JP5908282B2 - 鉄骨梁貫通孔の補強設計方法・補強設計支援装置 - Google Patents
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Description
鉄骨造の梁に貫通孔を設けた場合の問題点は、梁耐力の低下と塑性変形能力の低下である。しかし、有孔梁については学会規準などの一般的な設計規準は定められておらず、各社、各設計者がそれぞれの考え方で標準を定め、補強しているというのが現状である。一般的には、梁貫通孔に作用する曲げモーメントやせん断力の大小にかかわらず、慣例的に貫通孔について補強を行っている。適宜の設計法の論文、書籍等を参考にして、スリーブ孔補強標準図を作成し、実務に活用することも行われているが、鉄骨梁に設ける貫通孔の位置までは考慮されておらず、鉄骨梁の長さ方向のどの位置に貫通孔を設ける場合も、同様な補強を行う補強標準図とされている。
しかも、同文献の一覧表では、大梁の中間領域のみ補強可能であって、端部付近となる塑性化領域を補強する場合は個別に検討が必要であり、検討に手間がかかる。
また、補強内容の検討については、既往の論文に提案されている略算法を使用して検討するため、釣り合い式を用いた詳細な検討方法と比較すると、今一つ信頼性が欠ける。
この発明の他の目的は、大梁の塑性化領域を補強する場合も、条件を満たせば、一覧表の使用による設計を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、内周部の溶接を省略した形式で、釣り合い式による信頼性の高い補強内容の提示を可能とすることである。
この一覧表(11)は、表の見出しとなる列(B0)の各行(A1〜Am)に行見出し表示(12)として各種断面寸法の鉄骨梁の断面寸法情報を表示する。上記表(11)の見出しとなる行(A0)の各列に列見出し表示(13)として、上記ウェブに明ける貫通孔の各種孔径を順に表示する。上記表の所定の行(An)の行見出し表示(14)として、梁端から無補強領域までの距離(L2)を示す行であることを示す。
この無補強領域(L2)までの距離を示す行における各列部分となる各セル内に、上記無補強領域までの各種の距離(L2))を順に表示する。
上記表(11)の断面寸法情報で行見出しが表示された任意の行(Ai)と孔径で列見出しが表示された任意の列(Bj)とが交差する領域となるセル(Sij)内に、見出し表示内容に対応する断面寸法情報、孔径、およびそのセルの位置する列(Bj)の上記所定行に表示された無補強領域までの距離(L2)、の各条件に対応する補強内容を表示する。
この補強内容は、梁の貫通孔を設ける箇所が上記の無補強領域までの距離(L2)以下である場合に、前記ウェブの前記貫通孔の周囲に、この貫通孔と整合する貫通孔を有する鋼製の補強板を両面または片面に重ねてこの補強板の外周を前記ウェブに隅肉溶接することで補強する内容である。
前記セル(Sij)内に表示する内容は、次の条件(1)〜(3)を全て充足する補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかを示す枚数の表示である。
前記条件は、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
である。
前記補強内容として、補強が不要であるセルには補強不要の旨を示す表示を施し、
前記補強内容として、個別に検討が必要なセルには個別に検討必要である旨の表示を施す。
このように、無補強領域までの距離(L2)を表(11)中に示すようにしたため、補強標準として、補強が不要であることを簡明に表示でき、無駄に補強を行うことが回避される。また、各セル(Sij)内の補強内容を、貫通孔の梁端からの距離を条件に含めた内容としてあるため、孔位置が梁中央に近い場合の余裕を補強内容に考慮する必要がなく、補強内容として示す補強量が削減できる。
特に、この補強標準表示具(10)は、補強内容として、補強板の外周のみを隅肉溶接した場合の結果を示しており、これに基づく設計は、補強板の外周のみを溶接し、内周は溶接しない補強となるため、内外周両方の補強に伴う梁部材の変形を回避すると共に、補強作業の簡易化が図れる。この補強板の外周のみの溶接による補強は、上記条件(3)の計算、つまり補強板を設けた場合の補強板のせん断座屈の検討を行うことより可能となった。
この補強標準表示具(10)を用いると、これらにより、無駄な補強をできるだけ避ける設計を容易に行うことができる。
この構成の場合、使用条件表に定められた条件を満たせば、塑性化領域を補強する場合も一覧表による運用が可能となり、個別計算の手間が省ける。
(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)、
の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τcrを次式で得られる値とする。
となる演算を行うことで、補強板の外周のみを溶接する補強内容でありながら、より一層信頼性の高い補強の設計が行える。
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sA1 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとしても良い。
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
ただし、
VAU:孔上部のせん断降伏機構 sAu の降伏せん断耐力、
VBU:孔上部のせん断降伏機構 sBu の降伏せん断耐力、
VAL:孔下部のせん断降伏機構 sAl の降伏せん断耐力、
VBL:孔上部のせん断降伏機構 sBl の降伏せん断耐力。
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値である、次式で与えられる値としても良い。
AUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mAu の全塑性曲げ耐力、
BUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mBu の全塑性曲げ耐力、
ALMphf :孔下部のせん断降伏機構 mAl の全塑性曲げ耐力、
BLMphf :孔下部のせん断降伏機構 mBl の全塑性曲げ耐力。
また、曲げ耐力については、孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の曲げ耐力演算の降伏機構を用い、各降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値を用いるため、曲げ耐力の充足判定にいても、信頼性の高い判定が行った表となる。
この設計方法によると、上記構成の補強標準表示具を用いるため、梁断面,孔径,孔位置に応じて、必要な補強内容が判り、かつ孔位置に応じた補強不要領域が簡単に判り、かつ補強内容として、補強板の外周のみを溶接する補強が行えて、補強に伴う梁部材の変形を回避すると共に、補強作業の簡易化が図れ、無駄な補強をできるだけ避ける設計が容易に行える。
この方法の場合、塑性化領域を補強する場合も、条件を満たせば一覧表による運用が可能なる。
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
の充足判定を個別に行う。
この場合に、前記条件(3)の、
(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)、
の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τcrの値は、前述の数式〔数1〕で演算される値とする。
前記条件(1)の「(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部のせん断耐力Qphについては、
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、前述の各降伏機構 mAu 、 mBu 、 mAl 、 mBl 、を想定し、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとする。
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
前記条件(2)の「(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部の曲げ耐力Mphf については、補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の前記曲げ耐力演算の降伏機構 mAu 、 mBu 、 mAl 、 mBl 、を想定し、孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定した曲げ耐力の小さい方の値を用いた次式とする。
この支援装置(30)は、鉄骨梁の断面寸法情報、梁長さ、貫通孔の孔径、および梁端から貫通孔中心までの距離を少なくとも含む条件データを入力しまたは所定のデータ登録手段から取り込む条件入力手段(31)と、
この条件入力手段(31)で得た条件データから、上記補強の有無判定および補強が必要な場合の補強量の演算を行う補強判定演算手段(32)と、
この補強判定演算手段で演算された結果を表示する演算結果表示手段(33)とを備える。
上記補強判定演算手段(33)は、次の条件(A),(B)、
(A)(梁の孔部に作用するせん断力)<(梁の孔部のせん断耐力)
(B)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(梁の孔部の曲げ耐力)
を充足するか否かを演算して充足する場合は補強不要と判定し、
充足しない場合は、次の条件(1)〜(3)、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
を全て充足する補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかの枚数の演算を行う。
上記条件(3)の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τcrを次式で得られる値とする。
前記条件(1)の「(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部のせん断耐力Qphについては、
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sA1 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qph とする。
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値である、次式で与えられる値とする。
特に、補強板を設置する際に補強板のせん断座屈の検討を行うようにしたため、補強板の外周のみを溶接する補強が行えて、補強に伴う梁部材の変形を回避すると共に、補強作業の簡易化が図れる。
前記一覧表として、大梁の中間領域の場合の内容を示した大梁中間領域用補強一覧表と、大梁の塑性化領域の場合の内容を示した大梁塑性化領域用補強一覧表と、小梁場合の内容を示した小梁用補強一覧表と、片持梁の内容を示した片持梁用補強一覧表とを設け、かつ上記各一覧表を使用する場合の条件を示した使用条件表を設けた場合は、塑性化領域を補強する場合にも、条件を満たせば、一覧表による運用が可能となる。
また、孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構、および曲げ耐力演算の降伏機構を用いて演算する場合は、内周部の溶接を省略した形式の補強内容でありがら、釣り合い式による信頼性の高い補強内容の提示を可能とすることができ、より一層信頼性の高い設計を行うことができる。
貫通孔2の孔径や鉄骨梁1の断面寸法によっても距離が変わるが、同図に示すように、梁端から所定の距離L1までは、鉄骨梁1に貫通孔2を設ける場合に、条件が厳しく制限される。この領域E1を塑性化領域E1と呼ぶことにする。梁端から所定の距離L2以上の領域E2は、補強を要しない。これを無補強領域E2と呼ぶことにする。この塑性化領域E1と無補強領域E2との間では、梁端からの距離等に応じた補強量の補強を行えば、支障なく貫通孔2を設けることができる。
また、上記の一覧表11は、紙等に表示されたものに限らず、例えば電子データであって、画面または用紙等への出力によって、人間が視覚的に表として認識できるものであれば良い。
なお、図1において○印を付した各箇所には、実際の一覧表11では上記の板厚、幅、および枚数がそれぞれ記載されるが、図示の便宜上、実際の数値に代えて○印で代用している。
前記3つの条件は、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
である。
ただし、上記の一覧表11を、貫通孔2の中心位置が鉄骨梁1の梁芯と一致する場合の他に、貫通孔2が偏心していても、梁芯から孔中心までの偏心量eが所定の偏芯量までの範囲に位置する場合に用いるものとしても良い。
また、各セルSij内の補強内容を、貫通孔2の梁端からの距離L2を条件に含めた内容としてあるため、孔位置か梁端に近い場合の余裕を補強内容に考慮する必要がなく、補強内容として示す補強量が削減できる。例えば、従来の画一的な補強の場合に比べて、全体的に板厚が1サイズ小さくなるなど、補強量が大幅に削減される。
この補強標準表示具10は、このように経済的な補強標準となっており、これを用いると、無駄な補強をできるだけ避ける設計を容易に行うことができる。
条件(3)の「(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)」の条件充足判定に用いる補強板3のせん断座屈応力度τcrを次式で得られる値とする。
VBPL :補強板の縦幅
HBPL :補強板の横幅
tPL :補強板の厚さ
α :補強板の縦横比
E :ヤング係数
ν :ポアソン比
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sA1 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBl 、
(図8(A)〜(D))を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとしている。
ただし、
VAU:孔上部のせん断降伏機構 sAu の降伏せん断耐力、
VBU:孔上部のせん断降伏機構 sBu の降伏せん断耐力、
VAL:孔下部のせん断降伏機構 sA1 の降伏せん断耐力、
VBL:孔上部のせん断降伏機構 sBl の降伏せん断耐力。
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mBl 、
(図9(A)〜(D))を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定した曲げ耐力のうちの最も小さい値を用いた、次式で与えられる値としている。
AUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mAu の全塑性曲げ耐力、
BUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mBu の全塑性曲げ耐力、
ALMphf :孔下部のせん断降伏機構 mAl の全塑性曲げ耐力、
BLMphf :孔下部のせん断降伏機構 mBl の全塑性曲げ耐力。
また、曲げ耐力については、孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の曲げ耐力演算の降伏機構を用い、各降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値を用いるため、曲げ耐力の充足判定にいても、信頼性の高い判定が行える一覧表11となる。
なお、図6は記号図である。図7は、梁フランジの内面から補強板3までの距離L5 の区分の例、補強板3の板厚と枚数の例、および隅肉溶接の脚長の例をそれぞれ示す。
[モーメントに関する記号]
Qph 孔部の降伏せん断耐力(2.1式)
Qyh 孔部の短期許容せん断耐力 =Qph
Qah 孔部の長期許容せん断耐力 =Qyh/1.5
Mph せん断力が作用しない場合の孔部の全塑性モーメント =Zph・F
Myh せん断力が作用しない場合の孔部の短期許容曲げモーメント =Zh・F
Mah せん断力が作用しない場合の孔部の長期許容曲げモーメント =Zh・F/1.5
Mphf せん断力Qphが作用する場合の孔部の全塑性曲げモーメント (3.1式)
Myhf せん断力Qyhが作用する場合の孔部の短期許容曲げモーメント =(Zh/Zph)Mphf
Mahf せん断力Qahが作用する場合の孔部の長期許容曲げモーメント =Myhf/1.5
Zh 孔部の断面係数
Zph 孔部の塑性断面係数
F 鋼材の基準強度
VAU 孔上部のせん断降伏機構sAuの降伏せん断耐力
VBU 孔上部のせん断降伏機構sBuの降伏せん断耐力
VAL 孔下部のせん断降伏機構sA1の降伏せん断耐力
VBl 孔下部のせん断降伏機構sBlの降伏せん断耐力
Vu 孔上部に作用するせん断耐力
VL 孔下部に作用するせん断耐力
Vo 降伏断面Cのせん断耐力
AUMphf 孔上部の曲げ降伏機構mAuの全塑性曲げ耐力
BUMphf 孔上部の曲げ降伏機構mBuの全塑性曲げ耐力
ALMphf 孔下部の曲げ降伏機構mAlの全塑性曲げ耐力
BLMphf 孔下部の曲げ降伏機構mBlの全塑性曲げ耐力
cMo 降伏断面Cに作用する直応力によるモーメント
cmo 降伏断面Cに作用するせん断力によるモーメント
Mo せん断力Voによって生じるT点のモーメント
N 梁に作用する軸力
τy 鋼材の許容せん断応力度
σw フィーレンディール作用によりウェブおよび補強板に生じる直応力度
σf フィーレンディール作用によりフランジに生じる直応力度
σn 軸力によりフランジに生じる直応力度
ks 補強板のせん断座屈係数(孔有り)
ko 補強板のせん断座屈係数(孔無し)
τcr 補強板のせん断座屈応力度
fs 鋼材の許容せん断応力度
D 補強板の曲げ剛性
E ヤング係数
ν ポアソン比
H 梁せい
B 梁幅
tw ウェブ厚
tf フランジ厚
tPL 補強板厚
R 孔半径
e1 上下方向の孔偏心距離(梁心に対して孔心が上の場合が正、下の場合が負)
e2 左右方向の孔偏心距離(補強板心に対して孔心が左の場合が正、右の場合が負)
VBPL 補強板の縦幅
HBPL 補強板の横幅
P 孔心間隔
R2 隣接孔半径
tPL2 隣接孔の補強板厚
VBPL2 隣接孔の補強板の縦幅
hBPL2 隣接孔の補強板の横幅
ne1 隣接孔の上下方向の偏心距離(梁心に対して孔心が上の場合が正、下の場合が負)
ne2 隣接孔の左右方向の偏心距離(補強板心に対して孔心が左の場合が正、右の場合が負)
gU 補強板縁からフランジまでの距離(上部)
gL 補強板縁からフランジまでの距離(下部)
L3 必要寸法
f 補強板の有効部の最小幅
h 孔中心より上あるいは下のウェブせい
hs せん断核の長さ
hν 直応力度を負担する部分のせい
θ 孔心と降伏断面の孔縁を結ぶ線分の角度
θA 孔心と降伏断面Aの孔縁を結ぶ線分の角度
θC 孔心と降伏断面Cの孔縁を結ぶ線分の角度
b 降伏断面Bの長さ
k0 補強板同士の間隙
k1 孔間の補強板有効幅
k2 孔間の補強板有効幅(隣接孔側)
ν1 曲げモーメントによる直応力度を負担する部分幅
ν2 曲げモーメントによる直応力度を負担する部分幅(隣接孔側)
y 孔心からT形断面の図心までの距離
α 補強板の縦横比
孔部のせん断耐力は、フィーレンディール作用によって、ウェブおよび補強板の全断面が降伏せん断応力度に達するとして求めたせん断耐力よりも低下する。そこで、孔の上下に別れたT形断面内に、せん断力を受け持つ部分(せん断核)とフィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分に分けて考える。
Qph=min(VAU,VBU)+min(VAL,VBL) ・・・・(2.1)
図8(A)に,孔上部のせん断降伏機構sAuを示す。フィーレンディール作用を考慮した孔上部のせん断耐力VAUを次式で与える。
VAU=hs・tw・τy+(hs−gU)・tPL・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVAUを最小にする条件で決定される。フィーレンディール作用による曲げモーメントMAUは次式で表される。
MAU=VAU・Rsinθ
ここで、孔心と降伏断面の孔縁を結ぶ線分の角度θは変数で、VAUを最小にする条件で決定される。MAUが、図8(A)に示す応力分布によるモーメントと釣り合うので次式が成り立つ。
図8(B)に、孔上部のせん断降伏機構sBuを示す。フィーレンディール作用を考慮した孔上部のせん断耐力VBUを次式で与える。
VBU=hs・tw・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVBUを最小にする条件で決定される。降伏断面Bの水平方向の耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件より次式が成り立つ。
図8(C)に、孔下部のせん断降伏機構sA1を示す。フィーレンディール作用を考慮した孔下部のせん断耐力VALを次式で与える。
VAL=hs・tw・τy+(hs−gL)・tPL・τy
ここでせん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVALを最小にする条件で決定される。フィーレンディール作用による曲げモーメントMALは次式で表される。
MAL=VAL・Rsinθ
ここで、孔心と降伏断面の孔縁を結ぶ線分の角度θは変数で、VALを最小にする条件で決定される。MALが図8(C)に示す応力分布によるモーメントと釣り合うので次式が成り立つ。
図8(D)に、孔下部のせん断降伏機構sBlを示す。フィーレンディ作用を考慮した孔下部のせん断耐力VBLを次式で与える。
VBL=hs・tw・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVBLを最小にする条件で決定される。降伏断面Bの水平方向の耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件より次式が成り立つ。
図9(A)〜(D)に4つの曲げ降伏機構を示す。降伏機構mAuは補強板の上側に曲げ降伏断面が形成される場合、降伏機構mAlは補強板の下側に曲げ降伏断面が形成される場合を示す。降伏機構mBuとmBlは補強板の側面に曲げ降伏断面が形成される場合を示す。せん断力Qphが作用している場合の全塑性曲げ耐力Mphfは、各降伏機構で算定される曲げ耐力の小さい値を用いた次式とする。
図9(A)に孔上部の曲げ降伏機構mAuを示す。梁に作用する軸力はフランジが負担する。梁にQphのせん断力が作用している場合、降伏機構mAuの全塑性曲げ耐力AUMphfは次式で与えられる。
AUMphf=B・th・(H−tf)(F−σf−σn)
ここでσfはフィーレンディール作用によりフランジに生じる直応力度、σnは軸力によりフランジに生じる直応力度である。σnは次式で与える。
図9(B)に、孔上部の曲げ降伏機構mBuを示す。梁に作用する軸力はフランジが負担する。梁にQphのせん断力が作用している場合、降伏機構mBuの全塑性曲げ耐力BuMphfは次式で与えられる。
BuMphf=B・tf・(H−tf)(F−σf−σn)
ここでσfはフィーレンディール作用によりフランジに生じる直応力度、σnは軸力によりフランジに生じる直応力度である。降伏断面Bの水平方向耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件より次式が成り立つ。
釣り合い式を満足しながらBuMphfを最小にする条件で決定される。
なお、降伏機構mBuは、場合によっては力の釣合い式を満足できず、解が得られない場合がある。その場合は機構mBuは生じず、機構mAuが生じると考える。
図9(C)に、孔下部の曲げ降伏機構mAlを示す。梁に作用する軸力はフランジが負担する。梁にQphのせん断力が作用している場合、降伏機構mAlの全塑性曲げ耐力ALMphfは次式で与えられる。
ALMphf=B・tf・(H−tf)(F−σf−σn)
ここでσfはフィーレンディール作用によりフランジに生じる直応力度、σnは軸力によりフランジに生じる直応力度である。モーメントの釣り合いより、次式が成り立つ。
図9(D)に、孔下部の曲げ降伏機構mBlを示す。梁に作用する軸力はフランジが負担する。梁にQphのせん断力が作用している場合、降伏機構mBlの全塑性曲げ耐力BLMphfは次式で与えられる。
BLMphf=B・tf・(H−tf)(F−σf−σn) ・・・(3.4.1)
ここでσfはフィーレンディール作用によりフランジに生じる直応力度、σnは軸力によりフランジに生じる直応力度である。降伏断面Bの水平方向耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件により、次式が成り立つ。
なお、降伏機構mBlは、場合によっては力の釣合い式を満足できず、解が得られない場合がある。その場合は機構mBlは生じず、機構mAlが生じると考える。
連続孔の場合、孔心間隔が梁せい以上であれば、単独孔として扱う。孔心間隔が梁せい以下の場合は、隣接する孔の影響を考慮して以下の検討を行う。
図10に連続孔間ウェブの降伏機構を示す。同図に示すように、隣接孔については仮想矩形孔を仮定する。
孔心間隔が梁せい以下の場合は、隣り合う孔間のウェブが降伏する。降伏断面Cのせん断耐力V0は次式で表される。
V0=(k1−ν1)(tw+tPL)τy+k0・tw・τy+(k2−ν2)(tw+tPL2)τy
ここで、曲げモーメントによる直応力度を負担する部分の幅ν1は変数で、以下に示す力の釣り合い式を満足しながらV0を最小にする条件で決定される。
補強板間の間隔k0を次式で与える。
図11に連続孔上部のせん断降伏機構sAuを示す。
フィーレンディール作用を考慮した孔上部のせん断耐力VAUを次式で与えられる。
VAU=hs・tw・τy+(hs−gU)・tPL・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVAUを最小にする条件で決定される。降伏断面Aに作用する曲げモーメントMAUを次式で与える。
M0=V0・y
降伏断面Aに作用する直応力によるモーメントとMAUの釣り合い条件により、次式が成り立つ。
図12に連続孔上部のせん断降伏機構sBuを示す。
フィーレンディール作用を考慮した孔上部のせん断耐力VBUを次式で与える。
VBU=hs・tw・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVBUを最小にする条件で決定される。降伏断面Bの水平方向の耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件より次式が成り立つ。
M0=V0・y
降伏断面Aに作用する直応力によるモーメントとMAUの釣り合い条件より、次式が成り立つ。
図13に連続孔下部のせん断降伏機構sA1を示す。
フィーレンディール作用を考慮した孔下部のせん断耐力VALを次式で与える。
VAL=hs・tw・τy+(hs−gL)・tPL・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVALを最小にする条件で決定される。降伏断面Aに作用する曲げモーメントMALを次式で与える。
M0=V0・y
降伏断面Aに作用する直応力によるモーメントとMALの釣り合い条件により、次式が成り立つ。
図14に連続孔下部のせん断降伏機構sBlを示す。フィーレンディール作用を考慮した孔下部のせん断耐力VBLを次式で与える。
VBL=hs・tw・τy
ここで、せん断核の長さhsは変数で、以下に示す力の釣合い式を満足しながらVBLを最小にする条件で決定される。降伏断面Bの水平方向の耐力をUとすると、ミーゼスの降伏条件より次式が成り立つ。
M0=V0・y
降伏断面Aに作用する直応力によるモーメントとMALの釣り合い条件より、次式が成り立つ。
孔心間隔が梁せいより小さい場合、単独孔の場合よりもせん断耐力が小さいため、フィーレンディール作用によって生じるフランジ内直応力は単独孔の場合に比べて小さくなる。したがって連続孔の曲げ耐力は、単独孔の場合よりも大きくなる。本工法では安全側として、連続孔の曲げ耐力は単独孔の曲げ耐力と同じ値を用いる。
この検討は、本件発明で見出した事項であり、早期にせん断座屈しないようにすることで、補強板内側の溶接を省略可能とした。
孔の空いた補強板がせん断力を受ける場合、補強板の大きさに対する孔径の比に応じてせん断座屈係数が低下する。せん断座屈係数ksは、鋼構造座屈設計指針を参考にして次式で与える。
加藤、金子の文献(非特許文献1)を参考にして、有孔梁の設計式を導く。図15に示すように、水平荷重と等分布荷重wを受ける梁を想定する。梁端部(無欠損部)の全塑性状態における曲げモーメントME とせん断力QE のM−Q相関関係(図16)を次式のように仮定する。
梁が両端でせん断力を考慮した全塑性状態になっている時の曲げモーメント分布は次式で表される。
等分布荷重wは、終局時においてスパン内に最大曲げモーメントが生じないことを条件とする。この条件は(4) 式で表される。
梁端の全塑性状態における曲げモーメントMPL,MPR、(1) 式のQE に(5) 式を代入して連立方程式を解けば、次式が得られる。
有限要素法を用いた数値解析により、設計式ならびに補強の妥当性について検討する。解析方法は材料非線形と幾何学的非線形を考慮した弾塑性有限要素解析で、汎用構造解析プログラムMSC.Marc2000(商品名)を用いて行った。
図18に解析対象、図19に有限要素モデルを示す。要素は4節点厚肉シェル要素を用いている。材端に集中荷重が作用する片持梁を想定し、等分布荷重についてはw=0と仮定する。
表3にPHASE-1 の実験結果一覧を示し、表4にPHASE-2 の実験結果一覧を示す。降伏耐力及び全塑性耐力は、図20に示すように1/3 slope factor法及び1/6 slope factor法により求めた。PHASE-1 では、梁端から梁せいのl/2 倍及び1,0 倍の距離の位置に開孔率60%の貫通孔を設置したものについては降伏荷重、全塑性荷重及び最大荷重が全て低下していることがわかる。なお、一方、梁せいの1倍の距離に開孔率60%の貫通孔を設置したものについては、最大荷重の低下は観察されるが、降伏荷重及び全塑性荷重の著しい低下は観察されない。PHASE-2 のP2-1〜P2-8では無補強の試験体であるP2-2及びP2-7以外については全ての試験体について降伏荷重、全塑性荷重及び最大耐力全てがほぼ同等となっている。
表5、表6にせん断スパン1700mmのRH−400 ×200 ×8 ×13の試験体の初期剛性一覧を示す。 曲げ破壊が先行する、P1-2〜P1-12 及びP2-2〜P2-8は補強の有無、偏心、孔数及び補強方法に係らず0.95〜1.07となっており、無孔梁とほぼ同じ剛性となっている。
表7にPHASE-1の降伏耐力と全塑性耐力の実験値及び計算値の比較を示し、表8にPHASE-1 の降伏耐力と全塑性耐力の実験値及び計算値の比較を示す。PRASE-1 の無補強貫通孔を主とした実験では実験値/ 計算値の比が降伏耐力では1.02〜1.26、全塑性耐力では1.02〜1.26と適切に評価できている。PHASE-2 の貫通孔を補強した実験では実験値/ 計算値の比が降伏耐力では1.04〜1,34、全塑性耐力では1.09〜1.41とPHASE-1 と同様、適切に評価できている。
表9、表10に各試験体の塑性率を示す。表11,表12に各試験体の塑性変形倍率を示す。PHASE-1 のP1-1試験体を基本試験体として他の試験体と比較すると、無補強試験体の開孔率30%無補強の試験体P1-2、開孔率60%無補強の試験体P1-3、開孔率60%で開孔位置が梁せいの1.0 倍の無補強の試験体P1-4については塑性変形能力の低下が確認されたが、それ以外の試験体については同等以上であった。PHASE-2 のP2-1試験体を基本試験体としてP2-2〜P2-8の試験体と比較すると、全ての試験体において補強・無補強にかかわらず無孔梁のP2-1試験体以上の塑性変形能力を有している。
写真により、+2 θp 時および試験終了後の貫通孔近傍の状態を比較した(写真は図示を省略す)。試験体は補強板の外周部のみ全周隅肉溶接した試験体であり、P1-12 、P2-3、P2-4、P2-5、P2-6、P2-8、P2-9及びP2-10 である。補強板の板厚(4.5 mm)が梁ウェブの板厚(8 mm)よりも2サイズ薄いP2-10 については、梁ウェブよりも先に補強板が座屈するのが確認された。しかし、その後梁ウェブに座屈が発生すると補強板は梁ウェブの変形に追従する挙動を示した。その他の試験体については、最終状態に至るまで補強板の座屈挙動は梁ウェブに追従する挙動を示した。
・実験値降伏耐力と計算値降伏耐力の比は1.02〜1.34であり、安全側に適切に評価できる。
・実験値全塑性耐力と計算値全塑性耐力の比は1.02〜1.41であり、安全側に適切に評価できる。
・PHASE-1 、PHASE-2 共に無孔梁試験体と貫通孔を有する試験体の初期剛性の比は0.95〜1.07であり貫通孔による初期剛性の低下の影響は見られなかった。
・塑性変形倍率は貫通孔径が大きい場合、無孔梁と比較して低下する傾向があるが、補強板によって補強することより無孔梁と同等の性能を示した。
・補強板と梁ウェブは、実験終了まで同様の挙動を示した。
以上の試験結果から、設計式ならびに補強の妥当性が確認できた。
この補強判定演算手段32は、次の条件(A),(B)、
(A)(梁の孔部に作用するせん断力)<(梁の孔部のせん断耐力)
(B)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(梁の孔部の曲げ耐力)
を充足するか否かを演算して充足する場合は補強不要と判定する。
充足しない場合は、次の条件(1)〜(3)、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
を全て充足する補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかの枚数の演算を行い、
上記条件(3)の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τcrを次式で得られる値とする。
なお、以下の各式中の各符号の示す意味は、補強標準表示具10について説明した意味と同じである。
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sA1 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとする。
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
ただし、
VAU:孔上部のせん断降伏機構 sAu の降伏せん断耐力、
VBU:孔上部のせん断降伏機構 sBu の降伏せん断耐力、
VAL:孔下部のせん断降伏機構 sA1 の降伏せん断耐力、
VBL:孔上部のせん断降伏機構 sBl の降伏せん断耐力、
補強板の上側にせん断降伏断面が成形される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が成形される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が成形される場合の孔上部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が成形される場合の孔上部の降伏機構 mBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値を用いた、次式で与えられる値とする。
特に、この構成の補強設計支援装置30では、補強板3を設置する際に補強板3のせん断座屈の検討を行うようにしたため、補強板3の外周のみを溶接する補強の設計が行えて、補強に伴う鉄骨梁の変形を回避すると共に、補強作業の容易化が図れる。
2…貫通孔
3…補強板
4…柱
10…補強標準表示具
11…一覧表
11A…大梁中間領域領域用補強一覧表
11B…大梁塑性化領域用補強一覧表
11C…小梁用補強一覧表
12…行見出し表示
13…列見出し表示
14…無補強領域までの距離を示す行であることを示す表示
15…補強内容表示
15a…補強不要の旨を示す表示
111…使用条件表
sAu , sBu , sA1 , sB1 …せん断降伏機構
mAu , mBu , mA1 , mB1 …曲げ降伏機構
E1…塑性化領域
E2…無補強領域
L1…塑性化領域までの距離
L2…無補強領域までの距離
Claims (4)
- 鉄骨梁のウェブに貫通孔を設ける場合に、鉄骨梁の貫通孔の形成部周辺を補強する補強設計の方法であって、鉄骨梁貫通孔の補強標準表示具を用い、この補強標準表示具は、
一覧表において、表の見出しとなる列の各行に行見出し表示として各種断面寸法の鉄骨梁の断面寸法情報を表示し、上記表の見出しとなる行の各列に列見出し表示として、上記ウェブに明ける貫通孔の各種孔径を順に表示し、上記表の所定の行の行見出し表示として、梁端から無補強領域までの距離を示す行であることを示し、
この無補強領域までの距離を示す行における各列部分となる各セル内に、上記無補強領域までの各種の距離を順に表示し、
上記表の断面寸法情報で行見出しが表示された任意の行と孔径で列見出しが表示された任意の列とが交差する領域となるセル内に、見出し表示内容に対応する断面寸法情報、孔径、およびそのセルの位置する列の上記所定行に表示された無補強領域までの距離、の各条件に対応する補強内容を表示し、
この補強内容は、梁の貫通孔を設ける箇所が上記の無補強領域までの距離以下である場合に、前記ウェブの前記貫通孔の周囲に、この貫通孔と整合する貫通孔を有する鋼製の補強板を両面または片面に重ねてこの補強板の外周を前記ウェブに隅肉溶接することで補強する内容であって、
前記セル内に表示する内容は、次の条件(1)〜(3)を全て充足する補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかを示す枚数の表示であり、
前記条件は、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
であり、
前記補強内容として、補強が不要であるセルには補強不要の旨を示す表示を施し、
前記補強内容として、個別に検討が必要なセルには個別に検討必要である旨の表示を施し、
前記補強標準表示具の前記一覧表として、大梁の中間領域の場合の内容を示した大梁中間領域用補強一覧表と、大梁の塑性化領域の場合の内容を示した大梁塑性化領域用補強一覧表と、小梁の場合の内容を示した小梁用補強一覧表と、片持梁の内容を示した片持梁用補強一覧表とを設け、かつ上記各一覧表を使用する場合の条件を示した使用条件表を設けたものを用い、
前記使用条件表に記載された使用条件に該当しない場合、および補強一覧表に記載の梁以外の梁に適用する場合は、定められた個別検討方法を用い、
前記の定められた個別検討方法は、前記貫通孔が円形、補強板が矩形の場合に適用されて、
前記条件、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力) (2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
の充足判定を個別に行い、
前記条件(3)の、
(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)、
の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τcrを次式で得られる値とし、
前記条件(1)の「(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部のせん断耐力Qphについては、
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとし、
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
前記条件(2)の「(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部の曲げ耐力Mphf については、補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の曲げ耐力演算の降伏機構、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値を用いた、次式で与えられる値とする。
- 請求項2に記載の鉄骨梁貫通孔の補強設計方法において、前記補強標準表示具として、
前記条件(1)の「(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部のせん断耐力Q ph については、
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 s A u 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 s B u 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 s A l 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 s B l 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Q ph とし、
Q ph = min(V AU ,V BU )+ min(V AL ,V BL )
ただし、
V AU :孔上部のせん断降伏機構 s A u の降伏せん断耐力、
V BU :孔上部のせん断降伏機構 s B u の降伏せん断耐力、
V AL :孔下部のせん断降伏機構 s A l の降伏せん断耐力、
V BL :孔下部のせん断降伏機構 s B l の降伏せん断耐力、
前記条件(2)の「(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部の曲げ耐力M phf については、補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の曲げ耐力演算の降伏機構、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 m A u 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 m B u 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 m A l 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 m B l 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい値を用いた、次式で与えられる値とする補強標準表示具を用いる鉄骨梁貫通孔の補強設計方法。
ただし、
AU M phf :孔上部のせん断降伏機構 m A u の全塑性曲げ耐力、
BU M phf :孔上部のせん断降伏機構 m B u の全塑性曲げ耐力、
AL M phf :孔下部のせん断降伏機構 m A l の全塑性曲げ耐力、
BL M phf :孔下部のせん断降伏機構 m B l の全塑性曲げ耐力。 - 鉄骨梁のウェブに貫通孔を設ける場合に、前記ウェブの前記貫通孔の周囲に、この貫通孔と整合する貫通孔を有する鋼製の補強板を両面または片面に重ねてこの補強板の外周を前記ウェブに隅肉溶接することで、鉄骨梁の貫通孔の形成部周辺を補強するときの、補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかを示す枚数を補強内容として示す鉄骨梁貫通孔の補強設計支援装置であって、
鉄骨梁の断面寸法情報、梁長さ、貫通孔の孔径、および梁端から貫通孔中心までの距離を少なくとも含む条件データを入力しまたは所定のデータ登録手段から取り込む条件入力手段と、
この条件入力手段で得た条件データから、上記補強の有無判定および補強が必要な場合の補強量の演算を行う補強判定演算手段と、
この補強判定演算手段で演算された結果を表示する演算結果表示手段とを備え、
上記補強判定演算手段は、次の条件(A),(B)、
(A)(梁の孔部に作用するせん断力)<(梁の孔部のせん断耐力)
(B)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(梁の孔部の曲げ耐力)
を充足するか否かを演算して充足する場合は補強不要と判定し、
充足しない場合は、次の条件(1)〜(3)、
(1)(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)
(2)(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)
(3)(補強板のせん断座屈応力度)>(補強板の鋼材の許容せん断応力度)
を全て充足する補強板の大きさ,板厚,および両面であるか片面であるかの枚数の演算を行い、
上記条件(3)の条件充足判定に用いる補強板のせん断座屈応力度τ cr を次式で得られる値とし、
ここで、R :貫通孔の半径
VBPL :補強板の縦幅
HBPL :補強板の横幅
tPL :補強板の厚さ
α :補強板の縦横比
E :ヤング係数
ν :ポアソン比
前記条件(1)の「(梁の孔部に作用するせん断力)<(補強された梁の孔部のせん断耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部のせん断耐力Qphについては、
補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分であるせん断核となる部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類のせん断耐力演算の降伏機構として、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 sBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 sBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの小さい方の値を採用し、その採用した孔上部と孔下部のせん断耐力の和である、次式で与えられる値をせん断耐力Qphとし、
Qph= min(VAU,VBU)+ min(VAL,VBL)
ただし、
VAU:孔上部のせん断降伏機構 sAuの降伏せん断耐力、
VBU:孔上部のせん断降伏機構 sBuの降伏せん断耐力、
VAL:孔下部のせん断降伏機構 sAlの降伏せん断耐力、
VBL:孔下部のせん断降伏機構 sBlの降伏せん断耐力、
前記条件(2)の「(梁の孔部に作用する曲げモーメント)<(補強された梁の孔部の曲げ耐力)」の条件充足判定に用いる、補強された梁の孔部の曲げ耐力Mphf については、補強された梁を貫通孔に対する孔上部と孔下部に分けた各断面内に、せん断力を受け持つ部分と、フィーレンディール作用による曲げを受け持つ部分とに分けた各2種類の曲げ耐力演算の降伏機構、
補強板の上側にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mAu 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔上部の降伏機構 mBu 、
補強板の下側にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mAl 、
補強板の側面にせん断降伏断面が形成される場合の孔下部の降伏機構 mBl 、
を想定し、
孔上部と孔下部のそれぞれにつき、両降伏機構で算定したせん断耐力のうちの最も小さい値である、次式で与えられる値とする鉄骨梁貫通孔の補強設計支援装置。
ただし、
AUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mAu の全塑性曲げ耐力、
BUMphf :孔上部のせん断降伏機構 mBu の全塑性曲げ耐力、
ALMphf :孔下部のせん断降伏機構 mAl の全塑性曲げ耐力、
BLMphf :孔下部のせん断降伏機構 mBl の全塑性曲げ耐力。
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