本発明のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーからなるゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、動的粘弾性装置により下記条件にて測定した120℃〜150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)の値が、1.00×107dyn/cm2以上、1.00×108dyn/cm2以下、かつ、10℃における損失正接(tanδ)が、0.050以上であり、前記カバーのスラブ硬度が、ショアDで、10以上75以下であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:引張
測定温度:−50℃〜150℃
昇温速度:4℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
動的粘弾性装置を用いて前記条件にて測定した120℃〜150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)が、1.00×107dyn/cm2以上、1.00×108dyn/cm2以下である塗膜は、40ヤード未満のアプローチショットのスピン量を高くする。その結果、本発明のゴルフボールは、40ヤード未満のアプローチショットのコントロール性が高くなる。この観点から、120℃〜150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)は、1.00×108dyn/cm2以下が好ましく、8.00×107dyn/cm2以下がより好ましい。また、値が低すぎるとタック感が残ってしまうという理由から、120℃〜150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)は1.00×107dyn/cm2以上が好ましく、1.50×107dyn/cm2以上がより好ましい。
本発明のゴルフボールの塗膜は、動的粘弾性を測定したときに、120℃〜150℃の領域で、貯蔵弾性率(E’)がほぼ一定になる平坦領域を有することが好ましい。この観点から、動的粘弾弾性装置を用いて測定した120℃の貯蔵弾性率(E’120)と、150℃の貯蔵弾性率(E’150)との差の絶対値(│E’120−E’150│)は、2.00×107dyn/cm2以下が好ましく、1.00×107dyn/cm2以下がより好ましい。
本発明のゴルフボールの塗膜は、10℃における損失正接(tanδ)が、0.050以上である。損失正接(tanδ)が0.050以上である塗膜を用いることにより、40ヤード未満のアプローチショットにおいて、打出角を低く、スピン量を高くすることができる。この観点から、10℃における損失正接(tanδ)は、0.050以上がより好ましく、0.060以上がさらに好ましい。また、10℃における損失正接(tanδ)の上限は、1.0である。
塗膜の動的粘弾性は、塗膜を形成する塗料から測定用のフィルムを作製して測定する。測定用フィルムの作製方法および測定方法については、後述する。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体とゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有する。前記塗膜を構成する基材樹脂は、前記動的粘弾性特性を満足するものであれば、特に限定されないが、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるポリウレタンであることが好ましく、ポリオールと、2種以上のポリイソシアネートとを反応させてなるポリウレタンであることがより好ましい。ポリウレタンは、動的粘弾性特性の設計がしやすく、耐久性や密着性にも優れる。塗膜の貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートの種類、配合比率などを適宜選択することにより設定することができる。また、平坦領域の貯蔵弾性率は、例えば、ポリウレタンの分子量や架橋密度などにより制御することができる。
前記ポリオールとしては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量のポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;ウレタンポリオール;および、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記ポリオール成分は、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明では、ポリオール成分として、ウレタンポリオールを使用することが好ましい。前記ウレタンポリオールとは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中に水酸基を2以上有する化合物である。ウレタンポリオールとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを、ポリオールの水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを挙げることができる。
前記ウレタンポリオールを構成し得るポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ウレタンポリオールを構成し得るポリオール成分としては、前記ポリオールとして例示したものを用いることができる。本発明では、ウレタンポリオールを構成するポリオール成分として、トリオール成分とジオール成分とを含有するものが好ましい。前記トリオール成分としては、トリメチロールプロパンが好ましい。前記ジオール成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。前記トリオール成分とジオール成分の混合比率(トリオール成分/ジオール成分)は、質量比で、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
アクリルポリオールは、分子内に複数のヒドロキシル基を有するアクリル樹脂またはアクリルポリマーであり、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体と水酸基を有さない(メタ)アクリル系単量体とを共重合して得られる。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す。
前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記水酸基を有さない(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル系不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他(メタ)アクリル系単量体;などが挙げられる。これらの水酸基を有さない(メタ)アクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、アクリルポリオールは、(メタ)アクリル系単量体以外の水酸基を有する他の単量体成分および/または水酸基を有さない他の単量体成分を含有してもよい。前記水酸基を有する他の単量体成分としては、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、アリルアルコールなどの不飽和アルコールが挙げられる。前記水酸基を有さない他の単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;などが挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、400mgKOH/g以下が好ましく、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは170mgKOH/g以下であり、特に好ましくは160mgKOH/g以下である。ポリオール成分の水酸基価が上記範囲内であれば、ゴルフボール本体への塗膜の密着性が向上するからである。なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 1557−1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
前記ポリオールの重量平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは550以上、さらに好ましくは600以上であり、150,000以下が好ましく、より好ましくは140,000以下、さらに好ましくは130,000以下である。ポリオール成分の重量平均分子量が上記範囲内であれば、塗膜の耐水性、耐衝撃性を向上させることができる。なお、ポリオール成分の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
前記ポリオール成分の具体例としては、例えば、和薬ペイント社製121B、日本ポリウレタン工業社製ニッポラン(登録商標)800、ニッポラン1100、DIC社製バーノック(登録商標)D6−627、バーノックD8−436、バーノックD8−973、バーノック11−408、住化バイエルウレタン社製デモスフェン650MPA、デモスフェン670、デモスフェン1150、デモスフェンA160X、ハリマ化成社製ハリアクロン2000、ハリアクロン8500H,神東塗料社製ポリン(登録商標)#950などを挙げることができる。
次に、ポリイソシアネートについて説明する。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。本発明では、前記ポリイソシアネートとして、2種以上のポリイソシアネートを使用することが好ましい。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートのイソシアヌレート体;ジイソシアネートとトリメチロールプロパンあるいはグリセリンなどの低分子量トリオールとを反応させて得られるアダクト体;アロハネート変性体;ビュレット変性体などを挙げることができ、遊離ジイソシアネートが除去されているものがより好ましい。前記アロハネート変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られる3官能ポリイソシアネートである。前記ビュレット変性体とは、例えば、下記式(1)で表わされるビュレット結合を有する3官能ポリイソシアネートである。ジイソシアネートのイソシアヌレート体とは、例えば、下記式(2)で表わされる3官能ポリイソシアネートである。なお、式(1)、(2)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表わす。
本発明では、ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体と、イソホロンジイソシアネートの誘導体とを使用することが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体として、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体とイソシアヌレート変性体とを使用することが好ましい。イソホロンジイソシアネートの誘導体としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を使用することが好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体と、イソホロンジイソシアネートの誘導体との混合比率(HDI誘導体/IPDI誘導体)は、質量比で、80/20〜50/50が好ましく、65/35〜55/45がより好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体とイソシアヌレート変性体との混合比率(ビュレット変性体/イソシアヌレート変性体)は、質量比で、20/40〜40/20が好ましく、25/35〜35/25がより好ましい。
前記ポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、ポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、100×[ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数×42(NCOの分子量)]/ポリイソシアネートの総質量(g)で表わすことができる。
前記ポリイソシアネートの具体例としては、DIC社製バーノック(登録商標)D−800、バーノックDN−950、バーノックDN−955、住化バイエルウレタン社製デスモジュール(登録商標)N75MPA/X、デスモジュールN3300、デスモジュールL75(C)、スミジュールE21−1、日本ポリウレタン工業社製コロネート(登録商標)HX、コロネートHK、旭化成ケミカルズ社製デュラネート(登録商標)24A−100、デュラネート21S−75E、デュラネートTPA−100、デュラネートTKA−100、デグサ社製VESTANAT(登録商標) T1890などを挙げることができる。
ポリオールとポリイソシアネートとの反応において、ポリオールが有する水酸基(OH基)とポリイソシアネートが有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が、0.1未満では、硬化反応が不十分となる。また、前記モル比(NCO基/OH基)が大きくなりすぎると、イソシアネート基量が過剰となり、得られる塗膜が硬く脆くなる上に、外観も悪くなる。そのため、前記モル比(NCO基/OH基)は、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。なお、塗料中のイソシアネート基量が過剰になると得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、イソシアネート基量が過剰になると、空気中の水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。
本発明のゴルフボールの塗膜は、ポリオールと2種以上のポリイソシアネートとを含有する塗料から形成されることが好ましい。前記塗料としては、ポリオールを主剤とし、2種以上のポリイソシアネートを硬化剤とするいわゆる二液硬化型塗料を例示することができる。前記塗料としては、水を主たる分散媒とする水系塗料、有機溶剤を分散媒とする溶剤系塗料のいずれであってもよい。溶剤系塗料の場合、好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどを挙げることができる。
前記塗料は、さらに必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有してもよい。
次に、本発明の硬化型塗料の塗布方法について説明する。硬化型塗料の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装などを挙げることができる。
エアーガンを用いたスプレー塗装の場合には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをそれぞれのポンプで供給して、エアーガン直前に配置されたラインミキサーで連続的に混合し、得られた混合物をスプレー塗装してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いて、ポリオールとポリイソシアネートとを別々にスプレー塗装してもよい。塗装は、1回でスプレー塗布しても良いし、複数回重ね塗りをしても良い。
ゴルフボール本体に塗布された硬化型塗料は、例えば、30℃〜70℃の温度で1時間〜24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
乾燥後の塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、15μm以上が特に好ましい。膜厚が5μm未満では、継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなる傾向がある。また、膜厚を厚くすることによりアプローチショットのスピン量が増大するからである。また、塗膜の膜厚は、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、30μm未満がさらに好ましい。膜厚が50μm超であるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するおそれがある。塗膜の膜厚は、例えば、ゴルフボールの断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、「VHX−1000」)を用いて測定することができる。なお、塗料を複数回重ね塗りした場合は、形成された塗膜全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
本発明のゴルフボール本体表面に設けられる塗膜のマルテンス硬度は、4.0mgf/μm2以下が好ましく、3.5mgf/μm2以下がより好ましく、3.0mgf/μm2以下がさらに好ましい。マルテンス硬度は、後述する方法により測定することができ、微小領域での硬度の測定に適している。マルテンス硬度が4.0mgf/μm2以下であれば、塗膜が柔らかくなり、スピン量が高くなるからである。前記マルテンス硬度の下限は、特に限定されないが、0.01mgf/μm2が好ましい。マルテンス硬度が低くなりすぎると、柔らかくなりすぎて、タック感が残ってしまうからである。
前記塗膜の10%モジュラスは、160kgf/cm2以下が好ましく、130kgf/cm2以下がより好ましく、110kgf/cm2以下がさらに好ましい。10%モジュラスが、160kgf/cm2以下であれば、塗膜が軟質であり、アプローチショットのスピン量が高くなる。塗膜の10%モジュラスの下限は、特に限定されないが、2kgf/cm2が好ましく、5kgf/cm2がより好ましい。10%モジュラスが小さすぎると、柔らかくなりすぎて、タック感が残り、フィーリングが悪くなるからである。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとからなる構造であれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造としては、例えば、コアと前記コアを被覆する一層のカバーとを有するツーピースゴルフボール;コアと前記コアを被覆する中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール;フォーピースゴルフボール;ファイブピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール2は、球状コア104と、球状コア104を被覆する中間層106と、前記中間層106を被覆するカバー112とを有する。このカバー112の表面には、多数のディンプル114が形成されている。このゴルフボールの表面のうち、ディンプル114以外の部分は、ランド116である。このゴルフボールは、カバーの外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
本発明のゴルフボールは、前記カバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で、10以上、好ましくは15以上、より好ましくは20以上であり、75以下、好ましくは73以下、より好ましくは70以下である。カバーの硬度がショアD硬度で75以下であれば、40ヤード〜100ヤード程度の距離のアプローチショットにおけるスピン量が高くなり、コントロール性が向上する。カバーのスラブ硬度とは、カバーを形成するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
また、特にコントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、55未満が好ましく、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下である。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で55未満であれば、40ヤード〜100ヤード程度の距離のアプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすくなり、かつ、打球感が良好となる。また、スラブ硬度を10以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。
一方、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で55以上が好ましく、より好ましくは58以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。カバーのスラブ硬度を55以上にすることにより、ドライバーショットおよびロング、ミドルアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が大きくなる。また、カバー用組成物のスラブ硬度を75以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは二液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
上述したように、カバーのスラブ硬度を、ショアD硬度で10以上55未満とする場合には、カバー用組成物がポリウレタンを含有することが好ましい。ポリウレタンを使用する場合には、カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
前記ポリウレタンは、分子鎖内にウレタン結合を複数有するポリマーであり、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。必要に応じて、さらに低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンなどの鎖延長剤により鎖延長反応がなされていてもよい。
前記ポリウレタンを構成するポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDI、NBDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
ポリウレタンを構成するポリオール成分としては、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、鎖延長剤として使用される低分子量ポリオールやソフトセグメントを構成する重合体ポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。重合体ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。本発明で使用するポリウレタンを構成するポリオール成分は、ポリオキシテトラメチレングリコールであることが好ましい。
重合体ポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上であることが好ましく、より好ましくは1,000以上である。重合体ポリオールの数平均分子量が小さくなりすぎると、得られるポリウレタンが硬くなり、ゴルフボールの打球感が低下するからである。重合体ポリオールの数平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、10,000以下、より好ましくは8,000以下である。
必要に応じてポリウレタンを構成し得るポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、及び、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
また、上述したように、カバーのスラブ硬度を、ショアD硬度で55以上75以下とする場合には、カバー用組成物がアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、カバー用組成物の樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
本発明において、全てのディンプルの面積の合計の仮想球の表面積に対する比率は、占有率と称される。仮想球とは、ディンプルが存在しないとしたときのゴルフボール(球体)である。本発明のゴルフボールにおいて、ディンプルの占有率は、60%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、66%以上がさらに好ましく、95%以下が好ましく、92%以下がより好ましく、89%以下がさらに好ましい。占有率が高くなりすぎると、後述する摩擦係数に対する塗膜の寄与が小さくなる。また、占有率が小さすぎると、飛行性能が低下する。
なお、ディンプルの面積は、無限遠からゴルフボールの中心を見た場合の、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプルの場合、面積Sは下記数式によって算出される。
S=(Dm/2)2・π (Dm:ディンプルの直径)
図2には、ディンプル114の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。図2における上下方向は、ディンプル114の深さ方向である。図2において二点鎖線118で示されているのは、仮想球である。仮想球の表面は、ディンプル114が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル114は、仮想球の表面から凹陥している。ランド116は、仮想球の表面と一致している。本実施形態では、ディンプル114の断面形状は、実質的には円弧である。
図2において両矢印Dmで示されているのは、ディンプル114の直径である。この直径Dmは、ディンプル114の両側に共通の接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル114のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル114の輪郭を画定する。図2において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル114の深さである。この深さDpは、ディンプル114の最深部と接線Tgとの距離である。
ディンプルの直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプルは、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるディンプルは、実質的に球であるというゴルフボール2の本質を損なわない。この観点から、直径Dmは5.8mm以下がより好ましく、5.6mm以下が特に好ましい。
図2において矢印CRで示されているのは、ディンプル114の曲率半径である。曲率半径CRは、下記数式(1)によって算出される。
CR=(Dp2+Dm2/4)/(2×Dp) (1)
その断面形状が円弧でないディンプル114の場合でも、上記数式(1)に基づいて、近似的に曲率半径CRが算出される。
十分な占有率が達成されるとの観点から、ディンプルの総数は300個以上が好ましく、310個以上がより好ましく、320個以上が特に好ましい。個々のディンプルが乱流化に寄与しうるとの観点から、総数は500個以下が好ましく、490個以下がより好ましく、480個以下が特に好ましい。
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプルの輪郭を含む平面とディンプルの表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプルの総容積は250mm3以上が好ましく、260mm3以上がより好ましく、270mm3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は450mm3以下が好ましく、440mm3以下がより好ましく、430mm3以下が特に好ましい。
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル114の深さDpは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さDpは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。
ゴルフボールの直径は、40mm〜45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は、42.67mm以上が好ましい。空気抵抗の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
次に、糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコアについて説明する。
前記コアには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下が好ましい。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間と2段階加熱することが好ましい。コアは、単層コアでよいし、センターと包囲層とからなる2層コアでもよい。
本発明のゴルフボールが、3ピース、4ピースゴルフボール、5ピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボールである場合には、コアと最外層カバーとの間に設ける中間層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体とゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有するゴルフボールであって、接触力試験機を用いて算出した摩擦係数が、0.35以上、0.60以下であることが好ましい。
本発明において、接触力試験機を用いて算出する摩擦係数は、ゴルフボールの飛行方向に対して、所定の角度で傾斜して設置された衝突板に、ゴルフボールを衝突させたときのゴルフボールと衝突板の摩擦係数である。接触力試験機により、衝突板に垂直な方向の接触力の時間関数Fn(t)および衝突板に平行な方向の接触力の時間関数Ft(t)を同時に求め、次の式で定義される両者の比の時間関数M(t)の最大値を、摩擦係数して求める。
M(t)=Ft(t)/Fn(t)
本発明における摩擦係数の算出方法を、図3〜図5に基づいて説明する。図3は、摩擦係数を測定するための接触力試験機である。図4は、ゴルフボールを衝突させる衝突板4の拡大断面図である。
前記接触力試験機1は、ゴルフボールをクラブフェースで打撃する状態を擬似的に作り出してそのときの各種の力を測定することができる。接触力試験機1は、例えば垂直上向きにゴルフボール2を発射しうる発射装置5と、発射されたゴルフボール2の上部に位置することにより、前記ゴルフボール2と衝突する打撃面3を有する衝突板4とを含んでいる。
発射装置5と打撃面3との距離が比較的小さいので、ゴルフボール2の初速度は、前記衝突速度に相当する。また、この衝突速度は、実際のゴルフスイングにおいて、クラブヘッドのヘッドスピードに対応している。このような点に鑑み、ゴルフボール2と打撃面3との衝突速度は、例えば約10m/s〜50m/s程度の範囲の中から設定しうる。本発明では、アプローチショットのヘッドスピードを考慮して、初速度を19m/秒とした。
前記ゴルフボール2の初速度は、コントローラ6のボリューム等によって目標値が設定される。また、発射装置5に設けられた第1センサS1と第2センサS2との間の距離と、このセンサを遮断する時間差とを用いて、コントローラ6はゴルフボール2の初速度の実測値を計算し、かつ、コンピュータ装置PC等に出力できる。
図4には、衝突板4の拡大部分断面図が示される。前記衝突板4は、ゴルフボール2の発射方向(飛行方向)に対して任意の角度αで打撃面3を傾けることができる。本発明では、90度からこの角度αを差し引いた角度θを衝突角度とする。この衝突角度θは、実際のスイングにおいてクラブフェース(図示せず)のロフト角に対応している。また、上記衝突角度θは、例えば10°〜90°の範囲の中からゴルフクラブのロフト角を考慮して複数の値(例えば、15゜、20゜、35゜等)が設定され、それぞれで後述の接触力の測定を行うことができる。本発明では、アプローチショットのスピン量を再現するために、衝突角度θを55°とした。
前記衝突板4は、例えば金属製の板材からなるベース板4aと、前記打撃面3を構成する表層板4cと、これらの間に挟まれた圧力センサ4bとを具え、これらは互いにボルト4dで一体に固着される。
前記ベース板4aは所定強度と剛性を有するものであればよく、その材質は、特に制限されないが、好ましくはスチールが用いられる。ベース板4aの厚みは、5.0mm〜20.0mmであることが好ましい。また、JIS規格による主ボルト4dの型番は、例えばM10である。
前記圧力センサ4bは、例えば、3成分力センサが好適に使用される。このようなセンサは、少なくとも、打撃面3と垂直な方向の垂直力Fnと、打撃面3に平行な方向(クラブフェースではソール側からクラウン側の方向)のせん断力Ftとを時系列データとして測定できる。また、力の測定は、圧力センサ4bにチャージアンプ等を接続して行われる。
圧力センサ4bには、各種製品が使用できるが、例えば、キスラー社の3成分力センサ(型式9067)が使用される。このセンサは、平行な方向、Y方向及び垂直な方向の力の成分を測定できる。圧力の測定は、図示されていないが、圧力センサ4bにチャージアンプ(キスラー社の型式5011B)を接続して行われる。圧力センサ4bの中心には貫通孔が形成され、この貫通孔に主ボルト4dを挿入して圧力センサ4bはベース板4aに固着一体化させている。
前記表層板4cは、本体4c1と、その外側に配されることにより打撃面3に表れかつゴルフボール2と衝突するのに十分な面積を持った表層材4c2とから構成される。これらは、図示しないボルト等を用いて脱着自在に固着されている。従って、表層材4c2の材料、表面形状及び/又は表面構造を任意に変更することにより、各種のクラブフェースの近似的モデルを作成してその接触力を測定できる。
本体4c1の材料は限定されないが、一般的にはステンレススチール(SUS−630)が使用される。本体4c1の厚みは、通常10mm〜20mmである。また、本体4c1の平面形状は圧力センサ4bの平面形状と実質的に同一とすることができ、例えば、一辺が40mm〜60mmの正方形である。本体4c1には主ボルト4dの先端が螺入されている。これによってベース板4aと本体4c1との間に圧力センサ4bが挟まれその位置が固定される。
衝突板4の打撃面3をなす表層材4c2は、各種材料、表面形状及び表面構造が採用できるが、解析対象として予め設定されたゴルフクラブヘッドのフェース(図示省略)と同一の材料で形成されるのが良い。本発明では、アプローチショットのモデルを評価する観点から、前記表層材4c2は、例えば、クリーブランドゴルフ社のCG−15のヘッド材料と同一の材料であるSUS−431ステンレスを使用した。表層材4c2の厚みは、任意に変更できるが、例えば、1.0mm〜5.0mmである。また、表層材4c2の平面形状は前記本体4c1の平面形状と実質的に同一寸法とし、例えば、一辺が40mm〜60mmの正方形とすることができる。
さらに、接触力試験機1は、打撃面3とゴルフボール2との衝突及び衝突して跳ね返るゴルフボール2を撮影しうるストロボ装置7及びハイスピード型のカメラ装置8を含んでいる。前記ストロボ装置7は、ストロボ電源9に接続される。また、カメラ装置8は、コンデンサボックスを介してカメラ電源10に接続されている。そして、撮像されたデータは、前記コンピュータ装置PC等に記憶される。これらの機器を含ませることにより、後述するゴルフボール2と打撃面3との衝突時のすべり速度や、接触面積、ゴルフボールの打ち出し速度、打ち出し角度及びバックスピン量などを測定することができる。
図5には、上記接触力試験機1で測定された一条件のゴルフボール2と打撃面3との衝突時に打撃面3が受けた垂直力Fnとせん断力Ftとの時刻歴が示される。
図5は、図3及び図4の測定装置で測定されるFn(t)及びFt(t)の一例が示されたグラフである。図5において、点P0は圧力センサ4bが力を感知し始める点であり、打撃面3とゴルフボール2との衝突開始時にほぼ相当する。そして垂直な方向の接触力であるFn(t)は点P0から徐々に増加し、点P4で最高値となり、ここから減少して点P3でゼロとなる。この点P3は、圧力センサ4bが力を感知しなくなった点であり、打撃面3からゴルフボール2が離れた時点にほぼ相当する。
一方、衝突板に平行な方向の接触力(すなわちせん断力)であるFt(t)の値は時間経過と共に点P0から増加し点P1で最高値となり、それから減少して点P2でゼロとなり、それ以降は負の値となる。点P3でゴルフボールが圧力センサ4bから離れるので、圧力センサ4bで感知されるFt(t)のカーブは点P3でゼロとなる。Ft(t)のカーブと時間軸とで囲まれた領域のうちFt(t)が正の値をとる領域の面積S1は、せん断力が正である力積を表す。一方、Ft(t)のカーブと時間軸とで囲まれた領域のうちFt(t)が負の値をとる領域の面積S2は、せん断力が負である力積を表す。力積S1はバックスピンを促進する方向に作用し、力積S2はバックスピンを抑制する方向に作用する。ここで、力積S1は力積S2よりも大きい値をとり、力積S1から力積S2を減じた値が、ゴルフボールのバックスピンに寄与する。
そして摩擦係数として求めるには、Ft(t)/Fn(t)で得られるM(t)の最大値を算出することで得ることができる。
本発明では、前記のようにして求めた摩擦係数が、0.35以上が好ましく、0.37以上がより好ましく、0.39以上がさらに好ましく、0.60以下が好ましく、0.56以下がより好ましく、0.54以下がさらに好ましい。摩擦係数が、前記範囲内であれば、アプローチショットのスピン量が良好になる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)摩擦係数の測定
図3、4に示す接触力試験機を用いて、ゴルフボールの摩擦係数を測定した。
1.測定装置の仕様
(A)発射装置:エアガン方式
(B)衝突板 :
ベース板4a
スチール
厚さ:5.35mm
表層板4c
本体4c1
サイズ :56mm×56mm×15mm
ステンレススチール(SUS−630)
表層材4c2
サイズ :56mm×56mm×2.5mm
金属組成:SUS−431
溝形状:図6参照
傾斜角度(α)
35度(ゴルフボールの飛行方向に対して)
(C)圧力センサ4b
キスラー社の3成分力センサ(型式9067)
チャージアンプ
キスラー社の型式5011B
(D)接触力のPCへの取り込み
パルスカウンタボード PCI−6101(インターフェイス社製)を用いた。16ビット4チャンネルを持つPCIパルスカウンタボードで、4種類のカウンタモードで用途に合った計測が実現できる。最大入力周波数は1MHz。
図6に示したように、衝突板4の打撃面3(図3参照)には、クリーブランド社製サンドウエッジCG−15の溝構造を再現している。図6(a)に示すように、打撃面3には、大きな溝(ジップグルーブ)と、大きな溝(ジップグルーブ)間の表面に、小さな溝が複数設けられている。図6(b)は、ジップグルーブの断面構造の拡大図である。ジップグルーブの寸法は、下記の通りである。
ジップグルーブ(溝)幅W:0.70mm
ジップグルーブ(溝)深さh:0.50mm
ジップグルーブ(溝)ピッチ:3.56mm
ジップグルーブ(溝)角度α:10°
ジップグルーブ肩R:0.25
ジップグルーブ間の複数の小さな溝は、ジップグルーブ間の表面部分が、表面粗さRa=2.40±0.8μm、Rmax=14.0±8μmになるように、レーザーミーリングにより形成されている。なお、表面粗さRa、Rmaxは、表面粗さ測定機(ミツトヨ社製、「SJ−301」)を用いて、測定長さ=2.5mm、カットオフ値=2.5mmの測定条件で測定する。
2.測定手順
摩擦係数の測定は次の方法で行った。
(a)衝突板の角度(α)をゴルフボールの飛行方向(垂直方向)に対して、35度に設定した。
(b)発射装置5のエア圧を調整する。
(c)発射装置からゴルフボールを発射する。
(d)予め設定したセンサS1とセンサS2(図3参照)の距離とこの間のゴルフボールの遮蔽時間差からゴルフボール初速度を測定する。ゴルフボール初速度は19m/sとなるように調整した。
(e)接触力Fn(t)、接触力Ft(t)を測定し、Ft(t)/Fn(t)の最大値を算出する。
3.測定結果
前記試験装置、測定手順で測定された結果の一例を図7に示す。図7からM(t)の値は、Ft(t)/Fn(t)として算出され、その最大値は0.58となる。なおFt、Fnは接触力の立ち上がる初期と終期においてノイズが発生しやすいので、初期の前段階、終期の後段階をトリムしてM(t)の最大値を算出する。
(3)塗膜のマルテンス硬度
エリオニクス社製のナノインデンター「ENT−2100」を用いて測定した。
測定条件は、以下の通りである。
荷重F:20mgf
バーコビッチ圧子の角度α:65.03°
バーコビッチ圧子の材質:SiO2
押し込み深さhと圧子の角度αとに基づいて、下記数式によって面積As(h)が算出される。
As(h)=3×31/2×tanα/cosα×h2
荷重Fと面積As(h)に基づいて、下記数式によってマルテンス硬度が算出される。
マルテンス硬度=F/As(h)
測定サンプル:主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚みが100μmの塗膜シートを作製して、測定に用いた。
(4)塗膜の機械的物性
主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜を作製した。JIS−K7161に準じて、この塗膜をダンベル形状に打ち抜いて試験片を作製し、引張試験測定装置(島津製作所製)を用いて塗膜の物性を測定し、10%伸長時のモジュラスを算出した。
試験片の膜厚:0.05mm
引張速度:50mm/分
(5)動的粘弾性の測定
塗膜の貯蔵弾性率E’(dyn/cm2)および損失正接(tanδ)を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000
測定サンプル:主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11mm−0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:−50℃〜150℃
昇温速度:4℃/分
測定データ取り込み間隔:4℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
120℃の貯蔵弾性率E’120には、測定データ取り込みを4℃間隔とし、測定温度が120℃以上の温度で、最初にデータを取り込んだ貯蔵弾性率の値を採用した。150℃の貯蔵弾性率E’150には、測定データ取り込みを4℃間隔とし、測定温度が150℃以下の温度で、最後にデータを取り込んだ貯蔵弾性率の値を採用した。10℃の損失正接(tanδ)には、測定データ取り込みを4℃間隔とし、測定温度が10℃以上の温度で、最初にデータを取り込んだ損失正接の値を採用した。
(6)アプローチショットのスピン量(21m/s:40ヤード〜100ヤードのショットに相当)
ツルーテンパー社製スイングロボットM/Cに、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製CG15フォージドウエッジ(52°))を取り付け、ヘッドスピード21m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。なお、ゴルフボールNo.1〜18のスピン量は、ゴルフボールNo.11のスピン量との差で示した。
(7)アプローチショットのスピン量(10m/s:40ヤード未満のショットに相当)
ツルーテンパー社製スイングロボットM/Cに、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製CG15フォージドウエッジ(52°))を取り付け、ヘッドスピード10m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。打出角は、スイングロボットM/Cの打球方向前方に設けた線状レーザ光源による光のスクリーンを、ボールが通過するときの影を一次元CCDセンサで計測した。なお、ゴルフボールNo.1〜18のスピン量、打出角は、ゴルフボールNo.11との差で、ゴルフボールNo.19〜34のスピン量、打出角は、ゴルフボールNo.26との差で示した。
(8)ドライバーショットのスピン量
ツルーテンパー社製のスイングロボットM/Cに、チタンヘッドを備えたドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト10.0°)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。なお、ゴルフボールNo.19〜34のスピン量は、ゴルフボールNo.26との差で示した。
(9)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製、CG15フォージドウエッジ(52°))を用いた実打テストを行った。フィーリング良好(フェースに乗っている感じがして良い、ひっかかる感じがして良い、スピンがきく感じがして良い、くっつく感じがして良い等)と答えた人数に基づいて、以下の様に評価した。
◎:9人以上
○:6人〜8人
△:3人〜5人
×:2人以下
[ゴルフボールの作製]
(1)センター用組成物の作製
表1に示す配合の材料を混練し、センター用組成物を作製した。
ポリブタジエン:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
ZNDA−90S:日本蒸溜工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸亜鉛コーティング品)
サンセラーSR:三新化学工業社製、アクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
2−チオナフトール:東京化成工業社
ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド:川口化学工業社
オクタン酸亜鉛:三津和化学薬品社
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
(2)中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2、表3に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
サーリン8945:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7337:三井デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
エラストランXNY97A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ラバロンT3221C:三菱化学社製、熱可塑性ポリスチレンエラストマー
チヌビン770:BASFジャパン社製、ヒンダードアミン系安定剤
エラストランXNY73A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY75A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY80A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY82A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY83A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY85A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランXNY95A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
ハイミラン1706:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミラン1555:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
サーリン8945:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミランAM7337:三井デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ノバミッドST220:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリアミド樹脂(高
衝撃グレード、曲げ弾性率:2000MPa)
ニュクレルN1050H:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体
チヌビン770:BASFジャパン社製、ヒンダードアミン系安定剤
(3)ゴルフボール本体の作製
(3−1)ゴルフボールNo.1〜16、19〜32
センター用組成物No.Aを混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.3mmの球状センターを得た。
上記で得た中間層用組成物No.Aを、前述のようにして得た球状センター上に直接射出成形することにより、前記センターを被覆する中間層(厚さ1.0mm)を形成した。成形用上下型は、半球状キャビティと、球状センターを支持する進退可能なホールドピンとを有している。中間層成形時には、上記ホールドピンを突き出し、センターを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きした。
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物(表5〜8に示す)をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
上記で得られた中間層被覆球体を上記で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバーを成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
(3−2)ゴルフボールNo.17
センター用組成物No.Bを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が39.5mmである球状センターを得た。金型に、球状センターを投入し、上記で得た中間層用組成物No.Bを、射出成形法にて球状センターの周りに射出し、第一中間層(厚さ1.0mm)を成形した。上記で得た中間層用組成物No.Cから、圧縮成形法にてハーフシェルを成形し、このハーフシェルから圧縮成形法にて第一中間層を被覆する第二中間層(厚さ0.3mm)を形成した。カバー用組成物No.kから、圧縮成形法にてハーフシェルを成形し、このハーフシェルから圧縮成形法にて第二中間層を被覆するカバー(厚さ0.3mm)を形成した。
(3−3)ゴルフボールNo.18
センター用組成物No.Cを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が15mmである球状センターを得た。上記で得たセンター用組成物No.Dから、圧縮成形法にてハーフシェルを成形し、このハーフシェルから圧縮成形法にて球状センターを被覆する包囲層(厚さ12.25mm)を形成した。次いで、上記ゴルフボールNo.17と同様に、第一中間層(厚さ1.0mm)、第二中間層(厚さ0.3mm)カバー(厚さ0.3mm)を形成した。
(3−4)ゴルフボールNo.33
センター用組成物No.Eを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が37.9mmである球状センターを得た。金型に、球状センターを投入し、上記で得た中間層用組成物No.Dを、射出成形法にて球状センターの周りに射出し、第一中間層(厚さ0.8mm)を成形した。さらに、上記で得た中間層用組成物No.Eを、射出成形法にて第一中間層の周りに射出し、第二中間層(厚さ0.8mm)を成形した。最後に、上記で得たカバー用組成物No.lを、射出成形法にて第二中間層の周りに射出し、カバー(厚さ0.8mm)を成形した。
(3−5)ゴルフボールNo.34
センター用組成物No.Eを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が36.3mmである球状センターを得た。金型に、球状センターを投入し、上記で得た中間層用組成物No.Dを、射出成形法にて球状センターの周りに射出し、第一中間層(厚さ0.8mm)を成形した。次に、上記で得た中間層用組成物No.Eを、射出成形法にて第一中間層の周りに射出し、第二中間層(厚さ0.8mm)を成形した。さらに、上記で得た中間層用組成物No.Fを、射出成形法にて第二中間層の周りに射出し、第三中間層(厚さ0.8mm)を成形した。最後に、上記で得たカバー用組成物No.lを、射出成形法にて第三中間層の周りに射出し、カバー(厚さ0.8mm)を成形した。
(4)塗料の調製
表4に示したポリオールとポリイソシアネートとを配合して塗料を調製した。なお、主剤は、メチルエチルケトン、酢酸n−ブチル、トルエンの混合溶媒を用いて、ポリオール成分の濃度が30質量%になるように調整した。硬化剤は、溶媒として、メチルエチルケトン、トルエンの混合溶媒を用いて、ポリイソシアネート成分の濃度が60質量%になるように調整した。得られた塗料について、塗膜の物性を測定し、表5〜8に示した。また、各塗料についての動的粘弾性スペクトルを図9〜13に示し、各塗料の貯蔵弾性率(E’)と温度との関係を図14、各塗料の損失正接(tanδ)と温度との関係を図15に示した。
表4で用いた原料は、以下の通りである。
主剤
神東塗料社製ポリン#950:水酸基価128mgKOH/g、ポリオール成分(トリメチロールプロパン、ポリオキシテトラメチレングリコール)と、ポリイソシアネート成分(イソホロンジイソシアネート)とからなるウレタンポリオール
硬化剤
HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のビュレット変性体:旭化成ケミカルズ社製、「デュラネート(登録商標)21S−75E」(NCO含有率:15.5%)
HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のイソシアヌレート変性体:旭化成ケミカルズ社製、「デュラネートTKA−100」(NCO含有率:21.7%)
IPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアヌレート体:デグサ社製、「VESTANAT(登録商標) T1890」(NCO含有率:12.0%)
(5)塗膜の形成
(3)で得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mmのゴルフボールを得た。塗膜の厚さは、ゴルフボールNo.1〜13、17〜29、32〜34は20μm、ゴルフボールNo.14、30は30μm、ゴルフボールNo.15、31は40μmとした。塗装は、図8に示した回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃〜27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールについて評価した結果を併せて表5〜8に示した。
表5〜8の結果より、塗膜の120℃〜150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)が、1.00×107dyn/cm2以上、1.00×108dyn/cm2以下であり、10℃における損失正接(tanδ)が0.050以上、かつ、カバーのスラブ硬度が10以上75以下であるゴルフボールは、40ヤード未満のアプローチショット、特にグリーン周り(10〜20ヤード程度)からのアプローチショットにおけるコントロール性が向上していることが分かる。