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JP5907186B2 - スカンジウム濃縮物回収方法 - Google Patents
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Description

本発明は、スカンジウム濃縮物回収方法、より詳しくは、スカンジウムとアルミニウムを含有する溶融合金からスカンジウム濃縮物を回収する方法に関する。
アルミニウム及びスカンジウムを含有するアルミニウムスカンジウム合金(以下、「Al−Sc合金」ともいう。)は、軽量で高強度という特性を有し、スポーツ用品のほか、耐衝撃性を要する分野で用いられている。加えて、将来的には、航空機、電気自動車、高速鉄道等の構造材としての利用も期待される。しかしながら、スカンジウムの産出量は極めて少ないため、スカンジウムは非常に高価である。そのため、スカンジウムを工業的に幅広く利用することは容易でない。
近年、ニッケル酸化鉱石に微量随伴するスカンジウムを回収する技術が進み、従来よりも大量のスカンジウムを安定して得ることができつつある。しかしながら、ニッケル酸化鉱石からスカンジウムを回収するには、イオン交換、溶媒抽出、中和沈澱及び焙焼等、多数の工程を要するため、この技術を用いても、スカンジウムが高価であることに変わりはない。
ところで、スカンジウムは、容易に酸化される上に高融点であるため、スカンジウムとアルミニウムとをただ溶融するだけでは、Al−Sc合金を得ることはできない。そこで、一般的に、溶融したアルミニウムに対して、スカンジウム酸化物をカルシウム等の金属で還元しながら添加し、スカンジウム品位が1〜2%程度の母合金を得、これをアルミニウムで希釈して目的とするAl−Sc合金を得る手法がとられる。また、ハロゲン化スカンジウムを原料としてスカンジウム母合金を製造することも提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−171724号公報
特許文献1に記載の処理とは逆方向の処理を行うことで、Al−Sc合金からスカンジウムを分離することも考えられる。しかしながら、ハロゲン化スカンジウムの安定性のほか、有害な塩素を使用することによるリスク、さらに、工業的な設備やコストを考えると、特許文献1に記載の処理とは逆方向の処理を行うことでスカンジウム回収技術を実用化することは容易でない。
一方で、スカンジウムへの期待は高まっていることから、今後、Al−Sc合金の生産量は増加し、いずれはAl−Sc合金を用いた構造体の廃棄や、該構造体の製造工程内で生じる不良品等が増えることも予想される。
これら廃棄品等のスカンジウム品位は、ニッケル酸化鉱石等におけるスカンジウム品位よりは遥かに高く、廃棄品等からスカンジウムを回収して再利用するのは有効な手段であると予想される。しかしながら、廃棄品等のスカンジウム品位が高いとはいっても、Al−Sc合金に含まれる元素はアルミニウムであり、スカンジウムの含有量はアルミニウムの含有量に比べるごく微量であるため、Al−Sc合金をただ溶融するだけでは、スカンジウム濃縮物を有効に回収することはできない。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、Al−Sc合金からスカンジウム濃縮物を有効に回収することである。より詳しく説明すると、構造体等において、Al−Sc合金は、Sc濃度にして0.1〜1%のものが多く用いられる。上述したとおり、Al−Sc母合金のSc濃度は1〜2%である。本発明は、構造体等で使用されていたSc濃度が0.1〜1%程度であるAl−Sc合金のスクラップ品から、Al−Sc母合金としてそのまま利用できる程度のスカンジウム濃縮物を効率よく回収することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム及びスカンジウムを含有する溶融合金を所定の条件で冷却し、その後、一定の温度で一定時間保つことで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、アルミニウム及びスカンジウムを含有する溶融合金を毎分10℃以上100℃以下の冷却速度で維持しながら660℃以上700℃以下になるまで冷却する冷却工程と、前記660℃以上700℃以下の温度を一定時間保つ保持工程と、固体のスカンジウム濃縮物を回収する回収工程とを含む、スカンジウム回収方法である。
(2)また、本発明は、前記回収工程が、前記溶融合金を溶融する溶融炉を深さ方向に対して2以上のブロックに分け、最も深い部分のブロックを回収する工程である、(1)に記載のスカンジウム濃縮物回収方法である。
(3)また、本発明は、前記回収工程で回収された前記スカンジウム濃縮物を溶融炉で溶融した後、前記冷却工程、前記保持工程及び前記回収工程を再び行う、(1)又は(2)に記載のスカンジウム回収方法である。
本発明によると、Al−Sc合金からスカンジウム濃縮物を有効に回収することができる。このスカンジウム濃縮物は、高品位なAl−Sc母合金としてそのまま再利用できる。また、溶媒抽出等を経ることで、ニッケル酸化鉱石から回収する場合に比べて極めて効率的にスカンジウムを回収することもできる。
溶融炉1の一例を示す概略図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
<スカンジウム濃縮物回収方法>
本発明のスカンジウム濃縮物回収方法は、アルミニウムスカンジウム溶融合金(以下、「Al−Sc溶融合金」ともいう。)を毎分10℃以上100℃以下の冷却速度で維持しながら660℃以上700℃以下になるまで冷却する冷却工程と、この所定の温度を一定時間保つ保持工程と、固体のスカンジウム濃縮物を回収する回収工程とを含む。
〔冷却工程〕
Al−Sc合金の溶融温度は、Al−Sc合金を十分に溶融できる温度であれば、特に限定されるものではない。例えば、Al−Sc合金に含まれるSc品位が1%である場合、800℃以上であればAl−Sc合金を十分に溶融できる。
冷却速度は、毎分10℃以上100℃以下である。この冷却速度は、毎分20℃以上50℃以下であることが好ましく、毎分20℃以上30℃以下であることがより好ましい。冷却速度が毎分100℃よりも速いと、Al−Sc合金の全体にスカンジウム濃縮物が微細に分散するため、十分な濃縮効果が得られない点で好ましくない。冷却速度が毎分10℃よりも遅いと、たとえ、溶融炉の内部を、アルゴン、窒素等の不活性ガスに置換して冷却したとしても、溶融炉の内部に残存するわずかな量の酸素と反応し、冷却中におけるスカンジウムの酸化を十分に防止できない可能性があるため、好ましくない。また、温度維持のためのエネルギーコストが増大する点でも好ましくない。
特に、冷却速度を毎分20℃よりも速くすることで、大気雰囲気下であっても、冷却中にスカンジウムが酸化するのを防止し、高品位なスカンジウム濃縮物を得ることができるため、より好ましい。
一例として、Sc品位が1%であるAl−Sc合金スクラップをリサイクル処理する場合について説明する。Al−Sc溶融合金を上記の冷却速度で冷却すると、液相線温度である約730℃において、Al−Sc溶融合金中に金属間化合物AlScが固体で生成する。
引き続き、上記の冷却速度で冷却すると、液相線組成に沿ってAl−Sc溶融合金のSc濃度が低下し、それに見合う量のAlScが生成する。このように徐々に温度を低下させる。Al−Sc溶融合金の共晶温度は約660℃であり、共晶組成のSc濃度は0.2〜0.4%であることから、温度を共晶温度近くまで低下させることで、Al−Sc溶融合金のSc濃度を低濃度化できるとともに、比重差で沈降するスカンジウム濃縮物の濃度を高めることができる。
冷却の目標温度は、660℃以上700℃以下であり、665℃以上690℃以下であることが好ましい。目標温度が700℃よりも高いと、AlScの生成量が少なくなり、スカンジウム濃縮物を好適に回収できないため、好ましくない。目標温度が660℃を割り込むと、温度がアルミニウムの融点よりも低くなるため、Alの固体が生成し、AlScと混ざり得るため、好ましくない。特に、冷却の目標温度が665℃以上であると、Alの固体が生成するのを抑えられる点で好ましい。
〔保持工程〕
保持工程は、上記冷却の目標温度を一定時間保つ工程である。保持時間は、溶融炉の大きさや形状で決まるものであり、一概に決まるものではないが、60分以上であれば足り、90分以上であることが好ましく、120分以上であることがより好ましい。一方、保持時間が長ければよいというわけではない。保持時間を180分以上とったとしても、保持時間が60分である場合に比べて収率が格段に高まるわけではない。
Sc品位が1%であるAl−Sc合金スクラップをリサイクル処理する場合を例にすると、670℃で120分間保持することで、Al−Sc溶融合金のSc濃度を共晶組成である約0.4%にまで低濃度化でき、結果としてAlScを十分に得ることができる。このAlScの含まれるSc濃度は約35%である。
〔回収工程〕
回収工程は、保持工程の後、溶融炉の温度を室温まで冷却し、AlScを含む固体のスカンジウム濃縮物を溶融炉から回収する工程である。
固体AlScは溶体中に沈降するので、傾転等で上部の溶融Alすなわちアルミニウム濃縮物を排出し、底部にある固体すなわちスカンジウム濃縮物を回収することで、Sc濃度の高い母合金原料を得ることができる。実際には固体AlScと溶融Alの完全分離が難しく、混合したスラリーが固化したような状態で回収されるため、Sc濃度にして2〜23%となる。
分離を効率的に行うためには、すべてを凝固させて取り出し、切断してもいいが、エネルギーコストを要するので実用的でなく、溶融状態で分離する方が好ましい。このため工業的な溶融炉には傾転炉を用いることが好ましい。
より沈降するように冷却中に溶融炉を炉底側が外を向くように回転し、遠心力で炉底側にスカンジウムを集めることを行っても良い。
また、冷却後にできる固体ブロックを炉の深さ方向に対して2以上に分割し、最も深い部分のブロックをスカンジウム濃縮物として回収すれば、容易にスカンジウムを回収できる。ブロックの数は特に限定されるものでないが、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
さらに、上記の溶融炉から取り出したスカンジウム濃縮物のブロックを、再び溶融炉に装入し、再溶融した後、上記の冷却工程、保持工程及び回収工程を再び行うことで、スカンジウム濃縮物に混入したアルミニウムを溶融物の上部に集めることができ、それだけスカンジウム濃縮物のスカンジウム品位を向上させることができる。
本発明のスカンジウム濃縮物は、高品位なAl−Sc母合金としてそのまま再利用してもよいし、再溶融して母合金化してから再利用してもよい。また、溶媒抽出等の公知の方法でスカンジウム濃縮物からスカンジウムを回収することで、ニッケル酸化鉱石から回収する場合に比べて極めて効率的にスカンジウムを回収することもできる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
Figure 0005907186
<実施例>
図1は、本実施例で用いた溶融炉1の構成を説明する概略図である。溶融炉1は、Al−Sc合金を封入するアルミナ製タンマン管2と、このアルミナ製タンマン管2を封入する石英製炉芯管3と、この石英製炉芯管3を密閉するゴム栓4と、このゴム栓4に設けられた2本の管挿入部(図示せず)を通じて石英製炉芯管3の内部をアルゴンガスで置換するアルゴンガス置換部5と、ゴム栓4に設けられた熱電対挿入部(図示せず)を通じて石英製炉芯管3の内部に挿入される熱電対6と、石英製炉芯管3の周囲から石英管3の内部の温度を所定温度に保つ電気炉7と、石英製炉芯管3の内部の断熱性を保つ断熱ボード8とを備える。
Sc濃度が1%であるAl−Sc合金50gを純度99.5%のアルミナ製タンマン管2に入れ、このタンマン管2を、石英製炉芯管3を用いて雰囲気を調整できる電気炉1の内部にセットした。石英製炉芯管3の内部雰囲気を不活性に保つため、アルゴンガス置換部5を通じて気体をアルゴンで十分に置換した後に800℃まで昇温して維持し、アルゴンガス流の下で60分保持した。
その後、毎分20〜30℃の割合を維持して温度を降下させるよう、電気炉1に流れる電流値を制御し、温度が670℃に達した点で温度を120分保持した。その後、電気炉1の電源を切って電気炉1の内部で試料を冷却した。試料が常温になった後、固化した試料を取り出した。
その後、アルミナ製タンマン管2を割り、得られた金属試料表面に薄く着いたスラグ分をハンマリングにて剥がした後、試料底部から約10%相当の体積に相当する箇所でダイヤモンドカッターを利用して切断した。この切断によって得た底部ブロックの組成を、は蛍光X線分析装置を用いて分析した。結果を表2に示す。
<比較例1>
冷却速度が110〜120℃/分であること以外は、実施例と同じ手法によって底部ブロックを得た。この底部ブロックの組成を、は蛍光X線分析装置を用いて分析した。結果を表2に示す。
<比較例2>
冷却速度が5〜8℃/分であること以外は、実施例と同じ手法によって底部ブロックを得た。この底部ブロックの組成を、は蛍光X線分析装置を用いて分析した。結果を表2に示す。
Figure 0005907186
実施例に係る底部ブロックのSc濃度は、7%であった。このことから、アルミニウム及びスカンジウムを含有する溶融合金を毎分10℃以上100℃以下の冷却速度で維持しながら660℃以上730℃以下になるまで冷却する冷却工程と、この冷却温度を一定時間保つ保持工程と、固体のスカンジウム濃縮物を回収する回収工程とを経て得られるスカンジウム濃縮物は、高品位なAl−Sc母合金としてそのまま再利用できることが確認された。また、このスカンジウム濃縮物に対して溶媒抽出等を行うことで、ニッケル酸化鉱石から回収する場合に比べて極めて効率的にスカンジウムを回収することもできる。
一方、冷却速度が速すぎると、スカンジウム濃度が1.2%と低く、高品位なAl−Sc母合金としてそのまま再利用することはできない(比較例1)。実施例より低くなった。また、試料断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で観察すると、Al−Sc合金相においても、全面にわたって細かなスカンジウム含有物が分散している様子がみられ、スカンジウム濃縮物として取り出すことのできた重量自体が実施例の重量よりも少なかった。
また、冷却速度が遅すぎても、底部ブロックのスカンジウム濃度は、実施例の濃度と大差なかった(比較例2)。また、溶融炉の内部をアルゴンで置換して冷却したにもかかわらず、表面付近に残ったスカンジウムは酸化物になっていた。そのため、冷却速度が遅すぎる場合、スカンジウム濃縮物を高品位なAl−Sc母合金としてそのまま再利用できないことが確認された。底部ブロックの酸化は、溶融炉の内部に残存するわずかな量の酸素と反応したことに起因すると予想される。
1 溶融炉
2 アルミナ製タンマン管
3 石英製炉芯管
4 ゴム栓
5 アルゴンガス置換部
6 熱電対
7 電気炉
8 断熱ボード

Claims (5)

  1. アルミニウム及びスカンジウムを含有する溶融合金を毎分10℃以上100℃以下の冷却速度で維持しながら660℃以上730℃以下になるまで冷却する冷却工程と、
    前記660℃以上730℃以下の温度を一定時間保つ保持工程と、
    固体のスカンジウム濃縮物を回収する回収工程とを含み、
    前記回収工程で回収された前記スカンジウム濃縮物を溶融炉で溶融した後、前記冷却工程、前記保持工程及び前記回収工程を再び行う、スカンジウム濃縮物回収方法。
  2. 前記回収工程は、前記溶融合金を溶融する溶融炉を深さ方向に対して2以上のブロックに分け、最も深い部分のブロックを回収する工程である、請求項に記載のスカンジウム濃縮物回収方法。
  3. 前記冷却速度が毎分20℃以上50℃以下である、請求項1又は2に記載のスカンジウム濃縮物回収方法。
  4. 前記冷却工程が大気雰囲気下で行われる、請求項に記載のスカンジウム濃縮物回収方法。
  5. 前記冷却工程は、前記溶融合金を665℃以上690℃以下になるまで冷却する工程であり、前記保持工程は、前記665℃以上690℃以下の温度を60分以上180分未満保つ工程である、請求項1からのいずれかに記載のスカンジウム濃縮物回収方法。
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