JP5898531B2 - 三フッ化ホウ素錯体の回収・リサイクル方法 - Google Patents
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Description
三フッ化ホウ素またはその錯体の主な工業的用途としては、例えば、エチレンとベンゼンから気相アルキル化によってエチルベンゼンを製造する際の触媒としての用途がある。また、合成洗剤や抗酸化剤に使われるアルキルベンゼン類は、オレフィン類と芳香族類との液相アルキル化反応により製造されているが、この製造の際の触媒にも三フッ化ホウ素またはその錯体が使用されている。
さらに、接着剤や印刷インク等の分野で広く使用されている石油樹脂やクロマンインデン樹脂を製造するときの重合触媒としても三フッ化ホウ素またはその錯体が使われおり、この触媒を用いた場合、製品の劣化や装置の腐食が少ないという効果がある。以上のように、三フッ化ホウ素またはその錯体は、化学工業界の製造触媒として種々の用途に供されている触媒である。
しかしながら、水洗工程や中和工程においては、高濃度の三フッ化ホウ素の水和物や三フッ化ホウ素の中和物である、フッ化物やホウ素を含む廃水が排出されるため、近年、環境汚染の問題を考慮して、フッ化物やホウ素を含む廃水の除去対策を講ずることが望まれている。特に、ホウ素を簡便に除去することは、現在の排水処理技術では困難であり、ホウ素を完全に除去するにはコストがかかってしまうため、ホウ素を低コストで除去することが望まれている。さらに、三フッ化ホウ素は高価であるため、除去した三フッ化ホウ素を回収して再使用することが望まれている。
同様に、フッ化リチウム、フッ化ストロンチウムおよびフッ化バリウムなどのフッ化物を用いてテトラフルオロホウ酸塩を生成させ、100〜600℃の温度範囲で加熱することによって、三フッ化ホウ素を回収する方法がある(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
しかしながら、三フッ化ホウ素を触媒として用いる反応では、室温以下の低温で反応させることが必要な場合が多く、反応終了後、テトラフルオロホウ酸塩を合成するのに有利な100℃程度の高温にすると、副反応が起こって、目的とする反応生成物の収量の低下や品質低下を引き起こす。室温以下の条件では、ほとんど錯体を形成しない。また、高温での加熱分解反応は、省エネの観点から好ましくない。
また、反応混合物流体に粘性がある場合、テトラフルオロホウ酸カルシウムなどのホウ酸塩との分離は困難であり、時間と労力を必要とするという問題がある。
三フッ化ホウ素またはその錯体の回収方法として、三フッ化ホウ素が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加することにより、非導電性流体から三フッ化ホウ素またはその錯体を沈降分離させ、次いで分離した錯体を加温することにより、三フッ化ホウ素またはその錯体を回収する方法も知られている(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、この回収方法においては、反応終了後、外部電源から数百Vの電圧を30分間以上継続して印加する必要があり、そのままでは反応がさらに進行して副反応が起こってしまうため、反応停止処理が必要となる。また、反応混合物に溶解した三フッ化ホウ素またはその錯体が、常に分離するとは限らないという問題もある。電気設備も必要となり、この回収方法で三フッ化ホウ素またはその錯体を完全に分離させることは困難であった。
さらに、三フッ化ホウ素またはその錯体をヒドロフルオロカーボン化合物等用いる三フッ化ホウ素またはその錯体を回収・リサイクル方法が開示されている(例えば、特許文献7,8)。そかし、この方法では回収率は良好であるが、ハイドロフルオロカーボンは高価な為、使用に制限がかかる。また、ハイドロフルオロカーボンが一部有機物に溶解し、その除去工程が必要になる等の問題がある。
すなわち、本発明は、
1.三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応において、飽和炭化水素系溶剤を用いて、反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
2.前記飽和炭化水素系溶剤が、炭素数5〜16の直鎖状又は分岐鎖を有する飽和炭化水素である上記1に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
3.前記飽和炭化水素系溶剤が、いずれも直鎖状もしくは分岐を有するペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びデカン;並びにシクロヘキサン、石油エーテル、ナフサ、及び軽質ナフサから選ばれる1種又は2種以上の混合物である上記1又は2に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
4.前記飽和炭化水素系溶剤を、反応開始前に反応容器に反応原料と三フッ化ホウ素錯体とともに加え、反応終了後に反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
5.前記飽和炭化水素系溶剤を、反応終了後に、反応容器に加えて、反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
6.反応混合物から三フッ化ホウ素錯体を含む層を分離した後、蒸留によって該分離層における三フッ化ホウ素錯体の純度を向上させる上記1〜5のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
7.三フッ化ホウ素錯体の三フッ化ホウ素と錯体を形成する錯化剤が極性化合物である上記1〜6のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
8.錯化剤が、アルコール、エーテル、フェノール、アミン、ケトン、アルデヒド、エステル、酸無水物および酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものである上記7に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
9.三フッ化ホウ素錯体が、三フッ化ホウ素・エーテル錯体である上記1〜8のいずれかに記載の触媒の回収方法、
10.三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応が、オレフィンの二量化反応、オリゴマー化反応、縮合反応または重合反応である上記1〜9のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法、
11.上記1〜10のいずれかに記載の方法により回収した三フッ化ホウ素錯体を反応の触媒に再使用することを特徴とする触媒のリサイクル方法、
を提供するものである。
なお、前記オレフィンの二量化、オリゴマー化反応には、異なる2種のオレフィンの反応や2種以上のオレフィンのオリゴマー化反応を含まれる。
上記反応の対象(原料)となるオレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、イソブテン、ジイソブチレン、1−ブテンのダイマー、1−ヘキセンのダイマー、1−オクテンの、1−ドデセンのダイマー等のα―オレフィン化合物やシクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプテン類、ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプテン類、カンフェン、β―ピネン、リモネン、β―カリオフィレン、ロンギホレン、バレンセン、グアイエン等の環状オレフィン化合物、スチレン、α―メチルスチレン等の芳香族を持つオレフィン化合物等が挙げられる。
このような化合物は、反応混合物に含まれる反応生成物および原料を溶解しやすく、かつ反応混合物に含まれる三フッ化ホウ素錯体を溶解し難いため、その後の分離操作が容易であり、また、臭気を有しなく、安全性も良好な化合物である。
本発明の飽和炭化水素系溶剤は、通常炭素数5〜16の飽和炭化水素を用いる。炭素数4以下の飽和炭化水素系溶剤は、通常常温常圧で気体であり、一方、炭素数17以上の飽和炭化水素は、通常常温常圧で固体であり、いずれも取り扱いが困難になる恐れがある。
本発明においては、上記の飽和炭化水素系溶剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもちいてもよい
これらの中でも、入手が容易である点で、炭素数5〜9の直鎖状飽和炭化水素が好ましく、さらに安全性を加味して、炭素数6〜7の飽和炭化水素系溶剤が好ましく、特にヘプタンが好ましい。
(A法)三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応において、反応開始前に、反応容器に反応原料と未使用の三フッ化ホウ素錯体とともに前記抽出溶媒を加え、反応終了後に反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離する方法。
(B法)三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応において、反応終了後に、反応容器に前記抽出溶媒を加えて、反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離する方法。
つまり、飽和炭化水素系溶剤の反応装置への注入時については、反応開始前でも、反応終了後でもよい。飽和炭化水素系溶剤は、アルキル化反応、オレフィンの縮合、オリゴマー化等の副反応を引き起こさないからである。
上記A法又はB法によって、反応混合物は、反応生成物と原料を含む上層と、三フッ化ホウ素錯体を含む下層とに分離される。この分離された下層の分離液を、触媒として再使用することができる。さらに、蒸留によって、下層の分離液に含まれる三フッ化ホウ素錯体の純度を高めてもよい。その蒸留は、公知の方法で行えばよい。
また、抽出溶媒を反応終了後に加える場合は、その全量を一度に加えてもよいが、分割して、例えば、2、3回に分けて加えて分離する方が、分離効率が良い。
分離温度については、通常40℃以下で行うが、室温以下が好ましい。また分離するための静置時間としては、特に制限はないが、30分以上が好ましく、通常30〜120分程度行う。
この分離機構については、飽和炭化水素系溶剤が反応混合物を溶解して、三フッ化ホウ素錯体との間に界面を形成することによると考えられる。
実施例1
(1)三フッ化ホウ素錯体の分離
合成潤滑油の原料として製造された2−メチレン−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタンと3−メチレン−2−メチルビシクロ[2.2.1]とを合計量で55質量%、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン30質量%およびその構造異性体を含有する混合物を原料として用意し、以下のように二量化反応を行った。
内容積100リットルの反応器に、ヘキサン6Kg、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体600gおよび上記原料30Kgを入れ、メカニカルスターラーを用いて攪拌しながら、0℃で12時間二量化反応を行った。反応終了後、40分間静置し、二層に分離させたのち、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体を含む黒色の分離液(下層)258gを得た。三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体を含む分離液の回収率は43%であった。
(2)回収した触媒の活性評価
回収した触媒を評価する為に、上記原料200g、回収した三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体4.0gを0℃で反応した。未使用の三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体と同程度の反応速度で反応が進行し、回収した三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体が新品と同程度の活性であることを確認した。
実施例1で回収した三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体を84〜90℃、20kPaの条件で減圧蒸留した。回収率72%で無色透明の三フッ化ホウ素・ジエチルエーテルを得た。得られた三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体は未使用の触媒と同程度の活性であった。
ヘキサン6Kgを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に二量化反応を行った。反応終了後40分間静置したが、二層分離せずに、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体は回収できなかった。
比較例2
実施例1のヘキサン6Kgのかわりに、トルエン6Kgを使用した。反応終了後40分間静置したが、二層分離せずに、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体は回収できなかった。
Claims (11)
- 三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応において、飽和炭化水素系溶剤を反応原料又は反応混合物と三フッ化ホウ素錯体に接触させ、二量化反応、オリゴマー化反応、アルキル化反応、異性化反応、分解反応、脱水反応のいずれかの反応終了後、静置時間を30分以上とすることにより、反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記飽和炭化水素系溶剤が、炭素数5〜16の直鎖状又は分岐鎖を有する飽和炭化水素である請求項1に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記飽和炭化水素系溶剤が、いずれも直鎖状もしくは分岐を有するペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びデカン;並びにシクロヘキサン、石油エーテル、ナフサ、及び軽質ナフサから選ばれる1種又は2種以上の混合物である請求項1又は2に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記飽和炭化水素系溶剤を、反応開始前に反応容器に反応原料と三フッ化ホウ素錯体とともに加え、反応終了後に反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記飽和炭化水素系溶剤を、反応終了後に、反応容器に加えて、反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素錯体を分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 反応混合物から三フッ化ホウ素錯体を含む層を分離した後、蒸留によって該分離層における三フッ化ホウ素錯体の純度を向上させる請求項1〜5のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 三フッ化ホウ素錯体の三フッ化ホウ素と錯体を形成する錯化剤が極性化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 錯化剤が、アルコール、エーテル、フェノール、アミン、ケトン、アルデヒド、エステル、酸無水物および酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項7に記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 三フッ化ホウ素錯体が、三フッ化ホウ素・エーテル錯体である請求項1〜8のいずれかに記載の触媒の回収方法。
- 三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応が、オレフィンの二量化反応またはオリゴマー化反応である請求項1〜9のいずれかに記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の方法により回収した三フッ化ホウ素錯体を反応の触媒として再使用することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体のリサイクル方法。
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