近年、自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer;SAM)等の有機単分子膜について、その物性や、物性を活かした応用分野に関し、盛んに研究開発が進められている。SAMとは、厚さ1nm〜2nmの有機系の薄膜である。有機分子を含む溶液や蒸気中に材料を置いておくと、有機分子が材料表面に化学吸着し、その過程で有機分子の配向が揃った単分子膜が形成される。これによって、材料表面に吸着した部分とは反対側の、有機分子の末端にある機能性官能基が材料表面を覆うこととなり、その官能基の特性によって材料表面に新たな機能を付与することができる。
上記SAMの用途の一例として、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)用のゲート絶縁膜への応用が検討されている。有機TFTは、有機材料の有する軽量、柔軟性及び耐衝撃性に優れるといった特徴を活かし、印刷技術等を利用して電子回路の大面積化、作製プロセスの低コスト化を可能とする。具体的には、フレキシブルディスプレイや電子ペーパー等の表示デバイス分野や、情報タグ、携帯用電子機器等への応用が期待されている。
SAMをゲート絶縁膜に適用した有機TFTにおいては、例えば、ポリイミドフィルムの基板上にアルミニウムのゲート電極を作製し、その表面を酸化処理後、SAMの成膜技術によりゲート絶縁膜を積層し、そのゲート絶縁膜上に有機半導体及びソース/ドレイン電極を形成している。SAMをゲート絶縁膜に使用することにより、絶縁膜の誘電率が向上し、有機TFTの性能の向上が期待される。
上記のように、有機TFT等の半導体素子の絶縁膜としてSAMを適用する場合には、SAMに所定形状のパターンを形成することが必要とされる。従来のパターン形成体の製造方法として、特許文献1には、基板と、前記基板上に形成され、真空紫外光が照射されることにより分解されることが可能な自己組織化単分子膜からなる機能性層と、を有するパターン形成用基板を用い、前記パターン形成用基板の上記機能性層上にメタルマスクを配置するメタルマスク配置工程と、反応性ガスの存在下において、前記メタルマスクを介して前記機能性層の表面に真空紫外光を照射することにより、上記機能性層の一部をパターン状に除去する真空紫外光照射工程と、を有する真空紫外光によるパターン形成体の製造方法が開示されている。
上記特許文献1には、真空紫外光を照射するための光源として、メインピーク波長が172nmのエキシマ光を放射するエキシマランプ等を使用することが開示されている。しかし、メインピーク波長が172nmであるエキシマランプを使用して、メタルマスクを介して真空紫外光を照射した場合には、真空紫外光によって酸素が分解されることにより、SAM及びマスクの周囲に活性酸素(オゾン)が生成する。そして、生成した活性酸素が、メタルマスクの開口部を通過して、SAMにおけるメタルマスクで覆われた部分(非露光部分)に回り込み、当該非露光部分のSAMが活性酸素によって分解除去され、SAMに形成されるパターン精度の低下を引き起こすことが懸念される。また、このようなパターン精度の低下を引き起こす原因となる活性酸素の生成を抑制するため、真空紫外光の照射雰囲気を不活性ガスでパージする等の対策を講じることも考えられるが、不活性ガスを照射雰囲気中にパージすることは、コストの増大を招くため好ましくない。
また、特許文献2には、基板の表面に有機分子膜を形成し、エキシマランプからの露光光をパターンが形成されたマスクを通して前記有機分子膜の表面に照射することにより、前記有機分子膜を除去しパターンを形成するパターン形成方法であって、マスクと有機分子膜との間に1μm以下のギャップを設ける旨が記載されている。さらに、特許文献3には、パターニング用基板に、少なくとも透明基材と遮光部とを有するフォトマスクを介してエキシマランプからの真空紫外光を照射する際に、前記透明基材とパターニング用基板との間隙を0.1μm〜200μmの範囲内、例えば1μmとするパターン形成体の製造方法が開示されている。
特許文献2及び3では、上述の特許文献1と同様に、エキシマランプからの短波長の真空紫外光を照射することによるパターン精度の低下の問題を生じる恐れがある。これを回避するためにマスクと有機分子膜との間隙を小さくすると、短波長の真空紫外光によって大量に発生した活性酸素がマスクと有機分子膜との間隙に高い濃度で充満して照射光を吸収し、パターン形成に要する露光時間が長くなる。これによって、間隙の僅かな変化に対する必要露光時間の変化の割合も大きくなり、マスクのたわみや基板の不均一な厚み等によって生じる間隙のばらつきが、露光時間の過不足を引き起こすという問題があった。
特に、特許文献2及び3では間隙の範囲が狭いため、活性酸素が有機分子膜と反応し非活性となった後も有機分子膜の近傍に滞留し、有機分子膜の反応の進行をさらに遅らせるという問題もあった。
以下、実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
本発明のパターン形成体の製造方法は、表面に有機単分子膜が設けられたパターン形成用基板に対し、略平行に配置されたマスクを介して真空紫外光を照射することにより、有機単分子膜の一部をパターン状に除去する工程を含む。
有機単分子膜が設けられる基板は、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、有機単分子膜を構成する分子の種類等を考慮して適宜選択される。具体的には、金、銀、銅、白金、鉄等の金属、石英ガラスや酸化アルミニウム等の酸化物、GaAsやInP等の化合物半導体、高分子材料等からなる種々の基板表面に有機単分子膜を設けることができる。
有機単分子膜は、自己組織化単分子膜(SAM)やラングミュア−ブロジット膜(LB膜)等の作製法に従って基板上に設けることができる。特に、自己組織化単分子膜は、LB膜等に比較して安定であり、より微細なパターンを形成しやすいため好ましい。
自己組織化単分子膜(SAM)は、有機単分子膜を構成する有機分子の溶液あるいは蒸気中に基板を配置することにより得ることができる。有機分子の溶液等の中に基板を配置すると、有機分子と基板材料との化学反応が起こり、有機分子が基板表面に化学吸着する。所定の条件下では、この化学吸着過程で、有機分子同士の相互作用によって吸着分子が密に集合し、有機分子の配向が揃った有機単分子膜が基板表面上に形成される。そして、基板が分子によって被覆され、基板表面の反応サイトが無くなると、それ以上の吸着反応が起こらないため、単分子膜が形成された段階で膜の成長が停止し、有機分子が自発的に集合した自己組織化単分子膜が得られる。
有機単分子膜を構成する材料としては、真空紫外光により励起され、分解され得る有機分子であれば適用可能である。SAMの場合には、基板表面と化学反応する官能基を有し、分子間の相互作用によって自己組織化するような有機分子であれば良く、従来知られた種々の有機分子から適宜選択される。
具体的には、SAMを構成する有機分子として、以下の一般式(1)で示されるホスホン酸系化合物を使用することができる。
式(1)中、R
1は、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、好ましくは、置換又は非置換であって直鎖状又は分岐状のアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェノキシ基である。
このようなホスホン酸系化合物の具体例としては、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、6−ホスホノヘキサン酸、11−アセチルメルカプトウンデシルホスホン酸、11−ヒドロキシウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンホスホン酸、11−ホスホノウンデシルホスホン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、1,8−オクタンジホスホン酸、1,10−デシルジホスホン酸、1,12−ドデシルジホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−フルオロベンジルホスホン酸、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルホスホン酸、4−ニトロベンジルホスホン酸、12−ペンタフルオロフェノキシドデシルホスホン酸、(12−ホスホノドデシル)ホスホン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、11−ホスホノウンデカン酸等を挙げることができる。また、式(1)の化合物以外にも[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ホスホン酸等の化合物も適用可能である。
また、SAMを構成する有機分子の別の実施形態として、以下の一般式(2)で示されるチオール系化合物を使用することができる。
式(2)中、R
2は、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。また、チオール基がさらに置換された、式(2)の化合物の誘導体も適用可能である。
このようなチオール系化合物又はその誘導体の具体例としては、1−ブタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘプタンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ノナンチオール、1−オクタデカンチオール、1−オクタンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ペンタンチオール、1−プロパンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ウンデカンチオール、11−メルカプトウンデシルトリフルオロアセテート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、2−ブタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサンチオール、3−メルカプト−N−ノニルプロピオンアミド、3−メチル−1−ブタンチオール、4−シアノ−1−ブタンチオール、ブチル3−メルカプトプロピオネート、cis−9−オクタデセン−1−チオール、3−メルカプトプロピオン酸メチル、tert−ドデシルメルカプタン、tert−ノニルメルカプタン、1,11−ウンデカンジチオール、1,16−ヘキサデカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,3−ブタンジチオール、5,5’−ビス(メルカプトメチル)−2,2’−ビピリジン、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ベンゼン−1,4−ジチオール、(11−メルカプトウンデシル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、(11−メルカプトメルカプトウンデシル)ヘキサ(エチレングリコール)、(11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)、1(11−メルカプトウンデシル)イミダゾール、1−メルカプト−2−プロパノール、11−(1H−ピロール−1−イル)ウンデカン−1−チオール、11−(フェロセニル)ウンデカンチオール、11−アミノ−1−ウンデカンチオール塩酸塩、11−アジド−1−ウンデカンチオール、11−メルカプト−1−ウンデカノール、11−メルカプトウンデカンアミド、11−メルカプトウンデカン酸、11−メルカプトウンデシルヒドロキノン、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルリン酸、12−メルカプトドデカン酸、12−メルカプトドデカン酸NHSエステル、16−メルカプトヘキサデカン酸、3−アミノ−1−プロパンチオール塩酸塩、3−クロロ−1−プロパンチオール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト−1−ブタノール、6−(フェロセニル)ヘキサンチオール、6−アミノ−1−ヘキサンチオール塩酸塩、6−メルカプト−1−ヘキサノール、6−メルカプトヘキサン酸、8−メルカプト−1−オクタノール、8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプト−1−ノナノール、トリエチレングリコールモノ−11−メルカプトウンデシルエーテル、1,4−ブタンジチオールジアセテート、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]ヘキサ(エチレングリコール)メチルエーテル、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]テトラ(エチレングリコール)、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]トリ(エチレングリコール)酢酸、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]トリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ヘキサ(エチレングリコール)モノ−11−(アセチルチオ)ウンデシルエーテル、S,S’−[1,4−フェニレンビス(2,1−エチンジイル−4,1−フェニレン)]ビス(チオアセタート)、S−[4−[2−[4−(2−フェニルエチニル)フェニル]エチニル]フェニル]チオアセテート、S−(10−ウンデセニル)チオアセテート、チオ酢酸S−(11−ブロモウンデシル)、S−(4−アジドブチル)チオアセテート、S−(4−ブロモブチル)チオアセテート(安定化剤として銅を含有)、チオ酢酸S−(4−シアノブチル)、1,1’,4’,1’’−テルフェニル−4−チオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、1−アダマンタンチオール、ADT、1−ナフタレンチオール、2−フェニルエタンチオール、4’−ブロモ−4−メルカプトビフェニル、4’−メルカプトビフェニルカルボニトリル、4,4’−ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、4,4’−ジメルカプトスチルベン、4−(6−メルカプトヘキシルオキシ)ベンジルアルコール、4−メルカプト安息香酸、9−フルオレニルメチルチオール、9−メルカプトフルオレン、ビフェニル−4,4−ジチオール、ビフェニル−4−チオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、m−カルボラン−1−チオール、m−カルボラン−9−チオール、p−テルフェニル−4,4’’−ジチオール、チオフェノール等を挙げることができる。
さらに、別の実施形態として、SAMとして以下の一般式(3)で示されるシラン系化合物を使用することができる。
式(3)中、R
3〜R
6は、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。
このようなシラン系化合物の具体例としては、ビス(3−(メチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、クロロメチル(メチル)ジメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、ジエトキシ(メチル)ビニルシラン、ジメトキシ(メチル)オクチルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、N,N−ジメチル−4−[(トリメチルシリル)エチニル]アニリン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、、メトキシ(ジメチル)オクチルシラン、オクテニルトリクロロシラン、トリクロロ[2−(クロロメチル)アリル]シラン、トリクロロ(ジクロロメチル)シラン、3−(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン塩酸塩、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−[(トリメチルシリル)エチニル]アニソール、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、アジドトリメチルシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、エトキシジメチルフェニルシラン、エトキシトリメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ(メチル)フェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジフェニルシランジオール、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシ−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、3−(トリエトキシシリル)プロピオニトリル、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリクロロ(オクタデシル)シラン、トリクロロ(オクチル)シラン、トリクロロシクロペンチルシラン、トリクロロ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)シラン、トリクロロビニルシラン、トリクロロ(フェニル)シラン、トリクロロ(フェネチル)シラン、トリクロロ(ヘキシル)シラン、トリメトキシ[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イル)エチル]シラン、トリメトキシ(オクタデシル)シラン、トリメトキシ(オクチル)シラン、トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリラート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(2−フェニルエチル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シラン、p−トリルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロドデシルトリクロロシラン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル−トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン、(3−ブロモプロピル)トリクロロシラン、(3−ブロモプロピル)トリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキサクロロジシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−ヨードプロピル)トリメトキシシラン等を挙げることができる。
以上のようなSAMを構成する種々の有機分子は、一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
上記のSAM等の有機単分子膜に対し、略平行に配置された所定のマスクを介して真空紫外光を照射することにより、露光部分の有機単分子膜を分解・除去し、目的のパターン形成体を製造することができる。その際、本発明では、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有する真空紫外光を照射することを特徴とする。ここでいう連続スペクトルとは、線スペクトルではなく、180nm〜200nmの範囲の全体にわたって発光波長が連続的に分布している状態をいう。
従来の真空紫外光によるパターニングでは、180nmより短波長(例えば172nm)で且つ線スペクトルからなる真空紫外光を照射することにより、有機分子を直接励起すると同時に、有機単分子膜近傍の酸素分子を励起して活性酸素(オゾンや一重項酸素原子)を生成させ、それによって有機分子の分解反応を促進していた。そのため、非露光部分への活性酸素の回り込みにより、非露光部分の有機分子も一部分解され、パターン精度の低下を招いていた。また、マスクと有機単分子膜との間にギャップを設けた状態で照射すると、過度に生成した活性酸素がギャップ内に充満して濃度が高まり、その結果、真空紫外光が吸収されて有機単分子膜まで到達せず、パターン形成に要する時間が長くなり効率が悪かった。本発明では、雰囲気が酸素を含んでいても、活性酸素の発生が少ない波長領域の発光を利用することによって、露光部分の有機分子のみを分解・除去するとともに活性酸素の濃度の上昇を抑制し、微細なパターンを安定して形成することができる。
好ましくは、真空紫外光における波長180nm〜200nmの範囲の照度が、波長160nm〜180nmの範囲の照度以上である。ここでいう照度(単位:W/m2)とは、有機単分子膜表面の単位面積当たりに入射する放射束をいい、上記それぞれの波長範囲における分光放射照度(単位:W/m2/nm)の積分値をいう。
また、真空紫外光における波長180nm〜200nmの範囲の連続スペクトルに、1つ以上のピークを有することが特に好ましい。ここでいうピークとは、前後に0.5nm離れた波長における分光放射照度に比べて、その中央の波長における分光放射照度が10%以上高いことをいう。活性酸素の発生が少ない波長領域の発光が強いことによって、パターン精度をより高め、間隙のばらつきに対する安定性も向上させることができる。
そして、本発明では、マスクと有機単分子膜との間に、5μm〜200μmの間隙を形成することを特徴とする。好ましくは20μm〜100μmである。間隙を5μm〜200μmの範囲にすることで、真空紫外光の照射により生成する間隙内の活性酸素が循環し、未だ照射されていない酸素を含む雰囲気によって適度に置換されるため、間隙における活性酸素の濃度が高くならず、光吸収による透過率の低下が抑制される。また、生成した活性酸素が反応等により失活した後も有機単分子膜の近傍に滞留することがなくなる。その結果、有機単分子膜の表面において必要な照度が維持され、安定的な反応速度が得られる。
間隙が5μm未満であると、間隙に活性酸素が充満して濃度が高くなり、失活した活性酸素も滞留し易くなって反応効率が低下するため好ましくない。また、間隙が小さいと、マスクのたわみによる悪影響を生じる。例えば、4インチ四方で厚さ0.9インチの石英ガラスマスクの周縁部(2辺)を固定した場合、中央部のたわみ量は次式により約0.9μmとなる。
したがって、間隙が1μm程度であると、マスク−有機単分子膜間の距離が不均一であることによる影響が大きくなり、活性酸素の循環がますます阻害され、反応効率が低下する。一方、間隙が200μmを超えると、間隙内で生成した活性酸素が拡散し、有機単分子膜の表面に到達する前に失活してしまうため、反応の促進効果には寄与せず、また、間隙が広くなると転写されるパターンの精度が低下するため好ましくない。
間隙内の雰囲気は、真空紫外光により活性酸素を発生させる必要があるため、酸素を含むことを要する。好ましくは分圧が約20kPaの酸素を含む大気である。大気中において反応を行うことにより、製造コストを安くすることができる。なお、真空紫外光の光源からマスクまでの空間の雰囲気は、特に限定されるものではないが、真空紫外光がマスクに到達するまでなるべく吸収されないような雰囲気であることが好ましい。具体的には、窒素雰囲気等とすることが好ましい。
真空紫外光を照射する光源としては、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有していれば良く、種々の構成からなる光源を用いることができる。また、必要に応じて、例えば波長180nm〜200nmの範囲の照度を波長160nm〜180nmの範囲の照度以上とするために、各種バンドパスフィルター等を併用して照射波長を適正化することができる。
図2は、ショートアークフラッシュランプ(SFL)の構成の一例を示す図である。このショートアークフラッシュランプは、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有する真空紫外光を放射するため、本発明のパターン形成体の製造方法において特に好適に用いられる光源である。ショートアークフラッシュランプ10は、発光空間を形成する例えば楕円球形状の膨出部13及び当該膨出部13の両端に連続して管軸方向外方に伸びる封止管部14A、14Bを有する第1の石英ガラス管12と、直管状の第2の石英ガラス管18とが、第2の石英ガラス管18の他端側開口部(図2における右端側開口部)が第1の石英ガラス管12における一方の封止管部14Aの一端側開口部(図2における左端側開口部)に挿入され、これにより形成される二重管部分15が互いに溶着されてなる発光管11を備えている。そして、発光管11内には、例えばキセノン(Xe)やクリプトン(Kr)等の希ガスが単独で、あるいは、微量のH2ガス又はN2ガスと希ガスとの混合ガスが封入されている。
発光管11の内部には、一対の主電極である陰極20及び陽極25が、互いに対向して配置されており、各々先端に陰極20及び陽極25が連接された第1の電極棒21及び第2の電極棒26が、発光管11内をその管軸Cに沿って外方に伸びて発光管11の両端から外部に導出されるよう、発光管11の両端において、段継ぎガラス19によって封着(ロッドシール)されている。ここで、陰極20と陽極25との電極間距離Lは、例えば1〜10mmである。
陰極20及び陽極25は、例えば酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al2O3)等の易電子放射性物質が含浸されたタングステン焼結体により構成されている。また、第1の電極棒21及び第2の電極棒26は、例えばタングステンにより構成されている。
そして、図2の例においては、発光管11の内部に、例えば2つのトリガ電極30A、30B、及び、放電を安定して生じさせるためのスパーカ電極40よりなる始動用補助電極が配置されている。
各々のトリガ電極30A、30Bは、例えば細い線状に形成されており、先端部が陰極20の先端と陽極25の先端を結ぶ中心線上において互いに離間して位置されるよう、配置されている。そして、各々先端にトリガ電極30A、30Bが接続されたロッド状の内部リード(内部リード棒)31A、31Bが、発光管11において陰極20に係る第1の電極棒21と互いに平行に管軸方向外方に伸び、発光管11の二重管部分15における周方向に異なる位置、例えば発光管11の管軸Cを挟んで対向する位置に気密に埋設された金属箔35A、35Bを介して、外部リード38A、38Bに電気的に接続されており、これにより、箔シール構造が形成されている。
トリガ電極30A、30Bは、先端に向かうに従って陽極25に接近するよう発光管11の管軸Cに対して傾斜して配置されている。一方のトリガ電極30Aの先端と陰極20の先端との離間距離、及び他方のトリガ電極30Bの先端と陽極25の先端との離間距離は、例えば、陰極20と陽極25との電極間距離Lが3.0mmである場合には、0.5〜1.5mmである。
各々のトリガ電極30A、30Bは、例えばニッケル、タングステンあるいはそれらを含む合金により構成されており、内部リード棒31A、31Bは、例えばタングステンにより構成されている。
スパーカ電極40は、例えばアルミナ(Al2O3)よりなる円柱状の頭部、及びこの頭部に連続する軸部とを有し、頭部に接続された例えばニッケルよりなる金属箔の一端が陰極20に係る第1の電極棒21の外周面に接続されているとともに、軸部に例えばタングステンよりなる内部リード線(図示せず)が接続されている。そして、内部リード線は、発光管11の二重管部分15において、トリガ電極30A、30Bに係る金属箔35A、35Bと電気的に絶縁された状態で、気密に埋設された金属箔を介して、外部リード線に電気的に接続されており、これにより、箔シール構造が形成されている。
また、図2に示すように、陰極20に係る第1の電極棒21、2つのトリガ電極30A、30Bに係る内部リード棒31A、31B、及びスパーカ電極40に係る内部リード線を支持するための共通のサポータ部材50が配置されている。これにより、陰極20、トリガ電極30A、30B、及びスパーカ電極40を適正な位置に配置することができる。
上記のショートアークフラッシュランプ10においては、陰極20及び陽極25の間に所定の電圧が印加されるとともに、スパーカ電極40、トリガ電極30A、30B及び陽極25にパルス電圧が印加されると、まず、スパーカ電極40で予備放電が行われて紫外線が放射され、この紫外線により陰極20、陽極25及びトリガ電極30A、30Bから光電子が放出され、発光管11内の例えばキセノンガスが電離される。その後、陰極20と陽極25との間に予備放電路が形成されて陰極20から陽極25に向けて電子が放出され、これにより、陰極20と陽極25との間でアーク放電(主放電)が生じ、ショートアークフラッシュランプ10が点灯し、真空紫外線が放射される。この真空紫外線は、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有し、また、波長180nm〜200nmの範囲の照度が、波長160nm〜180nmの範囲の照度以上であるという特徴を有している。さらに、波長180nm〜200nmの範囲の連続スペクトルに、1つ以上のピークを有している。
本発明では、真空紫外光を照射する光源として上記ショートアークフラッシュランプが好適に使用される。ショートアークフラッシュランプは、電極間距離Lが1〜10mmと短いことから、アークを小さくする、すなわち点光源を実現することができるため、パターン形成用基板に入射する真空紫外光の視野角を小さくすることができる。つまり、マスクを介してパターン形成用基板に入射する真空紫外光の光軸がマスクに対しほぼ垂直となるため、パターン形成用基板におけるマスクで遮蔽された部分(非露光部)にほとんど光が回り込むことがなく、パターン精度を向上させることができる。
一方、エキシマランプ等の発散光源を真空紫外光を照射するための光源に使用する従来の真空紫外光によるパターニングでは、パターン形成用基板に入射する真空紫外光の光軸がマスクの法線と交差し、パターン形成用基板におけるマスクに遮蔽された部分(非露光部分)に照射される光量が無視できないほどに大きくなることから、パターン精度が低下する。
有機単分子膜に対して真空紫外光を照射する際における、真空紫外光の強度、照射時間、照射距離等の諸条件は、有機単分子膜の種類や、膜厚、パターン形状等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。照射した後、必要に応じて有機単分子膜の表面を適宜洗浄する等して、所望のパターンを形成することができる。
次に、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、酸化アルミニウム基板(アルミニウム50nm+酸化膜10nm)の表面に、オクタデシルホスホン酸もしくはパーフルオロオクチルホスホン酸からなる自己組織化単分子膜(SAM)を1nm〜3nmの厚さで形成し、パターン形成用基板を作製した。
続いて、各パターン形成用基板に対し、石英ガラス板を介して、光源として図2に示すショートアークフラッシュランプ(VUV−SFL)及び従来のエキシマランプを用いて真空紫外光を照射し、パターン形成用基板の表面の親水化に要する時間(処理時間)の評価を行った。なお、ここで「親水化に要する時間」とは、パターン形成用基板の表面における水滴の接触角が5°以下になるまでの時間をいい、接触角の測定方法は、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に従った。
図3に照射装置の概略を示す。図3に示すように、ショートアークフラッシュランプ100から発した光をパラボラミラー110で平行光とし、石英ガラス板200を介して酸化アルミニウム基板300上の自己組織化単分子膜400に照射した。ショートアークフラッシュランプ100と石英ガラス板200の間は窒素雰囲気としたため、真空紫外光はほとんど吸収されずに石英ガラス板200に到達する。また、石英ガラス板200と自己組織化単分子膜400との間の雰囲気は大気(全圧1atm=101.325kPa)とした。酸素の分圧は約20kPaである。エキシマランプの場合は、ショートアークフラッシュランプ100及びパラボラミラー110に代えてエキシマランプを石英ガラス板200に平行に設置して行った。VUV−SFLの発光スペクトルは図1に示す通りであり、エキシマランプの発光スペクトルは172nmにメインピーク波長を有している。
図4に、石英ガラス板200と自己組織化単分子膜400との間の間隙を変化させたときの処理時間の変化を示す。図4においては、間隙が1μmのときの処理時間を基準(=1)としている。
(ランプの仕様)
VUV−SFL:
封入ガス Xe
封入圧力 5atm
極間 3mm
電圧 600V
充電容量 20μF
エキシマランプ(二重管型):
封入ガス Xe
封入圧力 0.5atm
径 φ20mm
長さ 80mm
電力 100W
別の実験として、石英ガラス板に代えて、20μm×100μmの開口部を有するマスクを設置し、それぞれのランプによりマスクを介して露光し、自己組織化単分子膜のパターニングを行った。なお、上記と同様にランプ−マスク間は窒素パージを行い、間隙(マスク−自己組織化単分子膜間)の雰囲気は大気(酸素約20kPa)とした。
その後、20μm×100μmの露光領域(100μmの方向が、ランプの軸方向に相当する)に、銀ナノインク(水系溶媒)10plをインクジェット塗布し、中央部の線幅を、光学顕微鏡を用いて測定した。図5に、間隙を変化させたときの線幅の変化を示す。
実験の結果、図4に示すように、自己組織化単分子膜の種類によらず、5μm以上の間隙では間隙が大きい方が、間隙の変化に対する処理時間の変化が小さくなる結果が得られた。間隙を200μmよりも大きくした場合、間隙の大小によらず、間隙の変化に対して処理時間の変化は小さかった。これは、間隙内に生成した活性酸素が拡散し、自己組織化単分子膜に到達する前に失活してしまい、処理時間に影響を与えないためと考えられる。
また、図5に示すように、同じ間隙で比較した場合、ショートアークフラッシュランプとエキシマランプとでは形成されるパターン精度に大きな違いが観測された。ショートアークフラッシュランプで露光した場合は、間隙の変化に対して線幅の増加が小さく、精度が同程度であるパターンを形成するのであれば、エキシマランプを光源とした場合よりも間隙を広くすることができる。その結果、図4に示すように、エキシマランプを光源とした場合よりも間隙の変化に対する処理時間の変化を小さくすることができ、間隙のばらつきに対して露光時間の過不足が生じにくくなり、安定したパターンを形成することができる。
エキシマランプの場合には、間隙に大量のオゾンが発生し、オゾンは寿命が長いため露光終了後も引き続き自己組織化単分子膜の酸化反応を引き起こす。したがって、露光終了からパターン形成体の取り出しまでの時間を精密に制御する等、煩雑な手順を踏まなければ自己組織化単分子膜の反応量を精密に制御することは困難であるといえる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。