漏洩同軸ケーブルは、同軸ケーブルの外部導体上にスロット(孔、開口)等の電磁波漏洩機構を設け、係る電磁波漏洩機構により、同軸ケーブルの内部と外部空間との間で電磁エネルギーの受渡しを実施するものである。漏洩同軸ケーブルの代表的な適用用途例としては、列車、自動車、歩行者などの、帯状の領域を移動する移動体との移動体通信分野等が挙げられる。このような漏洩同軸ケーブルは、無線通信一般、無線信号伝送、無線位置検知システムのほか、無線エネルギー伝送等、広く無線システムに適用できるものである。
図1は、従来の漏洩同軸ケーブル1の一例を示す、一部を切欠いた斜視図である。図1の漏洩同軸ケーブル1は、内部導体2と、かかる内部導体2の周囲に形成される絶縁体4と、絶縁体4の周囲に形成される外部導体5と、外部導体5の周囲に形成される外被6を備えている。また、漏洩同軸ケーブル1の外部導体5には、ケーブル軸方向(z軸方向。図1の矢印方向。)に対して一定周期長P毎に、略矩形の長孔状のスロット3が設けられている。図1に示すように、スロット3は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜している。
図1のようなスロット3の列(スロット列)を持つ漏洩同軸ケーブル1の形成する漏洩電磁界の軸周方向電界成分は、スロット列による励振源を、軸上に分布する軸方向磁流源と近似し、それのつくる電磁界を計算することで近似的に解析される。
ここで、漏洩同軸ケーブル1の片端からは、z軸の正方向に、漏洩同軸ケーブル1内を伝搬する伝送波電力が入力される。漏洩同軸ケーブル1の外部導体上のスロット列が、この伝送波により励振され、それによって生じる軸方向磁流源列Imzは、下記式(4)のように表すことができる。
スロット列は通常、ケーブル軸方向(z軸方向)に対して周期的に設けられる。そこで、このz軸方向の周期長をP[m]とおくと、式(4)に表される励振係数分布関数C(z)についても周期長Pの関数となる。すなわち、式(5)のように表される。
ここで、このC(z)を、複素フーリエ級数展開形で表すと、下記式(6a)及び式(6b)となる。
式(6a)を式(4)に代入し、式(6a)を代入した式(4)を式(3)に代入して、式(1)及び式(2)で表される外部電磁界の各成分を求めると、円筒座標系(r,φ,z)での各成分は、下記式(7)〜式(9)のように空間高調波展開形で表すことができる。
式(7)〜式(9)の空間高調波展開形において、n次の空間高調波のz軸方向の位相定数はβnであることが分かる。したがって、|βn|>k、すなわちk2−βn 2>0を持たす場合の空間高調波は、軸方向の位相速度が光速よりも速い。それに対して、|βn|<k、すなわちk2−βn 2<0を満たす場合の空間高調波は、軸方向の位相速度が光速よりも遅い。そのため、前者の空間高調波は速波、後者の空間高調波は遅波と呼ばれている。
また、式(7)〜式(9)に表されるように、速波のr方向の変化は第二種ハンケル関数形であるのに対し、遅波のそれは変形ベッセル関数形である。変形ベッセル関数は、第二種ハンケル関数に比較してrの増大に対して急速に減少する。そのため、漏洩同軸ケーブルのごく近傍を除いての漏洩電磁界については、後者の遅波を無視して、式(7)〜式(9)を、下記式(11)〜式(13)のように近似して表すことができる。
ここで、式(14)〜式(16)で表される各空間高調波の伝搬方向、すなわち各空間高調波の外部への放射角度を求めておく。
図2は、漏洩同軸ケーブル1において、速波となる各空間高調波の遠方界におけるポンティングベクトルの方向、つまり放射角度θnの定義の仕方を表す説明図である。ここで、図2の漏洩同軸ケーブル1の一端には伝送波電力発生器8が、他端には終端器9が接続されている。
放射角度θnを図2のようにr方向(ケーブル軸垂直方向)を基準に定義したとき、速波となる各空間高調波のポインティングベクトルの方向、つまり電磁エネルギーの伝搬方向である放射角度θnは、式(19)のように表される。尚、ここで、式(17)〜式(18)を使用している。
式(19)において、前記した式(10)、並びに下記式(20)及び式(21)を代入すると、式(22)のように書き換えることができる。
また、同軸ケーブル内の管内波長短縮率νは、通常、下記式(X)のようにν≦1となるため、式(22)内の整数nのとりうる範囲は、通常は負の整数のみとなる。
式(22)の関係を、横軸を周波数fの関数として図示すると、図3のように表される。図3は、漏洩同軸ケーブル1において、速波となる各空間高調波のポインティングベクトルの向き(放射角度θn)を周波数の関数として表示した場合の説明図である。
式(7)〜式(9)で表される外部電磁界を式(11)〜式(13)で近似して表す場合の条件、すなわち各空間高調波の速波となる条件は、下記式(23)である。
これより、βnの範囲は、下記の式(24)に変形される。
この式(24)に、式(10)、式(20)を代入し、さらに前記した前提条件である式(X)(以下に再記する。)を用いると、各n次空間高調波に対する、速波となる周波数の条件は、式(25)の範囲として表される。
ところで、次数の異なる速波となる空間高調波が2つ以上存在すると、それぞれ前記した式(22)で表される伝搬方向θnが異なるため、相互に位相干渉を起こして外部漏洩電磁界の観測点位置による変動が生じる。これは、式(14)〜式(16)において、nの次数によりr方向、及びz方向の位相定数が異なっていることからも理解される。
よって、安定した外部漏洩電磁界を実現させるためには、使用周波数帯域で速波となる空間高調波のうち、使用する唯一つのものを除いて、それ以外の空間高調波については充分に抑圧させる必要がある。
また、このような漏洩同軸ケーブルには、広帯域特性が要求されることがある。広帯域特性が要求される背景としては、例えば、漏洩同軸ケーブルを無線システムに使用する際において、一本の漏洩同軸ケーブルを複数の無線システムないしは無線通信システムに対して共用使用する要求のある場合がある。このとき、各無線システムで使用される周波数帯域は、一般にそれぞれ異なるので、それらで共用使用される漏洩同軸ケーブルについては、より広い周波数帯域に渡って良好に動作する広帯域特性が要求されるからである。
かかる広帯域特性の要求に対応して、これまでに種々の広帯域型の漏洩同軸ケーブルが発明、提案されてきた。例えば、外部導体上の漏洩用のスロットに関して、半周期長P/2内に励振係数(励振強度とも呼ばれる。)の異なる2個の主スロットと2個の副スロットという二種類のスロットを組み合わせた漏洩同軸ケーブルが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、一周期長P内に複数個のスロットを設け、各スロットの励振係数分布(波源強度分布とも呼ばれる。)を一周期長P内において、正弦波状に変化させることが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
以下、本発明の一態様について、図面を用いて説明する。
[従来の漏洩同軸ケーブル1の説明]
まず、同軸ケーブルの外部導体5に漏洩電磁界形成用のスロット3が列状に設けられスロット列を形成した、従来の漏洩同軸ケーブル1の構成及び問題点等を説明した上で、本発明に係る漏洩同軸ケーブル1の構成等を説明する。
前記した[背景技術]の段落番号0041段から0042段でもふれたように、次数の異なる速波となる空間高調波が2つ以上存在すると、それぞれ前記した式(22)で表される伝搬方向θnが異なるため、相互に位相干渉を起こして外部漏洩電磁界に観測点位置による変動が生じる。これは、式(14)〜式(16)において、nの次数によりr方向、及びz方向の位相定数が異なっていることからも理解される。
よって、安定した外部漏洩電磁界を実現させるためには、使用周波数帯域で速波となる空間高調波のうち、使用する唯一つのものを除いて、それ以外の空間高調波については十分に抑圧させる必要がある。
(1)従来の漏洩同軸ケーブル1の一例:
前記した抑圧の関係を具体的に表すために、従来の漏洩同軸ケーブル1の一例を示して説明する。なお、以下の説明においては、前記した内容と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
まず、従来の漏洩同軸ケーブル1の一例として、図4の上段に示すような、半周期長毎にスロット傾斜角度が反転する漏洩同軸ケーブルの特性を表す。図4は、従来の漏洩同軸ケーブル1の一例を示した説明図である。なお、図4にあっては、図1に示した従来の漏洩同軸ケーブル1と同様、内部導体2と、かかる内部導体2の周囲に形成される絶縁体4と、絶縁体4の周囲に形成される外部導体5と、外部導体5の周囲に形成される外被6を備えており、図4では、説明の便宜上、外部導体5及びかかる外部導体5に形成されたスロット3を中心に示している。また、図4において、「上段」とは、漏洩同軸ケーブル1を載せている部分、「下段」とは、zとC(z)との関係を載せた部分、をそれぞれ指す(以下、図5、図6、図9についても同様。)。
図4の上段に示した、従来の漏洩同軸ケーブル1は、一周期長内に2個のスロット3を周期的に持ち、2個のスロット3の中線から見て励振係数分布が対称となるように反転される関係にある。図4におけるz=−P/4及び3P/4位置のスロット3の励振係数はa0、z=P/4(及び−3P/4)位置のスロット3の励振係数は−a0となる(a0、−a0については下記も参照。)。
図4の上段に示すような漏洩同軸ケーブル1の場合、式(4)で表される励振係数分布関数C(z)、すなわち、「スロット3の列(スロット列)により生じる軸方向磁流源Imz(z)の、ケーブル内伝送波に対する比率」であるC(z)については、図4の下段に示すように、Diracのデルタ関数δ(z)を用いて、近似的に、式(28)のように表される。
この式(28)を式(6b)に代入すると、C(z)の複素フーリエ展開の展開係数であるCnは、下記式(29)のようになる。式(29)より、C−1、C−2,C−3、C−4、……については、下記式(30)のような関係となる。
ここで、C−2は零となるが、式(11)〜式(13)に示すように各空間高調波の振幅はCnの大きさに比例した量であるので、この場合、−2次の空間高調波が抑圧されることになるのが分かる。
このような漏洩同軸ケーブル1に対して、n=−1次の空間高調波を使用することを考えると、n=−1次の空間高調波のみが速波となる、安定した外部漏洩電磁界を実現できる領域は、図3からも分かるとおり、n=−1次の速波下限周波数からn=−3次の速波下限周波数までの範囲、すなわち、式(25)より、下記式(31)で表される周波数範囲となる。
次に、従来の漏洩同軸ケーブル1の他の例として、安定した外部漏洩電磁界が期待でき、式(31)で表される周波数範囲をより広げることのできる漏洩同軸ケーブル1について説明する。
図5は、従来の漏洩同軸ケーブル1の他の例を示した説明図である。なお、図5にあっても、説明の便宜上、漏洩同軸ケーブル1については、外部導体5及びかかる外部導体5に形成されたスロット3を中心に示している。
図5の上段に示した漏洩同軸ケーブル1は、前記した特開昭53−72553号公報(特許文献1)に示されるように、半周期長内に2個の主スロット3と2個の副スロット3を持つ。なお、図5の上段において、スロットに対する符号3は、スロットの一部のみについて付している。
さらに説明すると、図5の上段に示した従来の漏洩同軸ケーブル1は、半周期長内に2個の主スロットと2個の副スロットを持ち、図5上、as(あるいは−as)と付したスロット3が、励振係数をas(あるいは−as)とした主スロットであり、at(あるいは−at)と付したスロット3が、励振係数をat(あるいは−at)と付した副スロットとなる。半周期長内の中心点(例えば、図5下段の−P/4あるいはP/4に相当する位置。)に関して主スロットと副スロットとがそれぞれ対称位置にある。又、中点(例えば、図5下段の0に相当する位置。)から見て励振係数分布が対称となるように反転される関係にある。
図5の上段に示すような漏洩同軸ケーブル1の場合、式(4)で表される励振係数分布関数C(z)については、図5の下段に示すように、Diracのデルタ関数δ(z)を用いて、近似的に、式(32)のように表される。
また、この図5の上段に示されるような漏洩同軸ケーブル1の場合、式(4)で表される励振係数分布関数C(z)については、Diracのデルタ関数δ(z)を用いて、近似的に、図5の下段に示されるような形となる。
ここで、図5の下段のz軸座標の原点の位置の取り方は、励振係数の反転する隣り合う副スロット間の間隔の中心位置としている。
このとき、式(6b)で表されるC(z)の複素フーリエ展開の展開係数であるCnは、式(32)を代入して、式(33)のように表される。
ゆえに、C−1、C−2,C−3、C−4、C−5、……について、下記式(34)のような関係となる。
ここで、二種類のスロットの励振係数比at/asを、式(35)の関係となるように規定する。このとき、式(34)より、C−1、C−2,C−3、C−4、C−5、……は、下記式(36)のようになる。
このような漏洩同軸ケーブル1に対して、n=−1次の空間高調波を使用する場合、n=−1次の空間高調波のみが速波となる安定した外部漏洩電磁界を実現できる領域は、C−2〜C−4が零、すなわち抑圧されているため、前記した図3に示すように、n=−1次の速波下限周波数からn=−5次の速波下限周波数までの範囲となる。
すなわち、前記した式(25)より、下記式(37)の周波数範囲となる。
この式(37)の周波数範囲と式(31)の周波数範囲とを比較すると、前者の方がn=−5次の速波下限周波数までに対応できるため、より広帯域な特性を持つ漏洩同軸ケーブル1となっていることが分かる。
しかしながら、このような広帯域な特性を持つ漏洩同軸ケーブル1についても、次のような問題がある。前記したように、例えば、n=−1次の空間高調波を使用するときには、外部漏洩電磁界はn=−1次のCn、つまりC−1に比例したものとなることが式(7)〜式(9)より分かる。つまり、外部漏洩電磁界の強さとしては、|C−1|の量に比例した量となり、漏洩同軸ケーブル1からの外部漏洩電磁界強度を増加させたい場合には、|C−1|値を大きくする必要がある。
一方、C−1は式(34)の第1式、あるいは式(36)の第1式に示されるように、下記式(38)のような関係となる。
ここで、ds値及びdt値についてはスロット間の間隔長であるので極度に小さくすることはできないし、また、極度に大きくすると、逆に半ピッチ先のスロット3との間隔長が極度に小さくなるので、設定に制約がある。
次に、|C−1|値を大きくするためには、スロット3の励振係数であるas値、at値を大きくする方法があるのが分かる。しかし、スロット3の励振係数as値、at値、を大きくするためには、一般にはスロット3の物理的寸法を変化させる必要がある(例えば、「LCX通信システム」p.17:非特許文献1。)。しかしながら、この場合も、先のds値及びdt値の場合と同様に、スロット間の間隔長の制約や、漏洩同軸ケーブル1の外部導体5の外径寸法に起因する制約があるため、必ずしも十分に大きくできない場合がある。
さらに又、|C−1|値の大きくするためには、周期長であるP値を小さくすればよいのが分かる。しかし、P値については、式(37)で示されるように、使用周波数帯に応じて設定する必要があるため、調整できる範囲に制約がある。
また、それ以上に問題となるのが、使用周波数帯によっては、逆に周期長であるP値を大きく取る必要のある場合である。この場合、それに応じて|C−1|値が小さくなってしまうため、その結果として、外部漏洩電磁界強度が減少してしまうことになる。
[本発明に係る漏洩同軸ケーブル]
本発明では、以上の問題を解決するため、以下の構成を備えた漏洩同軸ケーブル1を提供するものである。
図6は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル1の構成の一例を示した説明図を示す。図6に示した本発明に係る漏洩同軸ケーブル1は、図1に示した従来の漏洩同軸ケーブル1と同様、内部導体2と、かかる内部導体2の周囲に形成される絶縁体4と、絶縁体4の周囲に形成される外部導体5と、外部導体5の周囲に形成される外被6を備えており、図6では、説明の便宜上、外部導体5及びかかる外部導体5に形成されたスロットを中心に示している。
本発明に係る漏洩同軸ケーブル(Leaky CoaXial cable:LCXケーブル)1は、内部導体2、絶縁体4、外部導体5及び外被6を備える(図6では内部導体2、絶縁体4及び外被6は図示しない、これらを備え、基本的な構成を共通する図1を参照。)。
内部導体2、絶縁体4,外部導体5及び外被6に用いる材料等については、特に限定するものではないが、内部導体2は、例えば、銅等の金属等、絶縁体4は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂、あるいはポリエチレン紐等を内部導体2に巻き付けて形成したもの等を用いることができる。また、外部導体5には、例えば、金属テープにスロット加工を施したもの等、外被6は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂をそれぞれ用いることができるが、特にこれらには限定されない。
本発明に係る漏洩同軸ケーブル1は、同軸ケーブル(一般的な同軸ケーブルの構造を指す。)の外部導体5に、漏洩同軸ケーブル1のケーブル軸方向(z軸方向)に沿って漏洩電磁界形成用のスロット3が列状に設けられ、スロット列が形成されている。また、漏洩同軸ケーブル1の外部導体5に、ケーブル軸(図6参照。)に対して一定周期長(周期長P)毎に形成されている長孔状のスロット3は、長手方向をz軸方向に対して所定の角度で傾けて配列された斜めスロットであり、これらスロット列によるケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布が軸方向に対して周期長Pを有する。
図6の上段に示した漏洩同軸ケーブル1において、周期長P内のスロット3の数は、実効励振係数が零であるスロットを除いて12個(半周期長あたりは6個)である。かかる12個のスロット3における連続する6個のスロット3で形成される第1のスロット列及び第2のスロット列は、半周期長P/2毎に、第1のスロット列及び第2のスロット列の境界(後記するz軸座標の原点等。)から見て励起係数分布が対称となるように反転される関係にある。また、図5の上段に示した漏洩同軸ケーブル1と同様に、半周期長あたりの励振係数の異なるスロット3の種類は二種類である。
なお、図6の上段にあって、()内の数字は、対応する(図6の上段で()の下に示されている。)スロット3のスロット番号であり(例えば、(1)の下に示されるスロット3は第1スロットを指し、(2)、(3)、……、(12)は、第2スロット、第3スロット、……、第12スロットを指す。)、また、各スロット3の上に示される「a」は、対応するスロット3のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数(以下、単に「励振係数」とする場合もある。)であり(例えば、a1は第1スロットを指し、a2、a3、……、a12は、第2スロット、第3スロット、……、第12スロットの励振係数を指す。)である。また、第1のスロット列は、第1のスロット〜第6のスロット、第2のスロット列は、第7のスロット〜第12のスロットによりそれぞれ構成される。
図6に示した漏洩同軸ケーブル1において、半周期長ごとに見ると、例えば、第1のスロット列について、第3、第4スロットを共通する励振係数(aB)を示すスロットB、第1、第2、第5、第6スロットを共通する励振係数(aA)を示すスロットAとして、また、第2のスロット列について、第9、第10スロットを共通する励振係数(−aB)を示すスロットB、第7、第8、第11.第12スロットを共通する励振係数(−aA)を示すスロットAとすることができる。このように、半周期長あたりの励振係数の異なるスロット3の種類は二種類(スロットA、スロットB)である。また、前記したように、第1のスロット列は、第1スロット〜第6スロット、第2のスロット列は、第7スロット〜第12スロットで形成され、z軸座標の原点を第6スロットと第7スロットの中間の位置に取るものとすると(原点については、後記する式(42)の説明も参照。)、かかる原点から見て、第1のスロット列及び第2のスロット列は励起係数分布が対称となるように反転される関係にある。
図6に示すように、漏洩同軸ケーブル1にあっては、二種類のスロット3(スロットA、スロットB)について、2個の同種のスロット3が2個ずつ並んでいる構成をとっている。隣接する2個の同種のスロット3のうち、スロットAの組を1組のX(例えば、2個のスロットAの組。「AA」と示す。)、スロットBを1組のY(例えば、2個のスロットBの組。「BB」と示す。)とすると、半周期長(P/2)での並びは、第1のスロット列、第2のスロット列とも、X−Y−X(図6にあってはAA−BB−AA)となっている。
このように、第1のスロット列については、2個のスロットB(第3スロット及び第4スロット)の組を、2個のスロットA(第1スロット及び第2スロット、第5スロット及び第6スロット)の組で挟み込むようにしている。第2のスロット列についても、2個のスロットB(第9スロット及び第10スロット)の組を、2個のスロットA(第7スロット及び第8スロット、第11スロット及び第12スロット)の組で挟み込むようにしている。
また、第1のスロット列及び第2のスロット列は、前記した原点(第6スロットと第7スロットの中間の位置)から見ても、X−Y−X(図6にあってはAA−BB−AA)の並びとなっており、原点から見て対称(励振係数分布も対称)となるように反転される関係にある。
尚、ここで、図6では、特徴的な一例として、aB>aAの場合の図を表している。しかし、この場合に限定されるものではない。すなわち、aA>aBの場合であってもよい。さらに又、ある条件下においては、後述するように、aB=aAの場合であってもよい。
このような漏洩同軸ケーブル1の励振係数分布関数C(z)は、Diracのデルタ関数δ(z)を用いて、近似的に、図6の下段に示すような形状となる。
但し、ここで、
・P :スロット列のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布の、軸方向の周期長[m]
・P/2:スロット列のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布の、軸方向の半周期長[m]
・ds :第sスロットと、第(s+1)スロットとのスロット間隔長[m]
(但し、d12は、第12スロットと第1スロットとのスロット間隔長とする。)
・as :第sスロットの、ケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数[m]
・s :励振係数が零であるスロットを除いた、一周期長P内のスロットのスロット番号であり、1〜12の整数
である。
このとき、式(6b)のCnについては、下記式(40)のように表される。なお、以下の説明において、Pは、「スロット列のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布の、軸方向の周期長」を、P/2は、「スロット列のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布の、軸方向の半周期長」を、それぞれ示す(以下のP及びP/2についても同じ。)。
ここで、各スロット3のスロット間隔長を、図6の上段に示すように、dsと書き表すようにし(dsの定義については、前記したとおりである。)、スロット間隔長dsについて、下記式(41)を満たすように設定する(なお、「≡」は「定義する。」を意味する。他も同じ。)。
式(41)に関し、dAについては、第1のスロット列、第2のスロット列それぞれについて、隣接する2個のスロットAの間隔長が等しいことを示し(ただし、第1のスロット列と第2のスロット列の両方に跨る、第1スロットと第12スロットの間隔長(d12)、第6スロットと第7スロットの間隔長(d6)は除き、これらについては後記する。)、同様に、dBについては、隣接する2個のスロットAとスロットBの間隔長が等しいこと、dCについては、隣接する2個のスロットBの間隔長が等しいこと、をそれぞれ示している。そして、図6からわかるように、{P/2−(2dA+2dB+dC)}で表されるd6とd12が正であるようにしている。
z軸座標の原点位置の取り方については任意であるが、ここでは、図6の下段に示すように、図6の上段に表す第6スロットと第7スロットの中間の位置に取るものとすると、各スロットのz軸の位置座標zsについては、下記式(42)のように表されることが分かる。
さらに、各スロット3の励振係数について、図6の下段に示すように、下記式(43)となるように設定するものとする。
式(43)に関し、aAは、スロットAの励振係数(ケーブル軸周方向電界成分に対する励振係数)の絶対値が等しいこと、aBは、スロットBの励振係数(ケーブル軸周方向電界成分に対する励振係数)の絶対値が等しいことを示している。
以上のように、図6に示した漏洩同軸ケーブル1は、外部導体5に形成されるスロット3についての隣接する2個のスロット間の間隔長d、及びスロット3の有する励振係数a(ケーブル軸周方向電界成分に対する励振係数)について、前記した関係(式(41)、式(43))としている。例えば、先行文献2の技術にあっては、各スロットの励振係数(波源強度)をそれぞれ正弦波状に変化させる必要があったが、本発明にあっては、スロット3の励振係数の異なる種類を二種類に抑えているため、製造コストが増大することを抑えることに役立つ。
このとき、式(42)及び式(43)を式(40)に代入してCnを表すと、下記のとおりとなる。また、変形してまとめると、式(44)のようになる。
さらに変形すると、式(45)のようになる。
ゆえに、式(46)のようになる。
ここで、下記式(47)の関係となるように、二種類のスロットの励振係数の比を規定すると、C−1、C−2,C−3、C−4、C−5、C−6,C−7、C−8、C−9、……は、下記式(48)のようになることがわかる。
したがって、C−2〜C−4が零、すなわち抑圧されているため、n=−1次の速波下限周波数からn=−5次の速波下限周波数までの範囲、つまり、式(25)より、下記式(49)の周波数範囲で、安定した外部電磁界を実現できる、広帯域性を持つ漏洩同軸ケーブルであることが分かる。
このように、半周期長(P/2)内における励振係数の異なるスロットの種類を二種類に抑えたまま、半周期長内のスロット数を6個に増やした場合においても、n=−1次の速波下限周波数からn=−5次の速波下限周波数までの周波数範囲で、広帯域な特性を示す漏洩同軸ケーブルが実現できることが分かる。例えば、周期長P値を大きく取る必要がある場合に、従来の技術では、|C−1|値が減少してしまう一方、本発明では、そのようなことを伴わずに、漏洩電磁界強度について従来技術レベルを維持し、ないしは向上を図ることができる。加えて、漏洩同軸ケーブル1の外部導体径寸法が小さくなる場合、従来技術では、励振係数(as、at)が、物理的寸法の制約から小さく設定せざるを得なくなり、その結果として漏洩電磁界強度が低下してしまう問題が生じるが、本発明においては、そのような場合においても、漏洩電磁界強度について従来技術レベルを維持し、ないしは向上を図ることができる。
なお、前記の関係において、スロット間隔長となるdA、dB及びdCのうち少なくとも二つが等しいようにすることが好ましい。スロット間隔長を等しくさせる(スロット間隔長を統一化する)ことにより、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減を実現する。又、スロット間隔長を等間隔化することにより、外部導体5の機械的強度の向上を図ることもできる。
例えば、二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)を、式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdBを等しく(dA=dB)設定することができるのが分かる。
また、例えば、二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)を、式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dBとdCを等しく(dB=dC)設定することができるのが分かる。
さらに、例えば、二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)を、式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdCを等しく(dA=dC)設定することができるのが分かる。
さらに、dA、dB、dCの全てが等しい(dA=dB=dC)場合には、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減をより効率的に実現する。スロット間隔長を等間隔化することにより、外部導体5の機械的強度の更なる向上を図ることもできる。二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)を、式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdBとdCとを等しく(dA=dB=dC)設定することができるのが分かる。
さらにあるいは、二種類のスロットの励振係数(aA、aB)を等しくする、つまりは、一種類のスロットとする場合にも、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減を同様又はそれ以上に図ることができる。スロット間隔長dA、dB、及びdCの、それぞれの周期長Pとの比率(dA/P、dB/P、及びdC/P)の関係性について、式(47)より、下記の関係(後記する式(Y)と共通。)となるように規定することにより、aA、aBとを等しく(aA=aB)設定することができるのが分かる。
前記の段落番号0167段(式(47))の関係において、スロット間隔長dA、dB、及びdCの、それぞれの周期長Pとの比率(dA/P、dB/P、及びdC/P)について、下記の関係となるように規定することにより、さらなる広帯域化を図ることができる。
この関係を満たす場合、式(48)において、C−2〜C−6が零となることが分かる。すなわち、n=−2次からn=−6次までの空間高調波が抑圧されているため、n=−1次の速波下限周波数からn=−7次の速波下限周波数までの範囲、つまり、式(25)より、下記の関係となる、より広い周波数範囲で、安定した外部電磁界を実現できる、広帯域性を持つ漏洩同軸ケーブルとなることが分かる。
前記式(50)の関係において、スロット間隔長となるdA、dB及びdCのうち少なくとも2つが等しいようにすることが好ましい。スロット間隔長を等しくさせる(スロット間隔長を統一化する)ことにより、製造の簡便性、製造コストの削減を実現する。また、スロット間隔長を等間隔化することにより、外部導体5の機械的強度の向上を図ることができる。
例えば、スロット間隔長dAとdCの、それぞれの周期長Pとの比率である、dA/P値とdC/P値との関係、及び二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)とそれらとの関係について、式(50)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdBを等しく(dA=dB)設定することができるのが分かる。
また、例えば、dA/P値とdB/P値との関係、及びそれらのaA/aB値との関係について、式(50)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dBとdCを等しく(dB=dC)設定することができるのが分かる。
さらに、例えば、dA/P値とdB/P値との関係、及びそれらのaA/aB値との関係について、式(50)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdCを等しく(dA=dC)設定することができるのが分かる。
さらに、dA、dB、dC全てが等しい(dA=dB=dC)場合には、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減をより効率的に実現する。スロット間隔長を等間隔化することにより、外部導体5の機械的強度の更なる向上を図ることができる。dA/P値、dB/P値、dC/P値、及びaA/aB値を、式(50)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dA、dB、dC全てを等しく(dA=dB=dC)設定することができるのが分かる。
さらにあるいは、二種類のスロットの励振係数(aA、aB)を等しくする、つまりは、一種類のスロットとする場合にも、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減を同様又はそれ以上に図ることができる。dA/P値、dB/P値、及びdC/P値を、式(50)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、aA、aBとを等しく(aA=aB)設定することができるのが分かる。
尚ここで、式(Y)、式(Z)に対して、独立して設定できる変数(独立変数)は、{dA/P、dB/P、dC/P}の三つが存在している。したがって、この二つの式である、式(Y)、式(Z)の両者を満足できる、{dA/P、dB/P、dC/P}の組み合わせについては、無限組の組み合わせが存在する。
前記式(50)(以下に再記する。)の関係において、周期長P、並びにスロット間隔長となるdA、dB及びdCの関係性について、下記式(52)の関係となるように設定することにより、さらなる広帯域化を図ることができる。
尚ここで、式(50)、式(52)に対して、独立して設定できる変数(独立変数)は、{dA/P、dB/P、dC/P}の三つが存在している。したがって、この二つの式である、式(50)、式(52)の両者を満足できる、{dA/P、dB/P、dC/P}の組み合わせについては、無限組の組み合わせが存在する。
この関係を満たす場合、式(48)において、C−2〜C−8が零となることが分かる。すなわち、n=−2次からn=−8次までの空間高調波が抑圧されているため、n=−1次の速波下限周波数からn=−9次の速波下限周波数までの範囲、つまり、式(25)より、下記式(53)の関係となる、さらにより広い周波数範囲で、安定した外部電磁界を実現できる、広帯域性を持つ漏洩同軸ケーブルとなることが分かる。
前記式(50)、及び式(52)の関係において、スロット間隔長となるdAとdBとを等しいようにすることが好ましい。スロット間隔長を等しくさせる(スロット間隔長を統一化する)ことにより、製造の簡便性、製造コストの削減を実現する。また、スロット間隔長を等間隔化することにより、外部導体5の機械的強度の向上を図ることができる。
スロット間隔長dA、dB、dCの、それぞれの周期長Pとの比率である、dA/P値、dB/P値、dC/P値、及び二種類のスロットの励振係数比(aA/aB)を、式(50)、式(52)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、dAとdBを等しく(dA=dB)設定することができるのが分かる。
さらにあるいは、二種類のスロットの励振係数(aA、aB)を等しくする、つまりは、一種類のスロットとする場合にも、漏洩同軸ケーブル1の製造の簡便性、製造コストの削減を同様又はそれ以上に図ることができる。dA/P値、dB/P値、及びdC/P値を、式(50)、式(52)、及び式(47)より、下記の関係となるように規定することにより、aA、aBとを等しく(aA=aB)設定することができるのが分かる。
以上説明したように、本発明に係る漏洩同軸ケーブル1は、外部導体5に形成されるスロット3に関し、隣接する2個のスロットの間隔長d、スロット3のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数aAとaBとの比(aA/aB)を特定の関係としているので、半周期長(P/2)内におけるスロットの励振係数の異なる種類を二種類に抑えたまま、半周期長内のスロット数を6個(一周期長内に12個)に増やすことができるため、漏洩電磁界強度の維持ないし向上と、製造コスト増大の抑制の両立に好適な広帯域型の漏洩同軸ケーブル1を実現することができる。
かかる本発明に係る漏洩同軸ケーブル1は、各種の無線システム(無線通信システム)の高品質化、経済化に寄与することができる。適用可能な無線システムとしては、例えば、列車と地上との無線連絡を目的として新幹線沿いに布設される漏洩同軸ケーブル1を備えた無線システムや、地下鉄構内や地下街に漏洩同軸ケーブルを布設して、地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用される無線システム、所定の位置検知用途、及び道路トンネルにおける無線通信に使用される無線システム等が挙げられるが、特にこれらには限定されない。
さらに、本発明に係る漏洩同軸ケーブル1を、例えば、特許第3777577号等により開示される無線電力供給システム等のエネルギー伝送(エネルギー送電)等の無線システムに適用するようにしてもよい。このように、本発明の漏洩同軸ケーブル1を、電磁波の送受信手段として必要とする種々の無線システム等に適用させることができる。
[実施形態の変形]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
例えば、前記した実施形態では、本発明に適用される、ケーブル軸周方向漏洩電界形成用のスロット3は、図1、図4ないし図6等で矩形の傾斜スロット3を例示して説明したが、スロット3はかかる矩形の傾斜スロット3に限らず、例えば、図7に示すような折れ線型スロット3や、図8に示すような、電流を励振、移相する等するための励振スタブ7を付加した励振スタブ付きスロット3等の、ケーブル軸周方向漏洩電界を形成する、任意の形状を有するスロット3を用いてもよい。図7は、スロット3の他の例であり、折れ線型スロット3の一態様を示した説明図である。また、図8は、スロットの他の例であり、励振スタブ付きスロット3の一態様を示した説明図である。図8中、7は励振スタブ、を示す。
本発明に係る漏洩同軸ケーブル1におけるスロット列の周期長Pの定義についての注意点を説明する。周期長P[m]を決めるにあたっては、ケーブル軸周方向漏洩電界に対する励振係数がほぼ零であるスロット(例えば、ケーブル軸に平行な長孔状スロット、またはケーブル軸に垂直な長孔状のスロット等。以下、「零スロット」と呼ぶ場合もある。)は無視して決めるものとする。図9は、零スロット3zが存在する漏洩同軸ケーブルの構成の一例を示した説明図である。図9に示すように、例えば、所定の周期長(図9では2Pe)毎に励振係数がほぼ零である零スロット3z(ケーブル軸方向に平行なスロット3z)が存在していて、形式的な周期長がPfとなっていた場合には、このような励振係数がほぼ零であるスロット3zを無視して決められるスロット3の周期長Peを、本発明においての周期長Pとするものである。
なお、スロット3の励振係数a(a1〜a12、aA、aB、aA/aB)、及びスロットの間隔長d(d1〜d12、dA、dB 、d C、dA/P、dB/P、dC/P等。)については、本発明にあっては、等式により所定の関係を示しているが、それについては許容範囲が存在する。それは次のような理由による。
本発明においては、前記したように、安定した外部漏洩電磁界を実現させるためには、使用周波数帯で速波となる空間高調波のうち、使用する唯一つのものを除いて、それ以外の空間高調波については十分に抑圧させる必要がある。
外部漏洩電界Eφは、前記した式(14)にもあるように、以下のように表される。
本発明においては、n=−1次の空間高調波を使用し、使用周波数帯で速波となるそれ以上の高次の空間高調波を充分に抑圧させる。これは、前記したとおりである。今、仮に、この高次の空間高調波の抑圧が完全に零に最適化されない場合は、どのような現象が発生するのかを考察する。
式(57)で表される外部漏洩電界の安定度の指標となる、長手方向(z軸方向)に対する電界強度変動量[dB]を|ΔEφ|と表すと、|ΔEφ|[dB]は、以下のように表すことができる。
式(60)を式(59)に代入すると、式(61)のようになる。
ここで、使用するn=−1次の空間高調波の放射角度θ−1が極度に大きくならない場合(90°近くにならない場合)、つまり、√(cosθ―1)値が1よりもさほど小さくならない場合には、式(61)で表される電界強度変動量[dB]は、オーダー的に、下記式(62)と近似して表すことができる。
スロット3の励振係数a(a1〜a12、aA、aB、aA/aB)、及びスロット3の間隔長d(d1〜d12、dA、dB 、d C、dA/P、dB/P、dC/P等。)が本発明の記載の等式どおりの関係となれば、これは零になる。しかし、記載の等式が完全に成り立たない場合においても、実用上は問題の無い許容範囲が存在する。その程度を考察する。
許容できる電界変動量|ΔEφ|[dB]については、漏洩同軸ケーブルを適用しようとする対象の各種無線システムにより異なるが、一般的な無線通信システムに適用しようとする場合、通例、数dB程度は許容される場合が多い。
さらに許容電界変動量が大きい無線システムに適用する場合については、この許容範囲はさらに大きくなることは言うまでもない。
今、一例として、次のような場合を具体的に表す。
この式(63)、式(64)の関係を満たす場合、前記した式(46)より、各空間高調波のフーリエ展開係数Cnは、式(65)のようになる。
この場合、式(51)に示されるような周波数範囲で、n−1次の空間高調波のみが速波として存在する、安定した外部電界が実現できる。
一方、これに対して、式(63)や式(64)が完全に満たされない場合、どのようなかたちになるのかを以下に表す。
今、dA/P、dB/P、dC/P、及びaA/aBの値が、前記した式(63)、式(64)に対して、それぞれ、5%程度増大する場合、すなわち、下記式(66)及び式(67)の場合、式(46)の各空間高調波のフーリエ展開係数Cnを求めると、下記式(68)のようになり、式(65)のようにn=−3、−5次のCnが零からずれたものとなる。
よって、式(62)により、長手方向(z軸方向)の電界強度変動量|ΔEφ|[dB]を求めると、式(72)のようになる。
この式(72)に示される値のオーダーが、適用する無線システムの許容変動レベルに対して、ある程度小さいのならば、式(66)や式(67)に示される程度のずれは許容されることが分かる。なお、適用する無線システムの許容変動レベルがより大きいのであれば、この許容範囲はさらに広がることは言うまでもない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。