JP4028286B2 - 広帯域漏洩同軸ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は列車、自動車といった移動体との無線通信に使用するのに適する広帯域特性の漏洩同軸ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図13は従来の広帯域型漏洩同軸ケーブル1の一例を示す一部を切欠いた斜視図である。この広帯域型漏洩同軸ケーブルの外部導体5には、ケーブル軸に対して一定周期P毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット3が設けられている。各スロット3はケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜している。図13の広帯域型漏洩同軸ケーブルは内部導体2、絶縁体4、外部導体5、外被6を備えている。
【0003】
図13のように、周期的なスロット列を持つ漏洩同軸ケーブルの形成する漏洩電磁界の軸周方向電界成分は、スロット列を軸上に分布する軸方向磁流源と近似し、それがつくる電磁界を計算することで近似的に解析される。
【0004】
と表すことができる。但し、
Z軸:ケーブル軸
i :虚数
ω :角周波数
k :自由空間波数
μ0:自由空間中の透磁率
である。
【0005】
今、各スロットは、位相定数がβであるz軸の正の方向に伝搬するケーブル内伝送波により励振されているものとすると、軸方向磁流源Jmzは、
Jmz(z) = J(z)・A・exp(i(ωt−βz)) …(4)
但し、
J(z) :スロット列の励振係数分布関数
A :ケーブル内伝送波の振幅定数
β :ケーブル内伝送波の位相定数
t :時刻
と表され、スロット列の周期がPの場合、J(z)は周期Pの関数となるので、J(z)をフーリエ級数展開
して、式(1)〜(6)より電磁界を求めると、円筒座標系(r,φ,z)での各成分は、
但し、
Km :m次の第2種変形ベッセル関数
と空間高調波展開形で表される。
【0006】
式(7)〜(9)の空間高調波展開形において、各空間高調波のz軸方向の位相定数はβnである。よって、k2−βn 2>0を満たす空間高調波は軸方向の位相速度が光速よりも速いのに対し、k2−βn 2<0のものは光速よりも遅い。その意味で、前者は速波、後者は遅波と呼ばれている。
【0007】
速波のr方向の変化は第2種ハンケル関数形であるのに対し、遅波のそれは変形ベッセル関数形となっている。変形ベッセル関数はrの増大に対して急速に小さくなるので、ケーブルのごく近傍を除いての外部電磁界は、後者の遅波を無視して、式(7)〜(9)は、
と表すことができる。
【0008】
ここで、速波となる条件であるk2−βn 2>0 より、各空間高調波が速波となる
k2−βn 2>0 となり得るnは負のみとなり、その周波数範囲は−k<βn<kより、
但し、
P :スロット列の周期 [m]
ν :管内波長短縮率 (=k/β)
n :負の整数
と表される。
【0009】
よって、各空間高調波の速波領域となる下限周波数、及び上限周波数をそれぞ
となる。
【0010】
の漸近形より、
と表される。
【0011】
ここで、式(16)〜(18)で表される各空間高調波の伝搬方向、すなわち放射角度を求める。各空間高調波のエネルギー流を表すポインティングベクトル
より、
となる。
【0012】
よって、放射角度を図14のようにr方向(ケーブル軸垂直方向)を基準に定義すると、各空間高調波のポインティングベクトルの向き、すなわち放射角度θnは、
と表すことができる。図14の漏洩同軸ケーブルの一端には信号発生器14が、他端には終端抵抗器15が接続されている。
これを周波数の関数として図示すると図15のような形となる。
【0013】
ところで、次数の異なる速波となる空間高調波が二つ以上存在すると、それぞれ伝搬方向θnが異なる為、相互に位相干渉を起こして外部放射電界に、観測点位置による変動が生じることが知られている。これは、式(16)〜(18)でnの次数によりr方向及びz方向の位相定数が異なっていることからも理解できる。その為、従来の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいては、使用周波数帯域で速波となる空間高調波のうち、使用する唯一つのものを除いて、それ以外の空間高調波は充分に抑圧することを行っていた。
【0014】
例えば、n=−1次の空間高調波を使用する場合を述べる。まず、これの下限周波数は式(14)より
すなわち、
の範囲で周期Pを設定する。
【0015】
周期Pが設定されると、−2次以上の空間高調波の下限周波数が式(14)により
である時、n=−2次からn=−l次までの空間高調波を抑圧させると、使用周波数範
きる。
【0016】
不要な空間高調波を抑圧する方法は、式(10)〜(12)においてJ(z)のフーリエ級数展開係数であるCnの大きさが各空間高調波の振幅に比例した量となっていることから、抑圧したい空間高調波の次数にあたるCnが充分小さくなる様にJ(z)の分布を工夫する。すなわちスロット列の構成の仕方を工夫するということである。
【0017】
具体的には、例えば、n=−1次の空間高調波を使用し、n=−2〜−4次のそれを抑圧する方法として、半ピッチ内に2個以上のスロットを用いる方法が、特公昭52−7790、実公昭53−10844、特公昭56−12045又は特開昭50−129986などで提案されている。
【0018】
又、n=−2〜−6次のそれを抑圧する方法としては、半ピッチ内に4個のスロットを用いる方法が、実公昭52−41786、実公昭58−53768等で提案されている。
【0019】
さらに、1ピッチ内に複数個のスロットを等間隔に配列し、各スロットの励振係数を正弦波状に変化させることにより、n=−2次以上の高次の空間高調波を抑圧する方法が特公昭50−25786で提案されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような広帯域漏洩同軸ケーブルの場合、以下のような問題が発生することがある。ここでは、例えばn=−nA次の空間高調波を使用する場合を考え
合が出てくる。
【0021】
漏洩同軸ケーブルの実際の運用上では、漏洩同軸ケーブルとそれと電磁波の送受信を行う移動局との間に金属板などの電磁波遮蔽体が間欠的に存在している場合がある。例えば図16に示すように、鉄道線路沿線に沿って布設される漏洩同軸ケーブル1に対して、移動局10は列車車両11内にあり、車両11の車体12が金属遮蔽体として作用する場合などである。このとき、放射角度が垂直方向に近い条件では、漏洩同軸ケーブル1からの直接波は窓13を透過して車両11内奥の移動局10まで到達し易い。しかし、放射角度が大きい時は車両車体12により直接波は遮られ易く、移動局10での受信レベルは大きく低下することが懸念される。
【0022】
300MHz帯〜2000MHz帯において、Eφ成分に対してn=−1次以外の速波をほぼ抑圧した広帯域漏洩同軸ケーブルを製作した。この広帯域漏洩同軸ケーブルでは、
きをもって放射されるものである。
【0023】
このケーブル約50mに対して、Eφ成分の結合損失を図17に示す様な測定系でケーブルの長手方向(z軸方向)に沿って測定した。ここで、図17において、2枚のAL(アルミニウム)製の金属板16はそれぞれ1m四方の大きさ(厚さ2mm)であり、それらの間隔2dを一定としたまま半波長ダイポールアンテナ17と共に移動させる。
ここで結合損失とは式(23)により定義される量である。
但し、
Lc(z)[dB] :点z=zにおける結合損失。
P1(z)[W] :点z=zにおける漏洩同軸ケーブル内部の伝送波の伝送電力。
P2(z)[W] :漏洩同軸ケーブルから垂直方向に、ある距離だけ離れた位置に置かれた半波長ダイポールアンテナの、点z=z上における受信電力。
である。
9(a)〜(c)、及び表A−1〜A−2に示す。
【0024】
【表A−1】
【0025】
【表A−2】
【0026】
ては、金属板の挿入により結合損失に大きな増加がみられる。よって、図16のような使用環境下においては、移動局での受信レベルに大きな劣化が生じることが懸念される。
【0027】
このように、従来の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいては、放射角度の周波数による変化、増大に伴って、電磁遮蔽体が周囲に存在する環境下においては良好な受信レベルが保てない場合があるという問題があった。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
【0029】
漏洩電磁界形成用の複数個のスロットが同軸ケーブルの外部導体の軸方向に列状に設けられた漏洩同軸ケーブルにおいて、前記スロット列のケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数分布が軸方向に周期(P)を持っており、且つそれはP/2毎に反転していて、且つ左右対称となっている。このスロット列により形成される軸周方向漏洩電界成分に対して、使用する周波数帯域内の少なくとも一つ以上の周波数では、速波となる奇数次の空間高調波を二つ存在させ、且つ少なくともその二つのうちの次数の高い方の次に次数の高い奇数次の空間高調波をほぼ抑圧させる。又、その抑圧する空間高調波よりも次数が低く、使用周波数帯域内で速波となる全ての空間高調波を、前記存在させる二つの空間高調波を除いてほぼ抑圧させる。又、漏洩同軸ケーブルの管内波長短縮率νの値を、
ここで、速波とは、ケーブル軸方向の位相速度が外部媒質中の光速よりも速い伝送波をいう。
【0030】
上記発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいては、使用する周波数帯域内の少なくとも一つ以上の周波数では、軸周方向漏洩電界成分に対して、速波となる二つの奇数次の空間高調波が存在している。ここで漏洩同軸ケーブルの波長短縮率ν
に負のものに限られる。そこで、この存在させる二つの奇数次の空間高調波の次数をそれぞれ、−na次、−nb次とおく(nb>na>0)。このとき、−na次よりも次数の低い、速波となる全ての空間高調波が抑圧されているため、式(14)で表され
以下の周波数では速波となる空間高調波が存在せず、充分な強さの漏洩電磁界が
−na次の空間高調波を速波とさせる必要がある。すなわち、
より、
とスロット列の周期Pを設定する。
【0031】
であるが、今、周期Pの範囲を式(26)の条件で設定しなければならないため、使
も小さくならず、傾きが大きくなってしまうことがある。
【0032】
場合が出てくる。
【0033】
度がある所望の値となるように、式(27)によりスロットの周期Pを選定する。こ
のような形で表されるが、これは必ずしも所望の値になるとは限らない、という問題である。
【0034】
そこで、図15、或いは式(27)により表されるように、他の次数の空間高調波
角度が所望のものに近くなっている空間高調波(−nb次)を選んで、それを存在
波を得ることができる。
【0035】
このように、次数の異なる二つの速波となる空間高調波を存在させることにより、放射角度がそれらで異なることから、周波数間隔の離れた二つの周波数帯でほぼ所望の放射角度を実現することができる。
【0036】
これにより、周囲の電磁遮蔽体の影響により一方の空間高調波が遮蔽されてしまう場合においても、もう一方の空間高調波をその影響から回避させることが、その放射角度の違いにより可能となる為、受信レベルの劣化を抑制することが可能となる。
【0037】
又、電磁遮蔽体の影響からの回避だけでなく、移動局にケーブル軸方向に対して指向性を持つアンテナを使用するような場合において、周波数間隔の離れた二つの周波数帯で、この指向性に合わせることが可能となる為、広帯域に渡って安定した高い受信レベルを維持することが可能となる。
【0038】
ここで、具体例として、−1次と−3次の空間高調波を存在させる場合の放射角度と周波数との関係を表す。現在、実用化されている同軸ケーブルでは、その絶縁体はポリエチレンなどの高分子材料、又はそれらと空気層との複合体であるのが主流となっている。そのため、漏洩同軸ケーブルの管内波長短縮率νの値としては、0.5から1.0の間にあるものが大半を占めている。そこで、ここでは代表して、νが0.5、0.8、1.0の場合の関係を式(21)より表B−1〜B−3に表す。表B−1〜B−3では、θ−1及びθ−3値がそれぞれ、−50、−20、0、+20、+50[deg]
【0039】
波数範囲を見ると以下のようになる。
【0040】
181の範囲、−3次の空間高調波では384〜543の範囲となる。
【0041】
表B−2よりν=0.8の場合は、−1次の空間高調波では188〜330の範囲、−3次の空間高調波では565〜991の範囲となる。
【0042】
表B−3よりν=1.0の場合は、−1次の空間高調波では224〜456の範囲、−3次の空間高調波では671〜1367の範囲となる。
【0043】
このように、−1次と−3次の二つの空間高調波を存在させることにより、従来の一つのみの速波となる空間高調波を存在させる場合に比較して、間隔の離れた二つの周波数帯において、所望の放射角度(ここでは±20[deg]の場合を表したが、他の場合も可能である)が得られることが分かる。
【0044】
【表B−1】
【0045】
【表B−2】
【0046】
【表B−3】
【0047】
又、本発明ではスロット列の励振係数分布がP/2毎に反転していることから、後に示す様に、励振係数分布関数J(z)のフーリエ級数展開係数Cnのうちの、偶数次のそれが消滅するので、偶数次の空間高調波が抑圧される(式(40))。
【0048】
さらに、少なくとも−nb次の次に次数の高い奇数次の空間高調波、すなわち−(nb+2)次の空間高調波と、それよりも次数の低い速波となる全ての空間高調波が、−na次と−nb次のそれを除いて抑圧されている。
ここで、各奇数次の空間高調波の速波となる下限周波数は、式(14)より、
と−nb次との両方、或いは片方の空間高調波に限ることができる。但し、これは
であることから、
ν>0.4 …(29)
の場合と求められる。
【0049】
このように速波を二つ以下に限ることができれば、三つ以上の複数の速波を存在させる場合に比較して、電界強度の変動を最小限に抑えることが可能となる。何故なら、例えば、振幅比で1:α(0<α<1)の二つの速波を存在させた場合の電界強度変動幅は、
と表されるが、これに更に、振幅比でβ(0<β<1)である三つ目の速波を加えた場合の電界強度変動幅は、
となり、二つの場合の式(30)よりも大幅に増大してしまう場合があるからである。
【0050】
される下限周波数とで、
の関係にある−(nb+4)次から−(nb+2+2m)次までの奇数次の空間高調波を、−(nb+2)次の空間高調波と合わせて抑圧させるとよい。
【0051】
とが同様に可能となる。
【0052】
この例として、−1次と−3次の空間高調波を存在させ、−5次とその他に、それよりも次数の高い−7次の空間高調波を抑圧する場合を具体的に表す。
式(14)より、奇数次の各空間高調波の速波となる下限周波数は、
すなわち、
の関係にある。
【0053】
ここで、−5次のみの空間高調波を抑圧する場合の、速波の発生を−1次と−
【0054】
それに対して、−7次も同様に抑圧する場合は、
の周波数範囲となる。
数を表す。
【0055】
抑圧する方が、速波の発生を−1次と−3次との両方、あるいは片方の空間高調波に限ることのできる周波数範囲を広くできるのが分かる。
ときである。これは、
であるので、
ν>0.4 …(34)
のときと求められる。
よって、ν>0.4のときは、−7次の空間高調波を抑圧することによって、電界強度の変動を最小限に抑えられる周波数範囲を広げることができる。
【0056】
【0057】
以上のように、本発明では、間隔の離れた二つの周波数帯でほぼ所望の放射角度をもつ空間高調波を存在させることができ、且つ次数の異なる速波となる空間高調波が複数存在することに起因する電界強度の変動幅を最小限に抑制することが可能である。
【0058】
次に、抑圧させたい空間高調波の抑圧方法の概略を示す。各空間高調波の抑圧は前記の従来の技術の項中の説明と同様に、式(10)〜(12)においてJ(z)のフーリエ級数展開係数であるCnの大きさが各空間高調波の振幅に比例した量となっていることから、抑圧したい空間高調波の次数にあたるCnの大きさを充分小さくすることで実現できる。
【0059】
本発明では、スロット列の励振係数分布J(z)は、P/2毎に反転していて、且つ左右対称となっている。すなわち、
J(z)=−J(z+P/2) …(35)
J(z)=J(−z) …(36)
である。但し、式(33)において、左右対称点のz軸座標を0に取った。
【0060】
式(35)が満たされる場合、Cnは次のような形で表される。
一周期に渡る積分において積分範囲をずらすことができ、
とする。この積分区間を二つに分けて、
と表し、右辺第二項においてz≡z−P/2と変数変換して式(35)を使用してまとめると、
と表される。すなわち、スロット列の励振係数分布関数J(z)が式(35)を満たすとき、つまりP/2毎に反転するとき、偶数次の空間高調波が抑圧される。
【0061】
次に、式(39)を二つの場合に分けてそれぞれ表す。半周期(P/2)内−P/4<z<P/4に存在するスロットの数(但し、励振係数が零であるものは除く)が、奇数個の場合と偶数個の場合とである。
【0062】
奇数個の場合、式(36)を満たすようなスロットの配列は、図1のように左右対称点z=0の位置にスロットがある場合である。この時、励振係数分布関数J(z)をDiracのデルタ関数δ(z)を用いて、近似的に
但し、
as:z=zsの位置のスロットの励振係数
a0:z=0の位置のスロットの励振係数
と表すと、式(41)を式(39)に代入して、
と表すことができる。
【0063】
それに対し、偶数個の場合、式(36)を満たすようなスロットの配列は図2のような形となる。この時、同様に、励振係数分布関数J(z)をδ関数を用いて近似的に、
と表すと、式(43)を式(39)に代入して、
となる。
【0064】
式(42)、及び式(44)の右辺の[]に表されるように、Cnの値はN値、及び
の半周期内の数、各スロット間の励振係数の比、及び周期内での各スロットの位置により、Cnの値は変化する。
よって、これらの変数を、抑圧したい空間高調波の次数にあたるCnの大きさが充分小さくなるように設定すれば、抑圧したい空間高調波を抑圧することができる。
【0065】
ここで、各スロットの励振係数であるasについての実際に触れると、これはスロットの大きさや形状などにより決まる係数である。例えば、図1、図2のような長孔状の傾斜スロットを用いる場合、主にスロットの長さや傾斜角度などによりasが定まる。従って、これらを変化させることによって、asを所望の値に設定することが可能である。
【0066】
ところで、式(42)、(44)の両方において、
Cn=C−n …(45)
が成り立つ。そこで、以降の説明では、nが負のものについてのみ言及することにする。
【0067】
い場合について表す。
【0068】
この場合、
であり、式(15)により、
であるので、式(47)を式(46)に代入すると、周期Pを
の範囲に設定することに相当する場合である。
【0069】
ここで、存在させる二つの奇数次の空間高調波の次数を−na次と−nb次とする(nb>na>0)。
このとき、最低限抑圧する奇数次の空間高調波は、−na次と−nb次を除いての−1次から−(nb+2)次の空間高調波であるから、
次の空間高調波である。よって、その数は、
である。
【0070】
従って、式(42)あるいは式(44)において、式(49)のnについて、Cn=0としなければならない。つまり、
m元連立方程式の解を求めるためには、一般にm個以上の独立変数が必要である。
よって、式(51)を満たす解を求めるためには、式(42)、又は式(44)の右辺の[ ]
【0071】
式(42)の右辺の[ ]内の独立変数の数は、
である。
又、式(44)の右辺の[ ]内の独立変数の数は、
である。
但し、ここで、−na次、もしくは−nb次の空間高調波の、少なくともどちらか一方の強さを所望の値に設定させる為に、式(42)においてはa0の値を、式(44)においてはa1の値を、式(51)の解を求めるための独立変数とするのではなく、ある設定値(固定値)とした。理由は以下のとうりである。これらの二つの空間高調波の強さは、式(10)〜(12)に表されるようにそれぞれC−na、C−nbの大きさに比例した量であるが、C−na、及びC−nbの式(42)の右辺の[ ]内、あるいは式(44)の右辺の[ ]内は、式(51)を満たす条件のもとではある決められた値を取る場合がある。しかし、その場合においても、a0、あるいはa1がその係数となっているので、この値を適当に設定することによって、C−na、もしくはC−nbの大きさ、つまり−na次、もしくは−nb次のどちらかの空間高調波の強さを所望の値に設定させることが可能となるからである。
【0072】
ところで、図1、図2より、励振係数が零でないスロットの半周期内の数はそれぞれ、2N+1個、2N個となっている。そこで、励振係数が零でないスロットの、半周期内の数をNP/2とおくと、式(52)、(53)における変数の数は、NP/2を用いて、(NP/2−1)個と表すことができる。
【0073】
今、式(51)を満たす解を求めるためには、式(42)あるいは式(44)の右辺の[ ]
としなければならない。つまり、一般には、
の数のスロットが、半周期内に必要となる。
【0074】
ここで、スロットの数を必要最低とした場合、すなわち式(54)より、
とした場合を述べる。
このとき、式(42)、あるいは式(44)の右辺の[ ]内の独立変数の数は
ち一般には全ての変数が一意的に定められる。全ての変数が一意的に定められると、式(42)、あるいは式(44)の右辺の[ ]内も一意的に定められることになる。
すると、速波となる−na次と−nb次の空間高調波のそれぞれのCnの大きさの比、
【0075】
ところで、式(10)〜(12)より、|C−na|、|C−nb|は各空間高調波の振幅に比例した量
−na次と−nb次の空間高調波の振幅の比が一意的に定められるということを意味する。
【0076】
本発明において、−na次の空間高調波だけでなく−nb次の空間高調波も存在させる理由は、周囲の電磁遮蔽体の影響によって、−na次の空間高調波が遮蔽されてしまう場合においても、−nb次の空間高調波によって受信レベルをあるレベルで維持しようというねらいがあった。それ故、周囲の電磁遮蔽体の存在する種々の状態に対応して、−na次に対する−nb次の空間高調波の強さを種々に設定できると、受信レベルを維持、制御する上において都合がよい。
【0077】
又、式(31)で表される、二つの速波を同時に受信したときの電界強度の変動幅は、二つの速波の振幅比により決定される。よって、この変動幅を所望の値に設定しようとする場合には、−na次に対する−nb次の空間高調波の強さを種々に設定することが必要となってくる。
【0078】
は重要である。
【0079】
それはつまり、式(42)、或は、式(44)の右辺の[ ]内の独立変数の数を一つ以上増すことである。その為には、式(42)、あるいは式(44)の右辺の[ ]内の独立変数の数が(NP/2−1)個となっているので、NP/2値を一つ以上増せばよい。今、NP/2値を式(55)の値で設定したので、これに1以上の整数を加えて、
と設定することである。
値を制限していっても、一つ以上の変数が、特別な場合を除いて一意的に定まらずに、任意となる。
【0080】
次の空間高調波の強さを種々に設定することが可能となる。
【0081】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を以下に説明する。
まず、最も簡単な例として、−1次と−3次の空間高調波を存在させる場合を表す。このとき、式(54)より、半周期内に2個以上のスロットが必要である。
【0082】
はじめに、最少の2個のスロットを配列させる場合を述べる。このときは、図2においてN=1の場合であるから図3のようなスロット配列図、及びJ(z)のような形になる。この時のCnは式(44)、及び式(40)より、
である(0<z1<P/4)。
【0083】
今、−3次の次に次数の高い奇数次の空間高調波、すなわち−5次のそれを抑圧させるので、その条件は式(57)より、
である。これより、0<z1<P/4の範囲では、
としなければならないことが求められる。又、式(59)の時、C−1≠0、及びC−3≠0となる。従って、スロットを図3の配列とし、且つz1/Pの値を式(59)とすることにより、−1次、及び−3次の空間高調波を存在させ、且つ−5次、及び偶数次の空間高調波を抑圧させることが可能となる。
【0084】
今、半周期内のスロットの数NP/2を、一般に必要とされる最少の個数、2個とした。このとき、式(57)の右辺の[ ]内の、唯一の変数であるz1/P値が、式(59)のように一意的に定められてしまう。このため、|C−3|/|C−1|値も一意的に定められてしまう。具体的に表すと、式(59)を式(57)に代入して、|C−3|/|C−1|値を求めると、
C−1=3.804・a1/P、C−3=2.351・a1/Pより、|C−3|/|C−1|=0.618
C−1=2.351・a1/P、C−3=−3.804・a1/Pより、|C−3|/|C−1|=1.618
である。
このように|C−3|/|C−1|値が一意的に定められてしまうことは、先に述べたように本発明の効果が制限される要因となる。
【0085】
そこで次に、半周期内のスロットの数を増すことにより、これを解決する、すなわち|C−3|/|C−1|値を可変とすることができるのを示す。
【0086】
|C−3|/|C−1|値を可変とするには、式(56)より、
としなけれらばならない。
【0087】
ここで、NP/2=3の場合を表す。これは、図1においてN=1の場合であるから、図4のように表される。この場合、Cnは式(42)、(40)より、
となる(0<z1<P/4)。式(61)の右辺の[ ]の変数は、{a1/a0,z1/P}と式(57)の場合に比較して、その数は確かに一つ増えている。
【0088】
式(61)より、−5次の空間高調波を抑圧させる条件は、
である。式(62)の解をC−1≠0、C−3≠0の条件のもとで求めると、
(但し、z1/P≠1/20,3/20,1/6,1/8)
となる。式(61)より、
であるので、
であるが、これに式(63)を代入すると、
となる(但し、z1/P≠1/20,3/20,1/6,1/8)。
【0089】
式(67)に表されるように、z1/P値の取り方により、|C−3|/|C−1|値を可変とすることができるのが分かる。
【0090】
尚、ここで、式(63)のa1/a0値は、正に限らず負となる様に設定してもよい。この場合、例えば図4のような傾斜スロットを用いる場合、a0に対するスロットの傾斜方向とa1に対するスロットの傾斜方向とは、z=P/2離れたスロットどうしのように、反転する方向となる。
【0091】
又、NP/2値をさらに増やして4個以上としても、同様に|C−3|/|C−1|値を可変とできるのが導き出される。
【0092】
以上は、−1次と−3次の空間高調波を存在させ、−5次と偶数次の空間高調波を抑圧させる場合を表した。同様にして、抑圧する奇数次の空間高調波の数が複数になる場合も可能である。
【0093】
例えば、−3次と−5次の空間高調波を存在させる場合を表す。この場合、−5次の次に次数の高い奇数次の空間高調波、すなわち−7次のそれと、それよりも次数の低い奇数次の空間高調波、すなわち−1次のそれを抑圧させることになる。偶数次のそれは式(40)により、すでに抑圧されている。
この時、式(54)より、半周期内で3個以上のスロットが必要である。
よって、まず必要最少個数の3個の場合、すなわち図4の場合を述べる。この時のCnは、式(42)でN=1の場合であるので、
となる(0<z1<P/4)。式(61)より−1次と−7次の空間高調波を抑圧させる為の条件は、
となる。又、−3次と−5次の空間高調波を存在させる為の条件は、
である。式(68)〜式(71)より、以下のようにしなければならないことが求められる。
である。
又、このとき、C−3、C−5、及び|C−5|/|C−3|値は、式(61)、(72)より
C−3=4・a0/P、C−5=4・a0/Pより、|C−5|/|C−3|=1
となる。
【0094】
このように半周期内のスロットの数NP/2を、式(54)で表される一般に必要とされる最少の個数、3個とした場合には、式(61)右辺の[ ]の二つの変数、{a1/a0,z1/P}が両方とも一意的に定められる為、|C−5|/|C−3|値も一意に定められてしまう。
【0095】
そこで、前述と同様に、半周期内のスロット数を式(56)の条件とすることにより、|C−5|/|C−3|値を可変とできることを示す。式(56)より、
である。よって、まず、NP/2=4の場合を表す。
【0096】
この時のスロット配列図、及びJ(z)は、図2において、N=2の場合である。よって、Cnは、式(44)より、
となる(0<z1<z2<P/4)。−1次と−7次の空間高調波を抑圧させる為の条件は、
である。又、−3次と−5次の空間高調波を存在させる為の条件は、
である。式(75)〜(78)より、以下のようにしなけらばならないことが求められる。
【0097】
cos(2πz1/P)・cos(14πz2/P)=cos(14πz1/P)・cos(2πz2/P) …(79)
を満たす(z1/P,z2/P)の組を適当に選び、このときの励振係数比a2/a1を
と定める(0<z1<z2<P/4)。
【0098】
この場合、|C−5|/|C−3|値は、式(74)、及び式(80)より、
と表される。
これに示すように、式(79)を満たす条件下での(z1/P,z2/P)の選び方により、|C−5|/|C−3|値を可変とできるのが分かる。
【0099】
又、NP/2値をさらに増やして5個以上としても、同様に|C−5|/|C−3|値を可変とできるのが導き出される。
【0100】
同様に、−1次と−3次の空間高調波を存在させ、−5次と−7次、及び偶数次の空間高調波を抑圧させることも可能である。この場合、抑圧する奇数次の空間高調波の数が前記と同様に2個であるので、NP/2=4とすることにより、つまり、式(74)の右辺の[ ]内の変数を{z1/P,z2/P,a2/a1}と3個にすることにより、|C−3|/|C−1|値を可変とすることができる。実際にそれを示す。
【0101】
式(74)から、−5次と−7次の空間高調波を抑圧させるための条件は、
である。
【0102】
又、−1次と−3次の空間高調波を存在させるための条件は、
である。式(82)〜(85)より、以下のようにしなければならないことが求められる。
【0103】
cos(10πz1/P)・cos(14πz2/P)=cos(14πz1/P)・cos(10πz2/P) …(86)
但し、
を満たす(z1/P,z2/P)の組を適当に選び、このときの励振係数比a2/a1を
と定める。
【0104】
この場合、|C−3|/|C−1|値は、式(74)、及び式(90)より、
と表される。これに示すように、式(86)〜(89)を満たす条件下での(z1/P,z2/P)の選び方により、|C−3|/|C−1|値を可変とすることができる。
【0105】
ところで、製造上の容易さ等の理由で、半周期内でのスロットの間隔を等間隔にすると有利な場合がある。すなわち、z1=d/2、z2=3d/2(0<3d/2<P/4) とする場合である(但し、dはスロット間隔)。
【0106】
このように設定した時、式(74)は、
と表される。この時、−5次と−7次の空間高調波を抑圧させるための条件は式(92)より、
である。これより、
d/P=1/14 …(95)
且つ、
としなければならないことが求められる(C−1,C−3≠0)。
【0107】
このとき、|C−3|/|C−1|値は、式(92)、(95)及び(96)より
となり、固定されたものとなる。
【0108】
このように一意に定められてしまう理由は、配列の自由度、すなわち 式(74)
【0109】
したがって、半周期内でのスロットの間隔を等間隔にしながら、|C−3|/|C−1|値を可変とするためには、半ピッチ内のスロット数をさらに一つ以上増して、式(42)あるいは式(44)右辺の[ ]の中の独立変数の数を三つ以上に保つ必要がある。例えば、三つに保てるのは、5個及び6個とした場合で、独立変数はそれぞれ、
である。
【0110】
まず、5個とした場合を具体的に表す。この場合、図1においてN=2とした場合で、半周期内でのスロット間隔をdと一定とすると、z1=d、z2=2d(0<2d<P/4)となるのでCnは、式(42)、及び式(40)より、
となる。式(100)において、
C−5=C−7=0、及びC−1,C−3≠0
を満たす条件、すなわち−5次と−7次、及び偶数次の空間高調波を抑圧し、−1次と−3次の空間高調波を存在させる条件を求めると、以下のようになる(0<2d<P/4)。
【0111】
且つ
とする。
【0112】
とする。
【0113】
これらの場合の|C−3|/|C−1|値は、
【0114】
【0115】
このように、半周期内でのスロット間隔を等間隔に設定した場合でも、|C−3|/|C−1|値を可変とすることができるのが分かる。
【0116】
同様にして、6個とした場合を表す。この場合、図2においてN=3の場合であり、半周期内でのスロット間隔をdと一定とすると、z1=d/2、z2=3d/2、z3=5d/2(0<5d/2<P/4)となるのでCnは、式(44)、及び式(40)より、
となる。式(106)において、
C−5=C−7=0、C−1,C−3≠0
を満たす条件、すなわち−5次と−7次、及び偶数次の空間高調波を抑圧し、−1次と−3次の空間高調波を存在させる条件を求めると、以下のようになる。
【0117】
且つ
とする(0<5d/2<P/4)。
【0118】
但し、
とする。
【0119】
但し、
とする。
【0120】
これらの場合の|C−3|/|C−1|値は、
【0121】
【0122】
【0123】
このように、半周期内でのスロット間隔を等間隔に設定した場合でも、|C−3|/|C−1|値を可変とすることができる。
【0124】
しかし、これらの場合も、次のような問題の生じる恐れがある。
の場合)、あるいは半周期内に6個のスロットを等間隔に配列させた場合(但し
させることになるが、その際にd値が小さくなりすぎる場合が出てくる。これはすなわちスロットが密になりすぎる場合であるから、外部導体の機械的強度が低下するなど、好ましい状態ではない。
【0125】
これを回避する為には、d値をある所望の値に設定、固定した状態で、且つ|C−3|/|C−1|値を変化させられるようにしなければならない。d値をある値に固定し
の空間高調波を抑圧させ、且つ|C−3|/|C−1|値を可変とさせるためには、先に説明した様に、独立変数を一般に三つ以上に保つ必要がある。よって、その為には、半周期内のスロット数をさらに増して7個以上としなければならない。7個、及び8個とした場合のそれぞれの独立変数は、それぞれ
及び、
となり、三つとなる。
【0126】
具体的にこれらの場合を表す。最初に7個とした場合を表す。この場合、図1においてN=3の場合で、半周期内のスロット間隔をdと一定とすると、z1=d、z2=2d、z3=3d(0<3d<P/4)となるのでCnは、式(42)、及び式(40)より、
となる。式(120)において、
C−5=C−7=0、C−1,C−3≠0
を満たす条件、すなわち−5次と−7次、及び偶数次の空間高調波を消去し、−1次と−3次の空間高調波を存在させる条件を求めると、
且つ
但し、
となる(0<3d<P/4)。
【0127】
このとき|C−3|/|C−1|値は、
【0128】
よって、半周期内でのスロット間隔をdと等間隔にし、且つd値をある所望の
ることができる。
【0129】
同様にして、NP/2=8個とした場合を表す。この場合、図2においてN=4の場合であり、半周期内でのスロット間隔をdと一定とすると、z1=d/2、z2=3d/2、z3=5d/2、z4=7d/2(0<7d/2<P/4)となるのでCnは、式(44)、及び式(40)より、
となる。式(126)において、
C−5=C−7=0、C−1,C−3≠0
を満たす条件、すなわち−5次と−7次、及び偶数次の空間高調波を消去し、−1次と−3次の空間高調波を存在させる条件を求めると、
且つ
但し、
となる(0<7d/2<P/4)。
【0130】
このとき|C−3|/|C−1|値は、
ット間隔をdと等間隔にし、且つd値をある所望の値に固定させたとしても、
【0131】
さらに、半周期内に9個以上のスロットを等間隔(d)に配列させた場合も、式(42)、あるいは式(44)右辺の[ ]内の変数が4個以上となる為、d値をある所望の値に固定させたとしても、|C−3|/|C−1|値を可変とできるのが同様に導き出される。
【0132】
尚、全体の漏洩電磁界の強度を増す等の理由の為に、図1〜図4で表されるスロット列を外部導体の周方向に複数列設けてもよい。この場合、各列のケーブル軸方向に対する位置を、図5のように揃えてもよいし、図6のようにずらしてもよい。
【0133】
又、このとき、それぞれのスロット列の励振係数分布J(z)は、必ずしもお互いに等しいものとさせる必要はなく、それぞれにより形成される二つの速波となる空間高調波の次数が等しいものであれば任意である。
【0134】
この場合、スロット列間での励振係数分布J(z)の大きさの関係、及び各スロット列の形成する二つの空間高調波の振幅比、などを変化させることによって、放射角度の異なる二つの空間高調波の振幅比を、全体として調整することが可能となる。
【0135】
さらに、それぞれのスロット列の周期Pを必ずしも一致させなくてもよい場合がある。これは以下の関係とした場合である。
P′=m′・Ps …(132)
−na′=−m′・nas …(133)
−nb′=−m′・nbs …(134)
ここで、
Ps :複数のスロット列の中で、周期Pが最も短いスロット列の周期
P′ :Psよりも長い周期を持つスロット列の周期
m′ :2以上の整数
−nas:周期がPsのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nbs:周期がPsのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
−na′:周期がP′のスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nb′:周期がP′のスロット列の形成する速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
【0136】
このようにすると、各スロット列の形成する二つの奇数次の空間高調波は、その放射角度、及び速波領域となる上下限周波数が、式(21)、式(14)、式(15)により一致する。すなわち、全体としては、放射角度の異なる二種類の速波となる空間高調波が形成されている状態であり、等しい周期を持つスロット列のみにより形成されている場合と本質的に変わらない。
【0137】
さらに、図12に表すように、組み合わせるスロット列としては、必ずしも図1〜図4で表される、二つの速波を形成するスロット列ではなく、使用周波数帯域内で一つ以下の速波を形成するスロット列との組み合わせでもよい。
但し、この際には、
のいずれかの関係を満たさなければならない。
但し、
P :使用周波数帯域内のいずれかの周波数で二つの速波を形成するスロット列の周期
P″:使用周波数帯域内で一つ以下の速波を形成するスロット列の周期−na:周期がPのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nb:周期がPのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
−n″:周期がP″のスロット列の形成する、使用周波数帯域内で速波となる、空間高調波の次数
である。
【0138】
このようにすると、−n″次の空間高調波は、−na次と−nb次とのどちらかの空間高調波とその放射角度、及び速波領域となる上下限周波数が一致することになる(∵式(21)、式(14)、式(15))。すなわち、全体としては、二種類の速波となる空間高調波が形成されている状態であり、元の二つの速波となる空間高調波が形成されている状態と本質的に等しい。
【0139】
この場合、組み合わせる、一つの速波を形成するスロット列の励振係数分布J(z)の大きさを、元の二つの速波を形成するスロット列のそれに対して適当に選ぶことによって、放射角度の異なる二種類の空間高調波の振幅比を、全体として調整することが可能となる。
【0140】
又、本発明に使用するケーブル軸周方向漏洩電界形成用スロットは、図1〜図6、図12で表される傾斜スロットに限らず、図7のような折れ線型スロット、又は図8のような励振スタブ付きスロット等の、ケーブル軸周方向漏洩電界を形成する、その他の適当な形状を持つスロットを用いてもよい。
【0141】
ここで、本発明におけるスロット列の周期Pの定義についての注意点を表す。Pを決めるにあたっては、ケーブル軸周方向漏洩電界に対する励振係数がほぼ零であるスロット(例えばケーブル軸に平行な長孔状スロット、又はケーブル軸に垂直な長孔状のスロット等)は無視して決めるものとする。
【0142】
例えば、図9に示す様に、2Pe置きに励振係数がほぼ零であるスロット(ケーブル軸に平行なスロット)が存在していて、形式的なスロットピッチがPfとなっている場合においては、励振係数がほぼ零であるスロットを無視して決められるスロットピッチであるPeを、本発明においてのスロットピッチPと定義する。
【0143】
(実施例)
実際に、約、波長短縮率v=0.9、P=0.53[m]、絶縁体外径42[mm]と設定し、半周期内に7個のスロットを等間隔に設け、その間隔dをd=P/14とし、且つ、
図5のようにケーブル軸方向に対する位置を揃えて外部導体の周方向に2列設けた広帯域漏洩同軸ケーブルを製作した。これは、軸周方向漏洩電界成分に対して、−1次と−3次の空間高調波が存在し、偶数次と−5次、−7次の空間高調波の他に、−9次の空間高調波も抑圧されたものである。450MHz及び1500MHzにおいて、速波となる空間高調波とその放射角度を表すと表Cの通りである。この
7に示す様な測定系でEφ成分の結合損失をケーブル長手方向(z軸方向)に沿って測定した。尚、結合損失の定義は、式(23)の通りである。その結果を図10、11、図表D−1〜D−2に示す。
【0144】
【表C】
【0145】
【表D−1】
【0146】
【表D−2】
【0147】
図10、図11、表D−1、表D−2と、従来の広帯域漏洩同軸ケーブルの結果である図18、図19、表A−1、表A−2とを比べると分かるように、本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルでは、1500MHzの測定周波数において、結合損失値の増加が大幅に抑制されたものとなっている。これは本発明の特徴である、放射角度の小さい−3次の空間高調波が速波として存在しているからである。このような特性をもつ広帯域漏洩同軸ケーブルの場合、図16に示されるような使用環境下においても、受信レベルに大きな劣化は生じ難く、良好な通信環境を提供できうるものとなる。
【0148】
【発明の効果】
本発明では、次数の異なる、すなわち放射角度の異なる二つの速波となる空間高調波を存在させることにより、周波数間隔の離れた二つの周波数帯においても、ほぼ所望の放射角度を実現することができる。
【0149】
これにより、周囲に電磁遮蔽体が存在する環境下にあっても、その影響を回避し易く、受信レベルの劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、半周期(P/2)内に存在するスロットの数が、奇数個の場合であり、スロットの配列が左右対称点z=0の位置にスロットがある場合の説明図。
【図2】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、半周期(P/2)内に存在するスロットの数が、偶数個の場合の説明図。
【図3】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、半周期(P/2)内に存在するスロットの数が2個の場合の説明図。
【図4】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、半周期(P/2)内に存在するスロットの数が3個の場合の説明図。
【図5】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、スロット列を複数にし、各スロット列の軸方向に対する位置をそろえた場合の説明図。
【図6】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおいて、スロット列を複数にし、各スロット列の軸方向に対する位置をずらした場合の説明図。
【図7】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおける折れ線型スロットの説明図。
【図8】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルにおける励振スタブ付きスロットの説明図。
【図9】2Peおきに励振係数がほぼ零であるスロット(ケーブル軸に平行なスロット)が存在していて、形式的なスロット列の周期がPfとなっている本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルの説明図。
【図10】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルを図17の測定系で測定した結果を示す説明
定結果である。
【図11】本発明の広帯域漏洩同軸ケーブルを図17の測定系で測定した結果を示す説明
合の測定結果である。
【図12】使用周波数帯域内で一つの速波を形成するスロット列との組合わせ例の説明図。
【図13】従来の広帯域型漏洩同軸ケーブルの一例を示す一部を切欠いた斜視図である。
【図14】漏洩同軸ケーブルにおいて、放射角度をr方向(ケーブル軸垂直方向)を基準に定義した場合の、速波となる各空間高調波のポインティングベクトルの向き(放射角度θn)の説明図。
【図15】漏洩同軸ケーブルにおいて、速波となる各空間高調波のポインティングベクトルの向き(放射角度θn)を周波数の関数として表示した場合の説明図。
【図16】鉄道線路沿線に沿って布設された漏洩同軸ケーブルに対して、移動局が列車車両内にあり、車両の車体が金属遮蔽体として作用する場合の説明図。
【図17】 においてEφ成分の結合損失をケーブル長手方向(z軸方向)に沿って測定する測定系の斜視図、(b)は(a)の側面説明図。
【図18】図17の測定系で従来の広帯域漏洩同軸ケーブルを測定した結果を示す説明図
ある。
【図19】図17の測定系で従来の広帯域漏洩同軸ケーブルを測定した結果を示す説明図
の測定結果である。
【符号の説明】
P 周期
1 漏洩同軸ケーブル
2 内部導体
3 スロット
4 絶縁体
5 外部導体
6 外被
10 移動局
11 列車車両
12 車体
13 窓
14 信号発生器
15 終端抵抗器
16 金属板
17 半波長ダイポールアンテナ
18 励振スタブ
Claims (16)
- 漏洩電磁界形成用の複数個のスロットが同軸ケーブルの外部導体に列状に設けられ、且つケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する前記スロット列の励振係数分布が軸方向に周期を持ち(周期:P)、且つそれがP/2毎に反転し、且つそれが左右対称である漏洩同軸ケーブルにおいて、
前記スロット列内の、ケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数が零でないスロットの、半周期(P/2)内の個数N P/2 を、奇数個の(2N+1)個とし、
且つ、
漏洩同軸ケーブル内の管内波長短縮νを
の範囲とし、
且つ、
周期Pを
の範囲とし、
且つ
N P/2 を
の範囲とし、
且つ、
且つ、
とし、
且つ、ほぼ
となる関係としたことを特徴とする広帯域漏洩同軸ケーブル。
但し、ここで、
P:スロット列の周期[m]
f 0 :使用周波数帯域内のある周波数[MHz]
N:正の整数 (N P/2 =2N+1)
−na、−nb:存在させる二つの奇数次の空間高調波の次数(nb>na>0)
n:最低限抑圧する、−na次と−nb次を除いての−1次から−(nb+2)次の奇数次の空間高調波、次数
a s :z=z s の位置のスロットの励振係数(−P/4<z<P/4)
a 0 :z=0の位置のスロットの励振係数
z=0:左右対称点
z軸:ケーブル軸 - 漏洩電磁界形成用の複数個のスロットが同軸ケーブルの外部導体に列状に設けられ、且つケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する前記スロット列の励振係数分布が軸方向に周期を持ち(周期:P)、且つそれがP/2毎に反転し、且つそれが左右対称である漏洩同軸ケーブルにおいて、
前記スロット列内の、ケーブル軸周方向漏洩電界成分に対する励振係数が零でないスロットの、半周期(P/2)内の個数N P/2 を、偶数個の(2N)個とし、
且つ、
漏洩同軸ケーブル内の管内波長短縮νを
の範囲とし、
且つ、
周期Pを
の範囲とし、
且つ
N P/2 を
の範囲とし、
且つ、
且つ、
とし、
且つ、ほぼ
となる関係としたことを特徴とする広帯域漏洩同軸ケーブル。
但し、ここで、
P:スロット列の周期[m]
f 0 :使用周波数帯域内のある周波数[MHz]
N:正の整数(N P/2 =2N)
−na、−nb:存在させる二つの奇数次の空間高調波の次数(nb>na>0)
n:最低限抑圧する、−na次と−nb次を除いての−1次から−(nb+2)次の奇数次の空間高調波の、次数
a s :z=z s の位置のスロットの励振係数 −P/4<z<P/4
z=0:左右対称点
z軸:ケーブル軸 - ケーブル軸周方向漏洩電界成分に対して、−7次の空間高調波をほぼ抑圧させたことを特徴とする、請求項3記載の広帯域漏洩同軸ケーブル。
- 周期Pの等しい、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載されるスロット列を、外部導体の周方向に2列以上設けたことを特徴とする、広帯域漏洩同軸ケーブル。
- 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載されるスロット列を、下記の条件の下で、外部導体の周方向に2列以上設けたことを特徴とする広帯域漏洩同軸ケーブル。
P′=m′・PS
−na′=−m′・naS
−nb′=−m′・nbS
ここで、
PS :複数のスロット列の中で、周期Pが最も短いスロット列の周期
P′ :PSよりも長い周期を持つスロット列の周期
m′ :2以上の整数
−naS :周期がPSのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nbS :周期がPSのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
−na′ :周期がP′のスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nb′ :周期がP′のスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
ここで速波は、ケーブル軸方向の位相速度が外部媒質中の光速よりも速い伝送波をいう。
である。 - 請求項1乃至請求項14のいずれかに記載される一列以上のスロット列と、使用周波数帯域内で一つ以下の速波を形成する一列以上のスロット列とを、
のいずれかを満たす条件の下で、外部導体の周方向に組み合わせて設けたことを特徴とする広帯域漏洩同軸ケーブル。
但し、
P :請求項1乃至請求項14のいずれかに記載されるスロット列の周期
P″ :使用周波数帯域内で一つ以下の速波を形成するスロット列の周期
−na :周期がPのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が低い方の空間高調波の次数
−nb :周期がPのスロット列の形成する、速波となる二つの空間高調波のうちの、次数が高い方の空間高調波の次数
−n″ :周期がP″のスロット列の形成する、使用周波数帯域内で速波となる、空間高調波の次数
ここで速波は、ケーブル軸方向の位相速度が外部媒質中の光速よりも速い伝送波をいう。
である。
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