JP6399974B2 - 保護リレー装置 - Google Patents
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Description
図1は、保護リレー装置と電力系統との接続について説明するための図である。
図2は、図1の保護リレー装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2を参照して、保護リレー装置10は、補助変成器12_1,12_2,…を内蔵する入力変換ユニット11と、デジタルリレーユニット13とを含む。
図3は、実施の形態1による保護リレー装置の機能的構成を示すブロック図である。保護リレー装置10は、機能的にみると、アナログ回路30と、A/D変換部31と、デジタル入力処理部32と、リレー演算部33と、デジタル出力部34とを含む。
図4は、図3のデジタル入力処理部の動作を示すフローチャートである。図3のデジタル入力処理部32は、デジタル変換された電流信号および電圧信号を用いて、リレー演算部33でのリレー演算に使用するデータを生成する。たとえば、デジタル入力処理部32は、振幅値演算および位相差演算に必要な90°の位相遅れのデータを生成する。この際、生成される90°遅れ位相データは、電力系統の周波数ずれの影響を考慮した値となっている点に特徴がある。以下、図3および図4を参照して具体的に説明する。以下では、電力系統において検出された交流電圧および交流電流を総称して電気量と称する。サンプリング周期ごとにサンプリングされデジタル化された電気量(電圧値Vmおよび/または電流値Im)を電気量のデジタル値と称する。
まず、データ蓄積部40(たとえば、図2のRAM19に対応する)は、A/D変換部31によってデジタル変換された電気量(電圧信号および/または電流信号)を一定時間分(すなわち、現時点よりnサンプリング周期前の電気量のデジタル値Vm-nから現時点の電気量のデジタル値Vmまで)蓄積する(図4のステップS100)。すなわち、データ蓄積部40は、電気量のデジタル値Vmの時系列データを生成する。このときのサンプリング周期は、電気角に換算して30°、22.5°または36°など任意の周期でよい。サンプル数nは、デジタル入力処理部32およびリレー演算部33での演算に必要なサンプル数に応じて決定される。現時点の最新の電気量のデジタル値は、最も古い電気量のデジタル値に上書きされる形で蓄積されるので、常に現在よりnサンプリング周期前までのn+1個のデータVm,Vm-1,…,Vnがデータ蓄積部40に蓄積される。
次に、差分・加算演算部41は、電気量のサンプリングごとに、現時点の電気量のデジタル値Vmと2サンプリング周期前の電気量のデジタル値Vm-2の2点のデータを使って差分演算と加算演算とを行う。すなわち、差分・加算演算部41は、差分量Dmおよび加算量Smとして、
Dm=−(Vm−Vm-2) …(1)
Sm=Vm+Vm-2 …(2)
を演算する(ステップS110)。データ蓄積部40は、上記の差分量Dmおよび加算量Smを、後続する演算に必要な時間分だけ蓄積する(ステップS120)。すなわち、データ蓄積部40は、差分量Dmおよび加算量Smの各々の時系列データを生成する。
次に、振幅値演算部42は、電気量のサンプリングごとに、電気量の時系列データのうち現時点を含む複数の時点における電気量のデジタル値Vmを用いて電気量の振幅値AVmを演算する。さらに、振幅値演算部42は、差分量Dmおよび加算量Smの各々の時系列データに対して、上記の電気量の振幅値演算と同一の演算を施すことによって、差分量Dmの振幅値ADmおよび加算量Smの振幅値ASmを計算する(ステップS130)。ここで、差分量Dmの振幅値ADmおよび加算量Smの振幅値ASmとは、差分量Dmおよび加算量Smの各時系列データを交流信号のサンプリングデータとしてみたときの交流信号の振幅値を意味している。
AVm=K*√(|Vm-1*Vm-1−Vm*Vm-2|) …(3)
ADm=K*√(|Dm-1*Dm-1−Dm*Dm-2|) …(4)
ASm=K*√(|Sm-1*Sm-1−Sm*Sm-2|) …(5)
のように表される。ここで、√(A)はAの平方根を表し、|A|はAの絶対値を表す。乗算記号として「*」を用いている。係数Kは、周波数に依存するものであるが、上式(3),(4),(5)で共通する値である。したがって、上式(3),(4),(5)のうち、いずれか2式の比をとることによって係数Kを消去できる。図4のフローチャートでは簡単のために、係数Kの記載を省略している。
次に、三角関数演算部43は、サンプリング周期に対応する電気角θ(1サンプリング周期当たりの角度変位θ)の三角関数を計算する(ステップS140)。具体的に、三角関数演算部43は、
cosθ=ASm/(2*AVm) …(6)
sinθ=ADm/(2*AVm) …(7)
tanθ=ADm/ASm …(8)
に従って、電気角θの余弦、正弦、正接を演算する。上式に従って、電気角θの三角関数が得られる理由については、図5を参照して後述する。
次に、位相遅れデータ算出部44は、現在の電気量のデジタル値Vmから所望の角度φだけ位相遅れの値Vm∠(−φ)を算出する(ステップS150)。たとえば、位相遅れデータ算出部44は、現在の電気量のデジタル値Vmから90°位相が遅れた値Vm∠(−90°)を、
Vm∠(-90°)=Vm-1/sinθ−Vm/tanθ …(9)
に従って算出する。上式(9)に式(7)および(8)を代入することによって、90°位相遅れデータVm∠(−90°)は、
Vm∠(-90°)=Vm-1*2*AVm/ADm−Vm*ASm/ADm …(10)
と表される。
図5は、図4の各ステップでの計算に用いられるデータ間の関係を示すベクトル図である。以下では、電圧ベクトルについて説明するが、電流ベクトルについても同じ関係が成り立つ。以下の説明では、簡単のために、電気量Vm、差分量Dm、および加算量Smの各々の瞬時値とベクトルとで同じ参照符号を用いている。
ADm=2*AVm*sinθ …(11)
と表される。
ASm=2*AVm*cosθ …(12)
によって表される。式(11)および(12)から、前述の式(6),(7),(8)に示す電気角θの三角関数が導かれる。
Vm∠(-90°)=k2*Vm-1−k1*Vm …(13)
と表すことができる。
1/sinθ=k1/sin(90°−θ)=k2/sin90° …(14)
が成り立つ。すわなち、
1/sinθ=k1/cosθ=k2 …(15)
が成立する。これより、係数k1,k2は、
k1=cosθ/sinθ=1/tanθ …(16)
k2=1/sinθ …(17)
と与えられる。上式(16),(17)を式(13)に代入することによって、前述の式(9)が導かれる。上記の計算過程から明らかなように、位相遅れベクトルVm∠(−90°)は、周波数変動の影響を受けない。
図5(D)のベクトル図は、電圧ベクトルVmと電圧ベクトルVm-1との線形和(一次結合)によって、電圧ベクトルVmから位相φだけ遅れたベクトルVm∠(−φ)を構成する方法を示している。図5(D)に示すように、スカラーk3,k4を用いて、遅れ位相φのベクトルVm∠(−φ)は、
Vm∠(-φ)=k4*Vm-1−k3*Vm …(18)
と表すことができる。
1/sinθ=k3/sin(φ−θ)=k4/sin(180°−φ) …(19)
が成り立つ。これより、係数k3,k4は、
k3=sin(φ−θ)/sinθ=(sinφ*cosθ−cosφ*sinθ)/sinθ
=sinφ/tanθ−cosφ …(20)
k4=sinφ/sinθ …(21)
となる。
Vm∠(-φ)=Vm-1*sinφ/sinθ−Vm*(sinφ/tanθ−cosφ) …(22)
が得られる。さらに、上式(22)に式(7),(8)を代入することによって、
Vm∠(-φ)=Vm-1*sinφ*2AVm/ADm−Vm*(sinφ*ASm/ADm−cosφ) …(23)
が得られる。このように、ベクトルVmを任意の角度に位相シフトする演算が可能となる。
上記のとおり、実施の形態1によれば、入力データが定格周波数から外れても正確に現時点より90°遅れ位相のベクトルの瞬時値を演算することができる。この正確な90°遅れ位相のベクトルの瞬時値を用いることによって、周波数ずれに影響のない位相差演算や振幅値演算結果を得ることができる。さらに、同様の演算方法により現時点より任意の位相角φだけ遅れたベクトルの瞬時値を求めることができ、リレー演算に供することができる。
実施の形態1では、現時点の電流または電圧ベクトルと2サンプリング周期前の電流または電圧ベクトルとを用いて、現時点より90°位相遅れ又は任意の角度φだけ位相遅れの電流または電圧ベクトルを求める方法について説明した。実施の形態2では、現時点の電流または電圧ベクトルと1サンプリング周期前の電流または電圧ベクトルとを用いて、サンプリング周波数に依存しないで、90°位相遅れおよび任意の位相角φだけ位相遅れの電流または電圧ベクトルを求めることができる演算式を提供する。
図6は、実施の形態2の保護リレー装置において、デジタル入力処理部での計算に用いられるデータ間の関係を示すベクトル図である。以下では、電圧ベクトルについて説明するが、電流ベクトルについても同じ関係が成り立つ。
AEm=2*AVm*sin(θ/2) …(24)
によって表される。
ATm=2*AVm*cos(θ/2) …(25)
によって表される。ここで、現時点の電圧ベクトルVmと、1サンプリング周期前の電圧ベクトルVm-1との間の電気角をθとしている。
cos(θ/2)=ATm/(2*AVm) …(26)
sin(θ/2)=AEm/(2*AVm) …(27)
が得られる。さらに、上式(26),(27)と三角関数の倍角公式を用いることによって、
sinθ=2*sin(θ/2)*cos(θ/2)=2*(AEm/2*AVm))*(ATm/(2*AVm)
=AEm*ATm/(2*AVm*AVm) …(28)
cosθ=2*((cos(θ/2))2−1)=2*(ATm/2*AVm)*(ATm/(2*AVm)−1
=ATm*ATm/(2*AVm*AVm)−1 …(29)
tanθ=(AEm*ATm/(2*AVm*AVm))/(ATm*ATm/(2*AVm*AVm)−1)
=AEm*ATm/(ATm*ATm−2*AVm*AVm) …(30)
が得られる。
Vm∠(-90°)=Vm-1/sinθ−Vm/tanθ
=Vm-1*2*AVm*AVm/(AEm*ATm)−Vm*(ATm*ATm−2*AVm*AVm)/(AEm*ATm) …(31)
と演算できる。
Em=−(Vm−Vm-1) …(32)
Tm=Vm+Vm-1 …(33)
と表わされる。データ蓄積部40は、差分量Emおよび加算量Tmを、後続する演算に必要な時間分だけ蓄積する(ステップS220)。すなわち、データ蓄積部40は、差分量Emおよび加算量Tmの各々の時系列データを生成する。
現在の電圧ベクトルVmから角度φだけ位相が遅れた電圧ベクトルVm∠(−φ)は、前述の式(22)で与えられる。式(22)に上記の式(28),(30)を代入することによって、角度φだけ位相の遅れた電圧ベクトルルVm∠(−φ)は、
Vm∠(-φ)=Vm-1*sinφ/sinθ−Vm*(sinφ/tanθ-cosφ)
=Vm-1*sinφ*2*AVm*AVm/(AEm*ATm)
−Vm*(sinφ*(ATm*ATm−2*AVm*AVm)/(AEm*ATm)−cosφ) …(34)
と演算できる。
実施の形態1では、現時点の電気量のデジタル値と2サンプリング周期前の値との差分量と加算量を用いて周波数変動に依存しない位相遅れデータを演算する方法を示し、実施の形態2では、現時点の電気量のデジタル値と1サンプリング周期前の値との差分量と加算量とを用いて周波数変動に依存しない位相遅れデータを演算する方法を示した。同様の考え方を用いることによって、現時点の電気量のデジタル値とnサンプリング周期前(nは1以上の整数)の値との差分量と加算量とを用いて周波数変動に依存しないような位相遅れデータを算出することができる。ただし、nサンプリング周期前の位相は、現時点よりも180°未満であるのが望ましいので、サンプリング周期に対応する電気角をθとし、周波数の変動を10%とすると、上記のnは、n*θ≦160°(≒180°*90%)の関係を満たす必要がある。ただし、nが大きくなるほど応答性が悪くなることになるので、実用上はn=1またはn=2が望ましい。
たとえば、変化幅検出リレー演算などでは、現時点の電気量のデジタル値と数サイクル前の電気量のデジタル値(例えば2サイクル前の電気量のデジタル値)と差分をとり、その差分量が変化したか否かを判定することによって、電流または電圧の変化を検出する。このようなリレーでは、周波数が定格周波数の場合で、電力系統に変化がない場合では、現時点の電気量のデジタル値とpサイクル前(pは1以上の整数)の電気量のデジタル値との差分は0であるが、周波数が定格より外れると差分結果に周波数ずれに伴う誤差が生じて、誤検出の要因となる。
図8は、実施の形態3による保護リレー装置の機能的構成を示すブロック図である。図8の保護リレー装置10は、デジタル入力処理部32が、位相ずれ補正部45をさらに含む点で図3の保護リレー装置10と異なる。2サイクル前(一般的にはpサイクル前)から現時点までの位相ずれ量をαとすると、位相ずれ補正部45は、現時点から2サイクル前の電気量(電圧信号および/または電流信号)のデジタル値Vm-2cについて、位相ずれ角αを補正した値Vm-2c∠(α)を算出する。具体的な算出方法は、図9のフローチャートを参照して後述する。上記の表記において、たとえば、サンプリング周期に対応する電気角θを30°とした場合、1サイクルでのサンプリング数を表すcは、c=12であり、電気角θを22.5°とした場合、c=16である。1サイクルは電気角で360°に対応する。
まず、データ蓄積部40は、A/D変換部31によってデジタル変換された電気量(電圧信号および/または電流信号)を一定時間分(現時点よりnサンプリング周期前の電気量のデジタル値Vm-nから現時点の電気量のデジタル値Vmまで)蓄積する(図9のステップS300)。すなわち、データ蓄積部40は、電気量のデジタル値Vmの時系列データを生成する。サンプル数nは、デジタル入力処理部32およびリレー演算部33での演算に必要なサンプル数に応じて決定される。
次に、差分・加算演算部41は、電気量のサンプリングごとに、現時点の電気量のデジタル値Vmと、位相補正する2サイクル前の2倍である4サイクル前(一般に、2pサイクル前)の電気量のデジタル値Vm-4cの2点のデータを使って差分演算と加算演算とを行う。すなわち、差分・加算演算部41は、差分量Gmおよび加算量Wmとして、
Gm=−(Vm−Vm-4c) …(35)
Wm=Vm+Vm-4c …(36)
を演算する(ステップS310)。さらに、差分・加算演算部41は、現時点の電気量のデジタル値Vmと2サンプリング周期前の値Vm-2との差分量Dmとして、
Dm=−(Vm−Vm-2) …(37)
を演算する。データ蓄積部40は、上記の差分量Dmおよび差分量Gmおよび加算量Wmを、後続する演算に必要な時間分だけ蓄積する(ステップS320)。すなわち、データ蓄積部40は、差分量Dm、差分量Gm、および加算量Wmの各々の時系列データを生成する。
次に、振幅値演算部42は、電気量のサンプリングごとに、電気量の時系列データのうち現時点を含む複数の時点における電気量のデジタル値Vmを用いて電気量の振幅値AVmを演算する。さらに、振幅値演算部42は、差分量Dm、差分量Gm、および加算量Wmの各々の時系列データに対して、上記の電気量の振幅値演算と同一の演算を施すことによって、差分量Dmの振幅値ADm、差分量Gmの振幅値AGm、および加算量Wmの振幅値AWmを計算する(ステップS330)。ここで、振幅値演算には、歪みのない交流入力であれば、サンプリング時刻の位相角に関係なく振幅値が一定になる演算方式を採用する。たとえば、特開平1−227613号公報(特許文献2)に記載の方法を用いる。前述の式(3)〜(5)と同じ演算式を用いると、
AVm=K*√(|Vm-1*Vm-1−Vm*Vm-2|) …(38)
ADm=K*√(|Dm-1*Dm-1−Dm*Dm-2|) …(39)
AGm=K*√(|Gm-1*Gm-1−Gm*Gm-2|) …(40)
AWm=K*√(|Wm-1*Wm-1−Wm*Wm-2|) …(41)
と表される。データ蓄積部40は、これらの振幅値についても後続する演算に必要な分だけ蓄積する。
次に、振幅値演算部42は、電力系統に故障が発生することにより電力系統の電流または電圧が急変したか否かを判定する(ステップS340)。電流または電圧が急変すると入力された電気量の位相および振幅が急変するため、ステップS330で演算した各振幅値は以前の値と違う値になる。したがって、振幅値演算部42は、現時点の振幅値と1〜2サイクル前の振幅値との差の絶対値が判定値以上であるか否か、すなわち、
|AVm−AVm-j|>M1 …(42)
|ADm−ADm-j|>M2 …(43)
|AGm−AGm-j|>M3 …(44)
|AWm−AWm-j|>M4 …(45)
のいずれかが成立することを判定する。ここで、m−jは、現時点よりjサイクル前の電気量のデジタル値であることを示し、jとして一般的には1サイクル〜2サイクル程度の値が選択される。判定値M1,M2,M3,M4は、一般的には電流定格または電圧定格の数%程度の変化を検出できる値に設定される。なお、実際には、上記4式すべてを判定する必要はなく、このうちのいずれか1つによる判定でも構わない。
次に、三角関数演算部43は、ステップS330で計算した電気量のデジタル値Vmの振幅値AVm、差分量Dmの振幅値ADm、差分量Gmの振幅値AGm、および加算量Wmの振幅値AWmを用いて、2サイクル間での電気量のデジタル値Vmの位相シフト量を示す電気角αの三角関数を演算する(ステップS350)。具体的に、三角関数演算部43は、
cosα=AWm/(2*AVm-2c) …(46)
sinα=AGm/(2*AVm-2c) …(47)
に従って、位相シフト用αに余弦及び正弦を算出する。さらに、三角関数演算部43は、1サンプリング周期に対応する電気角θの正弦を、
sinθ=ADm+1-2c/(2*AVm-2c) …(49)
に従って算出する。ここで、位相シフト量αは、入力データの周波数に依存する。上式では、2サイクル前の電気量の振幅値AVm-2cを演算に用いたが、電気量(電流または電圧)が急変状態でない場合、すなわち、AVm-2c=AVmがほぼ成立している状態を仮定しているので、現時点の電気量の振幅値AVmを演算に用いても特に問題はない。
次に、位相遅れデータ算出部44は、電気量のサンプリングごとに、現時点より2サイクル前の電気量のデジタル値Vm-2cと、それより1サンプリング周期後の電気量のデジタル値Vm+1-2cとを用いて、現時点より2サイクル前の電気量のデジタル値Vm-2cよりも90°位相の遅れた値Vm-2c∠(−90°)を算出する(ステップS360)。具体的に、位相遅れデータ算出部44は、
Vm-2c∠(-90°)=Dm+1-2c/(2*sinθ) …(50)
に従って90°位相の遅れた値Vm-2c∠(−90°)を算出する。
次に、位相ずれ補正部45は、定格周波数時に2サイクル前に相当する電気量のデジタル値Vm-2cを、位相シフト量αだけ位相を戻した値Vm-2c∠(α)を演算する(ステップS370)。具体的には、図10で説明するように、Vm-2c∠(α)とVm-2c∠(-90°)との関係より、
Vm-2c∠(α)=Vm-2c*cosα−Vm-2c∠(-90°)*sinα …(51)
が成り立つ。
図10は、図9の各ステップでの計算に用いられるデータ間の関係を示すベクトル図である。以下では、電圧ベクトルVmについて説明するが電流ベクトルImについても同じである。以下の説明では、簡単のために、電気量Vm、差分量Dm、差分量Gm、および加算量Wmの各々の瞬時値とベクトルとで同じ参照符号を用いている。
AGm=2*AVm-2c*sinα …(52)
によって表される。
AWm=2*AVm-2c*cosα …(53)
によって表される。
ADm+1-2c=2*AVm-2c*sinθ …(54)
の関係が成り立つ。さらに、上式(54)を用いることにより、電圧ベクトルVm-2cよりも90°位相が遅れたベクトルVm-2c∠(−90°)は、
Vm-2c∠(-90°)=Dm+1-2c/(2*sinθ)=Dm+1-2c*(AVm-2c/ADm+1-2c) …(55)
で与えられる。式(52)〜(54)から前述の三角関数の式(46)〜(49)が得られる。
Vm-2c∠(α)=Vm-2c*cosα−Vm-2c∠(-90°)*sinα …(56)
が成り立つ。上式(56)に式(46),(47)を代入することによって、角度αだけ位相シフトしたベクトルVm-2c∠(α)は、
Vm-2c∠(α)=Vm-2c*AWm-2c/(2*AVm-2c)
−Dm+1-2c*(AVm-2c/ADm+1-2c)*AGm/(2*AVm-2c) …(57)
で演算できる。
このように、入力データが定格周波数より外れたために現時点の電気量のデジタル値と現時点よりpサイクル前(pは1以上の整数)の電気量のデジタル値との間に位相ずれ角αが生じたとしても以下のように簡単に補正できる。すなわち、2×pサイクル前の電気量のデジタル値と現時点の電気量のデジタル値との差分量および加算量を計算し、この差分量および加算量に基づいて位相ずれ角αの正弦と余弦とを求める。さらに、pサイクル前を基準にしてそれよりも1サンプリング周期前の電気量のデジタル値と1サンプリング周期後の電気量のデジタル値とから、2サイクル前の電気量のデジタル値から90°位相を遅らせた電気量のデジタル値を求める。これらの計算結果から位相ずれを補正することができる。したがって、周波数が定格より外れて場合でも現時点とpサイクル前との変化分を正確に判定できるようになる。
実施の形態3では、現時点の電気量のデジタル値と現時点から2×pサイクル前(たとえば、p=2)の電気量のデジタル値とを用いて、現時点からpサイクル前の電気量のデジタル値における位相ずれ角αに起因した誤差を補正する手段を示した。これに対して、変化幅検出に使用する現時点の電気量のデジタル値と現時点からpサイクル前の電気量のデジタル値との2点を使ってpサイクル前の電気量のデジタル値における位相ずれ角αに起因した誤差を補正するようにしてもよい。この場合、実施の形態2と同様に、位相ずれ角αの1/2である角度α/2の三角関数を最初に求め、三角関数の倍角公式を使って位相のずれ角αの三角関数を求めるようにする。
Claims (9)
- 電力系統において検出された交流電流または交流電圧を表す電気量を一定周期でサンプリングしてデジタル値に変換することによって、前記電気量の時系列データを生成するアナログ/デジタル変換部と、
前記電気量のサンプリングごとに、現時点の前記電気量のデジタル値と現時点からnサンプリング周期前(nは1以上の整数)の前記電気量のデジタル値との差分量および加算量を算出することによって、前記差分量および加算量の各々の時系列データを生成する差分・加算演算部と、
前記電気量のサンプリングごとに、前記電気量の時系列データのうち現時点を含む複数のデータを用いて前記電気量の振幅値を演算し、前記差分量および加算量の各々の時系列データに対して前記電気量の振幅値演算と同一の演算を施すことによって前記差分量および加算量の各々の振幅値を演算する振幅値演算部と、
前記電気量のサンプリングごとに、現時点の前記電気量のデジタル値を第1の係数倍した値と、現時点から1サンプリング周期前の前記電気量のデジタル値を第2の係数倍した値との和を演算することによって、現時点の前記電気量から設定角度だけ位相を遅らせた前記電気量のデジタル値を算出する位相遅れデータ算出部とを備え、
前記第1の係数および前記第2の係数は、現時点において算出された前記電気量、前記差分量、および前記加算量の各々の振幅値を用いて表され、
さらに、前記位相を遅らせた前記電気量のデジタル値を用いてリレー演算を行うリレー演算部を備える、保護リレー装置。 - 前記nは、1または2である、請求項1に記載の保護リレー装置。
- 前記振幅値演算部は、前記電気量のデジタル値、前記差分量、および前記加算量の各々について、現時点の値である第1の値、現時点よりもxサンプリング周期前の値である第2の値、現時点よりもyサンプリング周期前の値である第3の値、および現時点よりもzサンプリング周期前(ただし、z=x+y)の値である第4の値を用い、前記第2の値と前記第3の値の積と、前記第1の値と前記第4の値との積との差に基づいて各々の振幅値を算出する、請求項1または2に記載の保護リレー装置。
- 前記nは2であり、
1サンプリング周期に相当する電気角をθとし、現時点において算出された前記電気量、前記差分量、および前記加算量の各々の振幅値をそれぞれAVm、ADm、ASmとしたとき、電気角θの正弦sinθ、余弦cosθ、および正接tanθは、
sinθ=AD m/(2*AVm) …(A1)
cosθ=AS m/(2*AVm) …(A2)
tanθ=ADm/ASm …(A3)
によって表され、
前記設定角度をφとしたとき、設定角度φの正弦sinφおよび余弦cosφを用いて、前記第1の係数は、−(sinφ/tanθ−cosφ)であり、前記第2の係数は、sinφ/sinθである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護リレー装置。 - 前記nは1であり、
1サンプリング周期に相当する電気角をθとし、現時点において算出された前記電気量、前記差分量、および前記加算量の各々の振幅値をそれぞれAVm、AEm、ATmとしたとき、電気角θの正弦sinθ、余弦cosθ、および正接tanθは、
sinθ=AEm*ATm/(2*AVm*AVm) …(A4)
cosθ=ATm*ATm/(2*AVm*AVm)−1 …(A5)
tanθ=AEm*ATm/(ATm*ATm−2*AVm*AVm) …(A6)
によって表され、
前記設定角度をφとしたとき、設定角度φの正弦sinφおよび余弦cosφを用いて、前記第1の係数は、−(sinφ/tanθ−cosφ)であり、前記第2の係数は、sinφ/sinθである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護リレー装置。 - 電力系統において検出された交流電流または交流電圧を表す電気量を一定周期でサンプリングしてデジタル値に変換することによって、前記電気量の時系列データを生成するアナログ/デジタル変換部と、
前記電気量のサンプリングごとに、現時点の前記電気量のデジタル値と現時点からpサイクル前または2*pサイクル前(pは1以上の整数)の前記電気量のデジタル値との差分量および加算量を、第1の差分量および第1の加算量として算出することによって、前記第1の差分量および第1の加算量の各々の時系列データを生成する差分・加算演算部と、
前記電気量のサンプリングごとに、前記電気量の時系列データのうち現時点を含む複数のデータを用いて前記電気量の振幅値を演算し、前記第1の差分量および第1の加算量の各々の時系列データに対して前記電気量の振幅値演算と同一の演算を施すことによって前記第1の差分量および第1の加算量の各々の振幅値を演算する振幅値演算部と、
前記電気量のサンプリングごとに、現時点からpサイクル前の前記電気量のデジタル値を第1の係数倍した値と、現時点からpサイクル前の前記電気量について90°位相を遅らせたもののデジタル値を第2の係数倍した値との和を演算することによって、現時点からpサイクル前の前記電気量のデジタル値について位相ずれに起因した誤差を補正する位相ずれ補正部とを備え、
前記第1の係数および前記第2の係数は、前記電気量の振幅値と、現時点において算出された前記第1の差分量および前記第1の加算量の各々の振幅値とを用いて表され、
さらに、前記位相ずれに起因した誤差が補正された前記電気量のデジタル値を用いてリレー演算を行うリレー演算部を備える、保護リレー装置。 - 前記差分・加算演算部は、前記電気量のサンプリングごとに、現時点の前記電気量のデジタル値と現時点から2サンプリング周期前の前記電気量のデジタル値との差分量を第2の差分量として算出することによって、前記第2の差分量の時系列データをさらに生成し、
前記振幅値演算部は、前記電気量のサンプリングごとに、前記第2の差分量の時系列データに対して前記電気量の振幅値演算と同一の演算を施すことによって前記第2の差分量の振幅値をさらに演算し、
前記保護リレー装置は、さらに、
前記電気量のサンプリングごとに、現時点からpサイクル前の時点の1サンプリング周期後において算出された前記第2の差分量に第3の係数を乗算することによって、現時点からpサイクル前の電気量について90°位相を遅らせたもののデジタル値を算出する位相遅れデータ算出部を備え、
前記第3の係数は、前記電気量の振幅値と、現時点からpサイクル前の時点から1サンプリング周期後に算出された前記第2の差分量の振幅値とを用いて算出される、請求項6に記載の保護リレー装置。 - 1サンプリング周期に相当する電気角をθとし、現時点からpサイクル前に算出された前記電気量の振幅値をAVm-pcとし、現時点からpサイクル前の時点から1サンプリング周期後に算出された前記第2の差分量の振幅値をADm+1-pcとすると、電気角θの正弦sinθは、
sinθ=ADm+1-pc/(2*AVm-pc) …(A7)
によって表され、
前記第3の係数は、1/(2*sinθ)である、請求項7に記載の保護リレー装置。 - 現時点の電気量と現時点からpサイクル前の電気量との位相ずれ角をαとし、現時点からpサイクル前に算出された前記電気量の振幅値をAVm-pcとし、現時点において算出された前記第1の差分量および前記第1の加算量の各々の振幅値をそれぞれAGmおよびAWmとすると、位相ずれ角αの正弦sinαおよび余弦cosαは、
sinα=AGm/(2*AVm-pc) …(A8)
cosα=AWm/(2*AVm-pc) …(A9)
によって表され、
前記第1の係数はcosαであり、前記第2の係数は−sinαである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の保護リレー装置。
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