以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.第一実施形態]
[1−1.装置構成]
本実施形態の排気浄化装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン(内燃機関)1に適用される。図1には、エンジン1に設けられる複数のシリンダ2のうちの一つを示すが、他のシリンダ2も同様の構成である。エンジン1のシリンダ2内には、頂面にキャビティが形成されたピストン3が設けられ、シリンダ2内を上下方向に往復摺動する。
シリンダ2上部のシリンダヘッドには、燃料噴射用の筒内噴射弁(インジェクタ)4が設けられる。筒内噴射弁4は、その先端部がシリンダ2の筒内空間に突出して設けられ、シリンダ2内に直接燃料を噴射する。筒内噴射弁4の基端部には燃料配管が接続され、この燃料配管から加圧された燃料が筒内噴射弁4に供給される。筒内噴射弁4からの燃料噴射量及びその噴射タイミングは、後述のエンジン制御装置40で制御される。
シリンダヘッドには、シリンダ2の筒内空間と連通する吸気ポート5及び排気ポート6が設けられ、これらの各ポート5,6を開閉するための吸気弁7及び排気弁8が設けられる。吸気ポート5の上流側にはインテークマニホールド9(以下、インマニ9という)が設けられ、インマニ9には吸気ポート5側へと流れる空気を一時的に溜めるためのサージタンク10が設けられる。インマニ9の上流端には、電子制御式のスロットルバルブ11を内蔵したスロットルボディ(図示略)が接続され、このスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)に応じてインマニ9側へと流通する空気量が調節される。なお、スロットル開度は、エンジン制御装置40で制御される。スロットルボディの上流側には吸気通路12が接続される。吸気通路12の最上流にはエアフィルタ13が設けられ、エアフィルタ13で濾過された新気が吸気通路12に導入される。
一方、排気ポート6よりも排気下流側には、複数のシリンダ2から合流するように形成されたエキゾーストマニホールド15(以下、エキマニ15という)が設けられ、エキマニ15の下流側には排気通路16が接続される。また、このエンジン1の吸排気系には、排気圧を利用してシリンダ2内に吸気を過給するターボチャージャ(過給機)17が設けられる。ターボチャージャ17は、吸気通路12と排気通路16との両方にまたがって介装された過給機である。ターボチャージャ17は、排気通路16内の排気圧で排気通路16上のタービンを回転させ、その回転力を利用して吸気通路12上のコンプレッサを駆動することにより、吸気通路12側の吸気を圧縮してエンジン1への過給を行う。なお、吸気通路12におけるコンプレッサよりも吸気流の下流側にはインタクーラ14が設けられ、圧縮された空気が冷却される。
本実施形態に係るエンジン1には、排気通路16を流通する排気を吸気通路12へ還流させるEGR通路18(排気再循環通路や還流通路ともいう)が設けられる。EGR通路18は、ターボチャージャ17のタービンよりも上流側の排気通路16とコンプレッサよりも下流側の吸気通路12とを連通し、いわゆる高圧EGR通路を構成する。EGR通路18と吸気通路12との接続部には、EGR弁19が内蔵され、EGR通路18を流通する還流ガス量がEGR弁19の開度に応じて調節される。EGR弁19の開度は、エンジン制御装置40によって制御される。なお、EGR通路18には、還流ガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。
排気通路16のタービンの下流側には、排気浄化装置30として、排気流れ方向の上流側から順に上流NOxトラップ触媒(第一触媒)31,フィルタ32,下流NOxトラップ触媒(第二触媒)33が介装される。排気通路16を流通する排気は、排気浄化装置30において浄化された後、車外へと排出される。なお、排気浄化装置30には、後述するエンジン制御装置40が含まれる。
上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33は、何れも酸化雰囲気下(排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態)で排気中のNOx(所定成分)を硝酸塩として担体上に吸蔵し、還元雰囲気下(排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな状態)で吸蔵したNOxを放出してN2に還元する機能を有する。これらの機能に対応して、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33には、NOxの吸蔵機能を担う吸蔵材と、還元機能を担う貴金属元素等とがそれぞれ担持される。
ここでは、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33の構成成分(吸蔵材や貴金属元素等の種類及び量)は同一であるものとし、これらを特に区別しない場合はNOxトラップ触媒31,33と表す。なお、図1では下流NOxトラップ触媒33の方が上流NOxトラップ触媒31よりも容量が大きい場合を例示しているが、NOxトラップ触媒31,33が同一容量であってもよい。これらNOxトラップ触媒31,33は、ある温度域で優れたNOx浄化性能を持つ(ある温度域にNOx浄化性能のピークを有する)という性質がある。言い換えると、NOx浄化性能は常に一定ではなく、NOxトラップ触媒31,33の温度に応じて変化するものであり、ある温度域で最も高いNOx浄化性能を発揮する。
上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33は、容量に応じて吸蔵しうるNOxの量(最大量)がそれぞれ決まっている。上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した各NOxの量がそれぞれ最大量(飽和状態)に近づくと、エンジン制御装置40により上流NOxトラップ触媒31又は下流NOxトラップ触媒33に吸蔵したNOxを放出してN2に還元する制御(以下、これをNOxパージ制御という)が実施される。
また、これらNOxトラップ触媒31,33には、排気中の硫黄成分(所定成分、単にSとも表す)が吸蔵しうる性質がある。NOxトラップ触媒31,33に吸蔵してしまった硫黄成分は、上記のNOxパージ制御では僅かな量しか放出されないため、NOxトラップ触媒31,33は徐々に増加する硫黄成分によって本来の機能であるNOxを吸蔵するという能力(性能)が低下する。これはS被毒と呼ばれ、NOxトラップ触媒31,33のS被毒を解消すべく、エンジン制御装置40によってこの硫黄成分をNOxトラップ触媒31,33から放出させる制御(以下、これをSパージ制御という)が上記のNOxパージ制御とは別で実施される。なお、以下の説明において、NOxトラップ触媒31,33に吸蔵している硫黄成分の量(吸蔵量)を吸蔵S量という。
フィルタ32は、排気中の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMという)を捕集する多孔質フィルタであり、熱容量が比較的大きい。フィルタ32の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成され、排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集される。フィルタ32では、捕集されたPMが連続的に酸化される連続再生と、エンジン制御装置40によってPMが強制的に燃焼されてフィルタ32を再生する再生制御とが実施される。
排気浄化装置30は、排気通路16に上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とがフィルタ32を挟んで配置されているため、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とでは温度状態が異なる。これは、排気通路16の上流ほど排気温度が高いため、上流NOxトラップ触媒31の方が下流NOxトラップ触媒33よりも排気熱によって昇温されやすいからである。高温の排気は、上流NOxトラップ触媒31を通過することで熱が奪われて温度低下し、さらに熱容量の大きなフィルタ32を通過することで温度低下した後、下流NOxトラップ触媒33を通過する。そのため、下流NOxトラップ触媒33は、上流NOxトラップ触媒31よりも昇温されにくく、上流NOxトラップ触媒31よりも温度が低い状態となる。なお、排気温度はエンジン1の運転状態(エンジン負荷)に応じて変化し、高負荷ほど排気温度は高くなる傾向がある。
上記のように、NOxトラップ触媒31,33は、ある温度域にNOx浄化性能のピークを有するため、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを温度帯の異なる場所に配置することで、上流NOxトラップ触媒31が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態と、下流NOxトラップ触媒33が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態とを相違させることができる。これにより、システム全体のNOx浄化性能を高めることが可能となる。これについて、図2を用いて説明する。図2中の破線及び一点鎖線は、それぞれ上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33のNOx浄化性能を示し、実線はシステム全体のNOx浄化性能を示す。横軸のエンジン負荷は、上記したように排気温度と正の相関関係を有し、高負荷ほど排気温度は高い。
図2に示すように、低負荷側では上流NOxトラップ触媒31がNOx浄化性能のピークを持ち、高負荷側では下流NOxトラップ触媒33がNOx浄化性能のピークを持つ。これは、エンジン1の負荷が低い場合は、排気熱により上流NOxトラップ触媒31は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温される一方、下流NOxトラップ触媒33は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温されないためである。また、エンジン1の負荷が高い場合は、排気熱により上流NOxトラップ触媒31は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域よりも高温まで昇温されてしまってNOx浄化性能が低下するのに対し、下流NOxトラップ触媒33は高温の排気が届いて高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温されるためである。
したがって、エンジン1の低負荷運転領域では、主に上流NOxトラップ触媒31によりNOxが浄化され、エンジン1の高負荷運転領域では、主に下流NOxトラップ触媒33によりNOxが浄化されることになるため、システム全体で見ると、エンジン1の運転領域全体に亘って高いNOx浄化性能を確保することができる。
排気浄化装置30は、上流NOxトラップ触媒31の直上流の排気通路16に設けられた上流インジェクタ34と、フィルタ32の下流側であって下流NOxトラップ触媒33の直上流の排気通路16に設けられた下流インジェクタ35とを備える。これらのインジェクタ34,35は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元剤を排気通路16へ直接供給する噴射弁であり、何れもその先端部が排気通路16内に突出して設けられる。また、インジェクタ34,35の各基端部には燃料ポンプへと繋がる燃料配管が接続されており、ここでは還元剤として燃料が用いられる。
インジェクタ34,35は、上記のNOxパージ制御及びSパージ制御において、還元剤を上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33にそれぞれ供給し、上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33の各周辺雰囲気を還元雰囲気(リッチ雰囲気)にするとともに上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33を昇温させる。インジェクタ34,35からの還元剤の噴射量及びその噴射タイミングは、エンジン制御装置40で制御される。
吸気通路12のエアフィルタ13とコンプレッサとの間には、吸気流量を検出するエアフローセンサ21が設けられる。吸気流量は、エアフィルタ13を通過した空気の流量に対応するパラメータである。吸気通路12のEGR弁19とサージタンク10との間には、吸気の空燃比を検出するための空燃比センサ22が設けられる。空燃比センサ22は、吸気通路12を流通する吸気の酸素濃度を検出し、酸素濃度に比例する値を出力する、いわゆるリニア空燃比センサである。また、サージタンク10内には、インマニ圧センサ23及び吸気温センサ24が設けられる。インマニ圧センサ23はサージタンク10内の圧力をインマニ圧として検出し、吸気温センサ24はサージタンク10内の吸気温度を検出する。
排気通路16の上流インジェクタ34の下流であって上流NOxトラップ触媒31の上流には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ25及び排気温度を検出する排気温センサ26が設けられる。また、排気通路16の下流インジェクタ35の下流であって下流NOxトラップ触媒33の上流には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ27及び排気温度を検出する排気温センサ28が設けられる。なお、これらのほかにも、例えばエンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサや、エンジン1の冷却水の温度を検出する冷却水温センサ,筒内噴射弁4やインジェクタ34,35から噴射される燃料の圧力を検出する燃圧センサ等を設けてもよい。各種センサ21〜28で検出された各種情報は、エンジン制御装置40に伝達される。
上記のエンジン1を搭載する車両には、エンジン制御装置(制御手段)40が設けられる。このエンジン制御装置40は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置や空調制御装置といった他の電子制御装置が互いに通信可能に接続される。
エンジン制御装置40は、エンジン1に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン1の各シリンダ2に対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダ2の点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置40の入力ポートには、前述の各種センサ21〜28が接続される。エンジン制御装置40の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁4から噴射される燃料噴射量とその噴射タイミング,ターボチャージャ17の作動状態,スロットル開度,EGR弁19の開度,上流インジェクタ34及び下流インジェクタ35から噴射される還元剤噴射量とその噴射タイミング等が挙げられる。本実施形態では、上記したNOxトラップ触媒31,33のSパージ制御とフィルタ32の再生制御の二つの制御について、さらに詳述する。
[1−2.制御構成]
図1に示すように、上記の二つの制御を実施するための要素として、エンジン制御装置40には、推定部41,上流Sパージ制御部42,下流Sパージ制御部43,再生制御部44が設けられる。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
推定部41は、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分の量(吸蔵S量Aという)と、下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した硫黄成分の量(吸蔵S量Bという)と、フィルタ32に堆積したPMの量(PM堆積量Dという)とを推定するものである。これらの推定手法には、種々の公知技術を適用可能である。吸蔵S量A,Bの推定手法の一例を説明する。エンジン制御装置40には、エンジン1から排出された硫黄成分の全体量に対して、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵しうる硫黄成分の量の割合R1(吸蔵S量A/全体量)と、下流NOxトラップ触媒33に吸蔵しうる硫黄成分の量の割合R2(吸蔵S量B/全体量)とが予め記憶されている。なお、排気上流側に位置する上流NOxトラップ触媒31の方が下流NOxトラップ触媒33よりも硫黄成分が多く吸蔵するため、R1>R2に設定されている。また、エンジン1から排出される硫黄成分の全体量は、エンジン1において使用される燃料の量と燃料の種類とに依存する。
推定部41は、前回のSパージ制御の終了後から使用された燃料量を積算し、積算した使用燃料量に燃料の種類に応じた係数を乗算することで硫黄成分の全体量を推定する。そして、推定した全体量に割合R1を乗算して上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aを推定するとともに、全体量に割合R2を乗算して下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bを推定する。また、推定部41は、後述のSパージ制御が実施されているときは、上記の硫黄成分の全体量に割合R1,R2を乗算した値から、Sパージ制御中に放出される硫黄成分の量をそれぞれ減算することで、吸蔵S量A,Bを推定する。なお、Sパージ制御中に放出される硫黄成分の量は、例えば吸蔵S量A,Bや、排気の空燃比,温度,流量等に基づいて公知の手法により推定可能である。
また、PM堆積量Dの推定手法の一例として、推定部41は、エンジン1の回転速度やエンジン負荷等に基づき、エンジン1から排出されるPMの量を推定して、これを前回の再生制御の終了後から積算することでPM堆積量Dを推定する。あるいは、フィルタ32の上下流の差圧を検出又は推定して、この差圧に基づいてPM堆積量Dを推定する手法も公知であり、推定部41はこのような手法によりPM堆積量Dを推定してもよい。推定部41は、推定した吸蔵S量A,B及びPM堆積量Dを、上流Sパージ制御部42,下流Sパージ制御部43及び再生制御部44に伝達する。
上流Sパージ制御部42は、上流NOxトラップ触媒31の硫黄成分の吸蔵状況(吸蔵S量A)に基づき、還元剤を供給して上流NOxトラップ触媒31から硫黄成分を放出させるSパージ制御(第一パージ制御,以下、上流Sパージ制御という)を実施するものである。具体的には、上流Sパージ制御部42は、推定部41で推定された吸蔵S量Aが所定の上流Sパージ開始閾値(第一閾値)As以上(A≧As)の場合に、上流インジェクタ34から所定量の還元剤を間欠的に噴射させることで、上流NOxトラップ触媒31の周辺雰囲気をリッチ化するとともに上流NOxトラップ触媒31をSパージ可能温度Tp以上に昇温させ、硫黄成分を放出させて還元する。
なお、上流Sパージ開始閾値Asは、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分を除去する必要性があるか否か(S被毒の許容限界)を判定するための閾値であり、NOxを吸蔵する能力の低下度合い等に基づいて予め設定されている。また、還元剤を間欠噴射させることで、硫化水素(H2S)の発生が抑制される。上流Sパージ制御部42は、上流Sパージ制御を開始した後に推定部41で推定された吸蔵S量Aが所定の上流Sパージ終了閾値Af未満(A<Af)になった場合に、上流インジェクタ34からの還元剤の噴射を停止させて上流Sパージ制御を終了する。
上流Sパージ制御部42は、後述の再生制御部44によって再生制御が必要と判断された場合は、吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上であっても再生制御が終了されるまでは上流Sパージ制御を待機し、再生制御が終了された後に上流Sパージ制御を開始する。つまり、フィルタ32の再生制御と上流NOxトラップ触媒31の上流Sパージ制御とでは、前者の優先度の方が高い。これは、上記のSパージ可能温度Tpがフィルタ32の再生制御時にフィルタ32に堆積したPMを燃焼させるときの温度よりも高く、フィルタ32の再生制御前に上流Sパージ制御が実施されることでPMが過剰に燃焼し、フィルタ32が異常発熱することを防止するためである。また、再生制御を実施した後に上流Sパージ制御を開始することで、上流NOxトラップ触媒31を素早くSパージ可能温度Tp以上に昇温させることができ、上流Sパージ制御の実施時間を短縮することが可能である。
また、上流Sパージ制御部42は、推定部41で推定された吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)の場合、上流Sパージ制御に先立って、吸気流量を絞ることで排気温度を上昇させる排気温度上昇制御を開始する。これは、上流NOxトラップ触媒31の前段部分では還元剤の燃焼による昇温効果が得られにくく、前段部分に吸蔵した硫黄成分が放出され始めるまでに時間がかかるため、これを回避するためにベースとなる排気温度を上昇させる。上流Sパージ制御部42は、排気温度上昇制御では、例えばスロットルバルブ11やターボチャージャ17の作動状態を制御することで吸気流量を減少させ、単位排気流量当たりの熱量を増加させることで排気温度を上昇させる。なお、上流Sパージ制御部42は、上流Sパージ制御の終了と共に排気温度上昇制御を終了する。
下流Sパージ制御部43は、上流Sパージ制御部42によって上流Sパージ制御が実施されるときの下流NOxトラップ触媒33の硫黄成分の吸蔵状態(吸蔵S量B)に基づき、還元剤を供給して下流NOxトラップ触媒33から硫黄成分を放出させるSパージ制御(第二パージ制御,以下、下流Sパージ制御という)を実施するものである。つまり、下流Sパージ制御部43は、上流Sパージ制御部42による上流Sパージ制御が開始された後に(すなわち上流Sパージ制御が実施される場合に限って)、下流Sパージ制御を開始する。これにより、上流Sパージ制御と下流Sパージ制御とは、同時連続的に実施されることとなる。なお、同時連続的とは、上下流のSパージ制御を同じタイミングで実施するが、上流側を先行して開始し、これに連続して下流側を開始することを意味する。
具体的には、下流Sパージ制御部43は、上流Sパージ制御部42による上流Sパージ制御の開始後において、推定部41で推定された吸蔵S量Bが所定の下流Sパージ開始閾値(第二閾値)Bs以上(B≧Bs)の場合に、下流インジェクタ35から所定量の還元剤を間欠的に噴射させ、下流NOxトラップ触媒33の周辺雰囲気をリッチ化するとともに下流NOxトラップ触媒33をSパージ可能温度Tp以上に昇温させる。なお、下流Sパージ開始閾値Bsは、下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した硫黄成分を除去する必要性があるか否かを判定するための閾値であり、上記の上流Sパージ開始閾値Asよりも小さい値(Bs<As)に予め設定されている。これは、下流NOxトラップ触媒33のNOxを吸蔵する能力が大きく低下することを防止するためである。
これについて図3を用いて説明する。図3は、上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aと下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bの変化を模式的に示したグラフである。上流Sパージ制御部42は、上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上になった時点(時刻tX,tZ)から上流Sパージ制御を実施し、硫黄成分を放出させる。吸蔵S量Aが上流Sパージ終了閾値Af未満になったら、上流Sパージ制御は終了される。
一方、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bは、上流NOxトラップ触媒31よりも緩やかに上昇していき、時刻tXでの上流Sパージ制御時では下流Sパージ開始閾値Bsに達しないため、下流Sパージ制御部43は、この時点tXでは下流Sパージ制御を実施しない。下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bは、さらに増大していき、時刻tYで下流Sパージ開始閾値Bsに達するが、この時点では上流Sパージ制御が実施されないため、下流Sパージ制御部43は下流Sパージ制御を開始しない。言い換えると、下流Sパージ制御部43は、次の上流Sパージ制御が開始されるまで下流Sパージ制御を待機する。そして、時刻tZにおいて上流Sパージ制御が実施されるときに、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bは下流Sパージ開始閾値Bs以上であるため、下流Sパージ制御部43は下流Sパージ制御を開始する。
このように、下流NOxトラップ触媒33は、上流Sパージ制御が実施されるまで下流Sパージ制御が実施されずに待機される期間(図3の時刻tY〜tZ)が存在することがあるため、下流Sパージ開始閾値Bsを上流Sパージ開始閾値Asよりも小さい値にしておくことで、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bの過度な増大を防止でき、下流NOxトラップ触媒33のNOxを吸蔵する能力を確保することができる。
下流Sパージ制御部43は、下流Sパージ制御を開始した後に推定部41で推定された吸蔵S量Bが所定の下流Sパージ終了閾値Bf未満(B<Bf)になった場合に、下流インジェクタ35からの還元剤の噴射を停止させて下流Sパージ制御を終了する。なお、下流Sパージ終了閾値Bfは、上流Sパージ終了閾値Afと同一の値であってもよいし、異なる値に設定されていてもよい。
また、下流Sパージ制御部43は、下流Sパージ制御を終了する前に上流Sパージ制御部42により上流Sパージ制御が終了された場合、筒内噴射弁4にトルクに寄与しないタイミング(例えば膨張行程後半や排気行程)で燃料を噴射させる。すなわち、下流Sパージ制御部43は、先に上流Sパージ制御が終了した場合は、筒内噴射弁4にポスト噴射させることで排気通路16へ燃料を供給し、下流NOxトラップ触媒33の温度をSパージ可能温度Tp以上に保持する。下流Sパージ制御部43は、下流Sパージ制御の終了と共にポスト噴射を終了する。
再生制御部44は、フィルタ32に捕集されたPMの量(PM堆積量D)に基づいて、フィルタ32からPMを除去する再生制御の必要性を判断し、再生制御が必要と判断した場合に再生制御を実施するものである。具体的には、再生制御部44は、推定部41で推定されたPM堆積量Dが所定の再生開始閾値Ds以上(D≧Ds)の場合に再生制御が必要であると判断し、PM堆積量Dが再生開始閾値Ds未満の場合に再生制御が不要であると判断する。
再生制御部44は、再生制御が必要と判断した場合は、上流インジェクタ34から所定量の還元剤を間欠的に噴射させ、これを上流NOxトラップ触媒31上で燃焼させることで、フィルタ32を再生可能温度Tr以上に昇温させてPMを燃焼させる。再生開始閾値Dsは、フィルタ32に堆積したPMを強制的に燃焼させて除去する必要性があるか否かを判定するための閾値であり、フィルタ32の圧力損失の増加度合いやPM過堆積によるフィルタ32の溶損リスク等に基づいて予め設定されている。なお、再生制御では、上流インジェクタ34から還元剤を噴射する代わりに、筒内噴射弁4にポスト噴射させることで排気通路16に燃料を供給してもよい。
再生制御部44は、再生制御を開始した後に推定部41で推定されたPM堆積量Dが所定の再生終了閾値Df未満(D<Df)になった場合に、上流インジェクタ34からの還元剤の噴射又は筒内噴射弁4によるポスト噴射を停止させて、再生制御を終了する。なお、再生終了閾値Dfは、上流NOxトラップ触媒31の硫黄成分の吸蔵状況と下流NOxトラップ触媒33の硫黄成分の吸蔵状況とに応じて設定される値であり、これにより再生制御が実施される時間(実施時間)がNOxトラップ触媒31,33の吸蔵S量A,Bに応じて変更される。
具体的には、再生制御部44は、推定部41で推定された吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As未満(A<As)の場合、すなわち上流Sパージ制御が実施されないときは、通常の閾値D1を再生終了閾値Dfとして設定する。通常の閾値D1は、フィルタ32にほとんどPMが残らないようにするための値であり、0に近い値である。再生制御部44は、吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)であって、且つ、吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs以上(B≧Bs)の場合、すなわち上流Sパージ制御及び下流Sパージ制御が共に実施されるときも、通常の閾値D1を再生終了閾値Dfとして設定する。
再生制御部44は、吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)であって、且つ、吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs未満(B<Bs)の場合、すなわち上流Sパージ制御は実施されるが下流Sパージ制御は実施されないときは、通常の閾値D1よりもやや大きな値D2を再生終了閾値Dfとして設定する。これにより、この場合に限りフィルタ32にPMが少し残った状態で再生制御が終了されることになる。これは、フィルタ32の再生制御後に実施される上流Sパージ制御によって、フィルタ32に残留したPMは燃焼してフィルタ32から除去されるためである。
つまり、この場合に限り、あえてフィルタ32からPMを全て除去する前に再生制御を終了させることで、再生制御に使用される燃料量を抑制して燃費向上を図り、さらに残ったPMは次に行われる上流Sパージ制御によって除去することで、フィルタ32の再生を完了させる。なお、下流Sパージ制御も実施される場合は、フィルタ32にPMが残留していると、フィルタ32が過度に高温となるおそれがあるため、下流Sパージ制御も実施される場合は通常の閾値D1を再生終了閾値Dfとすることで、フィルタ32を保護する。
[1−3.フローチャート]
図4及び図5は、上記のSパージ制御及び再生制御の手順を説明するためのフローチャートである。これらのフローは、エンジン制御装置40において所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、これらのフローとは別に、上記の推定部41による吸蔵S量A,B及びPM堆積量Dの推定は常に実施されており、上流Sパージ制御部42,下流Sパージ制御部43及び再生制御部44は、推定された各推定値を読み込んで上流Sパージ制御,下流Sパージ制御及び再生制御を実施する。
図4に示すように、まず、再生制御部44では、推定部41で推定されたPM堆積量Dが読み込まれ(ステップS10)、フラグFDがFD=0であるか否かが判定される(ステップS20)。フラグFDは、再生制御の必要性の有無を判定するものであり、FD=1は必要性ありに対応し、FD=0は必要性がなしに対応する。フラグFD=0のときは、PM堆積量Dが再生開始閾値Ds以上(D≧Ds)であるか否かが判定され(ステップS30)、D≧DsであればフラグFDがFD=1に設定されて(ステップS40)、再生制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定される(ステップS50)。
また、ステップS20においてフラグFD=1のときは再生制御が必要なため、この場合もステップS50へ進む。つまり、再生制御の必要性がある場合には、Sパージ制御よりも優先して再生制御が実施される。ステップS50において、例えば排気温度やアクセル開度,エンジン回転速度等から再生制御を実施できる運転状態であれば、フィルタ32の再生制御が実施される(ステップS60)。なお、再生制御可能な運転状態でないときはこのフローをリターンし、次以降の演算周期で再生制御可能な運転状態になるまで、ステップS10,S20及びS50の処理が繰り返される。
続くステップS70〜S105は、吸蔵S量A,Bに応じて再生制御の実施時間を変更するための処理である。ステップS70では推定部41で推定された吸蔵S量A,Bが読み込まれ、吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)であるか否かが判定される(ステップS80)。A≧Asであれば、吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs以上(B≧Bs)であるか否かが判定される。(ステップS90)。A≧AsかつB≧Bsの場合、及び、A<Asの場合は、再生終了閾値Dfは通常の閾値D1に設定され(ステップS100)、A≧AsかつB<Bsの場合は、再生終了閾値Dfは通常の閾値D1よりも大きな値D2に設定される(ステップS105)。
そして、ステップS110では、PM堆積量DがステップS100又はS105で設定された再生終了閾値Df未満(D<Df)であるか否かが判定され、D<Dfとなるまで再生制御が継続される。なお、再生制御中もNOxトラップ触媒31,33には硫黄成分が吸蔵しうるため、再生制御の途中で再生終了閾値Dfが変わることがある。ステップS110でD<Dfとなると、再生制御は終了されて(ステップS120)、フラグFDがFD=0にリセットされ(ステップS130)、このフローをリターンする。
ステップS20でフラグFD=0であり、かつ、ステップS30でPM堆積量Dが再生開始閾値Ds未満(D<Ds)のときは、ステップS140に進み、Sパージ制御のフロー(図5)が実施される。図5に示すように、上流Sパージ制御部42では、推定部41で推定された上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aが読み込まれ(ステップW10)、フラグFAがFA=0であるか否かが判定される(ステップW15)。フラグFAは、上流Sパージ制御の開始条件が成立したか否かを判定するためのものであり、FA=1は開始条件成立(上流Sパージ制御の要求あり)に対応し、FA=0は開始条件の不成立(上流Sパージ制御の要求なし)に対応する。
フラグFA=0のときは、吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)であるか否かが判定され(ステップW20)、A≧AsであればフラグFAがFA=1に設定されて(ステップW25)、排気温度上昇制御が実施される(ステップW30)。続くステップW35では、例えば排気温度やアクセル開度,エンジン回転速度等から上流Sパージ制御を実施できる運転状態であるか否かが判定され、上流Sパージ制御を実施可能であれば、上流インジェクタ34による還元剤の噴射が開始されて上流Sパージ制御が実施される(ステップW40)。一方、上流Sパージ制御可能な運転状態でないときはこのフローをリターンし、次以降の演算周期で上流Sパージ制御可能な運転状態になるまで、ステップW10,W15,W30及びW35の処理が繰り返される。
上流Sパージ制御が開始された後は、吸蔵S量Aが上流Sパージ終了閾値Af未満(A<Af)であるか否かが判定される(ステップW45)。吸蔵S量Aはすぐには上流Sパージ終了閾値Af未満にはならないため、今度は下流Sパージ制御部43において、推定部41で推定された下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが読み込まれ、(ステップW75)、フラグFBがFB=0であるか否かが判定される(ステップW80)。フラグFBは、下流Sパージ制御の開始条件が成立したか否かを判定するためのものであり、FB=1は開始条件成立(下流Sパージ制御の要求あり)に対応し、FB=0は開始条件の不成立(下流Sパージ制御の要求なし)に対応する。
フラグFB=0のときは、吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs以上(B≧Bs)であるか否かが判定され(ステップW85)、B<Bsであれば下流Sパージ制御は不要であるため、このフローをリターンする。次の周期以降において、上流Sパージ制御が実施されている間に(ステップW45の条件が成立する前に)B≧Bsとならなければ、下流Sパージ制御は実施されない。一方、上流Sパージ制御が実施されている間に(ステップW45の条件が成立する前に)B≧Bsとなった場合は、フラグFBがFB=1に設定される(ステップW90)。
続いて、例えば排気温度やアクセル開度,エンジン回転速度等から下流Sパージ制御を実施できる運転状態であるか否かが判定され(ステップW95)、下流Sパージ制御を実施可能であれば下流インジェクタ35による還元剤の噴射が開始されて下流Sパージ制御が実施される(ステップW100)。これに対して、下流Sパージ制御可能な運転状態でないときはこのフローをリターンし、下流Sパージ制御可能な運転状態になったら下流Sパージ制御を実施する。下流Sパージ制御が開始された後は、吸蔵S量Bが下流Sパージ終了閾値Bf未満(B<Bf)であるか否かが判定される(ステップW105)。
上流Sパージ制御が実施されている間にB<Bfとなった場合(すなわちステップW105がステップW45よりも先に成立した場合)、下流インジェクタ35の噴射が停止されて下流Sパージ制御が終了される(ステップW110)。そして、フラグFBがFB=0にリセットされ(ステップW115)、このフローをリターンする。その後は、ステップW45においてA<Afが成立するまで排気温度上昇制御と上流Sパージ制御とが実施され、A<Afとなったら上流インジェクタ34の噴射が停止される(ステップW50)。そして、フラグFAがFA=0にリセットされ(ステップW55)、排気温度上昇制御が終了される(ステップW60)。なお、この時点で下流Sパージ制御を実施していなければ、フラグFBはFB=0に設定されているため、このフローをリターンする。
一方、下流Sパージ制御が実施されている間にA<Afとなった場合(すなわちステップW45がステップW105よりも先に成立した場合)、上流インジェクタ34の噴射が停止されて上流Sパージ制御が終了される(ステップW50)。そして、フラグFAがFA=0にリセットされ(ステップW55)、排気温度上昇制御が終了される(ステップW60)。この場合は、フラグFBはFB=1に設定されているため、ステップW65からステップW70へ進み、ポスト噴射が開始され、このフローをリターンする。
次の周期では、ステップW20からステップW120へ進み、フラグFBがFB=1であるか否かが判定され、吸蔵S量Bが読み込まれて(ステップW125)、B<Bfであるか否かが判定される(ステップW130)。B<Bfとなるまでこの処理が繰り返され、B<Bfとなったら下流インジェクタ35の噴射が停止されて下流Sパージ制御が終了される(ステップW135)。そして、ポスト噴射も停止され(ステップW140)、フラグFBがFB=0にリセットされて(ステップW145)、このフローをリターンする。
[1−4.作用]
図6(a)〜(c)に、Sパージ制御時の上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33の温度変化と制御内容とを示す。図6(a)に示すように、時刻t0で上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)になると、まずは上流Sパージ制御部42により排気温度上昇制御が開始され、これによりNOxトラップ触媒31,33の温度が徐々に上昇する。時刻t1で上流Sパージ制御の実施可能な運転状態となると、上流Sパージ制御が開始される。上流インジェクタ34から噴射された還元剤は、上流NOxトラップ触媒31の周辺雰囲気をリッチ化するとともに、上流NOxトラップ触媒31上で燃焼して上流NOxトラップ触媒31の温度をさらに高めていく。
上流NOxトラップ触媒31の温度がSパージ可能温度Tp以上になる時刻t2付近から、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵していた硫黄成分が放出され始める。なお、上流Sパージ制御中に、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs以上(B≧Bs)にならない場合は、図6(a)に示すように下流Sパージ制御は実施されない。この場合、下流NOxトラップ触媒33の温度は、上流Sパージ制御により上昇していくものの、Sパージ可能温度Tp以上となることはない。そして、時刻t3で吸蔵S量Aが上流Sパージ終了閾値Af未満(A<Af)になると、排気温度上昇制御が終了されるとともに、上流インジェクタ34による還元剤噴射も停止されて上流Sパージ制御が終了される。これにより、上流NOxトラップ触媒31は徐々に温度低下する。
また、上流Sパージ制御中に、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値Bs以上(B≧Bs)になった場合は、図6(b)及び図6(c)に示すように、下流Sパージ制御の実施可能な運転状態となった時刻t4から、下流Sパージ制御が開始される。下流インジェクタ35から噴射された還元剤は、下流NOxトラップ触媒33の周辺雰囲気をリッチ化するとともに、下流NOxトラップ触媒33上で燃焼して下流NOxトラップ触媒33の温度を高めていく。
下流Sパージ制御が実施される場合であっても、まずは上流NOxトラップ触媒31の温度がSパージ可能温度Tp以上となり(時刻t5)、この時点から上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分が放出され始める。なお、上流NOxトラップ触媒31の温度は、下流Sパージ制御が実施されないときと比べて高温となる。続いて、時刻t6において下流NOxトラップ触媒33の温度もSパージ可能温度Tp以上となり、下流NOxトラップ触媒33からも硫黄成分が放出され始める。
そして、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが上流Sパージ制御中に下流Sパージ終了閾値Bfを下回ると、図6(b)に示すように、上流Sパージ制御よりも先に下流Sパージ制御が終了される(時刻t7)。これにより、下流インジェクタ35による還元剤噴射が停止されるため、下流NOxトラップ触媒33の温度は低下していく。時刻t7以降は、上流NOxトラップ触媒31の熱劣化を抑制するために、上流インジェクタ34の噴射量や噴射タイミングを調節して、上流NOxトラップ触媒31の温度をSパージ可能温度Tp近傍まで低下させる。その後、上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aが上流Sパージ終了閾値Afを下回ると、排気温度上昇制御と上流Sパージ制御とが終了される(時刻t8)。
一方、下流Sパージ制御が終了する前に、上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量Aが上流Sパージ終了閾値Afを下回った場合は、図6(c)に示すように、下流Sパージ制御中に排気温度上昇制御及び上流Sパージ制御が終了され(時刻t9)、これにより上流NOxトラップ触媒31の温度は徐々に低下していく。これに対して、下流NOxトラップ触媒33の温度はSパージ可能温度Tp以上に保持する必要があるため、上流Sパージ制御が終了された時点(時刻t9)から、筒内噴射弁4によるポスト噴射が実施される。そして、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが下流Sパージ終了閾値Bfを下回ると、下流Sパージ制御とポスト噴射とが終了される(時刻t10)。
[1−5.効果]
したがって、上記の排気浄化装置30によれば、下流NOxトラップ触媒33のSパージ制御(下流Sパージ制御,第二パージ制御)は、上流NOxトラップ触媒31に対するSパージ制御(上流Sパージ制御,第一パージ制御)が実施されるときの下流NOxトラップ触媒33の硫黄成分(所定成分)の吸蔵状況に基づいて、上流Sパージ制御と共に実施される。すなわち、下流Sパージ制御は単独では実施されず、上流Sパージ制御と同時連続的に実施されるため、燃費悪化を抑制しながら硫黄成分を適切に放出することができる。
上記の排気浄化装置30では、上流NOxトラップ触媒Sパージ開始閾値(第一閾値)Asよりも下流Sパージ開始閾値(第二閾値)Bsの方が小さな値に設定されているため、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが過度に増大することを防ぐことができ、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵能力の低下を防止することができる。
また、上記の排気浄化装置30では、排気通路16に、排気流れ方向の上流側から順に上流NOxトラップ触媒31,フィルタ32,下流NOxトラップ触媒33が設けられる。換言すると、排気通路16に上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを離して配置するとともに、これらの間に熱容量の大きなフィルタ32を配置することで、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを温度帯の異なる場所に配置することができる。これにより、上流NOxトラップ触媒31が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態と、下流NOxトラップ触媒33が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態とを相違させることができ、システム全体のNOx浄化性能を高めることができる。すなわち、エンジン1の運転領域全体に亘って高いNOx浄化性能を確保することができる。
さらに、上記の排気浄化装置30では、二つのNOxトラップ触媒31,33の間に位置するフィルタ32に堆積したPMを強制的に燃焼させる再生制御が、上流Sパージ制御よりも先に実施される。言い換えると、再生制御の方が上流Sパージ制御よりも優先度が高く、上流Sパージ制御は再生制御の終了後に実施される。これにより、フィルタ32の異常発熱が防止され、フィルタ32を保護することができる。また、フィルタ32の再生制御後に上流Sパージ制御が実施されることで、上流NOxトラップ触媒31の温度を早期に高めることができるため、上流Sパージ制御の実施時間を短縮することができ、上流Sパージ制御で消費される燃料量を低減できるので燃費悪化を抑制することができる。
加えて、フィルタ32の再生制御では、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分の量(吸蔵S量A)と下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した硫黄成分の量(吸蔵S量B)とに応じて、再生制御の実施時間が変更される。すなわち、再生制御後に実施されうるSパージ制御時に、フィルタ32に堆積したPMが燃焼することを見越して再生制御の実施時間を変更することで、再生制御で消費される燃料量を低減でき、燃費悪化を抑制することができる。
特に本実施形態では、再生制御後に上流Sパージ制御のみが実施される場合は、再生終了閾値Dfが通常の閾値D1よりも大きな値D2に設定されて、再生制御の実施時間が短縮されるため、燃料消費量を低減することができる。また、再生制御後に上流Sパージ制御と下流Sパージ制御とが実施される場合は、再生終了閾値Dfが通常の閾値D1に設定されるため、フィルタ32の過度な熱劣化を防止することができ、フィルタ32を保護することができる。
また、上記の排気浄化装置30では、上流Sパージ制御が開始される前に、ベースとなる排気温度を上昇させる排気温度上昇制御が実施されるため、還元剤の燃焼による昇温効果が得られにくい上流NOxトラップ触媒31の前段部分の温度を高めることができる。上流NOxトラップ触媒31の前段部分は、最初に硫黄成分が吸蔵する部分であり硫黄成分が多く吸蔵しうるため、この前段部分の昇温性を高めることで、上流NOxトラップ触媒31からの硫黄成分の放出,還元を促進することができる。
なお、上記実施形態では、上流NOxトラップ触媒31の直上流に上流インジェクタ34を備え、上流Sパージ制御ではこの上流インジェクタ34から還元剤が噴射されるため、上流NOxトラップ触媒31を効果的に昇温させることができる。また、上流インジェクタ34から上流NOxトラップ触媒31までの距離が短いため、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分と還元剤との反応性を高めることができ、これらによって上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した硫黄成分を効率よく除去することができる。
また、上記実施形態では、下流NOxトラップ触媒33の直上流に下流インジェクタ35を備え、下流Sパージ制御ではこの下流インジェクタ35から還元剤が噴射されるため、還元剤を有効に利用することができ、下流NOxトラップ触媒33を効果的に昇温させることができる。また、上流NOxトラップ触媒31の下流側で還元剤が噴射されるため、上流NOxトラップ触媒31の過度の熱劣化を抑制することができる。
上記実施形態では、上流Sパージ制御が開始された後に下流Sパージ制御が開始されるため、上流Sパージ制御により下流NOxトラップ触媒33の温度が上昇したところで下流Sパージ制御が開始されることとなる。これにより、下流NOxトラップ触媒33の温度を早期に高めることができるため、下流Sパージ制御の実施時間を短縮することができる。そのため、下流Sパージ制御で消費される燃料量を低減することができ、燃費悪化を抑制することができる。
上記実施形態では、下流Sパージ制御において、上流Sパージ制御が先に終了した場合は筒内噴射弁4によるポスト噴射が行われて排気通路16へ燃料が供給されるため、上流Sパージ制御終了後の下流NOxトラップ触媒33の温度をSパージ可能温度Tp以上に保持することができるとともに、上流NOxトラップ触媒31の過度な熱劣化を抑制することができる。
[2.第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る排気浄化装置30′について、図7を用いて説明する。本排気浄化装置30′は、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33との間にフィルタ32を備えていない点を除いて、第一実施形態の構成と同様に構成される。なお、フィルタ32を再生制御するための再生制御部44も、本実施形態のエンジン制御装置40には設けられていない。以下、第一実施形態と同様の装置や構成については、第一実施形態と同様の符号を付し、重複する説明は簡略化する。
図7に示すように、本実施形態に係る排気浄化装置30′は、排気通路16のタービンの下流側に、排気流れ方向の上流側から順に上流NOxトラップ触媒(第一触媒)31及び下流NOxトラップ触媒(第二触媒)33が設けられる。上流NOxトラップ触媒31に吸蔵した吸蔵S量Aと下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した吸蔵S量Bは、上記実施形態と同様、エンジン制御装置(制御手段)40の推定部41において推定される。
そして、上流NOxトラップ触媒31の吸蔵S量A(吸蔵状況)に基づき、上流Sパージ制御部42により上流Sパージ制御(第一パージ制御)が実施されるとともに、上流Sパージ制御を実施するときの下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量B(吸蔵状況)に基づき、下流Sパージ制御部43により下流Sパージ制御(第二パージ制御)が実施される。つまり、本排気浄化装置30′も、上記の排気浄化装置30と同様、下流Sパージ制御は、上流Sパージ制御が開始された後に(すなわち上流Sパージ制御が実施される場合に限って)開始され、これにより上流Sパージ制御と下流Sパージ制御とが同時連続的に実施される。
具体的に、上流Sパージ制御部42は、上記実施形態と同様に、推定部41で推定された吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値(第一閾値)As以上(A≧As)の場合に、上流インジェクタ34から所定量の還元剤を間欠的に噴射させることで、上流NOxトラップ触媒31の周辺雰囲気をリッチ化するとともに上流NOxトラップ触媒31をSパージ可能温度Tp以上に昇温させ、硫黄成分を放出させて還元する。
また、下流Sパージ制御部43は、上記実施形態と同様に、上流Sパージ制御部42による上流Sパージ制御の開始後において、推定部41で推定された吸蔵S量Bが下流Sパージ開始閾値(第二閾値)Bs以上(B≧Bs)の場合に、下流インジェクタ35から所定量の還元剤を間欠的に噴射させ、下流NOxトラップ触媒33の周辺雰囲気をリッチ化するとともに下流NOxトラップ触媒33をSパージ可能温度Tp以上に昇温させる。ここで、下流Sパージ開始閾値Bsは、上流Sパージ開始閾値Asよりも小さい値(Bs<As)に予め設定されている。
なお、上流Sパージ制御部42は、上記実施形態と同様、推定部41で推定された吸蔵S量Aが上流Sパージ開始閾値As以上(A≧As)の場合、上流Sパージ制御に先立って、吸気流量を絞ることで排気温度を上昇させる排気温度上昇制御を開始する。
このような排気浄化装置30′によっても、下流NOxトラップ触媒33のSパージ制御(下流Sパージ制御,第二パージ制御)は、上流NOxトラップ触媒31に対するSパージ制御(上流Sパージ制御,第一パージ制御)が実施されるときの下流NOxトラップ触媒33の硫黄成分(所定成分)の吸蔵状況に基づいて、上流Sパージ制御と共に実施される。すなわち、下流Sパージ制御は単独では実施されず、上流Sパージ制御と同時連続的に実施されるため、燃費悪化を抑制しながら硫黄成分を適切に放出することができる。
また、本実施形態に係る排気浄化装置30′でも、上流NOxトラップ触媒Sパージ開始閾値(第一閾値)Asよりも下流Sパージ開始閾値(第二閾値)Bsの方が小さな値に設定されているため、下流NOxトラップ触媒33の吸蔵S量Bが過度に増大することを防ぐことができ、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵能力の低下を防止することができる。
なお、本排気浄化装置30′でも、上流Sパージ制御が開始される前に、ベースとなる排気温度を上昇させる排気温度上昇制御が実施されるため、還元剤の燃焼による昇温効果が得られにくい上流NOxトラップ触媒31の前段部分の温度を高めることができる。これにより、上流NOxトラップ触媒31からの硫黄成分の放出,還元を促進することができる。
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
例えば、上流Sパージ制御や下流Sパージ制御における還元剤の供給を、筒内噴射弁4によるポスト噴射で行ってもよい。この場合には、上流インジェクタ34や下流インジェクタ35を省略することができるため、装置構成を簡素化することができ、コスト低減を図ることが可能である。
また、上記第一,第二実施形態では、排気温度上昇制御を上流Sパージ制御の終了と共に終了しているが、上流Sパージ制御の終了後に下流Sパージ制御を実施している場合には、排気温度上昇制御を継続し、下流Sパージ制御の終了と共に排気温度上昇制御を終了してもよい。あるいは、排気温度上昇制御自体を省略することも可能である。例えば、上流Sパージ制御を開始する条件に排気温度が高温であることを追加すれば、上流NOxトラップ触媒31の前段部分の温度が高い状態で還元剤の噴射が開始されるため、前段部分からも硫黄成分を放出,還元させることができる。
また、上流Sパージ制御が下流Sパージ制御よりも先に終了される場合に、ポスト噴射により下流NOxトラップ触媒33の温度を保持する代わりに、上流インジェクタ34から還元剤を噴射させることで下流NOxトラップ触媒33の温度をSパージ可能温度Tp以上に保持してもよい。また、下流Sパージ開始閾値Bsが上流Sパージ開始閾値Asと同じ値に設定されていてもよい。
また、上記第一実施形態では、フィルタ32の再生制御の実施時間をNOxトラップ触媒31,33の硫黄成分の吸蔵状況に応じて変更しているが、硫黄成分の吸蔵状況に関わらず再生制御の実施時間を一定にしてもよい。これにより、制御構成を簡素化することができる。
また、上下流のSパージ制御を開始するか否かの判定において、推定部41で吸蔵S量A,Bを推定する代わりに前回のSパージ制御の終了時点から経過した時間を用いてNOxトラップ触媒31,33に吸蔵した硫黄成分の吸蔵状況を判断してもよい。上下流のSパージ制御の終了条件も吸蔵S量A,Bで判定するのではなく、例えばSパージ制御の実施時間で判定してもよい。同様に、再生制御の開始条件,終了条件も、上記したものに限られず、例えばフィルタ32の上下流の差圧や時間等で判定してもよい。
また、上記の第一実施形態では、エンジン制御装置40に推定部41,上流Sパージ制御部42,下流Sパージ制御部43,再生制御部44という四つの機能要素を備えているものを例示し、第二実施形態では推定部41,上流Sパージ制御部42,下流Sパージ制御部43という三つの機能要素を備えているものを例示しているが、エンジン制御装置40の機能要素はこれらに限られず、例えば上下流のSパージ制御を実施するSパージ制御部を一つ備えたような構成であってもよい。
なお、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33は、その構成成分(吸蔵体及び貴金属元素等の種類,量)が同一でなくてもよい。また、エンジン1は、上記した構成のディーゼルエンジンに限られず、他の構成のディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンであってもよい。
上記の第一,第二実施形態では、排気中に含まれる所定成分として硫黄成分を挙げ、これを吸蔵するNOxトラップ触媒31,33のSパージ制御について詳述したが、排気中の所定成分はこれに限られず、例えばNOxであってもよい。すなわち、排気中のNOxを酸化雰囲気下で吸蔵し還元雰囲気下で放出するNOxトラップ触媒31,33について、エンジン制御装置40は、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵したNOx量の吸蔵状況に基づいて還元剤を供給して、上流NOxトラップ触媒31からNOxを放出させる上流側のNOxパージ制御(第一パージ制御)を実施する。そして、上流側のNOxパージ制御を実施するときの下流NOxトラップ触媒33に吸蔵したNOx量の吸蔵状況に基づいて還元剤を供給して、下流NOxトラップ触媒33からNOxを放出させる下流側のNOxパージ制御(第二パージ制御)を実施する。このような構成であっても、下流NOxトラップ触媒33のNOxパージ制御は、上流NOxトラップ触媒31のNOxパージ制御と共に実施されることとなり、燃費悪化を抑制することができる。