本発明の実施の形態について説明する前に、まず、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子を用いた磁界検出装置の具体的な検出動作について、図1を参照して説明する。磁界検出用のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子1は、固着層と自由層とが積層されて構成されているが、ここでは、固着層と自由層の相互作用がない、理想的な状態で考える。図1は磁界検出用の磁気抵抗効果素子1の自由層および固着層の磁化方向を示す模式図である。図1においては、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子1の自由層の無磁界における磁化方向2と、固着層の無磁界における磁化方向3とが互いに垂直であり、それらのなす角度は90°である。自由層の無磁界における磁化方向2は、自由層の形状によって決定されており、その長手方向となっている。このスピンバルブ型磁気抵抗効果素子1の固着層の磁化方向3に沿った方向に外部磁界Hが印加されると、自由層の磁化は外部磁界Hによりその方向を変化させ、磁化方向2aとなる。この際、変化した自由層の磁化方向2aと固着層の磁化方向3とがなす角θに応じて、磁気抵抗効果素子1の抵抗値は線形に変化する。
具体的には、固着層の磁化方向3を0°とし、それに対して外部磁界Hが印加された際に自由層の磁化方向2aのなす角をθとした場合、磁気抵抗効果素子1の抵抗の変化はcosθに比例する。自由層が一軸異方性を持った軟磁性膜である場合、cosθ=H/Hkとなる。つまり、所定の値Hkより大きな外部磁界Hが印加された場合は、自由層の磁化方向2aは固着層の磁化方向に平行(0°)あるいは反平行(180°)に固定されてしまい、これ以上、磁気抵抗効果素子1の抵抗は変化しない。つまり、理想的には、Hkは自由層の飽和磁界となる。
この結果、磁気抵抗効果素子1の抵抗(素子抵抗)Rは、無磁界中で自由層の磁化方向2と固着層の磁化方向3とが90°の方向である場合には、下記の式(1)となり、外部磁界Hに対して、図2に示すように変化する。
R=Rm+ΔR/2・H/Hk(ただし、−Hk≦H≦Hk) (1)
ここで、Rmは磁気抵抗効果素子1の抵抗Rがとり得る最大の抵抗値と最小の抵抗値との中間値であり、理想的な無磁界中での磁気抵抗効果素子1の抵抗値である。また、ΔRは磁気抵抗効果素子1の最大の磁気抵抗変化量(すなわち、最大の抵抗値と最小の抵抗値との差)である。この磁気抵抗効果素子1の抵抗Rは外部磁界Hに対して線形に変化するため、磁気抵抗効果素子1の抵抗Rを得ることにより外部磁界Hの大きさを検出することが可能である。なお、検出される外部磁界Hは、固着層の磁化方向3の方向成分である。また、固着層の磁化方向において検出可能な磁界領域、すなわち動作領域は−Hk≦H≦Hkである。
次に、図3は、参照用のスピンバルブ型磁気抵抗効果素子11の自由層および固着層の磁化方向を示す模式図である。図3に示す参照用の磁気抵抗効果素子11は、その長手方向が、図1に示した検出用の磁気抵抗効果素子1の長手方向に直交するように配置されている。すなわち、検出用の磁気抵抗効果素子1の長手方向と、参照用の磁気抵抗効果素子11の長手方向とが、互いに、90°異なるように、それらの素子1,11は基板上に配置される。磁気抵抗効果素子11における固着層の磁化方向3は、図1の検出用の磁気抵抗効果素子1と同一である。図3において、図1と同様に、固着層の無磁界における磁化方向3を0°とする。図3(a)においては、磁気抵抗効果素子11の自由層の磁化方向2が、固着層の無磁界における磁化方向3と同一であり、共に0°である。すなわち、予め固着層の磁化方向と自由層の無磁界における磁化方向とが平行になっている。この磁気抵抗効果素子11においては、固着層の磁化方向3と同方向である0°方向に磁界Hが印加された場合は、磁界の向きが無磁界における磁化方向3と一致するため、その方向で自由層の磁化方向2aは安定化する。一方、180°方向に磁界が印加された場合には、一定の磁界Hcまでは磁化方向を維持した後に、磁化方向が磁界方向へと反転する。すなわち、磁界下における自由層の磁化方向2aと固着層の磁化方向3は0°および180°が安定であることから、磁気抵抗効果素子11の抵抗値は2つの値を示す。これを図4に示すが、具体的には、抵抗値は、Rm±ΔR/2を示す。この場合、Rm−ΔR/2の抵抗値は、H≦+Hcで安定であり、Rm+ΔR/2の抵抗値は、H≧−Hcで安定である。
一方、図3(b)においては、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子11の自由層の磁化方向2と、固着層の無磁界における磁化方向3とが逆向きであり、それらのなす角度は180°である。すなわち、固着層の磁化方向と自由層の無磁界における磁化方向とが反平行(平行かつ逆向き)になっている。この場合においても、磁気抵抗効果素子11の抵抗値は、外部磁界に対し、基本的に図4に示す依存性を示す。
この参照用の磁気抵抗効果素子11の抵抗Rは一定磁界までは、外部磁界に依存せずに一定の抵抗を示すために、検出用の磁気抵抗効果素子と面積が同一である場合、参照用の磁気抵抗効果素子11の抵抗Rの値から、検出用磁気抵抗効果素子の最大抵抗、若しくは、最小抵抗を得ることが可能である。なお、図3(a)に示す参照用素子は、予め固着層と自由層の磁化が平行にしてあり、抵抗はRm−ΔR/2である。一方、図3(b)に示す参照用素子は、予め固着層と自由層の磁化が反平行にしてあり、抵抗はRm+ΔR/2である。
以下、本発明の実施の形態について、その具体例を図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図5は、本発明の実施の形態1における磁界検出装置を示す上面図である。ここに示す磁界検出装置は、4個の検出用磁気抵抗効果素子101a、101b、102a、102b(以下、検出用素子と表記する。)と4個の参照用磁気抵抗効果素子111a、111b、112a、112b(以下、参照用素子と表記する。)を有している。これらの磁気抵抗効果素子は、上面から見た場合に、それぞれ、同面積かつ同形状の角丸長方形を有しており、検出用素子と参照用素子とで、長手方向が90°異なるように配置されている。また、検出用素子の個数と、参照用素子の個数とは、共に4個で、同数となっている。
検出用素子101aと101b、102aと102bは、それぞれ金属配線51、52により直列接続されている。また、参照用素子111aと111b、112aと112bは、それぞれ金属配線53、54により直列接続されている。更に、検出用素子101aと参照用素子111aが金属配線55により接続され、検出用素子102bと参照用素子112bが金属配線56により接続され、検出用素子102aと参照用素子111bが金属配線57により接続され、検出用素子101bと参照用素子112aが金属配線58により接続されている。なお、金属配線55は電源(図示せず)に接続されており、金属配線56は接地されている。金属配線57と58は、それぞれ、外部に設けられた信号検出回路(図示せず)へと接続されている。このように、図5の磁気検出装置は、ブリッジ回路を形成している。
検出用素子101a、101bと、検出用素子102a、102bとは、並行に配置されている。検出用素子101a、101bと、検出用素子102a、102bとの間は、所定の距離、離間している。また、参照用素子111a、111bと、参照用素子112a、112bとは、並行に配置されている。また、参照用素子111a、111bと、参照用素子112a、112bとの間は、所定の距離、離間している。
また、参照用素子111a、111b、112a、112bの直下には、それらの素子に対して電気的に絶縁された磁界印加用配線151が配置されており、磁界印加用配線151の長手方向(軸方向または配線方向)が、参照用素子111a、111b、112a、112bの長手方向に直交する方向に配置されている。この磁界印加用配線151は、電流を流した場合に、参照用素子111a、112aでは紙面左向きに、参照用素子111b、112bには紙面右向きに、同時に、磁界Hbiasを印加することが可能であるように、コの字型に折り返されて配置されている。すなわち、磁界印加用配線151は、同一平面内で、180°折り返した1本の配線から構成されている。
検出用素子101a、101b、102a、102bと参照用素子111a、111b、112a、112bは全て同一の積層構造を有しており、その断面構造の模式図を図6に示す。
図6において、基板61上に電極層62が形成され、次に、反強磁性層63が形成されている。次に、この反強磁性層63により磁化方向が固定された強磁性層64が形成されている。続いて非磁性層65、強磁性層66が形成され、さらに、トンネル絶縁層となる非磁性層67を形成し、その上層に、外部磁界によって磁化方向が変化する磁性体からなる自由層68が形成されている。自由層68の上層には電極層69が形成されている。強磁性層64と66については、非磁性層65を介して磁気的に反平行結合している。ここでは、反強磁性層63、強磁性層64、非磁性層65、および、強磁性層66からなる積層構造が固着層70として機能する。なお、以後の説明では、説明の簡単化のために、強磁性層66の磁化を固着層70の磁化と呼ぶ。
この固着層70は2層の強磁性層64と66とが反平行に結合していることから、固着層70全体の見掛け上の磁化を抑制することが可能であり、自由層68への磁気的な影響や、固着層70が磁界から受ける影響を抑制することが可能となる。
ここでは、反強磁性層63から自由層68が順次積層される構成を示したが、構成はこれにとらわれるものではなく、逆に、自由層68を一番下にして、自由層68から逆の順序で積層しても素子を構成することができる。
検出用素子101a、101b、102a、102bおよび参照用素子111a、111b、112a、112bの自由層68は、それらの素子の形状が長方形であることから、長手方向を有するため、形状磁気異方性により、自由層68の磁化方向は、これらの素子のそれぞれの長手方向となる。固着層70の磁化方向は、検出用素子と参照用素子とで同一であるため、4個の検出用素子101a、101b、102a、102bにおいては、固着層70の磁化方向が、無磁界における自由層68の磁化方向に対して、素子平面内で直交している(90°)。これに対して、4個の参照用素子111a、111b、112a、112bの固着層70の磁化方向は、無磁界における自由層68の磁化方向と平行(0°)若しくは反平行(180°)となっている。
図5では、前述したように、4個の参照用素子に同時に磁界を印加するための磁界印加用配線151が備えられている。この磁界印加用配線151は、参照用素子111a、112aと、参照用素子111b、112bとのそれぞれに対し、同時に磁界を印加することが可能であるが、参照用素子111a、112aの真下と、参照用素子111b、112bの直下とにおける、磁界印加用配線151を流れる電流の向きは逆方向となっている。このため、それぞれの素子に印加される磁界は、参照用素子111aおよび112aでは紙面左向き、参照用素子111bおよび112bでは紙面右向きとなる。すなわち、磁界印加用配線151は、参照用素子111a、112aの自由層の磁化容易軸方向と、参照用素子111b、112bの自由層の磁化容易軸方向とのそれぞれに、互いに180°異なる方向の磁界を同時に印加することができる。
磁界印加用配線151に、図4に示すHcよりも大きな値の磁界Hbiasを発生する電流Ibiasを流すことによって、参照用素子111a、112aは、固着層と自由層の磁化が反平行になり、抵抗値はRm+ΔR/2となる。参照用素子111bと112bでは平行状態となり、抵抗値はRm−ΔR/2となる。これらの参照用素子の磁界に対する抵抗は、図4に示すように、ヒシテリシスを有することから、磁界印加用配線151の電流Ibiasを停止した後も、前述の抵抗値を維持することが可能である。この状態では、参照用素子111aと111b、および、参照用素子112aと112bは、それぞれ、直列に接続されているため、それぞれの直列抵抗は、2Rmとなる。検出用素子についても同様に、検出用素子101aと101b、および、検出用素子102aと102bは、それぞれ、直列に接続されており、無磁界での抵抗は2Rmとなり互いに等しい抵抗となる。
ここで、それぞれの素子の自由層68および固着層70における強磁性体を構成する材料としては、強磁性層64ではCo−Fe合金を、強磁性層66ではCo−Fe−B合金を用いており、自由層68ではCo−Fe−B合金を用いている。これに限らず、Fe、Co等のCo、NiおよびFeの少なくともいずれかを主成分とする強磁性膜であればよく、これらを積層した強磁性膜であってもよい。
また、トンネル絶縁層である非磁性層67は、MgO膜からなっている。なお、トンネル絶縁層である非磁性層67はこれに限定されず、他の金属の酸化膜であるAl2O3やHfO2、Ta2O5、MgAl2O4等であってもよく、酸化物に限らず、窒化物や弗化物であってもよい。
固着層70において強磁性層64の磁化を固着する反強磁性層63は、Ir−Mn合金膜からなっている。なお、反強磁性層層001cはIr−Mn合金膜に限定されず、Pt−Mn合金、Fe−Mn合金、Ni−Mn合金等の反強磁性膜であればよく、同様な効果を得ることが可能である。
固着層70における非磁性層65は、Ru膜からなっている。なお、非磁性層65はRu膜に限定されず、Rt、Rb等の主に白金族からなる遷移金属の非磁性膜であればよく、同様な効果を得ることが可能である。
下部電極層62および上部電極層69は、各々、Ta(タンタル)膜からなっている。なお、下部電極層62および上部電極層69は、各々、例えばRu膜等の他の金属であってもよく、これに限定されない。下部電極層62および上部電極層69は図6に示すそれぞれの金属配線に接続される。金属配線には、各々、Cu(銅)が用いられている。なお、金属配線は、例えばAl(アルミニウム)の他の金属であっても良く、各々、これに限定されない。
次に、本実施の形態1の磁気抵抗効果素子および磁界検出装置の製造方法について説明する。
図6を参照して、磁気抵抗効果素子を構成するそれぞれの金属膜は、基板61上にDC(直流)マグネトロンスパッタリングにより形成される。基板61はSi(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、ガラスなどが用いられる。なお、基板61はこれに限定されず、その他の材料であってもよい。ここでは、予め磁界印加用配線151が磁気抵抗効果素子の直下に形成された基板を用いている。磁気抵抗効果素子の下には、その他の配線やトランジスタ、ダイオード等の電子回路が形成されていてもよい。
まず、基板61上に、DCマグネトロンスパッタリングを用いてTa膜が下部電極層62として形成される。下部電極層62としてのTa膜が形成された後、大気に曝されることなく同一装置内でIr−Mn合金膜が反強磁性層63として形成される。引続き、大気に曝すことなく強磁性層64としてのCo−Fe合金膜が形成され、次に、非磁性層65としてのRu膜、および、強磁性層66としてのCo−Fe−B合金膜が、それぞれ、形成される。引続き、大気に曝すことなくRF(高周波)マグネトロンスパッタリングを用いてMgO膜が非磁性層67として形成された後に、自由層68の強磁性膜としてCo−Fe−B合金膜が形成される。その後に、DCマグネトロンスパッタリングを用いてTa膜が上部電極層69として形成される。
なお、これらの膜を形成する際は、膜面方向に100Oeの磁界が印加される。これによって固着層70を構成するIr−Mn膜とCo−Fe膜、およびCo−Fe−B膜に磁気異方性が付与される。磁気抵抗効果素子1を構成する下部電極層62から上部電極層69までの膜は、全て同一装置内で形成される。非磁性層67であるMgO膜については、DCマグネトロンスパッタリングによりMg膜を形成した後に、酸素を含む酸化雰囲気に曝すことで形成してもよい。
以上の膜の形成は、例えば分子線エピタキシー(MBE)法、各種スパッタ法、化学気相成長(CVD)法、蒸着法、鍍金によって形成されてもよい。
その後に熱処理が実施される。目的は、MgO膜とそれを挟む2層のCo−Fe−B膜の結晶化を促進するとともに、固着層70の膜に磁気異方性を付与するためである。ここでは、固着層70の強磁性層64であるCo−Fe−B膜と強磁性層66であるCo−Fe膜の磁化を飽和するための磁界である10kOeが印加される。磁界印加方向は、磁気抵抗効果素子の成膜時と同様であり、検出用素子101,102の短手方向で且つ参照用素子111,112の長手方向である。熱処理温度は、磁気抵抗効果素子はCo−Fe−B膜を結晶化が可能であり、且つ固着層のIr−Mn膜とCo−Fe膜の間の交換結合が実質的に無くなる、300℃としている。この温度で1時間保持された。
上記の熱処理を経た後、固着層の強磁性層64と66の磁化は、互いに180°異なる方向を向く。つまり、非磁性層65であるRu膜を挟んで対向するCo−Fe合金膜の磁化とCo−Fe−B合金膜の磁化は互いに反対方向を向く。
本実施の形態においては、検出用素子と参照用素子との固着層の磁化方向は同一であるため、熱処理時の印加磁界は同じ方向でよく、一様な磁界を印加することが可能である。
この後、フォトリソグラフィーにより所望のパターンが形成される。積層化された磁気抵抗効果素子を構成する膜が形成された後、フォトレジストにより所望のパターンが形成される。その後、フォトレジストにより形成された所望のパターンをマスクとして、反応性イオンエッチングにより磁気抵抗効果素子を電気的および磁気的に分離することで、磁気抵抗効果素子の形状が得られる。ここでの磁気抵抗効果素子は前述のように角丸長方形である。この際、検出用素子101,102の長手方向は、積層膜における固着層70の形成時の磁界印加方向と直交する方向であり、参照用素子111,112の長手方向は、積層膜における固着層70の形成時の磁界印加方向と同じ方向である。
なお、検出用磁気抵抗効果素子および参照用磁気抵抗効果素子は、同一のプロセスで同一基板上に同時に形成することが望ましく、これらのパターン形成は、電子線リソグラフィー、集束イオンビーム、イオンミリングを用いてもよい。
上記のパターン形成により、磁気抵抗効果素子においては、自由層68となる強磁性層であるCo−Fe−B膜の磁化は、形状による反磁界の影響を受け、形状の長手方向を向く。これによって、無磁界において、検出用素子と参照用素子の自由層の磁化は直交する。
この後に、図5に示すように、金属配線51〜58を磁気抵抗効果素子101,102,111,112に接続する。これによって、金属配線55が電源(図示せず)に接続され、金属配線56が接地される。金属配線57と58はそれぞれ電圧を検出する信号検出回路へと接続される。ここでは詳細な説明は省略するが、これにより、本実施の形態の磁気抵抗効果素子を用いた磁界検出装置が形成される。
次に、本実施の形態の磁界検出装置の検出動作について図5を用いて説明する。
金属配線55を介して、電源から、所定の一定の検出電流Isenseが流される。この際、金属配線56は接地されているので、当該電流は、検出用素子101a,101bおよび参照用素子112aを経て、参照用素子112bへと流れる電流と、参照用素子111a、111bおよび検出用素子102aを経て、検出用素子102bへと流れる電流との2つの経路に分かれる。無磁界においては、これらの経路における抵抗はともに4Rmであり、電流は各経路1/2・Isenseとなる。更にこの場合は、2個の検出用素子と2個の参照用素子は4Rmであり、同一の抵抗であることから、金属配線57の電位V2と金属配線58の電位V1は同じ電位となり、両者の電位差(V1−V2)で表される出力電圧は0となる。すなわち、無磁界において0出力が得られる。
以上は、磁界が0の場合の説明であったが、磁界下の状態を考える。ここでは磁界印加用配線151に電流を流していない状態について説明する。
図5に示されるブリッジ回路での出力電圧ΔVは、一定である検出電流Isenseが流された際のV1−V2を検出することで得られ、以下の式(2)で表される。
ΔV=Isense・ΔR/2・H/Hk (2)
すなわち、磁界に対して線形の出力信号が得られる。この出力信号を磁界に換算することで、磁界Hの検出が可能となる。なお、Hc≦Hkであることから、上記の出力信号V1−V2は、|H|≦Hcの領域において得られる。|H|≧Hcの領域においては、2個の参照用素子の抵抗の和は、2Rmから2(Rm+ΔR)若しくは2(Rm−ΔR)へと変化することで、不連続な出力信号となる。また、一旦、その抵抗状態になると、磁界印加用配線151の電流を用いない限り、2個の参照用抵抗による2Rmの抵抗は得られない。
以上から、磁界印加用配線151に電流を流していない状態においては、参照用素子のHcが磁界検出装置の動作領域に制約を与えることとなる。
次に、磁界印加用配線151に電流を流した場合を考える。
磁界印加用配線151は、参照用素子111a、112aと、参照用素子111b、112bのそれぞれに対し、同時に磁界Hbiasを印加することが可能である。参照用素子111a、112aと、参照用素子111b、112bとのそれぞれの直下における電流の向きは逆方向となっている。このため、それぞれの素子に印加される磁界Hbiasは、参照用素子111aおよび112aでは紙面左向き、参照用素子111bおよび112bでは紙面右向きとなる。
この電流Ibiasによって、磁界Hbiasが発生するとした場合、参照用素子111aおよび111bを直列に接続した外部磁界に対する抵抗変化は、図7に示すようになる。図7を参照して、参照用素子111aおよび111bはそれぞれ、図4に示した特性を有しているが、ここでは外部磁界H以外に一定磁界のHbiasが印加されている。これにより、参照用素子111aでは、ヒステリシス全体がHbias分だけ正の方向へシフトする。これによって単体の抵抗は、H≧−Hc−Hbiasにおいて、Rm−ΔR/2で安定化する。参照用素子111bでは、ヒステリシス全体がHbias分だけ負の方向へとシフトする。これによって単体の抵抗は、H≦Hc+Hbiasにおいて、Rm+ΔR/2で安定化する。すなわち、|H|≦Hc+Hbiasの領域で2個が直列接続された検出用素子の抵抗の中点である2Rmを得ることが可能である。前述したとおり、Hbiasがない場合は|H|≧Hcの領域であったことから、参照用素子が機能する領域を2Hbias分、大きくすることが可能である。
図5に示される構成で、磁界印加用配線151に電流を流した場合の出力信号(V1−V2)を、図8に示す。参照用素子の抵抗値が検出用素子の中点となる抵抗値を示すことから、無磁界において正確に0出力となる特性が得られ、|H|≧Hkの領域において、外部磁界Hに対して線形の出力信号(V1−V2)が得られる。ここでは、Hc+Hbias≧HkとなるHbiasを用いていることから、参照用素子のHcの制約を受けることなく動作することが可能である。
なお、以上は一定電流を用いた検出動作を例に説明したが、一定電圧であってもよい。この場合は金属配線55を一定電圧Vccとして動作する。出力信号ΔVは、以下の式(3)で表される。
ΔV=−Vcc・ΔR/2・H/Hk/(4Rm+ΔR・H/Hk) (3)
上記の一定電圧の動作においては、製造工程や温度に起因して、磁気抵抗効果素子の抵抗が変化した場合でも、抵抗の相対関係により出力信号が決定される。ここでの磁気抵抗硬効果素子は全て同一工程で形成しているため、製造工程や温度に起因した抵抗変動の影響は、全ての素子で同じように受けることとなる。このため、製造工程や温度に起因した抵抗変動の影響を抑制することが可能となる。
なお、ここでは、磁界印加用配線151は参照用素子の直下に配置する例を示したが、参照用素子の自由層の膜面方向に平行で、かつ、長手方向に沿った方向(磁化容易軸方向)に磁界を印加できればよく、参照用素子の直上に配置されてもよい。この場合は、参照用素子に印加される磁界方向が、前述の説明に対して逆向きとなるが、結果的に、同様な効果が得られる。また、電流Ibiasを流す向きを反対にすれば、前述の説明と同じ向きとなるので、そのようにしてもよい。
本実施の形態によれば、検出用素子と、それと同面積で磁化が平行状態と反平行状態の組合せによる参照用素子とを用いていることによって、検出用素子の中点の抵抗を得ることが可能である。更に参照用素子の平行状態と反平行状態を同時に形成し、且つ磁界検出時の各状態を安定化するための磁界印加用配線を備えているため、安定した0点出力が得られ、動作可能な磁界範囲が大きく、参照層における自由層磁化の反転を防ぐことが可能である。
これらは、製造工程を複雑化することなく実現することが可能である。
以上のように、本実施の形態1によれば、外部磁界に応じた出力信号を出力する磁界検出装置であって、基板61上に設けられた4個の磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102と、基板61上に設けられた4個の参照用磁気抵抗効果素子111,112と、参照用磁気抵抗効果素子111,112の自由層の磁化容易軸方向にバイアス磁界Hbiasを同時に印加する磁界印加用配線151とを備え、参照用磁気抵抗効果素子111,112および磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102は、それぞれ、反強磁性層63と反強磁性層63により磁化方向が固定された強磁性層64とからなる固着層70と、外部磁界Hによって磁化方向が変化する自由層68とが積層された構造を有し、参照用磁気抵抗効果素子111,112は、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが平行の状態のものと反平行の状態のものとを含んでおり、磁界印加用配線151が印加する磁界の方向は、参照用磁気抵抗効果素子111,112のうち、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが平行の状態のものに対する磁界と、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが反平行の状態のものに対する磁界とで、互いに180°異なり、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102は、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが異なる、磁界検出装置であるので、バイアス磁界の印加により、一定抵抗として用いる参照用磁気抵抗効果素子111,112の抵抗値を安定化させ、かつ、バイアス磁界Hbiasを印加した分だけ動作磁界を拡大させることができるので、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102の抵抗値の中点を安定して得ることが可能であり、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102における0点出力の制御を容易にして、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102の安定した0点が得られ、検出誤差を抑制することができる。これにより、温度や製造工程に起因した磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動を抑制し、製造も容易で、安定した出力信号を示す磁界検出装置を実現することが可能である。
また、参照用磁気抵抗効果素子111,112と磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102とは、同一面積で、長手方向が互いに90°異なる向きに配置され、その個数は互いに等しいので、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102と参照用磁気抵抗効果素子111,112を同時に形成することを可能にするとともに、同一の抵抗値を得ることができる。
また、磁界印加用配線151は、同一平面内で180°折り返した1本の配線であるので、参照用磁気抵抗効果素子111,112の自由層68の磁化の制御を容易にすることができる。
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2における磁界検出装置を示す上面図である。ここに示す磁界検出装置は2個の検出用素子101a、101bと2個の参照用素子111a、111bを有している。これらの素子101a,101b,111a,111bは、実施の形態1で説明した素子101a,111a等と同じであり、詳細な説明は省略する。尚、本実施の形態においても、これらの素子101,111は、上面から見た場合に、それぞれ、同面積かつ同形状の角丸長方形を有しており、検出用素子101と参照用素子111とで、長手方向が90°異なるように配置されている。また、検出用素子101の個数と、参照用素子111の個数とは、共に2個で、同数となっている。
検出用素子101aと101bは、金属配線51により直列接続されている。また、参照用素子111aと111bは、金属配線53により直列接続されている。更に、検出用素子101bと参照用素子111aが金属配線57により接続されている。検出用素子101aは、金属配線55により電源(図示せず)に接続されており、参照用素子111bは金属配線56により接地されている。金属配線57は電位を検出するために外部に設けられた信号検出回路へと接続されている。
実施の形態1と同様に、参照用素子111a、111bの直下には、電気的に絶縁された磁界印加用配線151が配置されており、参照用素子111a,111bの長手方向に直交する方向に配置されている。この磁界印加用配線151は、電流を流した場合に、参照用素子111aでは紙面左向きに、参照111bには紙面右向きに、同時に磁界を印加することが可能であるように、180°折り返されて配置されている。すなわち、磁界印加用配線151は、2個の参照用素子111a、111bのそれぞれの自由層の磁化容易軸方向に、互いに180°異なる方向の磁界を同時に印加することができる。この磁界印加用配線151の磁界によって、2個の参照用素子111a、111bの抵抗値は、実施の形態1と同様に、それぞれRm+ΔR/2とRm−ΔR/2で保たれる。
なお、検出用素子101a,101bおよび参照用素子111a,111bの断面構造や形成方法は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
次に、本実施の形態の磁界検出装置の検出動作について図9を用いて説明する。
金属配線55を一定電圧Vccに保つ。この際、金属配線56は接地されているので、金属配線57における電位Voutは、以下の式(4)で表される。
Vout=Vcc・2Rm/(4Rm+ΔR・H/Hk) (4)
これにより、無磁界においては、Vcc/2の出力信号が得られ、外部から磁界Hが印加された場合は、磁界Hに依存した電圧が得られる。
実施の形態1と同様に、磁界印加用配線151に電流を流した場合は、参照用素子111a、111bに対し、同時に逆方向のバイアス磁界Hbiasが印加される。図7に示したように、|H|≦Hc+Hbiasの領域で、直列接続された2個の検出用素子101a,101bの抵抗値の中点である2Rmを得ることが可能である。本実施の形態においても、Hc+Hbias≧HkとなるHbiasを用いていることで、参照用素子のHcの制約を受けることなく動作することが可能となる。
なお、ここでは、磁界印加用配線151は、参照用素子111a,111bの直下に配置する例を示したが、参照用素子111a,111bの自由層の膜面方向に平行で、かつ、長手方向に磁界を印加できればよく、参照用素子111a,111bの直上に配置されてもよい。この場合は、参照用素子11a,111bに印加される磁界方向が、前述の説明に対して逆向きとなるが、同様な効果が得られる。また、電流Ibiasを流す向きを逆向きとしてもよい。
本実施の形態の構成では、実施の形態1と同様に、製造工程や温度に起因して、磁気抵抗効果素子の抵抗値が変化した場合でも、その影響を抑制することが可能となる。
本実施の形態によれば、検出用素子101a,101bと、それと同面積で磁化が平行状態と反平行状態の組合せによる参照用素子111a、111bとを用いていることによって、検出用素子101a、101bの中点の抵抗値を得ることが可能である。更に、参照用素子111a、111bの平行状態と反平行状態を同時に形成し、且つ、磁界検出時の各状態を安定化するための磁界印加用配線151を備えているため、動作可能な磁界範囲が大きく、参照用素子111a,111bにおける自由層の磁化の反転を防ぐことが可能である。
これらは、製造工程を複雑化することなく実現することが可能である。
以上のように、本実施の形態によれば、外部磁界に応じた出力信号を出力する磁界検出装置であって、基板61上に設けられた2個の磁界検出用磁気抵抗効果素子101a,101bと、基板61上に設けられた2個の参照用磁気抵抗効果素子111a,111bと、参照用磁気抵抗効果素子111a,111bの自由層の磁化容易軸方向にバイアス磁界Hbiasを同時に印加する磁界印加用配線151とを備え、参照用磁気抵抗効果素子111a,111bおよび磁界検出用磁気抵抗効果素子101a,101bは、それぞれ、反強磁性層63と反強磁性層63により磁化方向が固定された強磁性層64とからなる固着層70と、外部磁界Hによって磁化方向が変化する自由層68とが積層された構造を有し、参照用磁気抵抗効果素子111,112は、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが平行の状態のものと反平行の状態のものとを含んでおり、磁界印加用配線151が印加する磁界の方向は、参照用磁気抵抗効果素子111a,111bのうち、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが平行の状態のものに対する磁界と、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが反平行の状態のものに対する磁界とで、互いに180°異なり、磁界検出用磁気抵抗効果素子101a,101bは、固着層70の磁化方向と自由層68の無磁界における磁化方向とが異なるので、一定抵抗として用いる参照用磁気抵抗効果素子111の抵抗値を安定化し、磁界検出用磁気抵抗効果素子101の抵抗値の中点を安定して得ることが可能であり、磁界検出用磁気抵抗効果素子101における0点出力の制御を容易にして、磁界検出用磁気抵抗効果素子101の安定した0点が得られ、検出誤差を抑制することができる。これにより、温度や製造工程に起因した磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動を抑制し、製造も容易で、安定した出力信号を示す磁界検出装置を実現することが可能である。
また、参照用磁気抵抗効果素子111a,111bと磁界検出用磁気抵抗効果素子101a,101bとは、同一面積で、長手方向が互いに90°異なる向きに配置され、その個数は互いに等しいので、磁界検出用磁気抵抗効果素子101a,101bと参照用磁気抵抗効果素子111a,111bを同時に形成することを可能にするとともに、同一の抵抗値を得ることができる。
また、磁界印加用配線151は、同一平面内で180°折り返した1本の配線であるので、参照用磁気抵抗効果素子111a,111bの自由層68の磁化の制御を容易にすることができる。
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3における磁界検出装置を示す上面図である。本実施の形態の磁界検出装置は、図5に示した実施の形態1の磁界検出装置における検出用素子101a,101b、102a、102bおよび参照用素子111a、111b、112a、112bを、それぞれ同数で並列接続したものである。
すなわち、具体的には、図5に示した実施の形態1の磁界検出装置における検出用素子101a,101bからなる直列体の代わりに、図9では、検出用素子101aと101bとが金属配線51で接続された直列体と、検出用素子101a’と101b’とが金属配線51’で接続された直列体とが、互いに並列に接続されたブリッジ回路が設けられている。
同様に、図5に示した実施の形態1の磁界検出装置における検出用素子102a、102bからなる直列体の代わりに、図9では、検出用素子102aと102bとが金属配線52で接続された直列体と、検出用素子102a’と102b’とが金属配線52’で接続された直列体とが、互いに並列に接続されたブリッジ回路が設けられている。
同様に、図5に示した実施の形態1の磁界検出装置における参照用素子111a,111bからなる直列体の代わりに、図9では、参照用素子111aと111bとが金属配線53で接続された直列体と、参照用素子111a’と111b’とが金属配線53’で接続された直列体とが、互いに並列に接続されたブリッジ回路が設けられている。
同様に、図5に示した実施の形態1の磁界検出装置における参照用素子112a,112bからなる直列体の代わりに、図9では、参照用素子112aと112bとが金属配線54で接続された直列体と、参照用素子112a’と112b’とが金属配線54’で接続された直列体とが、互いに並列に接続されたブリッジ回路が設けられている。
その他の動作や構成は実施の形態1と同じであるため、説明の詳細は省略する。
本実施の形態においては、検出用素子101,102と参照用素子111,112とも、素子数が実施の形態1の2倍となっており(すなわち、実施の形態1では検出用素子がのべ4個、参照用素子がのべ4個に対し、実施の形態3では、検出用素子がのべ8個、参照用素子がのべ8個設けられている)、素子間の特性ばらつきがたとえ発生した場合にも、素子の個数が多い分、その特性を平均化することが可能である。
また、図示しないが、4個の素子をブリッジ回路にせずに、4個ずつすべて直列接続した場合や、直列接続と並列接続とを組み合わせた場合でも、同様な効果が得られる。これらの接続は、抵抗の調整においても有効である。また、ここでは、実施の形態1で示した構成に適用させた例を説明したが、実施の形態2の構成に適用させても、有効なことは明らかである。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。さらに、本実施の形態においては、検出用素子101,102と参照用素子111,112とも、素子数が実施の形態1の2倍にしたので、素子間の特性ばらつきがたとえ発生した場合にも、素子の個数が多い分、その特性を平均化することが可能である。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4について、図11を参照して説明する。図11に示される構成は、磁界印加用配線151を除いては、実施の形態1と同じ構成である。本実施の形態では、図11に示すように、磁界印加用配線151Aが、検出用素子101a,101bおよび102a、102bの真下にも延在し、その部分においては、それぞれの検出用素子の長手方向と直交する方向を向いている。
すなわち、本実施の形態においては、磁界印加用配線151Aが、すべての素子の真下を通り、かつ、すべての素子の長手方向と直交する方向に配置されている。具体的には、磁界印加用配線151Aが、まず、参照用素子111aの真下を通り、その後、90°折り曲げられ、検出用素子101aの真下を通り、その後、コの字形状になるように、2回、90°に折り曲げられ、検出用素子101bの真下を通り、その後、90°折り曲げられて、参照用素子112aの真下を通り、その後、コの字形状になるように、2回、90°に折り曲げられ、参照用素子112bの真下を通り、その後、90°折り曲げられ、検出用素子102bの真下を通り、その後、コの字形状になるように、2回、90°に折り曲げられ、検出用素子102aの真下を通り、その後、90°折り曲げられて、参照用素子111bの真下を通っている。
この実施の形態に依れば、4個の参照用素子111,112の長手方向に印加される磁界Hbiasが、同時に、4個の検出用素子101,102の長手方向に印加される。すなわち、磁界印加用配線151Aにより、4個の参照用素子111,112の自由層の磁化容易軸方向と、4個の検出用素子101,102の自由層の磁化容易軸方向とに、同時に、磁界Hbiasが印加される。この磁界Hbiasによって、検出用素子101,102の自由層において、長手方向の磁気異方性が追加的に付与される。これによって、ヒステリシスの発生を抑制することが可能となる。また、この自由層の見掛け上の異方性磁界は以下の式(5)となる。
Hk’=Hk+Hbias (5)
すなわち、参照用素子111,112の抵抗値の安定化を図りながら、同時に、検出用素子101,102の感度や動作磁界の制御が可能となる。
図11では、配線151Aによる磁界Hbiasは、検出用素子101aと102aに対しては紙面上向きに、検出用素子101bと102bでは紙面下向きというように、互いに逆向きになっている。これについては、限定されるものではなく、共に同じ向きに磁界が印加される配置であってもよい。
但し、磁界印加用配線151Aによる磁界Hbiasが、図11に示すように、検出用素子101a、102aと検出用素子101b、102bとで逆向きになっている構成を用いた場合には、膜形成や熱処理時等の製造工程に起因して発生し得る、固着層の磁化が傾きの影響を抑制することが可能である。外部磁界Hが印加された場合に、検出用素子101a、102aと101b、102bでは、逆方向に自由層磁化が回転する。仮に固着層磁化が想定(長手方向に対して直交する向き)に対して傾きが発生した場合、無磁界での自由層と固着層との磁化のなす角の絶対値は、それぞれで増加と減少と逆方向に作用するため、影響を相殺することが可能となる。
本実施の形態によれば、参照用素子の抵抗値の安定化を図りながら、同時に検出用素子の自由層のヒステリシスの抑制が可能であり、感度や動作磁界の制御も可能である。更に固着層の磁化が傾いた場合の影響も抑制することが可能である。
なお、ここでは、磁界印加用配線151Aは参照用素子の直下に配置する例を示したが、参照用素子の自由層の膜面方向に平行で、長手方向に沿った方向に磁界を印加できればよく、参照用素子の直上に配置されてもよい。この場合は、参照用素子に印加される磁界方向が、前述の説明に対して逆向きとなるが、結果的に同様な効果が得られる。また、電流Ibiasを流す向きを逆向きにしてもよい。
ここでの動作は、磁界印加用配線151Aの延在方向が異なるだけであり、図11では、実施の形態1の構成に適用させた例を示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、本実施の形態は、実施の形態2や実施の形態3にも適用可能であることは明らかである。図12には、例として、実施の形態2で示した磁界検出装置への適用例を示す。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜3と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、磁界印加用配線151Aおよび151Bは、参照用磁気抵抗効果素子111,112と同時に、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102にもバイアス磁界を印加するので、参照用素子111,112の自由層68の磁化の制御を容易にすることができる。
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5における電流検出装置を示す上面図である。図13の構成は、図5に示した実施の形態1と基本的に同じ構成の磁界検出器を用いているが、図13では、検出用素子101a、101bと、検出用素子102a、102bとが、それぞれ、互いに隣接する位置に配置されている。本発明の実施の形態5における電流検出装置では、これらの検出用素子101、102の直下には、これらの検出用素子とは電気的に絶縁された、検出用測定対象となる電流Ilineが流れる金属配線152が設けられている。この金属配線152は、検出用素子101,102の長手方向に沿った方向に配置されている。
ここでは、測定対象となる金属配線152に電流Ilineが流れた場合に、この電流の作用により、金属配線152と垂直な方向に環状磁界が発生する。この磁界Hlineの大きさは次式(6)で表される。
Hline=k・Iline/r (6)
上記式(6)においてkは比例定数であり、rは金属配線152から検出用素子101または102の距離である。検出用素子と金属配線152との距離rを測定しておけば、比例定数kは既知であるので、磁界Hlineを測定することにより電流Ilineを測定することが可能である。
スピンバルブ型素子を用いた磁界検出器は、固着層の磁化方向に沿った磁界成分を検出する。このため、磁界方向は常に同方向である磁界検出に適している。配線の方向と位置が固定された電流によって発生する磁界は、常に同方向である。このため、実施の形態1で示した磁界検出装置を用いた本実施の形態に係る電流検出装置は、磁界を検出することによる電流の検出に適している。
なお、図13では、実施の形態1の構成に本実施の形態を適用させた電流検出装置を示したが、この場合に限らず、ここでの動作は磁界により電流を検出していることから、実施の形態1から4で説明したすべての磁界検出装置への適用が可能である。図15には、例として、図9に示した実施の形態2で示した磁界検出装置の適用例を示す。図15では、図9の構成に、測定対象となる金属配線152が追加されている。
なお、本実施の形態では、図13および図15で、磁界印加用配線151および測定対象となる金属配線152は、それぞれ参照用素子と検出用素子の直下に配置する例を示したが、これらの素子の直上に配置されてもよい。この場合は、素子に印加される磁界方向が、前述の説明に対して逆向きとなるが、同様な効果が得られる。
また、本実施の形態によれば、実施の形態1で説明した効果を利用し、半導体集積回路の配線における電流の検出が可能となる。半導体集積回路に適用した場合、検出用素子と被測定物である配線152との距離は、層間絶縁膜によって決定されるため、磁気検出用素子と被測定物との距離を小さくすることが可能であり、結果として高感度な電流の検出が可能である。
図14に、これを適用した半導体集積回路の例を示す。図14の半導体集積回路においては、電力を供給する電源供給部202に、メモリ部204と演算回路部205とが、電源線206,207により接続され、電力が供給されている。これらの電源線206,207には、実施の形態1〜4で示した磁界検出装置で構成される電流検出装置201が設けられている。電流検出装置201は、メモリ部204と演算回路部205の電源線206,207の電流を常時検出し、検出した電流値を、制御回路203へとフィードバックする。
本構成によれば、半導体集積回路に影響を与えず、高精度且つ高感度な電流の検出を実現することが可能となる。この結果、環境に依存した集積回路の動作状況をモニタリングおよびフィードバックを実施することで、半導体集積回路の低消費電力化が可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1〜4で示した磁界検出装置を用いた電流検出装置としたので、実施の形態1〜4と同様の効果が得られるとともに、実施の形態1〜4の磁界検出装置を応用することで、安定した電流検出装置を実現することができる。また、そのような電流検出器を備えた半導体集積回路としたので、半導体集積回路の低消費電力化を実現するとともに、磁界検出装置、および、電流検出装置の機能の集積化も実現することができる。
実施の形態6.
本発明の実施の形態6における磁界検出装置の上面図を図16に示す。図16に示される構成は、磁界印加用の配線151Cを除いては、実施の形態1と同じ構成によるものである。ここでは、磁界印加用配線151Cが、参照用素子111、112だけでなく、検出用素子101、102の直下にも延在し、検出用素子101、102においては、それぞれの素子の長手方向に沿った方向を向いて磁界印加用配線151Cが配置されている。
磁界印加用配線151Cは、検出用素子101b、101aの真下を通り、その後、コの字形状になるように、2回、90°に折り曲げられて、参照用素子111a、112aの真下を通り、その後、コの字形状になるように、2回、90°に折り曲げられて、参照用素子112b、検出用素子102b、102a、参照用素子111bの順に、それらの真下を通っている。すなわち、磁界印加用配線151Cは、同一平面内で180°に2回折り返した1本の配線である。
この実施の形態に依れば、参照用素子111、112の長手方向(参照用素子の自由層の磁化容易軸方向)に印加される磁界Hbiasが、検出用素子101、102の長手方向に直交する方向(検出用素子の自由層の磁化困難軸方向)に同時に印加される。この際、磁界印加用配線151による磁界Hbiasは、検出用素子101aと102a、101bと102bに対してすべて紙面右向きとなっている。この磁界Hbiasによって、検出用素子101,102の磁界応答性を磁界Hbias分だけ、オフセットすることが可能である。すなわち、参照用素子111,112の抵抗値の安定化を図りながら、同時に検出用素子101,102の動作領域を変更することが可能である。
磁気抵抗効果素子においては、製造工程に起因して、固着層の磁化から発生する漏れ磁界や、トンネル絶縁膜を介した磁気的な交換結合等、固着層磁化と自由層磁化に相互作用が発生し、自由層の磁界応答性にオフセットが発生し得る。本実施の形態を用いれば、検出用素子のオフセットの影響を、磁界Hbiasを用いて補正することが可能となる。これを図17に示す。図17に示すように、磁界Hbiasにより、検出用素子101、102の自由層に発生した磁界応答性のオフセットが補正され、安定した0点出力が得られることがわかる。なお、参照用素子111,112におけるオフセットの影響については、実施の形態1の図7で説明した効果と同様な理由により抑制することが可能である。
図18に、本実施の形態における動作例を示す。ここでは、参照用素子が検出用素子の中点の抵抗を示す特徴を利用し、検出用素子の磁界応答性のオフセットを補正する手法について説明する。
先ず、ステップS1で、無磁界において、配線151Cに、所定の一定の電流Ibiasを流し、出力信号V1−V2を検出する。次に、ステップS2で、V1−V2が0か否かを判定する。V1−V2が0とならない場合は、ステップS6で、電流Ibiasを変更し、ステップS1、S2、S6の処理を繰り返し、V1−V2が0となる電流Ibiasを得る。ステップS2の判定で、V1−V2=0と判定された場合には、ステップS3に進み、電流Ibiasを、磁界検出装置内の記憶装置、若しくは、外部の記憶装置に記憶する。このV1−V2=0となる電流Ibiasを流している状態のときは、検出用素子が中点の抵抗値となる磁界Hbiasが印加されており、換言すれば、検出用素子の磁界応答性のオフセットHOSは補正されている。これを図9に示す。続いて、ステップS4に進み、先のステップS2で得たV1−V2=0となる電流Ibiasを配線151に流しながら、磁界Hを印加した状態の磁界下において、出力信号V1−V2を検出する。次に、ステップS5で、検出した出力信号V1−V2を、磁界に換算して、磁界Hの検出を行う。
もう一つの動作例を図19に示す。ここでは、磁気平衡方式による動作において、検出用素子の磁界応答性のオフセットを補正する手法を説明する。
先ず、ステップS1で、無磁界において、配線151Cに、所定の一定の電流Ibiasを流し、出力信号V1−V2を検出する。ステップS2で、これが0となるか判定し、0とならない場合は、ステップS6で、電流Ibiasを変更し、再度、ステップS1に戻って、ステップS1,S2,S6の処理を繰り返し、V1−V2が0となる電流Ibiasを得る。こうして得た電流Ibiasの値を、ステップS3で、磁界検出装置内の記憶装置、若しくは、外部の記憶装置に記憶する。この状態で、検出用素子には、中点の抵抗となる磁界Hbiasが印加されており、換言すれば、検出用素子の磁界応答性のオフセットHOSは補正されている。ここまでは、図18で説明した動作と同様である。
この後、図19では、続いて、磁界Hを印加した磁界下の状態において、電流Ibiasを変更し、V1−V2=0となる電流Ibiasを得る。磁界下においてV1−V2が0となる電流Ibiasは、外部の磁界と検出用素子の磁界応答性のオフセットを相殺して、検出用素子の抵抗に中点とする電流である。
すなわち、図19では、ステップS11で、磁界Hを印加した磁界下の状態において、配線151に、上記の所定の電流Ibiasを流し、出力信号V1−V2を検出する。ステップS12で、これが0となるか判定し、0とならない場合は、ステップS15で、電流Ibiasを変更し、再度、ステップS11に戻って、ステップS11,S12,S15の処理を繰り返し、ステップS13で、V1−V2が0となる電流Ibiasを得る。こうして得られた電流Ibiasを、先のステップS3で記憶したIbiasと比較することで、検出用素子の磁界応答性のオフセットの影響を除外する。こうして最終的に得られた配線151の電流値Ibiasを磁界に換算することで、外部磁界Hを検出することが可能である。
以上の構成と動作を用いれば、図18で説明した動作による効果に加え、磁気平衡方式を用いていることから、検出用素子の特性は0点を安定して示せばよく、必ずしも線形である必要がない。
本実施の形態によれば、磁界検出装置の0点を安定して得ることが可能となり、温度や製造工程に起因した素子の抵抗変化や、磁界応答性のオフセットによる影響を抑制した、安定した動作の磁界検出装置を実現可能とする。
なお、ここでは、磁界印加用配線151Cは、参照用素子111、112の直下に配置する例を示したが、参照用素子111、112の自由層の膜面方向に平行で長手方向に沿った方向に磁界を印加できればよく、参照用素子111、112の直上に配置されてもよい。この場合は、参照用素子111、112に印加される磁界方向が、前述の説明に対して逆向きとなるが、結果的に同様な効果が得られる。また、電流Ibiasの流れる向きを逆向きにしてもよい。
ここでの動作は、磁界印加用配線151Cの延在方向が異なるだけであることから、実施の形態1から3で説明したすべての磁界検出装置を変形した適用が可能である。図20には、例として、図9に示した実施の形態2による磁界検出装置に、本実施の形態を適用させた変形例を示す。図20においては、磁界印加用配線151が、検出用素子101a、101b、参照用素子111a、111bの順に、それらの素子の真下を通っている。この場合は、図18および図19のフローチャートで説明した動作において、V1−V2が0となるIbiasを、Voutが1/2・VccとなるIbiasとすることで、同様な効果が得られる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1から3と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、磁界印加用配線151Cが、参照用磁気抵抗効果素子111,112と同時に、磁界検出用磁気抵抗効果素子101,102にもバイアス磁界を印加するようにしたので、参照用素子111,112の自由層68の磁化の制御を容易にすることができる。
なお、上記の実施の形態1〜6においては、磁界検出装置およびこれを用いた電流検出装置および半導体集積回路について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、被測定物が磁界を発する検出装置であれば類似する他の装置に広く適用することができる。
また、磁気抵抗効果素子にトンネル磁気抵抗効果素子を用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく、巨大磁気抵抗効果素子など、一方の磁化方向が固定された強磁性層を含むその他の磁気抵抗効果素子であってもよい。
また、磁界印加用配線151の折り曲げ角度を90°として説明したが、その場合に限らず、要は、同一平面内で180°折り返した1本の配線であればよいため、折り曲げ角度は、任意の角度で、折り曲げ回数も何回でもよい。あるいは、角度を設けずに、U字型等に曲折させてもよい。