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JP6066184B2 - 表面修飾炭素材の製造方法 - Google Patents
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JP6066184B2 - 表面修飾炭素材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水等の液状媒体への分散性に優れた表面修飾炭素材の製造方法に関する。
カーボンナノチューブやフラーレン、炭素繊維等の炭素材は、高強度、高伝導性、高熱伝導性等の優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めている。かかる炭素材に関し、単独での利用のみならず、これを他の材料に分散させた複合材料として利用することについても種々検討されている。例えばカーボンナノチューブを分散媒に分散させたカーボンナノチューブ分散液は、導電性付与剤や帯電防止剤として利用することが検討されている。また、該カーボンナノチューブ分散体をフィルムやシート等の基板上に塗布して導電層を形成し、この基板をディスプレイのエミッタ材料、燃料電池用電極材料、ガス吸蔵材料等に利用することが検討されている。
カーボンナノチューブをこれらの用途で使用するためには、カーボンナノチューブを分散媒に良好に分散させることが必要である。しかし、カーボンナノチューブは、他の材料(液状媒体)に均一に分散しにくいという欠点があり、現状では分散が不完全なまま用いられていることも多い。この点に関して、カーボンナノチューブの分散性を向上させる方法が種々検討されている。例えば、特許文献1には、発煙硝酸中または発煙硝酸と濃硫酸との混酸中、カーボンナノチューブに超音波処理を施して、カーボンナノチューブを分散させる方法が記載されている。また、非特許文献1には、濃硫酸と濃硝酸との混酸中、カーボンナノチューブにマイクロ波を照射して、上記カーボンナノチューブの分散性を向上させる方法が記載されている。
特開2010−24127号公報
Somenath Mitra et al., J.Am.Chem.Soc.2006,128,95-99
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、長時間の超音波処理が必要とされ、また多くの手間がかかる。さらに、発煙硝酸や濃硫酸といった取り扱いに注意を要する試薬を多量に用いるため、液の管理が難しく、経済性や安全性の面から工業的に有用な方法とは言い難い。また、特許文献2のマイクロ波の照射によると、比較的高速での分散が可能であるものの、分散性に劣り、高濃度の分散液を得ることが難しいという問題がある。本発明は上記課題を解決するものである。
上記課題を解決するべく本発明によって表面修飾炭素材の製造方法が提供される。この製造方法は、アミノカプロン酸と炭素材とを含む水溶液を用意することと、前記水溶液中でプラズマを発生させることを包含する。なお、本明細書において、「アミノカプロン酸」とは合成アミノ酸の一種であり、下記に示す一般式で表されるε−アミノカプロン酸を指す。
NCH(CHCHCOOH (式1)
かかる表面修飾炭素材の製造方法によると、アミノカプロン酸と炭素材とを含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、炭素材の表面にアミノカプロン酸に由来する化学修飾基が導入され、水等の液状媒体への親和性が向上する。そのため、水等の液状媒体に、より高濃度で分散させることが可能な表面修飾炭素材を製造することができる。かかる表面修飾炭素材を液状媒体に分散した分散液は、安定した分散状態が長期間にわたって維持され得る。そのため、使用直前に、攪拌等の分散処理を行う必要がなく、作業効率を低下させることはない。このため、該分散液は原材料として扱い易く、好ましく利用され得る。
以下、液中で発生されたプラズマを単に「液中プラズマ」という場合がある。この液中プラズマは、典型的には、液体中に浸漬した電極対にマイクロ波や高周波を印加することで液体中に発生される気相内に形成することができ、通常の気相中(典型的には、減圧ないしは大気圧中)で発生される気相プラズマとは異なる物理的および化学的性質を示す。
ここに開示される表面修飾炭素材の製造方法の好ましい一態様では、前記プラズマを発生させる前の前記水溶液におけるアミノカプロン酸の濃度を、少なくとも0.05mol/L(例えば0.05mol/L〜0.5mol/L)に調整する。かかる態様によれば、表面修飾炭素材の液状媒体への分散性を向上させる効果がさらに高まる。なお、本明細書においてアミノカプロン酸の濃度は、特にことわりの無い限り体積モル濃度(単位:mol/L)であり、溶液1L中に含まれるアミノカプロン酸(溶質)のモル数を示すものとする。
ここに開示される表面修飾炭素材の製造方法の好ましい一態様では、前記炭素材として、カーボンナノチューブを用いる。カーボンナノチューブは、種々の応用分野におけるカーボン複合材料として有用である一方で、多数のチューブが絡み合って凝集しやすく、均一な分散が難しい。しかし、本発明の製造方法によると、カーボンナノチューブのような低分散性の炭素材に対しても有効である。したがって、ここで開示される製造方法は、カーボンナノチューブのような有用な炭素材の液状媒体への分散性を向上させることができるという利点を有する。
ここに開示される表面修飾炭素材の製造方法の好ましい一態様では、前記カーボンナノチューブの分散に先立って、前記カーボンナノチューブを粉砕処理(例えば剪断処理)する。かかる態様によれば、物理的な粉砕処理によって、絡み合っていたカーボンナノチューブを解すことができる。そのため、カーボンナノチューブの液状媒体への分散性を向上させる効果がさらに高まる。好ましくは、前記粉砕処理は、前記カーボンナノチューブのSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)観察における平均長さが5μm以下となるように行われる。
ここに開示される表面修飾炭素材の製造方法の好ましい一態様では、前記プラズマが、グロー放電プラズマである。液中で発生されるプラズマは、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電の形態であり得る。なかでも、本態様の製造方法では、液中プラズマのより好ましい形態としてグロー放電プラズマを炭素材の表面修飾に利用しており、非平衡な低温プラズマを発生させることができ、より安定的に炭素材の表面修飾を行うことができる。
また、上記課題を解決するべく、本発明によって炭素材分散液が提供される。この炭素材分散液は、ここで開示される製造方法により製造された表面修飾炭素材が液状媒体に分散されてなる。好ましくは、常温で静置した場合に、少なくとも20日間(好ましくは30日間以上)表面修飾炭素材が分散状態を維持する。かかる分散液は、攪拌等の操作を行わずに常温で静置しても、表面修飾炭素材が凝集して沈降することなく良好な分散状態を長期間維持することができる。また、かかる分散液は、分散剤等の添加物が含まれていないため、使用条件の制約が少なく、組成の自由度が高い。すなわち、利用目的に応じて、該分散液に所望の機能を付与し得る成分を添加して所望の組成に調製し易い。したがって、かかる分散液は、原材料(例えば機能性材料)として幅広い分野で利用され得る。例えば、電池電極材料等の触媒、半導体材料、ディスプレイのエミッタ材料、燃料電池用電極材料、ガス吸蔵材料、その他の機能性粉末等として好適に使用し得る。
ここに開示される炭素材分散液の好ましい一態様では、全量を100質量%として前記表面修飾炭素材の含有率が1質量%〜20質量%である。このような高濃度の炭素材分散液であっても、良好な分散状態を長期にわたって維持し得る。また好ましくは、前記液状媒体のpHが8以上である。かかる態様によれば、表面修飾炭素材の液状媒体への分散性を向上させる効果がさらに高まり、安定した分散状態がより長期間にわたって維持され得る。
炭素材の表面修飾に用いる液中プラズマ発生装置の構成の一例を示す模式図である。 炭素材の表面修飾に用いる液中プラズマによる反応場の構成を例示した模式図である。 実施例1において得られたカーボンナノチューブ分散液(1質量%)の光学写真である。 実施例1において得られたカーボンナノチューブ分散液(9質量%)の光学写真である。 比較例1において得られたカーボンナノチューブ分散液(1質量%)の光学写真である。 比較例6において得られたカーボンナノチューブ分散液(9質量%)の光学写真である。 プロトン濃度を変化させた場合のカーボンナノチューブ分散液の時間変化を示す光学写真である。 溶液のpHと表面修飾カーボンナノチューブのゼータ電位との関係を示すグラフである。
以下、本発明の表面修飾炭素材の製造方法について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、水溶液中で発生させるプラズマの特徴等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、プラズマ発生装置や炭素材などの製造方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される表面修飾炭素材の製造方法は、アミノカプロン酸と炭素材とを含む水溶液を用意することと、前記水溶液中でプラズマを発生させることとを包含する。
かかる表面修飾炭素材を製造するための原料として使用される炭素材(すなわち表面修飾される炭素材)としては、炭素材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンブラック、フラーレン、グラフェン、炭素繊維、等を単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。ここでカーボンナノチューブとは、当該技術分野において通常用いられる技術用語の意義であって特別な限定はない。すなわち、炭素から構成される筒(チューブ)状物質であり、典型的には、炭素の6角網目のグラフェンシートがチューブの軸に平行に管を形成しているものをいう。かかるグラフェンシートが1枚の構造である単層カーボンナノチューブを使用してもよく、複数(典型的には2〜5枚)のグラフェンシートが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ)を使用してもよい。
以下、カーボンナノチューブから実質的に構成される炭素材が表面修飾されてなる表面修飾カーボンナノチューブの製造方法に本発明を適用する場合を主な例として、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明の適用対象を限定する意図ではない。
表面修飾カーボンナノチューブを製造するための原料として使用されるカーボンナノチューブの種類は特に限定されず、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等の各種方法により製造されたカーボンナノチューブを適宜選択して用いることができる。典型的には、上記原料として、多数のカーボンナノチューブが凝集したカーボンナノチューブ凝集体が好ましく用いられる。該凝集体は、カーボンナノチューブ以外に、チューブを形成しないアモルファスカーボン等の炭素成分(不純物炭素)や触媒金属等を含んでもよい。このようなカーボンナノチューブ凝集体(原料)として、上述のような各種方法(例えばアーク放電法)により得られた生成物をそのまま使用してもよく、或いは、予め細かく粉砕したものであってもよい。ここで開示される製造方法は、ある程度の大きさをもったカーボンナノチューブをも容易に分散し得るため、粉砕等の前処理をしていないカーボンナノチューブに対して特に好適な分散方法であるといえる。ただし、より高濃度且つ均一に分散させる観点からは、カーボンナノチューブに対して粉砕処理(例えば剪断処理)を事前に行っていてもよい。かかる粉砕処理に用いる装置は特に限定するものではないが、例えば、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル、ミキサー、高圧ホモジナイザー、ディスパー、ニーダ等が挙げられる。特にジェットミル、ビーズミルあるいはそれらを併用した装置の使用が好ましい。
上記原料を構成するカーボンナノチューブのSEM観察による長さは特に限定されないが、典型的には概ね0.5μm〜20μmであり、好ましくは1μm〜10μmであり、特に好ましくは2μm〜5μmである。また、カーボンナノチューブの直径は特に限定されないが、典型的には概ね1nm〜50nmであり、好ましくは10nm〜40nmであり、特に好ましくは20nm〜30nmである。このような長さおよび直径となるように、原料を構成するカーボンナノチューブに対して粉砕処理を事前に行っていてもよい。本発明に係る製造方法によれば、アミノカプロン酸を含む水溶液中で液中プラズマを発生させることにより、上記長さおよび直径を有するカーボンナノチューブを均一かつ高濃度に液状媒体に分散させることが可能な表面修飾カーボンナノチューブを得ることができる。
ここに開示される表面修飾カーボンナノチューブを製造するために用いられる水溶液には、アミノカプロン酸が含まれている。かかるアミノカプロン酸を含有する水溶液は、アミノカプロン酸の粉末を水系溶媒に溶解させることで調製することができる。アミノカプロン酸は、プラズマを発生させる前の水溶液中に少なくとも0.05mol/L(例えば0.05mol/L〜0.5mol/L)の濃度で含まれているのが好ましい。濃度が0.05mol/L未満であると、液中プラズマの作用によるカーボンナノチューブの表面修飾量が少なくなる。そのため、得られた表面修飾カーボンナノチューブの液状媒体への親和性が十分に高まらず、カーボンナノチューブの分散性が低下傾向になることがある。分散性向上の観点からは、アミノカプロン酸の濃度を0.05mol/L以上にすることが適当であり、好ましくは0.1mol/L以上であり、より好ましくは0.15mol/L以上であり、特に好ましくは0.2mol/L以上である。アミノカプロン酸の濃度の上限値としては特に限定されず、飽和濃度よりも低ければよいが、製造コストの観点からは概ね0.5mol/L以下にすることが適当であり、好ましくは0.4mol/L以下であり、特に好ましくは0.3mol/L以下である。
本発明では、以上のようにアミノカプロン酸とカーボンナノチューブとを含む水溶液を用意し、アミノカプロン酸を用いてカーボンナノチューブの表面を化学修飾する。ここで、表面修飾カーボンナノチューブの製造方法では、上記表面修飾の場として、該溶液中で発生させる液中プラズマを利用するようにしている。すなわち、プラズマを構成する正負のイオン、電子およびラジカル等の活性種の作用によって、水溶液中に含まれるカーボンナノチューブの表面にアミノカプロン酸に由来する化学修飾基の導入が実現される。ここで、活性種としては、典型的には、水溶液中の水分子が分解されて生成する、水素イオン、水酸化物イオン、酸素イオン、水素ラジカル、酸素ラジカルおよびヒドロキシラジカル等が考慮される。
ここで、上記の表面修飾処理の場となる液中プラズマは、液体中の電極間にマイクロ波や高周波を印加して発生された気体(気相)の中に、当該気体を構成する分子を部分的ないしは完全に電離させることで、形成することができる。つまり、液中プラズマにおいては、プラズマ相を取り囲む気相はさらに液相に取り囲まれており、プラズマを構成する上記のイオン、電子およびラジカル等の活性種は制限された気相中において自由に運動し得る状態である。そのため、解放された気相中に発生される気相プラズマ(典型的には、大気圧プラズマ、低圧プラズマ等)とは異なる物理的および化学的性質を示す。
例えば、気相プラズマは、気体の温度を上げて行った際にこの気体を構成する中性分子が電離してプラズマ化することで発生する。このとき、固体・液体・気体間の相転移とは異なり気体からプラズマへの転移は徐々に起こるため、構成分子のごく一部が電離した電離度が非常に低い状態でも充分にプラズマであり得る。これに対し液中プラズマは、典型的には、まず液中での放電により当該液体がジュール加熱により気化されて気相を形成し、さらにこの気相においてプラズマが発生することで形成される。すなわち、液中プラズマは、プラズマという高エネルギー状態が液中(すなわち凝縮相)に閉じ込められており、閉鎖系の物理が実現するとともに、解放されない高密度なプラズマ反応場が形成されているといえる。
また、プラズマと反応する反応物質についても、気相プラズマにおいては気相として供給されるものの、液中プラズマにおいては液相として供給される。すなわち、本発明では、反応物質であるアミノカプロン酸が反応場に高密度で供給される。したがって、本発明の製造方法においては、アミノカプロン酸を用いたカーボンナノチューブの表面修飾を簡便かつ高効率で行うことができ、表面修飾されたカーボンナノチューブを生産性良く形成することができる。
なお、以上のような液中プラズマは、電極間にかかる電位差の違い等によって、雷のような火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等に分類される。火花放電が継続的に流れるとグロー放電あるいはアーク放電となる。ここで、液中で発生されるグロー放電プラズマ(以下、ソリューションプラズマとも言う。)は、その他の液中プラズマに対して、さらに異なる特徴を有している。例えば、アーク放電プラズマは粒子密度が高く、イオンや中性粒子の温度が電子温度とほぼ等しい局所熱平衡状態にある熱プラズマである。これに対し、グロー放電プラズマは、電子温度は高いがイオンや中性粒子の温度が低い非平衡状態にある低温プラズマである。また、コロナ放電では連続的なプラズマの発生は難しいことに加え、水の分解により水素ラジカルと共に酸化性のヒドロキシラジカルが比較的多く形成されるという特徴がある。これに対し、グロー放電プラズマではプラズマの持つエネルギーが高く、酸化性のヒドロキシラジカルがさらに分解されて還元性の水素ラジカルが多く生成される。すなわち、グロー放電プラズマによると、アミノカプロン酸を用いたカーボンナノチューブの表面修飾処理がより効率的に行われることとなる。このことから、本発明では、液中プラズマとしてグロー放電プラズマを発生させることを好ましい形態としている。
かかるグロー放電プラズマは、サブマイクロ秒のパルス幅の電圧を、高い繰り返し周波数で印加することにより、比較的安定して発生可能である。そのため、プラズマ相を囲む液体の膨張・圧縮運動とプラズマ相とは連動しつつ安定な状態が長時間(例えば、2時間以上)維持され得る。そのため、例えば、ソリューションプラズマにおいては、電極間に発生される気相はその一部が浮力により電極間から浮上して液表面に到達することがあり得るものの、その大部分は電極間に一定の大きさの気相として定常的に維持される。したがって、ソリューションプラズマにおいてはプラズマの発生状態を定常的にコントロールすることができる。本発明の表面修飾カーボンナノチューブの製造方法では、このような制御されたプラズマを利用することを好ましい形態としており、より効率的に表面修飾カーボンナノチューブを製造することができる。発生したプラズマがグロー放電プラズマであるかどうかは、例えば、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が0.0005〜0.005の範囲にあることで確認することができる。
なお、このときの処理温度としては、水溶液が液状の形態を維持する温度であればよいが、プラズマを安定的に発生させるためには、水溶液を0℃以上30℃以下の温度に保持するのが好ましい。水溶液の温度が30℃を超えるようなプラズマの発生は、電極の消耗や、プラズマの不安定状態を招き易い傾向にある。例えば、水溶液の温度を25℃以下(例えば、20℃以下、好ましくは15℃以下、特に好ましくは10℃以下)に保つことで、プラズマ反応場が安定した状態となり得、アミノカプロン酸を用いたカーボンナノチューブの表面修飾を好適に行うことがきる。ここで、水溶液を例えば15℃以下に保つ手段としては特に制限はなく、各種の冷却機構を利用することができる。かかる冷却機構としては、スターラー、フィン等の撹拌手段、恒温水槽等の恒温器、冷却ガス、冷却水等を環流させる循環(還流)冷却手段等が例示される。これらの冷却機構は、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
液中プラズマ処理を行う時間は、詳細なプラズマ発生条件や、カーボンナノチューブの性状等にもよるため一概には言えないものの、例えば、10分以上、典型的には30分以上を目安に発生させるのが良い。処理効率の向上という観点から、通常は、上記処理時間を10分〜60分程度とすることが好ましく、30分〜60分とするのがより好ましい。このような液中プラズマ処理によって、表面修飾されたカーボンナノチューブが高効率に得られる。
以上の構成によると、例えば、液中プラズマの作用によって、カーボンナノチューブ表面にアミノカプロン酸に由来する修飾基が導入され、水等の液状媒体への親和性が向上する。そのため、水等の液状媒体に、より高濃度で分散させることが可能な表面修飾カーボンナノチューブを製造することができる。
なお、液中プラズマの作用によってカーボンナノチューブ表面に導入される化学修飾基としては特に限定されないが、例えばカルボキシル基のような負電荷をもつ官能基がカーボンチューブの外側を向いていると考えられる。カーボンナノチューブの表面に存在するこれらの負電荷をもつ官能基が静電反発することによって、ファンデルワールス力によって凝集していたカーボンナノチューブが解れ、液状媒体中に分散しやすくなるものと推測される。ただし、本発明は、ここで開示される情報に基づいて容易に実施することができる。従って、カーボンナノチューブの分散に関わる本発明の作用機序は本発明の把握や実施に必要ではない。上述の作用機序に関わる記載は一例を示したものにすぎず、かかる説明の作用機序に本発明を限定することを意図したものではない。
以下、本発明の好適な実施形態としての、ソリューションプラズマを反応場とした表面修飾カーボンナノチューブの製造を例にして、本発明の表面修飾炭素材の製造方法についてより詳細に説明する。
図1は、液(液相)2中でソリューションプラズマ4を発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、アミノカプロン酸およびカーボンナノチューブを含む水溶液2は、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられている。容器5内の水溶液2に対しては、マグネチックスターラーからなる撹拌装置7により撹拌が行われる。また、プラズマを発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。
電極6としては、例えば、平板状電極や棒状電極およびその組み合わせ等の様々な形態であってよく、その材質についても特に制限はない。この実施形態においては、電界を局所的に集中させることが可能なタングステンからなる線状電極(針状電極)6を用いているが、その他鉄、白金等の他の金属材料からなる電極を用いるようにしてもよい。かかる電極6は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させ、後の部分は絶縁部材9等で絶縁しておくことが望ましい。絶縁部材9は、例えばゴム製あるいは樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であることが例示される。この実施形態では、絶縁部材9は電極6を容器5に固定するとともに、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねた構成である。かかる装置10において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、水溶液2中に含まれる原料の種類やその濃度等の条件、さらには装置10の構成条件等にもよるものの、より具体的な一例として、電圧(二次電圧):約60V〜100V(例えば80V)、周波数:約10kHz〜30kHz(例えば20kHz)、パルス幅:約0.5〜3μs(例えば2μs)の範囲とすることが例示される。
そして、ソリューションプラズマ発生装置10により水溶液2中に上記のパルス電圧を印加することで、ソリューションプラズマ4が形成される。ソリューションプラズマ発生装置10により発生されるプラズマ反応場は、例えば、図2に示したような構成となる。すなわち、液(液相)2中に気相3が形成され、この気相3中にソリューションプラズマ(プラズマ相)4が形成されている。このプラズマ反応場は、電極6間に定常的に維持されている。かかるプラズマ反応場では、プラズマ相4から液相2に向かって、高いエネルギーを有した電子、イオン、ラジカル等の活性種が供給される。一方、液相2から気相3およびプラズマ相4に向けては、液相2に含まれる原料(アミノカプロン酸およびカーボンナノチューブ)が供給される。そしてこれらは、主として液相2と気相3の界面において接触(衝突)する。なお、図2では理解を容易にするために、液相2と気相3、気相3とプラズマ相4の間の各界面が略球状に明確に形成されたような様子を示しているが、かかる界面は必ずしも明確に形成されることに限定されない。例えば、気相3とプラズマ相4の間の界面に臨界的なものがなく、かかる界面は空間的な広がりを持っていても良い。
以上の構成によると、例えば、ソリューションプラズマの作用によって、カーボンナノチューブ表面にアミノカプロン酸に由来する化学修飾基が導入され、水等の液状媒体に、より高濃度で分散させることが可能な表面修飾カーボンナノチューブが製造される。なお、かかるソリューションプラズマは、例えば、常温(典型的には、25℃)、常圧(典型的には、1atm)において安定して発生させることができる。したがって、かかる表面修飾カーボンナノチューブの製造方法は、特に特殊な装置や機構等を要することなく、低コストで簡便に実施することができる。
次に、ここに開示されるカーボンナノチューブ分散液を説明する。このカーボンナノチューブ分散液は、上記アミノカプロン酸を用いて製造された表面修飾カーボンナノチューブが液状媒体に分散されたものである。上記アミノカプロン酸を用いて製造された表面修飾カーボンナノチューブは、液状媒体に均一に分散し、良好な分散状態を示し得る。ここで、良好な分散状態とは、例えば、常温で静置した場合に、カーボンナノチューブが均一に水溶液中に分散しており、凝集したカーボンナノチューブの沈降していない状態(例えば上層部に透明性を有する部分が現れない状態)が目視で少なくとも20日間(好ましくは30日間以上)は維持される状態をいう。
ここに開示されるカーボンナノチューブ分散液は、例えば、全量を100質量%として表面修飾カーボンナノチューブの含有率が1質量%〜20質量%(例えば5質量%〜20質量%、典型的には10質量%〜20質量%、特には15質量%〜20質量%)である。このような高濃度のカーボンナノチューブ分散液であっても、良好な分散状態を長期にわたって維持し得る。
ここに開示されるカーボンナノチューブ分散液における液状媒体は、水系溶媒であることが好ましい。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒が好ましく用いられる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール(例えばエタノール)、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。
また、液状媒体のpHは、概ね4以上(例えば4〜12、好ましくは8以上)の範囲であることが好ましい。液状媒体のpHを8〜12程度の弱アルカリとすることで、カーボンナノチューブの液状媒体への分散性を向上させる効果がさらに高まり、安定した分散状態がより長期間にわたって維持され得るカーボンナノチューブ分散液を形成することができる。
カーボンナノチューブを液状媒体に分散させる方法(分散処理)としては特に限定されない。例えば、カーボンナノチューブ及び液状媒体を用意した後、該カーボンナノチューブを該媒体とともに容器に入れて超音波処理に供するとよい。かかる超音波処理は、例えば超音波洗浄機を用いて行うとよい。超音波処理を行う時間は、超音波処理条件(例えば周波数、出力)等を考慮して、所望の分散状態が実現されるように適宜設定することができる。例えば、該処理時間を30秒〜3分程度とすることができ、通常は1分〜2分程度とすることが好ましい。超音波処理に限らず、ボールミル、ホモジナイザー等を用いた攪拌処理に供してもよい。
以上、好適な実施形態に基づき表面修飾カーボンナノチューブの製造方法および該表面修飾カーボンナノチューブを液状媒体に分散させたカーボンナノチューブ分散液について説明したが、かかる表面修飾カーボンナノチューブの製造方法およびカーボンナノチューブ分散液はこの例に限定されず、適宜に態様を変化して行うことができる。例えば、上記カーボンナノチューブ分散液は、表面修飾カーボンナノチューブのほかに、必要に応じて各種の添加材を副成分として含有することができる。そのような添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤等が例示される。特にカチオン性界面活性剤の使用が好ましい。アミノカプロン酸を用いて化学修飾したカーボンナノチューブの表面は負に帯電しやすい傾向があるため、反対符号の電荷を持つカチオン性界面活性剤を添加すると、カチオン性界面活性剤がカーボンナノチューブ表面に多量にかつ強く吸着する。これにより、カーボンナノチューブの液状媒体への親和性がさらに向上し、カーボンナノチューブの分散性が良好になる。かかるカチオン性界面活性剤としては、例えば
セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド(OTAB)等の第4級アンモニウム塩や、α‐スルホ脂肪酸エステルナトリウム等のベンザルコニウム塩、アルキルアミンオキシド等のアルキルアミン塩等のカチオン性界面活性剤が例示される。カチオン性界面活性剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、カーボンナノチューブ100質量部に対して概ね0.1質量部〜10質量部にすることが適当であり、好ましくは1質量部〜5質量部である。
また、ソリューションプラズマの発生に際しては、必ずしもタングステンからなる針状電極を用いる必要はなく、例えば、低インダクタンスの誘導コイルによりソリューションプラズマを発生するようにしても良い。また、かかる表面修飾カーボンナノチューブの製造方法は、ソリューションプラズマ(グロー放電プラズマ)によるものに限定されず、例えば、液中でのアーク放電プラズマを利用して実施しても良い。
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[試験例1]
<実施例1>
アミノカプロン酸水溶液を、以下の手順で用意した。すなわち、2.62gのアミノカプロン酸を純水に溶解させて200mLにメスアップすることで、濃度が0.1mol/Lのアミノカプロン酸水溶液を用意した。
また、カーボンナノチューブ凝集体を、以下の手順で用意した。すなわち、カーボンナノチューブ凝集体として、株式会社名城ナノカーボン製品の多層カーボンナノチューブ(直径10〜40nm、長さ〜3μm)を使用した。このカーボンナノチューブを湿式超微粒子製造機(株式会社スギノマシン製)により粉砕した。粉砕条件は、圧力:200MPa、処理時間:30分、カーボンナノチューブ投入量:1g/L、溶媒:水とした。粉砕後のカーボンナノチューブのSEM観察における平均長さは5μmであった。
次に、上記粉砕後のカーボンナノチューブ0.5gを、200mLのアミノカプロン酸水溶液とともに容器に入れて、ソリューションプラズマ発生装置10にセットした。図1に、本実施形態で用いたソリューションプラズマ発生装置10を模式的に示した。この装置10は、ビーカーからなる容器5にカーボンナノチューブとアミノカプロン酸水溶液2とをともに入れ、この溶液中に2本のタングステン電極6を配置することで構成したものである。タングステン電極6としては、外周を絶縁材で被覆した直径5mmのタングステン線材を用い、先端部においてタングステン線材が絶縁材から1mm程度露出するようにした。また、2本のタングステン電極6は、同様のものを0.5mmの間隔を保つように対向して配置した。アミノカプロン酸水溶液2は、撹拌装置7にて200rpm程度で撹拌した。
この電極6対に対し、バイポーラパルス電源(栗田製作所製、MPS−06K−01C)8を用い、マイクロ秒パルス電圧を印加することで、水溶液2中にソリューションプラズマ4を発生させた。本実施形態においてソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、一次電圧:80V、パルス幅:2μs、繰り返し周波数:20kHzとし、この条件で水溶液2中にソリューションプラズマを30分間発生させた。その後、水溶液をろ過してカーボンナノチューブを回収し、純水で洗浄して、実施例1の表面修飾カーボンナノチューブとした。
かかる実施例1のカーボンナノチューブ1gを液状溶媒(ここでは純水)100mLとともに容器に入れ、これを超音波洗浄機で1分間処理した。このようにして、純水100mLにカーボンナノチューブ1gが分散した分散液(すなわち全量を100質量%としてカーボンナノチューブの含有率が約1質量である分散液)を得た。得られた分散液を静置した。静置後24時間経過した状態における上記分散液の光学写真を図3に示す。この写真から明らかなように、24時間静置しても、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。
また、実施例1のカーボンナノチューブ10gを純水100mLとともに容器に入れ、これを超音波洗浄機で1分間処理した。このようにして、純水100mLにカーボンナノチューブ10gが分散した分散液(すなわち全量を100質量%としてカーボンナノチューブの含有率が約9質量である分散液)を得た。得られた分散液を静置した。静置後24時間経過した状態における上記分散液の光学写真を図4に示す。この写真から明らかなように、24時間静置しても、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。
さらに、実施例1のカーボンナノチューブ20gを純水100mLとともに容器に入れ、これを超音波洗浄機で1分間処理した。このようにして、純水100mLにカーボンナノチューブ20gが分散した分散液(すなわち全量を100質量%としてカーボンナノチューブの含有率が約17質量である分散液)を得た。得られた分散液を静置した。24時間静置しても、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。
<比較例1>
次に、市販の多層カーボンナノチューブ(直径10〜40nm、長さ〜3μm)を未処理のまま用い、それ以外は実験例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは直ちに沈降して分散状態を維持できなかった。この分散液の光学写真を図5に示す。
<比較例2>
次に、アミノカプロン酸水溶液に代えて、純水200mL中でソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、5分後には沈降して分散状態を維持できなかった。
<比較例3>
次に、アミノカプロン酸水溶液に代えて、エタノール200mL中でソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、5分後には沈降して分散状態を維持できなかった。
<比較例4>
次に、アミノカプロン酸水溶液に代えて、0.5mol/Lのアンモニア水200mL中でソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、30分後には沈降して分散状態を維持できなかった。
<比較例5>
次に、アミノカプロン酸水溶液に代えて、0.5mol/Lの硝酸200mL中でソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、1時間後には沈降して分散状態を維持できなかった。
<比較例5>
次に、アミノカプロン酸水溶液に代えて、0.5mol/Lの硝酸200mL中でソリューションプラズマ処理を行った。その後、水溶液をろ過してカーボンナノチューブを回収し、電気炉で60℃、24時間の条件で乾燥した。そして、5mol/Lのアンモニア水200mL中で再度ソリューションプラズマ処理を行った。ソリューションプラズマ処理を2段階で行ったこと以外は実施例1と同様にして、カーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液と、約9質量%のカーボンナノチューブ分散液とを製造した。この結果、カーボンナノチューブの含有率を約1質量%とした分散液では、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。一方、カーボンナノチューブの含有率を約9質量%とした分散液では、カーボンナノチューブは直ちに沈降して分散状態を維持できなかった。この分散液の光学写真を図6に示す。
実施例1および比較例1〜6の結果を表1に纏める。表1に示すように、アミノカプロン酸水溶液中でソリューションプラズマ処理を行った実施例1のカーボンナノチューブは、優れた分散性を示すことが確認された。また、高含有率(9質量%、17質量%)にしても良好な分散性を維持し得ることが確認された。
[試験例2]
続いて、アミノカプロン酸の濃度がカーボンナノチューブの分散性に及ぼす影響を調べるために、以下の試験を行った。
<実施例2>
アミノカプロン酸の濃度を0.01mol/Lに変更してソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液を製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、30分後には沈降して分散状態を維持できなかった。
<実施例3>
アミノカプロン酸の濃度を0.05mol/Lに変更してソリューションプラズマ処理を行った。それ以外は実施例1と全く同様にしてカーボンナノチューブの含有率が約1質量%のカーボンナノチューブ分散液と、約9質量%のカーボンナノチューブ分散液とを製造した。この結果、得られた分散液では、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。
実施例1〜3の結果を表2に纏める。表2に示すように、アミノカプロン酸の濃度を0.05mol/Lおよび0.1mol/Lとしたときにカーボンナノチューブの分散性が向上することが確認された。分散性向上の観点からは、アミノカプロン酸の濃度を0.05mol/L以上、さらには0.1mol/L以上とすることが好ましい。
[試験例3]
分散液のプロトン濃度がカーボンナノチューブの分散性に及ぼす影響を調べるために、以下の試験を行った。
実施例1のカーボンナノチューブ1gを、(a)10−2M、(b)10−3M、(c)10−5Mの塩酸および(d)10−2Mの水酸化ナトリウム水溶液100mLとともにそれぞれ容器に入れ、これを超音波洗浄機で1分間処理した。このようにして、液状媒体(ここでは塩酸または水酸化ナトリウム水溶液)にカーボンナノチューブが分散した分散液を得た。そして、かかる分散液の分散状態の時間変化を目視で確認した。結果を図7に示す。
図7に示すように、(a)10−2M、(b)10−3M、(c)10−5Mの塩酸にカーボンナノチューブを分散した分散液では、カーボンナノチューブは一旦分散するものの、6時間後には沈降して分散状態を維持できなかった。これに対し、(d)10−2Mの水酸化ナトリウム水溶液にカーボンナノチューブを分散した分散液では、12時間静置しても、カーボンナノチューブが沈降することなく、良好な分散状態が維持されていることが確認された。この結果から、塩基性条件で特に良好な分散状態が維持され得る。
[試験例4]
実施例1の表面修飾カーボンナノチューブをそれぞれpHが調整された溶液に添加し、その溶液に外部から電場を付与した。そして、その状態で表面修飾カーボンナノチューブの移動速度をレーザ光で測定し、単位電場当たりの移動速度(電気泳動移動度)を求め、ゼータ電位に換算した。なお、測定は同じpHで2点行い、その平均値を算出した。結果を図8および表3に示す。図8は溶液のpHと表面修飾カーボンナノチューブのゼータ電位との関係を示すグラフである。図8では横軸が溶液のpH、縦軸がゼータ電位(mv)を示している。
図8および表3から明らかなように、溶液のpHが高くなるほど、ゼータ電位が低下傾向になることが分かった。ゼータ電位は、表面修飾カーボンナノチューブの表面電位とみなせることから、溶液のpHが高くなると、表面修飾カーボンナノチューブの表面は負に帯電する傾向があると云える。同符号のゼータ電位を示す表面修飾カーボンナノチューブ同士は反発しあうため、カーボンナノチューブの分散性が向上する。分散性向上の観点からは、溶液のpHは4以上にすることが適当であり、6以上が好ましく、8以上がさらに好ましい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
2 水溶液(液相)
3 気相
4 プラズマ(プラズマ相)
5 容器
6 電極
7 攪拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 ソリューションプラズマ発生装置

Claims (9)

  1. 表面修飾炭素材の製造方法であって、
    アミノカプロン酸と炭素材とを含む水溶液を用意すること;及び
    前記水溶液中でプラズマを発生させること;
    を包含する、表面修飾炭素材の製造方法。
  2. 前記炭素材として、カーボンナノチューブを用いる、請求項1に記載された表面修飾炭素材の製造方法。
  3. 前記カーボンナノチューブの分散に先立って、前記カーボンナノチューブを粉砕処理する、請求項に記載された表面修飾炭素材の製造方法。
  4. 前記粉砕処理は、前記カーボンナノチューブのSEM観察における平均長さが5μm以下となるように行われる、請求項に記載された表面修飾炭素材の製造方法。
  5. 前記プラズマが、グロー放電プラズマである、請求項1〜の何れか一つに記載された表面修飾炭素材の製造方法。
  6. 請求項1〜の何れか一つに記載の製造方法により製造された表面修飾炭素材液状媒体に分散することを含む、炭素材分散液の製造方法
  7. 前記液状媒体のpHが4以上である、請求項に記載された炭素材分散液の製造方法
  8. 全量を100質量%として前記表面修飾炭素材の含有率が1質量%〜20質量%である、請求項またはに記載された炭素材分散液の製造方法
  9. アミノカプロン酸に由来する化学修飾基が導入された表面修飾炭素材と液状媒体とを含み、前記液状媒体のpHが8以上であり、かつ、25℃で静置した場合に、少なくとも20日間、前記表面修飾炭素材が分散状態を維持する、炭素材分散液。
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