JP6066185B2 - ナノ流体の低温製造方法 - Google Patents
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・Auナノ粒子が形成される環境を整えることで、形成されるAuナノ粒子の粒径や粒径分布等の特性をより詳細に制御することができる。
・特にAuナノ粒子が形成される際の水溶液の温度環境を整えることで、得られるAuナノ粒子の形態を制御するに留まらず、このAuナノ粒子を含む水溶液からなるナノ流体の熱伝導性に係る性状を効果的に向上させることができる。
本発明によると、ナノ流体の製造に際し、液中プラズマを発生させる水溶液の温度を上記の低温領域に制御しているため、例えば、水溶液のpHを制御することなくAuナノ粒子の粗大化を防止することができる。これにより、水溶液中に、粒径が数ナノメートルで揃い、形状が略球形に整った状態のAuナノ粒子を凝集させることなく形成することができる。また、このようにして製造されたAuナノ粒子を含むナノ流体は、常温〜中温領域においても安定に存在し得る。さらに、かかるナノ流体は、粒径が微細なAuナノ粒子が高分散な状態で水溶液中に含まれているために、熱伝導特性が向上されている。したがって、本発明のナノ流体の製造方法によると、熱伝導流体として適したナノ流体を製造することができる。
なお、液中プラズマにより、室温に近い温度環境で製造したナノ流体については、理由は定かではないものの、より粒径の小さいAuナノ粒子を形成したからと言って、これに伴いナノ流体の熱伝導度が増大されるわけではないことが確認されている。しかしながら、本発明の方法によると、Auナノ粒子の微細な粒径から期待される、あるいは期待される以上に優れた熱伝導特性を備えるナノ流体を製造することができる。
かかる構成によると、例えば25℃における熱伝導度が水よりも高いナノ流体を得ることができる。このようなナノ流体は、例えば、中温領域の熱エネルギーを低損失で輸送し、熱源としてそのまま利用可能なエネルギー輸送システム等を構築するのに好適に用いることができる。
水溶液中のAu(III)イオンの濃度が0.05mM未満であると、得られるナノ流体中に含まれるAuナノ粒子の量が少なくなり、結果として高い熱伝導度を実現できないために好ましくない。また、Au(III)イオンの濃度が0.5mMを超過すると、ナノ流体中に形成されるAuナノ粒子が凝集する可能性が高くなり、結果としてAuナノ粒子の表面積が減少し、熱伝導度の低下につながり得るために好ましくない。Au(III)イオンの濃度は、0.05mM〜0.5mMであるのが好ましく、0.1mM〜0.3mM程度であるのがより好ましい。
液相中に金属ナノ粒子を製造する際の保護剤としては、各種の材料が知られている。本発明においては、中でも、保護剤としてカチオン性界面活性剤を使用するのがより微細で安定したAuナノ粒子を形成できる点で好ましい。
かかる構成によると、線状電極間に生じるジュール熱によって水溶液中に発生する気泡の大部分を水面に向かって浮上させることなく、水溶液中に安定した状態で維持することができ、この気泡中に安定した状態でプラズマを発生させることが可能となる。これにより、より効率よく安定した状態でナノ流体を製造することができる。
液中で発生されるプラズマは、火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電の形態であり得る。なかでも、液中プラズマのより好ましい形態としてグロー放電プラズマをナノ流体の製造に利用することができる。これにより、非平衡な低温プラズマを発生させることができ、より少ないエネルギーで安定的にナノ流体の製造を行うことができる。
ここに開示されるナノ流体の製造方法は、本質的に、Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液中でプラズマを発生させることにより、このAu(III)イオンを還元し、水溶液中にAuナノ粒子を形成するものである。そしてかかる手法において、上記水溶液の温度を、凝固点以上5℃未満の温度範囲に保持することを必須の要件として含むようにしている。
Au(III)イオンは、プラズマを発生させる前の水溶液中に、形成されるAuナノ粒子が凝集しない程度の濃度で含まれるのが好ましい。かかる濃度は、例えば液中プラズマの発生形態などにもよるため厳密に限定されるものではないが、例えば、0.05mM〜0.5mM程度の濃度を目安として設定することができる。濃度が0.05mMよりも低いと、単位体積中に形成されるAuナノ粒子の量が少なくなるため、得られるナノ流体の熱伝導度が十分に高くならず、熱伝導流体として利用するには熱伝導特性に乏しくなるために好ましくない。濃度が0.5mMを超過すると、ナノ流体中でAuナノ粒子が部分的に凝集を始める可能性が高まるために好ましくない。Au(III)イオンの濃度は0.08mM〜0.3mM程度の範囲であるのが好ましく、例えば、0.1mM〜0.3mM程度の範囲であるのがより好ましい。
これらの保護剤は、いずれか一種を単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。また、かかる保護剤は、形成されたAuナノ粒子が凝集しない程度の濃度で用いればよい。
図1は、水溶液2中でソリューションプラズマ4を発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液2は、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられるとともに、内部を−18℃〜10℃の温度範囲で温度調節可能な冷蔵機能を有する冷却室11内に配置されている。また、プラズマ4を発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て水溶液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。
次に、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
下記の表1に示す条件で、ナノ流体(a)〜(d)を製造した。
すなわち、まず、Au(III)イオン源として、塩化金(III)三水和物(HAuCl4・3H2O)を用意した。また、保護剤としては、CTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とを用意した。
そして、保護剤としてのCTABを0.01g含む、0.1mMのHAuCl4水溶液を300mLで調製して、水溶液(a)とした。
また同様に、保護剤としてのSDSを0.74g含む0.1mMのHAuCl4水溶液を300mLに調製し、水溶液(b)および(c)とした。
さらに、保護剤を含まない0.5mMのHAuCl4水溶液を300mL調製し、水溶液(d)とした。
以上のソリューションプラズマによる処理を行った後に得られた溶液(a)〜(d)をそれぞれナノ流体(a)〜(d)とし、これらナノ流体(a)〜(d)について以下の通りの評価を行った。
上記で得られたナノ流体(a)〜(d)について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2500SE)を用いて流体中に形成されたAuナノ粒子の形態観察を行った。これにより得られたナノ流体(a)〜(d)におけるAuナノ粒子の透過像(TEM像)をそれぞれ図3〜6に(A)として示した。また、これらのTEM観察により、各ナノ流体中に形成された100個以上のAu粒子について粒径を計測し、粒度分布を調べた。その結果を併せて図3〜6に(B)として示すとともに、平均粒径と粒径の分布幅を下記の表1に示した。
ナノ流体(a)〜(d)について、紫外−近赤外吸収スペクトル、粘度および熱伝導度の測定を行った。紫外−近赤外吸収スペクトルについては、紫外可視近赤外(UV―Vis―NIR)分光光度計((株)島津製作所製、UV−3600)を用い、波長350nm〜750nmの領域の吸収スペクトルの測定を行った。粘度については、音叉型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製、SV−10)を用い、20℃の環境にてナノ流体の粘度を測定した。熱伝導度については、熱特性計(DECAGON
DEVICES製、KD2Pro)を用いてナノ流体の熱伝導度を測定した。これらの結果を順に図7〜9に、熱伝導度については表1にも示した。なお、図9の縦軸は、ナノ流体(a)〜(d)の熱伝導度を、水と上記所定量の各保護剤とを含む溶液について25℃において測定した熱伝導度kbfに対する比、として表している。
図3〜6から明らかなように、ナノ流体の製造においては、水溶液の温度を充分に低く(本実施形態では、1±1℃)保つことで、平均粒径が2nm以下と小さく、単分散に近い粒度分布を有するAuナノ粒子を含むナノ流体(a)を製造できることが示された。そして、水溶液の温度を室温付近(25℃)と高くして製造されたナノ流体(b)〜(d)については、Auナノ粒子の平均粒径が粗大化してしまっていることが確認できる。なお、ナノ流体(b)(c)については、ナノ流体(a)に比べて保護剤の量(および濃度)が大幅に増加されているにもかかわらず、粒子の粗大化や凝集が生じてしまうことがわかった。さらに、保護剤を含まず、Au(III)イオンの濃度を0.5mMと濃くして製造したナノ流体(d)については、製造されたAuナノ粒子(一次粒子)が凝集して約60nmと巨大な2次粒子を形成しており、分散性の良いナノ流体が得られ難いことが確認された。
なお、図7に示したUV−NIR吸収スペクトルによると、ナノ流体(a)については波長550nm近傍にみられるプラズモン共鳴吸収強度が極めて小さくなっており、かかる吸収スペクトル特性は、Auナノ粒子の殆どが粒径2nm以下のクラスターにより構成されていることを支持するものとなっている。
一方で、ナノ流体(a)〜(d)の熱伝導度については、図9に示されたように、Auナノ粒子の大きさが十分に小さい領域(例えば、本実施形態では約25nm未満の範囲)で大きく粒径に依存する傾向があることがわかった。そして、特に、平均粒径が3nm程度以下のAuナノ粒子を含むナノ流体については、25℃において測定した水の熱伝導度(0.598)よりも1.02倍以上と十分に高くなることが予想される。例えば、Auナノ粒子の平均粒径が2nm未満のナノ流体(a)については、熱伝導度が0.616と、水の熱伝導度の1.03倍に達することが確認された。
下記の表2に示す条件で、ナノ流体(e)〜(h)を製造した。
すなわち、保護剤として、(e)CTABおよび(f)SDSの他に、(g)SDDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)および(h)TLS(ラウリル硫酸トリエタノールアミン)を用意した。
そして、これらの保護剤(e)〜(h)のいずれかを0.05g含む、0.1mMのHAuCl4水溶液を300mL調製して、それぞれ水溶液(e)〜(h)とした。
これらの水溶液(e)〜(h)中で、図1に示した装置を用いてソリューションプラズマを発生させることで、ナノ流体(e)〜(h)を製造した。ソリューションプラズマの発生条件は、水溶液の温度を15℃に保つこと以外は、上記実施形態1のナノ流体(a)と同様にした。
また、実施形態1と同様にしてナノ流体の熱伝導度を測定した。その結果を表2に併せて示した。
なお、表2には、比較のために、実施形態1で製造したナノ流体(a)についての結果も併せて示した。
表2から明らかなように、ナノ流体(e)については、ソリューションプラズマによる処理中の水溶液の保護剤の添加量を増やしたうえで、高い温度としたこと以外は、ナノ流体(a)と同様の条件で製造したものである。しかしながら、得られたナノ流体(e)中に形成されたAuナノ粒子の粒径は、ナノ流体(a)のものよりも大幅に大きく、また、ナノ流体(e)の熱伝導度はナノ流体(a)の熱伝導度よりも大幅に低いものであった。ナノ流体(e)〜(h)の間ではAuナノ粒子の粒径および熱伝導度に顕著な差異が見られないことから、Auナノ粒子の粒径と熱伝導度への影響は、使用した保護剤の種類よりも、ソリューションプラズマによる処理中の水溶液の温度に影響によるところが大きいことがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
3 気相
4 ソリューションプラズマ(プラズマ相)
5 容器
6 電極
7 撹拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 ソリューションプラズマ発生装置
11 冷却室
Claims (6)
- Au(III)イオンと保護剤とを含む水溶液を用意すること、
前記水溶液の温度を該水溶液の凝固点以上5℃未満の温度範囲に保ちながら、該水溶液中でプラズマを発生させることで前記Au(III)イオンを還元し、前記水溶液中にAuナノ粒子を形成すること、
を含む、ナノ流体の製造方法。 - 前記水溶液中に平均粒径が3nm以下のAuナノ粒子を形成する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記水溶液中の前記Au(III)イオンの濃度を0.05mM〜0.5mMに調整する、請求項1または2に記載のナノ流体の製造方法。
- 前記保護剤として、カチオン性界面活性剤を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記水溶液中に一対の線状電極を配置し、
前記線状電極間にパルス幅が0.1μs〜5μsで、周波数が103Hz〜105Hzの直流パルス電圧を印加することでプラズマを発生させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。 - 前記プラズマは、グロー放電プラズマである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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