第1の発明は1,1,2−トリフルオロエチレンを含む冷媒を作動流体として用い、ポリビニルエーテル油を圧縮機用潤滑油として用い、密閉容器内にモータと、前記モータの回転子で駆動される圧縮機構部を配し、前記圧縮機構部はシリンダー内にシャフトにより偏心回転するピストンを配し、前記シリンダー内を吸入室と圧縮室に仕切るベーンの先端部が前記ピストンの外周に揺動自在に係合されたものである。これによれば、ベーンとピストンとの間に局所的に高い面圧の発生を防止でき、摺動熱の発生を抑制できるので、R1123の不均化反応を抑制できる。また、ポリビニルエーテル油は相対的に極性が低く、添加剤による摺動性改善の効果が発揮しやすいため、摺動部での局所的発熱を抑制でき、R1123の自己分解反応を抑制できる。
第2の発明は、第1の発明において、前記ベーンの先端部と前記ピストンの外周が、前記ベーンの円弧状先端部と前記ピストンの外周の円弧状切り欠き部によって揺動自在に係合されるものである。これによれば、係合部は円弧状同士の嵌め合いになるため面接触となり摺動熱の発生を抑えることが出来る。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記作動流体は、ジフルオロメタンを含む混合作動流体であって、前記ジフルオロメタンは30重量%以上60重量%以下である、または、テトラフルオロエタンを含む混合作動流体であって、前記テトラフルオロエタンは30重量%以上60重量%以下である、または、ジフルオロメタンとテトラフルオロエタンを含む混合作動流体であって、前記ジフルオロメタンとテトラフルオロエタンとを混合し、前記ジフルオロメタンとテトラフルオロエタンを合わせた混合割合は30重量%以上60重量%以下であるものである。これによれば、R1123の不均化反応を抑制するとともに、冷凍能力やCOPを向上できる。
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ポリビニルエーテル油が、リン酸エステル系摩耗防止剤を含有するものである。これによれば摩耗防止剤が摺動部表面に吸着し摩擦を低減することで発熱を抑制することで、R1123冷媒の自己分解反応を抑制する。
第5の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ポリビニルエーテル油が、フェノール系酸化防止剤を含有するものである。これによればフェノール系酸化防止剤が摺動部にて発生したラジカルを速やかに捕捉するため、ラジカルが冷媒R1123と反応するのを防止する。
第6の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ポリビニルエーテル油が、1%以上50%未満のテルペン類またはテルペノイド類に基油より高粘度の潤滑油を混ぜるか、もしくはテルペン類またはテルペノイド類と同等量以上の超高粘度の潤滑油をあらかじめ混ぜて基油と同等の粘度に調整した添加油を基油と混合した潤滑油であるものである。これによれば、R1123の不均化反応を抑制できる。
第7の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記モータは、熱硬化性絶縁材が導体上に絶縁被膜を介して塗布焼き付けされてなる電線をコイルに用いたものである。これによれば、圧縮機内の電動機用コイルの巻線に熱硬化性絶縁材を塗布することで、コイルが液冷媒に浸漬した状態でも巻線間の抵抗を高いまま保ち、放電を抑制しその結果R1123冷媒の分解を抑制できる。
第8の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記密閉容器は、口部に絶縁部材を介して設置された給電ターミナルと、前記給電ターミナルをリード線と接続するための接続端子を有し、前記密閉容器の内側の給電ターミナル上に前記絶縁部材に密着させてドーナツ状の絶縁部材を配接するものである。これによれば、金属筐体内側の給電ターミナルに絶縁物を付加したため、導体間の最短距離を延長することで給電ターミナルの絶縁不良を抑制することができ、R1123の放電エネルギーによる着火を防止する。また、R1123が分解した際に発生するフッ化水素がガラス絶縁物と接触することを防止し、ガラス絶縁物が腐食して破損することを防止する。
第9の発明は、第1〜8のいずれか1つの発明の圧縮機と、前記圧縮機により圧縮されて高圧になった冷媒ガスを冷却する凝縮器と、前記凝縮器により液化された高圧冷媒を減圧する絞り機構と、前記絞り機構により減圧された冷媒をガス化する蒸発器と、を配管により連結して構成した冷凍サイクル装置である。これによれば、R1123の不均化反応を抑制するとともに、冷凍能力やCOPを向上できる。
第10の発明は、第9の発明において、凝縮器に設けられた凝縮温度検知手段を備え、前記作動流体の臨界温度と前記凝縮温度検知手段で検知される凝縮温度の差が、5K以上になるように、前記絞り機構の開度を制御するものである。これによれば、温度検知手段によって測定される作動流体温度をその圧力に相当するとして、臨界圧力から安全性の余裕を考えた5K以上に高圧側作動流体温度(圧力)を制限するように、絞り機構の開度を制御することで、より高圧の凝縮圧力を過度に高まらないようにできるので、過度の圧力上昇の結果(分子間距離が近接した結果)、発生する恐れのある不均化反応を抑制することができ、装置の信頼性を確保することが可能となる。
第11の発明は、第9の発明において、圧縮機の吐出部と前記絞り機構の入口との間に設けられた高圧側圧力検知手段を備え、前記作動流体の臨界圧力と前記高圧側圧力検知手段で検知される圧力との差が、0.4MPa以上となるように、前記絞り機構の開度を制
御するものである。これによれば、R1123を含む作動流体について、特に、温度勾配が大きい非共沸冷媒を使用する場合において、冷媒圧力をより正確に検知できること、さらには、その検知結果を用いて、絞り機構の開度制御を行い、冷凍サイクル装置内の高圧側圧力(凝縮圧力)を下げることができるので、不均化反応を抑制でき、装置の信頼性を向上することが可能となる。
第12の発明は、第9の発明において、凝縮器と前記絞り機構との間に設けられた凝縮器出口温度検知手段を備え、前記凝縮温度検知手段で検知される凝縮温度と前記凝縮器出口温度検知手段で検知される凝縮器出口温度の差が15K以下にするように、前記絞り機構の開度を制御するものである。
これによれば、凝縮温度検知手段と凝縮器出口温度検知手段との差で示される過冷度の検知結果を用いて絞り機構の開度制御を行うことで、冷凍サイクル装置内の作動流体の過度な圧力上昇を防ぐことができるので、不均化反応を抑制でき、装置の信頼性を向上することができる。
第13の発明は、第9の発明において、前記凝縮器で熱交換する第1媒体を搬送する第1搬送手段と、前記蒸発器で熱交換する第2媒体を搬送する第2搬送手段と、前記凝縮器に設けられた凝縮温度検知手段と、前記凝縮器に流入する前の第1の媒体の温度を検知する第1媒体温度検知手段と、前記蒸発器に流入する前の第2の媒体の温度を検知する第2媒体温度検知手段とを備え、前記圧縮機の入力の単位時間あたりの変化量、前記第1搬送手段の入力の単位時間当たりの変化量、前記第2搬送手段の入力の単位時間当たりの変化量があらかじめ定めた所定値より小さい場合に、前記凝縮温度検知手段で検知される凝縮温度の単位時間当たりの変化量が、前記第1媒体温度検知手段で検知される第1媒体の温度の単位時間当たりの変化量と、前記第2媒体温度検知手段で検知される第2媒体の温度の単位時間当たりの変化量のいずれよりも大きい場合には、前記絞り機構を開方向に制御するものである。これによれば、周囲媒体の様相が変化しない場合に、凝縮温度に急峻な変化が生じた場合には、不均化反応による圧力上昇が生じたと考えられるので、絞り機構の開度を開く方向に制御する。そうすることで、装置の信頼性を向上することが可能となる。
第14の発明は、第9〜13のいずれか1つの発明において、冷凍サイクルを構成する配管の継手の外周を、重合促進剤を含んだシール剤で覆ったものである。これによれば、継手から作動流体が漏れた場合には、シール剤に含まれる重合促進剤と、R1123を含む作動流体とが重合反応をして、重合生成物が発生するので、視覚的に漏れを確認しやすくなるとともに、その重合生成物が外部へ放出される冷媒流の妨げとして作用し、冷媒漏えい抑制が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる圧縮機を用いた冷凍サイクル装置のシステム構成図を示している。
図1に示されるように、本実施の形態の冷凍サイクル装置は、例えば冷房専用のサイクルとして説明した場合、主として圧縮機61、凝縮器62、絞り機構63および蒸発器64から構成されており、これらの機器は配管により作動流体(冷媒)が循環するように連結されている。
以上のように構成された冷凍サイクル装置においては、冷媒は加圧、冷却により液体に変化し減圧、加熱により気体に変化する。圧縮機61はモータにより駆動され、低温低圧の気体冷媒を高温高圧の気体冷媒に加圧し凝縮器62に搬送される。凝縮器62においてはファン等により送風される空気により冷却され凝縮し低温高圧の液体冷媒になる。この液体冷媒は絞り機構63により減圧されて一部は低温低圧の気体冷媒に、残りは低温低圧の液体冷媒となって、蒸発器64に搬送される。蒸発器64においてファン等により送風される空気により加熱されて蒸発し、低温低圧の気体冷媒となって再び圧縮機61に吸入され加圧されるサイクルを繰り返す。
また、上記実施の形態では冷房専用の冷凍サイクル装置として説明したが、四方弁等を介して暖房サイクル装置として作動させて実施できることはもちろん可能である。
なお、凝縮器62、蒸発器64の少なくともいずれか一方の熱交換器の冷媒流路を構成する伝熱管は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含むアルミニウム製冷媒管であることが望ましく、特に、複数の冷媒流通孔を備えた偏平管であることが、凝縮温度を低下させる、または、蒸発温度を上昇させる上で望ましい。
本実施の形態の冷凍サイクル装置に封入される作動流体(冷媒)は、(1)R1123(1,1,2−トリフルオロエチレン)と、(2)R32(ジフオロメタン)からなる2成分系の混合作動流体であり、特に、R32が30重量%以上60重量%以下の混合作動流体である。
後述する圧縮機への適用においては、R1123にR32を30重量%以上混合することで、R1123の不均化反応を抑制できる。また、R32の濃度が高いほど不均化反応をより抑制できる。これは、R32のフッ素原子への分極が小さいことによる不均化反応を緩和する作用と、R1123とR32は物理特性が似ていることから凝縮・蒸発など相変化時の挙動が一体となることによる不均化の反応機会を減少させる作用とにより、R1123の不均化反応を抑制することができる。
また、R1123とR32の混合冷媒は、R32が30重量%、R1123が70%で共沸点を持ち、温度すべりがなくなる為、単一冷媒と同様な取り扱いが可能である。つまり、R32を60重量%以上混合すると、温度すべりが大きくなり、単一冷媒と同様な取り扱いが困難となる可能性があるため、R32を60重量%以下で混合することが望ましい。特に、不均化を防止するとともに、共沸点に近づくため温度すべりをより小さくし、機器の設計が容易とするために、R32を40重量%以上50重量%以下で混合することが望ましい。
表1、表2は、R1123とR32の混合作動流体のうち、R32が30重量%以上60重量%以下となる混合割合での、冷凍サイクルの圧力、温度、圧縮機の押しのけ容積が同じ場合の冷凍能力およびサイクル効率(COP)を計算し、R410AとR1123と比較したものである。
まず、表1、表2の計算条件について説明する。近年、機器のサイクル効率を向上するため、熱交換器の高性能化が進み、実際の運転状態では、凝縮温度は低下し、蒸発温度は上昇する傾向にあり、吐出温度も低下する傾向にある。このため、実際の運転条件を考慮し、表1の冷房計算条件は、空気調和機器の冷房運転時(室内乾球温度 27℃、湿球温度 19℃、室外乾球温度 35℃)に対応し、蒸発温度は15℃、凝縮温度は45℃、圧縮機の吸入冷媒の過熱度は5℃、凝縮器出口の過冷却度は8℃とした。また、表2の暖房計算条件は、空気調和機器の暖房運転時(室内乾球温度 20℃、室外乾球温度 7℃、湿球温度 6℃)に対応した計算条件で、蒸発温度は2℃、凝縮温度は38℃、圧縮機
の吸入冷媒の過熱度は2℃、凝縮器出口の過冷却度は12℃とした。
表1、表2より、R32を30重量%以上60重量%以下で混合することにより、冷房および暖房運転時に、R410Aと比較して、冷凍能力は約20%増加し、サイクル効率(COP)は94〜97%となり、温暖化係数はR410Aの10〜20%に低減できる。
以上説明したように、R1123とR32の2成分系において、不均化の防止、温度すべりの大きさ、冷房運転時・暖房運転時の能力、COPを総合的に鑑みると(すなわち、後述する圧縮機を用いた空気調和機器に適した混合割合を特定すると)、30重量%以上60重量%以下のR32を含む混合物が望ましく、さらに望ましくは、40重量%以上50重量%以下のR32を含む混合物が望ましい。
<作動流体の変形例1>
本実施の形態の冷凍サイクル装置に封入される作動流体は、(1)R1123(1,1,2−トリフルオロエチレン)と、(2)R125(テトラフオロエタン)からなる2成分系の混合作動流体であり特に、R125が30重量%以上60重量%以下の混合作動流体であってもよい。
後述する圧縮機への適用においては、R125を30重量%以上混合することで、R1123の不均化反応を抑制できる。また、R125の濃度が高いほど不均化反応をより抑制できる。これは、R125のフッ素原子への分極が小さいことによる不均化反応を緩和する作用と、R1123とR125は物理特性が似ていることから凝縮・蒸発など相変化時の挙動が一体となることによる不均化の反応機会を減少させる作用とにより、R1123の不均化反応を抑制することができる。また、R125は不燃性冷媒であるため、R125はR1123の燃焼性を低減できる。
表3、表4は、R1123とR125の混合作動流体のうち、R125が30重量%以上60重量%以下となる混合割合での、冷凍サイクルの圧力、温度、圧縮機の押しのけ容
積が同じ場合の冷凍能力およびサイクル効率(COP)を計算し、R410AとR1123と比較したものである。なお、計算条件については、表1、表2と同様である。
表3、表4より、R125を30重量%以上60重量%以下で混合することにより、R410Aと比較して、冷凍能力は96〜110%となり、サイクル効率(COP)は94〜97%となる。
特に、R125を40重量%以上50重量%以下で混合することにより、R1123の不均化を防止するとともに、吐出温度を低減できるため、吐出温度が上昇する高付加運転時や冷凍冷蔵機器の設計が容易となる。さらに、温暖化係数はR410Aの50〜100%に低減できる。
以上説明したように、R1123とR125の2成分系において、不均化の防止、燃焼性の低減、冷房運転時・暖房運転時の能力、COP、吐出温度を総合的に鑑みると(すなわち、後述する圧縮機を用いた空気調和機器に適した混合割合を特定すると)、30重量%以上60重量%以下のR125を含む混合物が望ましく、さらに望ましくは、40重量%以上50重量%以下のR125を含む混合物が望ましい。
<作動流体の変形例2>
本実施の形態の冷凍サイクル装置に封入される作動流体は、(1)R1123(1,1,2−トリフルオロエチレン)と、(2)R32(ジフオロメタン)、(3)R125(テトラフオロエタン)からなる3成分系の混合作動流体であり、特に、R32とR125を合わせた混合割合が30以上60重量%未満であり、R1123の混合割合が40重量%以上70重量%未満である混合作動流体であってもよい。
後述する圧縮機への適用においては、R32とR125を合わせた混合割合が30重量%以上で、R1123の不均化反応を抑制できる。また、R32とR125を合わせた混
合割合が高いほど不均化反応をより抑制できる。また、R125はR1123の燃焼性を低減する。
表5、表6は、R32とR125の混合割合をそれぞれ50重量%と固定し、R1123と混合した場合の冷凍サイクルの圧力、温度、圧縮機の押しのけ容積が同じ場合の冷凍能力およびサイクル効率(COP)を計算し、R410AとR1123と比較したものである。なお、計算条件については、表1、表2と同様である。
表5、表6より、R32とR125を合わせた混合割合が30重量%以上60重量%以下で、R410Aと比較して、冷凍能力は107〜116%となり、サイクル効率(COP)は93〜96%となる。
特に、R32とR125を合わせた混合割合が40重量%以上50重量%以下で、不均化を防止するとともに、吐出温度を低減でき、燃焼性も低減できる。さらに、温暖化係数はR410Aの60〜30%に低減できる。
なお、<作動流体の変形例2>では、3成分系の作動流体のR32とR125の混合割合をそれぞれ50重量%として説明したが、R32の混合割合を0重量%以上100重量%以下でとしてもよく、冷凍能力を増加させたい場合はR32の混合割合を増加させ、反対にR32の混合割合を減少させ、R125の混合割合を増加させると、吐出温度を低減させ、そして燃焼性を低減さることができる。
以上説明したように、R1123とR32とR125の3成分系において、不均化の防止、燃焼性の低減、冷房運転時・暖房運転時の能力、COP、吐出温度を総合的に鑑みると(すなわち、後述する圧縮機を用いた空気調和機器に適した混合割合を特定すると)、R32とR125を混合し、R32とR125との和を30重量%以上60重量%以下とした混合物が望ましく、さらに望ましくは、R32とR125との和を40重量%以上5
0重量%以下を含む混合物が望ましい。
図2は、図1に示す冷凍サイクル装置に使用されるロータリ圧縮機の縦断面図である。密閉容器1の上部にモータ2の固定子2aが固定され回転子2bで駆動されるシャフト4を有する圧縮機構部5が密閉容器1の下部に固定されている。圧縮機構部5のシリンダー6の上端に上軸受け7下端に下軸受け8がボルト等で固定されている。シリンダー6内にはシャフト4の偏心部4aにピストン9が挿入され偏心回転を行う。
図3は、図2に示すロータリ圧縮機の圧縮機構部横断面図である。図3に示されるように、シリンダー6のベーン溝6aにベーン10が挿入されベーン10の円弧状先端部10aはピストン9の外周の円形状切り欠き部9aに揺動自在に係合されている。
また、本実施の形態の圧縮機は、圧縮機用潤滑油(冷凍機油)として、ポリビニルエーテル油が使用されている。また、圧縮機用潤滑油に添加される添加剤としては、リン酸エステル系摩耗防止剤とフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも1種類の添加剤を含有する。
リン酸エステル系摩耗防止剤として具体的にはトリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。通常、リン酸エステル系摩耗防止剤は冷凍機油中に0.1〜3wt%添加することで、摺動部表面に効率的に吸着して摺動面でせん断力の小さな膜を作成することで摩耗防止効果が得られる。
これによれば、摩耗防止剤による摺動性改善効果により、摺動部の局所的発熱を抑制することで、R1123冷媒の自己分解反応を抑制する効果が得られる。
また、フェノール系酸化防止剤としては、具体的にプロピルガレート、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、t−ブチルヒドロキノン、ノルジヒドログアイヤレチン酸、ブチルヒドロキシアニソール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、オクチルガレート、ブチルヒドロキシトルエン、ドデシルガレート等を用いることができる。これら酸化防止剤は基油に対して0.1〜1wt%添加することでラジカルを効率的に捕捉し反応を防止することができる。また酸化防止剤による基油自体の着色を最小限に抑えることができる。
これによれば、フェノール系酸化防止剤が、密閉容器1内で発生したラジカルを効率的に捕捉することで、R1123の分解反応を抑制する効果が得られる。
またR1123のような2重結合とフッ素原子を含む反応性の高い分子の反応を防ぐために、R1123の冷媒量に対して5%程度のリモネンを添加してもよい。本発明の圧縮機およびそれを用いた冷凍サイクル装置は密閉系であり、前述したように潤滑油が基油として封入されている。一般的にこのような圧縮機に封入される基油となる潤滑油の粘度は32mm2/sから68mm2/s程度が一般的であり、一方リモネンの粘度は0.8mm2/s程度とかなり低粘度であり、5%程度混ぜた場合には60mm2/s、15%混ぜた場合には48mm2/s、35%混ぜた場合には32mm2/sと急激に粘度が下が
る。そのためR1123の反応を防ぐために多量のリモネンを混ぜると、潤滑油の粘度低下から潤滑不良による磨耗や、摺動面の金属接触による金属せっけんの生成など、圧縮機や冷凍サイクル装置の信頼性に影響する。
本実施の形態の圧縮機の潤滑油は、反応を防ぐに適した量のリモネンの混合によって生じる基油の粘度低下を補うために、あらかじめ高粘度の潤滑油をベースにするか、リモネンの混合量と同等以上の量の超高粘度の潤滑油を混ぜることによって適正な潤滑油粘度を確保するものである。
具体的には5%リモネンを混合する場合の潤滑油の粘度は78mm2/s、35%リモネンを混合する場合の潤滑油の粘度は230mm2/s程度のものを選択すれば68mm2/sを確保できる。なおリモネンによるR1123の反応を防ぐ効果を最大とするため、リモネンの混合量を70%や80%に増やすなど極端な例も考えられるが、ベースとなる高粘度の潤滑油の粘度がそれぞれ8500mm2/sや25000mm2/sとなりISO規格の最大値である3200mm2/sを超え、またリモネンとの均一な混合も難しく実用的な適用は困難と考えられる。
また超高粘度潤滑油をリモネンと等量混合する場合には、800mm2/sから1000mm2/sの潤滑油を混合すれば32mm2/sから68mm2/sの粘度が得られる。なお、粘度差の異なるリモネンと超高粘度油を混合する場合に、リモネンに超高粘度油を少量ずつ添加しながら混合すれば比較的均一な組成粘度の潤滑油が得られる。
なお本実施の形態ではリモネンを例にしたが、テルペン類またはテルペノイド類ならば同様の効果が得られ、例えばヘミテルペン類のイソプレン、プレノール、3−メチルブタン酸やモノテルペン類のゲラニル二リン酸、シネオール、ピネンやセスキテルペン類のファルネシル二リン酸、アーテミシニン、ビサボロール、ジテルペン類のゲラニルゲラニル二リン酸、レチノール、レチナール、フィトール、パクリタキセル、ホルスコリン、アフィジコリンやトリテルペン類のスクアレン、ラノステロールなど圧縮機や冷凍サイクル装置の使用温度や要求される潤滑油粘度に応じて選択することができる。
また、例記した粘度については高圧容器を有する圧縮機での具体例であり、さらに5mm2/sから32mm2/sの低い潤滑油の粘度で使用される低圧容器の圧縮機でも同様の実施が可能であり、同様の効果が得られることは言うまでもない。
なお、リモネンなどのテルペン類とテルペノイド類はプラスチックに対して溶解性を有するが、30%以下程度の混合ならばその影響は僅かであり、圧縮機内のプラスチックに要求される電気絶縁性が問題となるレベルではない。しかし長期的な信頼性が要求される場合や、常時使用温度が高い場合など、問題がある場合には耐薬品性を有するポリイミド、ポリイミドアミドやポリフェニレンスルファイドを使用することが望ましい。
また、本実施の形態の圧縮機のモータ2の巻き線は、ワニス(熱硬化性絶縁材)が、導体上に絶縁被膜を介して塗布焼き付けされている。熱硬化性絶縁材は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。この中でポリイミド樹脂は、前駆体であるポリアミド酸の状態で塗布し300℃前後で焼き付けることによりポリイミド化することができる。イミド化反応はアミンとカルボン酸無水物の反応により起こることが知られている。R1123冷媒は電極間のショートでも反応する可能性があるため、モータ巻線上に芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてできるポリイミド前駆体を主成分とするポリイミド酸ワニスを塗布することで電極間のショートを防止できる。
このため、モータ2のコイルが液冷媒に浸漬した状態でも巻線間の抵抗を高いままに保つことが可能になり、巻線間の放電を抑制しその結果R1123冷媒の自己分解反応を抑制する効果が得られる。
図4は本実施の形態に係る圧縮機の給電ターミナル付近の構造を示した部分断面図である。図4において、71は給電ターミナル、72はガラス絶縁物、73は給電用端子を保持する金属製蓋体、74は給電ターミナルに接続した旗型端子、75はリード線である。本実施の形態に係る圧縮機では、圧縮機の密閉容器1の内側の給電ターミナル上に前記絶縁部材と密着させたドーナツ状の絶縁部材76を配接している。ドーナツ状の絶縁部材は絶縁性を保つものでフッ酸に耐性を有するものが最適である。たとえば、セラミック製ガイシやHNBRゴム製ドーナツ型スペーサなどが挙げられる。ドーナツ状の絶縁部材はガラス絶縁物と密着することは必須であるが、接続端子とも密着している方が好ましい。
このように構成された給電ターミナルは、ドーナツ状の絶縁部材により給電端子と蓋体の圧縮機内面での沿面距離が長くなっており、ターミナルトラッキングを防止しR1123の放電エネルギーによる着火を防止することができる。またR1123の分解により発生したフッ酸がガラス絶縁物を腐食することを防止する。
以上のように構成されたロータリ圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
まず、シリンダー6に設けられた吸入孔11より冷媒ガスが吸入室12に吸入される。また、圧縮室13にある気体冷媒はピストン9の左方向の回転(矢印方向)とともに圧縮され吐出切り欠き14を通って吐出口(図示せず)より吐出される。密閉容器1内に吐出された前記圧縮気体冷媒はモータ2のすき間を通って密閉容器1の上部にある吐出管15より吐出される、その際まわりにある冷凍機油のミストも一緒に吐出される。
本実施の形態では、ベーン10の背面部10bには高圧の吐出圧力がかかりシリンダー内の圧力との差圧による大きな力が働いているが、ベーン10の円弧状先端部10aはピストン9の外周の円形状切り欠き部9aに揺動自在に係合されているので、従来用いられているロータリ圧縮機のような線接触でなく面接触となり摺動摩擦による高温の厳しい環境下にはならない。したがって、摺動面が高温になりにくいため、冷媒の不均化反応を抑制することが出来る。
さらに、本実施の形態のロータリ圧縮機は大きくは従来のロータリ圧縮機よりベーンとピストンの形状が異なるだけであるので生産設備の大きな変更をしなくても良いためコスト的に安価なロータリ圧縮機を得ることが出来る。
なお、本実施の形態のロータリ圧縮機は、ベーン10とピストン9は別体に構成され、ベーン10の円弧状先端部10aはピストン9の外周の円形状切り欠き部9aに揺動自在に係合されているものとして説明したが、ベーン10とピストン9を一体に構成した、所謂、スイング式ロータリとして構成してもよい。これによれば、ベーン10とピストン9との間に摺動部がなくなるため、ベーンとピストン間の局所的に高い面圧の発生を防止でき、摺動熱の発生を抑制できるので、R1123の不均化反応を抑制できる。
なお、本実施の形態の圧縮機は、吐出口が密閉容器1内に開放され、密閉容器1内が圧縮室13で圧縮された冷媒で満たされる、いわゆる高圧シェル型の圧縮機でもよいが、吸入口18が密閉容器1内に開放され、密閉容器1内が圧縮室13で圧縮される前の冷媒で満たされる、いわゆる低圧シェル型の圧縮機であれば、密閉容器1内で加熱されて圧縮室13内に導入されるまでの間に温度上昇が生じやすい構成において、圧縮室13での低温冷媒導入による低温化がより顕著となり、R1123の不均化反応を抑制する上で望まし
い。
また、高圧シェル型の圧縮機でも、吐出口から吐出された冷媒をモータ2の周囲を通過させ、密閉容器1内でモータ2で加熱された後に、吐出管15から密閉容器1の外へ吐出されるように構成してもよい。これによれば、吐出管15から吐出される冷媒の温度が同等としても、圧縮室13での冷媒温度を低下させることができるため、R1123の不均化反応を抑制する上で望ましい。
(実施の形態2)
図5に、本発明の第2の実施の形態に係る冷凍サイクル装置101を示す。本実施の形態の冷凍サイクル装置101は、圧縮機102、凝縮器103、絞り機構である膨張弁104、蒸発器105の順に冷媒配管106で接続し、冷凍サイクル回路を構成している。冷凍サイクル回路内には、作動流体(冷媒)が封入されている。
次に、冷凍サイクル装置の構成について説明する。
凝縮器103、蒸発器105には、周囲媒体が空気の場合には、フィンアンドチューブ型熱交換器やパラレルフロー形(マイクロチューブ型)熱交換器などが用いられる。
一方、周囲媒体がブライン、もしくは、二元式冷凍サイクルの冷媒の場合の凝縮器103、蒸発器105には、二重管熱交換器やプレート式熱交換器、シェルアンドチューブ熱交換器が用いられる。
膨張弁104には、例えば、パルスモータ駆動方式の電子膨張弁などが使用される。
冷凍サイクル装置101には、凝縮器103において、冷媒と熱交換する周囲媒体(第1の媒体)を、凝縮器103の熱交換面へと駆動(流動)する流体機械(第1搬送手段)107aが設置されている。また、冷凍サイクル装置101には、蒸発器105において、冷媒と熱交換する周囲媒体(第2の媒体)を、蒸発器105の熱交換面へと駆動(流動)する流体機械(第2搬送手段)107bが設置されている。
周囲媒体としては、大気中の空気が用いられることもあれば、水、もしくは、エチルグリコールなどのブラインが用いられる場合もあるし、冷凍サイクル装置101が二元式冷凍サイクルの場合には、冷凍サイクルおよび作動温度域に好ましい冷媒、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロカーボン(HC)、二酸化炭素などが用いられる。
周囲媒体を駆動する流体機械107a、bには、周囲媒体が空気の場合、プロペラファンなどの軸流送風機、横流送風機、ターボ送風機などの遠心送風機が使用され、周囲媒体がブラインの場合には、遠心ポンプなどが使用される。
なお、冷凍サイクル装置101が二元式冷凍サイクルの場合には、周囲媒体搬送用の流体機械107a、107bは圧縮機がその役目を負う。
凝縮器103において、その内部を流れる冷媒が二相(ガスと液が混合した状態)で流れる箇所(以下、本明細書では「凝縮器の二相管」と称する)には、凝縮温度検知手段110aが設置されており、冷媒温度が測定可能となっている。
また、凝縮器103出口と膨張弁104入口との間には、凝縮器出口温度検知手段110bが設置されている。凝縮器出口温度検知手段110bは、膨張弁104入口の過冷度
(膨張弁入口温度から凝縮器温度を引いた値)を検出可能としている。
蒸発器105において、その内部を流れる冷媒が二相で流れる箇所(以下、本明細書では「蒸発器の二相管」と称する)には、蒸発温度検知手段110cが設けられ、蒸発器105内の冷媒の温度の計測が可能となっている。
圧縮機102吸入部(蒸発器105出口と圧縮機102入口との間)には、吸入温度検知手段110dが設けられている。これにより、圧縮機102に吸入される冷媒の温度(吸入温度)の計測が可能となっている。
温度検知手段110a〜110dには、例えば、冷媒が流れる配管や伝熱管の外管で接触接続された電子式サーモスタットが使用されている場合もあれば、直接、作動流体と接触するさや管方式の電子式サーモスタットが使用されている場合もある。
凝縮器103出口と膨張弁104入口との間には、冷凍サイクルの高圧(圧縮機102出口から膨張弁104入口までの冷媒が高圧で存在する領域)側の圧力を検知する高圧側圧力検知手段115aが設置されている。
膨張弁104出口には、冷凍サイクルの低圧(膨張弁104出口から圧縮機102入口までの冷媒が低圧で存在する領域)側の圧力を検知する低圧側圧力検知手段115bが設置されている。
圧力検知手段115a、115bとしては、例えば、ダイヤフラムの変位を電気的信号に変換するものなどが用いられる。なお、高圧側圧力検知手段115aと低圧側圧力検知手段115bに替えて、差圧計(膨張弁104出入口の圧力差を計測する計測手段)を使用してもよい。
なお、以上の構成の説明において、温度検知手段110a〜110d、圧力検知手段115a、115bをすべて備えるものとして説明しているが、後述する制御において、検出値を用いない検知手段を省略できることは、いうまでもない。
冷凍サイクル装置101の制御方法について説明する。まず、通常の運転時での制御について説明する。
通常の運転時には、吸入温度検知手段110dと蒸発温度検知手段110cとの温度差である、圧縮機102の吸入部での作動流体の過熱度を計算する。そして、この過熱度があらかじめ定められた目標過熱度(例えば、5K)となるように、膨張弁104を制御する。
あるいは、圧縮機102の吐出部に吐出温度検知手段(図示せず)をさらに設け、その検出値を用いて、制御を行うことも可能である。この場合には、吐出温度検知手段と凝縮温度検知手段110aとの温度差である、圧縮機102の吐出部での作動流体の過熱度を計算する。そして、この過熱度があらかじめ定められた目標過熱度となるように、膨張弁104を制御する。
次に、不均化反が起こる可能性が高まる特異な運転状態となった場合の制御について説明する。
本実施の形態においては、凝縮温度検知手段110aの温度検出値が過大になった場合には、膨張弁104を開き、冷凍サイクル装置101内の高圧側作動流体圧力・温度を下
げる制御を行う。
一般的に、二酸化炭素を除いた冷媒では、臨界点(後述の図6においてTcriと記載された点)を超えた超臨界条件とならないようにする必要がある。超臨界状態においては、物質はガスでも液体でもない状態となり、その挙動は不安定かつ活発である。
ここで、本実施の形態においては、この臨界点での温度(臨界温度)を一つの目安として、この温度より、あらかじめ定められた値(5K)以内には凝縮温度が近づかないように、膨張弁104の開度を制御するものである。なお、R1123を含む作動流体(混合冷媒)を使用する場合には、その混合冷媒の臨界温度を用いて、作動流体の温度が(臨界温度−5)℃以上にならないように制御される。
具体的には、図6のモリエル線図を用いて説明する。図6において、不均化反応発生の原因となる過大な圧力条件下にある冷凍サイクルを実線(EP)で示し、破線(NP)で正常運転下にある冷凍サイクルを示す。
もし、凝縮器103の二相管に設けられた凝縮温度検知手段110aでの温度値が、あらかじめ制御装置に記憶された臨界温度に対して、5K以内となると(図6中のEP)、膨張弁104開度を開く側に制御する。その結果、図6のNPのように、冷凍サイクル装置101の高圧側である凝縮圧力が低下するので、冷媒圧力の過度な上昇によって生じる不均化反応を抑制することが可能となるか、不均化反応が生じた場合においては、圧力上昇を抑制することが可能となる。
なお、凝縮温度検知手段110aによって計測された凝縮温度から、間接的に凝縮器103内圧力を把握し、膨張弁104開度を制御する上述の制御方法は、R1123を含んだ作動流体が共沸、もしくは、擬共沸で、凝縮器103内のR1123を含む作動流体の露点と沸点に温度差(温度勾配)がないか、小さい場合には、凝縮圧力の代わりに、凝縮温度を指標として用いることができるので、特に好ましい。
<制御方法の変形例1>
あるいは、上述のように、臨界温度と凝縮温度とを比較することで、間接的に、冷凍サイクル装置101の高圧(凝縮器内冷媒圧力)状態を検知して、適切な動作を膨張弁104などに指示する制御方法に替えて、直接測定した圧力を元にして、膨張弁104開度制御を行うものであってもよい。
図7は、この制御動作をモリエル線図に示した図である。図7において、圧縮機吐出部から凝縮器、膨張弁入口にかけて、過度な圧力上昇が生じつつある状態の冷凍サイクルを実線(EP)で示し、破線(NP)で上述の過度な圧力状態から脱した状態の冷凍サイクルを示す。
運転中において、あらかじめ制御装置に記憶された臨界点での圧力(臨界圧力)Pcriから、例えば高圧側圧力検知手段115aで検知される凝縮器出口圧力Pcondを引いた圧力差があらかじめ定められた値(Δp=0.4MPa)より小さくなった場合(図7中のEP)には、圧縮機102吐出から膨張弁104入口にかけて、R1123を含む作動流体にて不均化反応が生じたか、もしくは、生じる恐れが高いと判定して、この高圧条件下の持続を避けるように、膨張弁104開度を開く側に制御する。
その結果、図7中の冷凍サイクルは図中のNPのように高圧(凝縮圧力)が下がる側に作用し、不均化反応発生の原因となる、もしくは、不均化反応後生じる圧力上昇を抑制する。
本制御方法は、R1123を含む作動流体において、非共沸状態である場合、とりわけ、凝縮圧力において温度勾配が大きい場合に使用するのが好ましい。
<制御方法の変形例2>
あるいは、臨界温度や臨界圧力を基準とした制御方法に替えて、過冷度に基づく制御方法であってもよい。図8は、この制御動作をモリエル線図に示した図である。図8において、不均化反応発生の原因となる過大な圧力条件下にある冷凍サイクルをEPとし、実線で示し、正常運転下にある冷凍サイクルをNPとし、破線で示す。
一般に、冷凍サイクル装置において、膨張弁、圧縮機等の冷凍サイクルの適正な制御、熱交換器サイズ、冷媒充填量適正化によって、凝縮器内冷媒の温度は、周囲媒体に対して、一定程度温度が高くなるように設置される。過冷度については、5K程度の値をとるのが一般的である。同様の冷凍サイクル装置を使用するR1123を含む作動流体においても同様な措置がとられる。
上記のような措置がとられた冷凍サイクル装置において、もし、冷媒圧力が過度に高くなると、図8のEPに示す通り、膨張弁104入口の過冷度も上昇する傾向がある。そこで、本実施の形態では、膨張弁104入口の冷媒の過冷度を基準として、膨張弁104の開度を制御している。
なお、本実施形態においては、正常運転時の膨張弁104入口での冷媒の過冷度を5Kと考え、その値の3倍の15Kを目安として、膨張弁104開度を制御することにしている。閾値とする過冷度を3倍としたのは、運転条件によっては、その範囲で過冷度が変化する可能性があるからである。
具体的に、まず、過冷度を凝縮温度検知手段110aと凝縮器出口温度検知手段110bの検出値から算出する。過冷度は、凝縮温度検知手段110aに検出値から凝縮器出口温度検知手段110bの検出値を引いた値である。そして、膨張弁104入口での過冷度があらかじめ定められた値(15K)に達すると、膨張弁104開度を開く方向に動作し、冷凍サイクル装置101の高圧部分である凝縮圧力を下げる方向に制御する(図8の実線から破線)。凝縮圧力が低下することは、凝縮温度が低下することと同じであるので、凝縮温度Tcond1からTcond2へと減少し、膨張弁104入口での過冷度は、Tcond1−Texin から、Tcond2−Texinへと過冷度が減少(ここで、膨張弁104入口の作動流体温度は変わらずTexinであるとする)する。上述の通り、冷凍サイクル装置内の凝縮圧力低下に伴って過冷度も低下するので、過冷度を基準とした場合でも、冷凍サイクル装置内の凝縮圧力の制御が可能であることがわかる。
図9には、本実施の形態の冷凍サイクルの配管の一部を構成する配管継手117を示す。本発明の冷凍サイクル装置101を、例えば、家庭用のスプリット型の空気調和装置(空調装置)に使用する場合、室外熱交換器を有する室外ユニットと室内熱交換器を有する室内ユニットから構成される。室外ユニットと室内ユニットはその構成上、一体とすることはできないので、図9に示したユニオンフレア111のような機械的継手を用いて、設置場所で接続される。
もし、作業の不手際などの原因によって、機械的継手の接続状態が悪くなると、継手部分から冷媒が漏えいし、機器性能に悪影響を及ぼす。また、R1123を含む作動流体自身は温暖化効果を有する温室効果ガスであるので、地球環境に悪い影響を与える恐れがある。それゆえ、冷媒漏えいを迅速に検知し、修繕することが求められる。
冷媒漏えいの検知には、検知剤を当該部位に塗布して、バブルが発生したら検知する方法や、検知センサーを用いる方法などがあるが、これらはいずれも作業の手間が大きい。
そこで、本実施の形態においては、ユニオンフレア111外周に重合促進剤を含んだシール112を巻くことで冷媒漏えい検知を容易にするとともに、漏れ量の低減を図っている。
具体的には、R1123を含む作動流体において、重合反応が生じると、フッ素化炭素樹脂の一つであるポリテトラフルオロエチレンが発生することを利用する。R1123を含む作動流体と重合促進剤とを漏えい箇所で意図的に接触させて、当該漏えい箇所で、ポリテトラフルオロエチレンが析出・固化するようにしている。その結果、視覚的に漏れを容易に検知しやすくなるので、漏えいの発見と修繕までにかかる時間を短縮できる。
さらに、ポリテトラフルオロエチレンの発生部位は、R1123を含む作動流体の漏えい部位であるために、おのずと、漏えいを妨げる部位に重合生成物が発生・付着するので
(実施の形態3)
図10には、本発明の第3の実施の形態に係る冷凍サイクル装置130を示す。図10に示した冷凍サイクル装置130と実施の形態2の冷凍サイクル装置101との構成の差異は、新たに、膨張弁104入口、出口と接続された開閉弁を備えたバイパス管113が設置された点と、凝縮器103出口と膨張弁104入口との間には、リリーフ弁114を有するパージラインが備えられている点である。そして、リリーフ弁114の開口側は室外に配置されている。なお、図10においては、図5を用いて説明した温度検知手段110a〜d、圧力検知手段115a、115b等の記載は省略した。
実施の形態2で説明した制御方法(例えば、R1123を含む作動流体の臨界点温度から凝縮器103の二相管で測定される作動流体温度を差し引いた値が5K以上となるように、膨張弁104開度を制御する制御方法や、作動流体の臨界圧力と高圧側圧力検知手段115aで検知される圧力との差が、0.4MPa以上となるように制御する制御方法)を行い、膨張弁104開度を開いた場合においても、圧力降下に改善が見られない場合や、圧力降下速度を速めたい状況が生じる可能性がある。
そこで、上記のような状況がもし発生した場合においては、本実施の形態のバイパス管113に設けた開閉弁を開き、バイパス管113に冷媒を流すことで、急速に高圧側の作動流体圧力を下げ、冷凍サイクル装置130の破損を抑制することが可能となる。
さらに、膨張弁104開度の開度大とする制御と、バイパス管113に設けた開閉弁の制御に加えて、圧縮機102を非常停止すれば、冷凍サイクル装置130の破損を防ぐ上でさらに好ましい。なお、圧縮機102を非常停止する場合において、第1搬送手段117aや第2搬送手段117bは停止させないことが、急速に高圧側の作動流体圧力を下げる上で望ましい。
以上の対応を行った場合においても、なお不均化反応が抑制されなければ、具体的には、作動流体の臨界温度と凝縮温度検知手段110aで検知される凝縮温度の差が5K未満である、または、作動流体の臨界圧力と高圧側圧力検知手段115aで検知される圧力との差が、0.4MPa未満である、場合には、さらに冷凍サイクル装置130内の冷媒圧力が上昇してしまう恐れがあるので、高圧となった冷媒を外部に逃し、冷凍サイクル装置130の破損を防ぐ必要性が生じる。そこで、冷凍サイクル装置130内のR1123を含む作動流体を外部空間にパージするリリーフ弁114を開く。
リリーフ弁114の冷凍サイクル装置での設置位置は高圧側が好ましく、本実施例で示
した凝縮器出口から膨張弁入口(この位置で、作動流体は、高圧の過冷液状態であるので、不均化反応に伴う急峻な圧力上昇の結果生じる水撃作用が起こりやすい)にかけて設置するか、圧縮機吐出部から凝縮器入口(この位置で、作動流体は、高温高圧のガス状態で存在するので、分子運動が活発になり、不均化反応そのものが発生しやすい)にかけての設置が特に好ましい。
リリーフ弁114は、室外ユニット側に設けられている。この形態の場合、空調装置であれば、室内側の居住スペースへの作動流体放出がないように、冷凍冷蔵ユニットであれば、ショーケースなど商品陳列側への作動流体放出をしないようにする構成として、人間や商材や直接影響が及ぼさないように考慮されている。
なお、リリーフ弁114を開くとともに、冷凍サイクル装置130を停止する、例えば、電源をOFFすることが、安全上望ましい。
(実施の形態4)
図11には、本発明の第4の実施の形態に係る冷凍サイクル装置140を示す。図11に示した冷凍サイクル装置140と実施の形態2の冷凍サイクル装置101との構成の差異は、凝縮器103に流入する前の第1の媒体の温度を検知する第1媒体温度検知手段110eと、蒸発器105に流入する前の第2の媒体の温度を検知する第2媒体温度検知手段110fとを設けた点と、温度検知手段110a〜110f、圧力検知手段115a、115bの検出値や、圧縮機102、流体機械107a、107bの入力電力が一定時間、電子記録装置(図示せず)に記録される点である。
図12は、本実施の形態の冷凍サイクル装置140の動作をモリエル線図上に示した図である。図12において、EPで示した冷凍サイクルが不均化反応発生時の凝縮圧力、NPで示した冷凍サイクルが正常運転時の冷凍サイクルを示す。なお、図12において、凝縮圧力上昇時のサイクル変化(例:NPとEPの蒸発圧力の差異など)については、説明の簡単のため、記載していない。
凝縮器103内の二相管で測定されるR1123を含む作動流体の凝縮温度が急激に上昇する原因としては、(1)周囲媒体温度Tmcon,Tmevaの急激な上昇、(2)圧縮機102の動力上昇による昇圧作用、(3)周囲媒体の流動変化(周囲媒体を駆動する流体機械107a、107bのいずれかの動力上昇)が考えられる。これらの要因以外、R1123を含む作動流体特有の事象としては、(4)不均化反応による昇圧作用が挙げられる。そこで、不均化反応が生じたと特定するために、(1)から(3)の事象が生じていないことを判別して制御することが本実施の形態の特徴である。
そこで、本実施の形態の制御方法としては、(1)〜(3)の温度あるいは入力電力の変化量に対して、R1123を含む作動流体の凝縮温度の変化量が大きい場合に膨張弁が開く側に制御する。
以下に具体的な制御方法について説明する。まず、温度変化量と入力電力値の変化量とを同じ基準の下で比較するのは困難なので、温度変化量を計測する際は、入力電力が変化しないように制御する。つまり、温度変化量の計測時には、圧縮機102や流体機械107a、107bのモータ回転数を一定に保つ。
例えば、温度変化量は、ある時間間隔で、例えば、10秒〜1分間計測される。この計測に先立って、たとえば、10秒〜1分程度前から、圧縮機102、および、流体機械107a、7bの入力電力量を一定値に保つ。このとき、圧縮機102、および、流体機械107a、107bの入力電力量の単位時間当たりの変化量は概ねゼロとなる。ここで、
概ねゼロとしたのは、圧縮機102においては、冷媒偏りによる圧縮機吸入状態の変化や、流体機械107a、107bにおいては、第1、2媒体が周囲空気の場合には、風の吹き込み等の影響によって、入力電力に若干の変動が生じるためである。つまり、この概ねゼロとは、若干の変動を含んであらかじめ定めた所定値より小さいことを意味する。
以上のような条件下において、凝縮温度検知手段110aで測定される凝縮温度の単位時間当たりの変化量が、第1媒体温度検知手段110eで検知される第1媒体の温度の単位時間当たりの変化量と、第2媒体温度検知手段110fで検知される第2媒体の温度の単位時間のいずれかよりも大きい場合には、不均化反応が発生したとみなして、膨張弁104を開方向に制御する。
なお、膨張弁104開度制御のみで、不均化反応に伴って発生する圧力上昇が制御できない場合に備えて、実施の形態3で示したような、膨張弁104と並列にバイパス管113を備えたり、圧縮機102の非常停止、さらに、外部への冷媒放出して圧力を下げるリリーフ弁114などの手段を設けてもよい。
また、本実施形態においては、凝縮器103の二相管に設置した温度検知手段の変化量を基準として実施する膨張弁104の制御例を示したが、圧縮機102吐出部から膨張弁104入口にかけて、どこかのポイントでの圧力の変化量を基準としてもかまわないし、膨張弁104入口の過冷度の変化量を基準としてもかまわない。
なお、本実施の形態を上述の本発明の実施の形態2または3のいずれかと組み合わせて用いると、さらなる信頼性の向上を得ることが可能となり好ましい。