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JP6242583B2 - カルサイト型炭酸カルシウムおよびその製造方法 - Google Patents
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JP6242583B2 - カルサイト型炭酸カルシウムおよびその製造方法 - Google Patents

カルサイト型炭酸カルシウムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭酸カルシウムの中でも、カルサイト型炭酸カルシウムであって、球状の形態を有するカルサイト型炭酸カルシウムおよびその製造方法に関する。
炭酸カルシウムは、ゴム、プラスチック、紙、塗料などの工業分野に幅広く利用される無機素材である。炭酸カルシウムには、石灰石を物理的に微粉砕してなる重質炭酸カルシウムと化学的に製造される軽質炭酸カルシウムとがあり、粒子径や粒子形状を制御できる軽質炭酸カルシウムが補強性、白色性、光輝性などの効果が期待できるため、幅広く工業的に利用されている。
そうした中にあって、軽質炭酸カルシウムの形状として球状のものが、その流動性や光散乱性などから注目されている。球状の炭酸カルシウムは、通常バテライト型の結晶構造のものが主であり、水酸化カルシウムの水懸濁液にモノエタノールアミンを含有させ二酸化炭素ガスを導入する方法(例えば、特許文献1参照)や水溶性カルシウムにスルホン化ポリマーを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、水溶性カルシウムに二価のカチオンを添加する方法(例えば、特許文献3参照)などに開示される製造方法によって、球状を有するようになることが提案されている。
しかし、バテライト型の炭酸カルシウムは水や熱の介在により容易にカルサイト型の結晶構造に変化し、球状形状も崩壊するという問題がある。
これに対して、上述の通り、カルサイト型炭酸カルシウムは、結晶型が安定であるので、結果として物性的にも耐久性としても安定である。この安定性においてカルサイト型炭酸カルシウムは、バテライト型炭酸カルシウムよりも優れているので、添加剤や増量剤などに最適に利用できる。一方で、一般的な製造方法を経て製造されると、カルサイト型炭酸カルシウムは立方状や紡錘状を有しやすくなる。結果として、球状を有するカルサイト型炭酸カルシウムを得ることは非常に難しい現状がある。
このような状況において、球状のカルサイト型炭酸カルシウムを実現する技術が提案されている(例えば、特許文献4、5、6参照)。
特開平1−301511号公報 特開昭62−91416号公報 特開昭57−92520号公報 特開昭61−168524号公報 特開平7−33433号公報 特開平11‐079740号公報
特許文献4は、水酸化カルシウムの水懸濁液にポリ燐酸塩を添加し二酸化炭素ガスを導入する方法や水酸化カルシウムの水懸濁液に二酸化炭素ガスを導入する製造方法により、球状のカルサイト型炭酸カルシウムを得る技術を開示する。
しかしながら、特許文献4によって得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、結果として得られる炭酸カルシウムの外形形状が球状であるに過ぎず、球状は、必ずしもその内部組織が球晶(所定の点(一点であることが好ましいが厳密に一点であることに限定されるものではない)から複数の結晶が複数方位(好ましくは放射状)に成長した多結晶体)を形成しているとは限らない。例えば、立方状や紡錘状の微小粒子が丸く凝集して見た目上球状に見えるだけの場合もある。このような球晶構造を有しない球状の場合には、球状粒子としての安定性が悪く、当然に耐久性や強度の弱さも生じる。耐久性や強度が弱ければ、添加剤や増量剤として混合される際に、変形したり破壊されたりして、触感や耐久性に悪影響を与える。
加えて、特許文献4に開示される技術は、中央から結晶成長することで球状になっているのではなく、外形上として球状になっているので、球状粒子としての強度が弱い問題を有している。また、同様の理由により、球状粒子の粒径を制御できず、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムの粒径がばらばらとなってしまう問題もある。
特許文献5は、反応途中の液にリンの酸素酸塩或いは不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩を添加して炭酸化反応させたa液と水酸化カルシウムの水懸濁液に二酸化炭素ガスを導入した反応途中のb液を混合(a+b)し、さらに炭酸化反応させる製造方法で、球状のカルサイト型炭酸カルシウムを製造する技術を開示する。
特許文献5も特許文献4と同様に、粒子の強度が弱い、粒径の制御が困難でばらつきが多くなる、生産性が悪い、といった様々な問題を有している。
特許文献6は、水酸化カルシウムの水懸濁液に二酸化炭素ガスを導入する方法で得られた一次粒子の懸濁液を噴霧乾燥する製造方法で、球状のカルサイト型炭酸カルシウムを製造する技術を開示する。
特許文献6も、特許文献5と同様に、粒子の強度が弱い、粒径の制御が困難でばらつきが多くなる、工程数が多くなり生産性が悪い、といった様々な問題を有している。
生産性が悪いのは、特許文献5においては、その製造工程が煩雑であることが理由である。特許文献5では、製造工程における反応工程の手間や数が多いことなどにより、カルサイト型炭酸カルシウムの生産性が悪くなってしまっている。特許文献6においては、スプレードライヤーなどの噴霧装置といった大掛かりな装置を必要とすることにより、生産コストが高くなっている。
また、球状の粒子は、表面が球状面となるので、すべりが良く、添加剤や増量剤として使用する際に使い易いこともある。
本発明は、上記課題に鑑み、強度の強い球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムおよびその製造方法を提供する。
上記課題に鑑み、本発明のカルサイト型炭酸カルシウムは、カルサイト型炭酸カルシウムであって、複数の結晶を有し、複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長して球晶となり、外形上は略球状を有し、略球状の平均粒径が5μm〜40μmである。

本発明のカルサイト型炭酸カルシウムは、所定条件をそろえて製造することで、ある一点から多数の結晶が放射状に成長した多結晶体である球晶構造を有するので、外形的に球状あるいは球状に近似した形状を有しながらも、十分な強度を有する。もちろん、外形的には球状もしくは球状に近似した形状を有するので、光沢を抑えたい物品への添加剤や、増量したい素材の増量剤としても最適である。
特に、この球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムが、添加剤や増量剤に用いられることで、光沢抑制や増量といった目的を達成しつつも、添加される側の物品や素材の耐久性や強度に悪影響を与えることはない。
また、種々の製造工程の工夫により、製造される球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの粒径を制御しやすくなり、粒径のばらつきを抑えることができる。
更に、球晶複合体を形成することも可能となり、表面のすべり性を低減することも可能となった。
本発明の実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムの破断面の電子顕微鏡写真である。 この実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 図2に示される実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムの偏光顕微鏡写真である。 本発明の実施例1で得られるカルサイト型炭酸カルシウムの破断面の電子顕微鏡写真である。 図4の偏光顕微鏡写真である。 実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムを、別の角度から撮影した破断面の電子顕微鏡写真である。 実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムを、別の角度から撮影した偏光顕微鏡写真である。 表1に記載の比較例1の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 表1に記載の実施例2の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 表1に記載の実施例3の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 表1に記載の実施例4の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 表1に記載の実施例5の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 表1に記載の比較例2の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例7で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例8で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例9で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 比較例3で得られる電子顕微鏡写真である。 比較例4で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例10で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例11で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例12で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 比較例5で得られる電子顕微鏡写真である。 比較例6で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例13で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例14で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例15で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 比較例7で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例16で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例17で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例18で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例19で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。 実施例20で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。
本発明の第1の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムは、カルサイト型炭酸カルシウムであって、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造され、複数の結晶のそれぞれが、単数又は複数の位置から複数方位に成長した多結晶体である。
この構成により、所定の位置から成長したカルサイト型炭酸カルシウムの多結晶体が得られる。
本発明の第2の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1の発明に加えて、複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長して球晶となり、外形上は略球状を有する。
この構成により、カルサイト型炭酸カルシウムは、球晶となり外形が略球状となって種々の物品に混合しやすくなる。
本発明の第3の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1又は第2の発明に加えて、複数の結晶のそれぞれは、針状を有する。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶であることに加えて、略球状を有しやすくなる。
本発明の第4の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1発明に加えて、複数の結晶のそれぞれが、非統一の複数方位に成長するもしくは異なる長さに成長することで、外形上は非球状を有する。
この構成により、球晶をその結晶構造として有しつつも、外形は略球状でないカルサイト型炭酸カルシウムを得ることもできる。
本発明の第5の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、平均粒径が5μm〜40μmである。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムを種々の素材に混合することが容易となる。
本発明の第6の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、水酸化カルシウム水懸濁液に、二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程での工程管理温度が、18℃〜65℃である。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムが、球晶を有するようになる。
本発明の第7の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第6の発明に加えて、炭酸化工程において、水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%未満においては、工程管理温度が、20℃〜55℃であり、更に好ましくは25℃〜35℃である。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有し、外形や粒径のそろいが良くなる。
本発明の第8の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第6又は第7のいずれかの発明に加えて、炭酸化工程において、水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%以上においては、工程管理温度が、20℃〜60℃であり、更に好ましくは20℃〜40℃である。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有し、外形や粒径のそろいが良くなる。特に、外形が略球状になりやすくなる。
本発明の第9の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、炭酸化工程において、炭酸化率が1〜5%までの反応速度を2mol%/min以下とし、炭酸化率が5〜10%における反応速度を0.16mol%/min〜0.24mol%/minとし、炭酸化率10%以降の反応速度を1.1mol/min以下とする。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有すると共に、外形や粒径のそろいが良くなり、平均粒径を任意に制御できるメリットを有する。
本発明の第10の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、炭酸化工程の前、または最中の少なくともいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を、水酸化カルシウム水懸濁液中の水酸化カルシウムに対して、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩に含まれる燐の含有量が0.03重量%から1.5重量%の範囲の範囲になるように、1回以上添加する工程を更に含んで製造される。
この構成により、得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有すると共に、外形や粒径のそろいが良くなるメリットを有する。また、外形が略球状となりやすくなる。
本発明の第11の発明に係るカルサイト型炭酸カルシウムでは、第10の発明に加えて、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩は、水酸化ナトリウム水溶液の炭酸化率が、25%未満の段階で、1回のみ添加される。
この構成により、カルサイト型炭酸カルシウムは、より確実に球晶および略球状を生じるようになる。
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
(物質の全体概要)
まず、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムの概要について説明する。ここで、球晶とは、「ある一点(厳密に一点であることに限定されるものではない)から多数の結晶が複数方位(特に放射状)に成長した多結晶体」として定義される。
実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムは、単数または複数の位置から複数方位に、複数の結晶のそれぞれが成長して得られる多結晶体で形成される。単数又は複数の位置から複数方位に、複数の結晶のそれぞれが成長する多結晶体であることで、強度および耐久性に優れた結晶構造を有するようになる。
また、複数の結晶のそれぞれが、単数の位置(すなわちある一点)から複数方位に成長することで、成長する複数の結晶のそれぞれ(ここで、複数の結晶のそれぞれは、通常は単結晶である)が、一点から広がるように成長するので、結晶構造が安定することに加えて、得られるカルサイト型炭酸カルシウムの外形が、一定の形状を示すようになる。
特に、複数の結晶のそれぞれが、ある一点から放射状に成長する場合には、カルサイト型炭酸カルシウムは、球晶であることになる。特にこのとき、複数の結晶のそれぞれが、略同一長に成長することで、カルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有しながら、外形が略球状となる。すなわち、外形が略球状であることで、充填剤として様々な素材に混合しやすくなると共に、球晶を有することで十分な強度と耐久性を有するようになる。
逆に、複数の結晶のそれぞれが、放射状以外の異なる複数方位に成長したり、非同一の長さで成長したりする場合には、カルサイト型炭酸カルシウムは、外形が非球状となる。例えば、紡錘形状となったり、略方形となったりする。
なお、ここで複数の結晶のそれぞれは、基本的には単結晶である。ただし、成長によっては多結晶である可能性もあり、厳密に単結晶であることに限定されるものではない。
実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造される。この炭酸化工程により、複数の結晶のそれぞれが、所定の位置から複数方位に成長して多結晶体を形成する。この多結晶体が、製造される実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムである。
また、多結晶体だけでなく、複合体となる場合も、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムの一例として含む。複合体とは、成長途中の一つの多結晶体が、他の成長途中の多結晶体と結合して複合した態様を言う。実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を含む製造工程で得られる。このため、原料となる水酸化カルシウム水懸濁液中において、多数のカルサイト型炭酸カルシウムが生成される。このうち、多結晶体として把握される態様のものと、他の多結晶体と結合した複合体として把握される態様のものと、が存在することがある。
図1は、本発明の実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図1の写真から明らかな通り、カルサイト型炭酸カルシウムは、ある所定位置から複数の結晶のそれぞれが、複数方位に成長している。これらの複数方位に成長している複数の結晶の集まりによって得られる多結晶体もしくはその複合体が、上記炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造される実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムである。
ここで、球晶とは球状と同義ではない。球状とは、多結晶体の内部組織に関係なく、外形が球状を有していればよい。例えば、1次粒子となる微小結晶が単に丸く集合していても球状となる。あるいは、内部組織に関係なく、磨耗や研磨といった製造工程での工夫によって球状となることもある。
このように、内部組織と関係なく、外形上(外観上)で球状であるだけの場合には、その強度や耐久性が弱く、得られた物質(炭酸カルシウムなど)が、他の物質に混合されて用いられる場合に、その球状を維持できない問題を発生させる。球状を維持できなければ、当然に種々の問題を発生させる。
これに対して、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムは、図1の写真のように、所定の位置から複数方向に複数の結晶1のそれぞれが成長する。このとき、複数の結晶1の成長方向が放射状であれば、得られるカルサイト型炭酸カルシウムの外形は、略球状や略楕円球に近くなる。特に、放射状であってかつ複数の結晶のそれぞれが略同一の長さで成長すれば、球状の外形を有するようになる。
このとき、球状や楕円球の形状を有するとしても、これを形成する基礎は球晶である(複数の結晶のそれぞれが、所定位置から、複数方向に成長している)ので、内部組織と外形とが一致しており、強度および耐久性を有している。このため、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウムは、従来技術における外形上での単純な球状の炭酸カルシウムでの問題を解決している。
ここで、球晶については、「Journal of Crystal Growth 193(1998)374−381」、「Journal of Crystal Growth 193(1998)382−388」の文献に、カルサイト型炭酸カルシウムにおいて、球晶の意味合いが記載されている。当該文献には、既に記載したように、球晶とは、ある位置から、複数の結晶が複数方位に成長した多結晶体であることが開示されている。
また、球晶を有する物質は、偏光顕微鏡にて写真を撮影すると、独特の円形中に発光部分が生じる態様を示す(例えば、特開2010−151679の図7(b))。これに対して、単なる球状の物質を、偏光顕微鏡にて写真を撮影すると、このような態様を示さず、単なる円形のばらつきとしての態様しか示さない。このように、当該文献からも明らかな通り、単なる球状と球晶とは、異なる物性を有しているものである。
(実施例1)
実際の製作例である実施例1とその結果について説明する。実施例1は、本発明の範囲に含まれる実施例である。
実施例1では、生石灰120gが、ビーカー中の800mlの水道水に一気に加えられて消化された後、篩で残渣が取り除かれた水酸化カルシウム水懸濁液が得られる。次いで、この水酸化カルシウム水懸濁液の水酸化カルシウム濃度が、12重量%となるように調整されて、800mlの量が取り出される。更に、この800mlの水酸化カルシウム水懸濁液に、水酸化カルシウムに対して1重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(リン量に換算すると0.3重量%)が、添加される。この添加された状態の水酸化カルシウム水懸濁液が、反応開始液とされる。
この反応開始液を30℃に保持した上で、20Vol%の二酸化炭素ガスが300ml/minの速度で吹き込まれて、攪拌されながら炭酸化工程が実施される。炭酸化率が10%の時点で、二酸化炭素ガスの吹き込み速度が1500ml/minへ増加される。この炭酸化工程での温度は、30℃±1℃以内で管理される。この処理による反応速度は、反応開始から炭酸化率10%までは、0.2mol%/minであり、炭酸化率10%以降は、0.8mol%/minである。
このような実施例1の製作手順で得られた反応済み液は、ろ別されてアルコール洗浄された後、120℃で16時間乾燥される。この結果、110gのカルサイト型炭酸カルシウムの粉体が得られる。
図2は、この実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図2の写真から明らかな通り、得られた実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムは、その外形が略球状である。また、その粒径は、平均として10μmであることが分かる。図3は、図2に示される実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムの偏光顕微鏡写真である。図3の写真から明らかな通り、特開2010−151679の図7(b)に例示される、独特の円形中に発光部分が生じる態様を示す。
この偏光顕微鏡写真から明らかな通り、独特の円形の発光部分を有していることで、実施例1で得られたカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有していることが確認される。すなわち、本発明の実施の形態1のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有している。また、実施例1で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を構成する複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長している。この結果、外形は、略球状になっている。略球状であることで、様々な充填剤として使用するのに最適である。
図4は、本発明の実施例1で得られるカルサイト型炭酸カルシウムの破断面の電子顕微鏡写真である。図4は図2の内部を示している。図4の電子顕微鏡写真からも分かる通り、複数の結晶が、複数方位に成長している。また、複数方位であると同時に放射状にかつ略同一長に成長していることが分かる。図4の写真からも、実施例1で得られるカルサイト型炭酸カルシウムが球晶を有していることが確認される。図5は、図4の偏光顕微鏡写真である。図5は、独特の円形の発光部分を有している。この点からも、実施例1で得られるカルサイト型炭酸カルシウムが、球晶を有していることが分かる。
このように、実施例1の手順で製作されたカルサイト型炭酸カルシウムは、外形が略球状であるだけでなく、球晶を有している。
図6および図7は、図4、図5と同様に、実施例1のカルサイト型炭酸カルシウムを、別の角度から撮影した電子顕微鏡写真と偏光顕微鏡写真である。別の角度からの画像からも明らかな通り、実施例1によって得られる(すなわち本発明での)カルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有している。この球晶を生じさせることで、外形を略球状としつつも、強度、耐久性、結晶成長の容易性などの様々な利点を生じさせる。これらの利点は、当然に様々な分野への充填材としての活用に適している。
以上のように、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む工程で得られる、実施の形態1のカルサイト型炭酸カルシウム1は、単なる球状ではなく、球晶を有していることが確認される。球晶であることのメリットは、既に述べたとおりであり、単なる球状よりも多くの優位性を有している。
(複数の結晶の成長)
ここで、複数の結晶2のそれぞれは、放射状となる複数方位に成長することが好適である。放射状となる複数方位に、複数の結晶2のそれぞれが成長することで、球晶全体としての安定性、強度、耐久性が向上するからである。放射状となる複数方位に成長することで、複数の結晶同士のバランスが良くなり、単体における安定性が高まるからである。
また、放射状となる複数方位に成長することで、生成されるカルサイト型炭酸カルシウム1の外形が球状や楕円球となりやすくなり、種々の用途に使用される際に便利となる。
また、複数の結晶2が、放射状の複数方位において、略同一長に成長することも好適である。放射状に略同一長に成長できることで、カルサイト型炭酸カルシウム1は、外形として、略球状を有することができるからである。内部組織としては球晶であり、外形としては略球状を有することで、顔料、化粧料、充填剤などに用いられる場合に、使い勝手が良くなる。加えて、球晶であるので、強度や耐久性も高く、顔料などに混合される際に、カルサイト型炭酸カルシウム1が破壊されることも無く、製造性が良い。また、すべり性も高いので、混合工程における作業効率が下がったりすることも防止できる。
なお、これら結晶成長は、後述する炭酸化工程の温度管理によって、管理することができる。すなわち、本発明の発明者が新たに見出した製造工程における製造工程管理と工程の工夫によって、上述の結晶成長を実現できる。結果として、球晶の結晶構造を有しつつ、外形的には略球状や略楕円球状を有するカルサイト型炭酸カルシウム1を実現できる。
(その他の結晶成長)
また、複数の結晶2のそれぞれは、放射状以外の複数方位に成長しても良い。後述するように、炭酸化工程における温度管理などによって、結晶成長を変化させることができる。このとき、結晶成長の方向となる複数方位を、放射状以外の方向にすることができる。放射状以外の複数の方位に、複数の結晶2が成長することで、最終的な外形は、略球状となることもそれ以外の形状となることもある。
(粒径)
また、本発明のカルサイト型炭酸カルシウム1は、平均粒径が5μm〜40μmであることが好ましい。水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程によって、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウム1は、5μm〜40μmの平均粒径を有するようになる。
カルサイト型炭酸カルシウム1の平均粒径が、5μm〜40μmであることで、粒径が一定範囲に収まることになる。また、大きすぎず小さすぎずの粒径であるので、化粧料、顔料などの充填材に適用される場合に、使い勝手がよい。また、平均粒径が一定範囲に収まることで、流動性に富み、高充填ができる。
以上、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウム1は、球晶構造を有し、様々な分野に適用できる。特に、図2〜図5に示されるように、電子顕微鏡写真および偏光顕微鏡写真のそれぞれから、実施の形態1に記載の工程を含んだ製造工程で得られたカルサイト型炭酸カルシウム1は、球晶を有していることも確認された。このような球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウム1は、外形としても、略球状や略楕円球状を有しやすく、顔料、化粧料などの充填剤として様々な用途に混合される際に、混合作業が容易となる。球状であることで、光沢を抑えることに役立つ。加えて、単純な球形と異なり、内部組織が球晶であることで、強度および耐久性が高く、混合工程で、カルサイト型炭酸カルシウム1が破損、破壊されることもない。
このような結果、実施の形態1におけるカルサイト型炭酸カルシウム1は、光沢抑制や増量を必要とする様々な用途に、容易かつ好適に用いられる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、炭酸化工程での温度管理や工程管理の工夫について説明する。実施の形態1で説明したように、本発明のカルサイト型炭酸カルシウム1は、球晶構造を有する。この球晶構造によって、外形が、略球状であったり、略楕円球状であったりできる。このような球晶を確実に成長させるために、炭酸化工程での種々の管理の工夫が好適である。
(工程管理温度 : 全体)
炭酸化工程においては、炭酸化工程での温度が管理される。このとき、炭酸化工程での工程管理温度が、炭酸化工程全体に渡って18℃〜65℃であることが、好ましい。
表1は、炭酸化工程全体に渡っての工程管理温度を様々に変化させた場合の表である。
表1には、比較例1、2および実施例1〜5の結果が示されている。また、図8〜図14は、表1で示される実施例や比較例で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。なお、実施例については、カルサイト型炭酸カルシウムとして製作したものであるが、比較例は、球晶を生じさせていないカルサイト型炭酸カルシウムであったりカルサイト型となりきれなかった炭酸カルシウムであったりする。このため、図面の説明においては、単に炭酸カルシウムと記載することもあるが、カルサイト型炭酸カルシウムでないことを意図する記載ではない。
図8は、表1に記載の比較例1の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図9は、表1に記載の実施例2の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図10は、表1に記載の実施例3の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図11は、表1に記載の実施例4の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図12は、表1に記載の実施例5の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図13は、表1に記載の比較例2の炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。
比較例1,2および実施例1〜5の製作工程およびその結果について説明する。
(比較例1)
使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度を、15℃±1℃としたことのみが、実施例1と異なる。
比較例1は、表1および図8から明らかな通り、外形は立方体に近く、球晶を生じさせていない。すなわち、工程管理温度が18℃未満である15℃の場合には、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムが得られないことが実験からも明らかである。言い換えれば、比較例1の炭酸カルシウムは、一次粒子の形状が立方状となってしまう。ここで、表1における1次粒子の形状と配列は、内部組織を示す。
(実施例2)
実施例2は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度のみが、18℃±1℃とされたことのみが、実施例1と異なる。
実施例2は、表1および図9から明らかな通り、板状の複数の結晶が、放射状に成長している。板状ではあるが、球晶を示している状態である。すなわち、工程管理温度の下限が18℃であることが好適であることが分かる。
(実施例1)
実施例1は、実施例1において説明した通りであり、複数の結晶が複数方位(特に放射状)に成長した球晶を示している。加えて、外形も略球状を有しており、ある一つの位置から、複数の結晶が放射状に略同一長に成長した球晶でかつ略球状となることが分かる。
このため、工程管理温度が30℃であることは、球晶かつ略球状のカルサイト型炭酸カルシウムを得るのに適した温度であることが分かる。
(実施例3)
実施例3は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度のみが、40℃±1℃とされたことのみが、実施例1と異なる。
表1および図10から明らかな通り、実施例3で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有する。加えて、外形も略球状を有する。このことから、工程管理温度が40℃であることは、球晶かつ略球状のカルサイト型炭酸カルシウムを得るのに適した温度であることが分かる。
(実施例4)
実施例4は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度のみが、50℃±1℃とされたことのみが、実施例1と異なる。
表1および図11から明らかな通り、工程管理温度が50℃で得られるカルサイト型炭酸カルシウムの内部組織は、ある位置から複数の結晶が放射状に成長している。すなわち、実施例5のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有する。
(実施例5)
実施例5は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度のみが、60℃±1℃とされたことのみが、実施例1と異なる。
実施例5のカルサイト型炭酸カルシウムは、表1および図12から明らかな通り、放射状多結晶体を示す。放射状多結晶体であるので、球晶の一部をその構造として有している。ただし、複数の結晶の成長の方位および長さに不均一があり、外形は紡錘形状を示している。
(比較例2)
比較例2は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。工程管理温度のみが、70℃±1℃とされたことのみが、実施例1と異なる。
比較例2の炭酸カルシウムでは、球晶を示さず、針状の結晶が析出している。加えて、工程管理温度が70℃で得られる炭酸カルシウムは、紡錘状の凝集物に加え、針状の結晶が無造作に成長している。この針状の結晶は、アラゴナイト相であることが確認された。
この点で、70℃の工程管理温度となると、得られる炭酸カルシウムは、放射状多結晶体を生じさせることができない。以上の表1の実験結果からわかる通り、放射状多結晶体を有するカルサイト型炭酸カルシウムを、炭酸化工程を含む製造工程で得るには、炭酸化工程の全体に渡っての工程管理温度が、18℃〜65℃であることが好ましい。
(工程管理温度 : 炭酸化率によるその1)
炭酸化工程においては、炭酸化工程全体に渡っての温度範囲の規定だけでなく、炭酸化工程における水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率と、工程管理温度との関係を制御することが、球晶構造を有しつつ既述した平均粒径を有するカルサイト型炭酸カルシウムの製造に好適である。
まず、炭酸化工程において、水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%未満においては、工程管理温度が20℃〜55℃であり、更には、25℃〜35℃であることが好ましい。表2は、この炭酸化率が10%未満の場合における製造されるカルサイト型炭酸カルシウムの結果を示す表である。
表2は、この炭酸化率が10%未満での工程管理温度を様々に変えた場合の実施例6〜実施例9、比較例3の結果を示している。また、図14は、実施例6で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図15は、実施例7で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図16は、実施例8で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図17は、実施例9で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図18は、比較例3で得られる電子顕微鏡写真である。
表2に示される実施例6〜9および比較例3のそれぞれの製造工程と結果を説明する。
(実施例6)
実施例6は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例6では、炭酸化工程の開始温度を20℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を30℃±1℃にすることで、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムである。
このようにして得られた実施例6のカルサイト型炭酸カルシウムは、表2および図14から明らかな通り板状の放射状となっている。板状の放射状であるので、球晶を示していることがわかる。この結果、10%未満の炭酸化率における工程管理温度は、20℃以上であればよいことが分かる。
(実施例7)
実施例7は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例7では、炭酸化工程の開始温度を25℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を30℃±1℃にすることで、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムである。
表2および図15から明らかな通り、実施例7で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を示している。加えて、外形も略球状である。この結果から、炭酸化率10%未満における工程管理温度は、更に好ましくは、25℃〜35℃であることが、実施例7の実験結果からも分かる。
(実施例8)
実施例8は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例8では、炭酸化工程の開始温度を40℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を30℃±1℃にすることで、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムである。
表2および図16から明らかな通り、球晶を示している。外形も略球状に近いが、略楕円状も含まれており、略球状の外形の揃いが完全ではないが、球晶を示すカルサイト型炭酸カルシウムを得るために、炭酸化率10%未満での工程管理温度が20℃〜55℃、更には25℃〜35℃であることが好ましいことが分かる。
(実施例9)
実施例6は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例6では、炭酸化工程の開始温度を55℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を30℃±1℃にすることで、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムである。
表2および図17から明らかな通り、実施例9のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を生じさせている。また、外形も略球状もしくはこれに近い形状を示している。但し、粒径にばらつきはある。しかし、いずれにしても、炭酸化率10%未満での工程管理温度が、20℃〜55℃、更には25℃〜35℃であることが好ましいことが分かる。
(比較例3)
比較例3は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。比較例3では、炭酸化工程の開始温度を60℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を30℃±1℃にすることで、製造されるカルサイト型炭酸カルシウムである。
表2および図18から明らかな通り、比較例3で得られる炭酸カルシウムは、球晶となっていない。このことからも、炭酸化率10%未満においては、工程管理温度は、20℃〜55℃、更には25℃〜35℃であることが好ましいことが分かる。
特に、粒径の揃い方や外形が略球状を生じさせることまでを要求する場合には、実施例7と実施例8とで、その差が生じていることがそれぞれに対応する図15と図16の結果から分かる。この点で、工程管理温度の上限温度は、球晶であることのみを要求するのであれば55℃が適当であり、略球状の外形や粒径の揃いなども考慮すると、上限温度は35℃が適当である。
(工程管理温度 : 炭酸化率によるその2)
一方、炭酸化工程において、水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%以上においての工程管理温度が制御されることも好ましい。水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%以上においては、工程管理温度が20℃〜60℃であり、更には、20℃〜40℃であることが好ましい。表3は、この炭酸化率が10%以上の場合における製造されるカルサイト型炭酸カルシウムの結果を示す表である。
表3は、この炭酸化率が10%以降での工程管理温度を様々に変えた場合の実施例10〜実施例12、比較例4、5の結果を示している。また、図19は、比較例4で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図20は、実施例10で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図21は、実施例11で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図22は、実施例12で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図23は、比較例5で得られる電子顕微鏡写真である。
この実験では、それぞれの実施例および比較例での炭酸カルシウムを製作し、その電子顕微鏡写真や偏光顕微鏡写真などでの確認に基づいて、球晶を生じさせているか否かを確認した。この確認結果に基づいて、炭酸化率10%以降での工程管理温度の条件の最適値を確認した。
(比較例4)
比較例4は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。比較例4は、炭酸化工程の開始温度を30℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を18℃±1℃にすることで、製造される炭酸カルシウムである。
比較例4で得られる炭酸カルシウムは、表3および図19から明らかな通り、板状の結晶の放射状であり、板状の一次粒子の集合体でしかない。このため、比較例4での炭酸カルシウムは、球晶を有していない。このため、炭酸化率10%以上においての工程管理温度は、20℃未満では、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムを得るには不十分である。
(実施例10)
実施例10は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例10は、炭酸化工程の開始温度を30℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を20℃±1℃にすることで、製造される炭酸カルシウムである。
実施例10で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表3および図20から明らかな通り、球晶を示している。また、粒径にばらつきはあるものの、外形も略球状である。この結果、炭酸化率10%以降での工程管理温度が20℃以上であることは、球晶および略球状を有するカルサイト型炭酸カルシウムを得るのに適している。
(実施例11)
実施例11は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例11は、炭酸化工程の開始温度を30℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を40℃±1℃にすることで、製造される炭酸カルシウムである。
実施例11で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表3および図21から明らかな通り、球晶を示している。また、外形も略球状を示しており、この工程管理温度が、球晶であり略球状であるカルサイト型炭酸カルシウムを得るには適切であることが分かる。
(実施例12)
実施例12は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。実施例12は、炭酸化工程の開始温度を30℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を60℃±1℃にすることで、製造される炭酸カルシウムである。
実施例12で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表3および図22から明らかな通り、球晶を示している。また、外形も略球状を示しており、この工程管理温度が、球晶であり略球状であるカルサイト型炭酸カルシウムを得るには適切であることが分かる。ただし、粒径などにばらつきが生じる。このため、炭酸化率10%以上での工程管理温度は、60℃が上限であることが好ましいと考えられる。
(比較例5)
比較例5は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。比較例5は、炭酸化工程の開始温度を30℃±1℃として、炭酸化率10%まではこの工程管理温度を維持し、炭酸化率10%を越えた後では、工程管理温度を65℃±1℃にすることで、製造される炭酸カルシウムである。
比較例5は、表3および図23から明らかな通り、紡錘状の放射状となり、球晶を形成していない。すなわち、一次粒子の凝集物になってしまっている。このため、炭酸化率10%以降における工程管理温度が、60℃を超えると、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムが得られない。
以上の実験結果から、炭酸化率10%以降における工程管理温度は、20℃〜60℃であり、更にこのましくは20℃〜40℃であることが分かる。
特に、図21、図22などから、外形の略球状を得ることも考慮すると、特に、20℃〜40℃であることが好ましい。
(反応速度管理)
上記では、工程管理温度の制御について説明した。
球晶としての結晶構造を有しつつ外形が略球状に近く、加えて粒径も揃ったカルサイト型炭酸カルシウムを得るには、工程管理温度以外に、反応速度を管理することも好適である。
炭酸化工程において、炭酸化率が1%〜5%までの反応速度を2mol%/min以下とし、炭酸化率が5〜10%における反応速度を0.16mol%/min〜0.24mol%/minとし、炭酸化率10%以降の反応速度を1.1mol/min以下とすることが好適である。
ここで、カルサイト型炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を含む工程によって、まず、球晶の安定核の元となるエンブリオが形成される。ここで、エンブリオの数が制御されることが好ましい。次いで、炭酸化工程が進むと、エンブリオが安定核に成長する。更に炭酸化工程が進むと、安定核が更に成長する。このとき、安定核のみが成長するように制御されることが好ましい。
ここで、炭酸化率が1%〜5%、特に炭酸化率が2%〜3%において、エンブリオが形成される。このため、エンブリオの数が制御されるには、この炭酸化率の範囲における反応速度の制御が重要である。
炭酸化率が5%〜10%の範囲において、安定核が成長する。安定核を適切に成長させるには、この炭酸化率において、反応速度の制御が重要である。炭酸化率が10%以降においても新たな核形成が起こらないように、反応速度が制御されることが重要である。
このような結晶成長による球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムを得るために、炭酸化率の進行に合わせて反応速度を制御することが好ましい。一例として上述した次の手順での制御が好ましい。
(範囲1)炭酸化率が1%〜5%において
この範囲においては、反応速度が、2mol%/min以下に制御されることが好ましい。この反応速度によって、安定核の元となるエンブリオの数が制御されるからである。
(範囲2)炭酸化率が5%〜10%において
この範囲においては、反応速度が、0.16mol%/min〜0.24mol%/minに制御されることが好ましい。この反応速度によって、エンブリオを安定核に成長させつつ、安定核のみを成長させることができるからである。
(範囲3)炭酸化率が10%以上において
この範囲においては、反応速度が、1.1mol%/min以下に制御されることが好ましい。この反応速度によって、安定核のみを十分に成長させて球晶を得ることができるからである。
以上のように、炭酸化率によって、反応速度を制御することが、安定的な球晶であって、粒径が一定範囲に揃うカルサイト型炭酸カルシウムを製造できる。
ここで、上記の反応速度の制御が好適であることに関する実験結果を示す。発明者は、炭酸化率の違いによる反応速度をそれぞれ変化させることで、上記の反応速度の制御が適切であることを確認した。実験の結果は、表4に示される。

表4において、炭酸化率と反応速度とが対応するように、記載されている。炭酸化率のそれぞれの下の欄(格段において)に記載の数値は、反応速度(単位mol%/min)を示している。
表4は、この反応速度を様々にバリエーションさせた比較例6、実施例13〜15の結果を示している。また、図24は、比較例6で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図25は、実施例13で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図26は、実施例14で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図27は、実施例15で得られた炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。
これら、比較例6、実施例13〜15での製作工程と結果を次に示す。
(比較例6)
比較例6は、反応開始から炭酸化率5%までの混合ガス吹き込み速さを3800ml/分、炭酸化率5%から炭酸化率10%までの混合ガス吹き込み速さを220ml/分、炭酸化率10%以降の混合ガス吹き込み速さを1950ml/分とした以外は実施例1と同じ製作工程で得られる炭酸カルシウムである。このような混合ガス吹き込み速さによって、比較例6は、炭酸化率が1%〜5%(範囲1)における反応速度は、2.5mol%/minであり、炭酸化率が5%〜10%(範囲2)における反応速度は、0.15mol%/minであり、炭酸化率が10%以上(範囲3)における反応速度は、1.15mol%/minで得られる炭酸カルシウムである。
表4および図24から明らかな通り、比較例6の炭酸カルシウムは、微小粒子凝集物となってしまい、球晶を示さない。このため、反応速度が、上述した範囲を外れていると、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムが得られないことが分かる。
(実施例13)
実施例13は、反応開始から炭酸化率5%までの混合ガス吹き込み速さを3000ml/分、炭酸化率5%から炭酸化率10%までの混合ガス吹き込み速さを350ml/分、炭酸化率10%以降の混合ガス吹き込み速さを1800ml/分とした以外は実施例1と同じ工程で得られるカルサイト型炭酸カルシウムである。
このような吹き込み速度によって、炭酸化率が1%〜5%(範囲1)における反応速度2mol%/minであり、炭酸化率が5%〜10%(範囲2)における反応速度は、0.23mol%/minであり、炭酸化率が10%以上(範囲3)における反応速度は、1.1mol%/minである場合に、製造されたカルサイト型炭酸カルシウムの結果を示す。この条件は、範囲1〜範囲3のそれぞれにおいて、上述した最適値の範囲に収まっている。
実施例13で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表4および図25から明らかな通り、平均粒子径が5μmである球晶である。また、外形も略球状に近く、充填材などに理想的に使用できるカルサイト型炭酸カルシウムであることが分かる。
(実施例14)
実施例14は、反応開始から炭酸化率5%までの混合ガス吹き込み速さを15ml/分、炭酸化率5%から炭酸化率10%までの混合ガス吹き込み速さを240ml/分、炭酸化率10%以降の混合ガス吹き込み速さを1500ml/分とした以外は実施例1とした以外は、実施例1と同じ工程で得られるカルサイト型炭酸カルシウムである。
このような吹き込み速度によって、実施例14は、炭酸化率が1%〜5%(範囲1)における反応速度0.22mol%/minであり、炭酸化率が5%〜10%(範囲2)における反応速度は、0.2mol%/minであり、炭酸化率が10%以上(範囲3)における反応速度は、0.9mol%/minである場合に、製造されたカルサイト型炭酸カルシウムである。この条件は、範囲1〜範囲3のそれぞれにおいて、上述した最適値の範囲に収まっている。
実施例14で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表4および図26から明らかな通り、平均粒子径が10μmである球晶である。また、外形も略球状に近く、充填剤などに理想的に使用できるカルサイト型炭酸カルシウムであることが分かる。
(実施例15)
実施例15は、炭酸化率が1%〜5%(範囲1)における反応速度0.005mol%/minであり、炭酸化率が5%〜10%(範囲2)における反応速度は、0.16mol%/minであり、炭酸化率が10%以上(範囲3)における反応速度は、0.9mol%/minである場合に、製造されたカルサイト型炭酸カルシウムの結果を示す。この4段目の条件は、範囲1〜範囲3のそれぞれにおいて、上述した最適値の範囲に収まっている。
実施例15で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、表4および図27から明らかな通り、球晶であって外形が略球状である。このとき、平均粒径は40μmである。上述の範囲に収まる反応速度で処理することで、球晶であるカルサイト型炭酸カルシウムが得られる。
このように、反応速度を炭酸化率に合わせて制御することで、球晶であって外形が略球状となるカルサイト型炭酸カルシウムを得ることができる。特に、その粒径を調整することも可能となる。
(縮合燐酸の添加)
次に、球晶をより効率よく成長させるために、炭酸化工程の前、または最中の少なくともいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を添加する工程を含む場合について説明する。炭酸化工程の前または最中のいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を、仕込みの水酸化カルシウムに対して、0.1重量%から5.0重量%の範囲で1回以上添加する工程が、更に含まれて、カルサイト型炭酸カルシウムが製造される。
縮合燐酸もしくはそのアルカリ金属塩が添加される工程により、球晶の成長が促され、また粒径がそろいやすくなるメリットがある。ここで、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩は、炭酸化工程の前または最中の少なくともいずれかの時点で、添加されることが適当であるが、炭酸化率が25%未満の段階で、1回のみ添加されることが更に適当である。この段階で1回のみ添加されることで、球晶の成長において、複数の結晶のそれぞれが、放射状の複数方位において略同一に成長するようになり、外形がより略球状になりやすい。
表5は、この縮合燐酸等を添加する工程をさらに加えた場合の実験結果を示す。
表5は、比較例7、実施例16〜20に対応している。図28は、比較例7で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図29は、実施例16で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図30は、実施例17で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図31は、実施例18で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図32は、実施例19で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。図33は、実施例20で得られる炭酸カルシウムの電子顕微鏡写真である。
各実施例などの製作工程と結果について説明する。
(比較例7)
比較例7は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。使用するヘキサメタリン酸ナトリウム(以下および表などでは「HMS」と表記)が、水酸化ナトリウムに対して0.05重量%、添加される場合に得られるのが比較例7のカルサイト型炭酸カルシウムである。
表5および図28から明らかな通り、比較例7で得られる炭酸カルシウムは、紡錘状となり、球晶を示さない。上述のHMSの添加量の範囲に入らない場合には、球晶を有するカルサイト型炭酸カルシウムが得られないことが分かる。
(実施例16)
実施例16は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。使用するHMSが、水酸化カルシウムに対して0.1重量%、添加される場合に得られるのが実施例16のカルサイト型炭酸カルシウムである。
表5および図29から明らかな通り、実施例16のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を示す。また、図29の写真からわかる通り、粒径の揃いなどの問題もあるが、外形も略球状を示しやすい。この結果、様々な素材への充填材に適したカルサイト型炭酸カルシウムが得られることが分かる。上述の添加量の範囲が最適であることが分かる。
(実施例17)
実施例17は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。使用するHMSが、水酸化ナトリウムに対して1重量%、添加される場合に得られるのが実施例17のカルサイト型炭酸カルシウムである。
表5および図30から明らかな通り、実施例17のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を示す。また、図30の写真からわかる通り、粒径の揃った略球状を示しやすい。この結果、様々な素材への充填材に適したカルサイト型炭酸カルシウムが得られることが分かる。
(実施例18)
実施例18は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。使用するHMSが、水酸化カルシウムに対して5重量%、添加される場合に得られるのが実施例18のカルサイト型炭酸カルシウムである。
表5および図31から明らかな通り、実施例18のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶の一部を示すだけである。また、外形も一定していない。このため、実施例18のカルサイト型炭酸カルシウムは、最適なものではない。
(実施例19)
実施例19は、使用する水酸化カルシウム水懸濁液および炭酸化工程で使用する二酸化炭素ガスなどの量、反応速度は、実施例1で説明した場合と同じである。使用するHMSが、水酸化カルシウムに対して10重量%、添加される場合に得られるのが実施例19のカルサイト型炭酸カルシウムである。
表5および図32から明らかな通り、実施例19のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶の一部を示すだけである。また、外形も一定していない。このため、実施例19のカルサイト型炭酸カルシウムは、最適なものではない。
(実施例20)
実施例20は、HMSを、2回に分けて、それぞれ0.5重量%ずつを炭酸化反応前と炭酸化率10%時で添加した場合である。
表5および図33から明らかな通り、実施例20のカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶および略球状を示す。このため、2回に分けて添加されることでもよいことが分かる。
以上のように、縮合燐酸を所定範囲で添加することは、球晶および略球状であるカルサイト型炭酸カルシウムを得ることにとって好適である。
なお、実施例16〜などでは、縮合燐酸としてHMSを用いたが、HMSではなく、トリポリリン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウムが用いられてもよい。この場合にも、添加量を上述の通り制御することで、球晶および略球状を有するカルサイト型炭酸カルシウムが得られる。
以上、縮合燐酸またはそのアルカリ金属塩を加える添加工程が追加されることで、球晶でありかつ略球状となりやすく粒径のそろいもよいカルサイト型炭酸カルシウムが得られる。
以上、実施の形態2のカルサイト型炭酸カルシウムは、種々の工夫によって、球晶でありかつ外形や粒径のより使い勝手のよいものが得られる。
(製造方法としての把握)
また、実施の形態1、2で説明したカルサイト型炭酸カルシウムの製造工程は、そのままカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法を説明したものである。
すなわち、カルサイト型炭酸カルシウムの製造方法は、水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程を一部に含む製造工程で製造され、複数の結晶のそれぞれが、所定の位置から放射状に成長して、多結晶体もしくはその一部を形成する、形成工程を含む。
この基本製造方法に加えて、炭酸化工程での工程管理温度が、18℃〜65℃である、カルサイト型炭酸カルシウムの製造方法が採用されてもよい。
更に、炭酸化工程において、炭酸化率が1〜5%までの反応速度を2mol%/min以下とし、炭酸化率が5〜10%における反応速度を0.16mol%/min〜0.24mol%/minとし、炭酸化率が10%以降の反応速度を1.1mol/min以下とする、カルサイト型炭酸カルシウムの製造方法が採用されても良い。
あるいは、炭酸化工程の前、または最中の少なくともいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を、仕込みの水酸化カルシウムに対して、燐換算で0.03重量%から1.5重量%の範囲で1回以上添加する工程を更に含む、製造方法が採用されても良い。もちろん、これらの製造方法は、実施の形態1、2で説明した種々の工夫を更に含むものであっても良い。
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
実施の形態3では、実施の形態1、2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムの利用について説明する。カルサイト型炭酸カルシウムは、光沢性をぼかすので、ソフトフォーカスを必要とする様々な物品に利用される。また、球晶であって、外形も略球状や略楕円球状になり、かつ粒径も小さいので、様々な物品に混合されやすい。混合されやすいだけでなく、混合工程や混合後において、カルサイト型炭酸カルシウムが破壊されたり損傷したりすることが少ない。このため、利用性が非常に高い。
このため、カルサイト型炭酸カルシウムは、様々な素材の充填材として利用される。言い換えれば、実施の形態1,2で説明したカルサイト型炭酸カルシウムを充填材として含む、種々の素材は、それぞれの物性を向上させるメリットがある。
この光沢性(もちろん強度や耐久性も含めて)に基づいて、実施の形態1,2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、顔料に混合されてもよい。あるいは、化粧料に混合されても良い。いずれの物品も光沢性を抑制することが、商品価値を上げるからである。
このように、実施の形態1、2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムを含む顔料や化粧料は、光沢性の抑制に優れたものとなる。
また、実施の形態1,2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、増量用の物質としての利用も好適である。カルサイト型炭酸カルシウムの基本原料である石灰は大量にあるので、実施の形態1,2で説明した製造工程によって製造されるカルサイト型炭酸カルシウムは、大量に製造することも可能となりうるからである。
例えば、充填剤などに利用できる。充填材は、例えば樹脂やゴムなどの素材の体積を、その特性を変質させずに増加させることができる。実施の形態1、2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶を有しており、外形も略球状もしくは略楕円球状となるので、混合された後の素材の触感に悪影響を与えない。また、球晶であることで、混合工程や混合後に、カルサイト型炭酸カルシウムが破壊や損傷されることも無いので、利用性が高い。このように、実施の形態1,2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムを含む充填材は、高い利用性を有する。
以上のように、実施の形態1、2で得られるカルサイト型炭酸カルシウムは、球晶でありつつ略球状などの特徴である耐久性と外形の利用性の両立と、光沢性と、を利用して、様々な物品に利用できる。
以上、実施の形態1〜3で説明されたカルサイト型炭酸カルシウムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
1 結晶

Claims (10)

  1. カルサイト型炭酸カルシウムであって、
    複数の結晶を有し、
    前記複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長して球晶となり、外形上は略球状を有し、
    前記略球状の平均粒径が5μm〜40μmである、カルサイト型炭酸カルシウム。
  2. 前記複数の結晶のそれぞれは、針状を有する、請求項1記載のカルサイト型炭酸カルシウム。
  3. 水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程と、
    前記炭酸化工程での工程管理温度が、18℃〜65℃であることを備え、
    複数の結晶を有し、前記複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長して球晶となり、外形上は略球状を有する球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法であって、
    前記炭酸化工程において、炭酸化率が1〜5%までの反応速度を2mol%/min以下とし、炭酸化率が5〜10%における反応速度を0.16mol%/min〜0.24mol%/minとし、炭酸化率10%以降の反応速度を1.1mol/min以下とする、球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  4. 前記炭酸化工程において、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%未満においては、前記工程管理温度が、20℃〜55℃である、請求項3記載の球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  5. 前記炭酸化工程において、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%以上においては、前記工程管理温度が、20℃〜60℃である、請求項3または4記載の球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  6. 前記炭酸化工程の前、または最中の少なくともいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を、前記水酸化カルシウム水懸濁液中の水酸化カルシウムに対して、前記縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩に含まれる燐の含有量が0.03重量%から1.5重量%の範囲の範囲になるように、1回以上添加する工程を更に含んで製造される、請求項3から5のいずれか記載の球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  7. 前記縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩は、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が、25%未満の段階で、1回のみ添加される、請求項6記載の球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  8. 水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素ガスを添加する炭酸化工程と、
    前記炭酸化工程での工程管理温度が、18℃〜65℃であって、
    前記炭酸化工程において、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%未満においては、前記工程管理温度が、20℃〜55℃であって、
    前記炭酸化工程において、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が10%以上においては、前記工程管理温度が、20℃〜60℃であって、
    前記炭酸化工程において、炭酸化率が1〜5%までの反応速度が2mol%/min以下であり、炭酸化率が5〜10%における反応速度が0.16mol%/min〜0.24mol%/minであり、炭酸化率10%以降の反応速度が1.1mol/min以下であって、
    前記炭酸化工程の前、または最中の少なくともいずれかの時点で、縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩を、前記水酸化カルシウム水懸濁液中の水酸化カルシウムに対して、前記縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩に含まれる燐の含有量が0.03重量%から1.5重量%の範囲になるように、1回以上添加する工程を更に含み、
    前記縮合燐酸あるいはそのアルカリ金属塩は、前記水酸化カルシウム水懸濁液の炭酸化率が、25%未満の段階で、1回のみ添加される工程を備え、
    複数の結晶を有し、
    前記複数の結晶のそれぞれが、一つの位置から放射状に略同一長に成長して球晶となり、外形上は略球状を有する、球晶のカルサイト型炭酸カルシウムの製造方法。
  9. 請求項1または2記載のカルサイト型炭酸カルシウムを含む充填剤が充填されて得られる素材。
  10. 前記素材は、顔料、化粧料、増量剤、研磨剤、研磨助剤のいずれかである請求項記載の素材。

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