JP4347964B2 - 三フッ化ホウ素錯体の回収方法およびそれを利用するオレフィンオリゴマーの製造方法 - Google Patents
三フッ化ホウ素錯体の回収方法およびそれを利用するオレフィンオリゴマーの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三フッ化ホウ素錯体、例えば三フッ化ホウ素錯体触媒の少なくとも一部が分散および/または溶解している流体に、電圧を印加して流体から上記錯体を沈降分離させ、その後錯体をわずかに加熱することにより初期の状態(錯体が触媒であれば初期活性)に回復させる方法、およびそれを利用したオレフィンオリゴマーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
三フッ化ホウ素と錯化剤(配位子ともいう)からなる三フッ化ホウ素錯体触媒は、アルキル化、異性化、重合、分解、脱水等の種々の化学反応における触媒として工業的に広範囲に使用されている。この錯体触媒は、対象とする反応に応じ、三フッ化ホウ素に対して種々の錯化剤を適宜の割合で配位させた状態で使用されている。
【0003】
三フッ化ホウ素錯体触媒を使用した反応の終了後には、錯体触媒を反応混合物から分離除去する必要がある。
先に本出願人らは国際WO98/38225号公報において、電圧を印加することによる三フッ化ホウ素錯体触媒の回収方法とそれを用いるオレフィンオリゴマーの製造方法を提案した。
この技術についてさらに検討を進めたところ、反応条件によっては回収した錯体が流体成分とさらに錯体を形成し、複合錯体とも呼ぶべき錯化合物が生成する場合があることを見出した。このような複合化は、単に流体中に錯体が存在することのみによって生ずるものではなく、触媒反応あるいは電圧印加の際、またはその両方の操作によって起こるものと考えられる。
このように複合化した回収錯体は、元の錯体に流体成分が複合化しているのみであって、元の錯体の組成比に特に変化はない。従って、回収錯体をそのまま廃棄する場合など、流体成分の複合化が他に影響を与えない場合には、回収錯体が上記のような複合錯体であっても特に問題はない。しかしながら、錯体が触媒であって、錯体触媒を回収し、回収錯体を再度触媒として用いる場合などには、流体成分との新規な錯体形成により活性の低下が認められることがある。すなわち、回収した錯体触媒の活性が、回収前のレベルまで回復し難い場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、非導電性流体から、少なくとも一部が分散および/または溶解している三フッ化ホウ素錯体をそのままの状態で回収する方法、例えば錯体が触媒である場合には、触媒の初期活性が維持された状態で回収する方法、およびそれを用いて錯体触媒を回収し再利用することを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加することにより非導電性流体から三フッ化ホウ素錯体を沈降分離させ、次いで分離した錯体を加温することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関するものである。
本発明の第2は、本発明の第1において、分離した錯体の加温温度が100℃以下、好ましくは50℃以下であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第3は、本発明の第1において、直流および/または交流の電圧の電界強度が0.001〜40kV/mm の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第4は、本発明の第1において、直流および/または交流の電圧を印加する際の非導電性流体の温度が、−100℃から+100℃の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第5は、本発明の第1において、三フッ化ホウ素錯体が、錯化剤として極性化合物を用いて生成したものであることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第6は、本発明の第5において、極性化合物が、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、酸無水物および酸類からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第7は、本発明の第1において、錯体を形成する三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比が0.01:1から2:1の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
本発明の第8は、本発明の第1において、非導電性流体が炭化水素であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。
【0006】
本発明の第9は、下記(I)から(IV)の工程からなることを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法に関するものである。
(I)三フッ化ホウ素と錯化剤からなる三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下にオレフィンを液相で重合しオリゴマーを生成させる工程、
(II)重合後、三フッ化ホウ素錯体触媒の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる反応混合物に直流および/または交流の電圧を印加することにより、錯体触媒を沈降分離させてオリゴマーを回収する工程、
(III)反応混合物から沈降分離した錯体触媒を加温することにより触媒活性を向上させる工程、および
(IV)加温した錯体触媒の少なくとも一部を触媒として、オレフィンを液相で重合する工程。
本発明の第10は、本発明の第9における工程(III)において、分離した錯体を加温する加温温度が100℃以下、好ましくは50℃以下であることを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法に関する。
本発明の第11は、本発明の第9において、液相重合における供給原料中のオレフィン濃度が、少なくとも5重量%であることを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法に関する。
本発明の第12は、本発明の第9において、生成するオレフィンオリゴマーの分子量が100〜10万の範囲であることを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法に関する。
【0007】
本発明の方法によれば、三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加して流体から三フッ化ホウ素錯体を沈降分離させ、その後弱い加温を行うという簡単な操作によって、元の錯体をそのままの状態で回収することができ、回収錯体の再使用が可能となる。
三フッ化ホウ素錯体触媒を用いるオレフィンオリゴマーの製造において上記の方法を応用すれば、重合後の重合液に電圧を印加して重合液から三フッ化ホウ素錯体触媒を沈降分離させ、その後弱い加温を行うことにより、配位子の配位数を変えることなく錯体触媒を回収して、そのまま再使用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における三フッ化ホウ素錯体とは、三フッ化ホウ素と各種極性化合物との錯体を意味する。三フッ化ホウ素は、含酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物等の極性化合物と種々の割合で、すなわち種々の配位モル比で容易に錯体を形成する。これらの錯体は、代表的な用途として各種反応における触媒に用いられる。従って、以下、主として触媒としての三フッ化ホウ素錯体について説明する。
【0009】
本発明において錯体触媒を形成する錯化剤は、物理的あるいは化学的な結合力によって三フッ化ホウ素と錯体を形成するものである。このような錯化剤の具体例としては、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、有機酸類あるいは酸無水物等の含酸素化合物や含窒素化合物などの極性化合物が例示される。三フッ化ホウ素は、これらのほか、ベンゼン等の芳香族炭化水素等と錯体を形成することもできる。
【0010】
本発明に好適に用いられる、三フッ化ホウ素錯体触媒を形成する錯化剤のより具体的な例を次に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
すなわち、アルコール類としては芳香族あるいはC1〜C20の脂肪族のアルコールが用いられ、上記C1〜C20の炭素水素基は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐型アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールあるいはベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。また、ジオール類でもよい。
【0011】
エーテル類としては、芳香族あるいはC1〜C20の脂肪族の炭化水素基を有するエーテルが用いられ、上記C1〜C20の炭素水素基は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐型アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的にはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、プロピルブチルエーテル、ジペンチルエーテル、あるいは、フェニルメチルエーテル、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル等が挙げられる。
【0012】
フェノール類としては、1〜3価フェノールが適当であり、具体的には、フェノール、クレゾール等が好ましい。
【0013】
ケトン類としては、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族の炭化水素基を有するケトンが用いられ、上記C1〜C6の炭素水素基は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐型アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、あるいはシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0014】
エステル類としては、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のアルコール成分と、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のカルボン酸またはりん酸成分とによってエステル結合を形成したものが用いられ、上記C1〜C6の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐型アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、ヘキサン酸エチル、安息香酸エチル等およびトリブチルりん酸エステル等のりん酸の完全エステル等が挙げられる。
【0015】
有機酸類としては、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のカルボン酸またはそのハロゲン置換体、りん酸、およびりん酸と芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のアルコール成分との部分エステルが用いられ、上記C1〜C6の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐型アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、しゅう酸、マロン酸、安息香酸、ジエチルりん酸エステル等が挙げられる。
【0016】
以上の錯化剤は、それぞれの錯体系において1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。錯体自体の製造は従来公知の方法に従い製造することができる。例えば、あらかじめ錯体を調製して用いてもよく、また反応系内へ三フッ化ホウ素と1種類以上の錯化剤を所定の割合で、別々にまたは同時に投入し、反応液内において三フッ化ホウ素錯体を形成させて用いる方法を採用することもできる。
【0017】
三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比は、0.01:1から2:1の範囲であることが好ましい。錯化剤に対する三フッ化ホウ素のモル比が0.01未満では触媒活性が低すぎて、目的とするオレフィンの重合が困難である。また、モル比が2を超えると三フッ化ホウ素が錯化剤に比べて過剰になりすぎ、安定な配位を保つことが困難になり、回収触媒における三フッ化ホウ素のモル比を維持することができない。すなわち、回収した触媒を再使用する際に、モル比の調整などの操作が必要になり、工程が複雑になるため好ましくない。
【0018】
錯体触媒の調製に際しては、反応に不活性であり、かつ錯体を溶解しあるいは分散させる溶媒を適宜に用いることが可能である。本発明に用いる錯体は、電圧印加により合一したり凝集を起こすことによって分離回収が容易になるのであるから、錯体の形態としては液状が好ましい。しかしながら、上記のように錯体の調製に溶媒を用いれば、固体錯体であっても液状の錯体と同様になり、本発明の対象とすることができる。
【0019】
本発明においては、電場を印加することにより三フッ化ホウ素錯体の分離回収を行うために、三フッ化ホウ素錯体を含む流体は非導電性であることが必要である。非導電性流体であって、三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散あるいは溶解しているものであれば特に限定されない。具体的には、炭化水素流体、好ましくは脂肪族炭化水素流体が例示される。
【0020】
流体中の成分が錯体と複合化する代表的な例としては、錯体触媒を用いて流体中に含まれる原料の反応を行う触媒反応の際に、上記反応原料またはその一部が錯体と複合化する場合が挙げられる。
従って、三フッ化ホウ素錯体が錯体触媒である場合には、触媒を含む反応混合物が電場印加の対象流体となる。例えば、三フッ化ホウ素錯体触媒により芳香族化合物をオレフィン類でアルキル化する場合には、これらの原料、生成物であるアルキル置換芳香族および三フッ化ホウ素錯体触媒からなる混合物を対象とすることができる。また、スチレンやイソブテン等のオレフィンを重合してオリゴマーを得る反応の場合には、これらの原料、オリゴマーおよび三フッ化ホウ素錯体触媒を含む反応混合物を対象とすることができる。さらに、ナフサクラッカーからのC9芳香族留分、イソブチレンを含むC4留分等を原料として、石油樹脂あるいはポリブテン等を得る場合には、これらの原料、生成した石油樹脂あるいはポリブテン、および三フッ化ホウ素錯体触媒を含む反応混合物が電場印加の対象となる。
上記のような反応の場合に、流体を構成する反応原料中の一成分が触媒反応の際に触媒作用を受けて錯体触媒に複合化するのである。場合によっては、電圧印加の際にその作用を受けて複合化することもある。
【0021】
三フッ化ホウ素錯体は、通常上記非導電性流体中に分散している。すなわち三フッ化ホウ素錯体は非導電性流体には難溶性である。しかしながら、単に分散して白濁状を呈している場合だけでなく、一見して透明な溶解した状態にある場合もある。
【0022】
三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散および/または溶解している非導電性流体に、以下に述べる直流および/または交流電圧を印加して沈降分離させた錯体を、一旦加温して完全に初期性能を回復させることを特徴とする本発明の方法によれば、分散および/または溶解している錯体触媒を、錯化剤に対する三フッ化ホウ素のモル比を変化させることなく反応混合物から分離することができる。
【0023】
本発明の方法において、電圧を印加することにより錯体触媒が沈降分離する理由の詳細は不明であるが、以下のように推察される。すなわち、三フッ化ホウ素錯体触媒において、錯体自体または錯体を含む液滴自体が帯電していることはないが、三フッ化ホウ素と配位子との間に電気的な分極または電気的な偏りが存在し、それによる相互の電気的反発力によって錯体分子は分散していると考えられる。そして、錯体分子に対し電圧が印加されると、電気的な偏りが部分的に解消し、錯体分子相互の電気的反発が消失して、錯体分子間の合一あるいは凝集が発生すると考えられる。その結果、合一または凝集した錯体は比重差によって、錯体を含む非導電性流体に対し下層として沈降分離し、非導電性流体から分離することができるようになる。
【0024】
次に、電圧印加による沈降分離について説明する。
非導電性流体、例えば炭化水素反応混合物に印加する電圧は、直流電圧および交流電圧のいずれでもよい。直流電圧と交流電圧とを同時に印加することもできる。電圧は通常の定電圧発生装置を利用して発生させることができる。直流および/または交流の電圧から発生する電界強度は0.001〜40kV/mm であれば錯体の分離が容易であり、好ましくは0.01〜1kV/mm の範囲である。また電圧には変動があってもよい。ここで、電界強度が0.001kV/mm 未満であると錯体は沈降分離し難い。逆に、電界強度が40kV/mm を超えると、絶縁破壊現象や成分の電気分解等の副反応を生じるため、いずれも好ましくない。
【0025】
また、直流および/または交流電圧が印加される電極間の距離は例えば0.1〜100cm、好ましくは1〜50cmの範囲から適宜に選択することができる。本発明においては、少なくとも一対の電極間において対象流体に対して電場を印加する構成を含む装置であれば、その形状および構造には特に制限がない。例えば電極形状として、平板状、中実棒状、中空円筒状、球状など任意の形態を採用することができる。電極面を多孔質面、あるいは網状面に形成することもできる。すなわち、平行電極のほか、これらを適宜に組み合わせて一対の電極とすることができる。この場合、印加する電圧とともに電極間距離(間隔)を変えることによっても、分離効果を適宜に調整することができ、また、電極の正負を適宜に入れ換えることも可能である。さらに電極を複数対組み合わせてもよい。
対象流体は、三フッ化ホウ素錯体を含む場合でも非導電性流体であるため、電圧を印加しても電流はほとんど流れず、従って消費電力はわずかである。この点においても本発明の利点は多大である。
【0026】
電圧を印加する際の非導電性流体の温度は、−100℃〜+100℃の範囲であれば特に限定されないが、触媒の共存下で処理する場合には、反応温度よりも低い温度領域で行い、触媒の影響により反応混合物の組成が変化することを可能な限り防止することが好ましい。
また、電圧の印加時間も特に限定されない。例えばバッチ式で電圧を印加する場合には、錯体濃度、錯体の配位子の種類等にもよるが、通常1分〜1時間の範囲から適宜に選択することができる。
【0027】
電圧印加の間、非導電性流体は撹拌等を行わずに静置することが好ましい。静置のみによって三フッ化ホウ素錯体を分離することも可能であるが、電場の印加を併用することにより、単に静置のみによる場合よりもはるかに早く、かつ容易に三フッ化ホウ素錯体を分離回収することができる。
上記のように、撹拌等を行わずに静置することが好ましいが、錯体の沈降分離に支障がない程度において非導電性流体を流動させることができる。すなわち、適宜の配管中を流動させ、その間に適宜の形状の電極を設けて電圧を印加し、錯体を連続的に沈降分離する方法を採用することも可能である。
【0028】
電圧印加に際し、対象とする非導電性流体の粘度が著しく高い場合には、錯体触媒の沈降分離が不完全になる。このような観点から、電圧印加の対象とする非導電性流体の粘度は、電圧印加時の温度において10,000cP(センチポイズ)以下であることが好ましい。また流体に不活性な溶媒を加えることにより、系の粘度を上記範囲内に調整して電圧印加に供することができる。
【0029】
電圧印加の対象とする非導電性流体中における錯体濃度は特に限定されないが、通常は0.001重量%以上であることが好ましい。錯体濃度が低すぎると電圧印加の効果が発揮され難い傾向がある。上限値は特に限定されないが、通常は10重量%以下である。
このようにして、流体中に分散あるいは溶解している三フッ化ホウ素錯体を電圧印加により回収することができる。
【0030】
しかしながら、反応条件によっては、このように分散あるいは溶解している三フッ化ホウ素錯体が、流体中の一成分、例えば残存する未反応のオレフィン類と物理的あるいは化学的な非常に弱い結合力によって新たな錯体を形成することがある。すなわち、この錯体の形態は、三フッ化ホウ素、元の錯体を形成している配位子、および流体中の一成分、例えば未反応オレフィンからなる複合錯体である。このように三フッ化ホウ素錯体とともに複合錯体を形成し得る流体中の成分として、具体的には脂肪族、脂環族または芳香族オレフィンが例示され、より具体的には、ブテン−1、ブテン−2等の炭素数3〜30の直鎖脂肪族オレフィンが挙げられる。
【0031】
上述のようにオレフィン類と複合錯体を形成した触媒の再利用を考慮するときには、上記の電圧印加操作による分離回収の後に、複合錯体の分解再生工程が必要となる。
すなわち、触媒作用により形成された複合錯体自体は、上記の電圧印加によって支障なく分離沈降するが、沈降した錯体は、複合化のために触媒としての性能が初期よりも劣ることがある。その理由は、未反応で残存している特定のオレフィン類が、三フッ化ホウ素に対して弱く配位することにより、三フッ化ホウ素のルイス酸活性を低下させることによるものと考えられる。
【0032】
本発明の方法は、このように触媒としての初期性能を失っている複合錯体を加温することにより、錯体触媒としての機能を回復させるものである。その理由は以下のように考えられる。
複合錯体を形成する流体中の成分、例えば特定のオレフィン類は本来、使用する錯体触媒を溶解しない性質を有しているが、触媒反応または電圧印加の際に三フッ化ホウ素に弱く配位して、その結果複合化が起こる。しかしこの配位力は弱いために、加温により上記オレフィンを三フッ化ホウ素から容易に脱離させることが可能であり、しかもそれは非可逆的な変化である。その結果、本発明の効果を達成することができる。
【0033】
ここで、上記複合錯体を加温する温度は、100℃以下、好ましくは50℃以下である。100℃を超えて加温する場合には、錯体自身が分解する可能性がある。加温時間は特に限定されないが、通常は1分〜5時間の範囲から選択する。
【0034】
また、上記加温操作は電圧印加による分離液内で行ってもよいし、あるいは電圧印加により分離した複合錯体を系外に抜き出して行っても差し支えない。また加温方法自体は特に限定されないが、回収錯体を含む流体全体に均一に熱が伝導する方法を採用することが好ましい。
前記電圧の印加は、錯体の合一または凝集を目的とするので、操作温度は比較的低温で行うが、複合錯体の解離のための加温は、電圧印加の操作温度よりも高い温度で行う。なお、加温により複合錯体から流体成分が脱離する変化は非可逆であるため、電圧印加後のいずれかの工程または領域において、電圧印加の操作温度よりも高い温度で操作を行うことにより加温の目的を達成することができる。
【0035】
三フッ化ホウ素錯体を触媒とする反応においては、対象とする反応に応じて選択された錯化剤を適宜の割合で配位して調製した三フッ化ホウ素錯体触媒が用いられる。
三フッ化ホウ素錯体を触媒として使用する具体的な反応例としては、例えば芳香族化合物とオレフィン類に三フッ化ホウ素錯体触媒を作用させてアルキル化を進行させることによりアルキル置換芳香族化合物を得る反応がある。より具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素に、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィンを用いてアルキル化を行う。
上記の反応における反応溶媒としては、反応に不活性なn−ブタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソオクタン等のイソパラフィン等の炭化水素を用いることができるほか、反応原料であるベンゼン、トルエン等自体を用いることもできる。
このアルキル化により、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ブテニルベンゼン等を製造することができる。
【0036】
また、スチレン、ビニルトルエン等の不飽和芳香族炭化水素等またはブテン、イソブテン等のオレフィン類の1種または2種以上を重合させる方法も三フッ化ホウ素錯体触媒を用いる反応として例示される。
この反応の溶媒としては、反応に不活性なn−ブタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソオクタン等のイソパラフィン等の炭化水素を用いることができるほか、反応原料自体を用いることもできる。
この重合反応においては、比較的分子量の低い重合体であるオリゴマーが製造され、例えばポリスチレン、ポリイソブチレン等のオリゴマーを得ることができる。
【0037】
また、反応原料として、ナフサクラッカーから得られるビニルトルエン等の芳香族オレフィンを含むC9芳香族留分、ピペリレン等の脂肪族オレフィンを含むC5留分、またはイソブチレンのほかにブテン−1、トランス−またはシス−ブテン−2等のオレフィンを含むC4留分等を用いれば、芳香族系もしくは脂肪族系石油樹脂あるいはポリブテン等が得られる。
【0038】
上記以外のオレフィンの重合にも、しばしば三フッ化ホウ素錯体触媒が用いられる。これらの重合において、本発明の特徴である三フッ化ホウ素錯体触媒の回収技術を利用することにより、触媒のコストを低減することができ、さらに触媒残さによる環境汚染等を避けることも可能になり、多大の利益が得られる。
【0039】
次に、三フッ化ホウ素錯体触媒を用いるオレフィンの重合によりオレフィンオリゴマーを得る場合に重合後の錯体触媒を回収する例についてさらに説明する。
具体的には、上記回収および再使用の方法は、次の工程(I)〜(IV)からなるものである。すなわち、
(I)三フッ化ホウ素と錯化剤からなる三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下にオレフィンを液相で重合しオリゴマーを生成させる工程、
(II)重合後、三フッ化ホウ素錯体触媒の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる反応混合物に直流および/または交流の電圧を印加することにより、錯体触媒を沈降分離させてオリゴマーを回収する工程、
(III)反応混合物から沈降分離した錯体触媒を加温して、触媒活性を向上させる工程、および
(IV)加温した錯体触媒の少なくとも一部を触媒として、オレフィンを液相で重合する工程。
【0040】
まず、工程(I)において、三フッ化ホウ素と錯化剤からなる三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下にオレフィンを液相で重合する。ここで使用されるオレフィンは、主としてブタジエン、イソブテン、ブテン−1、シス−またはトランス−ブテン−2などである。しかしながら、これらに限定されず、三フッ化ホウ素錯体触媒によりカチオン重合が可能なオレフィンであれば、いずれも使用することができる。例えば上記C4オレフィンのほかエチレン、プロピレン、イソプレン、ペンテン、ヘキセン−1等のC2〜C20の脂肪族オレフィン、スチレン、ビニルトルエン等のC8〜C10の芳香族オレフィン、DCPD等の脂環族オレフィン等も対象とすることが可能である。これらのオレフィンは単独または混合して重合に供することができる。
【0041】
また、重合に際し、供給原料中に存在するオレフィンの濃度は5〜100重量%の範囲であることが好ましい。5重量%未満のオレフィン濃度では、実用上、経済的に不利であり好ましくない。オレフィンのほかに反応に不活性な溶媒、例えばn−ブタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソオクタン等のイソパラフィン等の炭化水素を適宜に用いることもできる。
工業的な原料としては、ピペリレン等の脂肪族オレフィンを含むC5留分、またはイソブテンとともにブテン−1、トランス−またはシス−ブテン−2等のオレフィンを含み、さらにイソブタン、n−ブタン等も含むC4留分等を原料とすることができる。
【0042】
先に述べたように、三フッ化ホウ素と錯体を形成する錯化剤としては、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、有機酸類あるいは酸無水物などを挙げることができる。錯体における三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比は、前記の通り、0.01:1から2:1の範囲とすることができる。
【0043】
上記反応の際には、触媒中の三フッ化ホウ素は、通常、重合可能成分としてのオレフィン1モルに対して0.0001〜0.5モルの割合で使用される。反応自体は従来公知の方法により行うことができ、バッチ式または流通式のいずれの方法も用いることができる。反応温度および反応時間は特に限定されないが、反応温度は−100℃〜+100℃の範囲、反応時間は1分〜4時間の範囲から選択することが好ましい。
【0044】
かくして得られるオレフィンオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、100〜10万の範囲であることが望ましい。分子量が100未満では小さすぎるため、オレフィンオリゴマーとして有用ではない。また、分子量が10万を超えると、分離に必要な希釈溶剤の量が多くなりすぎて経済的に不利である。
また、電圧印加に際して、対象とする反応混合物の粘度が著しく高い場合には錯体触媒の沈降分離が不十分になる可能性がある。このような観点から電圧印加の対象とする反応混合物の粘度は、電圧印加時の温度において10,000cP(センチポイズ)以下であることが好ましい。この範囲に粘度を調整するために電圧印加に供する反応混合物に適宜に不活性な溶媒を加えることができる。
【0045】
上記重合工程において、オレフィンの液相重合により生成したオレフィンオリゴマーおよび未反応成分、ならびにその中に分散または溶解した三フッ化ホウ素錯体触媒からなる反応混合物が得られる。
次に、工程(II)において三フッ化ホウ素錯体触媒の少なくとも一部が分散および/または溶解している反応混合物に直流および/または交流の電圧を印加することにより、錯体触媒を比重差により沈降分離させてオリゴマーを回収する。
【0046】
錯体触媒を含む反応混合物に対し、前記の方法で電圧を印加することにより、錯体触媒が反応混合物の下層として沈降分離する。すなわち、分散または溶解している錯体触媒は電圧の印加により凝集または合一し、比重差で沈降分離する。電界強度、電極間距離などをはじめとする電圧印加の条件は前記の通りである。すなわち、電界強度は0.001〜40kV/mmの範囲とし、温度は−100℃〜+100℃の範囲とすることができる。
また、沈降分離のための時間は、前記の通り特に限定されず、静置の程度によっても異なるが、通常は1分〜1時間の範囲から適宜に選択することができる。
【0047】
次に、工程(III)において、反応混合物から沈降分離させて回収した錯体触媒を加温し、触媒活性を向上させる。すなわち、前述のように、沈降分離した錯体触媒が、残存する未反応の特定オレフィン類との間で複合錯体を形成する場合は、複合錯体自体は上記の電場によって容易に沈降分離するが、沈降した錯体は複合錯体を形成しているために、触媒としての初期性能が回復していない場合がある。
上記特定のオレフィンとしては、ブテン−1、ブテン−2等が挙げられる。これらのオレフィンは、反応原料として前記C4留分等に含まれるが、本発明の方法によれば、このように安価なC4留分も原料とすることができるので有利である。
上記のように、沈降分離した錯体には原料成分がさらに複合化しているので、触媒としての再利用を考慮する際には、上記の電圧印加操作の後に、さらに複合錯体の再活性化のための操作が必要となる。
【0048】
本発明の方法においては、電圧印加により回収した複合錯体に対して、触媒としての初期活性を回復させるために加温操作を行うが、この加温操作はすでに述べた通りの方法で行うことができ、例えば温度は100℃以下、好ましくは50℃以下とすることが好ましい。加温時間は特に限定されないが、通常は1分〜5時間程度の範囲から選択される。
また、この加温操作は、すでに述べたように、電圧印加操作を行った分離液内で行ってもよいし、また電圧印加により沈降分離した複合錯体を系外に抜き出した後、回収した錯体に対して行うこともできる。通常は、電圧印加により沈降分離した錯体を抜き出した後に加温する方法が適当である。また、加温する方法は特に限定されないが、熱が流体全体に均一に伝導する方法を採用することが好ましい。沈降分離した錯体が再度分散しない程度であれば、撹拌することも可能である。
前記の電圧印加は、錯体の合一または凝集を目的とするため、操作温度は比較的低い温度で行うが、複合錯体の解離のための加温は、電圧印加の操作温度よりも高い温度で行う。なお、加温により複合錯体から流体成分が脱離する変化は非可逆であるため、電圧印加後のいずれかの工程または領域において、電圧印加の操作温度よりも高い温度で操作を行うことにより加温の目的を達成することができる。
【0049】
本発明において電圧を印加することにより、非導電性流体の下層に三フッ化ホウ素錯体触媒をそのままの状態で沈降分離させることができ、適宜の抜き出し手段により系から抜き取った後、わずかに加温することにより錯体触媒を分離回収することができる。
加温処理した錯体は、配位モル比が反応前の値から変化していないので、反応前と同等の触媒活性を維持しており、なんら調整を加えることなく、そのまま再度反応に使用することができる。
なお、2回目以降の反応においては、適宜に未使用の三フッ化ホウ素錯体触媒を追加することも可能である。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
〔重合反応物からの錯体触媒の分離〕
重合反応の供給原料としては、イソブテンを含有するC4ラフィネート(エチレンクラッカーから得たC4留分のブタジエン抽出残)を使用した。C4ラフィネートの組成は以下の通りである(重量%)。
【0051】
<三フッ化ホウ素エーテル系錯体触媒の調製>
−10℃以下に保持した所定量の錯化剤に対して、内容温度が−10℃を超えないように冷却しながら、所定の配位モル比に達するまで三フッ化ホウ素(純度99.7%)を吹き込み、錯体触媒を調製した。分解の懸念がある場合は、分解温度以下の温度に保存して反応に供した。
なお、配位モル比は、使用した錯化剤の重量から算出されるモル数と、吹き込んだ三フッ化ホウ素の重量から算出されるモル数との比率として求めた。
【0052】
<重合反応と電圧印加の装置の概要>
窒素ガス導入管、撹拌装置、ガス貯蔵用ボンベ、ガス吹込み管、温度計および低温冷却槽を備えた1リットルの4つ口フラスコを重合用とし、フラスコ内の底部付近に、距離を5mmに保った2枚の平行電極を設置した。さらに、安定した直流あるいは交流電圧を出力することができる外部電源を確保し、その2本の出力と2枚の平行電極とをそれぞれ接続した。反応終了までは外部電源を停止状態にし、反応終了後、電源を入れて電圧を印加した。
【0053】
<実施例1>
窒素気流下で、上記フラスコ内に前記C4ラフィネート200gを仕込み、フラスコ内を撹拌して−25℃に保ちながら、その中へ三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1:1モル付加物)3.49gを投入し、30分間激しく撹拌しながら重合反応を行った。
反応後、−25℃の温度に保持したままのフラスコ内に設けた2枚の平行電極に対して、外部電源より500Vの直流電圧を30分間継続して印加すると、無色透明な上層部液体199.3gと無色透明な下層部液体2.97gとが界面を生じて分離した。その後、反応液を静かに静置槽に移して静置し、その下層から錯体触媒を抜き取った。
静置槽の上層を失活槽に導き、未分離の錯体触媒が中和されるまで希水酸化ナトリウム水溶液で中和し洗浄を行い、その後有機相を分離した。得られた有機相から減圧蒸留により未反応の供給原料と炭素数24以下の軽質分を留去した。残留した生成物からブテンポリマーの収率を算出した。
C4ラフィネート中のイソブテン成分の転化率は、反応前後における原料および反応液のガスクロマトグラフィーによる組成変化から算出した。
【0054】
次に、静置槽から別容器に抜き取った錯体触媒を、40℃に保持した水浴中で30分間加温し、分離した下層(錯体触媒)を別の容器に抜き取った。
そして、前記フラスコ内に再びC4ラフィネート200gを仕込み、次いで、補充分(1回目の反応で損失した量に相当する分)の三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.59gと、上で加温して抜き取った三フッ化ホウ素錯体2.90gとを、上記フラスコ内に投入し、再度重合反応を行った。
反応終了後、1回目と同様にして外部電源より500Vの直流電圧を反応液中に30分間印加し、界面分離を行った。さらに1回目と同様に上層部のみを抜き出し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和後、C4ラフィネートの転化率とブテンポリマーの収率を求めた。
下層部の錯体は1回目と同様に加温した。
上記の操作を3回繰り返して、連続4回の重合反応を行った。
【0055】
第1回目の重合反応後の加温錯体触媒について、13C−NMRにより錯体の配位モル比を確認した。
図1は、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の反応使用前後における13C−NMRスペクトルの測定結果である。横軸の数字は、内標準物質であるテトラメチルシラン(TMS)のピークに対する化学シフトをppmで表した値である。
1.0:1.0のモル比で配位した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体は、
13C−NMRスペクトルにおいて、12.9ppm と69.9ppm に2本のジエチルエーテルの炭素に由来するピークが検出される。
モル比が変化するとともに上記2本のピークはシフトするが、本実施例の反応終了後に採取した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体について13C−NMRスペクトルの測定を行ったところ、未使用の錯体触媒の検出ピークと同じ位置にピークが認められ、反応前と同一のモル比を保持していることがわかった。
【0056】
第1回目および第4回目の反応における上層部の重合結果、および触媒の仕込み量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)を表1に示す。
【表1】
【0057】
<実施例2>
実施例1と同様に重合反応を行い、反応終了後、反応混合物中に500Vの交流電圧を30分間継続して印加したところ、無色透明な上層部液体199.5gと無色透明な下層部液体2.98gとに界面分離した。
実施例1と同様に、上層部からC4ラフィネートの転化率とブテンポリマーの収率を求めた。さらに、実施例1と同様に、電圧印加により下層部に回収された錯体触媒を40℃に加温して触媒を回収し、回収触媒による重合反応を連続4回繰り返した。
【0058】
第1回目および第4回目の反応における上層部の重合結果、および触媒の仕込み量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)を表2に示す。
【表2】
また、下層部液体について、実施例1と同様に13C−NMRによる分析を実施したところ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体であることが判明し、さらに配位モル比も変化していなかった。
【0059】
<比較例1〜2>
比較例1および2は、それぞれ実施例1および2と同様に重合反応および触媒回収を連続的に4回実施したが、電圧印加により下層部に回収された錯体触媒に対して、いずれも加温操作を行わなかった。すなわち、電圧印加の際の温度である−25℃の温度で保持した状態の回収錯体を重合反応に再使用した。
この操作を4回繰り返し、第1回目および第4回目の反応における上層部の重合結果、および触媒の仕込み量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)を表3に示す。
【表3】
【0060】
すなわち、両比較例とも触媒を繰り返して使用するに従い触媒活性は低下することが判る。
これに対し、実施例1および2においては、触媒を繰り返し使用しても触媒活性はほとんど維持されている。
【0061】
【発明の効果】
本発明の方法は、電圧の印加により流体中に極めて微弱な電流を流し、その後に100℃以下で加温するのみで効果が得られるため経済的に有利である。しかも、この操作により、流体、例えば反応混合物の組成変化を起こすことがなく、三フッ化ホウ素錯体の分離以外にはプロセスに影響を与えないので、工業的に有利な方法を提供することができる。
例えば、三フッ化ホウ素錯体触媒を反応に使用する系において、生成する反応混合物に直流および/または交流の電圧を印加し、系から沈降分離した錯体触媒を加温するのみで、工業的に安価かつ容易に錯体触媒を回収することが可能であり、しかも回収された触媒はその初期活性が損なわれず、繰り返し利用することができる。
さらに、電圧印加により錯体が分離回収されるので、反応混合物の中和水洗等の後処理工程にかかる負荷を低減することができ、経済的にも環境対策の上からも多大の効果が得られる。
また本発明の方法によれば、反応原料中にブテン−1、ブテン−2などを含むいわゆるC4留分を原料とすることが可能であり、安価なC4留分を利用し得る点において本発明は経済的にも好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の使用前および回収後における13C−NMRスペクトルの測定結果を示すグラフである。
Claims (12)
- 三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加することにより該非導電性流体から三フッ化ホウ素錯体を沈降分離させ、次いで分離した該錯体を加温することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記分離錯体の加温温度が50℃以下であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記直流および/または交流の電圧の電界強度が0.001〜40kV/mm の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記直流および/または交流の電圧を印加する際の非導電性流体の温度が−100℃から+100℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記三フッ化ホウ素錯体が、錯化剤として極性化合物を用いて生成したものであることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記極性化合物が、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、酸無水物および酸類からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項5記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 錯体を形成する三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比が0.01:1から2:1の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 前記非導電性流体が炭化水素であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
- 下記(I)から(IV)の工程からなることを特徴とするオレフィンオリゴマーの製造方法、
(I)三フッ化ホウ素と錯化剤からなる三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下にオレフィンを液相で重合しオリゴマーを生成させる工程、
(II)重合後、三フッ化ホウ素錯体触媒の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる反応混合物に、直流および/または交流の電圧を印加することにより該錯体触媒を沈降分離させてオリゴマーを回収する工程、
(III)反応混合物から沈降分離した錯体触媒を加温することにより触媒活性を向上させる工程、および
(IV)加温した錯体触媒の少なくとも一部を触媒として、オレフィンを液相で重合する工程。 - 前記工程(III)において、分離した錯体触媒の加温温度が50℃以下であることを特徴とする請求項9記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記液相重合における供給原料中のオレフィン濃度が、少なくとも5重量%であることを特徴とする請求項9記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
- 前記オレフィンオリゴマーの分子量が100〜10万の範囲であることを特徴とする請求項9記載のオレフィンオリゴマーの製造方法。
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