以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態の自動変速機の制御装置について説明する。
[装置構成]
まず、図1および図2を参照して、本実施形態の自動変速機の制御装置の構成について説明する。
図1に示すように、車両1に搭載される自動変速機(以下、変速機)Tは、前進8速で後進1速の変速段を有するツインクラッチ型の変速機であり、D、P、R、Nのレンジを有する。
変速機Tは、エンジン(原動機)10のクランクシャフトに接続される駆動軸10aにトルクコンバータ12を介して接続される、2、4、6、8速の偶数段入力軸14を備えると共に、偶数段入力軸14と平行して1、3、5、7速の奇数段入力軸16を備える。エンジン10は、例えばガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関からなる。
トルクコンバータ12は、エンジン10の駆動軸10aに直結されるドライブプレート12aに固定されるポンプインペラ12bと、偶数段入力軸14に固定されるタービンランナ12cと、ロックアップクラッチ12dを有し、よってエンジン10の駆動力(回転)はトルクコンバータ12を介して偶数段入力軸14に伝達される。
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行にアイドル軸18が設けられる。偶数段入力軸14はギヤ14a、18aを介してアイドル軸18に接続されると共に、奇数段入力軸16はギヤ16a、ギヤ18aを介してアイドル軸18と接続され、よって偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18はエンジン10の回転につれて回転する。
また、第1副入力軸20と第2副入力軸22とが奇数段入力軸16と偶数段入力軸14の外周にそれぞれ同軸かつ相対回転自在に配置される。
奇数段入力軸16と第1副入力軸20は第1クラッチ24を介して接続されると共に、偶数段入力軸14と第2副入力軸22も第2クラッチ26を介して接続される。第1、第2クラッチ24、26は共に作動油の圧力(油圧)が供給されて動作する湿式多板クラッチからなる。第1、第2クラッチ24、26は油圧が供給されるとき、第1、第2副入力軸20、22を奇数段入力軸16、偶数段入力軸14に締結(係合)する。
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16の間には、偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行に出力軸28が配置される。偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18と出力軸28はベアリング30で回転自在に支承される。
奇数段側の第1副入力軸20には1速ドライブギヤ32と、3速ドライブギヤ34と、5速ドライブギヤ36と、7速ドライブギヤ38が固定されると共に、偶数段側の第2副入力軸22には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42と6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46が固定される。
出力軸28には1速ドライブギヤ32と2速ドライブギヤ40に噛合する1−2速ドリブンギヤ48と、3速ドライブギヤ34と4速ドライブギヤ42に噛合する3−4速ドリブンギヤ50と、5速ドライブギヤ36と6速ドライブギヤ44と噛合する5−6速ドリブンギヤ52と、7速ドライブギヤ38と8速ドライブギヤ46と噛合する7−8速ドリブンギヤ54が固定される。
アイドル軸18には、出力軸28に固定される1−2速ドリブンギヤ48と噛合するRVS(後進)アイドルギヤ56が回転自在に支持される。アイドル軸18とRVSアイドルギヤ56はRVSクラッチ58を介して接続される。RVSクラッチ58は、第1、第2クラッチ24、26と同様、油圧が供給されて動作する湿式多板クラッチからなる。
奇数段入力軸16には1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する1−3速ギヤ選択機構60(1−3)と、5速ドライブギヤ36と7速ドライブギヤ38を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する5−7速ギヤ選択機構60(5−7)が配置される。
偶数段入力軸14には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する2−4速ギヤ選択機構60(2−4)と、6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する6−8速ギヤ選択機構60(6−8)が配置される。以下では、1−3速、2−4速、5−7速、6−8速の各ギヤ選択機構をギヤ選択機構60と総称することもある。
エンジン10の駆動力は、第1クラッチ24あるいは第2クラッチ26が締結(係合)されるとき、奇数段入力軸16から第1副入力軸20あるいは偶数段入力軸14から第2副入力軸22に伝達され、さらに上記ドライブギヤとドリブンギヤを介して出力軸28に伝達される。
尚、後進時には、エンジン10の駆動力は、偶数段入力軸14、ギヤ14a、ギヤ18a、RVSクラッチ58、アイドル軸18、RVSアイドルギヤ56、1−2速ドリブンギヤ48を介して出力軸28に伝達される。出力軸28はギヤ62を介してディファレンシャル機構64に接続され、ディファレンシャル機構64はドライブシャフト66を介して車輪68に接続される。車両1を車輪68などで示す。
ギヤ選択機構60は全て、油圧が供給されてシフト動作する。これらギヤ選択機構と第1、第2クラッチ24、26とRVSクラッチ58に油圧(クラッチ面圧、締結トルクと比例関係にある)を供給するため、油圧供給装置70が設けられる。なお、第1、第2クラッチ24、26とRVSクラッチ58への油圧は、変速動作時にクラッチが解放・係合するときの各クラッチに作用する締結トルク(クラッチ面圧)と比例関係にある。よって、本実施形態では、クラッチへの供給油圧は解放側および係合側の各クラッチの締結トルクを表し、締結トルクはクラッチへの供給油圧を表すものとする。また、変速動作時における各クラッチの締結トルク(供給油圧)は、エンジントルクに応じて決定され、油圧の制御信号の演算に用いられる。
ここで、図2の油圧回路図を参照して、油圧供給装置70の構成を説明する。
図2に示すように、油圧供給装置70において、リザーバ70aから油圧ポンプ(送油ポンプ)70bによって汲み上げられた作動油ATFの吐出圧(油圧)は、レギュレータバルブ(調圧弁)70cによってライン圧PLに調圧(減圧)される。
図示は省略するが、油圧ポンプ70bはギヤを介してトルクコンバータ12のポンプインペラ12bに連結され、よって油圧ポンプ70bはエンジン10に駆動されて動作するように構成される。
調圧されたライン圧は、油路70dから第1リニアソレノイドバルブ(LA)70f、第2リニアソレノイドバルブ(LB)70g、第3リニアソレノイドバルブ(LC)70h、第4リニアソレノイドバルブ(LD)70i、第5リニアソレノイドバルブ(LE)70j、および第6リニアソレノイドバルブ(LF)70kの入力ポートに送られる。
第1から第6リニアソレノイドバルブ70f、70g、70h、70i、70j、70kは電磁式の油圧制御弁であり、通電量に比例してスプールを移動させて出力ポートからの出力圧をリニアに変更する特性を備えると共に、通電されるとスプールが開放位置に移動するN/C(ノーマル・クローズ)型として構成される。
第1リニアソレノイドバルブ(LA)70fの出力ポートは第1サーボシフトバルブ70mを介して上記1−3速ギヤ選択機構60(1−3)のピストン室に接続されると共に、第2リニアソレノイドバルブ(LB)70gの出力ポートは第2サーボシフトバルブ70nを介して上記2−4速ギヤ選択機構60(2−4)のピストン室に接続される。
また、第3リニアソレノイドバルブ(LC)70hの出力ポートは第3サーボシフトバルブ70oを介して上記5−7速ギヤ選択機構60(5−7)のピストン室に接続されると共に、第4リニアソレノイドバルブ(LD)70iの出力ポートは第4サーボシフトバルブ70pを介して上記6−8速ギヤ選択機構60(6−8)のピストン室に接続される。
サーボシフトバルブ70m、70n、70o、70pはそれぞれ、オン・オフソレノイドバルブ(電磁式の油圧制御弁)SA、SB、SC、SDに接続され、それらのソレノイドの励磁・消磁によってリニアソレノイドバルブ70fなどから入力される油圧を出力ポートの(図において左右の)一方からライン圧として出力するように構成される。
第5リニアソレノイドバルブ70jの出力ポートは上記奇数段入力軸16の第1クラッチ(CL1)24に接続されると共に、第6リニアソレノイドバルブ70kの出力ポートは偶数段入力軸14の第2クラッチ(CL2)26のピストン室に接続される。
第1あるいは第2クラッチ24、26は油圧を供給されるとき、第1あるいは第2副入力軸20、22を奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14に締結(係合)する一方、油圧が排出されるとき、第1あるいは第2副入力軸20、22と奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14の接続(締結)を遮断する。
本実施形態の変速機Tは、次の変速段に対応するギヤ選択機構60のいずれかに油圧を供給して第1、第2副入力軸20、22のいずれかに締結(係合)しておくプリシフト動作を行い、次いで現在の変速段に相応する側の第1、第2クラッチ24、26の一方から油圧を排出させつつ、第1、第2副入力軸20、22のうちの次の変速段に対応する副入力軸に相応する側の第1、第2クラッチ24、26の他方に油圧を供給して第1入力軸14あるいは第2入力軸16に締結(係合)することで変速される。変速は基本的には奇数段(1、3、5、7速)と偶数段(2、4、6、8速)の間で交互に行われる。
なお、本実施形態の油圧供給装置70は、上記構成以外にも複数個のリニアソレノイドバルブなどを備え、トルクコンバータ12のロックアップクラッチ12dの締結・解放動作も制御されるが、詳細な説明は省略する。
また、本実施形態の変速機Tは、シフトコントローラ74を備える。シフトコントローラ74は、演算処理装置としてのCPU、変速制御プログラムや変速マップなどを記憶しているROM、演算データなどを一時的に記憶するRAM、コントローラ間でデータをやり取りする入出力回路等を含む電子制御ユニット(ECU)を構成している。また、エンジンコントローラ76も同様に、演算処理装置としてのCPU、エンジン制御プログラムなどを記憶しているROM、演算データなどを一時的に記憶するRAM、コントローラ間でデータをやり取りする入出力回路等を含む電子制御ユニット(ECU)を構成している。
シフトコントローラ74はエンジンコントローラ76と通信し、エンジンコントローラ76からエンジン回転数(NE)、スロットル開度(TH)、アクセル開度(AP)などの情報を取得する。
また、4個のギヤ選択機構60のシフトフォークに固定されるフォークシャフト60fには磁性体が取り付けられると共に、その付近にはストロークセンサ80がそれぞれ配置され、シフトフォーク、換言すればスリーブ60gの軸方向のストローク(シフト)を示す出力を通じてギヤ選択機構のシフト位置、具体的にはスリーブ60gがギヤイン位置からニュートラル位置に向けてストロークしているときの位置を示す出力(電圧値)を生じる。
また、変速機Tには第1、第2、第3、第4回転数センサ82、84、86、90が配置され、それぞれ変速機Tの入力軸(メインシャフト)回転数NMを示す信号、第1、第2副入力軸20、22の回転数を示す信号、出力軸28の回転数(変速機Tの出力回転数)NC(車速Vともいえる)を示す信号を出力する。
油圧供給装置70の第1、第2クラッチ24、26に接続される油路には第1、第2圧力センサ94、96が配置され、第1、第2クラッチ24、26に供給される作動油ATFの圧力(油圧)を示す信号を出力すると共に、リザーバ70aの付近には温度センサ100が配置され、油温(作動油ATFの温度)TATFを示す信号を出力する。
また、車両1の運転席に配置されたレンジセレクタ(図示せず)の付近にはレンジセレクタポジションセンサ102が配置され、レンジセレクタ上に運転者から見て上から順にP、R、N、Dと示されたレンジのうち運転者に操作(選択)されたレンジを示す信号を出力する。
これらセンサの出力は全てシフトコントローラ74に入力される。シフトコントローラ74は、各センサ出力とエンジンコントローラ76から得た情報とに基づき、第1から第6リニアソレノイドバルブ70fから70kを励磁・消磁して第1、第2クラッチ24、26とギヤ選択機構60の動作を制御することで変速機Tの変速動作を制御する。
シフトコントローラ74は、車両1の車速Vとアクセル開度APで規定される走行状態に応じて変速マップ(図示せず)に従ってシフト位置(変速段)を決定し、油圧供給装置70によってギヤ選択機構60、第1、第2クラッチ24、26、RVSクラッチ58に油圧が供給されて所定の変速段を確立する。
シフトコントローラ74は、車速Vとアクセル開度APで規定される走行状態に応じて変速マップ(図示せず)に従って4個のギヤ選択機構60のうちの1−3速ギヤ選択機構60(1−3)と5−7速ギヤ選択機構60(5−7)のいずれかと第1クラッチ24で構成される第1入力軸(奇数段入力軸16と第1副入力軸20)と4個(複数個)のギヤ選択機構60のうちのいずれかの機構と第1クラッチ24から出力軸28に至る第1出力経路と、第2入力軸(偶数段入力軸14と第2副入力軸22)と4個のギヤ選択機構60のうちの別の機構と第2クラッチ26から出力軸28に至る第2出力経路とのうちの一方に油圧を供給して一方を構成するギヤ選択機構60のスリーブ60gによって締結された1速ドライブギヤ32から7−8速ドリブンギヤ54のうちの相応するギヤからなる変速ギヤでエンジン10の駆動力を変速して出力させるように変速機Tの動作を制御する。
[初期慣らし制御]
次に、図3のタイミングチャートと図4のフローチャートを参照して、本実施形態の変速機Tの初期慣らし制御について説明する。
まず、図3を参照して、通常の変速制御や従来の初期慣らし前の変速制御と比較しながら、本実施形態の初期慣らし制御の特徴や効果について説明する。
図3(a)は、通常の変速制御(初期慣らし後)による変速動作時の解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルクの変化を示すタイミングチャートである。図3(b)は、初期慣らし前のNE吹きを抑制するために締結側のクラッチトルクを高めに設定した場合の変速制御による変速動作時の解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルクの変化を示すタイミングチャートである。図3(c)は、本実施形態の初期慣らし制御による変速動作時の解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルクの変化を示すタイミングチャートである。なお、本実施形態のツインクラッチ型の変速機Tでは、解放側クラッチと係合側クラッチは、変速時に解放と係合を繰り返す第1クラッチ24と第2クラッチ26のいずれかに対応する。
図3(a)に示す通常の変速制御では、車速Vとアクセル開度APで規定される走行状態が、変速マップ(図示せず)のシフトアップ線またはシフトダウン線を越えたタイミングで変速が開始される。変速が開始されると、まず、上記プリシフト動作が行われる。プリシフト動作が行われると、係合中の解放側クラッチへの油圧を制御して、締結トルクToffをT10からT11まで低下させ、変速開始タイミングBまでの期間、締結トルクを保持する。
変速開始タイミングBでは、係合側クラッチへの油圧供給が開始されて、係合側クラッチへの油圧をリニアな特性で一定の割合で増圧し、締結トルクTonをT0(ゼロ)からT21まで上昇させると同時に、解放側クラッチの油圧をリニアな特性で一定の割合で減圧させ、締結トルクToffをT11からT0(ゼロ)まで低下させる。その後、変速終了タイミングCまで係合側クラッチの油圧を保持して締結トルクTonをT21に維持したままとし、変速終了タイミングCにおいて係合側クラッチの油圧を上昇させて締結トルクTonをT20まで上昇させ、変速制御が終了する。
上述した変速制御において、変速開始タイミングBから係合側クラッチの締結トルクTonがT21に上昇するまでの期間を共噛み期間L1と呼ぶ。そして、この共噛み期間L1では解放側クラッチと係合側クラッチの間のトルク伝達容量の差により車体G(車体に加わる加速度)が変動し、変速ショックが発生する。よって、解放側と係合側の各クラッチの締結トルクを適切に制御すれば、NE吹きや変速ショックを抑えることが可能となる。なお、図3(a)に示すように、NE吹きや変速ショックの原因となるトルクの引き込みは共噛みが開始される変速開始タイミングBから増加していき、引き込み量は解放側クラッチと係合側クラッチのいずれの締結トルクにも比例して大きくなる。ここで、共噛み期間L1においてトルク引き込み量が最も大きくなるトルク引き込み点Dより前の期間L1aをトルク相、後の期間L1bからCまでをイナーシャ相と呼ぶ。
そして、図3(a)のような通常の変速制御を、初期慣らし制御が必要な期間に行うと、クラッチ面(摩擦面)の摩擦係数(μ)が低い状態であるため、前段のクラッチを解除してから後段のクラッチを係合するまでの間、トルク伝達が一時的に遮断されるトルク抜けが発生し、NE吹きの発生や変速ショックが悪化する可能性がある。
このような課題に対して、図3(b)のように、初期慣らしが必要な期間中は、共噛みが開始される変速開始タイミングBから変速終了タイミングCまでの係合側クラッチの締結トルクTonを高め(T22)に設定することでクラッチ面圧が増加してNE吹きは抑制できるが、締結トルクを高くした分変速ショックが発生してしまう。
そこで、本実施形態では、図3(c)に示すように、初期慣らし制御に必要な熱量をクラッチが吸収するまでの期間、変速時の共噛み期間L1を変速終了タイミングC付近までの期間L2に延ばし、共噛み期間L2における解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルク(共噛み量)を増加することで初期慣らしを促進する。具体的には、トルク相L2aの後のイナーシャ相L2bにおける係合側クラッチの締結トルクTonと解放側クラッチの締結トルクToffをいずれも増加する。具体的には、係合側クラッチの締結トルクTonをT23(>T21)まで変速開始タイミングBからリニアに増加させ、変速終了タイミングCまでT23を保持すると共に、変速開始タイミングBからリニアに低下される解放側クラッチの締結トルクToffをT12(>T0)に増加して共噛み期間L2の間保持する。これにより、NE吹きや変速ショックを抑え、また、クラッチ面圧が増加することでクラッチ面からのオイルの排出性を確保でき、初期慣らしを促進させることができる。そして、初期慣らしに必要な熱量をクラッチが吸収したと判定できたならば、図3(a)に示す通常の変速制御に戻り、初期慣らし制御を終了させる。
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態の初期慣らし制御について説明する。
なお、図4のフローチャートは、エンジンが始動されると開始され、シフトコントローラ74のCPUがROMに格納されている変速制御プログラムや変速マップをRAMに展開して所定のサイクルで実行することにより実現される。ここで、変速制御プログラムは、本実施形態の初期慣らし制御を実行するためのプログラムのことである。後述する図6でも同様である。
S1では、シフトコントローラ74は、初期慣らし制御によりクラッチが吸収した生涯熱量の度合いに応じて必要熱量を補正する補正処理を行う。この補正処理の詳細については後述する。
S3では、シフトコントローラ74は、車速Vとアクセル開度APで規定される走行状態と変速マップ(図示せず)とから変速開始と判定されるまで待ち、変速開始と判定されると、処理をS5に進める。
S5では、シフトコントローラ74は、解放側および係合側の各クラッチが吸収した熱量の積算値(以下、クラッチ吸収熱量)Qが初期慣らし制御に必要な熱量(以下、必要熱量)Q0を超えたか否かを判定する。当然ながら、初期慣らし制御が初回のサイクルであれば、クラッチ吸収熱量Qはゼロとなる。また、必要熱量Q0は、変速機の型式やエンジン出力などに応じて予め実験等により決められており(例えば、1万ジュール)、シフトコントローラ74のROMに記憶されている。また、以下の式1により求められた、初期慣らし制御の各サイクルにおいて各クラッチが吸収したクラッチ吸収熱量Qはシフトコントローラ74のROMに順次記憶・更新される。なお、本実施形態では、クラッチ吸収熱量Qは、それぞれのクラッチにおける解放時および係合時に吸収した熱量の積算値の和としている。
Q=∫TΔωdt・・・(1)
ここで、Tはクラッチのトルク伝達容量である。また、Δωはクラッチの入出力回転速度の差であり、変速開始前に解放側クラッチに与えられる滑り量[rad/s]に等しい。
シフトコントローラ74は、S5でクラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0を超えたと判定した場合は、処理をS19に進め、クラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0以下であると判定した場合は、処理をS7に進める。
S7では、シフトコントローラ74は、シフトアップであるか否かを判定し、シフトアップであると判定された場合は、処理をS9に進め、シフトアップではない、つまりシフトダウンであると判定された場合は、処理をS15に進める。
S9では、シフトコントローラ74は、図3(c)で説明したように、解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを増加させるために、通常の変速制御に用いる油圧のベース値P1B、P2Bに所定値P1AD1、P2AD1を加算して増圧する。具体的には、解放側クラッチの締結トルクToffの油圧P1offは、油圧のベース値P1Bに所定値P1AD1を加算して算出し、係合側クラッチの締結トルクTonの油圧P2onは、油圧のベース値P2Bに所定値P2AD1を加算して算出する。なお、所定量P1AD1、P2AD1は、変速機の型式やエンジン出力などに応じて予め実験等により決められており(例えば、10Nm)、シフトコントローラ74のROMに記憶されている。
S11では、シフトコントローラ74は、変速動作がイナーシャ相に移行するタイミングか否かを判定し、イナーシャ相に移行するタイミングであると判定された場合は、処理をS13に進め、イナーシャ相に移行するタイミングではないと判定された場合は、処理をS15に進める。イナーシャ相に移行するタイミングであるかの判定は、変速開始後からの経過時間に基づいて判定できる。
S13では、シフトコントローラ74は、S9で算出された油圧P1off、P2onに基づいて解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを制御する。S15では、シフトコントローラ74は、油圧のベース値P1B、P2Bに基づいて解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを制御する。ここで、S13、S15では、変速動作がイナーシャ相に移行するタイミングであるか否かに応じて、解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonをベース値P1B、P2Bで制御するか、加算した値P1off、P2onで制御するかを切り替えている。これは、イナーシャ相では解放側クラッチと係合側クラッチの回転差が大きくなり、最も発熱する(発熱の大部分を占める)からである。換言すると、イナーシャ相以外では、解放側クラッチと係合側クラッチが吸収する熱量がそれほど大きくならず、クラッチ吸収熱量への寄与度が小さいため、ベース値で制御している。
S17では、シフトコントローラ74は、変速動作が終了するのを待ち、変速動作が終了すると処理をS31に進める。シフトコントローラ74は、変速動作が図3(c)で説明した変速終了タイミングCに移行した場合に変速動作が終了したと判定する。
一方、シフトコントローラ74は、S5でクラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0を超えたと判定した場合は、S9で算出された油圧P1off、P2onを減算する処理を行う(S19〜S29)。図5(a)は、本実施形態の初期慣らし制御において、解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルクを徐々にベース値に戻す場合の締結トルクの変化を示すタイミングチャートである。本実施形態では、クラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0を超えた後に油圧が一気にベース値に戻され、締結トルクが急激に低下しないように制御している。具体的には、解放側クラッチの締結トルクToffの油圧P1offから所定値P1SUBが減算され、係合側クラッチの締結トルクTonの油圧P2onから所定値P2SUBが減算される。なお、所定量P1SUB、P2SUBは、変速機の型式やエンジン出力などに応じて予め実験等により決められており(例えば、0.2Nm)、シフトコントローラ74のROMに記憶されている。
S19では、シフトコントローラ74は、S7と同様に、シフトアップであるか否かを判定し、シフトアップであると判定された場合は、処理をS21に進め、シフトアップではない、つまりシフトダウンであると判定された場合は、処理をS27に進める。
S21では、シフトコントローラ74は、図5(a)に示すように、解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを徐々にベース値に戻すために、S9で算出された油圧P1off、P2onから所定値P1SUB、P2SUBを減算する。
S23では、シフトコントローラ74は、S11と同様に、変速動作がイナーシャ相に移行するタイミングであるか否かを判定し、イナーシャ相に移行するタイミングであると判定された場合は、処理をS25に進め、イナーシャ相に移行するタイミングではないと判定された場合は、処理をS27に進める。
S25では、シフトコントローラ74は、S21で減算された油圧P1off、P2onに基づいて解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを制御する。S27では、シフトコントローラ74は、油圧のベース値P1B、P2Bに基づいて解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを制御する。ここで、S25、S27で変速動作がイナーシャ相に移行するタイミングであるか否かに応じて、解放側クラッチの締結Toffと係合側クラッチの締結トルクTonをベース値P1B、P2Bで制御するか、減算した値P1off、P2onで制御するかを切り替えている理由は、S13で説明した通りである。
S29では、シフトコントローラ74は、変速動作が終了するのを待ち、変速動作が終了すると処理をS31に進める。シフトコントローラ74は、変速動作が図3(c)で説明した変速終了タイミングCに移行した場合に変速動作が終了したと判定する。
S31では、シフトコントローラ74は、今回の変速制御サイクルにより各クラッチが吸収した熱量Qを上記式1により積算し、シフトコントローラ74のROMに記憶されている積算値(生涯熱量)を更新し、S33に進む。
S33では、シフトコントローラ74は、S9で算出された油圧P1off、P2onがS21で減算されてベース値P1B、P2Bに戻ったか否かを判定し、戻ったと判定した場合は、処理をS35に進め、戻っていないと判定した場合は、処理をS3に戻す。
S35では、シフトコントローラ74は、初期慣らし制御を終了し、通常の変速制御に戻して、処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、変速機の初期慣らしが必要な期間においてNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、初期慣らしを促進することができる。
[変形例]
上述した実施形態では、図5(a)で説明したように、解放側クラッチと係合側クラッチの締結トルクを徐々にベース値に戻すようにしたが、初期慣らし制御によってクラッチ吸収熱量が必要熱量に達しても効果にバラツキがあり、NE吹きが発生する場合がある。
そこで、本変形例では、上述した初期慣らし制御において、解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonをベース値に戻す際に、NE吹きを検出したならば、図5(b)に示すように、減算した解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonの油圧P1off、P2onに所定値P1AD2、P2AD2を加算する。これにより、解放側クラッチと係合側クラッチの共噛み量を微増させ、NE吹きを抑制している。
以下に、図6のフローチャートを参照して、本実施形態の初期慣らし制御の変形例について説明する。
なお、図6のフローチャートにおいて、図4と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明を行う。
S21での減算処理の後、S41では、シフトコントローラ74は、変速前後のメインシャフトの回転数差を監視し、NE吹きを検出する。S41でNE吹きが検出された場合は、処理をS43に進め、NE吹きが検出されない場合は、処理をS23に進める。なお、NE吹きの判定は、変速前の解放側クラッチの差回転(滑り量)によって判定できる。解放側クラッチの差回転は、車速と解放側ギア段レシオによって求められる想定メインシャフト回転数と実際のメインシャフト回転数の差によって算出できる。
S43では、シフトコントローラ74は、S9と同様に、図5(b)で説明したように、S21で減算された解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonの油圧P1off、P2onに所定値P1AD2、P2AD2を加算する。その後、S25では、シフトコントローラ74は、S43で算出された油圧P1off、P2onに基づいて解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonを制御し、処理をS29に進める。
なお、S21で減算する値P1SUB、P2SUBと、S43で加算する値P1AD2、P2AD2は同じ値にしてもよいし、異なる値としてもよい。
以上のように、本変形例によれば、上述した初期慣らし制御において、解放側クラッチの締結トルクToffと係合側クラッチの締結トルクTonをベース値に戻す際に、NE吹きを検出したならば、解放側クラッチと係合側クラッチの共噛み量を微増させて、NE吹きを抑制することができる。
<初期慣らし制御における必要熱量の補正処理>
次に、図7のタイミングチャートと図8のフローチャートを参照して、本実施形態の図4および図6の初期慣らし制御におけるS1での必要熱量の補正処理の詳細について説明する。
図4および図6で説明した初期慣らし制御によりクラッチ吸収熱量が増加してくると、図7に示すように、アクセルオフ時(アクセルペダルスイッチのオフ時)かつインギヤ時(NレンジまたはPレンジからDレンジへのセレクト時)のメインシャフトの回転変化量(回転数の変化量、変化時間、変化速度の少なくともいずれか)ΔNMが変化する。具体的には、初期慣らし制御によりクラッチが吸収した生涯熱量の度合い(熱量吸収度合い)が大きくなる、つまりクラッチ吸収熱量が増加してくるにつれて、メインシャフトの回転変化量ΔNMが大きくなり(ΔNM1>ΔNM2>ΔNM3)、メインシャフトの回転数NMの低下が速くなる(NM1>NM2>NM3)。よって、このメインシャフトの回転変化量ΔNMを熱量吸収度合いを示す指標として用いて初期慣らし制御により熱量吸収度合いを判定し、熱量吸収度合いが大きくなるほどクラッチ吸収熱量の判定閾値である必要熱量を減算するように補正処理を行う。なお、メインシャフトは、本実施形態の変速機Tでは、NレンジまたはPレンジからDレンジへのインギヤでは1速から始まるので奇数段入力軸16に対応する。
以下に、図8のフローチャートを参照して、本実施形態の初期慣らし制御における必要熱量の補正処理(図4および図6におけるS1での処理)について説明する。
S51では、シフトコントローラ74は、図4および図6のクラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0から所定量αを減じた閾値を超えたか否かを判定する。S51でクラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0−αを超えたと判定した場合は、処理をS53に進め、クラッチ吸収熱量Qが必要熱量Q0−α以下であると判定した場合は、処理を終了する。
S53では、シフトコントローラ74は、車両が停止中か否かを判定する。ここで、シフトコントローラ74は、アクセルペダルスイッチがオフ(アクセル開度APがゼロ)かつブレーキペダルスイッチがオン(車速Vがゼロ)の場合に車両停止中であると判定する。S53で車両が停止中と判定された場合は、処理をS55に進め、車両停止中ではない、つまり車両走行中であると判定された場合は、処理を終了する。
S55では、シフトコントローラ74は、変速機Tがインギヤ状態であるか否かを判定する。具体的には、シフトコントローラ74は、NレンジまたはPレンジからDレンジに切り替えられた場合にインギヤ状態であると判定する。なお、インギヤ状態は、1速段へのプリシフト動作後に第1クラッチ24が締結された状態に対応する。S55でインギヤ状態であると判定された場合は、処理をS57に進め、インギヤ状態ではないと判定された場合は、処理を終了する。
S57では、シフトコントローラ74は、メインシャフト(本実施形態では、奇数段入力軸16)の回転変化量ΔNMを検出・演算する。
S59では、シフトコントローラ74は、メインシャフトの回転変化量ΔNMが所定の閾値ΔNM1を超えているか否かを判定する。S59でメインシャフトの回転変化量ΔNMが閾値ΔNM1を超えていると判定された場合は、処理をS61に進め、メインシャフトの回転変化量ΔNMが閾値ΔNM1以下であると判定された場合は、処理をS63に進める。なお、閾値ΔNM1は、予め実験等により決められており、シフトコントローラ74のROMに記憶されている。
S61では、シフトコントローラ74は、メインシャフトの回転数NMの低下が速い(インギヤまでの時間が短い)ので、熱量吸収度合いが大きい(所定のレベルを満たしている)と判定して、必要熱量Q0から所定量ΔQを減算し、ROMに記憶されている必要熱量Q0の値を更新する。なお、所定量ΔQは、予め実験等により決められており、シフトコントローラ74のROMに記憶されている。
また、S63では、シフトコントローラ74は、メインシャフトの回転数NMの低下が遅い(インギヤまでの時間が長い)ので、熱量吸収度合いが小さい(所定のレベルを満たしていない)と判定して、必要熱量Q0に所定量ΔQを加算し、ROMに記憶されている必要熱量Q0の値を更新する。
上記S61およびS63で算出された必要熱量Q0は、図4および図6のS5で説明したクラッチ吸収熱量の判定処理に用いられる。すなわち、現時点での初期慣らし制御による熱量吸収度合いに応じて、初期慣らし制御に必要な熱量Q0が適切に調整されることなる。
なお、本実施形態では、メインシャフトの回転変化量ΔNMを評価値として用いて熱量吸収度合いを判定したが、メインシャフトの回転変化時間や回転変化速度を評価値として用いてもよい。この場合、メインシャフトの回転変化時間が短い場合や回転変化速度が速い場合に熱量吸収度合いが大きいと判定し、メインシャフトの回転変化時間が長い場合や回転変化速度が遅い場合には熱量吸収度合いが小さいと判定すればよい。
以上のように、本実施形態によれば、アクセルオフ時かつインギヤ時の車両が安定した状態でメインシャフトの回転変化量ΔNMを評価値として用いて初期慣らし制御における熱量吸収度合いを判定するので、クラッチ吸収熱量Qの判定閾値である必要熱量Q0を適切に調整できる。
上述した実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。例えば、本実施形態では、共噛み期間におけるクラッチの締結トルクを増加したが、油圧供給時間を制御してもよい。また、本実施形態の初期慣らし制御をクラッチ劣化時の制御に適用してもよい。この場合、現状のクラッチ吸収熱量(生涯熱量)からクラッチの劣化状態を判定し、この判定結果に応じて制御を切り替えればよい。
また、本実施形態の初期慣らし制御はツインクラッチ型の変速機に限られず、プラネタリギヤやクラッチおよびブレーキの解放および係合により変速段を確立する4ATや5ATと呼ばれる従来の自動変速機に適用することも可能である。また、原動機としてエンジン(内燃機関)を例示したが、それに限られるものではなく、エンジンと電動機とのハイブリッドであっても良く、電動機であってもよい。
また、本発明は、上述した実施形態の初期慣らし制御に対応するコンピュータプログラムや当該コンピュータプログラムが格納された記憶媒体を、車両に搭載されたコンピュータに供給して、当該コンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
<実施形態のまとめ>
(構成1)
変速段を確立するための複数のギヤ機構(60)と摩擦要素(24、26)とを備える自動変速機(T)の制御装置であって、
上記摩擦要素(24、26)を、トルク伝達可能に締結される係合状態と、上記係合状態が解除された解放状態との間で動作させるための油圧を供給する油圧供給手段(70)と、
変速動作中に上記複数の摩擦要素のいずれか一方を係合状態(Ton)としつつ上記複数の摩擦要素のいずれか他方を解放状態(Toff)に切り替えるように上記摩擦要素を動作させる油圧を制御する油圧制御手段(74)と、を有し、
上記油圧制御手段(74)は、上記複数の摩擦要素(24、26)が係合状態と解放状態との間で切り替わるときに上記摩擦要素(24、26)が吸収した熱量(Q)に基づいて、上記摩擦要素(24、26)が所定の熱量(Q0)を吸収したか否かを判定し、
上記所定の熱量を吸収していないと判定した場合には、変速動作(L2)において上記摩擦要素(24、26)を係合状態または解放状態に切り替えるときに供給する油圧を所定の油圧(P1off、P2on)に増圧する。
この構成1によれば、自動変速機の摩擦要素が必要な熱量を吸収するまでNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、熱量吸収を促進することができる。
(構成2)
上記構成1において、上記油圧制御手段(74)は、上記摩擦要素(24、26)の摩擦面に熱を加えるための初期慣らし制御を実行し、
上記初期慣らし制御の際に上記摩擦要素(24、26)ごとに所定の熱量(Q0)を吸収したか否かを判定し、
上記所定の熱量を吸収していないと判定された場合には、変速動作(L2)において係合側の摩擦要素と解放側の摩擦要素のそれぞれに供給する油圧を所定の油圧(P1off、P2on)に増圧し、
上記所定の熱量(Q0)を吸収したと判定した場合には、上記初期慣らし制御から上記係合側の摩擦要素と上記解放側の摩擦要素のそれぞれをベースの油圧(P1B、P2B)で制御する通常の変速制御に戻す。
この構成2によれば、自動変速機の摩擦要素の初期慣らしが必要な期間においてNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、初期慣らしを促進することができる。
(構成3)
上記構成2において、上記初期慣らし制御は、変速動作がアップシフトであって、変速動作がイナーシャ相(L2b)に移行するタイミングで実行される。
この構成3によれば、発熱の大部分を占めるイナーシャ相で摩擦要素に熱量を吸収させて、初期慣らしを促進することができる。
(構成4)
上記構成2または3において、上記油圧制御手段(74)は、上記所定の熱量(Q0)を吸収したと判定した場合には、上記増圧した油圧(P1off、P2on)から所定量(P1SUB、P2SUB)を徐々に減算した油圧で上記初期慣らし制御を実行し、上記通常の変速制御に戻す。
この構成4によれば、摩擦要素が必要な熱量を吸収したと判定された後の解放側摩擦要素と係合側摩擦要素のトルクの急激な変動を抑えることができる。
(構成5)
上記構成2から4のいずれかにおいて、上記油圧制御手段(74)は、上記所定の熱量(Q0)を吸収したと判定し、上記増圧した油圧(P1off、P2on)から所定量(P1SUB、P2SUB)を徐々に減算した油圧で上記初期慣らし制御を行う場合に、上記解放側の摩擦要素に連結された入力軸に所定の回転変動が検出された場合には、上記減算した油圧に所定量(P1AD2、P2AD2)を加算した油圧で上記初期慣らし制御を実行する。
この構成5によれば、摩擦要素が必要な熱量を吸収したと判定された後の解放側摩擦要素と係合側摩擦要素のトルクの急激な変動を抑えつつ、NE吹きが発生する場合には油圧を調整してNE吹きや変速ショックを抑制することができる。
(構成6)
上記構成1から5のいずれかにおいて、上記自動変速機(T)は、複数の第1の変速段から所定の変速段を選択するギヤ選択機構(60)が設けられた入力軸(16)に原動機(10)の駆動力を伝達する第1の摩擦要素(24)と、複数の第2の変速段から所定の変速段を選択するギヤ選択機構(60)が設けられた入力軸(14)を上記原動機(10)の駆動力を伝達する第2の摩擦要素(26)と、を有し、
上記油圧制御手段(74)は、上記変速動作において上記第1の摩擦要素(24)と上記第2の摩擦要素(26)の係合状態と解放状態を切り替える。
この構成6によれば、ツインクラッチ型の自動変速機の摩擦要素の初期慣らしが必要な期間においてNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、初期慣らしを促進することができる。
(構成7)
上記構成6において、上記第1の摩擦要素(24)と上記第2の摩擦要素(26)は油圧により作動する湿式多板クラッチである。
この構成7によれば、ツインクラッチ型の自動変速機の湿式多板クラッチの初期慣らしが必要な期間においてNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、初期慣らしを促進することができる。
(構成8)
変速段を確立するための複数のギヤ機構(60)と摩擦要素(24、26)と、
上記摩擦要素を、トルク伝達可能に締結される係合状態と、上記係合状態が解除された解放状態との間で動作させるための油圧を供給する油圧供給手段(70)と、
変速動作中に上記複数の摩擦要素のいずれか一方を係合状態(Ton)としつつ上記複数の摩擦要素のいずれか他方を解放状態(Toff)に切り替えるように上記摩擦要素を動作させる油圧を制御する油圧制御手段(74)と、を有する自動変速機の制御方法であって、
上記複数の摩擦要素(24、26)が係合状態と解放状態との間で切り替わるときに上記摩擦要素(24、26)が吸収した熱量(Q)に基づいて、上記摩擦要素(24、26)が所定の熱量(Q0)を吸収したか否かを判定するステップと、
上記所定の熱量を吸収していないと判定された場合には、変速動作(L2)において上記摩擦要素(24、26)を係合状態または解放状態に切り替えるときに供給する油圧を所定の油圧(P1off、P2on)に増圧するステップと、を有する。
この構成8によれば、自動変速機の摩擦要素が必要な熱量を吸収するまでNE吹きや変速ショックを抑制しつつ、熱量吸収を促進することができる。