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JP6180308B2 - コーティング組成物およびそれより得られる塗膜、多層構造体および多層構造体の製造方法 - Google Patents
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JP6180308B2 - コーティング組成物およびそれより得られる塗膜、多層構造体および多層構造体の製造方法 - Google Patents

コーティング組成物およびそれより得られる塗膜、多層構造体および多層構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物微粒子を含むコーティング組成物およびそれより得られる塗膜、多層構造体および多層構造体の製造方法に関するものであり、詳しくは、耐熱性に優れる塗膜、多層構造体を得ることができるコーティング組成物、およびそれより得られるおよび前記多層構造体の製造方法に関するものである。
アクリル系樹脂は、耐候性、透明性、成形性等に優れているため、従来種々の内装材及び外装材、ディスプレイや屋外表示板等の表面保護コーティング剤に広く使用されている。近年は平均気温の上昇と共に、より熱により収縮、着色しないという耐熱性に優れた表面保護塗膜が得られるコーティング剤が求められている。
このような塗膜を形成する耐熱用コーティング組成物として、特定粒子径の金属化合物微粒子と、特定粒子径の、特定化学構造重合体エマルジョン粒子の水分散体(エマルジョン)とを含むコーティング組成物が提案されている(特許文献1参照)。
かかる文献には、特定粒子径の金属化合物微粒子と、特定粒子径の、特定化学構造重合体エマルジョン粒子の水分散体(エマルジョン)とが相互作用し、該金属化合物が該エマルジョンの硬化剤として作用することにより、得られるコーティング組成物から得られる耐熱複合体の透明性及び耐候性が向上すると記載されている(特許文献1[0013]参照)。なお、かかる組成物は該エマルジョンの固形分100重量部に対して該金属酸化物を80〜350重量部にて有するものである。
しかしながら、上記技術の耐熱性評価は150℃にて10分という条件に留まるものであった。
また、合成樹脂結合剤を有する耐熱性コーティング組成物が知られている(特許文献2参照)。かかる組成物には、アクリル樹脂エマルジョンとPVA系樹脂からなる合成樹脂結合剤が記載されている。
かかる技術では、コーティング組成物中の合成樹脂結合剤の全量中にポリビニルアルコールおよびその誘導体を2〜20重量%にて含有するものである。さらに、充填剤として炭酸カルシウムやアルミニウムを含有するコーティング組成物が記載されている。
上記充填剤はコーティング組成物が含有するエマルジョンの固形分100重量部に対して、18重量部および21重量部にて配合されている(特許文献2実施例10〜13参照)。また、かかる実施例において、コーティング組成物中の充填剤のPVA系樹脂に対する含有量は、PVA系樹脂100重量部に対して100重量部または500重量部である。
しかしながら、かかる技術の耐熱性評価は温度80℃という条件に留まるものであった。
これら上記の技術による耐熱性レベルでは、例えば自動車のインストゥルメントパネル、建物外壁や屋外設置ディスプレイパネル等、使用中に直射日光に晒され高温になったり、又は発熱等が起こったりする部材等、さらに高度な耐熱性が求められる用途には適用し難い。したがって、このような用途に適するようなさらに高レベルの耐熱性を有する高品質な塗膜およびそれを得ることができるコーティング組成物が求められている。
特開2010−235680号公報 特開2013−18915号公報
そこで、本発明は上記問題を解決し、高レベルの耐熱性を有する塗膜およびそれを得ることができるコーティング組成物を提供することを目的とするものである。
本発明は上記実情に鑑み鋭意検討した結果、分散剤にポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と称することがある)、分散質にアクリル系樹脂を有するエマルジョンに対し、特定少量の金属酸化物微粒子を含有するコーティング組成物を用いることにより、高レベルの耐熱性を有する塗膜が得られることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、(A)ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤、アクリル系樹脂を分散質、水を分散媒に有するエマルジョン、および(B)金属酸化物微粒子を含み、(B)金属酸化物微粒子の配合量が、(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して0.1〜1.5重量部であるコーティング組成物、およびそれより得られる塗膜、多層構造体および多層構造体の製造方法に存する。
本発明においては、分散剤にPVA系樹脂、分散質にアクリル系樹脂を有するエマルジョンに対し、特定少量の金属酸化物微粒子を含有するコーティング組成物を用いることにより、高レベルの耐熱性を有する塗膜が得られるとの優れた効果が発揮されるものである。
一般的には、従来技術に基づき耐熱性をさらに向上させるために金属酸化物微粒子の配合量を高めることを想起するが、単に金属酸化物微粒子の配合量を高くすると、塗膜の透明性が低下するという問題がある。これに反して、単に金属酸化物微粒子の配合量を低下させると、当然ながら耐熱性が低下するという問題がある。
しかしながら本発明では、コーティング組成物の金属酸化物微粒子の配合量を低くしても、得られる塗膜が高レベルの耐熱性を示す。すなわち、150℃、3時間の過酷な熱を受けた場合であっても収縮が抑制される。さらに、着色しにくい。これは、従来の知見とは矛盾する結果であり、予想外の顕著な効果といえる。
本発明の実施例において粘弾性評価を行った結果である。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本明細書において、アクリルとメタクリルを特段区別しない場合には、(メタ)アクリルと総称し、アクリレートとメタクリレートを特段区別しない場合には(メタ)アクリレートと総称する。
本発明において固形分および樹脂固形分とは、対象物を105℃、3時間の乾燥減量法に供することにより得られるものを意味する。
本発明のコーティング組成物は、(A)ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤、アクリル系樹脂を分散質、水を分散媒に有するエマルジョン、および(B)金属酸化物微粒子を含み、(B)金属酸化物微粒子の配合量が、(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して0.1〜1.5重量部含有するコーティング組成物である。
<(A)エマルジョンの説明>
本発明のコーティング組成物は、ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤、アクリル系樹脂を分散質、水を分散媒に有するエマルジョンを用い、金属酸化物微粒子を特定少量にて配合した場合に、得られる塗膜が高レベルの耐熱性を示す。
<(A)分散剤のPVA系樹脂の説明>
本発明のコーティング組成物が含むエマルジョンは、分散剤としてPVA系樹脂を有するものである。本発明に用いられるPVA系樹脂は、公知のPVA系樹脂が適用可能である。
分散剤たるPVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常85〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎると、脱酢酸反応等が起こってポリビニルアルコール分子主鎖に共役構造が発生しやすくなり、得られる塗膜が着色しやすくなる傾向がある。
平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常50〜2500であり、好ましくは100〜1700、より好ましくは100〜1000、特に好ましくは200〜500である。かかる平均重合度が低すぎると、得られる塗膜の強度が低くなる傾向があり、逆に高すぎると、分散質のドメインサイズの制御が困難となったり、またエマルジョンの放置安定性が低下する傾向がある。
本発明において、分散剤たるPVA系樹脂として、公知の変性PVA系樹脂を用いてもよい。変性PVA系樹脂を用いる場合、変性量(変性ビニルアルコール構造単位の含有量)が多すぎると、エマルジョンの粘度が高くなる傾向があるので、通常は、15モル%以下、好ましくは10モル%以下の変性量を有する変性PVA系樹脂を用いる。
PVA系樹脂の変性モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等があげられる。
PVA系樹脂に対してこれら変性モノマーを用いる変性方法は、共重合であり、その他グラフト変性等の公知の後変性を用いることができる。
上記変性PVA系樹脂として、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体変性PVA系樹脂を用いることが好ましく、さらには下記一般式(1)で表される構造単位を含有するPVA系樹脂を用いることが好ましい(以下、「側鎖1,2−ジオール構造単位含有PVA系樹脂」と称することがある)。
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。)
エマルジョンの分散剤として用いられるPVA系樹脂がかかる構造単位を有することにより、エマルジョンが金属酸化物微粒子と相互作用し易く、且つかかるエマルジョンを含むコーティング組成物が塗膜となった場合に該変性PVA系樹脂が連続相となり、かかるPVA系樹脂の非晶部のフリーボリュームを小さくしながら低結晶化できる為か、かかるエマルジョンを含むコーティング剤から得られる塗膜が高温条件下に晒されても、連続層のPVA系樹脂の結晶化に伴う収縮等を抑制でき、高レベルの耐熱性が得られる点で好ましい。
上記一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。R〜Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。該有機基としては特に限定しないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じてハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、結晶性の向上や非晶部におけるフリーボリューム(分子間空隙)低減の点から単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CHO)m−、−(OCH)m−、−(CHO)mCH−、−CO−、−COCO−、−CO(CH)mCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等が挙げられる。Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である。なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン、特にメチレン、あるいは−CHOCH−が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
このような側鎖1,2−ジオール構造単位含有PVA系樹脂は、公知の製造方法により製造できる。例えば、特開2002−284818号公報、特開2004−285143号公報、特開2006−95825号公報等に記載されている方法により製造することができる。
分散剤たるPVA系樹脂が側鎖1,2−ジオール構造単位含有PVA系樹脂である場合、変性量は上記した範囲と異なる範囲であってもよい。かかる側鎖1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常0.5〜15モル%であり、好ましくは1〜10モル%、より好ましくは3〜9モル%である。PVA系樹脂が側鎖1,2−ジオール構造単位をかかる範囲で含有する場合、高レベルの耐熱性がより効果的に得られる傾向がある。また、分散質であるアクリル系樹脂に対するPVA系樹脂のグラフト化率が高くなり、エマルジョンの機械的安定性や放置安定性等が向上する傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の側鎖1,2−ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100%のPVA系樹脂の1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2−ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
<(A)分散質のアクリル系樹脂の説明>
本発明のコーティング組成物が含むエマルジョンは、分散質としてアクリル系樹脂を有するものである。本発明に用いられるアクリル系樹脂は、アクリルエマルジョンに用いられる公知のアクリル系樹脂が適用可能である。
アクリル系樹脂とは、アクリル系モノマーの重合体である。かかるアクリル系モノマーとは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、i−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルエステル系モノマー;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で重合に用いることも可能であるが、2種類以上混合して用いることが好ましい。
かかるアクリル系樹脂には、本願の効果を損なわない範囲にてアクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合することも可能である。アクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合する場合、その含有量は通常アクリル系モノマーに対して20重量%未満、好ましくは10重量%未満である。アクリル系モノマー以外の他のモノマーとは、例えばビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、オレフィン系モノマー、アクリルアミド系モノマー、アクリルニトリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、アリル系モノマーが挙げられる。
アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマーとして好ましくは(メタ)アクリルエステル系モノマーであり、さらに好ましくは炭素数5〜15の(メタ)アクリルエステル系モノマーであり、特に好ましくは炭素数5〜10の(メタ)アクリルエステル系モノマーである。
[乳化重合:エマルジョンの合成]
かかるエマルジョンは、以上のような分散剤たるPVA系樹脂と分散質たるアクリル系樹脂とを含む粒子が、水分散媒体中に分散しているものである。これは、分散剤の存在下で、上記アクリル系モノマー(および所望によりアクリル系モノマー以外の他のモノマー)を、乳化重合した結果、得られる。
前記乳化重合を実施する方法としては、i)水、分散剤としてのPVA系樹脂及び重合触媒の存在下に、分散質の原料であるアクリル系モノマー(及び所望によりその他のモノマー)を一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌することにより乳化重合する方法;ii)アクリル系モノマー(及び所望によりアクリル系モノマー以外の他のモノマー)をPVA系樹脂の水溶液に混合分散させた分散液を調製し、この調製した分散液を、水、PVA系樹脂及び重合触媒が配合された系内に、一時又は連続的に配合して、加熱、撹拌して、乳化重合する方法が挙げられる。このように予め調整した分散液を用いる方法は特にプレエマルジョン法と称される。かかる方法では、重合しようとするモノマー組成がたとえ複雑であっても、生産性を低下させることなく乳化重合を行なうことが可能であるため好ましい。
前記乳化重合に用いられる反応溶液中の分散媒は、通常、水である。所望により、水と混合可能な有機溶媒(例えば炭素数1〜3の低級アルコール等)を水と併用することも可能である。しかしながら、乳化重合に供するモノマーの分散性の点から、好ましくは水のみである。
乳化重合時に分散剤として用いられるPVA系樹脂の配合量は、使用するPVA系樹脂の種類や合成しようとするエマルジョンの濃度等によって多少異なるが、乳化重合反応系の全体に対して通常0.1〜30重量%であり、さらには1〜25重量%、特には1〜20重量%であることが好ましい。PVA系樹脂の配合量が少なすぎると、アクリル系モノマー(及び所望によりアクリル系モノマー以外の他のモノマー)の乳化状態が不安定となって、重合反応性が低下したり、重合により得られるエマルジョン中での粒子の乳化状態安定性が低下する傾向にある。一方、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、反応液の粘度が増大しすぎて重合反応が遅くなったり、得られるエマルジョンの粘度が高くなりすぎる傾向にある。
重合触媒としては、通常、乳化重合の分野で用いられる重合触媒を用いることができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、臭素酸カリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、過酸化水素−酒石酸、過酸化水素−鉄塩、過酸化水素−アスコルビン酸−鉄塩、過酸化水素−ロンガリット、過酸化水素−ロンガリット−鉄塩等の水溶性のレドックス系の重合触媒などが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上混合して用いることができる。具体的には化薬アクゾ社製『カヤブチルB』や同社製『カヤブチルA−50C』等の有機過酸化物とレドックス系からなる触媒を用いることもできる。
重合触媒の使用量は、通常、重合に使用するモノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。かかる重合開始剤の使用量が少なすぎると重合速度が遅くなる傾向があり、逆に多すぎると重合安定性が低下する傾向がある。
なお、重合開始剤の配合方法としては、特に制限はなく、初期に一括して反応液中に配合してもよいし、重合の経過に伴って連続的に添加してもよい。
乳化重合は、1段階で行ってもよいし、2段階以上の複数回に分けて行ってもよい。特に2段階で行う場合、1段目と2段目でモノマー仕込み量(仕込み比率)を変えることにより、1段目で形成した内層と2段目で形成した外層のガラス転移点(Tg)を変えることも可能となる。
具体的には、以下のような2段階の重合が挙げられる。
(1)1段目の重合工程
分散媒、分散剤を含有する反応容器に、重合しようとするモノマーの一部を仕込み、1段目の乳化重合を行う。1段目に投入するモノマーの量は、特に限定しないが、重合に使用するモノマーの通常1〜50重量%程度であり、好ましくは5〜30重量%である。1段目の乳化重合工程の条件は、用いるモノマーの種類、組成、重合開始剤の使用量等により適宜決定すればよい。
乳化重合反応の温度は、通常30〜90℃であり、特に40〜80℃が好ましく、重合時間は1〜4時間とすることが好ましい。1段目の乳化重合工程においては、重合転化率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
(2)2段目の重合工程
2段目の乳化重合は、1段目の重合が終了した反応容器に、残りのモノマーを投入することにより行う。投入は、滴下しながら行うことが好ましい。また、2段目の重合に際して、重合触媒を投入してもよい。2段目の乳化重合は、重合温度が40〜80℃、重合時間が1〜6時間の条件で行う。
また、滴下するモノマー組成比を連続的に変えながら滴下するパワーフィード重合法を用いることも可能である。また、モノマーを分散剤たるPVA系樹脂存在下にて予め混合分散させた分散液を滴下しながら重合してもよい。
必要に応じて、かかる工程の後に通常1〜6時間の追い込み重合をおこなうことも可能である。かかる重合中に重合触媒を投入してもよい。
以上のような乳化重合において、必要に応じて、分子量調節剤を含んでもよい。分子量調節剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロロメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、アセトアルデヒド、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。なお、乳化重合工程では、これらの分子量調節剤を一種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、上記重合工程において、PVA系樹脂による分散安定効果を阻害しない範囲で、分散剤とは別に、非イオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤等の界面活性剤を系内に併存させてもよい。かかる界面活性剤の配合量は、通常乳化重合反応系の全量に対して通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン−多価アルコールエステル型、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
<(A)エマルジョンについて>
以上のようにして乳化重合を行うことにより、合成されたアクリル系樹脂(分散質)と分散剤としてのPVA系樹脂とを含む粒子が、水分散媒中に分散したエマルジョンが得られる。
前記粒子の平均粒子径は、通常100〜700nm、好ましくは200〜500nmである。なお、前記粒子の平均粒子径は、ゼータ電位測定装置により測定された値を採用する。
得られる(A)エマルジョンの樹脂固形分含有量は通常10〜60重量%であり、より好ましくは20〜58重量%であり、さらに好ましくは30〜55重量%であり、特に好ましくは35〜53重量%である。なお、かかる(A)エマルジョンの樹脂固形分とは、(A)エマルジョンの含有する総樹脂量であり、乾燥減量法により測定された値である。かかる樹脂固形分は、合成されたアクリル系樹脂(分散質)と分散剤としてのPVA系樹脂とを含む。
得られる(A)エマルジョンの粘度は通常100〜20000mPa・sであり、より好ましくは300〜10000mPa・sであり、特に好ましくは450〜8000mPa・sである。なお、エマルジョンの粘度は、B型粘度計により測定された値を採用する。
<(B)金属酸化物微粒子の説明>
本発明でコーティング組成物に用いる(B)金属酸化物微粒子としては、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の第4族の金属酸化物、酸化アルミニウム(以下、アルミナと称することがある。)、酸化インジウム等の第13族元素の金属酸化物、二酸化珪素、酸化スズ、酸化鉛等の第14族元素の金属酸化物、酸化アンチモン等の第15族元素金属酸化物等が使用可能である。なお、これら金属酸化物の化学種は単独で用いても、複数種を併用してもよい。
なかでも、高レベルの耐熱性が効果的に得られる点で、好ましくは第13族〜第15族元素の金属酸化物微粒子であり、さらに好ましくは第13族元素の金属酸化物微粒子であり、特に好ましくは酸化アルミニウム微粒子である。
上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真から粒子径を測定し、その平均値にて、通常1〜1000nm、好ましくは1〜100nm、特に好ましくは10〜50nmである。かかる値が大きすぎる場合、分散しにくく凝集物となる傾向があり、小さすぎる場合、攪拌時に気泡が混入するという傾向がある。
かかる微粒子のアスペクト比は、通常1以上10未満、好ましくは1〜8、特に好ましくは1以上3未満である。かかるアスペクト比が上記範囲内にある場合、金属酸化物微粒子が均一分散しやすい傾向がある。形状として好ましくは球状である。
上記金属酸化物微粒子の状態は、固体粉末、およびその水分散液、ゾル、コロイダルシリカなどの水溶液等、いずれの状態でも用いることが出来る。前記エマルジョンとの親和性の点で好ましくは水分散液または水溶液である。
かかる(B)金属酸化物微粒子は、本発明のコーティング組成物における樹脂固形分に含まれない。
<他の成分の説明>
本発明のコーティング組成物には、通常塗膜に用いられる塗料や成型用樹脂に用いられる配合剤を配合することが出来る。例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。それぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。コーティング組成物がこれらの配合剤を配合する場合、含有する配合剤の有機分は、コーティング組成物の樹脂固形分に含まれる。
上記配合剤の配合量は、コーティング組成物における上記(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して通常10重量部未満、好ましくは5重量部未満である。
特に本発明のコーティング組成物においては、コーティング組成物に含まれる上記(A)エマルジョン中の分散剤としてのPVA系樹脂(第1のPVA系樹脂)とは別の、第2のPVA系樹脂が配合されることが好ましい。これにより、エマルジョン粒子間隙が適度に増加するためか、塗膜とした場合の耐熱性がさらに向上する傾向がある。なお、コーティング組成物が第2のPVA系樹脂を含有する場合、その含有量は本発明のコーティング組成物における樹脂固形分に含まれる。
かかる第2のPVA系樹脂は、上記した分散剤たるPVA系樹脂と同様に、公知のPVA系樹脂を用いることが可能である。
第2のPVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常80〜100モル%であり、好ましくは85〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎると、脱酢酸反応等が起こってポリビニルアルコール分子主鎖に共役構造が発生しやすくなり、得られる塗膜が着色しやすくなる傾向がある。
第2のPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常50〜2500であり、好ましくは100〜2500、より好ましくは300〜2400であり、特に好ましくは300〜1000である。目的とするコーティング組成物の粘度に応じて添加する第2のPVA系樹脂の重合度と濃度を任意に設定することが出来る。かかる平均重合度が低すぎる場合、コーティング組成物の粘度調整や樹脂分調整が困難となる傾向がある。また、平均重合度が高すぎる場合、同様に樹脂分調整が困難となる傾向があり、厚み制御の自由度が少なくなる傾向がある。
また、第2のPVA系樹脂においても、上記分散剤たるPVA系樹脂と同じく変性PVA系樹脂を用いることが可能である。しかし、第2のPVA系樹脂は、変性基を有さない無変性ポリビニルアルコール樹脂であることが好ましい。
第2のPVA系樹脂を用いる場合、本発明に用いるエマルジョンの分散剤たる第1のPVA系樹脂と第2のPVA系樹脂は、互いに完全相溶性(海―海構造)となり均一相を形成するか、或いは海島構造を形成する。本発明のコーティング組成物より得られるフィルムにおける、連続層の強度の観点から、海島構造を形成する場合はドメインサイズを小さく(通常ドメイン径1.5μ以下)制御することが好ましい。かかる観点から、第1のPVA系樹脂と第2のPVA系樹脂のケン化度差は、通常0〜15モル%、好ましくは3〜10モル%である。
また、本発明に用いるエマルジョンの分散剤たる第1のPVA系樹脂のけん化度が、第2のPVA系樹脂のけん化度より高いことが好ましい。かかる場合、コーティング組成物より得られる塗膜の連続相において、第1のPVA系樹脂が安定なマトリックスを形成することができる為、連続層の強度が良好に維持されると考えられる。
第2のPVA系樹脂を用いる場合、その配合量は上記と異なるものであってよく、コーティング組成物の通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。
また、コーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して通常5〜1000重量部、好ましくは10〜100重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。
前記第2のPVA系樹脂は、上記(A)成分と(B)成分を混合した後に配合してもよいし、(A)成分、(B)成分のどちらかおよび両方について予め配合してもよい。
特に、予め(A)成分たるエマルジョンに配合してエマルジョン組成物としておくことが、(A)エマルジョンの分散質の分散安定性の点から好ましい。
<コーティング組成物の説明>
本発明のコーティング組成物は、(A)ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤、アクリル系樹脂を分散質、水を分散媒に有するエマルジョンおよび金属酸化物微粒子を含み、、(B)金属酸化物微粒子の配合量が、(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して0.1〜1.5重量部含有するコーティング組成物である。
金属酸化物微粒子を、コーティング組成物の(A)エマルジョンの樹脂固形分に対して特定少量にて配合することにより、金属酸化物微粒子の配合量が非常に少ないにもかかわらず、得られる塗膜が顕著な耐熱性を有する。かかる効果は従来の知見とは全く異なるものであり、予想外の効果である。
本発明の「コーティング組成物における樹脂固形分」とは、(A)エマルジョンにおける樹脂固形分、および所望により上記配合剤と上記第2のPVA系樹脂を配合した場合、それらの樹脂分との和を意味し、(B)成分は含まない。かかる樹脂固形分はコーティング組成物より(B)成分を分離した後に乾燥減量法にて測定することが可能である。
コーティング組成物における樹脂固形分含有量は通常10〜60重量%であり、より好ましくは20〜58重量%であり、さらに好ましくは30〜55重量%であり、特に好ましくは35〜50重量%である。なお、かかる樹脂固形分は、乾燥減量法により測定された値を採用する。
コーティング組成物における(A)エマルジョンの配合量は、(A)エマルジョンの樹脂固形分にて通常5〜60重量%であり、好ましくは10〜55重量%であり、特に好ましくは20〜40重量%である。
かかる含有量が多すぎる場合、コーティング組成物の粘度が高くなる傾向や、塗工性やレベリング性等が低下する傾向があり、少なすぎる場合、コーティング組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
コーティング組成物における(B)金属酸化物微粒子の配合量は、コーティング組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.1〜1.5重量部であり、好ましくは0.1〜1.2重量部であり、特に好ましくは0.3〜1重量部である。
また、コーティング組成物における(B)金属酸化物微粒子の(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対する配合量は、通常0.1〜1.5重量部であり、好ましくは0.1〜1.2重量部であり、特に好ましくは0.3〜1重量部である。
かかる配合量が上記範囲内にある場合、得られる塗膜の高レベルの耐熱性が得られる。
かかるコーティング組成物を作成するにあたり、上記エマルジョン(またはエマルジョン組成物)および所望により配合剤を配合した分散液を、通常1000〜3000rpm、好ましくは1500〜2500rpmにて、通常0.1〜60分、好ましくは0.1〜30分、特に好ましくは0.1〜15分間攪拌する。
かかる攪拌工程は、複数段階にて行うことが可能である。
得られるコーティング組成物の粘度は通常100〜20000mPa・sであり、より好ましくは300〜10000mPa・sであり、特に好ましくは450〜8000mPa・sである。なお、コーティング組成物の粘度は、B型粘度計により測定された値を採用する。かかる粘度を調整するために、水や水との混和性を有する炭素数が1〜4のアルコール類、ケトン類を配合することも可能である。
<塗膜の製造方法>
本発明の塗膜は、上記(A)エマルジョンと(B)金属酸化物微粒子を含むコーティング組成物より得られるものであり、分散相と連続相を有する塗膜である。かかる塗膜は(A)エマルジョンの分散質たるアクリル系樹脂に由来する非水溶性の分散相が主成分であり、(A)エマルジョンの分散剤たるPVA系樹脂に由来する水溶性の連続相を微量有するものである。
本発明のコーティング組成物を、基材に塗工、熱処理することで塗膜を得ることができる。
かかる基材としては特に制限はなく、その素材としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの合成樹脂、ガラス、アルミ箔などの金属材料、紙、木などの天然材料が挙げられる。その形状としては、塗膜、シート、不織布、各種成形品などを挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂とは例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン6,6、メタキシリレンジアミン−アジピン酸縮重合物等のポリアミド系樹脂;ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル等のスチレン系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチック;等を挙げることができる。
また、コーティング組成物の塗布前に、かかるプラスチック基材に対しプラズマ処理、コロナ処理、電子線処理などによって基材表面を活性化することも好ましい。
上述の基材に本発明のコーティング組成物を塗工する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法などのグラビア法;2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本ロール法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコート法;スプレー法、;など、公知の塗工法を用いることができる。
本発明のコーティング組成物を基材に塗工した後、熱処理することにより本発明のフィルムが得られる。かかる熱処理は、塗工層の厚さによって適宜調節すべきものである。熱処理温度は通常40〜200℃であり、好ましくは50〜150℃、特に好ましくは60〜120℃である。
また、熱処理時間も、上述の熱処理温度に応じて適宜調節されるものであるが、通常は0.1〜200時間であり、好ましくは0.5〜1時間である。
かかる熱処理は、複数段階にて行うことも可能である。また、特に基材として融点の低いポリオレフィン系樹脂(多孔質被膜、塗膜、不織布など)を用いる場合は、基材へのダメージを抑制するために波長制御乾燥システム(日本ガイシ社等)を用いて通常40℃〜90℃条件下にて乾燥を行うことが好ましい。
かかる塗膜において(B)金属酸化物微粒子の含有量は、上記コーティング組成物における含有量と対応する。また、含有する金属酸化物微粒子はほぼ連続相たるPVA系樹脂相中に存在する。したがって、金属酸化物微粒子を少量のみ配合するにもかかわらず、高レベルの耐熱性が得られる。
かかる塗膜の連続相における金属酸化物微粒子の含有量は、塗膜中に存在する金属酸化物微粒子の総重量(すなわち塗膜における(B)金属酸化物微粒子含有量)の通常、95〜100重量%、好ましくは99〜100重量%である。
塗膜の分散相における金属酸化物微粒子の含有量は、塗膜中に存在する金属酸化物微粒子の総重量(すなわち塗膜における(B)金属酸化物微粒子含有量)に対して通常、0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%である。
かかる金属酸化物微粒子の連続相と分散相における含有量は、例えば塗膜を粘弾性測定装置に供して得られるグラフの各樹脂相のピーク値(tanδ)のシフト値や、フィルムの電子顕微鏡写真より測定することが可能である。
かくして得られた本発明のコーティング組成物により得られる塗膜の膜厚は、目的とする用途により適宜調節することが可能である。通常5〜100μmであり、特に5〜50μm、殊に10〜30μmである。かかる膜厚が薄すぎると、塗膜の強度が低下する傾向があり、一方、膜厚が厚すぎると、透明性が低下する傾向がある。
得られた塗膜は通常、基材との多層構造体として用いる。かかる多層構造体は、上記塗膜層のほか、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの合成樹脂、ガラス、アルミ箔などの金属材料、紙、木などの天然材料層を含有していても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
<評価方法>
(1)収縮性評価
コーティング組成物から得られる塗膜を切り出して得られる縦4×横4cmのフィルムを150℃、3時間にて保持した。
かかる熱処理した塗膜の長辺、短辺の長さおよび厚みを測定し、面積および体積シュリンク率(%)を、下記式にて算出した。
かかるシュリンク率が小さいほど熱処理後の収縮変化が少なく、良好な塗膜である。
面積シュリンク率:
{1−(熱処理後の縦の長さ[cm]/4[cm]}×(熱処理後の横の長さ[cm]/4[cm])×100
体積シュリンク率:
面積シュリンク率[%]×(熱処理後の厚み[cm]/熱処理前の厚み[cm])
(2)着色性評価
上記(1)にて得られる熱処理後の塗膜について、透過型YI値を色差計SZ−Σ90(日本電色工業社製)によって測定した。かかる数値が低いほど、着色しておらず良好な塗膜である。
(3)粘弾性評価
コーティング組成物より得られる塗膜を粘弾性測定装置DVA−225 (アイティー計測制御社製)によって測定した。結果を図1に示す。また、PVA系樹脂相のピーク値すなわちtanδを表1に示す。
[実施例1]
<コーティング組成物が含有するエマルジョンの作製>
エマルジョンの分散媒として水、分散剤として上記化学式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位を側鎖に含有するポリビニルアルコール樹脂(けん化度;98.5モル%、平均重合度300,1,2−ジオール構造単位含有量;8モル%)を用い、分散質たるアクリル系樹脂となるアクリル系モノマーとして、ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=55/45(重量比)の混合モノマーを用いた。
水715部に上記化学式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位を側鎖に含有するポリビニルアルコール樹脂ポリビニルアルコール樹脂(けん化度;98.5モル%、平均重合度300,1,2−ジオール構造単位含有量;8モル%)を46.2部溶解させた水溶液を作製した。また、アクリル系モノマーたるブチルアクリレート/メチルメタクリレート=55/45(重量比)の混合モノマーを700部用意した。
攪拌機と還流冷却器を備えたステンレス製反応容器に上記水溶液を仕込み、反応容器の温度を80℃に保った。
ここに、一段目の乳化重合用モノマーとして、上記混合モノマー〔ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=55/45(重量比)〕を70部配合し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(10重量%濃度)を5.7部配合し、一段目の重合反応を開始した。反応温度を80℃にて、1時間重合を行った。
次いで2段目の乳化重合用モノマーとして、上記混合モノマー630部を用い、重合開始剤として前記過硫酸アンモニウム水溶液を11.3部を用いた。これらを反応容器に4時間かけて滴下しながら重合を続けた。
上記2段目の乳化重合終了後(すなわち滴下終了後)に、前記過硫酸アンモニウム水溶液を1.9部配合した、同80℃で1時間の追い込み重合を続けた。
その後、室温まで冷却して、(A)エマルジョンを得た。かかるエマルジョンの樹脂固形分は、105℃、3時間乾燥による乾燥減量法により測定し、50.7重量%であった。
かかる(A)エマルジョンにポリビニルアルコール水溶液(20重量%濃度)(ポリビニルアルコールのケン化度:89モル%、平均重合度:500)を356重量部配合し、エマルジョン(A)を含むエマルジョン組成物を得た。
かかるエマルジョン組成物の樹脂固形分は、105℃、3時間乾燥による乾燥減量法により測定し、44.4重量%であった。
<コーティング組成物の作製>
上記エマルジョン組成物を用いた。また、金属酸化物微粒子として平均粒子径13nmの球状(アスペクト比=1)の酸化アルミニウム微粒子(AEROXIDE Alu C、日本アエロジル社製)の粉末を用いた。
かかるエマルジョン組成物100重量部、酸化アルミニウム微粒子を0.34重量部、を配合し、ニーダー(Thinky社製、錬太郎ARE−250)で2000rpmにて10分、その後2200rpmにて0.5分攪拌し、本発明のコーティング組成物を得た。
かかるコーティング組成物における樹脂固形分含有量は44.2重量%である。かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分含有量は40.4重量%である。
かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対する(B)金属酸化物微粒子の配合量は、0.8重量部である。
得られたコーティング組成物を、100umアプリケーターを用いて、8×15cmのポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)シート上にキャストした。かかる試料を、23℃にて48時間保持し、次に105℃にて3時間保持することで8×15cmの塗膜を作成した。かかる塗膜は、PTFEシートから、スパチュラにて剥し、五酸化燐入りデシケータで1週間乾燥させた。
得られた塗膜について、上記(1)〜(3)の評価を行った。評価(1)および(2)の結果を表1に示す。評価(3)の結果を図1に示す。
[比較例1]
実施例1において、酸化アルミニウム微粒子の配合量を0.71重量部、とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物および塗膜を作成し、同様の評価を行った。
かかるコーティング組成物における樹脂固形分含有量は44.1重量%である。かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分含有量は40.2重量%である。
かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対する(B)金属酸化物微粒子の配合量は、1.8重量部である。
結果を表1および図1に示す。
[比較例2]
実施例1において、酸化アルミニウム微粒子の配合量を1.6重量部とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物および塗膜を作成し、同様の評価を行った。
かかるコーティング組成物における樹脂固形分含有量は43.7重量%である。かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分含有量は39.9重量%である。
かかるコーティング組成物における(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対する(B)金属酸化物微粒子の配合量は、3.9重量部である。
結果を表1および図1に示す。
[参考例1]
実施例1において、金属酸化物微粒子を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物および塗膜を作成し、同様の評価を行った。コーティング組成物における樹脂固形分は44.4重量%であった。
結果を表1および図1に示す。
[表1]
(B)金属酸化物微粒子を含有しない参考例1と比較して、コーティング組成物中の(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して(B)金属酸化物微粒子を3.9重量部有する比較例2では、面積シュリンク率がおよび体積シュリンク率が低くなり、かつYI値が低くなった。すなわち、金属酸化物微粒子を多く配合する場合、耐熱性向上効果が得られることがわかる。
さらに、図1に示すように、粘弾性測定結果より、アクリル樹脂相tanδピークに変化はなかったが、PVA系樹脂相tanδピークが高温にシフトした。
これらの効果より、コーティング組成物が含有する金属酸化物微粒子は、塗膜となった場合PVA系樹脂相である連続相に存在していることがわかる。
(B)金属酸化物微粒子の含有量が比較例2の約半分量である比較例1のコーティング組成物を用いた場合、当然ながら面積シュリンク率、体積シュリンク率、YI値が比較例2よりも高まり、図1に示すように、アクリル樹脂相tanδピークは変化なかったものの、PVA系樹脂相tanδピークが比較例2よりも低温にシフトした。
かかる比較例1の結果は、金属酸化物微粒子含有量を低減させたために耐熱性効果が十分に得られないという、従来知見どおりの結果である。
しかしながら、コーティング組成物中の(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して(B)金属酸化物微粒子を0.9重量部有する本発明のコーティング組成物を用いた実施例1では、金属酸化物微粒子の配合量が比較例1の約半分であり、比較例2の約4分の1であるにもかかわらず、比較例1および2よりも顕著に良好な結果が得られた。
収縮性評価では、面積シュリンク率では比較例2のほうが良い値を示したものの、比較例1の約3分の1の優れた値を示した。また、体積シュリンク率では比較例2の塗膜のおよそ2分の1の値を示し、比較例1に対してはおよそ4分の1の値であった。かつその着色評価についても、比較例2の約2分の1の値であり、比較例1に対しては約4分の1と優れた効果を示した。
また、図1の粘弾性測定結果についてさらに言及すれば、実施例1、比較例1、比較例2、参考例の結果を比較した場合、前述したようにいずれもアクリル系樹脂のピーク(7.0〜10.0℃)に変化は無い。
一方PVA系樹脂のピーク(86.0〜92.5℃)について、金属酸化物微粒子を配合していない参考例1と比較すると、金属酸化物微粒子を配合した実施例1および比較例1、2はいずれもピークが高温にシフトしている。このことから、金属酸化物微粒子はPVA系樹脂たる連続相中に存在し、分散相中には存在しないことが明らかである。
すなわち、実施例1および比較例1、2において、塗膜の連続相における金属酸化物微粒子の含有量は、塗膜の総重量に対して100重量%である。また、塗膜の分散相における金属酸化物微粒子の含有量は、塗膜の総重量に対して0重量%である。
比較例1では、ピーク温度は88.6℃でありかつその強度は参考例1と変化無く、耐熱性向上効果が不十分である。これに対して、実施例1の場合、ピークが92.5℃となり顕著に高温にシフトし、しかもその強度が低い結果となったことから、耐熱性が顕著に向上したといえる。
なお、比較例2ではピーク温度は92.5℃と実施例1に匹敵する高温を示したが、上記したように着色評価が不十分である。
以上の結果より、本発明の効果は、金属酸化物微粒子が塗膜における連続相中に局在的に存在し、かつ連続相中で顕著に良好に分布する特定少量の配合量を見出したために得られると考えられる。本発明のかかる効果は、上記したように従来知見とは相反する予想外の効果である。
本発明のコーティング組成物より得られる塗膜は高レベルの耐熱性を有するものである。
本発明のコーティング剤およびそれから得られる塗膜は、高レベルの耐熱性を有するため、自動車のインストゥルメントパネル、建物外壁や屋外設置ディスプレイパネル等、使用中に直射日光に晒され高温になったり、又は各種2次イオン電池用セパレータ等、発熱等が起こる環境下に晒される部材を保護し、かつ収縮が抑制される塗膜およびそれを含有する多層構造体を形成するコーティング組成物として有用である。
1.実施例1における粘弾性測定評価結果のグラフである。
2.比較例1における粘弾性測定評価結果のグラフである。
3.比較例2における粘弾性測定評価結果のグラフである。
4.参考例における粘弾性測定評価結果のグラフである。

Claims (8)

  1. (A)ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤、アクリル系樹脂を分散質、水を分散媒に有するエマルジョン、および(B)金属酸化物微粒子を含み、(B)金属酸化物微粒子の配合量が、(A)エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して0.1〜1.5重量部であるコーティング組成物。
  2. 上記(B)金属酸化物微粒子が周期表第13〜15族元素の金属酸化物微粒子である請求項1記載のコーティング組成物。
  3. 上記(A)エマルジョンのポリビニルアルコール系樹脂が、下記化学式(1)で示される構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1または2記載のコーティング組成物。
    (式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。)
  4. 第2のポリビニルアルコール系樹脂を有する請求項1〜3いずれか記載のコーティング組成物。
  5. 請求項1〜4記載のコーティング組成物より得られる塗膜。
  6. 塗膜における(B)金属酸化物微粒子含有量の95〜100重量%が連続相中に存在する請求項5記載の塗膜。
  7. 基材上に請求項6記載の塗膜層を有する多層構造体。
  8. 請求項1〜5記載のコーティング組成物を基材上に塗布、製膜して多層構造体を得る多層構造体の製造方法。
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