以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものであって、本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要素であるとは限らない。
1.第1実施形態
1.1.熱サイクル装置
本実施形態の熱サイクル装置100は、装着部10と、温度勾配形成部20と、駆動機構30と、送風機構60とを含む。より詳しくは、本実施形態の熱サイクル装置100は、反応液11と、反応液11とは比重が異なり、かつ、反応液11とは混和しない液体12とが充填され、反応液11が対向する内壁に沿って移動する流路13を含む反応容器15を装着する装着部10と、熱を伝導する熱伝導体22を含み、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13に対して、反応液11が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部20と、装着部10及び温度勾配形成部20を、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13を反応液11が移動する方向に対して垂直な成分を有する回転軸Rの周りに回転させる駆動機構30と、少なくとも熱伝導体22に送風する送風機構60と、を含む。そして、本実施形態の熱サイクル装置100は、温度勾配形成部20は、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13の第1領域131を第1温度に加熱する第1熱伝導体221と、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13の第2領域132を第1温度よりも高い第2温度に加熱する第2熱伝導体222と、を含み、送風機構60は、少なくとも第1熱伝導体221に送風する。
図1及び図2は、本実施形態に係る熱サイクル装置100の要部を模式的に示す図である。
1.1.1.反応容器
まず、熱サイクル装置100に装着される反応容器15について説明する。反応容器15は、反応液11と、反応液11とは比重が異なり、かつ、反応液11とは混和しない液体12(以下、「液体12」という。)と、が充填される。反応容器15は、反応液11が対向する内壁に沿って移動する流路13を含む。
液体12は、反応液11よりも比重が小さく、かつ、反応液11とは混和しない液体である。液体12としては、例えば、反応液11とは混和せず、かつ、反応液11よりも比重が大きい液体を採用してもよい。図1及び図2に示される例では、反応容器15は、流路13及び封止体14を含む。流路13には、反応液11と、液体12とが充填され、封止体14によって封止されている。
流路13は、対向する内壁に沿って反応液11が移動するように形成されている。ここで、流路13の「対向する内壁」とは、流路13の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域を意味する。「沿って」とは、反応液11と流路13の壁面との距離が近い状態を意味し、反応液11が流路13の壁面に接触する状態を含む。したがって、「対向する内壁に沿って反応液11が移動する」とは、「流路13の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域の両方に対して距離が近い状態で、反応液11が移動する」ことを意味する。換言すれば、流路13の対向する2つ内壁間の距離は、反応液11が該内壁に沿って移動する程度の距離である。
反応容器15の流路13がこのような形状であると、流路13内を反応液11が移動する方向を規制できるので、流路13内を反応液11が移動する経路をある程度規定できる。これにより、流路13内を反応液11が移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。したがって、流路13の対向する2つ内壁間の距離は、流路13内を反応液11が移動する時間のバラツキによって生じる、反応液11に対して施される熱サイクル条件のバラツキが、所望の精度を満たせる程度、すなわち、反応の結果が所望の精度を満たせる程度であることが好ましい。より具体的には、流路13の対向する2つの内壁間の反応液11が移動する方向に対して垂直な方向における距離が、反応液11の液滴が2つ以上入らない程度であることが望ましい。
図1及び図2に示される例では、反応容器15の外形は円柱状であり、該円柱の中心軸に沿う方向(図1及び図2においては上下方向)を長手方向とする流路13が形成されている。流路13の形状は、流路13の長手方向に対して垂直な方向の断面、すなわち流路13のある領域における反応液11が移動する方向に対して垂直な断面(これを流路13の「断面」とする)が円形となる円柱状である。したがって、反応容器15においては、流路13の対向する内壁は、流路13の断面の中心を挟んで対向する流路13の壁面上の2点を含む領域である。また、「反応液11が移動する移動方向」は、流路13の長手方向となる。
なお、流路13の断面の形状は円形に限らず、多角形や楕円形など、対向する内壁に沿って反応液11が移動できる限り任意である。例えば、反応容器15の流路13の断面が多角形の場合には、「対向する内壁」は、流路13に内接する断面が円形の流路を仮定した場合に、該流路の対向する内壁であるものとする。すなわち、流路13に内接する、断面が円形の仮想流路の対向する内壁に沿って反応液11が移動するように流路13が形成されていればよい。これにより、流路13の断面が多角形の場合にも、反応液11が移動する経路をある程度規定できる。したがって、反応液11が移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。さらに、流路13の断面の形状は、長手方向において必ずしも一定でなくてもよく、流路13は、例えば、円錐台形などのテーパー形状であってもよいしテーパー形状の部分を有していてもよい。また、流路13の形状及び反応容器15の形状は、反応容器15の製造上の利点を考慮して設計されうる。すなわち、例えば、反応容器15の材質を高分子とし、射出成型によって反応容器15を製造する場合には、射出成型の型からの取り出し(型抜き)が容易となるように流路13の形状及び反応容器15の形状を設計することができる。
流路13は、第1領域131と、第2領域132とを有する。第1領域131及び第2領域132は、熱サイクル装置100の装着部10に反応容器15が装着された場合に、互いに異なる温度となるように制御される領域である。本実施形態では、第1熱伝導体221に熱的に接している領域を第1領域131とし、第2熱伝導体222に熱的に接している領域を第2領域132とする。反応容器15の流路13の第1領域131及び第2領域132は、それぞれ第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に熱的に接触することによって温度制御される。
第1領域131は、流路13の長手方向における一方の端部を含む領域であり、第2領域132は、流路13の長手方向における他方の端部を含む領域である。図1及び図2に示される例では、流路13のうち封止体14に相対的に遠い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第1領域131であり、流路13のうち封止体14に相対的に近い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第2領域132である。
本実施形態に係る熱サイクル装置100は、少なくとも温度勾配形成部20の第1熱伝導体221が反応容器15の流路13の第1領域131を第1温度に加熱し、温度勾配形成部20の第2熱伝導体222が反応容器15の流路13の第2領域132を第2温度に加熱することにより、反応容器15の流路13に対して、反応液11が移動する方向に温度勾配を形成する。
流路13には、液体12と、反応液11とが充填されている。液体12は、反応液11とは混和しない、すなわち混ざり合わない性質であるため、図1及び図2に示されるように、反応液11は液体12の中に液滴の状態で保持されている。反応液11は、液体12よりも比重が大きいため、流路13の重力の作用する方向における最下部の領域に位置している。なお、図1及び図2には、重力の作用する方向を矢印gで示してある。
液体12としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル又はパラフィンオイルを使用できる。反応液11は、反応に必要な成分を含む液体である。反応がPCRである場合には、反応液11には、PCRによって増幅されるDNA(標的核酸)、DNAを増幅するために必要なDNAポリメラーゼ、並びにプライマー等が含まれる。例えば、液体12としてオイルを用いてPCRを行う場合には、反応液11は上記の成分を含む水溶液であることが好ましい。
1.1.2.装着部
本実施形態の熱サイクル装置100は、反応容器15を装着する装着部10を有する。装着部10は、反応容器15を装着する構造である。図1及び図2に示される例では、第1熱伝導体221の一部及び第2熱伝導体222の一部が装着部10を構成している。また、図示しないが、装着部10は、他の構成、例えば反応容器15を装着する際のガイドやスペーサーとなる部材や、反応容器15を固定するための部材を含んで構成されてもよい。図1及び図2の例では、装着部10は、反応容器15を差し込んで装着するスロット構造となっている。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に設けられる装着部10の個数は、特に限定されない。装着部10の数が複数である場合は、複数の反応容器15をそれぞれ装着することができる。なお、本実施形態では装着部10がスロット構造である例を示すが、装着部10は反応容器15を保持できる構造であればよい。例えば、反応容器15の形状に合わせた窪みに反応容器15をはめ込む構造や、反応容器15を挟んで保持する構造を採用してもよい。
1.1.3.温度勾配形成部
本実施形態の熱サイクル装置100の温度勾配形成部20は、装着部10が設けられた第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222を含む。温度勾配形成部20は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13に対して、反応液11が移動する移動方向(本明細書では単に「前記移動方向」と記載する場合がある。)に温度勾配を形成する構成である。ここで、「温度勾配を形成する」とは、所定の方向に沿って温度が変化する状態を形成することを意味する。したがって、「反応液11が移動する移動方向に温度勾配を形成する」とは、反応液11が移動する移動方向に沿って温度が変化する状態を形成することを意味する。「所定の方向に沿って温度が変化する状態」は、例えば、所定の方向に沿って温度が単調に高く又は低くなっていてもよいし、所定の方向に沿って、温度が高くなる変化から低くなる変化へ、又は、低くなる変化から高くなる変化へ、途中で変化していてもよい。図1及び図2に示される例では、温度勾配形成部20は、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222によって構成されている。
1.1.3.1.熱伝導体
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222には、装着部10の少なくとも一部が設けられる。これにより、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、それぞれ反応容器15の流路13の第1領域131及び第2領域132をそれぞれ第1温度及び第2温度となるように制御する。
図1及び図2に示される例では、第1熱伝導体221は、反応容器15の流路13の第1領域131を加熱できる位置に配置されている。また、第2熱伝導体222は、反応容器15の流路13の第2領域132を加熱できる位置に配置されている。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、互いに異なる温度に制御されることができる。この場合、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、互いに熱的な接触が小さい態様で配置されることが好ましい。例えば、第1熱伝導体221と第2熱伝導体222とは互いに離れた位置(物理的に接触しない位置)に設けることが好ましい。また、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、熱サイクル装置200に、断熱性の部材等により熱的な干渉が小さくされた状態で設置されてもよい。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、それぞれ熱を発生させる第1熱源部241及び第2熱源部242を有し、これらによって発生させた熱を反応容器15に伝えることができる。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の形状は、特に限定されない。第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の材質は熱伝導率、保温性、加工しやすさ等の条件を考慮して適宜選択できる。例えば、アルミニウムは熱伝導率が高く、加熱ムラが生じにくいので、反応容器15を効率よくかつ精度よく加熱することができる。また、アルミニウムは加工が容易なので、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222を精度よく成型でき、反応容器15との接触の精度を高めることができる。したがって、より正確な熱サイクルを実現できる。なお、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の材質は、例えば銅合金を使用してもよく、複数の材質を組み合わせてもよい。第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の具体例としては、アルミニウム製のブロックが挙げられる。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、反応容器15に対して熱的に接触する。熱的に接触する態様としては、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222と反応容器15とが直接に接触している態様や、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222と反応容器15との間に他の熱伝導性の部材を介して接触している態様などが挙げられる。また、熱を適切に伝えることができれば、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222と反応容器15との間に空間があっても良い。これにより、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222によって反応容器15を加熱した場合に、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の熱を反応容器15に安定して伝えることができるので、反応容器15の流路13の所定の領域の温度を安定させることができる。
本実施形態のように、装着部10が第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の一部を含んで構成されている場合には、装着部10が反応容器15と直接接触することがより好ましい。これにより、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の熱を反応容器15に安定して伝えることができるので反応容器15の流路13の温度勾配を効率よく制御できる。
また、本実施形態のように装着部10が第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の一部を含んで構成されている場合には、装着部10を反応容器15に密着させる機構を設けてもよい。装着部10を反応容器15に密着させる機構は、反応容器15の少なくとも一部を装着部10に密着させることができればよい。例えば、他の部材を追加するなどして、当該部材に取り付けられたバネによって反応容器15を装着部10の一方の壁面に押し付けてもよい。これにより、温度勾配形成部20の熱を反応容器15にさらに安定して伝えることができるので、反応容器15の温度をさらに安定させることができる。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度は、図示しない温度センサー及び制御部によって制御されてもよい。温度センサーとしては例えば熱電対を用いることができ、これに限らず、例えば測温抵抗体やサーミスタを使用してもよい。
第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度は、反応容器15が所望の温度に加熱されるように設定されることが好ましい。本実施形態においては、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222を温度制御することで、反応容器15の流路13の第1領域131及び第2領域132を目標の温度に制御することができる。なお、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度は、反応容器15の流路13の第1領域131及び第2領域132が所望の温度に制御されるように制御されていればよく、例えば反応容器15の材質や大きさを考慮して制御されてもよい。
1.1.4.熱源部
第1熱源部241及び第2熱源部242は、熱を発生させる。第1熱源部241及び第2熱源部242は、それぞれ第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に設けられ、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に対して熱を供給することができる。第1熱源部241及び第2熱源部242としては、例えば、ヒーター(電熱線)、カートリッジヒーター、カーボンヒーター、シートヒーター、IHヒーター(電磁誘導加熱器)、加熱液体、加熱気体などを使用することができる。また、必要に応じて、導線や配管を備えてもよく、外部電源等に接続してもよい。これらのうちでもカートリッジヒーターは温度制御が容易であるので、第1熱源部241及び第2熱源部242にカートリッジヒーターを採用することで、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度を安定させることを容易化することができる。
1.1.5.駆動機構
駆動機構30は、装着部10及び温度勾配形成部20を、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部10に反応容器15を装着した場合に前記移動方向(反応液11が移動する方向)に対して垂直な成分を有する回転軸Rの周りに回転させる機構である。図1及び図2では、回転軸Rのみを表示し、駆動機構30は省略されている。
「重力の作用する方向に対して垂直な成分を有する」方向は、「重力の作用する方向に対して平行な成分」と「重力の作用する方向に対して垂直な成分」とのベクトル和で表した場合における、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有する方向である。また、「前記移動方向に対して垂直な成分を有する」方向は、「前記移動方向に対して平行な成分」と「移動方向に対して垂直な成分」とのベクトル和で表した場合における、前記移動方向に対して垂直な成分を有する方向である。
したがって、装着部10に反応容器15を装着した状態で、回転軸R周りに装着部10及び温度勾配形成部20を回転させると、反応容器15内の反応液11が、反応容器15の流路13に沿って移動することができる。図1及び図2の例では、回転軸Rは、重力の作用する方向に対して垂直となっている例を示している。すなわち、図1では、反応液11は、重力の作用により、流路13の第1領域131に存在しており、図1の配置に対して回転軸R周りに180°回転させた状態である図2の例では、反応液11は、重力の作用により、流路13の第1領域131とは長手方向における反対側となる第2領域132に存在している。なお、図1及び図2の例では、流路13の長手方向が、重力の作用する方向に平行となる配置のみを例示しているが、流路13の長手方向が、重力の作用する方向に対して垂直となる配置以外の配置であれば、流路13内を反応液11が移動できる。そのため、駆動機構30は、必ずしも回転軸Rの周りに180°以上回転させることができる態様である必要はない。また、駆動機構30は、回転軸Rの周りに360°以上回転させることができる態様であってもよい。
駆動機構30は、装着部10及び温度勾配形成部20を同一の回転軸Rの周りに回転させてもよい。言い換えると、装着部10を回転させる回転軸Rと温度勾配形成部20を回転させる回転軸Rとは共通(同じ)であってもよい。
また、駆動機構30は、図示しないモーター及び駆動軸を含んでもよく、当該駆動軸と必要に応じて歯車やフランジ等とを接続して構成されてもよい。駆動機構30がモーターを有する場合には、例えばモーターの駆動軸を回転軸Rとして、モーターの動作により、回転軸Rの周りに回転されることができる。回転軸Rと装着部10との位置関係については、特に制限はないが、装置の小型化や、装置内の他の部材との干渉を考慮して適宜設定されることができる。なお、駆動機構30としては、モーターに限らず、例えばハンドル、ぜんまい等を採用してもよい。
熱サイクル装置100は、図示しない制御部を含んでいてもよい。制御部は、駆動機構30及び温度勾配形成部20のうち、少なくとも1つを制御することができる。制御部は、専用回路により実現して制御を行うように構成されていてもよい。また、制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、制御を行うように構成されていてもよい。この場合、記憶装置は、制御に伴う中間データや制御結果などを一時的に記憶するワークエリアを有していてもよい。
1.1.6.送風機構
本実施形態の熱サイクル装置100は、少なくとも第1熱伝導体221に対して風を送る送風機構60を備える。送風機構60としては、例えば、ファン、ダクト、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。なお、送風機構60は、熱サイクル装置100(第1熱伝導体221)に向かって風を送る構成に代えて、熱サイクル装置100(第1熱伝導体221)周辺の空気(気体)を吸引する構成としても良い。送風機構60は、温度勾配形成部20の一部を構成してもよい。送風機構60は、第1熱伝導体221以外にも第2熱伝導体222、その他の部材、あるいは装着部15に装着された反応容器10に送風してもよい。図1および図2に示す例では、送風機構60は、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の両方に対して風を送る構成である。これにより、流路13の第1領域131以外の領域の温度制御を行ってもよい。さらに、第2熱伝導体222の温度制御を行ってもよい。送風機構60は、温度勾配形成部20の一部として機能してもよい。
送風機構60は、熱サイクル装置100の機体と一体的に構成されてもよいし、別体として構成されてもよい。例えば、少なくとも第1熱伝導体221に対して送風できる限り、筐体42に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。送風機構60を温度勾配形成部20の構成に含める場合には、制御部等を設けてこれに接続し、送風量等を制御して所望の温度勾配を得るための構成としてもよい。
送風機構60としてファンを採用する場合には、例えば、市販のDCファンモーター、ACファンモーター、扇風機、送風機などを用いることができる。図1及び図2では、送風機構60は、模式的に描かれている。
送風機構60によって送風される風の温度は、環境の温度であってもよいし、環境の温度より高い温度でも低い温度でもよい。送風機構60によって送風される風の温度を環境の温度よりも高い温度とする場合には、送風機構60に、ヒーター、熱交換器などの熱源を追加してもよく、風の温度を環境の温度よりも低い温度とする場合には、クーラー、冷媒を通じた熱交換器などの冷却装置を追加してもよい。
1.2.熱サイクル装置の使用例
本実施形態の熱サイクル装置100は、各種のPCR及び熱サイクル(温度サイクル)が必要な反応に好適に適用することができる。
熱サイクル装置100を適用可能なPCRとしては、特に制限はない。しかし、熱サイクル装置100は、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の2つの熱伝導体を有するため、2つの温度の熱サイクル(温度サイクル)が容易であり、例えば、シャトルPCR(2段階温度PCR)に特に好適である。また、少なくとも第1熱伝導体221に送風する送風機構60を備えているため、第1熱伝導体221の温度を比較的環境の温度に近い温度(逆転写温度)に設定すればRT−PCR(逆転写PCR:Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)に対しても好適に適用できる。
具体的には、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、いわゆるオーバーシュート(過昇温)を抑制することができ、より短時間で目標の温度に安定させることができる。そのため、熱サイクル装置100によれば、装置の起動、又は、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、PCRの熱サイクルの所望の温度になるまでの時間を短縮することができる。また、第1熱伝導体221の温度を、高温側から降温して目標の温度で安定させる場合にも時間を短縮することができる。
そのため、熱サイクル装置100が送風機構60を含まない場合と比較して、流路13の第1領域131の温度を、任意の温度に短時間で変更することができる。例えば、PCRのアニール温度、伸長温度、熱変性温度、逆転写温度に、それぞれ変更して安定させるまでの時間を短縮できるので、駆動機構30の動作(反応液の移動)による熱サイクルの短時間化に加えてさらにPCRの高速化を図ることができる。
ここで、シャトルPCRとは、アニール反応及び伸長反応を同一の温度で行う手法のことを指す。一般に、シャトルPCRは、プライマーやポリメラーゼの設計により実現することができる。シャトルPCRでは、アニール/伸長を行う温度は60℃程度であり、95℃前後の熱変性温度との間で熱サイクル(温度サイクル)を繰り返すことにより、DNAを増幅することができる。
また、インフルエンザ等、ウィルスがRNAウィルスである場合には、そのままではPCRで増幅できない。そのため、RT−PCR(逆転写PCR)が行われる。RT−PCRでは、RNAは、逆転写酵素でcDNA(Complementary DNA:相補的DNA)に逆転写された後、PCRにより増幅される。
また、逆転写酵素とポリメラーゼ等を同一の反応容器に充填して逆転写及びPCRを連続して行う方式は、ワンステップRT−PCRと呼ばれている。ワンステップRT−PCRは、反応液を反応容器間で移送する手間がないことから、近年多用されるようになってきている。
ワンステップRT−PCRでは、一般に、逆転写の反応は、用いる逆転写酵素の至適温度が現状では42℃〜55℃程度であるため、42℃〜55℃程度の温度で行われる。そして、逆転写の反応の後、引き続いて95℃前後の変性温度まで反応液の温度を昇温する。これによりRNAと逆転写されたcDNAを、それぞれ一本鎖に分離(熱変性)し、かつ、逆転写酵素を失活させている。そして、その後は上記のシャトルPCRと同様に、アニール/伸長反応及び熱変性を繰り返すことでDNAを増幅させる。増幅反応の際には、逆転写酵素は、熱変性温度において失活しているため、逆転写酵素によるPCRの阻害は抑制される。
本実施形態の熱サイクル装置100を用いてRT−PCRを行う例を述べる。この例ではシャトルPCRを行うものとする。
まず、第1熱伝導体221を逆転写の温度とし、第2熱伝導体222を熱変性の温度とし、反応容器15を装着部10に装着して、反応液11を流路13の第1領域131に配置する。この時点で逆転写の反応が開始される。そして、駆動機構30を動作させ、回転軸Rの周りに回転させることで、反応液11を移動させて流路13の第2領域132に到達させることにより、熱変性を行う(例えば図2の態様)。ここで、反応液11の体積は小さいほど温度変化しやすいため、反応液11の体積が小さいほど短時間で反応液11の温度を熱変性の温度に変化させることができる。そして、第1熱伝導体221の温度をアニール/伸長の温度に変更し、駆動機構30の動作により回転軸Rの周りに回転させることで、反応液11を移動させて流路13の第1領域131に到達させる(例えば図1の態様)。
その後は、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度を保ったまま、駆動機構30の動作により回転軸Rの周りに回転させて、反応液11を第1領域131及び第2領域132間で移動させる。回転を繰り返すことにより、反応液11にPCRの熱サイクル(温度サイクル)を所望の回数施すことができる。
そして、所望の回数の熱サイクル(温度サイクル)が終了したら、反応容器15を取り外して、RT−PCRが終了する。その後、他の反応液11に対してRT−PCRを行う場合は、第1熱伝導体221の温度を、再び逆転写の温度に変更して、上記の操作を行うことで、複数の試料に対して逐次的にRT−PCRを行うことができる。
上記の例では、送風機構60を連続的に動作させながらRT−PCRを行っているが、送風機構60は、間欠的に動作させてもよいし、送風量を変化させるように動作させてもよい。
また、本実施形態の熱サイクル装置100は、上記例のほか、ホットスタートPCRや適宜の構成を加えてリアルタイムPCRなどにも好適に適用することができる。
なお、上記例では、熱変性温度を95℃程度、アニール/伸長温度を60℃程度、及び逆転写の温度を42℃〜55℃として説明した。しかし、このような温度範囲に限らず、本実施形態の熱サイクル装置100では、例えば、熱変性温度を70℃以上、85℃以上、あるいは90℃以上、アニール/伸長温度を55℃以上70℃以下、55℃以上68℃以下、あるいは60℃以上65℃以下、逆転写の温度を35℃以上55℃以下、37℃以上50℃以下、あるいは40℃以上48℃以下などと設定することが容易であり、将来の酵素等の開発によって必要とされる温度範囲も含め、各種のPCRに必要な温度に応じて各熱伝導体の温度を設定することができる。そして、例えば、上記説明したワンステップRT−PCRのように、第2熱伝導体222を高温側として、第1熱伝導体221を低温側とすれば、低温側の温度を、例えば、37℃以上70℃以下の範囲で変更することによって、条件に応じたPCRを行うことができる。
1.3.作用効果
本実施形態の熱サイクル装置100によれば、温度勾配形成部20の第1熱伝導体221に対して送風する送風機構60が設けられるため、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率が向上される。
これにより、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、いわゆるオーバーシュート(過昇温)を抑制することができ、より短時間で目標の温度に安定させることができる。そのため、熱サイクル装置200によれば、装置の起動、又は、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、PCRの熱サイクルを行うことができる状態になるまでの時間を短縮することができる。また、第2熱伝導体222の温度が第1熱伝導体221の温度よりも高く、かつ両者の距離が輻射の影響を受ける距離であっても、第1熱伝導体221の温度を設定温度に安定させることができる。また、装置が小型である場合には、第1熱伝導体221の温度が環境の温度や第2熱伝導体222の温度の影響を受けやすいので、送風機構60を設けることで、適切な温度でPCRを行うことができる。
本実施形態の熱サイクル装置100において、逆転写PCR(RT−PCR)を行う場合、第1熱伝導体221を逆転写酵素の至適温度に設定し、その後、第1熱伝導体221を伸長/アニール温度に設定することとすれば、伸長/アニール温度で安定するまでに要する時間が短縮され、その結果RT−PCRに要する時間を短縮することができる。そして、伸長/アニール温度で安定するまでに要する時間を、熱変性反応に要する時間よりも短くすることができ、RT−PCRのための第1熱伝導体221の温度の安定のための待ち時間をほとんどなくすことができ、遅滞なく引き続くシャトルPCRを行うことができる。このような効果は、環境の温度とアニール/伸長温度との差が大きくない場合に特に顕著となる。すなわち、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率が向上されることにより得られる効果である。
また、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率がよいので、第1熱伝導体221の温度を、より高い温度から環境の温度に近い温度へと降温させる場合、送風機構60が設けられていない場合と比較してより短時間で降温させることができる。
そのため、特に、本実施形態の熱サイクル装置100を用いて、複数回のRT−PCRを行う場合、第1熱伝導体221を伸長/アニール温度に設定した状態でRT−PCRを行った後、次のRT−PCRを行うために、第1熱伝導体221の温度を逆転写酵素の至適温度に変更して安定するまでに要する時間を短縮することができる。その結果、逐次的に行われるRT−PCRの合計の時間を短縮することができる。
また、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率がよいので、第1熱伝導体221の温度を、環境の温度に近い温度で安定させる場合に、温度制御が容易化され、十分に安定させることができる。特に、本実施形態の熱サイクル装置100において、逆転写PCR(RT−PCR)を行う場合、第1熱伝導体221を逆転写酵素の至適温度に設定する態様とすれば、逆転写酵素の至適温度が環境の温度に近い場合であっても当該温度で十分に安定させることができ、逆転写の反応を安定して行うことができる。
なお第1温度及び第2温度は、いずれが高くても低くても上記の効果を得ることができるが、第1温度が第2温度よりも低く設定されるほうが、送風機構60が少なくとも第1熱伝導体221に送風するので得られる効果が高い場合がある。
1.4.その他の構成
1.4.1.第1放熱部
本実施形態の熱サイクル装置100は、第1熱伝導体221の熱を放散する第1放熱部261を有してもよい。
第1放熱部261は、第1熱伝導体221の熱を放散させる。第1放熱部261は、第1熱伝導体221の熱を放散させる。第1放熱部261は、第1熱伝導体221に設けられる。第1放熱部261は、第1熱伝導体221と環境(大気等)との間の熱交換を促進させることができる。第1放熱部261は、第1熱伝導体221に複数設けられてもよい。第1放熱部261が設けられる第1熱伝導体221の位置は、温度勾配形成部20の回転を第1熱伝導体221が妨げない限り任意である。第1放熱部261は、第1熱伝導体221の形状、材質、に合わせて適宜選択、設計されることができる。
第1放熱部261としては、空冷フィン(ひれ)、ヒートシンク等の構造体、ペルチェ素子などの冷却装置、液体又はガス等の熱を輸送可能な媒体を通じる配管、などを採用することができる。これらのうちフィンは、配線や配管の必要がなく、第1熱伝導体221と一体的に形成することができ、装置構成を簡略化できる点で放熱部として適する。
第1放熱部261にフィンを採用する場合には、フィンの形状は特に限定されない。図示のように、第1放熱部261は、第1熱伝導体221の装着部10が開口する面とは異なる面に、切れ込みを入れたフィンによって構成されてもよい。フィンは、第1熱伝導体221の熱を、環境の気体に放散する効率が、平坦な表面を有した場合に比較して高ければどのような形状でもよい。ここで、フィンとは、物体の表面において、表面が平坦である場合に比較して、物体の熱を環境の気体に放散する効率の大きい表面を有する構造のことを指す。また、フィンとは、特定の体積の物体において、比表面積が大きくなっている領域ということもできる。
フィンの形状の典型例としては、薄い板の形状、あるいはその集合体が挙げられる。このようなフィンは、第1熱伝導体221の制御したい温度等の目的に合わせて、例えば以下のような熱の放散の効率の計算や、装置の材質、構造等を考慮して、その結果に基づいて設計されることができる。
一般に直方体形状のフィンの熱放散の効率φは以下の式で示される。
φ=Q/Q∞=tanh{m(h+δ/2)}/{m(h+δ/2)}
(δ:フィンの厚み、h:フィンの高さ、m:(2α/δλ)1/2、α:フィンと空気との熱伝達係数、F:フィンの断面積、λ:熱伝導率)
Qはフィンの伝熱量でありQ∞はフィン全体が均一な温度である理想状態のフィンの伝熱量である。実際のフィンでは熱伝導率は有限であり、根元から先端に行くにつれ放熱により温度は低下する。
上記式は、フィンの高さが増すと放熱量が増す一方で効率が頭打ちになること、及び、同一のフィンの体積ならば、薄いフィンを多数つけたほうが放熱量が増すことを意味している。なお、一般に、フィンの高さが高いほど加工が困難になるため、可能な範囲でフィンの高さを高くすることが好ましい。
また、熱伝導体22がアルミニウム系の材質で形成されている場合には、機械加工の精度による制限が有る場合がある。例えば、δ及びフィン間の間隔は、いずれも1mm程度が限界となる場合がある。
フィンの厚み及びフィン間の間隔については、以下のような試算を例示できる。
アルミニウムの熱伝導率を204W/mK、アルミニウムと空気との熱伝達係数を116W/m2Kとすると、高さ7mm、幅10mm、厚さ1mmのフィンと、高さ7mm、幅10mm、厚さ2mmのフィンとでは、厚さ1mmのフィンの熱放散の効率が98%であるのに対して、厚さ2mmのフィンの熱放散の効率は99%となる。しかし一方で、フィン間の間隔を変化させることにより放熱量を高めることができ、例えば、フィン間の間隔は、1mmの方が2mmに対して5割増しの放熱量を得ることができる。
厚さ1mm、幅10mm、高さ7mmのフィン、及び厚さ1mm、幅10mm、高さ14mmのフィンでは、熱放散の効率は、それぞれ98%及び93%となり、放熱面積が倍になる分、高さ14mmのほうが有利である。しかし、本実施形態の熱サイクル装置100では、回転軸Rの周りの回転のための空間が必要となることから、第1放熱部261としてフィンを採用する場合には、フィンの高さや形状は、この点も考慮して適宜設計されることができる。
熱サイクル装置100に第1放熱部261が設けられると、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率が向上される。これにより、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、いわゆるオーバーシュート(過昇温)をさらに抑制することができ、より短時間で目標の温度に安定させることができる。そのため、装置の起動、又は、第1熱伝導体221の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、PCRの熱サイクルを行うことができる状態になるまでの時間を短縮することができる。
1.4.2.第2放熱部
本実施形態の熱サイクル装置100は、図示しないが、第2熱伝導体222の熱を放散する第2放熱部を有してもよい。
第2放熱部は、第2熱伝導体222の熱を放散させる。第2放熱部は、上述の「1.4.1.第1放熱部」の項で述べた第1放熱部261と同様であり、同項の説明において、「第1放熱部261」を「第2放熱部」、及び「第1熱伝導体221」を「第2熱伝導体222」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。なお、図1及び図2の例では、第2放熱部は形成されていない。
熱サイクル装置100に第2放熱部が設けられると、第2熱伝導体222と環境との間の熱交換の効率が向上される。
これにより、第2熱伝導体222の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、いわゆるオーバーシュート(過昇温)をさらに抑制することができ、より短時間で目標の温度に安定させることができる。そのため、装置の起動、又は、第2熱伝導体222の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、PCRの熱サイクルを行うことができる状態になるまでの時間を短縮することができる。
熱サイクル装置200に第2放熱部が設けられると、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222共に環境との間の熱交換の効率が向上される。そのため、PCRを行う場合の温度の設定の自由度を増すことができる。すなわち、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222のいずれでも、逆転写の温度又は熱変性の温度に設定することができるようになる。
なお、第2熱伝導体222のほうが第1熱伝導体221よりも高温側(環境の温度よりも遠い側)に設定する場合には、第2熱伝導体222の環境との間の熱交換の効率が十分である場合がある。そのような場合には第2放熱部を設けなくてもよい。
1.4.3.蛍光検出器
熱サイクル装置100は蛍光検出器を含んでもよい。これにより、例えばリアルタイムPCRのような蛍光検出を行いながらPCRを行う用途に熱サイクル装置100を使用できる。熱サイクル装置100が蛍光検出器を備える場合、蛍光検出器の数は任意である。また、蛍光検出器の設けられる位置は、反応容器15内の反応液11を光学的に測定できる限り任意である。さらに、蛍光検出器を反応容器15内の反応液11を光学的に測定できる位置に移動させる構成を含んでもよい。熱サイクル装置100に蛍光検出器を設け、第1熱伝導体221の温度をPCRのアニーリング及び伸長温度に設定する場合には、蛍光検出器は、反応容器15の流路13の第1領域131からの光を検出できるように設けられることが好ましい。これにより、リアルタイムPCRとして適切な蛍光測定をすることができる。
2.第2実施形態
2.1.熱サイクル装置
本実施形態の熱サイクル装置200は、装着部10と、温度勾配形成部20と、駆動機構30と、送風機構60とを含む。より詳しくは、本実施形態の熱サイクル装置200は、反応液11と、反応液11とは比重が異なり、かつ、反応液11とは混和しない液体12とが充填され、反応液11が対向する内壁に沿って移動する流路13を含む反応容器15を装着する装着部10と、熱を伝導する熱伝導体22を含み、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13に対して、反応液11が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部20と、装着部10及び温度勾配形成部20を、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13を反応液11が移動する方向に対して垂直な成分を有する回転軸Rの周りに回転させる駆動機構30と、少なくとも熱伝導体22に送風する送風機構60と、を含む。
本実施形態の熱サイクル装置200は、第1実施形態で述べた熱サイクル装置100において、温度勾配形成部20が2つの熱伝導体(第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222)を含んで構成されたのに対して、温度勾配形成部20が、1つの熱伝導体22を含んで構成される点で、第1実施形態の熱サイクル装置100と異なる。それ以外の構成や変形実施の態様は、第1実施形態の熱サイクル装置100と同様であり、同様の部材等に対しては同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
図3及び図4は、本実施形態に係る熱サイクル装置200の要部を模式的に示す図である。
2.1.1.反応容器
本実施形態の熱サイクル装置200に装着される反応容器15は、第1実施形態で述べた反応容器15と同様であり、詳細な説明を省略するが、第1実施形態とは、第2領域132が規定されない点で異なる。
流路13は、第1領域131を有する。第1領域131は、熱サイクル装置200の装着部10に反応容器15が装着された場合に、温度が制御される領域である。本実施形態では、熱伝導体22に熱的に接している領域を第1領域131とする。
第1領域131は、流路13の長手方向における一方の端部を含む領域である。図3及び図4に示される例では、流路13のうち封止体14に遠い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第1領域131である。
本実施形態に係る熱サイクル装置200は、温度勾配形成部20の熱伝導体22が反応容器15の流路13の第1領域131を第1の温度に加熱することにより、反応容器15の流路13に対して、反応液11が移動する方向に温度勾配を形成する。
2.1.2.装着部
本実施形態の熱サイクル装置200は、反応容器15を装着する装着部10を有する。本実施形態の熱サイクル装置200の装着部10は、第1実施形態で述べた熱サイクル装置100の装着部10と同様であり、詳細な説明を省略するが、第1実施形態とは、1つの熱伝導体22の一部が装着部10を構成している点で相違している。
熱伝導体22に設けられる装着部10の個数は、特に限定されない。装着部10の数が複数である場合は、複数の反応容器15をそれぞれ装着することができる。
2.1.3.温度勾配形成部
温度勾配形成部20は、装着部10が設けられた熱伝導体22を含む。温度勾配形成部20は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13に対して、反応液11が移動する前記移動方向に温度勾配を形成する構成である。図3及び図4に示される例では、温度勾配形成部20は、熱伝導体22によって構成され、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13には第1領域131から遠いほど温度が低くなる温度勾配が形成される。
2.1.3.1.熱伝導体
熱伝導体22には、装着部10の少なくとも一部が設けられる。これにより、熱伝導体22は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、反応容器15の流路13の第1領域131を目標の温度に制御する。図3及び図4に示される例では、熱伝導体22は、反応容器15の流路13の第1領域131を加熱できる位置に配置されている。
熱伝導体22は、熱を発生させる熱源部24を有し、これらによって発生させた熱を反応容器15に伝えることができる。
熱伝導体22の形状は、特に限定されない。また熱伝導体22の材質、具体例、反応容器15との接触の態様、温度制御の態様等は、いずれも第1実施形態で述べた第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222と同様である。
2.1.3.2.熱源部
熱源部24は、熱を発生させる。熱源部24は、熱伝導体22に設けられ、熱伝導体22に対して熱を供給することができる。熱源部24の具体例等は、第1実施形態の第1熱源部241及び第2熱源部242と同様である。
2.1.4.駆動機構
本実施形態の熱サイクル装置200の駆動機構30は、第1実施形態で説明した駆動機構30と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図3及び図4では、回転軸Rのみを表示し、駆動機構30は省略されている。装着部10に反応容器15を装着した状態で、回転軸Rの周りに装着部10及び温度勾配形成部20を回転させると、反応容器15内の反応液11が、反応容器15の流路13に沿って移動することができる。図3及び図4の例では、回転軸Rは、重力の作用する方向に対して垂直となっている例を示している。すなわち、図3では、反応液11は、重力の作用により、流路13の第1領域131に存在しており、図3の配置に対して回転軸R周りに180°回転させた状態である図4の配置では、反応液11は、重力の作用により、流路13の第1領域131以外の領域に存在している。
2.1.5.送風機構
本実施形態の熱サイクル装置200は、少なくとも熱伝導体22に対して風を送る送風機構60を備える。送風機構60の具体例は、第1実施形態で述べたと同様である。図3及び図4では、送風機構60は、模式的に描かれている。送風機構60は、温度勾配形成部20の一部を構成してもよい。送風機構60は、熱伝導体22だけに送風してもよく、熱伝導体22以外の部材にも送風してもよい。これにより、流路13の第1領域131の温度制御を行ってもよい。さらに、第1領域131以外の領域の温度制御を行ってもよい。送風機構60によって送風される風の温度は、第1実施形態と同様である。
送風機構60の具体例は、第1実施形態で述べたと同様である。図3及び図4では、送風機構60は、模式的に描かれている。送風機構60は、温度勾配形成部20の一部を構成してもよい。
2.2.熱サイクル装置の使用例
本実施形態の熱サイクル装置200は、各種のPCR及び熱サイクル(温度サイクル)が必要な反応に好適に適用することができる。
熱サイクル装置200を適用可能なPCRとしては、特に制限はない。熱サイクル装置200は、熱伝導体22及び送風機構60を有するため、熱伝導体22と環境との間の熱交換の効率が高い。そのため、熱伝導体22の温度を、所望の温度に変更する場合の時間、及び所望の温度で安定させるまでの時間を短くすることができる。
本実施形態の熱サイクル装置200は、熱伝導体22及び環境(気体)によって温度勾配を形成しているので、2つの温度の熱サイクル(温度サイクル)が容易であり、シャトルPCRに特に好適である。また、送風機構60を有するため、熱伝導体22の温度を比較的環境の温度に近い温度(逆転写温度)に設定すればRT−PCRに対しても好適に適用できる。
本実施形態の熱サイクル装置200を用いてワンステップRT−PCRを行う例を述べる。この例ではシャトルPCRを行うものとする。
熱サイクル装置200では、温度勾配形成部20が熱伝導体22及び環境によって構成されているので、送風機構60によって流路13の第1領域131以外の領域に送風して、当該領域の温度を制御することができる。まず、送風機構60によって流路13の第1領域131以外の領域の温度を、逆転写のための温度に調節し、熱伝導体22の温度を熱変性温度にする。続いて、駆動機構30によって流路13の第1領域131以外の領域に反応液11が存在する状態(例えば図4の状態)とする。これにより逆転写の反応が進行する。次いで、駆動機構30を動作させて、流路13の第1領域131に反応液11が存在する状態(例えば図3の状態)とすることで、熱変性の反応を行う。熱変性の反応が進行している間に、送風機構60で送風される風の温度又は強さを変更して流路13の第1領域131以外の領域の温度を、アニール/伸長温度に調節する。そして、駆動機構30を動作させて、流路13の第1領域131以外の領域に反応液11が存在する状態(例えば図4の状態)と、流路13の第1領域131に反応液11が存在する状態(例えば図3の状態)と、を繰り返すことで、アニール/伸長の反応と、熱変性の反応とが繰り返される。このようにしてワンステップRT−PCRを行うことができる。
上記の例では、送風機構60を連続的に動作させながらRT−PCRを行っているが、送風機構60は、間欠的に動作させてもよいし、送風量を変化させるように動作させてもよい。
また、本実施形態の熱サイクル装置200は、上記例のほか、ホットスタートPCRや適宜の構成を加えてリアルタイムPCRなどにも好適に適用することができる。
2.3.作用効果
本実施形態の熱サイクル装置200によれば、温度勾配形成部20の熱伝導体22と、少なくとも熱伝導体22に送風する送風機構60を有するため、熱伝導体22と環境との間の熱交換の効率が向上される。そのため、熱サイクル装置100によれば、熱伝導体22の設定温度への移行をより短時間で行うことができる。
特に、環境の温度と熱伝導体22の設定温度とが近い場合には、送風機構60の効果が顕著となる。これにより、熱伝導体22の温度の変更の場合のオーバーシュートがさらに抑制され、また、熱伝導体22の降温速度を高めることができる。したがって、熱サイクル装置100を用いてPCRを行う場合に、より精密に温度を制御することができ、また、PCRに要する時間を短縮することができる。
2.4.その他の構成
2.4.1.放熱部
本実施形態の熱サイクル装置200は、熱伝導体22に放熱部を設けてもよい。放熱部は、第1実施形態の「1.4.1.第1放熱部」の項で述べた第1放熱部261と同様であり、同項の説明において、「第1放熱部261」を「放熱部」、及び「第1熱伝導体221」を「熱伝導体22」と読み替えることにより、詳細な説明を省略する。なお、図3及び図4の例では、放熱部は、図示されていない。
熱サイクル装置200に放熱部が設けられると、熱伝導体22と環境との間の熱交換の効率が向上される。これにより、熱伝導体22の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、オーバーシュートをさらに抑制することができ、より短時間で目標の温度に安定させることができる。そのため、装置の起動、又は、熱伝導体22の温度を、低温側から昇温して目標の温度で安定させる場合に、PCRの熱サイクルを行うことができる状態になるまでの時間を短縮することができる。
2.4.2.蛍光検出器
熱サイクル装置200は図示せぬ蛍光検出器を含んでもよい。これにより、例えばリアルタイムPCRのような蛍光検出を行いながらPCRを行う用途に熱サイクル装置200を使用できる。蛍光検出器は、第1実施形態の「1.4.3.蛍光検出器」で述べたと同様である。
3.第3実施形態
3.1.熱サイクル装置
第3実施形態に係る熱サイクル装置300において、第1実施形態の熱サイクル装置100及び第2実施形態の熱サイクル装置200と同様の作用機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5は、第3実施形態に係る熱サイクル装置300の概略を模式的に示す斜視図である。図6は第3実施形態に係る熱サイクル装置300の要部を模式的に示す分解斜視図である。図7は、第3実施形態に係る熱サイクル装置300の第1熱伝導体221及び第1放熱部261の平面図(第2熱伝導体222の側から見た図)である。図8は、第3実施形態に係る熱サイクル装置300の第1熱伝導体221及び第1放熱部261を第1放熱部261の側から見た側面図である。図9は、図7及び図10のA−A線における断面図である。図10は、第2実施形態に係る熱サイクル装置300の第1熱伝導体221及び第1放熱部261を回転軸Rに平行な方向から見た側面図である。
第3実施形態に係る熱サイクル装置300は、反応液11と、反応液11とは比重が異なり、かつ、反応液11とは混和しない液体12とが充填され、反応液11が対向する内壁に沿って移動する流路13を含む反応容器15を装着する装着部10と、熱を伝導する熱伝導体22を含み、装着部10に反応容器15を装着した場合に、流路13に対して、反応液11が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部20と、装着部10及び温度勾配形成部20を、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13を反応液11が移動する方向に対して垂直な成分を有する回転軸Rの周りに回転させる駆動機構30と、少なくとも熱伝導体22に送風する送風機構60と、を含み、温度勾配形成部20は、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13の第1領域131を第1温度に加熱する第1熱伝導体221と、装着部10に反応容器15を装着した場合に流路13の第2領域132を第1温度よりも高い第2温度に加熱する第2熱伝導体222と、を含み、送風機構60は、少なくとも第1熱伝導体221に送風する、構成を有している。
第3実施形態の熱サイクル装置300における装着部10は、複数設けられる以外は第1実施形態の熱サイクル装置100と同様である。また、反応容器15も第1実施形態で述べたと同様である。第3実施形態の熱サイクル装置300における温度勾配形成部20についても、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に、装着部10が複数設けられる以外は熱サイクル装置100と同様である。熱サイクル装置300では、温度勾配形成部20は、第1実施形態と同様に、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222によって構成されている。
図5及び図6に示すように、第3実施形態の熱サイクル装置300における第1熱伝導体221には、装着部10の一部が設けられる。これにより、第1熱伝導体221は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、反応容器15の流路13の第1領域131を目標の温度に制御することができる。また、図6に示すように、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、それぞれ熱を発生させる第1熱源部241及び第2熱源部242を有し、当該発生した熱を反応容器15に伝えることができる。第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222は、装着部10に反応容器15を装着した場合に、反応容器15に対して熱的に接触する。第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の温度は、図示しない温度センサー及び制御部によって制御されてもよい。
図5及び図6に示すように、本実施形態の熱サイクル装置300では、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に、それぞれカートリッジヒーター25を挿入する穴が形成されており、カートリッジヒーター25を挿入することで、第1熱源部241及び第2熱源部242が構成される。カートリッジヒーター25からは、駆動機構30によって本体40が回転した場合に捩れを生じにくい態様のリール27を備えたリード線23が引き出されている。
本実施形態の熱サイクル装置300では、第1放熱部261は、第1熱伝導体221に2つ設けられている。本実施形態では、第1放熱部261は、空冷フィン(ひれ)である。フィンの形状は、図7ないし図10に示すように、第1熱伝導体221に、切れ込みを入れた形状となっている。
第3実施形態の熱サイクル装置300の駆動機構30は、第1実施形態及び第2実施形態で説明したと同様であるが、筐体42、固定部材44及びフランジ46によって、第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222が位置決めされた本体40を、回転軸Rの周りに回転させる機構となっている。熱サイクル装置300では、駆動機構30は、モーター32を含んで構成されている。
筐体42は、熱サイクル装置300を床面等に設置するために備えられ、形状、材質等は任意である。固定部材44及びフランジ46は、少なくとも第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の位置決め、設置、並びに、回転軸Rの位置決めのために備えられる。固定部材44及びフランジ46の形状、材質等は、任意である。図7ないし図10の第1熱伝導体221の例では、固定部材44及びフランジ46等と接続するための留め孔48が描かれている。
筐体42、固定部材44及びフランジ46等の部材が反応容器15を覆うような構造であっても、これらの部材が透明であれば、透明な反応容器15を熱サイクル処理に使用した場合に、装置の外部から反応液11が移動する様子を観察することができる。したがって、熱サイクル処理が適切に行われているか否かを、目視により確認できる。ここでの「透明」の程度は、これらの部材を熱サイクル装置200に採用して熱サイクル処理を行った場合に、反応液11の移動が視認できる程度であればよい。
第3実施形態の熱サイクル装置300は、少なくとも第1熱伝導体221に対して風を送る送風機構60を備えている。送風機構60の例は、第1実施形態及び第2実施形態で述べたと同様である。図5の例では、送風機構60として、DCファンモーター62が例示されている。
第3実施形態の熱サイクル装置300は、蛍光検出器50を備えている。蛍光検出器50は、装着部10に反応容器15が装着された場合に、第1熱伝導体221側から反応容器15を望むことができる位置に設けられている。熱サイクル装置300では、8個の反応容器15のそれぞれに適した位置に蛍光検出器50が移動できるようにしたレール52を有している。蛍光検出器50は、レール52に沿って移動することができ、蛍光検出器50の位置は、モーター等により移動できるように構成されてもよい。さらに、蛍光検出器50の位置は、図示しない制御部に接続されて、リアルタイムPCR等における所望の位置に移動されるように制御されてもよい。
また、熱サイクル装置300では、例えば、図示しない断熱材を適宜な部分に配置することもできる。これにより、反応容器15の温度をより安定させることができる場合がある。熱サイクル装置300は、反応容器15を第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222に対して所定の位置に保持する構造を含んでもよい。反応容器15の位置を定める構造は、所望の位置に反応容器15を保持できるものであればよい。反応容器15の位置を定める構造は、熱サイクル装置300に設けられた構造であっても、反応容器15に設けられた構造であっても、両方の組み合わせであってもよい。例えば、螺子、差込式の棒、反応容器15に突出部を設けた構造、装着部10と反応容器15とが嵌合する構造、反応容器15の挿入の終点を決めるツメを第1熱伝導体221及び第2熱伝導体222の少なくとも一方に設けること、などを採用できる。螺子や棒を用いる場合には、螺子の長さやねじ込む長さ、棒を差込む位置を変更することで、熱サイクルの反応条件や反応容器15の大きさ等に合わせて保持する位置を調節できるようにしてもよい。
3.2.作用効果
第3実施形態の熱サイクル装置300は、第1実施形態で述べたと同様の送風機構60を有しており、第1実施形態で述べたと同様の効果を有する。第3実施形態の熱サイクル装置300によれば、温度勾配形成部20の第1熱伝導体221に対して送風する送風機構60が設けられるため、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換の効率が向上され、第1実施形態で述べたと同様の作用効果を奏することができる。また、温度勾配形成部20の第1熱伝導体221に第1放熱部261が設けられるため、第1熱伝導体221と環境との間の熱交換が効率化されている。これにより、第1熱伝導体221の設定温度を、ある温度から他の温度に変更する場合に、いわゆるオーバーシュートをさらに抑制することができる。また、第1熱伝導体221の温度を、環境の温度から離れた温度から環境の温度に近い温度へと変更する場合に要する時間をさらに短縮することができる。そのため、第3実施形態の熱サイクル装置300によれば、一回のPCRの熱サイクルをさらに短時間化できる上、当該装置で逐次的に複数回のPCRを行う場合にも、次回の反応液に対してPCRを開始可能となるまでの時間をさらに短縮することができる。特に、環境温度が室温であって、第1熱伝導体221の温度を逆転写酵素の至適温度に設定する場合には、逆転写酵素の至適温度が室温に近いため、第1熱伝導体221の温度を、他の温度から逆転写酵素の至適温度に変更する場合に要する時間を短縮することができ、上記効果が特に顕著となる。したがって、第3実施形態の熱サイクル装置300によれば、PCRによる検査の短時間化を達成することができる。
4.実験例
上記第3実施形態の第1熱伝導体221に準じ、図5ないし図8に示すような、厚さ1mm、高さ及び幅がそれぞれ10mm〜15mmの放熱部(フィン)をピッチ2mmで削りだして熱伝導体(以下、熱伝導体Aという。)を製作した。また、放熱部を削りだしていない同形の熱伝導体(以下、熱伝導体Bという。)を製作した。各熱伝導体の熱源部としてカートリッジヒーターを用い、熱電対とともにPID制御可能な制御部に接続した。なお、PIDとは、Proportinal、Integral、Differentialの略であり、PID制御とは、比例、積分、微分を組み合わせた制御の方式の1つである。
そして、最大風量0.42m3/min、最大静圧31.9Paの冷却ファンを用い、ダクト損失等から、およそ0.25〜0.35m3/minの風量と推定されるファン(山洋電機株式会社製:形式109P0624H602)を送風機構として採用して、風が熱伝導体にあたるように設置して、熱伝導体の温度制御の実験を行った。なお、環境の温度は23℃であった。
42℃から63℃への昇温、及び63℃から42℃への降温について、以下の条件で熱伝導体の温度の時間変化を測定した。
(実験1)熱伝導体Bに対して、ファンを動作させない
(実験2)熱伝導体Bに対して、ファンを動作させる
(実験3)熱伝導体Aに対して、ファンを動作させない
(実験4)熱伝導体Aに対して、ファンを動作させる
上記実験結果を、図11及び図12のグラフにまとめて示した。
図11のグラフをみると、フィンを有さない熱伝導体B及びフィンを有する熱伝導体Aのいずれに対しても、ファンを動作させると(実験2及び実験4)、昇温時に63℃に到達するまでの時間が、ファンを動作させない場合(実験1及び実験3)に比較して大幅に短縮されたことが分かる。さらに、フィンを有する場合(実験4)が、最も昇温に要する時間が短いことが分かった。詳しくは、昇温開始から63±1℃に安定するまでの時間は、実験1では約2分30秒、実験3では約2分33秒であったのに対して、実験2では約55秒、実験4では約18秒であった。また、63℃に到達した後は、温度が安定していることも確認できた。
また、図12のグラフをみると、フィンを有さない熱伝導体B及びフィンを有する熱伝導体Aのいずれに対しても、ファンを動作させると(実験2及び実験4)、降温時に42℃に到達するまでの時間が、ファンを動作させない場合(実験1及び実験3)に比較して大幅に短縮されたことが分かる。詳しくは、降温開始から42±1℃に安定するまでの時間は、実験1及び実験3では50分以上(42℃には達しなかった。)であったのに対して、実験2では約3分、実験4では約4分24秒であった。
以上の実験結果から、本発明の熱サイクル装置によれば、熱伝導体を所望の温度に到達させるまでの時間が非常に短いことが確認された。したがって、送風機構を有する熱サイクル装置は、熱サイクルの短時間化を達成することができる。また、本発明の熱サイクル装置は、より精度よく熱伝導体の温度を制御できるので、より精度の高いPCRを行うことができることが判明した。
なお、上述した各実施形態及び実験例は一例であって、本発明は、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。