以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達装置を備えるハイブリッド駆動装置の構成の概略を示す図である。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置は、動力(機械的動力)を発生可能な原動機として設けられたエンジン(内燃機関)36と、動力(機械的動力)の発生及び発電が可能な第1及び第2回転電機10,11と、を備える。なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置については、例えば車両を駆動するための動力出力装置として用いることができる。
第1回転電機10は、回転可能な入力側ロータ28と、径方向において入力側ロータ28と所定の空隙を空けて対向し、入力側ロータ28に対し相対回転可能な第1出力側ロータ18と、を有する。図1に示す例では、入力側ロータ28が第1出力側ロータ18より径方向内側の位置で第1出力側ロータ18と対向配置されている。入力側ロータ28は、ロータコア52と、ロータコア52にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のロータ巻線30と、を含む。複数相のロータ巻線30に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ロータ巻線30は、ロータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。第1出力側ロータ18は、ロータコア53と、ロータコア53にその周方向に沿って配設され界磁束を発生する複数の永久磁石33と、を含む。複数の永久磁石33は、ロータコア53の内周部に入力側ロータ28(ロータコア52)と対向して配設されている。
第2回転電機11は、ケーシング15に固定されたステータ16と、径方向においてステータ16と所定の空隙を空けて対向し、ステータ16に対し相対回転可能な第2出力側ロータ19と、を有する。図1に示す例では、第2出力側ロータ19がステータ16より径方向内側の位置でステータ16と対向配置されている。ステータ16は、ステータコア51と、ステータコア51にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のステータ巻線20と、を含む。複数相のステータ巻線20に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。第2出力側ロータ19は、ロータコア54と、ロータコア54にその周方向に沿って配設され界磁束を発生する複数の永久磁石32と、を含む。複数の永久磁石32は、ロータコア54の外周部にステータ16(ステータコア51)と対向して配設されている。
直流電源として設けられた充放電可能な蓄電装置42は、例えば二次電池により構成することができ、電気エネルギーを蓄える。蓄電装置42とステータ巻線20との間で電力変換を行う第1電力変換装置として設けられたインバータ40は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ステータ巻線20の各相に供給することが可能である。さらに、インバータ40は、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を直流に変換して、電気エネルギーを蓄電装置42に回収する方向の電力変換も可能である。このように、インバータ40は、蓄電装置42とステータ巻線20との間で双方向の電力変換を行うことが可能である。
スリップリング95は、入力側ロータ28と機械的に連結されており、さらに、ロータ巻線30の各相と電気的に接続されている。回転が固定されたブラシ96は、スリップリング95に押し付けられて電気的に接触する。スリップリング95は、ブラシ96に対し摺動しながら(ブラシ96との電気的接触を維持しながら)、入力側ロータ28とともに回転する。ブラシ96は、インバータ41と電気的に接続されている。蓄電装置42及びインバータ40のいずれかとロータ巻線30との間で電力変換を行う第2電力変換装置として設けられたインバータ41は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ブラシ96及びスリップリング95を介してロータ巻線30の各相に供給することが可能である。さらに、インバータ41は、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を直流に変換する方向の電力変換も可能である。その際には、ロータ巻線30の交流電力がスリップリング95及びブラシ96により取り出され、この取り出された交流電力がインバータ41で直流に変換される。インバータ41で直流に変換された電力は、インバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20の各相へ供給可能である。つまり、インバータ40は、インバータ41からの直流電力と蓄電装置42からの直流電力とのいずれか(少なくとも一方)を交流に変換してステータ巻線20の各相へ供給することが可能である。また、インバータ41で直流に変換された電力を蓄電装置42に回収することも可能である。このように、インバータ41は、蓄電装置42及びインバータ40のいずれかとロータ巻線30との間で双方向の電力変換を行うことが可能である。
第1回転電機10の入力側ロータ28及びスリップリング95はエンジン36と機械的に連結されていることで、入力側ロータ28にはエンジン36からの動力が伝達される。また、第2回転電機11の第2出力側ロータ19は駆動軸37と機械的に連結されていることで、駆動軸37(車輪38)には第2出力側ロータ19からの動力が伝達される。
本実施形態では、第1回転電機10の第1出力側ロータ18を駆動軸37またはケーシング(固定部材)15に選択的に機械的に係合させるクラッチ機構(係合解放機構)60が設けられている。図1に示す例では、クラッチ機構60は、第1出力側ロータ18に機械的に連結された入力側ギア61と、駆動軸37に機械的に連結された出力側ギア62と、ケーシング15に機械的に連結された固定ギア63と、入力側ギア61を出力側ギア62または固定ギア63に選択的に係合させるスリーブギア64と、を含む。入力側ギア61と出力側ギア62と固定ギア63とスリーブギア64の中心軸は一致しており、中心軸方向において入力側ギア61が出力側ギア62と固定ギア63との間の位置に配置され、スリーブギア64の内歯が入力側ギア61の外歯と噛み合っている。さらに、スリーブギア64は、入力側ギア61との噛み合いを維持しながら中心軸方向に移動可能であり、スリーブギア64の内歯が出力側ギア62の外歯と噛み合い且つ固定ギア63の外歯と噛み合わない第1係合位置と、スリーブギア64の内歯が固定ギア63の外歯と噛み合い且つ出力側ギア62の外歯と噛み合わない第2係合位置と、スリーブギア64の内歯が出力側ギア62の外歯及び固定ギア63の外歯の両方と噛み合わない解放位置と、に移動可能である。スリーブギア64が第1係合位置に位置する場合は、第1出力側ロータ18がケーシング15に係合せず駆動軸37に係合する状態(第1係合状態)となり、駆動軸37には第1出力側ロータ18からの動力が伝達される。一方、スリーブギア64が第2係合位置に位置する場合は、第1出力側ロータ18が駆動軸37に係合せずケーシング15に係合する状態(第2係合状態)となり、第1出力側ロータ18の回転が固定される。また、スリーブギア64が解放位置に位置する場合は、第1出力側ロータ18が駆動軸37及びケーシング15の両方に係合しない状態(解放状態)となる。スリーブギア64を出力側ギア62または固定ギア63と噛み合わせるための機構として、シンクロメッシュ(同期噛合機構)を適用することも可能である。
図1に示す例では、エンジン36及び第1回転電機10の入力側ロータ28の回転軸が一致しており、この回転軸方向においてクラッチ機構60がエンジン36と第1回転電機10(入力側ロータ28)との間の位置に配置されている。第2回転電機11の第2出力側ロータ19の回転軸72、カウンタ軸73、及び駆動軸37は、エンジン36及び入力側ロータ28の回転軸71と平行に配置されている。カウンタ軸73にはギア74,75が設けられ、第2出力側ロータ19の回転軸72にはギア78が設けられ、カウンタ軸73のギア74と回転軸72のギア78が噛み合うことで、第2出力側ロータ19がカウンタ軸73を介して駆動軸37に機械的に連結される。さらに、カウンタ軸73のギア74がギア76と噛み合うことで、カウンタ軸73とクラッチ機構60の出力側ギア62が機械的に連結され、カウンタ軸73のギア75がギア77と噛み合うことで、カウンタ軸73と駆動軸37が機械的に連結される。これによって、クラッチ機構60の出力側ギア62がカウンタ軸73を介して駆動軸37に機械的に連結され、クラッチ機構60のスリーブギア64が出力側ギア62と噛み合う第1係合位置に位置する場合は、第1出力側ロータ18がカウンタ軸73を介して駆動軸37に係合する。
第1回転電機10には、入力側ロータ28(エンジン36)の回転速度を検出するための回転速度センサ81と、第1出力側ロータ18の回転速度を検出するための回転速度センサ82が付設されており、第2回転電機11には、第2出力側ロータ19の回転速度を検出するための回転速度センサ83が付設されている。回転速度センサ81で検出された入力側ロータ28の回転速度、回転速度センサ82で検出された第1出力側ロータ18の回転速度、及び回転速度センサ83で検出された第2出力側ロータ19の回転速度は、電子制御ユニット50に入力される。電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング素子のスイッチング動作を制御してインバータ40での電力変換を制御することで、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を制御する。そして、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング素子のスイッチング動作を制御してインバータ41での電力変換を制御することで、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を制御する。さらに、電子制御ユニット50は、クラッチ機構60を第1係合状態と第2係合状態と解放状態に切り替える(スリーブギア64の位置を第1係合位置と第2係合位置と解放位置に切り替える)制御を行い、エンジン36の運転状態の制御も行う。
インバータ40のスイッチング動作により複数相のステータ巻線20に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生する。そして、ステータ巻線20で発生した回転磁界と永久磁石32で発生した界磁束との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)により、第2出力側ロータ19にトルク(磁石トルク)を作用させることができ、第2出力側ロータ19を回転駆動することができる。つまり、蓄電装置42からインバータ40を介してステータ巻線20に供給された電力を第2出力側ロータ19の動力(機械的動力)に変換することができ、第2回転電機11(ステータ16及び第2出力側ロータ19)を同期電動機(PMモータ部)として機能させることができる。さらに、第2出力側ロータ19の動力をステータ巻線20の電力に変換してインバータ40を介して蓄電装置42に回収することも可能である。このように、ステータ16のステータ巻線20と第2出力側ロータ19の永久磁石32とが電磁気的に結合されていることで、ステータ巻線20で発生する回転磁界を第2出力側ロータ19に作用させて、ステータ16と第2出力側ロータ19との間にトルク(磁石トルク)を作用させることができる。電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作により例えばステータ巻線20に流す交流電流の振幅や位相角を制御することで、ステータ16と第2出力側ロータ19との間に作用するトルク(PMモータトルク)を制御することができる。
また、入力側ロータ28が第1出力側ロータ18に対し相対回転して入力側ロータ28(ロータ巻線30)と第1出力側ロータ18(永久磁石33)との間に回転差が生じるのに伴ってロータ巻線30に誘導起電力が発生し、この誘導起電力に起因してロータ巻線30に誘導電流(交流電流)が流れることで回転磁界が生じる。そして、ロータ巻線30の誘導電流により生じる回転磁界と永久磁石33の界磁束との電磁気相互作用によって、第1出力側ロータ18にトルクを作用させることができ、第1出力側ロータ18を回転駆動することができる。このように、入力側ロータ28のロータ巻線30と第1出力側ロータ18の永久磁石33とが電磁気的に結合されていることで、ロータ巻線30で発生する回転磁界が第1出力側ロータ18に作用するのに応じて、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との間にトルク(磁石トルク)が作用する。そのため、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との間で動力(機械的動力)を伝達することができ、第1回転電機10(入力側ロータ28及び第1出力側ロータ18)を誘導電磁カップリング部として機能させることができる。
ロータ巻線30の誘導電流により入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との間にトルク(電磁カップリングトルク)を発生させる際には、電子制御ユニット50は、ロータ巻線30に誘導電流が流れるのを許容するように、インバータ41のスイッチング動作を行う。その際には、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング動作によりロータ巻線30に流れる交流電流を制御することで、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との間に作用する電磁カップリングトルクを制御することができる。一方、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング素子をオフ状態に維持してスイッチング動作を停止させることで、ロータ巻線30に誘導電流が流れなくなり、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との間にトルクは作用しなくなる。
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置の動作、特に、駆動軸37を駆動する動作について説明する。
エンジン36が動力を発生している場合は、エンジン36の動力が入力側ロータ28に伝達され、入力側ロータ28がエンジン回転方向に回転駆動する。入力側ロータ28の回転速度が第1出力側ロータ18の回転速度より高くなると、ロータ巻線30に誘導起電力が発生する。電子制御ユニット50は、ロータ巻線30に誘導電流が流れるのを許容するように、インバータ41のスイッチング動作を行う。これによって、ロータ巻線30の誘導電流と永久磁石33の界磁束との電磁気相互作用により入力側ロータ28から第1出力側ロータ18にエンジン回転方向の電磁カップリングトルクTcoupが作用する。図2に示すように、クラッチ機構60を第1係合状態に制御して第1出力側ロータ18を駆動軸37に係合させた状態では、第1出力側ロータ18は、回転が許容され、エンジン回転方向に回転駆動する。このように、入力側ロータ28に伝達されたエンジン36からの動力は、入力側ロータ28のロータ巻線30と第1出力側ロータ18の永久磁石33との電磁気結合によって、第1出力側ロータ18へ伝達される。第1出力側ロータ18に伝達された動力は、図2の矢印aに示すように、カウンタ軸73を介して駆動軸37(車輪38)へ伝達されることで、車両の前進駆動等、負荷の正転駆動に用いられる。したがって、エンジン36の動力を用いて駆動軸37を正転方向に回転駆動することができ、車両を前進方向に駆動することができる。さらに、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18との回転差を許容することができるため、車輪38の回転が停止してもエンジン36がストールすることはない。そのため、第1回転電機10を発進装置として機能させることができ、摩擦クラッチやトルクコンバータ等の発進装置を別に設ける必要がなくなる。以下、クラッチ機構60を第1係合状態に制御して第1出力側ロータ18を駆動軸37に係合させ、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間に作用する電磁カップリングトルクTcoupによりエンジン36からの動力を駆動軸37へ伝達する駆動モードを第1駆動モードとする。
さらに、第1駆動モードにおいて、ロータ巻線30に発生した交流電力は、スリップリング95及びブラシ96を介して取り出される。取り出された交流電力はインバータ41で直流に変換される。そして、インバータ40のスイッチング動作により、インバータ41からの直流電力がインバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20に供給されることで、ステータ巻線20に交流電流が流れ、ステータ16に回転磁界が形成される。このステータ16の回転磁界と第2出力側ロータ19の永久磁石32の界磁束との電磁気相互作用によって、ステータ16から第2出力側ロータ19にエンジン運転時の回転方向と同方向のトルクTmgを作用させることができ、図2の矢印bに示すように、第2出力側ロータ19の動力がカウンタ軸73を介して駆動軸37へ伝達される。これによって、駆動軸37の正転方向のトルクを増幅させるトルク増幅機能を実現することができる。一方、第1駆動モードにおいて、ロータ巻線30からスリップリング95及びブラシ96を介して取り出され、インバータ41で直流に変換された電力を蓄電装置42に回収することも可能である。その場合は、エンジン36の動力が駆動軸37(車輪38)の動力よりも大きくなり、特に駆動軸37に要求されるトルクが小さい軽負荷走行時に、エンジン36の熱効率が高くなる動作点でエンジン36の運転を行うことが可能となる。
また、第1駆動モードにおいて、蓄電装置42からステータ巻線20へ電力供給するようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、エンジン36の動力を用いて車輪38を正転方向に回転駆動するとともに、ステータ巻線20への供給電力を用いて発生させた第2出力側ロータ19の動力により車輪38の正転方向の回転駆動をアシストすることができる。その場合は、エンジン36の動力が駆動軸37(車輪38)の動力よりも小さくなり、特に駆動軸37に要求されるトルクが大きい高負荷走行時に、エンジン36の熱効率が高くなる動作点でエンジン36の運転を行うことが可能となる。
また、本実施形態では、エンジン36の運転を停止した状態で蓄電装置42の電力を用いて駆動軸37(車輪38)を駆動するEV(Electric Vehicle)走行を行うことも可能である。例えば、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力を交流に変換してステータ巻線20へ供給するようインバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20の交流電流によりステータ16から第2出力側ロータ19にエンジン運転時(第1駆動モード時)の回転方向と同方向のトルクTmgを作用させる。これによって、第2出力側ロータ19を第1駆動モード時の回転方向と同方向に回転駆動し、図3の矢印cに示すように、第2出力側ロータ19の動力をカウンタ軸73を介して駆動軸37へ伝達することで、EV走行により駆動軸37を正転方向に回転駆動する(車両を前進方向に駆動する)ことができる。また、ステータ巻線20から電力回収するようインバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ16から第2出力側ロータ19に減速方向(エンジン運転時の回転方向と逆方向)のトルクTmgを作用させて、駆動軸37を減速させる(車両を減速させる)回生走行を行うことも可能である。
ただし、EV走行時に、第2出力側ロータ19の回転に連動して第1出力側ロータ18が連れ回ると、第1出力側ロータ18と入力側ロータ28との回転差により入力側ロータ28に渦電流が流れ、渦電流による損失が発生する。そこで、本実施形態では、エンジン36の運転を停止した状態でEV走行により駆動軸37を駆動する場合は、図3に示すように、クラッチ機構60を第2係合状態に制御し、第1出力側ロータ18をケーシング15に固定して第2出力側ロータ19及び駆動軸37から切り離した状態で、ステータ16と第2出力側ロータ19間に作用するトルクTmgにより駆動軸37を駆動する。これによって、EV走行時に、第2出力側ロータ19の回転に連動して第1出力側ロータ18が連れ回ることで第1出力側ロータ18と入力側ロータ28とに回転差が発生するのを防ぎ、入力側ロータ28の渦電流による損失を抑えることができる。以下、クラッチ機構60を第2係合状態に制御して第1出力側ロータ18をケーシング15に係合させ、ステータ16と第2出力側ロータ19間に作用するトルクTmgにより駆動軸37を駆動する駆動モードを第2駆動モードとする。
また、エンジン36の始動を行う場合は、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力を交流に変換してブラシ96及びスリップリング95を介してロータ巻線30へ供給するようインバータ41のスイッチング動作を制御することで、ロータ巻線30の交流電流により第1出力側ロータ18から入力側ロータ28にエンジン回転方向のトルクTcoupを作用させる。これによって、図4の矢印dに示すように、蓄電装置42からロータ巻線30への供給電力を用いて入力側ロータ28をエンジン回転方向に回転させ、入力側ロータ28の動力をエンジン36へ伝達することで、エンジン36のクランキングを行う。
ただし、第1出力側ロータ18から入力側ロータ28にエンジン回転方向のトルクTcoupを作用させてエンジン36のクランキングを行う際には、入力側ロータ28から第1出力側ロータ18にエンジン回転方向と逆方向の反作用トルク−Tcoupが作用する。クラッチ機構60を第1係合状態に制御し、ステータ16から第2出力側ロータ19にエンジン運転時の回転方向と同方向のトルクTmgを作用させるようインバータ40のスイッチング動作を制御することで、この反作用トルク−Tcoupを受けることが可能となる。しかし、EV走行時にエンジン36を始動する場合は、ステータ16から第2出力側ロータ19に作用するトルクTmgは、駆動軸37の正転方向の回転駆動(車両の前進方向の駆動)以外に、入力側ロータ28から第1出力側ロータ18に作用する反作用トルク−Tcoupを受けるためにも用いられる。この反作用トルク−Tcoup分、駆動軸37の駆動トルクが低下する。
そこで、本実施形態では、エンジン36の始動を行う場合は、図4に示すように、クラッチ機構60を第2係合状態に制御し、第1出力側ロータ18をケーシング15に固定して第2出力側ロータ19及び駆動軸37から切り離し、第2駆動モードを選択する。その状態で、第1出力側ロータ18と入力側ロータ28間に作用するトルクTcoupによりエンジン36のクランキングを行う。これによって、エンジン36のクランキング時に、入力側ロータ28から第1出力側ロータ18に作用する反作用トルク−Tcoupをケーシング15で受けることができ、ステータ16から第2出力側ロータ19に作用するトルクTmgでこの反作用トルク−Tcoupを受ける必要がなくなる。したがって、EV走行時にエンジン36を始動する場合は、ステータ16から第2出力側ロータ19に作用するトルクTmgをすべて駆動軸37の正転方向の回転駆動(車両の前進方向の駆動)に用いることができ、駆動軸37の駆動トルクの低下を抑えることができる。
また、車両を後退させる(駆動軸37を逆転方向に回転駆動する)リバース走行を行う場合は、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力を交流に変換してステータ巻線20へ供給するようインバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20の交流電流によりステータ16から第2出力側ロータ19にエンジン運転時(第1駆動モード時)の回転方向と逆方向のトルクTmgを作用させる。これによって、第2出力側ロータ19を第1駆動モード時の回転方向と逆方向に回転駆動し、図5の矢印cに示すように、第2出力側ロータ19の動力をカウンタ軸73を介して駆動軸37へ伝達することで、EV走行により駆動軸37を逆転方向に回転駆動する(車両を後進方向に駆動する)。また、ステータ巻線20から電力回収するようインバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ16から第2出力側ロータ19に減速方向のトルクTmgを作用させて、駆動軸37を減速させる(車両を減速させる)回生走行を行うことも可能である。
ただし、EV走行によりリバース走行を行う場合は、ステータ巻線20への電力供給を行う必要がある。そして、蓄電装置42の蓄電量が少ないとき等、蓄電装置42からの供給電力量が不足するときは、エンジン36を運転するとともに、ロータ巻線30から電力回収するようインバータ41のスイッチング動作を制御することで、図5の矢印eに示すように、エンジン36の動力を利用して第1回転電機10の発電運転を行って、発電電力をステータ巻線20へ供給する必要がある。しかし、第1回転電機10の発電運転の際には、入力側ロータ28から第1出力側ロータ18にエンジン回転方向のトルクTcoupが作用する。その際に、クラッチ機構60を第1係合状態に制御すると、第1出力側ロータ18のエンジン回転方向のトルクTcoupが駆動軸37に伝達され、逆転方向に回転駆動する駆動軸37を減速させる方向に作用する。この第1出力側ロータ18から駆動軸37へ伝達されるトルク分、駆動軸37の駆動トルクが低下する。
そこで、本実施形態では、リバース走行を行う場合は、図5に示すように、クラッチ機構60を第2係合状態に制御し、第1出力側ロータ18をケーシング15に固定して第2出力側ロータ19及び駆動軸37から切り離し、第2駆動モードを選択する。その状態で、ステータ16と第2出力側ロータ19間のトルクTmgにより、エンジン36から駆動軸37への動力伝達時(第1駆動モード時)の駆動軸37の回転方向と逆方向に駆動軸37を回転駆動する。これによって、リバース走行時に、エンジン36の動力を利用して第1回転電機10の発電運転を行っても、第1出力側ロータ18から駆動軸37への減速トルクの伝達を防ぐことができ、駆動軸37の駆動トルクの低下を抑えることができる。
以上説明した本実施形態では、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間のトルクTcoupによりエンジン36からの動力を駆動軸37へ伝達する場合は、クラッチ機構60を第1係合状態に制御して第1駆動モードを選択する。一方、EV走行やリバース走行等、ステータ16と第2出力側ロータ19間のトルクTmgにより駆動軸37を駆動する場合は、クラッチ機構60を第2係合状態に制御して第2駆動モードを選択する。第2駆動モードでは、第2出力側ロータ19の回転に連動して第1出力側ロータ18が連れ回るのを防ぐことができ、入力側ロータ28の渦電流による損失を抑えることができる。さらに、第1出力側ロータ18から入力側ロータ28にトルクTcoupを作用させてエンジン36を始動する際には、入力側ロータ28から第1出力側ロータ18に作用する反作用トルク−Tcoupをステータ16から第2出力側ロータ19に作用するトルクTmgで受ける必要がなくなり、駆動軸37の駆動トルクの低下を抑えることができる。その結果、EV走行可能車速を増やすことができる。また、第2駆動モードでは、リバース走行時に、エンジン36の動力を利用して第1回転電機10の発電運転を行っても、駆動軸37の駆動トルクの低下を抑えることができる。このように、本実施形態によれば、駆動軸37を駆動する場合に、第1駆動モードと第2駆動モードを選択的に切り替えながら実行することで、ステータ16と第2出力側ロータ19間のトルクTmgにより駆動軸37を駆動する場合の駆動性能を向上させることができる。
なお、特許文献2には、第1及び第2モータジェネレータと、第1〜第3遊星歯車機構と、第1及び第2クラッチと、第1及び第2ブレーキとを備えるハイブリッド駆動装置が示されている。特許文献2では、第2ブレーキにより第2遊星歯車機構のサンギアの回転を拘束する、または第1クラッチにより第1遊星歯車機構のキャリアと第2遊星歯車機構のキャリア及び第3遊星歯車機構のリングギアとを連結することで、エンジンの動力を駆動軸及び第1モータジェネレータへ分配して駆動軸を駆動するとともに、第1モータジェネレータの発電運転による電力を第2モータジェネレータへ供給して駆動軸を駆動するスプリットモードを選択する。また、第1ブレーキにより第1遊星歯車機構のサンギア及び第3遊星歯車機構のキャリアの回転を拘束することで、エンジンの動力を利用して第1モータジェネレータの発電運転を行うとともに、第1モータジェネレータの発電電力を第2モータジェネレータへ供給して駆動軸を駆動するシリーズモードを選択する。ただし、特許文献2では、3つの遊星歯車機構と、2つのクラッチと、2つのブレーキを設けて装置を構成しており、シリーズモードとスプリットモードの両モードにおいて、遊星歯車機構の差動による損失、及びクラッチ・ブレーキによる引き摺り損失が発生する。これに対して本実施形態では、遊星歯車機構が不要で、クラッチ・ブレーキの数も少なく構成要素が簡素化されており、車両等への搭載性が良好である。さらに、本実施形態では、遊星歯車機構の差動による損失、及びクラッチ・ブレーキによる引き摺り損失も発生しない。
次に、第1駆動モードと第2駆動モードを切り替える動作の好適な例について説明する。第2駆動モードから第1駆動モードに切り替える場合は、まずスリーブギア64を第2係合位置から解放位置に移動させてクラッチ機構60を第2係合状態から解放状態に切り替える。スリーブギア64と固定ギア63の噛み合いを解除して第1出力側ロータ18とケーシング15の係合を解除するときには、第1出力側ロータ18がケーシング15で反力を受ける状態にならないよう入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間のトルクTcoupを0に制御することが好ましい。これによって、スリーブギア64と固定ギア63の噛み合いを円滑に解除することができる。第1出力側ロータ18とケーシング15の係合を解除したら、エンジン36の運転を行っている状態で、入力側ギア61の回転を加速させて出力側ギア62の回転に同期するよう入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間にトルクTcoupを作用させる。入力側ギア61(第1出力側ロータ18)の回転速度については回転速度センサ82により検出可能であり、出力側ギア62の回転速度については回転速度センサ83の検出値から演算可能である。入力側ロータ28から第1出力側ロータ18にエンジン回転方向のトルクTcoupを作用させて第1出力側ロータ18(入力側ギア61)の回転速度を出力側ギア62の回転速度まで加速する際には、第1出力側ロータ18から入力側ロータ28にエンジン回転方向と逆方向の反作用トルク−Tcoupが作用し、エンジン36のトルクTengでこの反作用トルク−Tcoupを受ける。その際には、エンジン36の回転速度の低下を抑えるために、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間のトルクTcoupがエンジントルクTeng以下になるように、トルクTcoup,Tengを制御することが好ましい。第1出力側ロータ18の回転速度が出力側ギア62の回転速度まで増加して入力側ギア61の回転が出力側ギア62の回転に同期したら、スリーブギア64を解放位置から第1係合位置に移動させて出力側ギア62と噛み合わせることで、クラッチ機構60を解放状態から第1係合状態に切り替える。これによって、第1出力側ロータ18と駆動軸37の係合に要する時間を短縮することができ、第1駆動モードへの切り替えを円滑に行うことができる。なお、例えば出力側ギア62と入力側ギア61の回転速度差が設定回転速度以下になるとき等、入力側ギア61の回転が出力側ギア62の回転に必ずしも同期していないときに、スリーブギア64の解放位置から第1係合位置への移動を開始することも可能である。
一方、第1駆動モードから第2駆動モードに切り替える場合は、まずスリーブギア64を第1係合位置から解放位置に移動させてクラッチ機構60を第1係合状態から解放状態に切り替える。スリーブギア64と出力側ギア62の噛み合いを解除して第1出力側ロータ18と駆動軸37の係合を解除するときには、入力側ギア61と出力側ギア62のトルク差が小さくなる(理想的には0になる)ように、入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間のトルクTcoupを制御することが好ましい。これによって、スリーブギア64と出力側ギア62の噛み合いを円滑に解除することができる。第1出力側ロータ18と駆動軸37の係合を解除したら、第1出力側ロータ18(入力側ギア61)の回転を減速させて停止させるよう入力側ロータ28と第1出力側ロータ18間にトルクTcoupを作用させる。第1出力側ロータ18(入力側ギア61)の回転速度については回転速度センサ82により検出可能である。入力側ロータ28から第1出力側ロータ18に作用するエンジン回転方向と逆方向のトルクTcoupによって、第1出力側ロータ18の回転が減速して停止したら、スリーブギア64を解放位置から第2係合位置に移動させて固定ギア63と噛み合わせることで、クラッチ機構60を解放状態から第2係合状態に切り替える。これによって、第1出力側ロータ18とケーシング15の係合に要する時間を短縮することができ、第2駆動モードへの切り替えを円滑に行うことができる。なお、例えば第1出力側ロータ18(入力側ギア61)の回転速度が設定回転速度以下になるとき等、第1出力側ロータ18の回転が必ずしも停止していないときに、スリーブギア64の解放位置から第2係合位置への移動を開始することも可能である。
本実施形態では、例えば図6に示すように、クラッチ機構60をカウンタ軸73上に配置することも可能である。図6に示す構成例では、第1出力側ロータ18がギア76に機械的に連結され、入力側ギア61がギア79に機械的に連結され、ギア79がギア76と噛み合うことで、入力側ギア61が第1出力側ロータ18に機械的に連結される。出力側ギア62は、カウンタ軸73に機械的に連結されることで、駆動軸37に機械的に連結される。
また、本実施形態では、例えば図7に示すように、カウンタ軸73を省略することも可能である。図7に示す構成例では、エンジン36が増速ギア68,69を介して入力側ロータ28に機械的に連結されている。そして、回転軸72のギア78がギア77と噛み合うことで、第2出力側ロータ19が駆動軸37に機械的に連結され、ギア77がギア76と噛み合うことで、クラッチ機構60の出力側ギア62が駆動軸37に機械的に連結される。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。