本発明の一実施形態に係る塗装鋼板を図1に示す。塗装鋼板10は、図1に示されるように、鋼板11と、鋼板11上に形成されている塗膜12とを有する。塗膜12は、下塗り塗膜13と上塗り塗膜14とを含む。
鋼板11の種類は、塗装鋼板10の用途に応じて公知の鋼板の中から適宜に選ばれる。鋼板11は、めっき鋼板であることが、耐食性の高い塗装鋼板10をより安価に提供する観点から好ましい。めっき鋼板には、公知のものを用いることができ、その例には、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板およびアルミニウムめっき鋼板が含まれる。鋼板11は、冷延鋼板やステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)などの、めっき鋼板以外の鋼板であってもよい。鋼板11の厚さは、塗装鋼板10の用途に応じて決めることができ、例えば0.1〜2mmである。
鋼板11の表面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下であることが、塗膜12の鮮映性を高める観点から好ましい。Raが0.5μmよりも大きいと、塗膜12の鮮映性が低くなることがある。鋼板11のRaは、調質圧延(スキンパス圧延)、冷間圧延、バフでの研磨などの、鋼板の表面粗さを調整する通常の処理によって調整されうる。塗膜12の鮮映性は、例えばD/I値で表される。
鋼板11の表面は、塗装鋼板10における塗膜密着性および耐食性を向上させる観点から、化成処理皮膜が形成されていてもよい。化成処理は、鋼板11の塗装前処理の一種であり、化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理およびリン酸塩処理が含まれる。クロムフリー処理による皮膜の例には、Ti−Mo複合皮膜およびフルオロアシッド系皮膜が含まれる。
鋼板11における化成処理皮膜の付着量は、塗装鋼板10における塗膜密着性の向上および腐食の抑制に有効な範囲内において適宜に決めることが可能である。たとえば、クロメート処理による皮膜の付着量は、全Cr換算付着量で5〜100mg/m2である。また、クロムフリー処理の場合、例えば、Ti−Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算付着量で10〜500mg/m2であり、フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算付着量または総金属元素換算付着量で3〜100mg/m2である。また、例えば、リン酸塩処理による皮膜の付着量は、リン換算付着量で0.1〜5g/m2である。
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で鋼板11の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。乾燥温度および乾燥時間は、水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、鋼板11の到達温度で60〜150℃であることが好ましく、乾燥時間は、2〜10秒であることが好ましい。
塗膜12において、下塗り塗膜13は、上塗り塗膜14と直接接している。下塗り塗膜13は、樹脂15、着色顔料16および防錆顔料17を含有する。
樹脂15には、塗装鋼板の下塗り塗膜用の樹脂に通常使用される樹脂が用いられる。樹脂15の例には、ポリエステル、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂などの、ヒドロキシ基を有する樹脂が含まれる。樹脂15は、架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤は、例えば、樹脂15の分子構造中の特定の部位(官能基など)に結合しうる二以上の官能基を有する化合物である。架橋剤の例には、メラミン、尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ樹脂またはポリイソシアネート化合物が含まれる。架橋剤の使用量は、例えば、100質量部の樹脂15に対して5〜25質量部である。
着色顔料16には、塗装鋼板用の着色顔料に通常使用される着色顔料を用いることができる。着色顔料16は、有彩色の顔料である。有彩色とは、色相、明度、彩度を併せ持つ色であり、例えば黒色、灰色および白色以外の色である。着色顔料16は、それ自体が下塗り塗膜13において有彩色を呈する範囲において、一種の顔料または二種以上の顔料の混合物で構成される。着色顔料16を構成する顔料の例には、有彩色の顔料および非有彩色の顔料が含まれる。当該顔料の例には、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、ブラック、ホワイトおよびメタルの、各色の公知の着色顔料が含まれる。
着色顔料16の粒径は、例えばメジアン径(D50)で0.01〜5μmである。着色顔料16の粒径は、例えば、粉砕、分級または分級品の混合によって調整することが可能である。下塗り塗膜13における着色顔料16の含有量は、塗膜12の所期の色調が得られる量であればよく、例えば、100質量部の樹脂15に対して1〜20質量部である。
防錆顔料17には、塗装鋼板用の防錆顔料に通常使用される防錆顔料のうち、少なくとも以下の粒径および屈折率の要件を満たすものを用いることができる。
防錆顔料17の粒径(D90)は、下塗り塗膜13の膜厚以下である。粒径D90は、ある粒子径を境に粉体を2つに分けたとき、小さい側が全体の90%の量となる径(粒度分布における積算値が90%となる粒径)である。防錆顔料17の粒径D90が下塗り塗膜13の膜厚を超えると、耐食性が不十分となることがあるとともに、着色顔料による下塗り塗膜13の着色顔料16による色の調整に悪影響を及ぼすことがあり、防錆顔料17の色が塗膜12の色調に実質的に影響し、塗膜12の彩度が不十分となることがある。
防錆顔料17のD90は、例えば、レーザー回折・散乱法によって測定された粒度分布から求められる。また、当該D90は、カタログ値であってもよい。当該D90は、例えば、粉砕、分級または分級品の混合によって適宜に調整することが可能である。
防錆顔料17の屈折率と上塗り塗膜14の屈折率との差は、0.5以下である。当該屈折率の差は絶対値である。当該屈折率差が0.5よりも大きいと、後述する上塗り塗膜14による防錆顔料17での光の反射率減少効果が不十分となり、防錆顔料17の色が塗膜12の色調に実質的に影響し、塗膜12の所期の色調が得られないことがある。上記屈折率差は、小さいほど、防錆顔料17の色の影響が抑えられることから、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.03以下であることがさらに好ましい。防錆顔料17の屈折率は、例えば、JIS K7142中のB法に準じて求められる。
防錆顔料17の例には、クロム系、モリブデン酸塩系、リン酸塩系、バナジウム系などの種々の公知の防錆顔料が含まれ、より具体的には、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、カルシウムシリケート、リン酸ジルコニウム、トリポリリン酸2水素アルミニウム、酸化亜鉛、亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、クロム酸ストロンチウム、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウムおよびメタバナジン酸カリウムが含まれる。
下塗り塗膜13の膜厚は、特に限定されないが、鋼板11の防錆効果および着色効果を得る観点から、例えば3〜15μmである。
下塗り塗膜13における防錆顔料17の含有量は、100質量部の樹脂15に対して5〜50質量部である。100質量部の樹脂15に対して、防錆顔料17の含有量が5質量部よりも少ないと、耐食性が不十分になることがあり、防錆顔料17の含有量が50質量部よりも多いと、防錆顔料17での光の反射率が高過ぎ、防錆顔料17の色が塗膜12の色調に影響を及ぼし、塗膜12の所期の色調が得られないことがある。100質量部の樹脂15に対する防錆顔料17の含有量は、塗膜12の所期の色調と防錆効果の両方を得る観点から、5〜25質量部であることが好ましい。
上塗り塗膜14は、クリア塗膜である。上塗り塗膜14は、少なくとも以下の屈折率およびヘイズ値の条件を満たす層で構成される。
上塗り塗膜14の屈折率は、1.45以上である。上塗り塗膜14の屈折率が1.45未満であると、上塗り塗膜14の表面反射が小さくなるため、正反射光が大きく減衰され、鮮映性や光沢が損なわれることがある。上塗り塗膜14の屈折率は、例えば、上塗り塗膜14と同様の成分および厚さを有する塗膜を試料塗膜として作製し、20℃の雰囲気中で、ナトリウムD光源の光を試料塗膜の表面に照射し、当該表面で反射した光をアッベ屈折計で測定することによって求められる。
上塗り塗膜14のヘイズ値は、7%以下である。上塗り塗膜14のヘイズ値が7%よりも大きいと、塗膜12の光沢が低くなり、また鮮映性が低くなることがある。上塗り塗膜14のヘイズ値は、小さいほど、塗膜12の光沢を高める観点から、6%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。上塗り塗膜14のヘイズ値は、JIS K7136の規定に準拠される方法で測定され、以下の式により求められる。下記式中、Tdは拡散透過率であり、Ttは全光線透過率である。
ヘイズ値=(Td/Tt)×100
上塗り塗膜14は、塗装鋼板用のクリア塗膜を形成する樹脂のうち、少なくとも上記の屈折率およびヘイズ値を有する塗膜を形成する樹脂によって構成されうる。上塗り塗膜14を構成する樹脂の例には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル−スチレン樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂もしくはベンゾグアナミン樹脂、およびこれらの樹脂をウレタン変性、シリコーン変性もしくはエポキシ変性した樹脂、およびこれらの二種以上が混合された樹脂組成物、が含まれる。
上塗り塗膜14の膜厚は、特に限定されないが、塗膜12の鮮映性を高める観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、上塗り塗膜14の膜厚は、コストダウンの観点、また焼き付ける際のワキ(上塗り塗膜14の局所的な膨らみや凹みなど)の発生を防止する観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
塗装鋼板10は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した成分以外に体質顔料を配合してもよい。体質顔料の例には、硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。また、塗装鋼板10における上記他の成分の含有量は、本発明の効果が得られる範囲から適宜に決められる。
塗装鋼板10は、例えば以下の方法によって製造することが可能である。
まず、鋼板11上に、前述した下塗り塗膜13を形成する。下塗り塗膜13は、例えば下塗り塗膜用塗料の塗布とその焼き付け(1コート1ベーク)によって形成される。次いで、下塗り塗膜13上に、前述した上塗り塗膜14を形成する。上塗り塗膜14の屈折率は1.45以上であり、ヘイズ値は7%以下である。上塗り塗膜14も、例えば上塗り塗膜用塗料の塗布とその焼き付け(1コート1ベーク)によって形成される。こうして、塗装鋼板10が製造される。
塗装鋼板10は、上記の説明から明らかなように、2コート2ベークで製造されうる。上記の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、塗料の調製工程や鋼板の準備工程などのさらなる工程を含んでもよい。
次に、塗装鋼板10の塗膜12が所期の有彩色の色調を呈するメカニズムを説明する。 図2Aは、防錆顔料を含有しない赤色の下塗り塗膜23の入射光および反射光を模式的に示す図であり、図2Bは、防錆顔料17を含有する赤色の下塗り塗膜13の入射光および反射光を模式的に示す図であり、図2Cは、図2Aの下塗り塗膜23の反射光の波長の範囲と当該反射光の正反射光除去方式(SCE方式)による反射率との関係(実線)、および、図2Bの下塗り塗膜13の反射光の波長の範囲と当該反射光のSCE方式による反射率との関係(破線)とを示す図である。下塗り塗膜23は、赤色を呈し、防錆顔料17を含有しない以外は、前述した下塗り塗膜13と同じであるとする。なお、正反射光除去方式(SCE方式)は、全反射光から正反射光を除いた拡散反射光の反射率を測定する方法である。
下塗り塗膜23に光が入射すると、図2Aに示されるように、着色顔料が呈する赤色の範囲の波長の光が反射する。このため、下塗り塗膜23は、赤色を呈する。よって、図2Cの実線で示されるように、赤色に対応する波長領域の反射率は高く、他の波長領域の反射率は低い。
一方、防錆顔料17は、ある程度大きな粒径(D90)を有する。また、防錆顔料17は、下塗り塗料に十分に分散した状態で鋼板11に塗布され、当該下塗り塗料は、直ちに乾燥される。よって、下塗り塗膜13中に分散している防錆顔料17の一部は、下塗り塗膜13の表面に露出する。平面視したときの下塗り塗膜13の防錆顔料17を含む部分の表面は、防錆顔料17が存在しない場合では平面であるが、防錆顔料17が存在する場合では、防錆顔料17の表面に接する部分となり、三次元的な広がりを有する。よって、平面視したときの下塗り塗膜13の防錆顔料17を含む部分の表面積は、防錆顔料17によって拡大する。このように、防錆材料17は、下塗り塗膜13の表面積を拡大する効果を奏する。
防錆顔料17に入射した光は、防錆顔料17の屈折率に応じて、一部は防錆顔料17の表面で反射し、残りは防錆顔料17を通過して下塗り塗膜13の上記の拡大された表面部で反射する。防錆顔料17の表面で反射した光は、例えば略白色光である。したがって、当該略白色の反射光によって、下塗り塗膜13の反射率は、下塗り塗膜23の反射率に比べて、全波長領域において例えば数%程度高まる。
また、防錆顔料17下の下塗り塗膜13の表面で反射した光は、赤色光である。防錆顔料17下の下塗り塗膜13の表面部は拡大していることから、当該赤色光の反射率は、下塗り塗膜13の表面の平面部に比べてより高まる。したがって、拡大した当該表面部での赤色の反射光によって、下塗り塗膜13の反射率は、下塗り塗膜23の反射率に比べて、赤色の波長領域においてさらに高まる。赤色の波長領域における反射率の増加は、上記の全波長領域での反射率の増加と合わせると、例えば20%程度となる。
図2Bに示す下塗り塗膜13上に上塗り塗膜14を形成すると、赤色の波長領域における反射率のみが実質的に増加する。以下、この点について説明する。
図3Aは、防錆顔料を含有する下塗り塗膜13に上塗り塗膜14を形成してなる赤色の塗膜12の入射光および反射光を模式的に示す図であり、図3Bは、防錆顔料を含有しない下塗り塗膜23に透明な上塗り塗膜14を形成してなる赤色の塗膜の反射光の波長の範囲と当該反射光のSCE方式による反射率との関係(実線)、および、防錆顔料を含有する上記の赤色の塗膜(図3A中の塗膜12)の反射光の波長の範囲と当該反射光のSCE方式による反射率との関係(破線)とを示す図である。
下塗り塗膜23に上塗り塗膜14を形成すると、上塗り塗膜14を透過した光は、図2Aに示したのと同様に下塗り塗膜23の表面で反射する。この場合の反射率は、図3B中の実線で表される。図3Bに示されるように、実線で示される当該塗膜の反射光は、図2Cの実線で示される下塗り塗膜23の反射光とほぼ同じとなる。
一方、塗膜12では、上記のように制御された粒径を有する防錆顔料17を含む下塗り塗膜13上に、前述した屈折率およびヘイズ値を呈する上塗り塗膜14を形成することにより、塗膜12の表面状態(粗さ)が、防錆顔料を含有しない塗膜(例えば、下塗り塗膜23および上塗り塗膜14の組み合わせ)の表面状態(粗さ)とほぼ同じになる。このため、塗膜12の表面に到達した光の一部の全部または大部分は、散乱せずに正反射する。よって、塗膜12は、十分な光沢を呈する。
塗膜12の表面に到達した光の残りは、上塗り塗膜14を透過する。ここで、上塗り塗膜14の屈折率と防錆顔料17の屈折率との差は、十分に小さい。このため、上塗り塗膜14を透過して防錆顔料17に到達した光は、防錆顔料17をさらに透過しやすく、防錆顔料17の表面で反射しにくい。このように、上塗り塗膜14は、防錆顔料17での光の反射率を減少させる効果を奏する。そして、防錆顔料17を通過した光は、下塗り塗膜13の拡大された表面部で赤色の光として反射する。
したがって、図3Bの破線に示されるように、塗膜12の反射光には、防錆顔料17の表面での略白色の反射光による反射率の増加はほとんど見られない。このため、下塗り塗膜23に上塗り塗膜14を形成した上記塗膜に比べて、塗膜12では、実質的には赤色の波長領域での反射率のみが、例えば20%程度増加する。
このように、塗膜12を有する塗装鋼板10では、防錆顔料17による明度の増加が抑制される一方で、有彩色の反射光は増すことから、防錆顔料17を含有しない上記塗膜の色調に比べて、鮮やかさ(彩度)がより強まることがある。このような色調の鮮やかさの増加を考慮して、下塗り塗膜13に配合する着色顔料16の色調を適宜に(例えば、コンピュータシミュレーションによる計算や、試作品の作製と測定などによって、)決めることによって、塗装鋼板10の色調を、所期の有彩色の色調に自在に設計することが可能である。
また、防錆顔料を含有しない塗装鋼板のL値および彩度に対する、本実施形態に係る塗装鋼板のL値および彩度の差(ΔL、ΔC)の許容範囲を適当に(例えば、ΔLが7以下であり、ΔCが0以上に)設定することにより、防錆顔料を含有しない従来の塗装鋼板の色調と実質的に同じの色調を有する本実施の形態に係る塗装鋼板を作製することも可能である。
また、塗膜12は、上塗り塗膜14の屈折率が1.45以上であり、上塗り塗膜14のヘイズ値が7%以下であることから、高い光沢度を示す。たとえば、塗膜12は、60°光沢度で80%以上の良好な光沢を呈することが可能である。以上より、塗装鋼板10は、下塗り塗膜13に防錆顔料17を含有していても、防錆顔料17の色の影響がない、着色顔料16による鮮やかな発色を呈し、かつ高い光沢を呈する。
塗装鋼板10は、高級感を与える外観と耐食性とを有することから、例えば、調理用の電化製品、調理台や洗面台などの水回り製品、および、内装用または外装用の建材などの、耐食性および美観の両方を要する製品に好適に用いられる。また、電子ピアノなどの電子楽器や家庭用音響機器などの、主に美観を要する製品にも好適に用いられる。
以上の説明から明らかなように、塗装鋼板10は、鋼板11と、鋼板11上に形成されている塗膜12とを有し、塗膜12は、鋼板11上に形成されている下塗り塗膜13と、下塗り塗膜13上に形成されている上塗り塗膜14とを有し、下塗り塗膜13は、樹脂15、着色顔料16および防錆顔料17を含有し、防錆顔料17のD90は、下塗り塗膜13の膜厚以下であり、下塗り塗膜13における防錆顔料17の含有量は、100質量部の樹脂15に対して5〜50質量部であり、上塗り塗膜14の屈折率は、1.45以上であり、防錆顔料17の屈折率と上塗り塗膜14の屈折率との差は、0.5以下であり、上塗り塗膜14のヘイズ値は、7%以下である。よって、塗装鋼板10は、2コート2ベークで製造可能であり、耐食性を有し、かつ、下塗り塗膜に防錆顔料が配合されているにも関わらず十分な鮮やかさと高い光沢とを呈する。
上塗り塗膜14の膜厚が3μm以上であること、または、鋼板11の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下であることは、塗膜12の鮮映性を高める観点からより一層効果的である。
また、鋼板11がめっき鋼板であることは、塗装鋼板10の製造コストの削減の観点からより一層効果的である。
また、塗装鋼板10は、60°光沢度が80%以上である高光沢の塗装鋼板に好適であり、また、防錆顔料17を含有しない以外は同じ構成の塗装鋼板をコントロールとしたときに、塗膜12のL値から上記コントロールの塗膜のL値を引いた差(ΔL)が7以下であり、塗膜12の彩度から上記コントロールの塗膜の彩度を引いた差(ΔC)が0以上である、コントロールに対して実質的に同一の色調を示す塗装鋼板に好適である。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[めっき鋼板の準備]
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.5mm、めっき付着量:片面20g/m2)を用意し、その表面の算術平均粗さRaを調質圧延により0.16μmに調整した。表面粗さを調整した当該めっき鋼板の表面を湯洗し、当該表面にクロムフリー化成処理液をバーコーターで塗布した。
クロムフリー化成処理液には、チタンフッ化水素酸(H2TiF6):0.1mol/Lおよびジルコンフッ化水素酸(H2ZrF6):0.1mol/Lの混合溶液を用いた。上記めっき鋼板への当該処理液の塗布量は、TiおよびZrの総金属元素換算付着量で3.5mg/m2であった。
上記めっき鋼板を、鋼板の到達板温を100℃で10秒間維持するように加熱して、上記めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成した。こうして、Raが0.16μmであり、化成処理されためっき鋼板を得た。
[赤色下塗り塗料の調製]
100質量部のポリエステル樹脂(バイロン560、東洋紡株式会社製)および10質量部のメラミン樹脂(サイメル303;日本サイテック インダストリーズ株式会社製)の混合物に溶剤を加え、樹脂固形分が40質量%となる樹脂溶液を調製した。当該樹脂溶液に酸性触媒(キャタリスト600、日本サイテック インダストリーズ株式会社製)を0.5質量%加え、クリア塗料を調製した。当該クリア塗料に、上記樹脂固形分100質量部に対して5質量部のピグメントレッド254(PR254)を加え、赤色下塗り塗料1−0を得た。
なお、「バイロン」は、東洋紡株式会社の登録商標である。「サイメル」は、サイテック テクノロジー コーポレーションの登録商標である。
赤色下塗り塗料1−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(「CS」とも称す。D90:5.2μm、屈折率(n1):1.49)をさらに加え、赤色下塗り塗料1−1を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(「MP」とも称す。D90:2.7μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−2を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:3.9μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−3を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−4を得た。
カルシウムシリケートに代えて酸化亜鉛(「ZO」とも称す。D90:1.5μm、屈折率(n1):2.00)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−5を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:8.4μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−C1を得た。
[黄色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントイエロー139(PY139)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、黄色下塗り塗料2−0を得た。
黄色下塗り塗料2−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n1):1.49)をさらに加え、黄色下塗り塗料2−1を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、黄色下塗り塗料2−1と同様にして、黄色下塗り塗料2−2を得た。
カルシウムシリケートに代えて酸化亜鉛(D90:1.5μm、屈折率(n1):2.00)を用いた以外は、黄色下塗り塗料2−1と同様にして、黄色下塗り塗料2−C1を得た。
[青色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントブルー15:4(PB15:4)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、青色下塗り塗料3−0を得た。
青色下塗り塗料3−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n1):1.49)をさらに加え、青色下塗り塗料3−1を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、青色下塗り塗料3−1と同様にして、青色下塗り塗料3−2を得た。
上記樹脂固形分100質量部に対するリン酸マグネシウムの添加量を20質量部から60質量部に変えた以外は、青色下塗り塗料3−2と同様にして、青色下塗り塗料3−C1を得た。
[緑色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントグリーン36(PG36)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、緑色下塗り塗料4−0を得た。
緑色下塗り塗料4−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n1):1.49)をさらに加え、緑色下塗り塗料4−1を得た。
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n1):1.60)を用いた以外は、緑色下塗り塗料4−1と同様にして、緑色下塗り塗料4−2を得た。
上記樹脂固形分100質量部に対するリン酸マグネシウムの添加量を20質量部から2質量部に変えた以外は、緑色下塗り塗料4−2同様にして、緑色下塗り塗料4−C1を得た。
なお、防錆顔料の屈折率は、JIS K7142中のB法に準じて以下の方法で行った。まず、屈折率を測定する防錆顔料の粒子をスライドガラス上に載せ、防錆顔料の粒子にカーギル標準屈折液を滴下して防錆顔料の粒子と屈折液をよく混合した。その後、スライドガラスの下からナトリウムランプの光を照射して、スライドガラスの上から防錆顔料の粒子の輪郭を観察し、当該粒子の輪郭が見えなくなるときの屈折液の屈折率を防錆顔料の屈折率とした。
また、防錆顔料の上記D90は、レーザー回折・散乱法によって測定された粒度分布から求めた。
[クリア上塗り塗料1〜3の準備]
クリア上塗り塗料1として、アクリル系クリア塗料(C951、日本ファインコーティングス株式会社製)を用意した。クリア上塗り塗料1の塗膜(上塗りクリア塗膜1)の屈折率(n2)は、1.50であり、ヘイズ値は1.2%であった。
クリア上塗り塗料2として、フッ素系クリア塗料(ディックフローEFクリア、日本ファインコーティングス株式会社製)を用意した。「ディックフロー」は、DIC株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料2の塗膜(クリア上塗り塗膜2)の屈折率(n2)は、1.42であり、ヘイズ値は6.8%であった。
クリア上塗り塗料3として、フッ素系クリア塗料(Vフロン#5000、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vフロン」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料3の塗膜(クリア上塗り塗膜3)の屈折率(n2)は、1.45であり、ヘイズ値は7.9%であった。
クリア上塗り塗料4として、アクリル系クリア塗料(Vハード#501、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vハード」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料4の塗膜(クリア上塗り塗膜4)の屈折率(n2)は、1.50であり、ヘイズ値は2.1%であった。
クリア上塗り塗料5として、ポリエステル系クリア塗料(Vニット#520、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vニット」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料5の塗膜(クリア上塗り塗膜5)の屈折率(n2)は、1.63であり、ヘイズ値は4.8%であった。
上記のクリア上塗り塗膜1〜5は、クリア上塗り塗料の塗膜を後述するクリア上塗り塗膜の作製を同じ条件で作製した。上記屈折率は、20℃の雰囲気中で、ナトリウムD光源の光でクリア上塗り塗膜1〜5のそれぞれの表面を照らし、当該表面で反射した光をアッベ屈折計で測定することによって求めた。また、上記ヘイズ値は、JIS K7136の規定に準拠される方法によって測定した。
以下、塗装鋼板について説明するが、以下の説明において、防錆顔料を含有する塗装鋼板を実施例または比較例とし、防錆顔料を含有しない塗装鋼板の例を対照例とする。
[対照例1]
赤色下塗り塗料1−0を上記めっき鋼板の表面に塗布し、215℃で50秒間加熱してめっき鋼板に焼き付けて、膜厚6μmの赤色下塗り塗膜1−0を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−0を得た。
赤色下塗り塗膜1−0のハンターのLab法でのL値、a値およびb値のそれぞれを、赤色下塗り塗膜1−0の色の分光光度計による測定結果からハンター色差式により算出して求めた。赤色下塗り塗膜1−0のL値は21.8であり、a値は25.2であり、b値は7.8であった。
次いで、クリア上塗り塗料1を赤色下塗り塗膜1−0の表面に塗布し、230℃で50秒間加熱して赤色下塗り塗膜1−0に焼き付けて、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−0および膜厚15μmのクリア上塗り塗膜1をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−0を得た。
赤色塗装鋼板1−0の、ハンターのLab法でのL値、a値およびb値のそれぞれを、赤色塗装鋼板1の表面の分光測色計(CM3700d、コニカミノルタオプティクス株式会社製)による測定結果からハンター色差式により算出して求めた。また、上記a値およびb値より、彩度(C)を下記式より求めた。さらに、光沢度計(VG−2000、日本電色工業株式会社製)を用いて、赤色塗装鋼板1の表面の光沢度を測定した。赤色塗装鋼板1−0のL値は18.8であり、a値は27.5であり、b値は7.3であり、彩度は28.4であり、光沢度は110%であった。
[実施例1〜4]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−1〜1−4のそれぞれに代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−1〜1−4のそれぞれを上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−1〜1−4をそれぞれ作製した。
赤色下塗り塗膜1−1のL値は34.5であり、a値は19.4であり、b値は9.1であった。赤色下塗り塗膜1−2のL値は29.7であり、a値は20.5であり、b値は8.8であった。赤色下塗り塗膜1−3のL値は32.7であり、a値は19.3であり、b値は9.0であった。赤色下塗り塗膜1−4のL値は34.8であり、a値は19.0であり、b値は7.2であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−1〜1−4のそれぞれを用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−1〜1−4のそれぞれ、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−1〜1−4をそれぞれ得た。
赤色塗装鋼板1−1のL値は20.5であり、a値は29.8であり、b値は7.5であり、彩度は30.7であり、光沢度は92%であった。赤色塗装鋼板1−2のL値は20.0であり、a値は30.3あり、b値は8.1であり、彩度は31.4であり、光沢度は98%であった。赤色塗装鋼板1−3のL値は20.2であり、a値は29.8であり、b値は8.8であり、彩度は31.0であり、光沢度は92%であった。赤色塗装鋼板1−4のL値は21.4であり、a値は28.2であり、b値は7.8であり、彩度は29.3であり、光沢度は85%であった。
また、赤色塗装鋼板1−1における、クリア上塗り塗膜1の屈折率(n2)と、赤色下塗り塗膜1−1に添加された防錆顔料(カルシウムシリケート)の屈折率(n1)との差の絶対値(以下「Δn12」とも言う)は、0.01であった。赤色塗装鋼板1−2〜1−4におけるΔn12は、いずれも0.10であった。
[実施例5]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料4を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−3と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−3およびクリア上塗り塗膜4、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−5を得た。
赤色塗装鋼板1−5のL値は19.8であり、a値は29.8であり、b値は8.2であり、彩度は30.9であり、光沢度は96%であり、Δn12は0.10であった。
[実施例6]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料5を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−3と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−3およびクリア上塗り塗膜5、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−6を得た。
赤色塗装鋼板1−6のL値は19.0であり、a値は27.8であり、b値は8.8であり、彩度は29.2であり、光沢度は94%であり、Δn12は0.03であった。
[実施例7]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−5に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−5を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−5を作製した。赤色下塗り塗膜1−5のL値は38.5であり、a値は18.7であり、b値は7.6であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−5を用い、クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料5を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−5およびクリア上塗り塗膜5、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−7を得た。
赤色塗装鋼板1−7のL値は23.5であり、a値は28.2であり、b値は8.1であり、彩度は29.3であり、光沢度は88%であり、Δn12は0.37であった。
[比較例1]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−C1に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−C1を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−C1を作製した。赤色下塗り塗膜1−C1のL値は35.2であり、a値は19.2であり、b値は7.2であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−C1を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−C1およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−C1を得た。
赤色塗装鋼板1−C1のL値は23.5であり、a値は26.2であり、b値は7.3であり、彩度は27.2であり、光沢度は87%であり、Δn12は0.10であった。
[比較例2]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料2を用いた以外は、赤色塗装鋼板1−4と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−4およびクリア上塗り塗膜2、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−C2を得た。
赤色塗装鋼板1−C2のL値は21.2であり、a値は29.6であり、b値は7.6であり、彩度は30.6であり、光沢度は78%であり、Δn12は0.18であった。
[対照例2]
赤色下塗り塗料1−0を黄色下塗り塗料2−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−0を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−0を作製した。
黄色下塗り塗膜2−0のL値は37.4であり、a値は−11.1であり、b値は22.4であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて黄色下塗り鋼板2−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−0を得た。
黄色塗装鋼板2−0のL値は32.8であり、a値は−13.3であり、b値は20.0であり、彩度は24.0であり、光沢度は117%であった。
[実施例8、9]
黄色下塗り塗料2−0を黄色下塗り塗料2−1または2−2に代えた以外は、黄色下塗り鋼板2−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−1または2−2を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−1、2−2をそれぞれ作製した。
黄色下塗り塗膜2−1のL値は52.2であり、a値は0.98であり、b値は30.8であった。また、黄色下塗り塗膜2−2のL値は54.6であり、a値は0.74であり、b値は28.9であった。
次いで、黄色下塗り鋼板2−0に代えて黄色下塗り鋼板2−1または2−2を用いる以外は、黄色塗装鋼板2−0と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−1または2−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−1、2−2をそれぞれ得た。
黄色塗装鋼板2−1のL値は38.8であり、a値は−9.8であり、b値は22.5であり、彩度は、24.5であり、光沢度は98%であり、Δn12は0.01であった。黄色塗装鋼板2−2のL値は39.2であり、a値は−8.8であり、b値は25.5であり、彩度は27.0であり、光沢度は100%であり、Δn12は0.10であった。
[比較例3]
黄色下塗り塗料2−0を黄色下塗り塗料2−C1に代えた以外は、黄色下塗り鋼板2−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−C1を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−C1を作製した。
黄色下塗り塗膜2−C1のL値は62.8であり、a値は0.62であり、b値は25.5であった。
次いで、黄色下塗り鋼板2−0に代えて黄色下塗り鋼板2−C1を用い、クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料3を用いる以外は、黄色塗装鋼板1と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−C1、および、クリア上塗り塗膜3、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−C1を得た。
黄色塗装鋼板2−C1のL値は55.8であり、a値は−1.2であり、b値は22.5であり、彩度は22.5であり、光沢度は76%であり、Δn12は0.55であった。
[対照例3]
赤色下塗り塗料1−0を青色下塗り塗料3−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−0を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−0を作製した。
青色下塗り塗膜3−0のL値は26.2であり、a値は−4.2であり、b値は−22.8であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて青色下塗り鋼板3−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−0を得た。
青色塗装鋼板3−0のL値は23.2であり、a値は−8.9であり、b値は−15.0であり、彩度は17.4であり、光沢度は99%であった。
[実施例10、11]
青色下塗り塗料3−0を青色下塗り塗料3−1または3−2に代えた以外は、青色下塗り鋼板3−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−1または3−2を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−1、3−2をそれぞれ作製した。
青色下塗り塗膜3−1のL値は30.2であり、a値は0.48であり、b値は−31.2であった。また、青色下塗り塗膜3−2のL値は32.9であり、a値は0.50であり、b値は−30.5であった。
次いで、青色下塗り鋼板3−0に代えて青色下塗り鋼板3−1または3−2を用いる以外は、青色塗装鋼板3−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−1または3−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−1、3−2をそれぞれ得た。
青色塗装鋼板3−1のL値は24.5であり、a値は−5.8であり、b値は−20.8であり、彩度は21.6であり、光沢度は89%であり、Δn12は0.01であった。青色塗装鋼板3−2のL値は25.1であり、a値は−4.6であり、b値は−26.4であり、彩度は26.8であり、光沢度は91%であり、Δn12は0.10であった。
[比較例4]
青色下塗り塗料3−0を青色下塗り塗料3−C1に代えた以外は、青色下塗り鋼板3−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−C1を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−C1を作製した。
青色下塗り塗膜3−C1のL値は41.2であり、a値は0.22であり、b値は−26.8であった。
次いで、青色下塗り鋼板3−0に代えて青色下塗り鋼板3−C1を用いる以外は、青色塗装鋼板3−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−C1、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−C1を得た。
青色塗装鋼板3−C1のL値は33.3であり、a値は−1.2であり、b値は−17.2であり、彩度は17.2であり、光沢度は82%であり、Δn12は0.10であった。
[対照例4]
赤色下塗り塗料1−0を緑色下塗り塗料4−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−0を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−0を作製した。
緑色下塗り塗膜4−0のL値は30.1であり、a値は−23.0であり、b値は−0.38であった。
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて緑色下塗り鋼板4−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−0を得た。
緑色塗装鋼板4−0のL値は25.2であり、a値は−25.1であり、b値は1.3であり、彩度は25.1であり、光沢度は99%であった。
[実施例12、13]
緑色下塗り塗料4−0を緑色下塗り塗料4−1または4−2に代えた以外は、緑色下塗り鋼板4−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−1または4−2を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−1、4−2をそれぞれ作製した。
緑色下塗り塗膜4−1のL値は36.7であり、a値は−25.5であり、b値は2.8であった。また、緑色下塗り塗膜4−2のL値は35.6であり、a値は−27.4であり、b値は3.2であった。
次いで、緑色下塗り鋼板4−0に代えて緑色下塗り鋼板4−1または4−2を用いる以外は、緑色塗装鋼板4−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−1または4−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−1、4−2をそれぞれ得た。
緑色塗装鋼板4−1のL値は26.6であり、a値は−28.2であり、b値は3.8であり、彩度は28.5であり、光沢度は93%であり、Δn12は0.01であった。緑色塗装鋼板4−2のL値は28.4であり、a値は−31.9であり、b値は4.7であり、彩度は32.2であり、光沢度は89%であり、Δn12は0.10であった。
[比較例5]
緑色下塗り塗料4−0を緑色下塗り塗料4−C1に代えた以外は、緑色下塗り鋼板4−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−C1を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−C1を作製した。
緑色下塗り塗膜4−C1のL値は33.2であり、a値は−24.3であり、b値は0.25であった。
次いで、緑色下塗り鋼板4−0に代えて緑色下塗り鋼板4−C1を用いる以外は、緑色塗装鋼板4−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−C1、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−C1を得た。
緑色塗装鋼板4−C1のL値は25.8であり、a値は−26.4であり、b値は1.9であり、彩度は26.5であり、光沢度は97%であり、Δn12は0.10であった。
[評価]
(1)光沢
赤色塗装鋼板1−0〜1−7、1−C1および1−C2、黄色塗装鋼板2−0〜2−2および2−C1、青色塗装鋼板3−0〜3−2および3−C1、ならびに、緑色塗装鋼板4−0〜4−2および4−C1、のそれぞれの塗膜の60°光沢度(%)を以下の基準により評価した。
◎:60°光沢度が100%以上
○:60°光沢度が80%以上100%未満
×:60°光沢度が80%未満
(2)色調
各色の実施例または比較例の塗装鋼板のL値から、各色の対照例の塗装鋼板のL値を引いた値(ΔL)を求めた。また、各色の実施例または比較例の塗装鋼板の彩度から、各色の対照例の塗装鋼板の彩度を引いた値(ΔC)を求めた。そして、ΔLおよびΔCを、以下の基準により評価した。
(ΔL)
◎:ΔLが2以下
○:ΔLが2超5以下
△:ΔLが5超7以下
×:ΔLが7超
(ΔC)
○:ΔCが0以上(対照例に対して彩度が向上)
×:ΔCが負(対照例に対して彩度が低下)
さらに、三名の被験者が、各色の対照例の塗装鋼板を基準に、各色の実施例または比較例の塗装鋼板の塗膜の色調を目視にて観察、以下の基準により評価した。なお、「防錆顔料の影響」とは、より白っぽく色調が変化した、と感じられたことを言う。
(目視)
◎:対照例に対して色調の変化がない
○:対照例に対して色調はわずかに異なるが、防錆顔料の影響は見られない
×:対照例に対して色調が異なり、防錆顔料の影響が見られる
(3)耐食性
各色の塗装鋼板に対し、めっき鋼板のめっき層に達するようにナイフでX型のクロスカット傷を入れ、JIS Z2371に準じて35℃の5%塩化ナトリウム水溶液を、塗膜のクロスカット部に240時間噴霧する塩水噴霧試験を行った。当該試験後のクロスカット部の最大膨れ幅を測定し、以下の基準により評価した。なお、上記最大膨れ幅とは、(クロスカット部からのふくれの侵入深さが最大になっている幅)を言う。
◎:最大膨れ幅が2mm以下
○:最大膨れ幅が2mm超4mm以下
△:最大膨れ幅が4mm超5mm以下
×:最大膨れ幅が5mm超
上記各色の対照例、実施例および比較例の塗装鋼板の構成を表1に、当該塗装鋼板の色の測定結果および評価結果を表2に、それぞれ示す。
表1および表2より明らかなように、実施例1〜13の各色の塗装鋼板は、いずれも、2コート2ベークで製造され、高い光沢を呈し、明度の増加が抑えられた鮮やかな色合いを呈し、かつ十分な耐食性を有している。これは、前述した防錆顔料による下塗り塗膜の表面積拡大効果、および、上塗り塗膜による防錆顔料での光の反射率減少効果、がいずれも十分に奏されているため、と考えられる。
一方で、比較例1の赤色塗装鋼板1−C1は、彩度が低下し、色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、防錆顔料の粒径D90が下塗り塗膜の膜厚に対して大きすぎ、防錆顔料の外観や色調などが赤色塗装鋼板の色調に影響するほどに現れたため、と考えられる。
また、比較例2の赤色塗装鋼板1−C2は、光沢が不十分であり、色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、上塗り塗膜の屈折率が低すぎたため、上塗り塗膜の表面での正反射光が減衰し、光沢が不十分となり、当該塗膜の色調の変化が防錆顔料によるもののように感じられたため、と考えられる。
また、比較例3の黄色塗装鋼板2−C1は、光沢が低下し、明度が高まるとともに彩度が低下し、さらに色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、防錆顔料と上塗り塗膜との屈折率差が大きすぎたために上塗り塗膜による防錆顔料での光の反射率減少効果が不十分となり、また上塗り塗膜のヘイズ値が高すぎたために光沢が不十分となり、よって、外観からも防錆顔料による塗膜の色調の影響が感じ取られたため、と考えられる。
また、比較例4の青色塗装鋼板3−C1は、光沢が低下し、明度が高まるとともに彩度が低下し、さらに色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、下塗り塗膜における防錆顔料の含有量が多すぎ、防錆顔料の色調への影響が十分に発現されたため、と考えられる。
また、比較例5の緑色塗装鋼板4−C1は、耐食性が不十分であった。これは、下塗り塗膜における防錆顔料の含有量が少なすぎたため、と考えられる。
また、対照例1〜4における塗装鋼板は、色調が十分であったが、防錆顔料を含有しないため、耐食性が不十分であった。
以上の説明から明らかなように、鋼板、下塗り塗膜および上塗り塗膜を有する塗装鋼板であって、下塗り塗膜が樹脂、着色顔料および防錆顔料を含有し、防錆顔料のD90が下塗り塗膜の膜厚以下であり、下塗り塗膜中の防錆顔料の含有量が上記樹脂100質量部に対して5〜50質量部であり、上塗り塗膜の屈折率が1.45以上であり、上記防錆顔料の屈折率と上記上塗り塗膜の屈折率との差が0.5以下であり、上塗り塗膜のヘイズ値が7%以下である塗装鋼板は、2コート2ベークで製造可能であり、耐食性を有し、かつ、下塗り塗膜に防錆顔料が配合されているにも関わらず十分な鮮やかさと高い光沢とを呈する。