以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行制御装置を、車両に搭載された走行制御システムに適用した場合を例にして説明する。本発明の走行制御装置の実施の形態は限定されず、車両側と情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。走行制御装置、走行制御システム、及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行するコンピュータである。
図1は、走行制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の走行制御システム1は、車両に搭載され、走行制御装置100と車載装置200とを備える。
本実施形態の走行制御装置100は、自車両が走行している車線を認識し、車線のレーンマーカの位置と自車両の位置とが所定の関係を維持するように、自車両の動きを制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。本実施形態の走行制御装置100は車線の中央を自車両が走行するように、自車両の動きを制御する。走行制御装置100は、車線のレーンマーカから自車両までの路幅方向に沿う距離が所定値域となるように、自車両の動きを制御してもよい。なお、本実施形態におけるレーンマーカは、レーンを規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、レーンの間に存在する植栽であってもよいし、レーンの路肩側に存在するガードレール、縁石、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、レーンの路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの不動の物体であってもよい。
走行制御装置100は通信装置20を有し、車載装置200は通信装置40を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。
まず、車載装置200について説明する。
本実施形態の車載装置200は、検出装置50と、センサ60と、車両コントローラ70と、駆動装置80と、操舵装置90と、出力装置110と、ナビゲーション装置120とを備える。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
以下、車載装置200を構成する各装置についてそれぞれ説明する。
検出装置50は、自車両の周囲の状況を検出する。検出装置50は、自車両の周囲に存在する障害物を含む対象物の存在及びその存在位置を検出する。特に限定されないが、本実施形態の検出装置50はカメラ51を含む。本実施形態のカメラ51は、例えばCCD等の撮像素子を備える撮像装置である。カメラ51は自車両の所定の位置に設置され、自車両の周囲の障害物を含む対象物を撮像する。本実施形態のカメラ51は、自車両の側方を撮像できるように、車体に設けられる。特に限定されないが、ドアミラーの近傍の設けられる。自車両の周囲は、自車両の前方、後方、前方側方、後方側方を含む。カメラ51は、自車両の後方に設けられ、自車両の後方(真後ろ及び側方を含む)の対象物を撮像してもよい。カメラ51により撮像される対象物は、標識などの静止物体、歩行者・他車両などの移動物体を含む。障害物は、ガードレール、中央分離帯、縁石などの道路構造物を含む。障害物は、歩行者のほか、二輪車、四輪車などの他車両を含む。
また、検出装置50は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて対象物の種別を識別してもよい。検出装置50は、パターンマッチング技術などを用いて、画像データに含まれる対象物が、車両であるか、歩行者であるか、標識であるか否かを識別する。また、検出装置50は、画像データから対象物(障害物)の像を抽出し、その像の大きさや形状から対象物(障害物)の具体的な種別(四輪車、二輪車、バス、トラック、工事車両など)や、車種(小型車、大型車)や、特殊車両(緊急自動車など)を識別できる。さらに、検出装置50は、画像データに含まれるナンバープレートに表記された識別子から、その車両の種別、車種を識別できる。検出装置50は、画像データに含まれる歩行者が大人であるか、子供であるかを認識できる。
検出装置50は、取得した画像データを処理し、自車両の周囲に存在する対象物の位置に基づいて、自車両から対象物までの距離を取得する。特に、検出装置50は、障害物と自車両との位置関係を取得する。カメラ51は、赤外線カメラ、ステレオカメラでもよい。
なお、本実施形態の検出装置50はレーダー装置52を用いてもよい。レーダー装置52としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。
本実施形態のセンサ60は、操舵角センサ61、車速センサ62を備える。操舵角センサ61は、自車両の操舵量、操舵速度、操舵加速度などの操舵に関する操舵情報を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。車速センサ62は、自車両の車速、加速度を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。
本実施形態の車両コントローラ70は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit, ECU)などの車載コンピュータであり、車両の運転状態を電子的に制御する。本実施形態の車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
本実施形態の駆動装置80は、自車両V1の駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置81などが含まれる。駆動装置80は、アクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ70又は走行制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む走行制御を実行する。駆動装置80に制御情報を送出することにより、車両の加減速を含む走行制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置80に送出される。
本実施形態の操舵装置90は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置90は、車両コントローラ70から取得した制御信号、又はステアリング操作により入力信号に基づいて車両の進行方向の制御を実行する。車両コントローラ70は、操舵量を含む制御情報を操舵装置90に送出することにより、車両の進行方向の変更制御を実行する。また、走行制御装置100は、車両の各輪の制動量をコントロールすることにより車両の進行方向の変更制御を実行してもよい。この場合、車両コントローラ70は、各輪の制動量を含む制御情報を制動装置81へ送出することにより、車両の進行方向を変化させる制御を実行する。
本実施形態のナビゲーション装置120は、自車両の現在位置から目的地までの経路を設定し、後述する出力装置110を介して経路案内情報を出力する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121と、道路種別、道路幅、道路形状その他の道路情報122と、道路情報122が各地点に対応づけられた地図情報123とを有する。本実施形態の位置検出装置121は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121により検出された自車両の現在位置に基づいて、自車両が走行する道路リンクを特定する。本実施形態の道路情報122は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶する。また、本実施形態の道路情報122は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、追い越しの可否(隣接レーンへの進入の可否)その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。自車両が走行する道路種別、道路幅、道路形状は、走行制御処理において、自車両が走行する目標経路の算出に用いられる。なお、本実施形態における目標経路は、自車両V1が将来通過する一つ又は複数の地点の特定情報(座標情報)を含む。本実施形態の目標経路は、自車両V1の次の走行位置を示唆する一つの点を少なくとも含む。目標経路は、連続した線により構成されてもよいし、離散的な点により構成されてもよい。
本実施形態の出力装置110は、走行支援に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。本実施形態において、出力装置110は、運転行動に基づく走行制御に関する情報を出力する。目標経路上を自車両に走行させる制御情報に応じた情報として、操舵操作や加減速が実行されることをディスプレイ111、スピーカ112、のほか車室外ランプ、車室内ランプを介して、自車両の乗員又は他車両の乗員に予め知らせる。また、本実施形態の出力装置110は、通信装置40を介して、高度道路交通システム(Intelligent Transpo Systems:ITS)などの外部装置に走行支援に関する各種の情報を出力してもよい。高度道路交通システムなどの外部装置は、車両の速度、操舵情報、走行経路などを含む走行支援に関する情報を、複数の車両の交通管理に用いる。これにより、自車両の乗員及び/他車両の乗員は、走行制御される自車両の挙動に応じた対応ができる。
以下、本実施形態の走行制御装置100について説明する。
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置100は、制御装置10と、通信装置20と、出力装置30とを備える。通信装置20は、車載装置200との情報の授受を行う。出力装置30は、先述した車載装置200の出力装置110と同様の機能を有する。出力装置30として、車載装置200の出力装置110を用いてもよい。
走行制御装置100の制御装置10は、自車両の走行制御を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、走行制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
本実施形態に係る走行制御装置100の制御装置10は、情報取得機能と、制御機能とを有する。また、本実施形態の制御装置10は、蓄積機能をさらに備える。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
以下、本実施形態に係る走行制御装置100の各機能について説明する。
まず、制御装置10の情報取得機能について説明する。制御装置10は、自車両が走行する車線に隣接する隣接車線を走行する複数の他車両の速度を含む他車両情報を取得する。
図2に自車両V1が隣接車線を走行する他車両の速度を取得する様子を示す。図2に示すように、自車両V1は走行しながら、自車両V1の側方を撮像するカメラ51を用いて、隣接車線を走行する他車両を撮像する。制御装置10は、カメラ51の撮像画像から各他車両V2の速度をそれぞれ検出する。
他車両と自車両とが車車間通信をすることが可能であれば、自車両の制御装置10は、他車両の車速センサが検出した他車両の車速、加速度を障害物情報として取得してもよい。もちろん、制御装置10は、高度道路交通システムの外部装置から他車両の位置、速度、加速度を含む障害物情報を取得することもできる。
制御装置10は、自車両の位置を含む自車情報を取得する。自車両の位置は、ナビゲーション装置120の位置検出装置121により取得できる。自車情報は、自車両の車速、加速度を含む。制御装置10は、自車両の速度を車速センサ62から取得する。自車両の速度は、自車両の位置の経時的な変化に基づいて取得することもできる。自車両の加速度は、自車両の速度から求めることができる。自車情報は、自車両の現在位置と車速から求められた、将来の時刻における自車両の位置を含む。将来の時刻における自車両の位置に基づいて、将来の時刻における自車両と対象物との位置関係を求めることができる。
次に、制御装置10の特徴量算出機能について説明する。
本実施形態の制御装置10は、取得した他車両情報に基づいて、隣接車線における交通流の特徴量を算出する。
本実施形態における隣接車線における交通流の特徴量は、以下の二つの値により算出される。
第1に、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から求めた、他車両の前進時における移動変位量が、隣接車線の交通流の特徴量として算出される。
第2に、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から求めた、他車両の前進及び停止の発生頻度が、隣接車線の交通流の特徴量として算出される。
本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する他車両が自車両の走行する車線に車線変更し、自車両の前に割り込む事象が起こる場面における注意度を、その事象が発生したときの「自車両に対する影響の大きさ」から評価する。本実施形態では、「自車両に対する影響の大きさ」を、他車両の前進時における移動変位量に基づいて評価する。
従来の技術では、他車両が車線変更をし、自車両の前に割り込む場合には、自車両の設定速度を低く変更する。しかし、他車両が自車両の走行する車線に車線変更し、自車両の前に割り込んだとしても、自動車側が常に他車両との接近を回避する運転行動をとらなければならないというわけではない。
たとえば、図3(A)と図3(B)は、いずれも、隣接車線を走行する他車両V2が車線変更をして自車両V1の前に他車両が割り込んできた場面を示す図である。一方の車線において、車間距離が短く、交通流が渋滞しているときに、一方の車線から他方の車線へ移動する車線変更が発生する傾向がある。また、車線変更のタイミングを考察すると、一方の車線(渋滞車線)を走行する他車両が前進したときに、車線変更を実行する傾向がある。車線変更を行う車両は、一般に、ゆっくりと方向を変化させて、大きな速度で他方の車線へ移動する。このような移動をする他車両は、他方車線を走行する自車両にとって、注意するべき対象である。このように、車線変更をする他車両のすべてが、自車両の走行制御に影響を与えるものであるわけではない。
具体的に説明する。図3(A)には、他車両V2の速度(矢印R1で示す)は相対的に小さく、自車両V1の速度(矢印Q1で示す)は相対的に大きい場合の例を示す。図3(B)には、他車両V2の速度(矢印R2で示す)は相対的に大きく、自車両V1の速度(矢印Q2で示す)は相対的に小さい場合の例を示す。
図3(A)に示す場面のように、自車両V1の車速(矢印Q1)が比較的高い場合(例えば80Km/h)に、隣接車線を走行する他車両V2が低速(例えば40Km/h)で自車両V1の前に出てくると、自車両V1と他車両V2の相対速度が大きくなるため、自車両V1と他車両V2が接近する。この場面では、自車両V1は、他車両V2の運転行動(車線変更)に高い注意を払う必要がある。つまり、自車両V1は、減速、進行方向の変更(操舵)等の他車両V2から自車両V1を離隔させる運転行動をとる必要がある。
他方、図3(B)に示す場面のように、自車両V1の車速(矢印Q2)が比較的高い場合(例えば80Km/h)に、隣接車線を走行する他車両V2が高速(例えば60Km/h)で自車両V1の前に出てくる場合には、自車両V1と他車両V2の相対速度が大きくならないため、自車両V1と他車両V2は接近しない。この場面では、自車両V1は、他車両V2の運転行動(車線変更)に注意を払う必要はない。つまり、自車両V1は、減速、進行方向の制御(操舵)等の運転行動をとる必要はなく、従前の走行制御を継続させればよい。
隣接車線を走行する他車両が、自車両の走行車線に車線変更する場合において、自車両の走行車線の交通流の平均速度は、隣接車線の交通流の平均速度よりも高い。このため、車線変更をする他車両の速度(前進時における移動変位量)が大きければ、自車両の走行の妨げにならない可能性が高い。
本発明においては、隣接車線から車線変更をする他車両の前進時における移動変位量(例えば速度)が大きいほど、自車両との速度差が小さくなるため、自車両に与える影響の度合いは、小さくなると考える。このような観点から、車線変更をする他車両の前進時の移動変位量(例えば速度)が大きい場合には、車線変更をする他車両に対する注意度は低く設定できる。
本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進時における移動変位量を特徴量として算出し、移動変位量に基づいて自車両の走行を制御するので、「自車両に対する影響の大きさ」に着目した走行制御をすることができる。
具体的に、本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報について周波数分析を行い、分析結果に基づいて他車両の前進時における移動変化量を算出する。周波数分析をしたときのパワー(振幅)は、移動変化量である。この移動変化量に基づいて、他車両の割り込みによる影響度を評価できる。
図4(A)は、隣接車線を走行する他車両の速度変化を示すグラフであり、図4(B)は図4(A)に示す他車両の速度変化をフーリエ変換などの周波数分析をした結果(パワースペクトル)である。図4(B)に示す値(a)は、発生頻度に対応する。図4(B)に示す値(b)は、後述する影響度の大きさに対応する。
本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報を周波数分析することにより移動変化量を求めるので、実際の交通において生じる「自車両に対する影響の大きさ」を正確に求めることができる。
また、本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する他車両が自車両の走行する車線に車線変更し、自車両の前に割り込む事象が起こる場面における注意度を、その事象の「発生頻度」から評価する。本実施形態では割り込みの「発生頻度」を、他車両の前進及び停止の発生頻度に基づいて評価する。
本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進及び停止の発生頻度を特徴量として算出し、その前進及び停止の発生頻度に基づいて自車両の走行を制御するので、隣接車線から他車両が割り込む事象の「発生頻度」に着目した走行制御をすることができる。
具体的に、本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報について周波数分析を行い、分析結果に基づいて車両の前進及び停止の発生頻度を算出する。周波数分析をしたときの周波数は、他車両の前進及び停止の発生頻度である。この移動変化量に基づいて、他車両の割り込みによる影響度を評価できる。先述したように、図4(B)に示す値(b)は、後述する影響度の大きさに対応する。
本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報を周波数分析することにより他車両の前進及び停止の発生頻度を求めるので、実際の交通において生じる、他車両が車線変更をする事象の「発生頻度」を正確に求めることができる。
図4に示すように、本実施形態の制御装置10は、隣接車線を走行する他車両の速度変化の波形情報から、他車両の前進時における移動変位量と、他車両の前進及び停止の発生頻度を求めることができる。
先述したように、従来においては、隣接車線を走行する他車両が車線変更をする確率に基づいて、一律に自車両の設定速度を低減させて、自車両前に割り込んでくる他車両との接近・接触を回避する手法が採られていた。
しかし、自車両前に割り込んでくる他車両の速度が高く、自車両との相対速度が小さい場合や、距離が離れている状態で急加速して車線変更をする場合には、自車両に与える影響は少ない。
このように、車線変更をする全ての他車両が自車両に与える影響は同じではないにもかかわらず、一律に設定速度を低減させると、自車両に無駄な減速をさせることになる。自車両の減速は、後続車両にも影響を与え、新たな渋滞の原因ともなる。
本実施形態では、隣接車線から自車両前に割り込んでくる他車両が自車両に与える影響を考慮して、自車両の走行制御を実行する。これにより、無駄な減速や操舵を排除した走行制御を実現できる。
また、本実施形態の走行制御装置100は、隣接車線を走行する他車両が自車両の走行車線に車線変更し、自車両の前に割り込むという事象の「発生頻度」と、その事象が発生したときの「自車両に対する影響の大きさ」との二つの観点から他車両に対する注意度を評価する。ここにいう注意度は、自車両が、割り込んできた他車両との接触を避けるため又は適切な車間距離を保つために、他車両に対して向ける注意の度合である。
本実施形態では、割り込んできた他車両に対して自車両が向ける注意度を「発生頻度」及び「影響の大きさ」の二つの観点から評価する。これにより、他車両の割り込みによって生じる注意度の程度又は注意度の変化を正確に認識できる。適切な走行制御を実現するために、本実施形態では、割り込んできた他車両に対する注意度を正確に認識する。
次に、本実施形態の制御装置10の制御機能について説明する。
本実施形態の制御装置10は、交通流の特徴量に基づいて、自車両の走行を制御する。交通流の特徴量から、自車両前に割り込んでくる他車両に対する注意度が高いと判断された場合には、自車両が他車両と接近しすぎることを避けるために、自車両に減速の運転行動を実行させる。自車両の設定速度を低く変更させてもよい。また、他車両から離隔するように自車両の進行方向を変更する運転行動を実行させてもよい。
本実施形態の制御装置10は、他車両の前進時における移動変位量が所定の第1閾値以上である場合には、直前に自車両が実行している走行制御の内容を維持させる。移動変位量が所定値以上である場合は、隣接車線から割り込んでくる他車両が自車両に与える影響は小さいと判断できるので、減速や進行方向の変更などの他車両との接近を回避するための運転行動はさせない。これにより、自車両に実質的な影響がない場合に、無駄な減速や操舵を自車両にさせないようにすることができる。無駄な運転行動をさせないようにするので、移動効率の低減や、快適性の損失も発生させない。
また、本実施形態の制御装置10は、他車両の前進及び停止の発生頻度が所定の第2閾値以上であっても、他車両の前進時における移動変位量が第1閾値以上である場合には、直前に自車両が実行している走行制御の内容を維持させる。第2閾値は、隣接車線を走行する他車両が車線変更をする可能性があると判断できる閾値である。なお、第1閾値と第2閾値は同値でもよいし、異なる値でもよい。これにより、隣接車線を走行する他車両が車線変更をする可能性が高い場合であっても、その車線変更により自車両が受ける影響が小さいものであれば、自車両の走行制御を維持する。自車両が受ける影響が小さい車線変更は無視し、無駄に反応しない。これにより、安定した走行制御を実行することができる。このような走行制御は、運転を行う者の感覚と共通するので、乗員に違和感を覚えさせない。
続いて、本実施形態の走行制御装置100の制御手順を、図5及び図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、各ステップでの処理の内容は、上述したとおりであるため、ここでは処理の流れを中心に説明する。
まず、図5に基づいて、走行制御の全体の手順について説明する。
ステップS101において、制御装置10は、少なくとも自車両V1の位置を含む自車情報を取得する。自車情報は、自車両V1の車速・加速度を含んでもよい。ステップS102において、制御装置10は、自車両V1が走行する車線に隣接する隣接車線を走行する他車両の存在、位置、速度等を含む他車両情報を取得する。
ステップS103において、制御装置10は、隣接車線の交通流の特徴を算出する。交通流の特徴の算出から運転行動の決定処理にかけてのサブルーチンについては、図6において説明する。
また、ステップS104において、制御装置10は、算出した交通流の特徴に基づいて、運転行動を決定する。
ステップS105において、制御装置10は、運転行動を実現する目標経路を算出する。目標経路は、自車両V1が走行する一又は複数の目標座標を含む。各目標座標は、目標横位置(目標X座標)と目標縦位置(目標Y座標)とを含む。算出された一又は複数の目標座標と自車両V1の現在位置とを結ぶことにより、目標経路を求める。なお、ステップS105に示す目標座標の算出方法については後述する。
ステップ106において、制御装置10は、ステップS105で算出された目標座標の目標横位置を取得する。また、ステップS107において、制御装置10は、自車両V1の現在の横位置とステップS106で取得した目標横位置との比較結果に基づいて、横位置に関するフィードバックゲインを算出する。
そして、ステップS108において、制御装置10は、自車両V1の実際の横位置と、現在位置に対応する目標横位置と、ステップS107のフィードバックゲインとに基づいて、目標横位置上を自車両V1に移動させるために必要な操舵角や操舵角速度等に関する目標制御値を算出する。ステップS112において、制御装置10は、目標制御値を車載装置200に出力する。これにより、自車両V1は、目標横位置により定義される目標経路上を走行する。なお、ステップS105において複数の目標座標が設定される場合には、目標横位置を取得する度にステップS106〜S112の処理を繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての制御値を車載装置200に出力する。
ステップS109において、制御装置10は、ステップS105で算出された一又は複数の目標座標についての目標縦位置を取得する。また、ステップS110において、制御装置10は、自車両V1の現在の縦位置、現在位置における車速及び加減速と、現在の縦位置に対応する目標縦位置、その目標縦位置における車速及び加減速との比較結果に基づいて、縦位置に関するフィードバックゲインを算出する。そして、ステップS111において、制御装置10は、目標縦位置に応じた車速および加減速度と、ステップS110で算出された縦位置のフィードバックゲインとに基づいて、縦位置に関する目標制御値を算出する。ステップS109〜S112の処理は、先述したステップS106〜S108,S112と同様に、目標縦位置を取得する度に繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての制御値を車載装置200に出力する。
ここで、縦方向の目標制御値とは、目標縦位置に応じた加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値である。たとえば、エンジン自動車にあっては、制御機能は、現在および目標とするそれぞれの加減速度および車速の算出値に基づいて、目標吸入空気量(スロットルバルブの目標開度)と目標燃料噴射量を算出し、これを駆動装置80へ送出する。なお、制御機能は、加減速度および車速を算出し、これらを車両コントローラ70へ送出し、車両コントローラ70において、これら加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値をそれぞれ算出してもよい。
そして、ステップS112に進み、制御装置10は、ステップS111で算出された縦方向の目標制御値を、車載装置200に出力する。車両コントローラ70は、進行方向の変更制御及び駆動制御を実行し、自車両に目標横位置及び目標縦位置によって定義される目標経路上を走行させる。
ステップS113において、制御装置10は、出力装置110に情報を提示させる。出力装置110に提示させる情報は、ステップS104において決定された運転行動である。例えば、「左に寄って停止します」「交差点を通過してから左に寄って停止します」といった運転行動の内容であってもよいし、ステップS105〜S111において算出された運転行動に応じた目標経路の形状であってもよいし、ステップS112において車載装置200へ出力された目標制御値であってもよい。
ステップS114において、ドライバがステアリング操作等をしたか否か、ドライバの操作介入の有無を判断する。ドライバの操作が検出されなければ、ステップS101へ戻り、新たな対象物の設定、目標経路の算出及び走行制御を繰り返す。他方、ドライバが操作をした場合には、ステップS115に進み、走行制御を中断する。次のステップS116において、走行制御を中断した旨の情報を提示する。
続いて、図6のフローチャートに基づいて、本実施形態の走行制御装置100の交通流の特徴の算出処理から運転行動の決定処理(図4 S103)のサブルーチンについて説明する。
自車情報、自車情報及び他車両情報を取得し、特徴量を算出する。具体的に、ステップS11において制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進時における移動変位量を特徴量として算出する。これと並行して、ステップS12において制御装置10は、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進及び停止の発生頻度を特徴量として算出する。
ステップS13において、制御装置10は、他車両の前進時における移動変位量が所定の閾値以上であるか否かを判断する。移動変位量が所定の閾値以上である場合にはステップS14に進み、直前に実行していた走行制御の内容を維持させる。つまり、減速、進行方向の変更に係る運転行動はさせない。設定速度は変更しない(低くしない)。他方、移動変位量が所定の閾値未満である場合にはステップS15に進み、他車両との接近を避けるために必要な減速、進行方向の変更に係る運転行動を実行させる。設定速度を低くしてもよい。運転行動の実行については、図5のステップS104以降の処理により行う。
本発明の実施形態の走行制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の走行制御装置100によれば、自車両の走行車線に隣接する隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進時における移動変位量を特徴量として算出し、移動変位量に基づいて自車両の走行を制御するので、「自車両に対する影響の大きさ」に着目した走行制御をすることができる。
[2]本実施形態の走行制御装置100によれば、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報を周波数分析することにより移動変化量を求めるので、実際の交通において生じる「自車両に対する影響の大きさ」を正確に求めることができる。
[3]本実施形態の走行制御装置100によれば、他車両の前進時における移動変位量が所定の第1閾値以上である場合には、直前に自車両が実行している走行制御の内容を維持させる。これにより、自車両に実質的な影響がない場合に、無駄な減速や操舵を自車両にさせないようにすることができる。無駄な運転行動をさせないようにするので、移動効率の低減や、快適性の損失も発生させない。
[4]本実施形態の走行制御装置100によれば、隣接車線を走行する複数の他車両の速度から他車両の前進及び停止の発生頻度を特徴量として算出し、その前進及び停止の発生頻度に基づいて自車両の走行を制御するので、隣接車線から他車両が割り込む事象の「発生頻度」に着目した走行制御をすることができる。
[5]本実施形態の走行制御装置100によれば、隣接車線を走行する複数の他車両の速度の情報を周波数分析することにより他車両の前進及び停止の発生頻度を求めるので、実際の交通において生じる、他車両が車線変更をする事象の「発生頻度」を正確に求めることができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る走行制御装置の一態様として、車載装置200ともに走行制御システム1を構成する走行制御装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、本発明に係る、情報取得手段と、特徴量算出手段と、制御手段とを備える走行制御装置の一例として、情報取得機能と、特徴量算出機能と、制御機能とを実行する制御装置10を備える走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。