patents

アルツハイマー病の診断補助方法、及び診断システム Download PDF

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Description

本発明は、検体を利用してアルツハイマー病(AD)を診断する際の診断方法に関する。より詳細には、AD患者やADの可能性がある健常者から採取した検体を利用した体外での診断を実現する診断方法に関する。
アルツハイマー病は、初老期から老年期に起こる進行性の認知症を特徴とする疾患であり、現在、国内の患者数は100万人以上と言われている。今後、人口の高齢化に伴いその数は確実に増加すると予想される。
アルツハイマー病の臨床症状は、記憶障害、高次脳記憶障害(失語、失行、失認、構成失行)等である。その症状は他の認知症疾患でも共通して見られることが多く、臨床症状だけでアルツハイマー病を確定診断することは極めて困難である。
アルツハイマー病はこれまで根本治療法がなかったが、1999年にワクチン療法がモデルマウスで成功して以来、根本治療法開発への期待が高まっている(非特許文献1を参照)。根本治療法を有効に活用する為には、早期にアルツハイマー病を診断する必要がある。
一方、アルツハイマー病の特徴的な病理組織所見として老人斑と神経原線維変化がある。前者の主構成成分はβシート構造をとったアミロイドベータペプチド(以下、Aβという)の凝集体であり、後者のそれは過剰にリン酸化されたタウ蛋白である。現在、アルツハイマー病においてはAβが脳内に蓄積することが最初に起こる重大病理変化であるというアミロイド仮説が有力である(非特許文献2を参照)。さらに、臨床症状が発症するかなり前から脳内でAβが蓄積すると共に、リン酸化されたタウ蛋白が増加する等の病理的組織変化が始まっていることが知られている。したがって、脳内のAβまたはタウ蛋白をマーカーとして検出することがアルツハイマー病の早期診断方法の1つとなる。
こうした考えをもとに、老人斑に結合する化合物を放射性物質やMR信号を出す物質で標識した化合物に改変して体内に投与し、脳内の老人斑を画像化するアミロイドイメージング法の開発が進められている。
このような検査は脳内の老人斑を直接可視化することを目的としているので、投与した化合物の生体への毒性が強いか弱いかは特に問題とならない。
しかしながら一般臨床検査項目を採血によって同時測定することによって、例えば血液中の甲状腺ホルモンの測定などで認知機能障害の臨床指標とする場合もある。その場合には、前述した化合物の投与は測定者が被爆する可能性があり、好ましくないものとなる。
そこで、静脈から採血した血液中から脳内のAβの蓄積量を間接的に検出する方法や、患者の背骨を直接穿刺して脳脊髄液を取り出し、髄液中に含まれるタウ蛋白などを検出しアルツハイマー病の診断を行なう方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特表平10−509797号公報
Schenk D、Seubert P et al.,Nature 400:173−177,1999. Hardy JA, Selkose DF, Science 297:353−356,2002.
従来例における課題は、侵襲性が高い穿刺針を用いた採取による感染の危険があるということであった。すなわち、採取する物質が髄液や血液であるので、体内へ毒性のある物質を投与することなく危険が少ないと予想されたが、所詮体内を循環する生体液を採取しようとするものであるので、針による侵襲で感染の危険が高いものになっていた。
そこで本発明は、侵襲性を限りなく低くすることで感染の危険を低下させることができるアルツハイマー病の診断方法を提供することを目的とする。
本発明のアルツハイマー病の診断方法は、鼻腔から採取した鼻腔内検体を前処理する前処理工程と、前記前処理工程で前処理された鼻腔内検体中のタウ蛋白および/またはアミロイドベータペプチド(以下、Aβとする)を検出する検出工程と、前記検出工程で得られた前記タウ蛋白および/または前記Aβの値を、予め定めた値と比較する比較工程と、前記比較工程で比較された結果を表示する表示工程と、からなる。
本発明のアルツハイマー病の診断方法によれば、鼻腔内検体を用いるため侵襲性を限りなく低くでき、感染の危険を低下させることができる。
(a)本実施例1に係るADおよびnon ADの鼻腔内Aβ濃度を示す図。(b)本実施例1に係るADおよびnon ADの鼻腔内Aβ濃度値 (a)本実施例1に係るADおよびnon ADの鼻腔内タウ蛋白濃度を示す図。(b)本実施例に係るADおよびnon ADの鼻腔内タウ蛋白濃度値 本実施例1に係る各被験者の鼻腔内Aβ濃度と鼻腔内タウ蛋白濃度をプロットした図 本実施例1に係るADおよびnon ADで得られた鼻腔内Aβおよびタウ蛋白濃度を用いて得られたaの演算値を示す図 本実施例1に係るADおよびnon ADで得られた鼻腔内Aβおよびタウ蛋白濃度を用いて得られたaの演算値に基づいてアルツハイマー病のレベルを6段階に分けた各レベルの人数とROCに必要な計算値の関係を示す図 本実施例1に係るADおよびnon ADで得られた鼻腔内Aβおよびタウ蛋白濃度を用いて得られたaの演算値から得られたROC曲線図 本実施例2に係るADおよびnon ADの鼻腔内Aβ濃度を示す図。
従来、鼻粘膜組織におけるAβの局在は知られていたが、極めて濃度が低いので鼻腔内検体から検出できる可能性は無いと思われていた。また、タウ蛋白も、ADの主要なバイオマーカとして知られているが、鼻粘膜組織では抗原抗体反応を利用した免疫組織学的検査以外では確認されておらず、ましてや鼻腔内検体から検出することを考える研究者はいなかった。
我々は、Aβ42の凝集性を分解する新しいアプローチを考え、従来、無謀と思われてきた、鼻腔内検体におけるAβ42とタウ蛋白の定量検出に成功した。これにより侵襲性を限りなく低くすることで感染の危険を低下させることができることを見出した。
本発明の実施形態におけるアルツハイマー病の診断方法は、鼻腔から採取した鼻腔内検体を前処理する前処理工程と、前記前処理工程で前処理された鼻腔内検体中のタウ蛋白および/またはアミロイドベータペプチド(以下、Aβとする)を検出する検出工程と、前記検出工程で得られた前記タウ蛋白および/または前記Aβの値を、予め定めた値と比較する比較工程と、前記比較工程で比較された結果を表示する表示工程と、からなる。
さらに、前処理工程は、採取器具に付着した前記鼻腔内検体を抽出液中に溶出する抽出工程と、溶出された前記鼻腔内検体を含む抽出液を分画するろ過工程と、ろ過した溶液を濃縮する濃縮工程を含むことができる。前記ろ過工程では、分画できるフィルターを用いることができる。当該フィルターとしては、100kDa以上のタンパク質を排除し、ろ液には100kDa以下の分子量のタンパク質のみを通過させるフィルターを好ましく使用することができる。濃縮工程は、後の検出工程によっては、ろ過した溶液を、中和等によって、検出に最適な条件の溶液に調整する最適化工程をさらに含んでもよい。
本発明では、Aβを検出するにあたって、抽出工程においてギ酸を含む抽出液を用いた。それは次のような理由による。すなわち、Aβが凝集や吸着されている可能性のある生体組織(例えば脳組織や粘膜等)を含んだ液体は、可溶性Aβオリゴマー、または不溶性Aβポリマー等の凝集Aβを多く含んでいる。このため、例えば和光純薬株式会社より製造販売されているAβモノマーを確実に定量測定できる測定キットを用いて直接ELISA測定を行うと、正確なAβ量を測定することができなかった。
そこで、本発明者らは、標準物質から作製した凝集Aβを用い、Aβモノマーに分解する手段として、ギ酸を溶液へ添加する方法を試みた。
ギ酸は、一般的に、動物やヒトの組織に含まれるタンパク質、さらに組織中で凝集や吸着されているタンパク質を可溶化させ、組織から分離するために用いられている。しかし、本発明者らは、生体組織を含まない液体、即ち、既に液体中に分散している可溶性Aβオリゴマーに対してギ酸を作用させると可溶性Aβオリゴマーが解きほぐされ、Aβモノマーとなることを見出した。可溶性AβオリゴマーがAβモノマーとなるメカニズムについては不明であるが、おそらく、液体中では、可溶性Aβオリゴマーの一部は、可逆的にAβモノマーに極一部乖離しており、その中で、ギ酸がAβモノマーの安定化に寄与しているものと推測される。
この実施例では、抽出工程においてAβを分解する添加剤としてギ酸を用いたが、当該添加剤は、タンパク質を変性させる手段として使用している一般的な変性剤や可溶化剤のようなグアニジンや尿素などであってもよい。
次に検出工程について説明する。検出工程は、測定対象物質を抗原として、抗原抗体反応を利用した免疫測定を含む。当該免疫測定はELISA法であることが望ましい。これ以外に、測定対象物質であるタンパク質を直接的または間接的に検出できる方法であってもよい。このような例としては、MS(Mass Spectrometry)や、MS/MSまたは液体クロマトグラフィーなどが好適である。
比較工程では、直接的または間接的にタウ蛋白またはAβの量を算出した後、当該量を予め定めた量と比較すればよい。例えば、吸光、蛍光、発光または電気化学的な検出などで得られた値を用いて目的のタウ蛋白またはAβの標準濃度曲線から得られる検量線を作成し、これを予め定めた値とし、この検量線から逆回帰した値と、検出工程に基づき算出されたタウ蛋白またはAβの値を比較する工程を比較工程としてもよい。ここで、比較するタウ蛋白の値およびAβの値は、両者の比率を同程度にするために、タウ蛋白の量および/またはAβの量の対数を、タウ蛋白の値およびAβの値としてもよい。
表示工程は、数値、図および絵などを表示することを含む。当該工程は、算出された値と予め定めた値との乖離度や、算出された値が予め定めた値よりも増加したか減少したのかを判断するにあたって、人の理解を支援できる工程であることが好ましい。
検出工程の後、算出されたタウ蛋白の値の2乗と、算出されたAβの値の2乗との和を演算する演算工程を行ってもよい。すなわち、この和のみを演算工程の出力(結果)としてもよいが、この和に他のパラメータを使った演算を施してもよいし、これらの値に平方根や乗数を演算したものを演算工程の出力としてもよい。これら演算工程の出力を比較工程での比較対象とすればよい。
なお、上述における各工程の全体的な実施態様としては、単一の診断システムの中に、鼻腔から採取した鼻腔内検体中のタウ蛋白およびAβを検出する検出手段、前記検出手段で得られた前記タウ蛋白および前記Aβの値を、それぞれ予め定めた値と比較する比較手段、前記比較手段で比較された結果を表示する表示手段が含まれており、前処理が行われた鼻腔内検体に対して、診断システム内の各手段により、前述した各工程が実行されて、診断を実現する態様が考えられる。また、前記診断システムは、前記検出手段で得られた前記タウ蛋白の値の2乗と前記Aβの値の2乗との和の平方を演算する演算手段をさらに有していてもよく、これにより得られた演算値を、前記比較工程における前記タウ蛋白および前記Aβの値として使用する。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
NINCDS−ADRDA Work Groupのアルツハイマー病の臨床診断基準に基づきProbable AD(以下、ADという)患者を判定した。
臨床診断基準によれば、Probable AD患者の分類では、認知症が臨床的診察、知能テスト(ミニメンタルステートなど)、神経心理学的テストの三つで確認される。その分類には、認知機能のうち二つ以上が障害されている患者、記銘と他の認知機能が進行性に悪化している患者、意識障害がない患者、および発症年齢が40〜90歳のあいだで、65歳以上の患者、認知症の原因となる全身疾患やアルツハイマー病以外の脳疾患がない患者がある。
また、AD患者であると判断する所見としては、言語・運動行為・認知機能の障害(失語・失行・失認)の進行性悪化や日常生活動作の障害と行動パターンの変化がある。この他、類似疾患の家族歴がある(とくにアルツハイマー病と病理診断されている)場合もある。
さらに検査所見では、髄液が正常で脳波が正常あるいは非特異的変化(徐波増加など)、CT(MRI)の経過追跡で脳萎縮が確認されている場合はAD患者であることが支持される。
(実施例1)
本実施例では、AD被験者は64歳から92歳の12名で平均83.2歳であった。非AD被験者は29歳から65歳の9名で平均41.3歳であった。これらのうちAβとタウ蛋白の両方を測定した被験者については、AD被験者は64歳から92歳の11名で平均83.7歳、非AD被験者は36歳から64歳の4名で平均40.8歳であった。
次にAβの測定条件について述べる。本実施例では綿棒を用いて鼻粘膜組織を擦過し、鼻粘膜組織が付着した綿球を、超純水270μLを予め添加したマイクロチューブに投入した。そして綿球の先から3.0cmの位置で切断し、攪拌して綿棒に付着した鼻粘膜組織検体を溶出させた。
ここで綿棒は、侵襲性が低く、狭く細い範囲を擦過できることから、鼻腔内の検体を採取するのに適している。同様の目的を達成できるものであれば、綿棒に代えて、採取を目的としたスコップや容器などの採取器具を使用してもよい。例えば、鼻腔内に挿入でき侵襲性が綿棒と同等であるか鼻腔内を麻痺させた後に採取できる採取器具などである。また、定量の鼻孔内検体を鼻孔内から採取可能とする定量採取器具を使用することもできる。本実施例では、市販されているプラ軸綿棒(医療補助用綿棒HUBY−COTIX EM3−50S((株)山洋製))を使用した。
タンパク質の溶解性はタンパク質を含む溶液のpHに応じて大きく異なるが、超純水は化学的にもpHに依存しないため、タウ蛋白を溶出することを目的とする時に使用する抽出液は超純水であることが望ましい。これは、一般的にタンパク質は疎水部分と親水部分を含むアミノ酸の集合体であり、ほとんど全てのタンパク質は電気的に偏りを持ち、溶液中では不安定に存在していることによる。超純水としては、吸光度(210〜400nm)が0.01以下、全有機炭素(TOC)が4ppb以下のものが好ましい。
次に、綿棒を引き上げて綿球を超純水から浮かした状態にし、蓋をすることでマイクロチューブに固定し、14000gで遠心することで綿球を脱水した。その後、マイクロチューブから綿棒を取り出し、マイクロチューブ内の溶液を27Gニードル装着のシリンジで30回吸込および吐出を繰り返し懸濁した。懸濁後の溶液のうち40μLをDNA、電解質、および総タンパクの測定に使用した。残りの溶液のうち200μLを試験管に移し、抽出液として100%ギ酸を500μL添加、攪拌し、70℃に保たれた恒温層で1時間静置した。1時間後に恒温層から試験管を取り出し、溶液をフィルター(NANOSEP 100K OMEGA(PALL):100kDa以上のタンパク質を排除し、100kDa以下の分子量のタンパク質のみを通過させるフィルター)で分画ろ過した。ろ液を試験管に移し、溶液量が20μLになるまで遠心エバポレーターで減圧濃縮した。濃縮した溶液を攪拌した後、1mol/L Tris(pH未調整)を480μL加え、500μL溶液に調製した。尚、各溶液のpHを測定し中和の成否を記録用紙へ記録し、pH7.0〜8.6程度の範囲であることを確認した。これら溶液をAβの測定用試料とする。
Aβの測定は、Aβを測定するELISAの測定キットを用いて実施した(和光純薬社製、Human/Rat βAmyloid42 ELISA Kit wako、High−Sensitive;商品番号292−64501)。測定に先立って、検量線を作製するための溶液を、Aβ42のスタンダード溶液を用いて、0.05、0.1、0.2、0.25、1、2、2.5、5、10、または20pMに調製した。調製後は、検量線を作製するための溶液と測定用試料1mLをそれぞれ、測定キットのマイクロタイタープレートに100μL添加した。
その後、測定キットの使用説明に従い、測定を実施した。測定後は、検量線を用いて、各測定用試料に含まれるAβ42の濃度(Aβの値)を算出した。
以上の測定結果を、図1に示す。図1によると、各測定用試料は、Aβ42が0.39〜2.99pMの値を示した。以上のように、通常では測定出来なかった鼻粘膜組織中に含まれるAβ量を測定することができた。さらに、AD被験者のAβ量と非AD被験者のAβ量のあいだには有意差が存在したことから、鼻粘膜組織中に含まれるAβ量はアルツハイマー病の診断に有用な情報であることが示された。
次にタウ蛋白の測定条件について述べる。本実施例ではAβ測定と同様の綿棒を用いて鼻粘膜組織を擦過し、鼻粘膜組織が付着した綿球を、超純水150μLを予め添加したマイクロチューブに投入した。そして綿球の先から3.0cmの位置で切断し、攪拌して綿棒に付着した鼻粘膜組織検体を溶出させた。
そして、綿棒を引き上げ、綿球を超純水から浮かした状態でマイクロチューブに固定した。遠心機にマイクロチューブ入れ、1分間常圧遠心して綿球を脱水した後、マイクロチューブから綿棒を取り出した。得られた溶液をタウ蛋白の測定用試料とする。
タウ蛋白の測定は、タウ蛋白を測定するELISAの測定キットを用いて実施した(invitrogen社製、Tau (Total) Human ELISA Kit;商品番号KHB0041)。測定に先立って、検量線を作製するための溶液を、タウ蛋白のスタンダード溶液を用いて、15.6、31.2、62.5、125、250、500、1000、または2000pg/mLに調製した。調製後は、検量線を作製するための溶液と測定用試料1mLをそれぞれ、測定キットのマイクロタイタープレートに100μL添加した。
その後、測定キットの使用説明に従い、測定を実施した。測定後は、検量線を用いて、各測定用試料に含まれるタウ蛋白の濃度(タウ蛋白の値)を算出した。
以上の測定結果を、図2に示す。これによると、各測定用試料は、タウ蛋白が16.4〜923.8pMの値を示した。以上のように、通常では検出できることすら考えなかった鼻粘膜組織中に含まれるタウ蛋白量を初めて検出することに成功した。さらに、AD被験者のタウ蛋白量と非AD被験者のタウ蛋白量のあいだには有意差が存在したことから、鼻粘膜組織中に含まれるタウ蛋白量はアルツハイマー病の診断に有用な情報であることが示された。
上記測定で得られたタウ蛋白濃度を横軸、Aβ濃度を軸として各被験者のデータをプロットしたものを図3に示す。このグラフから明らかなように、(Aβ濃度)の2乗と(log10(タウ蛋白濃度))の2乗の和の平方根a、すなわち原点からの距離は、被験者の個別の値として示すことが出来る演算値である。
さらに、図4において、この原点からの距離を示す平方根aに関して、Aβ濃度とタウ蛋白濃度の両方を測定した各被験者、すなわちAD被験者11名、非AD被験者4名の演算値を具体的に示す。
次に、図4で得られたaの演算値に基づいて、アルツハイマー病のレベルを6段階に分けた各レベルの人数を図5に示す。より詳細には、図4で示した演算値を、6段階(0〜2、2〜4、4〜6、6〜8、8〜10、10以上)のレベルに分類し、AD被験者、非AD被験者のそれぞれにおいて、各レベルに該当する人数を図5の上段の表において示す。そして、図5の中段に、「10以上」のレベルから順に、累積人数を示す。つまり、演算値が「10以上」の人数はAD被験者が3名、非AD被験者が0名、「8以上」の人数はAD被験者が8名、非AD被験者が0名、「6以上」の人数はAD被験者が11名、非AD被験者が1名、「4以上」の人数はAD被験者が11名、非AD被験者が3名、「2以上」及び「0以上」の人数はAD被験者が11名、非AD被験者が4名である。そして、図5の下段に、中段の累積人数から算出された、tpf値(true positive fraction)、及び、fpf値(false positive fraction)を示す。このtpf値とは、真陽性率であり、陽性(AD)と判断された被験者のうち、検査が正しく陽性と判断した被験者の割合を示す検査性能指標(値は0〜1)のことである。今回のtpf値の結果は、演算値が「10以上」の被験者を陽性とした場合には0.27(=3/11)、「8以上」の被験者を陽性とした場合には0.73(=8/11)、「6以上」「4以上」「2以上」及び「0以上」の被験者を陽性とした場合には1.00である。またfpf値とは、偽陽性率であり、陰性(nonAD)と判断された被験者のうち、検査が誤って陽性と判断したものの割合を示す検査性能指標(値は0〜1)のことである。今回のfpf値の結果は、演算値が「10以上」及び「8以上」を陽性とした場合には0.00、「6以上」を陽性とした場合には0.25、「4以上」を陽性とした場合には0.75、「2以上」及び「0以上」を陽性とした場合には1.00である。
さらに図6において、演算値が「10以上」「8以上」「6以上」「4以上」「2以上」「0以上」の被験者をそれぞれ陽性であると判断した6種類の場合において、fpf値及びtpf値を、それぞれ横軸と縦軸の値として示す。さらにそれらの6点を曲線で結ぶ。この曲線は、一般に特異度を示すROC曲線と呼ばれる。このROC曲線において、fpf値が0でありtpf値が1である点から曲線までの距離が短い場合、つまり、ROC曲線以下の面積が1に近い場合、その測定精度が高いことが知られている。反対に、この距離が長い場合、つまり、ROC曲線以下の面積が1/2に近い場合(ROC曲線が図6の点線で示されるような直線に近い場合)、その測定精度が低いことが知られている。図6に示したROC曲線から、本実施例における測定結果は、極めてその精度が高いことが明らかである。
(実施例2)
次に、本実施例では、AD被験者5名(平均85.6歳)、高齢の非AD被験者5名(平均75.6歳)、若年の非AD被験者15名(平均33歳)を被験者として、さらに詳細に調査した結果について、図7を用いて説明する。
なお、他の測定の諸条件については、実施例1と重複するため説明を省略する。
図7に示される通り、若年の非AD被験者の結果は、他の被験者の結果に比べると低濃度の範囲内に集中している。ここで重要なことは、比較的近い年齢の高齢者であるAD被験者と非AD被験者とを比較しても、比較的高濃度の被験者がAD被験者に存在するため、有意差が存在することである。すなわち、鼻腔内Aβ濃度を測定することが健常者とAD羅患者との判別に有用であると考えられる。
これらの結果から従来不可能と考えられていた鼻腔内検体中のAβ42とタウ蛋白を検出し、Aβ42とタウ蛋白との関係から考案した指標を用いることで、健常者とAD罹患者との判別が出来ることが判明した。これにより、侵襲性を限りなく低くすることで感染の危険を低下させたアルツハイマー病の診断に有用な情報を提供し得る。
また、鋭意研究結果として我々が新たに発見した鼻腔内タウ蛋白の濃度を用いて、アルツハイマー病に関する発症危険度などとして指標化することにより、脳脊髄液を採取することに比べて、非常に侵襲リスクの少ない診断方法を提供することができる。さらに、鼻腔は脳に近いことにより、鼻腔内のAβ濃度、タウ蛋白濃度は脳内の各濃度を正確かつ迅速に反映し、診断方法としての有効性も向上する。
本発明は、アルツハイマー病の診断方法として有益である。なお、本願において、診断とは、医師が行なう専門的な医療行為を含むものではなく、本実施の形態で説明したような種々の器具を用いた前処理、検出、比較、表示等の各工程を実施することで、医師が行う医療行為を支援することである。

Claims (7)

  1. 鼻腔から採取した鼻腔内検体を抽出液中に溶出する抽出工程を含む前処理工程と、
    前記前処理工程で前処理された前記抽出液から、免疫学的測定法により、鼻腔内検体中のタウ蛋白およびアミロイドベータペプチド(以下、Aβとする)の濃度を検出する検出工程と、
    前記検出工程で得られた前記タウ蛋白の値の2乗と前記Aβの値の2乗との和の平方根を演算する演算工程と、
    前記演算工程で得られた演算値を、予め定めた閾値と比較する比較工程と、
    前記比較工程で比較された結果を表示する表示工程と、からなる、アルツハイマー病の診断補助方法
  2. 前記前処理工程は、前記鼻腔内検体を含む前記抽出液を分画するろ過工程を含む、請求項に記載のアルツハイマー病の診断補助方法
  3. 前記ろ過工程において、分画できるフィルターを用いる、請求項に記載のアルツハイマー病の診断補助方法
  4. 前記鼻腔内検体は綿棒によって鼻腔内から採取されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルツハイマー病の診断補助方法
  5. 前記鼻腔内検体は定量採取器具によって鼻腔内から採取されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルツハイマー病の診断補助方法
  6. 前記抽出液は、前記鼻腔内検体中のタウ蛋白を検出するときは超純水であり、前記鼻腔内検体中のAβを検出するときはギ酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルツハイマー病の診断補助方法
  7. 免疫学的測定法により、鼻腔から採取した鼻腔内検体中のタウ蛋白およびAβの濃度を検出する検出手段と、
    前記検出手段で得られた前記タウ蛋白の値の2乗と前記Aβの値の2乗との和の平方根を演算する演算手段と、
    前記演算手段で得られた演算値を、予め定めた閾値と比較する比較手段と、
    前記比較手段で比較された結果を表示する表示手段と、からなる、アルツハイマー病の診断システム。
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