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JP6204385B2 - モータ電流制御装置およびモータ電流制御方法 - Google Patents
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モータ電流制御装置およびモータ電流制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、ステッピングモータの制御に好適なモータ電流制御装置およびモータ電流制御方法に関する。
特許文献1には、PWM制御によってステッピングモータを駆動する技術が開示されている。この技術によれば、PWM周期毎に、「チャージモード」、「高速減衰モード」、「低速減衰モード」による制御が繰り返される。ここで、チャージモードとは、固定子巻線に供給する電流を増加させていく動作モードであり、高速減衰モードとは、該電流を高速に減衰させていく動作モードであり、低速減衰モードとは、該電流を低速に減衰させていく動作モードである。なお、以下の説明では、高速減衰モードと低速減衰モードとを総称して単に「減衰モード」と呼ぶ場合がある。
これら動作モードは、ステッピングモータに供給する電流の目標値(例えば、階段波によって正弦波を近似した波形)と、電流測定値との比較に基づいて切り替えられる。すなわち、電流測定値が目標値以下であればチャージモードを選択し、電流測定値が目標値を超えると減衰モードを選択するとよい。しかし、何れの動作モードにおいても、電流測定値の波形は事前に予測し難い面がある。まず、チャージモードにおける電流波形は、モータの駆動電圧、モータの回転速度、モータの負荷トルク状況、温度環境等により変化する。
また、固定子巻線のインダクタンスは、回転子と固定子の位置関係に応じて変動するため、減衰モードにおける電流の減衰速度も、この位置関係に応じて変動する。電流測定値が事前の予測から外れ、例えば大きく落ち込むような事態が生じると、それを補うために電流波形のリップルが大きくなる。これにより、モータのトルク損失、振動、騒音などが生じるとともに、チャージモードと高速減衰モード間の頻繁なコイル通電方向の切替が電磁ノイズを発生させる原因にもなる。
このような問題に対応するため、特許文献1の技術では、2個の比較器を設け、電流測定値を2つの基準値と比較し、その比較結果や時間に基づいて動作モードを切り替えている。また、別の手法として、PWM周期を短くすることによりリップルを抑制する、という手法も考えられる。
特開2002−204150号公報
しかし、特許文献1のように2個の比較器を設けることは、コストアップにつながる。また、PWM周期を短くすることは、高速な動作に対応できるコントローラが必要になるため、やはりコストアップにつながる。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、装置を安価に構成しつつ目標値に対するモータ電流の追従性を高めることができるモータ電流制御装置およびモータ電流制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明のモータ電流制御装置にあっては、
スイッチング素子とダイオードとを有しモータに設けられたモータコイルに接続されるHブリッジ回路と、
スイッチング素子を所定のPWM周期毎に駆動し、Hブリッジ回路に対して、モータコイルに流れるモータ電流を増加させるチャージモードまたはモータ電流を減衰させる減衰モードのうち何れかの動作モードを指定する制御手段と、を有し、制御手段は、
各PWM周期の開始時から所定の最大デューティ時間が経過するまでの期間において、モータ電流が電流基準値以上になったことを検出すると動作モードとして減衰モードを選択する動作モード選択手段と、
第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間が経過した時点から、次の第2のPWM周期の開始時後に第2の所定時間が経過した時点までの期間を無効化期間とし、該無効化期間においては、動作モード選択手段の動作を無効化する無効化手段と、
無効化期間において動作モードをチャージモードに指定するチャージモード指定手段と、
各PWM周期の開始時から最大デューティ時間が経過した後の期間において、無効化手段およびチャージモード指定手段の動作に優先して、動作モードとして減衰モードを選択する最大デューティ時間指定手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、装置を安価に構成しつつ目標値に対するモータ電流の追従性を高めることができる。
本発明の第1実施形態によるモータ制御システムの全体ブロック図である。 モータ電流制御装置の詳細ブロック図である。 比較器および電流フィルタの波形図である。 Hブリッジ回路の動作モードの説明図である。 モータの回転角に対する電流基準値の波形図である。 上昇期間における各部の波形図である。 上昇期間における各部の波形図(他の態様)である。 上昇期間制御ルーチンのフローチャートである。 第2実施形態における電流フィルタ・ループルーチンのフローチャートである。
[第1実施形態]
<第1実施形態の構成>
(全体構成)
次に、図1を参照し、本発明の第1実施形態によるモータ制御システムの全体構成を説明する。
図1において、ステッピングモータ120は、バイポーラ型2相ステッピングモータであり、永久磁石を有し回動自在に設けられた回転子126と、回転子126の周囲の周回方向4等分位置に設けられた固定子とを有している。これらの固定子は、X相の固定子122XP,122XNと、Y相の固定子122YP,122YNとからなる。これらの固定子には各々巻線が巻回されている。固定子122YP,122YNに巻回された巻線は直列に接続されており、両巻線を合わせて「固定子巻線124Y」という。同様に、固定子122XP,122XNに巻回された巻線は直列に接続されており、両巻線を合わせて「固定子巻線124X」という。
上位装置130は、モータ120の回転速度を指令する速度指令信号を出力する。モータ電流制御装置100は、この速度指令信号に応じてモータ120を駆動制御するものである。モータ電流制御装置100には、Hブリッジ回路20X,20Yが設けられており、それぞれ固定子巻線124X,124Yに対して、X相電圧VMX,Y相電圧VMYを印加する。
(モータ電流制御装置100)
次に、図2を参照し、モータ電流制御装置100の詳細を説明する。なお、図1には2系統の固定子巻線124X,124Yと、2系統のHブリッジ回路20X,20Yを示したが、図2では、これらをまとめて1系統の固定子巻線124と、1系統のHブリッジ回路20として示している。
モータ電流制御装置100の内部に設けられたCPU(Central Processing Unit)101は、ROM(Read Only Memory)103に記憶された制御プログラムに基づいて、バス106を介して各部を制御する。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101のワークメモリとして使用される。タイマ104は、CPU101の制御の下、リセットされたタイミングからの経過時間を測定する。I/Oポート105は、図1に示した上位装置130、その他外部装置との間で信号を入出力する。ブリッジ制御部107は、動作モード選択部、無効化部、チャージモード指定部、最大デューティ時間指定部等の各手段を備えており、これら各手段は前記CPUがプログラムを実行することで実現することができる。ブリッジ制御部107は、CPU101からの指令に基づいて、ブリッジ制御回路110の各部を制御する。電流制限制御部112は、必要に応じて電流制限するように、PWM信号発生器113を制御する。
ここで、ブリッジ制御回路110は、一体の集積回路として構成されている。その内部においてPWM信号発生器113は、ブリッジ制御部107による制御に基づいて、PWM信号を生成しHブリッジ回路20に供給する。Hブリッジ回路20には、FET(Field-Effect Transistor)2,4,6,8,15,17が含まれており、PWM信号とは、これらFETにゲート電圧として印加されるオン/オフ信号である。なお、図中においてこれらFETの下側の端子がソース端、上側の端子がドレイン端になる。
FET2,4は直列に接続され、その直列回路に対して、直流電源140およびアース線142が接続され、所定の電圧Vddが印加される。同様に、FET6,8も直列に接続され、その直列回路に対して電圧Vddが印加される。ダイオード12,14,16,18は、還流用のダイオードであり、FET2,4,6,8に対して並列に接続されている。FET15,17は、電流検出用に設けられているものであり、それぞれFET4,8とともにカレントミラー回路を形成している。これにより、FET4,8に流れる電流に比例する電流が、それぞれFET15,17に流れる。
FET2,4の接続点の電圧VMout0は、モータ120の固定子巻線124の一端に印加される。また、FET6,8の接続点の電圧VMout1は固定子巻線124の他端に印加される。従って、固定子巻線124には、両者の差であるモータ電圧VM(=電圧VMout0−VMout1)が印加される。このモータ電圧VMとは、実際には図1に示したX相電圧VMXおよびY相電圧VMYである。
また、電圧VMout0,VMout1はA/Dコンバータ117と、BEMF(逆起電力)検出部118にも供給される。BEMF検出部118は、モータ電圧VMが逆起電力である場合、すなわちHブリッジ回路20から電圧が印加されていない期間に電圧方向の切り替わり(ゼロクロス)に応じてフラグZCを出力する。A/Dコンバータ117は、電圧VMout0,VMout1に基づいて、固定子巻線124の逆起電力Vbemfを測定し出力する。この逆起電力Vbemfは、脱調検出のために用いられる。
電流検出部116は、FET15,17に流れる電流値を電流方向に応じて測定することにより、固定子巻線124に流れる電流の電流測定値Icoilを出力する。D/Aコンバータ115は、ブリッジ制御部107から、電流基準値Irefのデジタル値を受信し、これをアナログ値に変換する。比較器114は、アナログ値の電流測定値Icoilと電流基準値Irefとを比較し、その結果を比較信号CMPとして出力する。比較信号CMPは、電流測定値Icoilが電流基準値Iref以上になると“1”になり、それ以外の場合は“0”になる信号である。
但し、比較器114から出力される比較信号CMPには、ノイズ等の影響によってチャタリングが起こる場合がある。電流フィルタ111は、このチャタリングを除外した結果を閾値超過フラグCLとして出力する。また、ブリッジ制御部107は、電流制御有効フラグCLMを出力する。このフラグCLMは、電流制御(チャージモード以外の動作モード)を許容するか否かを示すフラグである。すなわち、電流制御有効フラグCLMは、チャージモード以外の動作モードを許容する場合には“1”、許容しない場合には“0”に設定される。
次に、図3(a)〜(c)を参照し、上述した電流フィルタ111の動作の詳細を説明する。図3(a)は、電流測定値Icoilおよび電流基準値Irefの波形の例であり、電流測定値Icoilにはノイズが重畳している。このため、図3(b)に示すように、比較信号CMPには、チャタリングが生じている。電流フィルタ111は、比較信号CMPが最初に値A(Aは“1”または“0”)に変動したタイミングから所定のブランク時間Tbだけ待機し、その後に比較信号CMPの値がA(この場合は“1”)に保たれているか否かを判定する。図示の例では、時刻t50に比較信号CMPが最初に“1”に立ち上がってから、ブランク時間Tbが経過した時刻t52に比較信号CMPが“1”に保たれているか否かが判定される。
この判定結果が否定であった場合、電流フィルタ111は、比較信号CMPが再び値Aに戻るまで待機する。図示の例では、比較信号CMPが“1”に戻る時刻t54まで、電流フィルタ111は待機する。比較信号CMPが値Aに一致すると、電流フィルタ111はさらに所定のデグリッジ時間Tdだけ待機した後、閾値超過フラグCLを値Aに設定する。図3(c)の例では、時刻t54からデグリッジ時間Tdが経過した時刻t56において、閾値超過フラグCLは“1”に立ちあげられている。そして、比較信号CMPが最初に値Aに変動したタイミングから、閾値超過フラグCLが値Aに設定されるまでの時間を「フィルタ期間Tft」という。
図示の例においては、フィルタ期間Tftは、ブランク時間Tbとデグリッジ時間Tdと時刻t52〜t54の時間との合計になるから、一定ではない。ここで、ブランク時間Tbおよびデグリッジ時間Tdは、「0」にしてもよい。仮に、デグリッジ時間Tdを「0」とすると、図3(a)〜(c)の例においては、フィルタ期間Tftは、時刻t50〜t54の時間に等しくなる。また、ブランク時間Tbを「0」とすると、フィルタ期間Tftはデグリッジ時間Tdに等しくなり、一定値になる。
<第1実施形態の動作の概要>
(Hブリッジ回路20の動作モード)
次に、図4(a)〜(f)を参照し、Hブリッジ回路20の動作モードを説明する。
固定子巻線124に流れるモータ電流の絶対値を増加させていく場合には、図4(a)に示すように、斜めに対向する2つのFETがオン状態にされる。図示の例では、FET4,6がオン状態であり、FET2,8がオフ状態である。この状態では、FET6、固定子巻線124、FET4を介して破線で示す方向にモータ電流が流れるとともに、当該モータ電流が増加していく。この動作モードを「チャージモード」という。
図4(a)の状態から、モータ電流を高速に減衰させる場合は、図4(b)に示すように、FET4,6をオフ状態にし、FET2,8をオン状態にする。固定子巻線124には逆起電力が発生するため、FET8、固定子巻線124、FET2を介して破線で示す方向に電流が流れ、当該電流が高速に減衰していく。この動作モードを「高速減衰モード」という。
また、図4(a),(b)の状態から、電流を低速に減衰させる場合には、図4(c)に示すように、電圧Vdd側のFET2,6をオン状態とし、接地電位側のFET4,8をオフ状態にする。すると、図示の破線のように、FET2,6および固定子巻線124をループする電流が流れる。この電流は、FET2,6および固定子巻線124のインピーダンスによって減衰していくが、減衰速度は低速である。この動作モードを「低速減衰モード」という。
また、低速減衰モードのバリエーションとして、図4(d)に示すように、電圧Vdd側のFET2,6をオフ状態とし、接地電位側のFET4,8をオン状態にしてもよい。すると、図示の破線のように、FET4,8および固定子巻線124をループするモータ電流が流れる。この電流は、FET4,8および固定子巻線124のインピーダンスによって減衰していくが、やはり減衰速度は低速である。
ところで、何れかのFETのゲート電圧をオフにしたとしても、当該FETの寄生容量によって、そのFETはしばらくの間はオン状態に留まる。このため、例えばチャージモード(図4(a))から高速減衰モード(図4(b))に瞬時に切り替えると、瞬間的に全てのFETがオン状態になり、電圧Vddとアース電位との間が短絡し、FETが破壊される。このような事態を防止するため、Hブリッジ回路20は「貫通保護モード」という動作モードに設定される。
図4(e)は、全てのFET2,4,6,8をオフ状態にした貫通保護モードである。図4(a)のチャージモードから図4(e)の貫通保護モードに切り替えられると、固定子巻線124には逆起電力が発生するため、ダイオード18、固定子巻線124、ダイオード12を介して破線で示す方向にモータ電流が流れる。図4(e)の貫通保護モードでは、ダイオード12,18の順方向電圧降下に応じた電力損失が生じるため、モータ電流の減衰速度は最も大きくなる。
ここで、図4(a)のチャージモードと図4(d)の低速減衰モードとを比較すると、何れにおいても、FET4はオン状態である。従って、図4(a)の状態から図4(d)の状態に遷移させる場合においては、FET4はオン状態にしたままであっても差支えない。そこで、このような場合には、図4(f)に示すように、FET4をオン状態にし、FET2,6,8をオフ状態にした貫通保護モードを採用することができる。この場合は、同図の破線に示すように、FET4、ダイオード18、固定子巻線124をループするモータ電流が流れる。
図4(f)の状態では、ダイオード18の順方向電圧降下に応じた電力損失が生じるため、低速減衰モードと比較すると減衰速度は大きくなるが、高速減衰モードまたは図4(e)の貫通保護モードと比較すると、はるかに減衰速度を低くすることができる。チャージモードまたは高速減衰モードから低速減衰モードに遷移させる場合は、「モータ電流を大きく減衰させたくない」という事であるから、図4(f)に示したように1個のFETのみをオン状態にした貫通保護モードが選択される。
但し、図2において、CPU101からブリッジ制御部107に指定される動作モードは、チャージモード、低速減衰モードまたは高速減衰モードのうち何れかであり、後述する制御プログラムにおいても、貫通保護モードは明示的には指定されない。しかし、ブリッジ制御部107は、指定された動作モードを直ちに反映させるのではなく、間に必ず貫通保護モード(図4(e)または(f))を挿入してPWM信号発生器113を制御する。
(電流基準値の設定)
図2においてブリッジ制御部107からD/Aコンバータ115に供給される電流基準値Irefは、実際には、X相の電流基準値IXrefとY相の電流基準値IYrefとからなる。ステッピングモータ120の一回転、すなわち回転角θが0〜2πの範囲におけるこれら電流基準値IXref,IYrefの設定例を図5(a),(b)に示す。図示のように、電流基準値IXref,IYrefは、コサインカーブ、サインカーブを階段波で近似した波形になる。このようにして電流基準値を定めてモータ120を駆動する方式はマイクロステップ方式と呼ばれており、特に低速回転時に残留振動が小さく安定性に優れている特徴がある。
また、階段波が変動する周期をマイクロステップ周期Tmという。マイクロステップ周期Tmは、PWM周期と同一か、またはその整数倍にすることが望ましい。電流基準値IXref,IYrefは、共に回転角θのπ/2毎に、図示のように上昇期間と下降期間とを交互に繰り返す。ここで「上昇期間」とは、電流基準値IXref,IYrefの絶対値が上昇している期間であり、「下降期間」とは、同絶対値が下降している期間である。
(電流制御の具体例1)
次に、図6に示す波形図を参照し、上昇期間における電流制御の概要を説明する。
図6において時刻t0,t10,t20,t30,t40は、PWM周期Tの開始時刻である。また、マイクロステップ周期Tmは、図示の例ではPWM周期Tの2倍であり、マイクロステップ周期Tm毎に電流基準値Irefが変動している。また、図6には、電圧VMout0,VMout1、閾値超過フラグCLおよび電流制御有効フラグCLMの波形も併記する。最上部に示す「チャージモード」と記されている箇所は、動作モードがチャージモードである期間を黒線で、それ以外の動作モードの期間を白抜き線で表示している。
図6の時刻t06以前において、電流測定値Icoilは電流基準値Irefを下回っており、閾値超過フラグCLは“0”であるから、Hブリッジ回路20の動作モードはチャージモード(図4(a)参照)に設定されており、時間の経過とともに電流測定値Icoilは増加している。しかし、時刻t06において、フラグCLが“0”のままであるにもかかわらず、動作モードは低速減衰モードに切り替わっている。なお、本実施形態においては、上昇期間における減衰モードは必ず低速減衰モードが選択され、高速減衰モード(図4(b)参照)が選択されることはない。
ここで、時刻t06において動作モードが低速減衰モードに切り替えられる理由について説明しておく。本実施形態においては、動作モードがチャージモードに設定され得る期間は、各PWM周期の開始時から、所定の最大デューティ時間Tmaxに至るまでの期間に限定されている。時刻t06は、当該PWM周期の開始時刻t0から最大デューティ時間Tmaxが経過した時刻であるため、閾値超過フラグCLの値にかかわらず、動作モードは低速減衰モードに切り替えられている。ここで、最大デューティ時間Tmaxを設けた理由は、可聴領域の雑音を抑制するためである。その詳細を以下説明する。
PWM周期毎にチャージモードと減衰モードを繰り返すと、PWM周期でモータ120が振動する。この振動周期が可聴領域に入ると、振動が耳障りな雑音となって人間に聞こえるため、PWM周期は可聴領域よりも短い周期に設定されている。しかし、全期間に渡ってチャージモードになるPWM周期が現れると、振動の中にPWM周期の整数倍の成分が現れるため、雑音が人間に聞こえるようになる。そこで、そのような事態を防止するため、上述したように、動作モードがチャージモードに設定され得る期間は、各PWM周期の開始時から、最大デューティ時間Tmaxに至るまでの期間に限定されている。
次に、時刻t10〜t14において、Hブリッジ回路20は再びチャージモードに設定されており、時間の経過とともに電流測定値Icoilは増加している。時刻t14において電流測定値Icoilは電流基準値Irefに等しくなっている。しかし、図3において説明したように、電流フィルタ111は、チャタリングを除外するために、比較器114の出力信号が切り替わった後、フィルタ期間Tftだけ待機した後に閾値超過フラグCLを切り替える。従って、図6においては、時刻t14からフィルタ期間Tftが経過した時刻t16において閾値超過フラグCLは“1”に立ち上がっている。
閾値超過フラグCLが“1”に立ち上がると、Hブリッジ回路20の動作モードは原則的には低速減衰モード(図4(d)参照)に切り替えられる。これは、電流測定値Icoilを電流基準値Irefに追従させるためである。従って、時刻t16においても、この原則に従って、動作モードは低速減衰モードに切り替えられる。
次に、時刻t20において次のPWM周期が開始されると、閾値超過フラグCLが“1”であるにもかかわらず、動作モードがチャージモードに設定され、時刻t20〜t22まで電流測定値Icoilが増加している。そこで、この理由について説明しておく。本実施形態においては、各PWM周期の開始時から所定の電流制御無効化時間Tcsが経過するまでは、電流制御有効フラグCLMが“0”に設定される。すなわち、この期間においては、チャージモード以外の動作モードが許容されていないため、Hブリッジ回路20の動作モードはチャージモードのまま維持される。時刻t20〜t22の期間は、この電流制御無効化時間Tcsに相当する。
電流制御無効化時間Tcsを設けた一つの理由は、最大デューティ時間Tmaxを設けた理由と同様である。すなわち、全期間に渡って低速減衰モードになるPWM周期が現れると、振動の中にPWM周期の整数倍の成分が現れるため、雑音が人間に聞こえるようになる。そのような事態を防止するため、上述のように、各PWM周期の開始時において、所定の電流制御無効化時間Tcsは必ずチャージモードを選択するようにしている。また、電流制御無効化時間Tcsを設けた他の理由は、電流測定値Icoilの立ち上がりの遅れを小さくし、電流波形のリップルを抑制するためである。その詳細については後述する。
次に、時間Tcsが経過した時刻t22においては、閾値超過フラグCLが“1”である事に応じて、動作モードは低速減衰モードに切り替えられ、電流測定値Icoilは減衰していく。時刻t24には電流測定値Icoilは電流基準値Iref未満になり、さらにフィルタ期間Tftが経過した時刻t26には、閾値超過フラグCLは“0”に立ち下がる。
図6の例においては、各PWM周期が終了する直前のタイミングにも、電流制御有効フラグCLMが“0”に立ち下がっている。各PWM周期の開始時から、電流制御有効フラグCLMが“0”に立ち下がるまでの時間を電流制御再無効化時間Tceという。但し、最大デューティ時間Tmaxに基づいて動作モードを低速減衰モードに設定する動作は、電流制御有効フラグCLMに基づく動作よりも優先される。
図6の例においては、電流制御再無効化時間Tceは最大デューティ時間Tmaxよりも大きくなっている。従って、最大デューティ時間Tmaxが経過したことにより動作モードが低速減衰モードに設定されると、その後の電流制御再無効化時間Tceにおいて電流制御有効フラグCLMが“0”になることは、当該PWM周期内においては、動作に影響を及ぼさない。このため、時刻t16〜t20の期間においては、電流制御有効フラグCLMが“0”に立ち下がったとしても、動作モードは低速減衰モードに維持される。
時刻t30において次のPWM周期が開始されると、動作モードは再びチャージモードに設定され、電流測定値Icoilが増加していく。時刻t30には、新たなマイクロステップ周期Tmも始まっており、電流基準値Irefはさらに高い値に設定されている。時刻t32において電流測定値Icoilが電流基準値Irefに等しくなると、その時点からフィルタ期間Tftが経過した時刻t33において閾値超過フラグCLが“1”に立ち上がる。
これにより、動作モードは低速減衰モードに遷移する。その後、時刻t36において電流測定値Icoilが電流基準値Irefに等しくなると、その時点からフィルタ期間Tftが経過した時刻t38において閾値超過フラグCLが“0”に立ち下がる。このように、最大デューティ時間Tmaxが電流制御再無効化時間Tceよりも短い場合、上昇期間においては、以上のような動作が繰り返される。
ここで、比較例として、電流制御有効フラグCLMに基づく制御を「行わない」場合の電流測定値Icoil’を破線で示す。この比較例においては、時刻t20において動作モードがチャージモードに切り替わらないため、電流波形が大きく落ち込む。すなわち、電流波形のリップルが大きくなるため、モータ120のトルク損失や、振動、騒音、電磁ノイズが大きくなる。これに対して、本実施形態によれば、PWM周期の開始時に電流制御無効化時間Tcsを設け、動作モードをチャージモードに設定するから、電流測定値Icoilの立ち上がりの遅れを小さくすることができる。特に、電流基準値Irefが急峻に立ち上がる期間(例えば図5(a)において回転角θがπ/2〜3π/4、3π/2〜7π/4の期間)において顕著な効果を奏することができる。
(電流制御の具体例2)
次に、図7に示す波形図を参照し、上昇期間における電流制御の他の態様を説明する。
図7において、時刻t100,t110,t120,t130,t140は、PWM周期Tの開始時刻であり、マイクロステップ周期TmはPWM周期Tの2倍である。上述した図6の具体例と比較すると、図6においては電流制御再無効化時間Tceが最大デューティ時間Tmaxよりも長いのに対して、図7においては時間Tceが時間Tmaxよりも短くなっている点が相違する。
図7の時刻t106以前において、Hブリッジ回路20の動作モードはチャージモードに設定されており、PWM周期開始後に最大デューティ時間Tmaxが経過した時刻t106にて動作モードは低速減衰モードに切り替えられている。時刻t110において新たなPWM周期が開始されると、動作モードは再びチャージモードに設定されており、時間の経過とともに電流測定値Icoilは増加している。時刻t114には電流測定値Icoilは電流基準値Irefに等しくなり、さらにフィルタ期間Tftが経過した時刻t116において閾値超過フラグCLが“1”に立ち上がっている。
しかし、時刻t116以前の時刻t115において電流制御有効フラグCLMが“0”に立ち下がっているから、時刻t116においても、チャージモードが維持されている。その後、時刻t117において最大デューティ時間Tmaxに達すると、動作モードは低速減衰モードに切り替えられる。これは、上述したように、最大デューティ時間Tmaxにおいて動作モードを低速減衰モードに設定する動作は、電流制御有効フラグCLMの値に基づく動作よりも優先されるためである。
次に、時刻t120において新たなPWM周期が開始されると、電流制御無効化時間Tcsに相当する時刻t122まで電流制御有効フラグCLMが“0”であるから、当該期間の動作モードはチャージモードに設定される。そして、時刻t122においては、閾値超過フラグCLが“1”であることに応じて、動作モードは低速減衰モードに切り替えられる。その後、時刻t125には電流測定値Icoilは電流基準値Irefに等しくなり、さらにフィルタ期間Tftが経過した時刻t127において閾値超過フラグCLが“0”に立ち下がっている。その後、電流制御再無効化時間Tceが経過した時刻t128において電流制御有効フラグCLMが“0”になると、動作モードはチャージモードに切り替えられ、最大デューティ時間Tmaxが経過した時刻t129において動作モードは再び低速減衰モードに切り替えられる。
時刻t130において次のPWM周期が開始されると、動作モードは再びチャージモードに設定され、電流測定値Icoilが増加していく。時刻t130には、新たなマイクロステップ周期Tmも始まっており、電流基準値Irefはさらに高い値に設定されている。時刻t132において電流測定値Icoilが電流基準値Irefに等しくなると、その時点からフィルタ期間Tftが経過した時刻t133において閾値超過フラグCLが“1”に立ち上がる。これにより、動作モードは低速減衰モードに遷移する。
その後、時刻t134において電流測定値Icoilが電流基準値Irefに等しくなると、その時点からフィルタ期間Tftが経過した時刻t136において閾値超過フラグCLが“0”に立ち下がる。その後、電流制御再無効化時間Tceが経過した時刻t137において電流制御有効フラグCLMが“0”になると、動作モードはチャージモードに切り替えられ、最大デューティ時間Tmaxが経過した時刻t138において動作モードは再び低速減衰モードに切り替えられる。このように、最大デューティ時間Tmaxが電流制御再無効化時間Tceよりも長い場合、上昇期間においては、以上のような動作が繰り返される。
ここで、電流制御有効フラグCLMに基づく制御を「行わない」比較例の電流測定値Icoil’を破線で示す。この比較例においては、時刻t116,t120,t128において動作モードがチャージモードにならないため、電流波形が大きく落ち込む。従って、最大デューティ時間Tmaxを電流制御再無効化時間Tceよりも長くした場合(図7)においても、本実施形態は、比較例に対して、図6について述べたように、電流測定値Icoilの立ち上がりの遅れを小さくすることができるという効果を奏する。
<電流制御の詳細>
(電流制御無効化時間Tcsに至るまでの処理)
次に、図8を参照し、上昇期間における動作の詳細を説明する。なお、図8は、ROM103に記憶されCPU101によって実行される制御プログラムである、上昇期間制御ルーチンのフローチャートであり、上昇期間においてPWM周期毎に起動される。本ルーチンは、電流制御再無効化時間Tceおよび最大デューティ時間Tmax等の値の設定状態により、図6および図7に示した動作例の何れにも適用可能である。
図8のステップS1にて上昇期間制御ルーチンの処理が開始される。このステップS1では、タイマ104がリセットされ、以降はPWM周期が開始された後の経過時間が計時される。また、ステップS1では、回転子126の回転角θの推定値と、図5(a)または(b)に示した波形とに基づいて、当該PWM周期における電流基準値Iref(図5(a),(b)における電流基準値IXrefまたはIYref)が決定され、決定された電流基準値Irefはブリッジ制御部107(図2参照)にセットされる。
また、電流制御有効フラグCLMは、前回のPWM周期において、“0”に設定されている。この前回のPWM周期に設定された電流制御有効フラグCLMは、引き続き、今回のPWM周期においても用いられる。前回のPWM周期には、後述するステップS24が実行されたことにより電流制御有効フラグCLMが“0”に設定されているのであるが、ステップS24の処理の詳細については後述する。
次に、処理がステップS2に進むと、タイマ104の示す経過時間および閾値超過フラグCLが取得される。なお、本ルーチン内では、経過時間および閾値超過フラグCLは、ステップS2が再び実行されるまで変化しない。次に、処理がステップS4に進むと、PWM周期開始後の経過時間が電流制御無効化時間Tcsに等しいか否かが判定される。ここで「No」と判定されると、処理はステップS8に進み、電流制御有効フラグCLMが“1”であるか否かが判定される。上述したように、フラグCLMは、前回のPWM周期(ステップS24)にて“0”に設定されたから、ここでは「No」と判定され、処理はステップS10に進む。
ステップS10では、経過時間は最大デューティ時間Tmaxを超過したか否かが判定される。ここで「No」と判定されると、処理はステップS12に進み、動作モードがチャージモードに設定される。次に、処理がステップS14に進むと、閾値超過フラグCLが“1”であるか否かが判定される。仮にフラグCLが“1”であったとすると、ステップS16において電流制御有効フラグCLMが“1”であるか否かが判定される。フラグCLMは前回のPWM周期において“0”に設定されたから、ここでは「No」と判定され、処理はステップS20に進む。
一方、フラグCLが“0”であった場合には、処理はステップS14から直接ステップS20に進む。ステップS20では、経過時間は電流制御再無効化時間Tceに等しいか否かが判定される。ここで「No」と判定されると、処理はステップS26に進み、経過時間は最大デューティ時間Tmaxを超過したか否かが判定される。ここで「No」と判定されると、処理はステップS30に進み、経過時間はPWM周期Tに達したか否かが判定される。ここで「No」と判定されると、処理はステップS2に戻る。
以後、上述した処理と同様の処理が繰り返される。従って、経過時間が電流制御無効化時間Tcsに至るまでは、ステップS2(データ取得)とステップS12(チャージモードへの設定)が繰り返され、動作モードはチャージモードに保たれる。
(電流制御無効化時間Tcsにおける処理)
次に、経過時間が電流制御無効化時間Tcsに等しくなると、ステップS4において「Yes」と判定され処理はステップS6に進む。ここでは、電流制御有効フラグCLMが“1”に設定されることにより、閾値超過フラグCLに基づいた動作モードの切替が可能な状態になる。
(電流制御無効化時間Tcs以降の処理)
次に、経過時間が電流制御無効化時間Tcsを超過した後、最大デューティ時間Tmaxにも電流制御再無効化時間Tceにも至っていない期間の処理を説明する。先にステップS6が実行された際、電流制御有効フラグCLMが“1”に設定されたため、以後はステップS8において「Yes」と判定され、ステップS10,S12はスキップされ、処理はステップS14に進む。
ここで、閾値超過フラグCLが“0”であれば、「No」と判定され、処理はステップS20,S26,S30を介してステップS2に戻る。すなわち、閾値超過フラグCLが“0”である限り、動作モードを切り替える処理は実行されないから、従前の動作モードであるチャージモードが維持される。
また、閾値超過フラグCLが“1”になると、ステップS14,S16を介して処理はステップS18に進む。ここでは、動作モードが低速減衰モードに設定される。以後、経過時間が電流制御再無効化時間Tceまたは最大デューティ時間Tmaxに至るまでは、動作モードを低速減衰モード以外のモードに設定する処理は実行されないから、動作モードは低速減衰モードのまま維持される。
図6の時刻t16,t33、図7の時刻t133における電流測定値Icoilの変化は、このように、電流制御無効化時間Tcsの経過後、最大デューティ時間Tmaxおよび電流制御再無効化時間Tce以前に、閾値超過フラグCLに基づいて動作モードを低速減衰モードに切り替えた具体例である。
(最大デューティ時間Tmax以降の処理(但し、Tmax≦Tce))
以降の動作は、最大デューティ時間Tmaxと電流制御再無効化時間Tceの大小関係によって異なるため、場合を分けて説明する。最初に、「Tmax≦Tce」である場合(例えば図6)の動作を説明する。
経過時間が最大デューティ時間Tmaxを超過すると、ステップS26において「Yes」と判定されるから、処理がステップS28に進み、動作モードは低速減衰モードに設定される。最大デューティ時間Tmax以降、PWM周期Tに至るまでは、ステップS28が繰り返し実行されることにより、動作モードは低速減衰モードに保たれる。
その後、経過時間が電流制御再無効化時間Tceに等しくなると、ステップS20において「Yes」と判定され処理はステップS22に進む。ここでは、次のPWM周期におけるモータ120の様々な動作条件(例えば回転角θの推定値)が求められ、ブリッジ制御部107(図2参照)に対して設定される。次に、処理がステップS24に進むと、電流制御有効フラグCLMが“0”に設定される。
フラグCLMが“0”に設定されたことにより、それ以降はステップS8において「No」と判定されるが、既に最大デューティ時間Tmaxが経過しているため、次のステップS10において「Yes」と判定される。これにより、ステップS12の処理(チャージモードへの設定)は実行されない。従って、最大デューティ時間Tmax以降の動作モードは常に低速減衰モードに保たれ、経過時間が電流制御再無効化時間Tceに至ったことは、動作モードの設定に関する限り、特に影響を及ぼすものではない。
そして、経過時間がPWM周期Tになると、ステップS30において「Yes」と判定され、本ルーチンの処理が終了する。図5に示した時刻t06〜t10における電流測定値Icoilの変化は、このように、「Tmax≦Tce」である場合において、最大デューティ時間Tmaxの経過後、当該PWM周期の終了まで動作モードを低速減衰モードに設定した具体例である。なお、「Tmax<Tce」である場合は、結局は「Tmax=Tce」である場合の動作と等しくなるから、「Tmax=Tce」に設定しておくとよい。
(電流制御再無効化時間Tce以降の処理(但し、Tmax>Tce))
次に、「Tmax>Tce」である場合(例えば図7)における動作を説明する。
まず、経過時間が電流制御再無効化時間Tceに等しくなった時点では、ステップS20において「Yes」と判定され、処理はステップS22に進み、次のPWM周期におけるモータ120の動作条件が設定される。次に、処理がステップS24に進むと、電流制御有効フラグCLMが“0”に設定される。なお、上述したように、ステップS24において設定された電流制御有効フラグCLMは、次のPWM周期においても引き続き用いられる。
このように、ステップS24において電流制御有効フラグCLMが“0”に設定されたことにより、その後は、最大デューティ時間Tmaxに至るまでは、ステップS8,S10において共に「No」と判定され、処理はステップS12に進む。ここでは、動作モードがチャージモードに設定される。経過時間が最大デューティ時間Tmaxに至るまでは、このステップS12が繰り返し実行されることにより、動作モードはチャージモードに保持される。
その後、経過時間が最大デューティ時間Tmaxを超過すると、ステップS10において「Yes」と判定されるから、ステップS12(チャージモードの設定)は実行されることがなくなる。また、ステップS26において「Yes」と判定され、ステップS28(低速減衰モードの設定)が繰り返し実行されることにより、動作モードは低速減衰モードに保たれる。そして、経過時間がPWM周期Tになると、ステップS30において「Yes」と判定され、本ルーチンの処理が終了する。
図7に示した時刻t115〜t120、t128〜t130、t137〜t140における電流測定値Icoilの変化は、電流制御再無効化時間Tceの経過時より最大デューティ時間Tmaxの経過時までチャージモードを選択し、最大デューティ時間Tmax以降、PWM周期Tまで低速減衰モードを選択した具体例である。
以上のように、本実施形態によるモータ電流制御装置(100)は、
スイッチング素子(2,4,6,8)を有しモータ(120)に設けられたモータコイル(124)に接続されるHブリッジ回路(20)と、スイッチング素子(2,4,6,8)を所定のPWM周期毎に駆動し、Hブリッジ回路(20)に対して、モータコイル(124)に流れるモータ電流(Icoil)を増加させるチャージモードまたはモータ電流(Icoil)を減衰させる減衰モード(低速減衰モード)のうち何れかの動作モードを指定する制御手段(101)とを有し、制御手段(101)は、
各PWM周期の開始時から所定の最大デューティ時間(Tmax)が経過するまでの期間において、モータ電流(Icoil)が電流基準値(Iref)以上になったことを検出すると動作モードとして減衰モードを選択する動作モード選択手段(S14,S18)と、
第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間(Tce)が経過した時点から、次の第2のPWM周期の開始時後に第2の所定時間(Tcs)が経過した時点までの期間を無効化期間(CLM=0)とし、該無効化期間においては、動作モード選択手段(S14,S18)の動作を無効化する無効化手段(S24,S16)と、
無効化期間において動作モードをチャージモードに指定するチャージモード指定手段(S8,S12)と、
各PWM周期の開始時から最大デューティ時間(Tmax)が経過した後の期間において、無効化手段(S24,S16)およびチャージモード指定手段(S8,S12)の動作に優先して、動作モードとして減衰モードを選択する最大デューティ時間指定手段(S26,S28)と、を有するものである。
また、最大デューティ時間指定手段(S26,S28)は、各PWM周期の開始後、最大デューティ時間(Tmax)が経過するまでの期間において、モータ電流(Icoil)が電流基準値(Iref)以上にならなかった場合は、最大デューティ時間(Tmax)の経過とともに、動作モードをチャージモードから減衰モードに切り替えるものである。
また、制御手段(101)は、第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間(Tce)が経過した時点から、第1のPWM周期が終了するまでの間に、次の第2のPWM周期の動作条件を設定する動作条件設定手段(S22)をさらに有するものである。
さらに、具体例1(図6)にあっては、第1の所定時間(Tce)は、最大デューティ時間(Tmax)に等しいことを特徴としている。
また、モータ電流制御装置(100)は、モータ電流(Icoil)が電流基準値(Iref)を超えたことを検出すると、所定のブランク時間(Tb)が経過した後にモータ電流(Icoil)が電流基準値(Iref)を超えている旨を再検出し、該再検出の後、所定のデグリッジ時間(Td)が経過した後に、超過信号(“1”のCL)を出力する超過信号出力手段(111)をさらに有し、動作モード選択手段(S14,S18)は、超過信号(“1”のCL)に基づいて動作モードをチャージモードから減衰モードに切り替えるものである。
<第1実施形態の効果>
以上のような構成により、本実施形態による効果は、下記の通りである。
(1)1つの固定子巻線124(図2参照)に対して1つの比較器114でモータ制御を行うため、モータ電流制御装置100を安価に構成できる。
(2)電流制御再無効化時間Tceから次のPWM周期の電流制御無効化時間Tcsまで電流制御を無効化し、各PWM周期の開始時に動作モードを強制的にチャージモードに設定するから、モータ電流の電流リップルを抑制できる。これにより、モータ120の駆動効率を上昇させることができるとともに、モータのトルクの損失と騒音、振動等を低減することができる。
(3)また、比較信号CMPが切り替わった後、ブランク時間Tbおよび/またはデグリッジ時間Tdが経過した後に閾値超過フラグCLの値を反転させるから、チャタリングによる影響を除去し、安定した動作を実現できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態のハードウエア構成および上昇期間制御ルーチン(図8)の内容は第1実施形態のものと同様である。但し、第2実施形態においては、電流フィルタ111(図2参照)は設けられておらず、比較器114から出力される比較信号CMPがそのままCPU101に供給される。
CPU101においては、比較信号CMPに基づいて、ソフトウエア処理により電流フィルタ111の機能が実現され、閾値超過フラグCLが設定される。そこで、図9を参照し、比較信号CMPに基づいて閾値超過フラグCLを設定する電流フィルタ・ループルーチンの内容を説明する。なお、本ルーチンは、上昇期間制御ルーチン(図8)とは別プロセス上で起動される。
図9において処理がステップS50に進むと、現在の比較信号CMPの値が変数CMPAに代入される。次に、処理がステップS52に進むと、変数CMPAは変数CMPCに等しいか否かが判定される。なお、変数CMPCには、過去の比較信号CMPの値が代入されている。ステップS52において「No」と判定されると、処理はステップS50に戻る。以後、変数CMPCと変数CMPAとが一致する限り、ステップS50,S52のループが繰り返される。
次に、処理がステップS54に進むと、フィルタ期間Tftが開始される。次に、処理がステップS56に進むと、予め指定されたブランク時間Tbが0を超えるか否かが判定される。ここで、「Yes」と判定されると、処理はステップS58に進み、ブランク時間Tbの計測が開始される。次に、処理がステップS60に進むと、先にステップS58を実行したタイミングからブランク時間Tbが経過したか否かが判定される。
ステップS60において「No」と判定されると、ブランク時間Tbが経過するまで、処理が待機する。ブランク時間Tbが経過すると、ステップS60において「Yes」と判定され、処理はステップS62に進む。ここでは、現在の比較信号CMPの値が、変数CMPBに代入される。次に、処理がステップS64に進むと、変数CMPA,CMPBの値が一致するか否かが判定される。ここで「No」と判定されると処理はステップS62に戻り、変数CMPA,CMPBが一致するまでステップS62,S64のループが繰り返される。
このループを繰り返している期間は、図3(b)においては、時刻t52〜t54の期間に相当する。そして、変数CMPA,CMPBが一致すると、ステップS64において「Yes」と判定され、処理はステップS66に進む。なお、ブランク時間Tbが0であった場合には、ステップS56において「No」と判定され、処理は直ちにステップS66に進む。
ステップS66においては、予め指定されたデグリッジ時間Tdが0を超えるか否かが判定される。ここで、「Yes」と判定されると、処理はステップS68に進み、デグリッジ時間Tdの計測が開始される。次に、処理がステップS70に進むと、先にステップS68を実行したタイミングからデグリッジ時間Tdが経過したか否かが判定される。
ステップS70において「No」と判定されると、デグリッジ時間Tdが経過するまで、処理が待機する。デグリッジ時間Tdが経過すると、ステップS70において「Yes」と判定され、処理はステップS72に進む。なお、デグリッジ時間Tdが0であった場合には、ステップS66において「No」と判定され、処理は直ちにステップS72に進む。
ステップS72においては、変数CMPAの値が閾値超過フラグCLとしてセットされる。そして、変数CMPCに変数CMPAの値が代入される。次に、処理がステップS74に進むと、フィルタ期間Tftが終了し、処理はステップS50に戻る。以降は、同様の処理が繰り返され、ステップS72が実行される毎に、閾値超過フラグCLの値がトグルで切り替えられる。
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、ハードウエアとしての電流フィルタ111を不要にできるから、モータ電流制御装置100の構成を簡略化できるという効果も奏する。
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
(1)上記実施形態において、電流制御無効化時間Tcs、電流制御再無効化時間Tce、最大デューティ時間Tmaxは、一定でなくてもよい。すなわち、回転子126と固定子122XP,122XNとの位置関係(例えばマイクロステップ番号)に応じて、これらの時間を設定してもよい。
(2)図8、図9に示した処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(field-programmable gate array)等を用いたハードウエア的な処理で実現してもよい。
(3)Hブリッジ回路20を構成するスイッチング素子として、上記実施形態ではFETを適用したが、これらに代えてバイポーラ・トランジスタ、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ,Insulated Gate Bipolar Transistor)、その他のスイッチング素子を適用してもよい。
(4)また、上記実施形態では、モータ120としてバイポーラ型2相ステッピングモータを適用した例を説明したが、モータ120の種類や相数は用途に応じて様々なものを適用することができる。また、上記実施形態においては、電流基準値Irefの設定方式としてマイクロステップ方式を採用したが、電流基準値Irefは回転角θに対して連続的に変化する値を用いてもよい。
2,4,6,8 FET(スイッチング素子)
12,14,16,18 ダイオード
15,17 FET
20,20X,20Y Hブリッジ回路
100 モータ電流制御装置
101 CPU(制御手段)
102 RAM
103 ROM
104 タイマ
105 I/Oポート
106 バス
107 ブリッジ制御部
110 ブリッジ制御回路
111 電流フィルタ(超過信号出力手段)
113 PWM信号発生器
114 比較器
115 D/Aコンバータ
116 電流検出部
117 A/Dコンバータ
118 BEMF検出部
120 ステッピングモータ
122YP,122XN,122YN,122XP 固定子
124,124X,124Y 固定子巻線(モータコイル)
126 回転子
130 上位装置
140 直流電源
142 アース線

Claims (6)

  1. スイッチング素子を有しモータに設けられたモータコイルに接続されるHブリッジ回路と、
    前記スイッチング素子を所定のPWM周期毎に駆動し、前記Hブリッジ回路に対して、前記モータコイルに流れるモータ電流を増加させるチャージモードまたは前記モータ電流を減衰させる減衰モードのうち何れかの動作モードを指定する制御手段と、
    を有し、前記制御手段は、
    各前記PWM周期の開始時から所定の最大デューティ時間が経過するまでの期間において、前記モータ電流が電流基準値以上になったことを検出すると前記動作モードとして前記減衰モードを選択する動作モード選択手段と、
    第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間が経過した時点から、次の第2のPWM周期の開始時後に第2の所定時間が経過した時点までの期間を無効化期間とし、該無効化期間においては、前記動作モード選択手段の動作を無効化する無効化手段と、
    前記無効化期間において前記動作モードを前記チャージモードに指定するチャージモード指定手段と、
    各前記PWM周期の開始時から前記最大デューティ時間が経過した後、前記PWM周期の終了までの期間において、前記無効化手段および前記チャージモード指定手段の動作に優先して、前記動作モードとして前記減衰モードを選択する最大デューティ時間指定手段と、
    を有することを特徴とするモータ電流制御装置。
  2. 前記最大デューティ時間指定手段は、前記各PWM周期の開始後、前記最大デューティ時間が経過するまでの期間において、前記モータ電流が前記電流基準値以上にならなかった場合は、前記最大デューティ時間の経過とともに、前記動作モードを前記チャージモードから前記減衰モードに切り替える
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ電流制御装置。
  3. 前記制御手段は、
    前記第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間が経過した時点から、前記第1のPWM周期が終了するまでの間に、前記第2のPWM周期の動作条件を設定する動作条件設定手段
    をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のモータ電流制御装置。
  4. 前記第1の所定時間は、前記最大デューティ時間に等しいことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のモータ電流制御装置。
  5. 前記モータ電流が前記電流基準値を超えたことを検出すると、所定のブランク時間が経過した後に前記モータ電流が前記電流基準値を超えている旨を再検出し、該再検出の後、所定のデグリッジ時間が経過した後に、超過信号を出力する超過信号出力手段
    をさらに有し、
    前記動作モード選択手段は、前記超過信号に基づいて前記動作モードを前記チャージモードから前記減衰モードに切り替える
    ことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のモータ電流制御装置。
  6. スイッチング素子を有しモータに設けられたモータコイルに接続されるHブリッジ回路と、前記スイッチング素子を所定のPWM周期毎に駆動し、前記Hブリッジ回路に対して、前記モータコイルに流れるモータ電流を増加させるチャージモードまたは前記モータ電流を減衰させる減衰モードのうち何れかの動作モードを指定する制御手段と、を有するモータ電流制御装置を制御するモータ電流制御方法において、
    前記各PWM周期の開始時から所定の最大デューティ時間が経過するまでの期間において、前記モータ電流が電流基準値以上になったことを検出すると前記動作モードとして前記減衰モードを選択する動作モード選択ステップと、
    第1のPWM周期の開始後に第1の所定時間が経過した時点から、次の第2のPWM周期の開始時後に第2の所定時間が経過した時点までの期間を無効化期間とし、該無効化期間においては、前記動作モード選択ステップの動作を無効化する無効化ステップと、
    前記無効化期間において前記動作モードを前記チャージモードに指定するチャージモード指定ステップと、
    前記各PWM周期の開始時から前記最大デューティ時間が経過した後の期間において、前記無効化ステップおよび前記チャージモード指定ステップの動作に優先して、前記動作モードとして前記減衰モードを選択するステップと、
    を実行することを特徴とするモータ電流制御方法。
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